結論
エーアンドエーマテリアルは、ビルの内装に使う燃えないボードと、船やプラントの断熱材・工事を手がける会社だ。太平洋セメントが 2 割を持つ筆頭株主である。筆者の結論は「ほぼ適正」だ。利益に比べて値段は低く見えるが、借金が時価総額と同じくらいあり、その分を引くと割安とは言いにくい。
2026 年 3 月期は売上 457 億円、営業利益 17 億円だった。化粧板のデコールを買い、売上は増えたが、燃料と人件費の上昇で利益は減った。純利益 17 億円は負ののれんと異常に低い税金に支えられ、実力は 11 億円前後だ。
資本の使い方は大きく動いた。太平洋セメントの持株の一部を引き取る形で、発行済み株式の 3 割近い自社株を 29 億円で買った。資金は借入で賄い、純負債は 87 億円に膨らんだ。その穴を埋めるため、行使されれば 29 億円になる新株予約権も出した。筆者は、事業は地味に堅いが、財務の身軽さを失った分を値段が十分には映していないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、安全域は薄い」。利益は年 11 億円前後、時価総額は 82 億円で、利益の 7 倍台だ。一見安い。しかし純負債が 87 億円あり、会社全体の値段は 170 億円になる。これを営業利益 17 億円で割ると 10 倍で、薄利の素材会社として特に安くはない。
事業は 10 年後も残る。燃えない内装材と船の断熱は、規制と技術の両方に支えられる。ただ、今より強くなっているかは疑わしい。国内の着工は細り、本社の費用は重い。
経営の資本の使い方も評価が割れる。自社株を安く買ったのは株主に有利だが、借金で買い、すぐ新株予約権で埋めるのは回り道だ。アスベスト訴訟は今も続き、いつ終わるかは読めない。
筆者は、悪い会社ではないが、借金を背負った今は持ち続けたいと強く思える会社でもないと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。一つは建設・建材で、売上の半分を占める。主力はけい酸カルシウム板「ハイラックフネン」と、内装の不燃化粧板「ステンド」「アデック」だ。オフィスや学校、病院の壁や天井に使う。曲げて貼れる「エフジーボード」、コンクリート調の「BEoNA」のような意匠の商品も伸ばしている。2025 年度に化粧板のデコールを 17 億円で買い、材料の売上は 4 割増えた。ボードを貼る工事も請け負う。
もう一つは工業製品・エンジニアリングで、残り半分だ。船の防熱材、アルミの溶解炉の断熱材、プラントの保温と築炉の工事、自動車や産業機械の部品を扱う。売上の 6 割は工事で、LNG を燃料にする船のタンクの保冷工事のような、技術の要る仕事が利益を生む。
会社の起こりは、石綿(アスベスト)のスレートや保温材のメーカーだ。今は石綿を使っていないが、昔の製品で病気になった人からの訴訟が続いている。工場は国内に持ち、土地の簿価は 132 億円ある。セメントは太平洋セメントから買い、建材事業は同社のグループ戦略の部署から助言を受ける。
優良さと弱いところ
強みは、燃えない内装材という狭い分野での地位と、船やプラントの断熱の技術だ。耐火の規制がある限り、ビルの内装には不燃のボードが要る。船の断熱は、施工まで含めて任せられる会社が少ない。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほど深くはない。建材は大建工業や吉野石膏の石膏ボードと競い、工事は入札で値段が決まる。利益率は 2020 年 3 月期の 7.4%が最高で、今は 4%を割る。本社の費用が年 19 億円と重く、セグメントの利益の半分を食う。
資本効率はこの 10 年、ROE の中央値で 11%と悪くない。ただ、それは借金を使い、税金の軽い年があったからでもある。財務は今回の自社株買いで弱くなった。自己資本比率は 4 割を切り、純負債は 1 年の営業利益の 5 倍を超える。アスベスト訴訟の和解金も、この 2 年で 20 億円を払った。筆者は、事業の質は並み、財務の質は並みより下と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建材の需要は、ビルや公共施設の着工に左右される。国内の非住宅の建築着工床面積は、人口減とともに長くゆっくり減ってきた。足元では、建設費と人件費の高騰で着工が先送りされ、ボードの出荷も落ちた。海外の輸出先の中国、台湾、韓国も建設が停滞している。
値上げは通っている。会社は燃料と労務費の上昇に合わせて価格を改め、2026 年 3 月期は 4 億円強の増益要因になった。燃えない内装材は、規制に支えられて代わりが少ない。量は減っても単価で補う形が、10 年続くとみるのが自然だ。
工業製品は、造船と脱炭素の投資に支えられる。LNG を燃料にする船や、省エネの炉の断熱材の需要は伸びている。反面、アルミの溶解炉向けは世界のアルミ需要の減少で落ち、自動車部品は米国の関税と中国の競争で苦しい。プラントの工事は、大型案件の工期のずれで年ごとに大きく振れる。
競争相手は、建材では大建工業、ニチアス、日本インシュレーション、工業製品では保温工事の専業各社だ。断熱材ではニチアスが圧倒的に大きく、エーアンドエーは狭い分野で生きる二番手以下の会社と言える。
資本政策と M&A
2026 年 3 月、会社は資本政策を大きく変えた。215 万株、発行済み株式の 3 割近くを 29 億円で買い、うち 85 万株を消した。同じ時期に太平洋セメントの持株比率は 4 割強から 2 割へ下がった。親会社に近い株主の持分を、会社が借金で引き取った形だ。
