結論
日本ヒュームは、下水道のコンクリート管と建物の杭をつくる会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。事業は堅く、財務も厚い。ただ 10 年で見込める利益の伸びに対し、今の時価総額は先を織り込みすぎている。
稼ぎの柱は下水道だ。ヒューム管でおよそ 2 割のシェアを持ち、売上の 4 割弱で営業利益の大半を稼ぐ。下水道管の老朽化は確実に進む。需要の底は固い。
杭は景気と建築の着工に左右される。利益率は 1 割に届かない。会社は 2026 年に中部の杭メーカー、マナックを買い、全国シェアを 8% から 11% へ引き上げた。規模は取れるが、利益が増えるかはこれからだ。
財務は強い。自己資本比率は 75% で、手元は借金より現金が多い。ただ新計画は 5 年で投資 150 億円、還元 96 億円を見込み、営業の稼ぎを使い切る形だ。余ったお金を分けて足す余地は小さい。
10 年後の中立は営業利益 45 億円、自己資本利益率(ROE)7.7% だ。資本コストの 7.75% とほぼ同じで、利益が伸びても価値は大きく積み上がらない。確率で重みをつけた本質価値は今より 2 割ほど低い。5 段階では「やや割高」に入る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「悪くない会社を、適正な値段より少し高く買う」ことになる。
事業は 10 年後も確実に存在する。下水道は止められない。借金がなく、危ない局面が少ない。持ち続けること自体に、不安は小さい。
ただ、株主が受け取る利益は小さい。工場の更新と買収に、稼ぎの大半が回る。ROE は資本コストに届かないか、並ぶ程度だ。堀も、価格を自分で決められるほど深くない。安く買えば報われるが、高く買うと報われにくい。
経営の資本配分は、まだ試験の途中だ。構造改革で利益率を戻した実績は評価できる。一方で、増資的な自己株式の処分と買収を同じ時期に行った。利益が増えるかは、2 年ほど見ないとわからない。
安全域は、今の値段にはほとんどない。手元の純現金は 91 億円で、時価総額の 17% にあたる。ただ、5 年の計画で使い道がほぼ決まっている。悲観でも会社は傷つかないが、株価が大きく崩れる場面で買うなら、話は別だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 3 本ある。基礎事業と下水道関連事業、それに太陽光発電と不動産だ。
基礎事業は、ビルや倉庫、橋の土台になるコンクリートの杭をつくり、打ち込む仕事だ。2026 年 3 月期の売上は 243 億円、営業利益は 13 億円。利益率は 5% 強にとどまる。民間の建築投資に連動し、競争も厳しい。
下水道関連事業は、ヒューム管や推進管、合成鋼管、マンホールなどのプレキャスト(工場でつくる)製品を売る。売上は 144 億円と基礎の 6 割だが、営業利益は 26 億円と倍の稼ぎだ。利益率は 18% に近い。会社の稼ぎ頭はここだ。
ヒューム管は、遠心力で固めた鉄筋コンクリートの管だ。重く、遠くへ運べないので、全国の工場の近くで売る。顧客の中心は国や自治体で、下水道工事の入札で受注する。
残りは太陽光発電と不動産の賃貸で、売上は 15 億円ほどと小さい。
全社の営業利益は 25 億円。事業の合計 39 億円から、本社の費用などを引いた額だ。経常利益は 38 億円と営業利益を上回る。受取配当などの営業外の収入が 10 億円以上あるためだ。
2027 年 3 月期の会社予想は、売上 455 億円、営業利益 29 億円だ。マナックの売上が丸 1 年分加わる。
優良さと弱いところ
堀は下水道にある。ヒューム管は、国内でシェア約 2 割の首位だ。管の重さが商圏を区切り、近くの工場を持つ会社が有利になる。自治体の仕様に合わせた製品の実績が積み上がっており、新規の参入は簡単ではない。
低炭素コンクリート「e-CON」は、下水道協会の認定資器材の第 1 号になった。国が脱炭素を求める中で、仕様に入りやすい武器になる。
ただ、堀は強い堀と言えるほど深くない。入札で決まる官需の仕事で、値段は発注者が握る。杭では旭コンクリート工業、ジャパンパイル、アジアパイルホールディングス、三谷セキサンなどと競い、利益率が上がりにくい。
利益の質は悪くない。直近 10 年に赤字の年はなく、営業利益率は 4% から 6% で安定してきた。借金もほぼない。
弱い点は資本効率だ。ROE は直近 10 年の中央値が 5.9% で、資本コストを超えた年はまだない。自己資本に厚い現金をためてきた結果でもある。
経営は、構造改革で利益を戻した実績がある。2023 年に始めた前の計画は、売上と営業利益の目標を 2 年早く達成した。買収防衛策をやめ、取締役の任期を 1 年に縮めた。株主に目を向ける姿勢は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
下水道の更新需要は、10 年先まで続く確実な追い風だ。耐用年数の 50 年を超える下水道管は、いまの約 5% から 10 年後に 16% へ、20 年後に 35% へ増えるとされる。傷んだ管を交換する工事は、これから年を追って増える。
ただ、需要がそのままヒューム管の数量にならない。老朽管の修繕は、管の内側に樹脂を張る更生工法で済ませる例が多く、新しい管を埋め替えない。さらに自治体の予算と、工事を担う人手が足りない。北陸の出荷量は 2024 年度に前年から 2〜3 割も減った例があり、数量の波は大きい。
