結論
ニッカトーは、電子部品の製造工程で使うジルコニアボールなどの工業用セラミックスと、電気炉・計測機器の会社だ。売上の約 7 割がセラミックスで、残りが設備事業になる。
筆者の結論は割高だ。事業は堅く、純現金も厚い。だが利益の伸びを物価と数量で積んでも、10 年後の稼ぎは今の時価総額を払い戻すには足りない。
稼ぎの源は、顧客の工場で毎年すり減るボールや部材の買い替えだ。積層セラミックコンデンサ(スマホや車に載る小さな部品)の生産が増えれば数量が伸びる。ただ東ソーなどの競合がおり、値段を主導できる強さは見えない。
中期計画は 2031 年 3 月期に営業利益率 15% を掲げる。過去の最高は 10.9% で、筆者は届かないと見る。
現金のうち 25 億円は事業に要らない余剰とみる。ただ配当は利益の 3 割ほどで、自社株買いもなく、貯まる一方だ。そのため戻り方は半分に割り引いた。
ROE が資本コストに届きにくい点が、倍率を押し下げる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10 年後もこの稼ぎが続くか」だ。電子部品の消耗品は需要が続く。だがニッカトーは値段を決める側でなく、利益は景気の波に揺れる。
次に、稼いだ利益のうち株主の手元に残る分を見る。事業を続けるための設備投資は常に要り、配当は 3 割ほどだ。残りは現金として貯まり、年 2% 程度の低い利回りで眠る。
中期計画の目標は、営業利益率 15%、ROE 10%。実現すれば価値は大きく変わる。しかし過去 12 年の最高は 10.9% で、計画は実績の外にある。筆者は、計画の達成を数字の上で信じず、実績が出てから評価する。
安全域の面では、純現金と堅い財務は救いだ。ただ現金の使い道は少数株主には決められない。現金の価値を満額では認めなかった。
結論として、堅い会社だが、今の値段に安全域はない。割安に変わるなら、利益率の改善が数字で確かめられた時か、値段が大きく下がった時だ。
何で稼ぐ会社か
ニッカトーは 1913 年創業の工業用セラミックスメーカーで、2 つの事業を持つ。2026 年 3 月期の売上は 113 億円。セラミックスが 82 億円、エンジニアリングが 31 億円だ。
セラミックス事業の主力はジルコニアボールだ。積層セラミックコンデンサの材料を細かく砕く工程で使う粉砕用の玉で、使うほどすり減る。ほかに発熱体(ケラマックス)、酸素センサ、炉心管、搬送用ローラなどを手がける。注文に合わせて作るオーダーメイド型で、顧客は電子部品、化学、エネルギー、自動車、鉄鋼など幅広い。
エンジニアリング事業は、加熱装置と計測・制御機器だ。セラミックスの顧客が持つ工場の熱処理工程に、炉や機器を納める。利益率は 1 桁で、セラミックスより低い。
稼ぐ構造は単純だ。顧客の工場が動く限り、ボールや炉の部材は消耗して買い替えになる。装置の販売より、消耗品の繰り返しの注文が安定した土台になる。
原料のジルコニア粉末は東ソーから仕入れる。その東ソーはジルコニアビーズの競合でもある。原料を握る相手と競う立場は、値決めの弱さにつながる。
優良さと弱いところ
事業の質は「堅いが、強くはない」と見る。
強みは 3 つある。使うほど減る消耗品なので注文が繰り返し来ること。顧客ごとの仕様に合わせるオーダー対応で、材料を入れ替えにくいこと。そして純現金 36 億円、自己資本比率 75% の財務だ。赤字の年は過去 20 年でほとんどなく、不況でも潰れにくい。
弱みは値決めだ。ジルコニアビーズの世界では、サンゴバン、東ソー、東レなど上位 6 社で約 6 割を占めるとされるが、ニッカトーのシェアは開示がなく確かめられない。原料を東ソーに頼る点も交渉力を削ぐ。
資本効率も平凡だ。ROE は過去 10 年の中央値で 5.4%。現金が利益の割に貯まり、資産が働いていない。
2026 年 3 月期はセラミックスの利益が 8 割増えた。ただ前の期が不調だった反動の面が強い。筆者は「実力が一段上がった」と読むには、あと 1〜2 期の確認が要ると考える。
経営は資本政策に前向きとは言いにくい。現金を貯め込む姿勢のほうが目立つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の源は、電子部品の工場の稼働量だ。積層セラミックコンデンサは、スマホ、車の電装化、AI サーバーで使う個数が増えている。粉砕用のボールの需要は、この生産量にほぼ連動する。
ジルコニアビーズの世界市場は、調査会社の予測で 2021 年の 4.4 億ドルから 2028 年に 8.0 億ドル(名目で年 8% 台)とされる。ただし新しい予測ではなく、物価の分も含む。実質で見ると、年 4〜5% 程度の伸びだ。