残りの自社株は買収に使うという。同時に、行使価額が今の株価の 1.3 倍と 1.7 倍の新株予約権を 130 万株分出した。全部行使されれば 29 億円が入り、自己資本は 17%増える。今の株価はどちらの行使価額も下回り、行使されるかは株価次第だ。
配当は年 3 億円強から、2027 年 3 月期は 1 割強増やす。PBR 1 倍を目標に掲げ、株主優待の導入も検討している。買収はデコールなど小粒のものを続ける方針だ。太平洋セメントは筆頭株主に残るが、持分法の関連会社にとどまり、完全子会社にする動きはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益に比べて値段が低すぎる。会社の予想では 2027 年 3 月期の営業利益は 21 億円で、2 割以上増える。値上げが通り、デコールの買収で化粧板の品ぞろえも広がった。LNG を燃料にする船の保冷工事のような、利益率の高い工事の完成も増える。
燃えない内装材は規制に守られている。ビルの更新や学校、病院の改修は止まらない。建設費が落ち着けば、先送りされた工事が戻ってくる。脱炭素で省エネの炉や断熱の需要も伸びる。
資本政策も株主に有利だ。発行済みの 3 割近い株を、純資産を大きく下回る値段で買った。1 株あたりの利益と純資産はそれだけ増える。配当は 1 割強増え、PBR 1 倍を目標に掲げた。株主優待の導入も検討している。太平洋セメントの持株が減ったことで、株主の顔ぶれが変わり、経営の独立性も高まった。営業利益が 2020 年 3 月期の 32 億円に戻れば、今の値段は割安になる。借金も、利益が戻れば数年で返せる額だ。
慎重な見方
借金が重すぎる。純負債は 87 億円で、時価総額を上回る。自社株買いの資金を借入で賄ったからだ。金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増える。営業利益の 5 倍を超える借金は、薄利の素材会社には重い。
純利益 17 億円も見かけだけだ。負ののれんと、ほとんどかからなかった税金に支えられている。会社の予想でも、2027 年 3 月期の純利益は 12 億円に減る。本社の費用は年 19 億円あり、セグメントの稼ぎの半分を食う。
アスベスト訴訟は終わっていない。この 2 年で和解金を 20 億円払い、それでも新しい集団訴訟が続く。国内のビルの着工は細り、ボードの出荷は前の年を下回った。海外の輸出も中国の不動産不況で落ちている。
新株予約権が行使されれば、株は最大で 2 割増える。株価が上がっても、その分は薄まる。値段が安く見えるのは、借金と訴訟と薄まりの分だけ、株主の取り分が小さいからだ。利益の山だった 2020 年 3 月期の水準に戻る道筋も、まだ見えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方にやや分がある。利益の伸びは会社の予想どおりなら本物だが、借金と訴訟という株主の取り分を削る要素が二つある。確率は中立に 4 割を置き、やや悲観と悲観に合わせて 3 割強を置いた。強気の根拠の値上げとデコールの効果は、やや楽観に 2 割で残し、楽観は利益率が過去の山まで戻る形として 1 割未満にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,487 円137 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 797 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 1,661 円92 億円、今との差 +12.4%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,351 円296 億円 | 1,245 円69 億円 | +346.3% | +16.1% | 462 円26 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,648 円202 億円 | 1,003 円55 億円 | +214.7% | +12.1% | 930 円51 億円 |
| 中立 | 40% | 2,850 円158 億円 | 904 円50 億円 | +154.0% | +9.8% | 1,502 円83 億円 |
| やや悲観 | 22% | 830 円46 億円 | 579 円32 億円 | −4.7% | −0.5% | 310 円17 億円 |
| 悲観 | 11% | 543 円30 億円 | 181 円10 億円 | −51.1% | −6.9% | 80 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,487 円137 億円 | 797 円44 億円 | +122.1% | +8.3% | 3,283 円182 億円 |
今の株価時価総額 1,478 円82 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げと買収で利益率が過去の山へ。予約権も行使 利益 29 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,351 円296 億円