人手の不足は、工場でつくるプレキャスト製品には追い風になる。現場で型枠を組み、コンクリートを打つ手間が省けるからだ。会社が 3 番目の柱として育てるのは、この分野だ。
杭は別の景色だ。新築の建物が減り、人口も減る。ただ都市の再開発と物流施設、データセンターが数量を支える。杭の数量は、10 年で緩やかな減少から横ばいの間と筆者は見る。
杭の業界は、再編が続いている。会社自身がマナックを買い、中部のシェアを 11% から 27% へ上げた。規模が大きいほど、工場の稼働と運送で有利になる。
セメントの値上げや電力の上昇は、製品のコストに響く。ただ官需は、物価を反映した積算で発注されるため、転嫁は比較的進みやすい。
資本政策と M&A
2026 年 3 月に、会社は自己株式 480 万株を処分し、約 58 億円を集めた。発行済み株式の 8.8% にあたり、既存の株主には薄まる。使い道はマナックの買収と、国土強靱化に向けた設備だ。
新しい計画は、5 年で投資 150 億円、株主への還元 96 億円を見込む。営業の稼ぎ 180 億円に対し、合計が 246 億円で、差の 66 億円は手元の現金から出る。現金は余っているのではなく、使い道が決まっている。
還元の目安は、利益の 5 割以上だ。配当は増やす方針で、2027 年 3 月期は前の期より増配する計画だ。
大株主に、太平洋セメントが 11.65%、旭コンクリート工業が 5%(資本・業務の提携)いる。買収防衛策はやめた。TOB(株式の公開買い付け)の可能性は、ゼロとは言えない。ただ、いずれも事業上の取引先で、筆者は直ちに動くとは見ていない。
買収で価値を壊さないかは、これからの検証だ。マナックの売上は 60 億円、営業利益は 1 億円ほどで、利益率は低い。2 社の統合で工場の稼働と販売を一本化できるかが焦点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
下水道の更新は、これから本格化する。老朽管は 20 年後に 35% へ増える。会社は、新たに 740km 分の計画が明らかになる可能性があると語るが、予想には織り込んでいない。需要が前倒しで出れば、利益は予想を超える。
プレキャストは、人手不足の中で選ばれる。会社は 2031 年の売上を 94 億円へほぼ倍にする計画で、九州の大型案件はすでに受注している。ここは利益率も高い。
杭は、マナックの取り込みで中部の工場の能力が増える。中部でのシェアは 27% へ、全国で 11% へ上がる。製造と施工を一体で運営できれば、利益率は 7% 台に届く。
財務に余裕がある。自己資本比率は 75% で、自社株の処分で 58 億円を調達した。景気が悪くなっても、買収の機会を取りに行ける。
最後に、構造改革の実績がある。前の計画の目標を 2 年早く達成し、今期も過去最高の売上と利益だ。ROE 8%、営業利益率 8% という新しい目標も、手が届く範囲にある。
慎重な見方
下水道の更新需要は、ヒューム管の数量にそのまま結びつかない。修繕は更生工法が主流で、管を埋め替えない。予算を握る自治体の財政は厳しく、人手も足りない。工事が回らなければ、出荷は伸びない。北陸の出荷が 2 割以上減った例もある。
杭は薄利だ。利益率は 5% 台で、同業との競争は厳しい。買収したマナックは、営業利益が 1 億円ほどしかない。規模は増えても、利益は増えるとは限らない。
会社の目標は、実績より高い。営業利益率 8% は、過去 10 年で一度も超えていない。ROE 8% 以上も、直近 10 年の最高 7.1% を超える水準だ。
株主への還元も限られる。5 年で投資 150 億円、還元 96 億円を使い、手元の現金は減る。自己株式の処分で既存株主には薄まった。営業の現金の流れは今期マイナスになり、支払条件の変更が一過性かどうかは見えない。
今の株価は、利益の約 16 倍に相当する。ROE が 6% 台で資本コストを下回る会社には、高い。
どちらに重みを置いたか
下水道の需要は確実で、強気の言い分には根拠がある。ただ、数量が管に直結しない点と、杭の薄い利益率という弱点は、10 年でも解消しにくい。慎重な見方がやや強いと判断した。確率は、中立を 4 割弱に置き、やや悲観を厚めにした。楽観は更新需要の前倒しと杭の改善が重なる必要があり、1 割に届かない。悲観は、官需の予算抑制と買収の失敗が重なる形で、1 割とした。堀が強くないので、利益の質の良さは倍率には反映しきれない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,592 円811 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 426 円217 億円)。 今の値に割り戻すと 1,091 円556 億円、今との差 +4.0%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,969 円1,512 億円 | 605 円308 億円 | +240.7% | +13.0% | 286 円146 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,311 円1,177 億円 | 526 円268 億円 | +170.4% | +10.5% | 567 円289 億円 |
