結論
鶴弥は、愛知県の三州瓦の最大手メーカーだ。筆者の結論は割高。時価総額は純資産の 2 割強と安く見えるが、その安さは稼ぐ力の弱さを映しているだけだ。
自己資本は 121 億円、自己資本比率は 8 割を超える。これは立派な財務だ。ただ、この資本が生む営業利益は 1.5 億円しかなく、ROE は 3% にすぎない。本業の利益より、賃貸料や配当などの営業外の収益のほうが大きい年が続いている。
理由は需要の構造にある。瓦は新築で選ばれる商品で、新築の持家は人口減と建築費の上昇で細り続ける。屋根材は他の素材との価格競争が強く、値上げも難しい。
良い点もある。無借金に近い財務、三州瓦で 3 割台後半のシェア、陶板壁材という新しい柱、土地を売って現金に換えた実績だ。ただ、資産の厚みは悲観の床にはなっても、中立の価値を押し上げるには稼ぎが足りない。上場も東証から名証の単独に移り、株主の目は薄くなった。バリュー投資家は、資産の厚みだけで買わない。その資産が株主にいつ、いくら戻るかを見る。今の鶴弥には、その道筋がまだ薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「資産は厚いが、稼げない会社」だ。時価総額は自己資本の 2 割強。ただ、資産の価値は帳簿の数字ではなく、そこから株主に残る利益で測る。
自己資本 121 億円に対し、営業利益は 1.5 億円、純利益は 4 億円弱で、土地売却益を除けば 1 億円台だ。ROE は 1〜3%。国債の利回りを下回る。この資本は、会社に置いておくより、株主に返したほうが価値が高い。
経営の資本の使い方は、守りに寄っている。工場の休止、人員削減、土地売却、少しずつの配当と自社株買い。方向は良いが、資本を一気に返す覚悟は、株主提案に反対した姿勢を見るかぎり弱い。
払う値段に安全域があるかと言えば、財務の安全域はある。現預金と有価証券で時価総額の 6 割に近い。ただ、事業の稼ぎには安全域が無い。結論として、悲観になっても大きくは崩れないが、中立でも今の値段に届かない。上値の期待は、遊休地の売却と株主還元の強化に限られる。
何で稼ぐ会社か
鶴弥の売上の大半は、粘土瓦だ。平らな F 形瓦が約 6 割、防災性能を高めた J 形瓦が約 3 割。残りは陶板壁材が 1 割、屋根の工事が 4% 前後を占める。瓦は三州瓦の産地(愛知県)で作り、工務店や屋根工事店向けに販売する。
三大瓦(三州・石州・淡路)の中での国内シェアは 31%、三州瓦の中では 37% と、最大手の位置にある。主力の防災瓦「スーパートライ 110」シリーズは、地震や台風に強い設計を売りにする。
陶板壁材は、粘土を焼き固めた外装材だ。会社は中期経営計画で拡大を掲げ、金属屋根材の取り扱いや海外の開拓も進める。海外向けは直近で前年を大きく上回ったが、金額はまだ小さい。
営業外には、賃貸不動産の受取賃貸料が約 1 億円、受取配当が約 0.3 億円ある。2026 年 3 月期は、助成金収入も 0.4 億円あった。瓦の製造は、焼成に大きな炉を使う装置産業の性格が強く、数量が減ると固定費が重くなる。開示はセグメントが単一で、瓦・陶板・工事の損益は開示を確かめられなかった。ここでは売上から推定した。本社は愛知県半田市にあり、売上のほとんどは国内だ。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の優良さを「業界最大手だが、売り物に差が付きにくい」と見る。堀は薄い。
強みは三つある。業界最大手の規模、防災瓦という性能の裏づけ、そして財務の厚みだ。自己資本比率が 8 割を超え、借入はほぼ短期の 9 億円だけ。2023 年 3 月期の赤字も、財務は揺るがなかった。
弱みも明確だ。屋根材は、金属屋根やスレートと比べられる。瓦は重く、高い。リフォームでは、優先順位が低い。決まるのは新築の戸数で、会社が単独で変えられない。値段も、市場が決める。
経営は、人員の削減(385 人から 321 人)や工場の休止、土地の売却で、体質の改善を進めている。ただ、結果の利益は小さい。2026 年 3 月期の営業利益は 1.5 億円で、利益の大きな部分は、土地売却益と営業外収益だった。
筆頭株主は鶴見哲氏で約 2 割を持つ。株主からは、配当を増やすよう求める提案が出た。会社は反対したが、同じ期に特別配当を出した。株主の声に応じつつ、資本の使い方には慎重だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
瓦の需要は、新築住宅の戸数と、屋根材の選ばれ方で決まる。新設住宅の着工は、人口減と建築費の上昇で減る方向にある。2026 年 3 月期の上期には、持家の着工が前年から 15% を超えて減った。建築基準法の改正に伴う確認申請の遅れも響いた。