建設費が落ち着き、先送りされたビルの工事が戻る。燃えない内装材の値上げは物価を上回って通り、化粧板の買収も続いてシェアが 2 割強上がる。工業製品は LNG 船と脱炭素の炉の需要に乗り、工事の量は 2 割増える。
営業利益率は 7%台に戻り、営業利益は 46 億円になる。株価が上がって新株予約権は全部行使され、29 億円が借入の返済に回る。株は 2 割増えるが、利益の伸びがそれを上回る。
配当は増え、優待も入る。純負債は減り、財務の身軽さも戻る。アスベスト訴訟は和解で静かに終わっていく。10 年後には、借金の少ない、規制に守られた素材会社として見直される。
- 建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事):数量 4,365(国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.40(床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 392 億円・営業利益 43 億円。非住宅着工床面積×シェア変化 4365 万㎡、単価 1.40 倍、利益率 11.0%
- 工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事):数量 125(国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化)× 価格 1.36(工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 384 億円・営業利益 27 億円。設備投資×シェア変化 125 兆円、単価 1.36 倍、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.64 倍、時価総額 365 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率は 2020 年 3 月期に 7.4%まで上がった実績があるが、今の倍近い。建材と工事の両方の追い風がそろう必要があり、1 割を切る。
やや楽観 20% 値上げが定着し、会社の予想の延長で伸びる 利益 19 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,648 円202 億円
非住宅の着工はゆっくり減るが、デコールの通年の寄与と新商品でシェアが上がり、建材の量は増える。値上げは物価並みよりやや強く通る。工業製品は船と脱炭素の需要で量が 1 割強増える。
営業利益率は 5%弱まで戻り、営業利益は 31 億円になる。株価は第 1 回の行使価額を超え、65 万株が行使されて 13 億円が入る。
配当は増え続け、純負債はゆっくり減る。本社の費用はシステムの統合で伸びが抑えられる。省エネの設備投資で、乾燥の燃料も減る。アスベスト訴訟の支払いは年々小さくなる。株主優待も入り、株主の顔ぶれは個人に広がる。
- 建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事):数量 3,933(国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.37(床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 345 億円・営業利益 35 億円。非住宅着工床面積×シェア変化 3933 万㎡、単価 1.37 倍、利益率 10.0%
- 工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事):数量 112(国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化)× 価格 1.33(工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 336 億円・営業利益 21 億円。設備投資×シェア変化 112 兆円、単価 1.33 倍、利益率 6.3%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の会社予想は営業利益 21 億円で、値上げとデコールの効果の裏づけがある。その延長として 2 割を置く。
中立 40% 量は細り、値上げで横ばいの利益率 利益 13 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,850 円158 億円
非住宅の着工は 1 割近く減るが、デコールと新商品のシェアで建材の量は少し増える。値上げは物価並みに通る。工業製品は船と脱炭素の需要が自動車部品とアルミ炉の落ち込みを埋め、量はわずかに増える。
建材の利益率は 9%台、工業製品は 5%台を保つ。本社の費用は物価で増える。営業利益は 22 億円、売上の 3.5%だ。借入の借り換えで利払いは年 2 億円増える。
新株予約権は行使されない。配当は性向 4 割前後で、自社株は買収に使う。純負債は利益でゆっくり返す。地味だが続く素材会社のままだ。太平洋セメントは筆頭株主に残るが、口は出さない。大きな買収も、身売りも起きない。
- 建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事):数量 3,710(国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.34(床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 319 億円・営業利益 30 億円。非住宅着工床面積×シェア変化 3710 万㎡、単価 1.34 倍、利益率 9.5%