競合は多い。サンゴバン・ジルプロ、東ソー、東レ、ドイツのジグムント・リンドナーが並ぶ。さらに中国・韓国の安価な品が、汎用の品質帯で値段を下げにくる。
電子部品は 2〜3 年周期で在庫調整が入る。2020 年と 2021 年の営業利益率は 4% 台まで落ちた。景気の波は今後も続く。
エンジニアリング側は、国内の設備投資に左右される。電気炉や計測機器は、顧客の更新需要が中心で、市場は大きく伸びない。
筆者は、数量は実質で年 2% 台の伸び、価格は物価並みの上昇で足りると見る。電子部品の需要拡大と、競合の追い上げが、おおむね相殺する。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、性向は 3 割ほど。自社株買いの実績はなく、中期計画も数字を示していない。中期計画は「配当性向の維持・向上」を掲げる。
純現金は 5 年で 10 億円から 36 億円に積み上がった。この間の純利益の 7 割が貯まった計算だ。
政策保有株の縮減も掲げるが、規模と時期は開示がない。売却益を見込む数字は置かない。
M&A は目立った実績がない。中期計画は他社との資本提携も選択肢に挙げており、小さな連携が出る可能性はある。
筆者は、貯まった現金が株主に戻る道筋が見えない点を最も気にする。余剰とみる 25 億円は、戻り方を半分に割り引いて価値に入れた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中期計画が示す 2031 年 3 月期の営業利益率 15% は、決して夢ではない。2026 年 3 月期にはセラミックスの利益が 8 割増え、営業利益率は 9.4% まで回復した。不採算品の整理と生産効率の改善が続けば、さらに伸びる余地がある。
需要側の追い風も強い。積層セラミックコンデンサは、AI サーバーと車の電装化で個数が増え続ける。粉砕用のボールは消耗品なので、生産が増えれば確実に買い替えが増える。顧客ごとに仕様を合わせるオーダー型の強みは、品質に厳しい車載向けで効く。
財務も強い。純現金は 36 億円、自己資本比率は 75%。政策保有株の縮減や資本提携が進めば、資本効率の改善と株主還元の拡大が同時に起こりうる。
実際、PBR を改善する方針を会社が公言している。10 年後に営業利益率 13% 近く、売上 240 億円に届く筋書きは十分にありうる。
景気の谷でも赤字にならなかった実績があり、守りの強さを考えれば、現在の利益水準が谷の底ではなく平均に近づく可能性もある。
慎重な見方
営業利益率 15% は、過去 12 年で一度も届いていない水準だ。最高は 10.9%、最低は 4% 台。景気の山で稼ぎ、谷で落ちる繰り返しだった。2026 年 3 月期の回復も、前の期が悪かった反動が大きい。
値決めの力も弱い。ジルコニアの原料は東ソーに頼り、その東ソーは競合でもある。中国・韓国の安い品が汎用の領域で値崩れを起こせば、利益率は一気に下がる。
顧客も限られる。積層セラミックコンデンサの大手メーカーが、内製化や仕入れ先の分散を進めれば、数量が落ちる。電子部品は 2〜3 年ごとに在庫調整があり、谷では営業利益が半分以下になる。
財務が堅いのは事実だが、貯まった現金は戻ってこない。配当は 3 割で、自社株買いは無い。現金は利息 2% 程度で眠り、ROE を押し下げ続ける。
この会社は、堅い代わりに伸びない。10 年後の稼ぎは今の値段の裏づけにならない。
配当を増やす余地はあるが、会社は性向の具体的な数字を示していない。計画の言葉だけで価値を上乗せするのは危うい。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は需要と計画だが、計画は実績の外にあり、値決めの力も弱い。慎重な見方のほうが根拠が厚いと判断した。現金の戻り方も 0.5 と控えめに見た。確率は中立を 4 割弱に置き、やや悲観を楽観側よりやや多く置いた。悲観は競合の追い上げと数量の減少が重なる形で 1 割とし、楽観は 15% 目標に近づく形で 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,593 円190 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 343 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 991 円118 億円、今との差 −13.8%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,954 円353 億円 | 527 円63 億円 | +202.7% | +11.7% | 348 円42 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,130 円255 億円 | 418 円50 億円 | +121.6% | +8.3% | 561 円67 億円 |