屋根材の選択では、軽くて安い金属屋根やスレートが増えた。瓦は重くて高いので、地震への心配や都心の小さな屋根では選ばれにくい。そのかわり、耐久性は長い。リフォームでは、屋根を取り替える人がまだ少なく、瓦の需要の穴埋めにならない。
三州瓦は全国の瓦の過半を占める産地だ。同業者は愛知県内に多く、価格では競争になりやすい。鶴弥は最大手として、防災瓦の性能と供給力で差を付けている。
原価では、焼成に使う燃料と物流費の影響が大きい。中東情勢でエネルギー価格が不安定になると、利益が直撃を受ける。会社は来期の予想を、この不透明さを理由に未定とした。
海外や陶板壁材は伸びる余地があるが、国内の瓦の縮みを埋めるには規模が足りない。業界全体を見ると、三州瓦の産地では同業の廃業や集約が続くとみられ、最大手の鶴弥は残った需要を拾う立場にある。ただ、拾える数量は、縮む市場の中での話だ。
資本政策と M&A
株主還元は、配当と自社株買いの両方を使う。2026 年 3 月期の配当は、普通配当に特別配当を足して総額が約 1 億円、配当性向は 29% だった。自己株式は前期末から約 38 万株増え、自社株買いも行った。
来期の配当予想は未定だ。還元の数値方針は、確かめられた範囲では示されていない。
個人株主 3 名が、年間配当を引き上げる株主提案を出し、取締役会は反対した。会社が資本の使い道に慎重な姿勢と、株主の圧力が同時にある。
東京証券取引所の上場は 2026 年 2 月に廃止し、名古屋証券取引所メイン市場の単独上場になった。理由は上場維持コストの削減などだ。上場の場が縮み、売買は減る。公開買付けや非公開化の発表は確かめられなかった。
現預金は 20.5 億円、投資有価証券は 9.3 億円。中計は資産の有効活用を掲げ、2026 年 3 月期は土地売却で 2.3 億円の益を出した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は純資産の 2 割強しかなく、現預金と有価証券だけで時価総額の 6 割に近い。会社には使っていない土地があり、2026 年 3 月期には 2.3 億円の売却益を出した。中計は資産の有効活用を掲げ、人員を 385 人から 321 人へ減らし、工場の休止も進めている。体質の改善は実行されている。
瓦の需要は新築で細るが、三州瓦で 3 割台後半のシェアを持つ最大手は、市場が縮むときに同業の撤退で数量を拾える。防災瓦という性能の裏づけがあり、地震や台風が多い国で一定の需要は残る。陶板壁材は、外装材として採用が広がる余地がある。海外向けは前年を大きく上回った。
株主の声も追い風だ。個人株主から配当を増やす提案が出て、会社は特別配当で応じた。さらに圧力が強まれば、遊休地の売却益を特別配当や自社株買いに回す流れが加速する。純資産が厚いので、少し株主還元が増えるだけで、値段は大きく見直されうる。小さな時価総額に対して、特別配当 1 億円でも、株主の取り分は 3% を超える。
慎重な見方
資産が厚いのは事実だが、その資産が稼いでいない。営業利益は 1.5 億円、ROE は 3%。2026 年 3 月期の純利益 4 億円弱も、土地売却益 2.3 億円を除けば 1 億円台だ。稼ぐ力で値段を測れば、今の時価総額は高い。
瓦の需要は構造的に細る。新築の持家は人口減と建築費の上昇で減り、2026 年 3 月期の上期には 15% を超えて落ちた。屋根材は金属やスレートとの価格競争が強く、値上げが通らない。固定費は重く、数量が減るほど利益率は下がる。2023 年 3 月期には赤字に転落した。
会社は還元に消極的だ。株主提案には反対し、来期の配当予想も未定にした。東京証券取引所の上場を廃止して名証の単独にしたのは、株主の目と売買の量を減らす動きにも見える。遊休地の売却は、売れる時間も価格も会社次第で、株主が時期を決められない。
営業外収益に頼る利益構造は、賃貸料と配当が続く間しか成り立たない。本業の赤字を土地の売却益で埋める形は、長くは続かない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。資産の厚みは悲観の下支えにはなるが、中立の価値は稼ぎで決まり、本業は縮む。確率は、やや悲観と悲観に 4 割、楽観側に 25% を置いた。事業の質は高くないが、財務が強く赤字が続いても倒れない会社であることを、悲観の 13% にとどめた理由とした。遊休地の売却と還元の強化は上振れの材料として、楽観側の筋書きに入れた。