- 工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事):数量 105(国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化)× 価格 1.30(工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 308 億円・営業利益 17 億円。設備投資×シェア変化 105 兆円、単価 1.30 倍、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量の縮みを値上げで補う形が、この 10 年の実績に最も近い。会社の予想も 2028 年 3 月期は営業利益 22 億円で頭打ち。
やや悲観 22% 着工の減少と工事の価格競争で利益が細る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 830 円46 億円
国内の非住宅の着工は建設費の高止まりで 1 割強減り、ボードの量も落ちる。値上げは通りにくく、単価は 1.3 倍どまりだ。工業製品は自動車部品とアルミ炉の不振が続き、工事は入札の価格競争で利益率が 4%に下がる。
本社の費用は削っても物価で増え、営業利益は 8 億円に落ちる。借り換えで利払いが増え、純利益は 4 億円弱だ。
アスベスト訴訟の新しい集団訴訟で、引当金を積み増す年も出る。配当は据え置かれ、借金の返済はなかなか進まない。新株予約権は行使されないまま期限を迎え、財務を軽くする手段も一つ失う。
- 建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事):数量 3,168(国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.30(床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 264 億円・営業利益 21 億円。非住宅着工床面積×シェア変化 3168 万㎡、単価 1.30 倍、利益率 8.0%
- 工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事):数量 95.0(国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化)× 価格 1.27(工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 272 億円・営業利益 11 億円。設備投資×シェア変化 95 兆円、単価 1.27 倍、利益率 4.0%
倍率:純利益 3.8 億円、自己資本 215 億円で ROE 約 1.8%。稼ぐ力(純利益 ÷ k)で測り、1÷k の 12.09 倍。売れる資産の床(floor_assets、約 30 億円)より高いので稼ぐ力で置く。PBR は 0.2 倍で中立より低い。
確率:建材の出荷はすでに前の年を下回り、工事は物件の減少で価格競争が激しい。借金の利払いも増える。2 割強を置く。
悲観 11% 訴訟と借金に押され、事業を切り売りする 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 543 円30 億円
着工の急減と工事の採算悪化が重なり、営業利益は赤字に落ちる。アスベスト訴訟では新しい判決で大きな支払いが出る。借入の借り換えの金利は 3%台後半に上がり、利払いが利益を食う。
会社は工場の土地や事業の一部を売って借金を返す。工場の用地は事業に要るので、売れる分は限られる。配当は止まる。太平洋セメントが支援に動く保証もない。
値打ちは事業の稼ぎでは測れず、借金を返したあとに残る資産だけになる。土地の簿価 132 億円から純負債と退職金の約束を引くと、残りはわずかだ。会社は残っても、少数株主の取り分はごく小さくなる。
- 建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事):数量 2,880(国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1))× 価格 1.22(床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 225 億円・営業利益 9 億円。非住宅着工床面積×シェア変化 2880 万㎡、単価 1.22 倍、利益率 4.0%
- 工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事):数量 85.0(国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化)× 価格 1.20(工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00))→ 売上 230 億円・営業利益 2 億円。設備投資×シェア変化 85 兆円、単価 1.20 倍、利益率 1.0%