| 中立 | 38% | 1,640 円196 億円 | 351 円42 億円 | +73.2% | +5.6% | 757 円90 億円 |
| やや悲観 | 20% | 762 円91 億円 | 243 円29 億円 | −12.7% | −1.3% | 201 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 532 円64 億円 | 159 円19 億円 | −39.9% | −5.0% | 69 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,593 円190 億円 | 343 円41 億円 | +68.3% | +5.3% | 1,936 円231 億円 |
今の株価時価総額 1,150 円137 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 15% 目標に近づき、消耗品の需要拡大も重なる 利益 22 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 2,954 円353 億円
中期計画がほぼ実現する。積層セラミックコンデンサの生産が AI サーバーと車の電装化で伸び、ジルコニアボールの数量は 10 年で 6 割増える。車載向けの高品質な品で単価も物価を少し上回り、セラミックスの利益率は 14% まで上がる。
エンジニアリングも電気炉と計測機器の更新が続き、利益率は 9% に届く。売上は 240 億円、営業利益は 30 億円を超える。
不採算品の整理と生産の効率化が数字に表れ、ROE も 10% に近づく。ただ中期計画の 15% には届かない。過去の最高が 10.9% で、全社の利益率は 13% 近くにとどまる。
現金は配当と一部の設備投資に回り、政策保有株の縮減も進む。株主還元は利益の 4 割に引き上がる。
- セラミックス事業:数量 131(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 184 億円・営業利益 26 億円。車載向け高品質品で単価も上振れ
- エンジニアリング事業:数量 40.6(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。更新需要が好調
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 15.17 倍、時価総額 353 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の利益率 15% に近づく筋書き。計画は過去の実績を大きく超えるので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 電子部品向けの伸びで、利益率が 1 割台前半へ上がる 利益 17 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,130 円255 億円
電子部品の需要が実質で年 3% ほど伸び、数量は 10 年で 4 割増える。2026 年 3 月期の利益の改善が定着し、セラミックスの利益率は 12.5% になる。
値段は物価並みに上がり、顧客への転嫁もおおむね通る。エンジニアリングは更新需要で 2 割増え、利益率は 8.5% を保つ。
売上は 255 億円を超え、営業利益は 24 億円ほどになる。ROE は 9% 前後と、資本コストに届く。
中期計画の 15% には届かないが、実績の最高を超える改善が起きる。配当性向も 4 割に上がり、株主還元が少し厚くなる。
- セラミックス事業:数量 115(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 156 億円・営業利益 20 億円。改善が定着
- エンジニアリング事業:数量 37.5(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。更新需要で 2 割増
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 13.84 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子部品の生産増と不採算品の整理が効く筋書き。2026 年 3 月期の改善が続く場合で、楽観側ではやや厚く置いた。
中立 38% 数量は小幅に伸び、物価並みの値上げで増収増益が続く 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,640 円196 億円