ただし、土地や工場の含み益は開示を確かめられず、数字には入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 288 円21 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 120 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 200 円14 億円、今との差 −48.3%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 722 円52 億円 | 308 円22 億円 | +166.8% | +10.3% | 72 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 486 円35 億円 | 196 円14 億円 | +76.8% | +5.9% | 123 円9 億円 |
| 中立 | 35% | 279 円20 億円 | 126 円9 億円 | +4.9% | +0.5% | 142 円10 億円 |
| やや悲観 | 27% | 141 円10 億円 | 56 円4 億円 | −48.8% | −6.5% | 53 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 112 円8 億円 | 28 円2 億円 | −63.7% | −9.6% | 18 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 288 円21 億円 | 120 円9 億円 | +5.7% | +0.6% | 408 円29 億円 |
今の株価時価総額 386 円28 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:陶板と海外が育ち、遊休地の売却益が株主に戻る 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 722 円52 億円
瓦は新築の減少を、リフォームと海外、防災性能の高い瓦への切り替えで部分的に補い、数量の落ち込みを 15% にとどめる。価格は物価並みに通る。工場の集約が進み、固定費が薄くなって利益率は 5% に戻る。
陶板壁材は商業施設や集合住宅の外装に採用が広がり、数量が 2.5 倍になる。金属屋根材の取り扱いも加わる。
休止した工場の土地や遊休地が売れ、10 億円を超える現金が入る。会社はこれを特別配当と自社株買いで株主に戻す。純利益は 4 億円台に乗る。それでも、資本の規模に対する稼ぎは小さく、倍率は式の上限の手前にとどまる。
- 粘土瓦(F 形・J 形):数量 2,342(販売枚数(万枚・推定))× 価格 2.68(1 枚あたり販売単価(百円・推定))→ 売上 63 億円・営業利益 3 億円。販売枚数 0.85 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 5%
- 陶板壁材:数量 13.3(販売面積(万 m2・推定))× 価格 1.61(1 m2 あたり販売単価(万円・推定))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。数量 2.5 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 8%
- 屋根工事:数量 156(工事件数(件・推定))× 価格 399(1 件あたり工事金額(万円・推定))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数 1.3 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計が掲げる陶板の拡大・海外開拓・資産の有効活用がすべて当たる筋書き。着工の減少が続くなかで瓦の数量を守るのは難しく、確率は低く置く。
やや楽観 18% やや楽観:工場の集約で利益率が戻り、陶板が小さく育つ 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 486 円35 億円
瓦の数量は 20% 減るが、工場の集約で固定費を落とし、利益率は 4% まで戻る。価格は競争のため物価をわずかに下回る。
陶板壁材は数量が 2 倍になる。ただ、まだ全体の 15% 弱で、利益の柱とまでは言えない。
遊休地の売却は小規模にとどまり、数億円が入る。会社は配当を保ち、時折、特別配当も出す。工場の集約は進むが、新築の減少が先に利益を削るため、効果は部分的になる。純利益は 3 億円近くまで増える。自己資本は 120 億円台のまま。工場が減って稼働率が上がり、固定費の重さがやわらぐ。ここまでが、会社の中計が目指す姿に近い。資本に比べた稼ぎが小さいという構造は、この筋書きでも変わらない。