倍率:赤字で稼ぐ力はない。土地 132 億円(簿価)と投資有価証券 10 億円から、純負債 87 億円と退職給付の負債 25 億円を引くと、売れる資産の余りは 30 億円前後で、工場用地は事業に要るので全部は売れない。値打ちはこの床の約 30 億円で、今の自己資本 172 億円への PBR 0.175 倍にあたる。
確率:純負債が時価総額を上回り、アスベスト訴訟の行方も読めない。2009〜2011 年 3 月期に 3 期続けて赤字だった前例もあり、1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設・建材(耐火ボード・化粧板と内装工事)
けい酸カルシウム板や不燃化粧板を作って売り、内装の工事も請け負う。2025 年度にデコールを買った。
| 数量国内の非住宅の建築着工床面積(万㎡)× シェアの変化(2026/03 = 1) | 価格床面積あたりの売上の指数(2026/03 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,600 | 1.00 | 231 | 23 |
| 10 年後 中立 | 3,710 | 1.34 | 319 | 30 |
取り方:数量の開示がないので推定。非住宅の建築着工床面積を年 3,600 万㎡前後とし、決算短信の建設・建材の売上 230.67 億円との比を rev_factor とした。筋書きの数量は着工の増減とシェア(デコールの通年の寄与・新商品)の変化を掛けたもの。
工業製品・エンジニアリング(船・プラントの断熱と工事)
船の防熱材、炉の断熱材、自動車・産業機械の部品を売り、プラントの保温・築炉の工事を請け負う。
| 数量国内の製造業・造船の設備投資(実質・兆円)× シェアの変化 | 価格工事と製品の単価の指数(2026/03 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 226 | 13 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.30 | 308 | 17 |
取り方:数量の開示がないので推定。当て先の設備投資の大きさを 100 と置き、決算短信の工業製品・エンジニアリングの売上 225.75 億円との比を rev_factor とした。工事が 6 割で、年ごとの振れが大きい。
リスクと懸念
借金の重さ
自社株買いを借入で賄い、純負債は 87 億円と時価総額を上回る。短期借入が 54 億円あり、金利が上がれば借り換えのたびに利払いが増える。営業利益が落ちる年には、配当と投資の余地が一気に狭まる。
アスベスト訴訟
昔の石綿製品で病気になったとする人からの損害賠償の訴訟が続く。2024〜2025 年度に和解金を約 20 億円払った。札幌や東京で新しい集団訴訟があり、判決しだいで引当金を積み増す年が出る。終わりの時期は読めない。
国内の着工の縮小
主力の耐火ボードはビルや公共施設の着工に左右される。建設費と人件費の高騰で着工が先送りされ、出荷は前の年を下回った。人口減で非住宅の床面積は長く細る。
工事の振れ
工業製品の売上の 6 割は工事で、大型案件の工期のずれで売上と利益が年ごとに大きく動く。入札で値段が決まり、物件が減れば価格競争が激しくなる。
新株予約権による薄まり
130 万株の新株予約権が全部行使されると、株は 2 割強増える。行使価額は今の株価より高く、株価が上がった時ほど薄まりが効く。
燃料と原料の値上がり
ボードの製造は乾燥に多くのエネルギーを使う。燃料と電気の値上がり、中東情勢による原料の供給の乱れは、値上げが追いつくまで利益を削る。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に営業利益 21 億円の会社予想を達成したら
- 値上げとデコールの効果が本物で、やや楽観の確率を上げる。
- アスベスト訴訟で大きな判決が出て、引当金を 10 億円以上積み増したら
- 株主の取り分が削られ、やや悲観の確率を上げる。
- 株価が行使価額を超え、新株予約権の行使で借金が減ったら
- 財務は軽くなるが、株は薄まる。差し引きで中立に近い。
- 太平洋セメントが残りの持株を売るか、他社が買収を提案したら
- 株主の顔ぶれが変わり、TOB の可能性が出る。分析の前提を見直す。
- 非住宅の着工が回復し、ボードの出荷量が前年を上回ったら
- 量の縮みが止まった証拠で、建材の利益率の見方を上げる。
見ておくもの
- 建設・建材と工業製品のセグメント利益率
- 純負債と短期借入の残高
- アスベスト訴訟の引当金と和解金
- 新株予約権の行使の状況
- 太平洋セメントの持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価からは置かず、非住宅の着工床面積と設備投資の量に単価を掛けて売上を積んだ。量の開示がないため売上から推定した。倍率は ROE が k を下回る筋書きで 1÷k を上限に、工事の振れと純負債の重さで 8 割に置いた。純利益の起点は、負ののれんと異常に低い税金を除いた 11 億円にならした。新株予約権は行使される筋書きだけ株主の取り分を下げた。リースは小さく、新リース会計基準での形の変化は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→12.64 倍・やや楽観 PER 9.7→12.12 倍・中立 PER 9.1→12.12 倍・やや悲観 PER 11.4→12.09 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。