ジルコニアボールの数量は、電子部品の生産増を受けて 10 年で 25% 増える。価格は物価並みの 1.34 倍だ。セラミックスの利益率は 11.5% と、過去の山よりわずかに高い水準に定着する。
エンジニアリングは更新需要を中心に 1 割増え、利益率は 7.5%。売上は 184 億円、営業利益は 19 億円になる。
減価償却は今の設備分が物価で増えないので、利益率の足を引っぱらない。一方、新しい設備の投資は建築費の上昇で膨らむ。償却を超える分は現金から出ていく。
貯まる現金はあまり使われず、ROE は 7.5% と資本コストにわずかに届かない。稼ぎは伸びるが、会社の価値を押し上げるほどではない。
- セラミックス事業:数量 103(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 138 億円・営業利益 16 億円。数量は小幅増、物価並みの値上げ
- エンジニアリング事業:数量 34.4(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。更新需要中心で 1 割増
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 196 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が実質で年 2% 台伸び、利益率が過去の山の 10% 台前半にとどまる筋書き。最も筋が通るので最大に置く。
やや悲観 20% 競合の値下げに押され、数量は横ばいで利益率が元に戻る 利益 8 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 762 円91 億円
中国・韓国勢と東ソーの値下げ圧力で、物価ほど値上げできない。値段は 10 年で 1.25 倍にとどまる。数量は横ばいだ。
セラミックスの利益率は 8.5% と、2025 年 3 月期の水準に戻る。エンジニアリングも国内の設備投資が伸びず、利益率は 6% に落ちる。
営業利益は 11 億円で、今とほぼ同じだ。物価の分だけ費用が増える中で、売上は 4 割増えても利益は増えない。
現金の積み上がりは続くが、谷の年に取り崩す分が出る。ROE は 5% を割り、現金の価値も 4 分の 3 に減らして見る。
- セラミックス事業:数量 82.2(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 103 億円・営業利益 9 億円。値下げ圧力で価格は物価に届かず
- エンジニアリング事業:数量 29.7(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。国内設備投資が伸びない
倍率:ROE が 5% を割り k に届かないので、上限の 12.1 倍よりかなり低く、稼ぎの水準に見合う 8.5 倍に置いた。
確率:競合の値下げで価格が物価に届かず、利益率が 2025 年 3 月期並みに戻る筋書き。景気の波と競合を考え 2 割に置いた。
悲観 10% 競合の追い上げと数量減が重なり、稼ぐ力が細る 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 532 円64 億円
電子部品の大手が粉砕工程を内製化し、仕入れ先も分散する。ジルコニアボールの数量は 10 年で 25% 減り、価格も物価に届かず 1.1 倍にとどまる。
中国・韓国勢の低価格品が汎用の領域を奪い、セラミックスの利益率は 5% に落ちる。エンジニアリングも利益率 3% まで細る。
営業利益は 4 億円ほどで、稼ぐ力は大きく縮む。事業に使わない現金は戻らないまま谷で取り崩され、半分に減る。
稼ぐ力から見た価値は低いが、工場・土地・純現金など売れる資産が下支えになる。時価総額は今の自己資本の半分を割り込む。
- セラミックス事業:数量 61.6(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 68 億円・営業利益 3 億円。内製化と競合で数量減・低価格化
- エンジニアリング事業:数量 25.0(対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。受注が細り利益率も低下
倍率:稼ぐ力は低く、PER で測ると価値が小さすぎる。工場・土地・純現金などの売れる資産を床とし、今の自己資本 141 億円に PBR 0.45 倍を掛けた。
確率:競合の追い上げ・顧客の内製化・数量の減少が重なる構造的な負け。小型で単一用途に偏るので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セラミックス事業