- 粘土瓦(F 形・J 形):数量 2,204(販売枚数(万枚・推定))× 価格 2.64(1 枚あたり販売単価(百円・推定))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。販売枚数 0.8 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 4%
- 陶板壁材:数量 10.6(販売面積(万 m2・推定))× 価格 1.61(1 m2 あたり販売単価(万円・推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 2 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 6%
- 屋根工事:数量 132(工事件数(件・推定))× 価格 399(1 件あたり工事金額(万円・推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。件数 1.1 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が人員を 385 人から 321 人へ減らし、土地の売却で 2.3 億円の益を出した実績がある。集約の道筋は見えており、確率は低くない。
中立 35% 中立:瓦は 3 割弱縮み、陶板と賃貸が下を支える 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 279 円20 億円
新築の持家は 10 年で 3 割近く減る。瓦の採用は金属屋根やスレートにも押され、販売枚数は 28% 減る。値段は物価の 1.34 倍に届かず、1.28 倍にとどまる。屋根材は商品の差が小さく、値上げが難しい。
工場の休止と人員の削減で固定費を落とすが、数量の減りを埋めきれず、瓦の利益率は 2.5% に下がる。減価償却は今の 1.6 億円から、更新投資の分だけ 2.3 億円まで増える。
陶板壁材は数量が 6 割増え、工事も小さく伸びる。賃貸料と受取配当は営業外収益として残り、純利益は 1 億円台後半で横ばい。配当は小さく続き、余った現金は使い道が定まらない。
- 粘土瓦(F 形・J 形):数量 1,984(販売枚数(万枚・推定))× 価格 2.56(1 枚あたり販売単価(百円・推定))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。販売枚数 0.72 倍・単価 1.28 倍(屋根材の競争で物価を下回る)・営業利益率 2.5%
- 陶板壁材:数量 8.5(販売面積(万 m2・推定))× 価格 1.61(1 m2 あたり販売単価(万円・推定))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。数量 1.6 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 4%
- 屋根工事:数量 120(工事件数(件・推定))× 価格 399(1 件あたり工事金額(万円・推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。件数 1.0 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新設住宅着工は人口減で細り、会社の今期の予想も(予想自体は未定だが)売上減の方向だ。陶板と賃貸の下支えを含め、会社の足元の姿に最も近い。
やや悲観 27% やや悲観:着工の減少が加速し、本業が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 141 円10 億円
新築の持家が 4 割近く減り、瓦の数量は 38% 減る。価格競争で単価は物価に追いつかない。工場を追加で休止し、特別損失が出るが、固定費を数量の減りに合わせきれず、瓦の事業は赤字寸前にとどまる。
陶板壁材は伸びず、利益が出ない。本社費は物価で増える一方で削れない。営業利益は 1 億円弱の赤字となる。
賃貸料と配当は残るため、純利益は 0.3 億円ほどで黒字を保つ。配当は最低限にとどまり、会社は固定資産の売却益で穴を埋める。ガスなど燃料の高止まりも、利益を圧迫する。10 年後の価値は、稼ぎではなく、現金と有価証券の厚みに近づく。
- 粘土瓦(F 形・J 形):数量 1,708(販売枚数(万枚・推定))× 価格 2.44(1 枚あたり販売単価(百円・推定))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。販売枚数 0.62 倍・単価 1.22 倍・営業利益率 0.5%
- 陶板壁材:数量 5.8(販売面積(万 m2・推定))× 価格 1.56(1 m2 あたり販売単価(万円・推定))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 1.1 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 0%
- 屋根工事:数量 108(工事件数(件・推定))× 価格 387(1 件あたり工事金額(万円・推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。件数 0.9 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 5%
倍率:利益が薄く ROE が k に届かないため PBR で置く。今の自己資本 121 億円の 0.083 倍。稼ぐ力(純利益 0.3 億円÷k)は小さく、現預金から借入を引いた約 11.5 億円と投資有価証券の税引き後 6.5 億円を合わせた約 18 億円に戻り方 0.75 を掛けた床(約 13.5 億円)の下に置いた。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:新築の持家は建築費の上昇と人口減で足元から落ちており、持家着工が上期に 15% 超減った。瓦はその影響を直に受け、赤字化は 2023 年 3 月期にも一度起きている。
悲観 13% 悲観:新築が半減して瓦の事業が成り立たなくなり、清算に近づく 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 112 円8 億円
新築の持家が半減し、瓦の数量は 5 割減る。単価は競争で物価の半分ほどしか上がらず、瓦の事業は恒常的に赤字になる。工場の閉鎖費用と減損で、自己資本は 80 億円台まで目減りする。
陶板壁材も育たず、本業の赤字は年 2 億円規模。賃貸料と配当は残るが、赤字を埋めきれない。
会社は工場の土地を売り、現金に換えて事業を畳む方向へ進む。ただ、売却は時間がかかり、閉鎖費用と人員の整理が先に出る。株主に戻る額は、現金と有価証券の分から、事業の整理費を引いた額に近い。会社が整理を決めるかどうかは経営者の判断で、少数株主には選べない。そのため価値は、純現金を下回ることもありうる。
- 粘土瓦(F 形・J 形):数量 1,378(販売枚数(万枚・推定))× 価格 2.30(1 枚あたり販売単価(百円・推定))→ 売上 32 億円・営業利益 −1 億円。販売枚数 0.5 倍・単価 1.15 倍・営業利益率 −4%
- 陶板壁材:数量 4.2(販売面積(万 m2・推定))× 価格 1.44(1 m2 あたり販売単価(万円・推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍・単価 1.2 倍・営業利益率 −5%
- 屋根工事:数量 84.0(工事件数(件・推定))× 価格 357(1 件あたり工事金額(万円・推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。件数 0.7 倍・単価 1.2 倍・営業利益率 0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。今の自己資本 121 億円の 0.066 倍。稼ぐ力はなく、現預金から借入を引いた分と有価証券の税引き後の分に戻り方 0.5 を掛け、整理の費用を引いた水準に近い。純現金を下回ってよい(清算されない限り使い道は経営者が決める)。
確率:新築の持家が半減し、金属屋根などへの置き換えが進めば、瓦の固定費は賄えない。売上が今の半分近くに縮む筋書きで、起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
粘土瓦(F 形・J 形)
三州瓦の平形(F 形)と防災瓦(J 形)の製造・販売。売上の約 85%。
| 数量販売枚数(万枚・推定) | 価格1 枚あたり販売単価(百円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,755 | 2.00 | 55 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,984 | 2.56 | 51 | 1 |
取り方:製品売上 61.5 億円のうち、2025 年 3 月期の構成比(瓦 86%・陶板 10%)で按分して瓦を 55.1 億円とした。枚数・単価は開示を確かめられず、1 枚あたり 2 百円の推定。営業利益 2.4 億円も推定で、全社の営業利益 1.46 億円から逆算した。
陶板壁材
粘土を焼き固めた外装用の壁材。商業施設や住宅の外壁に使う。