積層セラミックコンデンサの製造工程で使うジルコニアボール、発熱体、酸素センサ、炉心管など。消耗品の繰り返し注文が中心。
| 数量対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.2 | 1.00 | 82 | 8 |
| 10 年後 中立 | 103 | 1.34 | 138 | 16 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 82.2 億円・利益 8.3 億円(開示)。数量・単価の開示がないため、対象市場(実質)× 当社シェアの売上相当額を数量とし、値段の指数を 1.0 とした推定。市場規模とシェアの開示はない。
エンジニアリング事業
加熱装置(電気炉)と計測・制御機器。顧客の熱処理工程向けの設備と、その更新・保守。
| 数量対象市場(実質・億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.3 | 1.00 | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 34.4 | 1.34 | 46 | 4 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 31.3 億円・利益 2.4 億円(開示)。数量・単価の開示がないため、売上相当額を数量とし、値段の指数を 1.0 とした推定。
リスクと懸念
電子部品の在庫調整
積層セラミックコンデンサは 2〜3 年周期で在庫調整が入る。粉砕用ボールの数量も連動して落ち、2021 年 3 月期は営業利益率が 4% 台まで下がった。景気の谷では利益が半分になりうる。
競合の値下げ・中国勢
東ソー、サンゴバンのほか、中国・韓国の低価格品が汎用領域に入る。品質の差が縮むと値段が下がり、数量も奪われる。
原料の仕入れ先が競合
ジルコニア粉末の主要仕入れ先は東ソーで、同社はジルコニアビーズの競合でもある。原料の値上げ・供給の制約が出ると、利益が圧迫されやすい。
主要顧客の内製化
積層セラミックコンデンサの大手が粉砕工程の内製や仕入れ先の分散を進めれば、数量が落ちる。顧客が限られる点は脆さになる。
貯まる現金が戻らない
純現金は 36 億円で時価総額の 2 割強。配当は 3 割ほど、自社株買いはなく、現金は利息 2% 程度で眠る。ROE を押し下げ続け、少数株主には使い道を決められない。
設備投資の費用の膨らみ
今の設備の減価償却は物価で増えない。一方、更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を超える分は現金から出ていく。会計の利益は増えて見えても、現金は細る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 11% を超える
- 2026 年 3 月期の改善が実力と確かめられる。中立の利益率を上げ、割安の側に動く。
- 自社株買いや大きな増配が出る
- 貯まった現金が株主に戻る道が開く。余剰現金の戻り方を 1.0 に上げ、価値が上がる。
- 大手の積層セラミックコンデンサメーカーが粉砕工程を内製化する
- 数量が落ちて悲観の筋書きに寄る。確率を引き上げる。
- 他社との資本提携や買収が出る
- 規模と技術の補完が進めば価値が上がる。TOB なら現金の分も含めた買い取りになりうる。
- 中国・韓国勢が高品質品を安く出す
- 価格が物価に届かず、利益率が下がる。やや悲観の筋書きに寄る。
見ておくもの
- セラミックス事業の利益率(四半期)
- 中期計画の進み具合(2028 年 3 月期の営業利益 12.4 億円)
- 積層セラミックコンデンサの世界生産と在庫調整の動き
- 配当性向と自社株買いの有無
- 政策保有株の縮減の実績
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER、g 4%、k 7.75%、ROE が k に届かない時の上限 1÷k)から置いた。今の PER や PBR、同業の倍率は見ていない。結果として中立の時価総額は今とほぼ同じになり、10 年の期待が k に届かないため割高に出た。今の株価に寄せたのではなく、事業の利益で決めた。リースの会計基準の変更は影響が小さいため、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→15.17 倍・やや楽観 PER 11→13.84 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。