| 数量販売面積(万 m2・推定) | 価格1 m2 あたり販売単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.3 | 1.20 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 1.61 | 14 | 1 |
取り方:製品売上のうち構成比 10% を按分して 6.4 億円。面積と単価は推定。立ち上げの段階で小さな赤字と推定した。
屋根工事
瓦の施工・屋根工事。
| 数量工事件数(件・推定) | 価格1 件あたり工事金額(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 298 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 120 | 399 | 5 | 0 |
取り方:工事売上高 3.57 億円は開示値。件数 120 件・単価 297.5 万円は推定。営業利益率は 8% と推定した。
リスクと懸念
新築の持家の減少
瓦は新築で選ばれる商品で、持家の着工は人口減と建築費の上昇で減る方向にある。2026 年 3 月期の上期には 15% を超えて落ちた。この流れが加速すれば、固定費の重い瓦の事業は赤字に沈む。
屋根材の代替と価格競争
金属屋根やスレートは軽くて安く、瓦は高く重い。商品の差が小さく、値上げが難しい。数量が減る局面で価格も守れなければ、利益率は急速に下がる。
エネルギー・資材の価格
焼成に使う燃料と物流費の上昇は、原価に直結する。中東情勢で価格が不安定なため、会社は来期の業績予想を未定とした。転嫁が遅れれば、営業利益はゼロ近くに落ちる。
営業外収益への依存
営業利益は 1.5 億円だが、賃貸料・配当・助成金などの営業外収益が 2.2 億円ある。賃貸の契約や配当が途切れれば、純利益の水準が下がる。本業の稼ぐ力を、見かけの利益で測らない必要がある。
上場の場が縮んだこと
東京証券取引所の上場を廃止し、名古屋証券取引所メイン市場の単独になった。売買の量が減り、買い手が限られ、株主が望む価格で売りにくい。少数株主の発言力も弱まりうる。
資産の売却が遅れる、または安く売る
遊休地や休止工場の売却は、時期と価格が相手次第で、株主には決められない。売却益を特別配当に回す保証もない。上振れの材料が実現しない場合の失望は大きい。
今後の分かれ目
- 休止した工場や遊休地の売却が進み、特別配当や自社株買いが示されたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。資本の使い道が株主に向いた合図になる。
- 新設住宅の持家の着工が 2 年続けて前年を 10% 以上下回ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。瓦の固定費が賄えず、赤字化が近づく。
- 陶板壁材の売上が 15 億円を超え、黒字になったら
- 瓦の縮みを補う柱として、陶板の数量を引き上げて見直す。
- 来期の業績予想と配当方針が数値で示されたら
- 還元の戻り方 0.75 を見直す。方針が明確なら 1.0 に近づけてよい。
- 創業家や関連法人による非公開化の話が出たら
- 価格が本質価値を下回るなら応じる理由はない。この分析は公開買付け後は意味を失う。
見ておくもの
- 新設住宅着工(持家)の戸数と瓦の出荷枚数
- 営業利益率と固定費の動き(工場の稼働・休止)
- 遊休地・休止工場の売却と特別配当・自社株買い
- 陶板壁材・海外・金属屋根材の売上
- 燃料・資材など原価の転嫁の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROE が k に届かないため、上限は 1÷k とし、利益の質が低いので 7〜9.5 割に置いた。今の PBR の低さから価値を引き上げていない。時価総額が自己資本の 1 割前後になる筋書きが並ぶのは、ROE が k に届かない会社に PBR 1 倍の価値を認めないためで、現預金と有価証券の厚みは床として別に見た。資産の厚みは、現預金から借入を引いた分と有価証券の税引き後の分だけを悲観の床と余った現金に入れ、土地・工場の含み益は開示を確かめられず数えなかった。賃貸料と配当は利益に残してあるので、その元の資産を別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.56→11.11 倍・やや楽観 PER 9.44→11.11 倍・中立 PER 7.78→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5%。財務の強さで k を下げない。