| 中立 | 38% | 1,763 円898 億円 | 452 円230 億円 | +111.1% | +7.8% | 841 円429 億円 |
| やや悲観 | 24% | 762 円388 億円 | 324 円165 億円 | +3.5% | +0.3% | 261 円133 億円 |
| 悲観 | 10% | 399 円203 億円 | 236 円120 億円 | −39.5% | −4.9% | 63 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,592 円811 億円 | 426 円217 億円 | +92.4% | +6.8% | 2,019 円1,028 億円 |
今の株価時価総額 1,049 円534 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 更新需要が前倒しで立ち上がる 利益 88 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 2,969 円1,512 億円
下水道の更新が国の予算とともに前倒しで進み、会社が予想に織り込んでいない新規の管路計画も動き出す。ヒューム管とプレキャストの数量は、今より 5 割ほど増える。製品の値段は物価並みに上がる。人手不足で現場の工事が回らず、工場でつくる製品への切り替えが加速する。杭は、マナックの工場の能力を使って中部で受注を伸ばし、利益率は 7% 台に届く。全体の営業利益は 69 億円と、会社の 2031 年の目標 48 億円を物価分で補正した額も超える。ROE は 10% を超え、資本コストを上回る。ただ、これは過去 10 年で一度もなかった利益率で、最良の筋書きだ。
- 基礎事業(杭):数量 62.0(出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定))× 価格 6.90(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定))→ 売上 428 億円・営業利益 33 億円。数量 62(今の1.28倍)× 価格 6.9(今の1.38倍)、営業利益率 7.7%
- 下水道関連(ヒューム管・プレキャスト):数量 31.0(出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定))× 価格 9.60(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定))→ 売上 298 億円・営業利益 58 億円。数量 31(今の1.51倍)× 価格 9.6(今の1.37倍)、営業利益率 19.5%
- 太陽光発電・不動産:数量 60.0(発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定))× 価格 0.30(百万 kWh あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。数量 60(今の1.00倍)× 価格 0.3(今の1.20倍)、営業利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 88 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.58 倍、時価総額 1,459 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要の前倒し、プレキャストの拡大、杭の利益率の改善が同時に起きる必要があり、1 割に届かない。
やや楽観 20% 計画に近い形で伸びる 利益 72 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 2,311 円1,177 億円
新しい計画がほぼ実現する。下水道は更新の需要に支えられ、プレキャストが九州などの大型案件で伸びる。ヒューム管と合わせた数量は今の 4 割増しになる。杭は、マナックの統合で中部の工場の稼働が上がり、利益率が 7% に届く。全体の営業利益は 56 億円。会社の目標を物価で補正した額に近い。ROE は 9% 台で、資本コストをやや上回る。還元は利益の 5 割を保ち、配当が増え続ける。ただ、成長投資に回るお金も大きく、株主に残る利益は見かけより小さい。マナックの工場の稼働が上がり、プレキャスト事業が会社の第 3 の柱として育つ。国の予算が下水道に回り続けることが前提になる。
- 基礎事業(杭):数量 59.0(出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定))× 価格 6.80(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定))→ 売上 401 億円・営業利益 28 億円。数量 59(今の1.21倍)× 価格 6.8(今の1.36倍)、営業利益率 7.0%
- 下水道関連(ヒューム管・プレキャスト):数量 28.0(出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定))× 価格 9.50(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定))→ 売上 266 億円・営業利益 49 億円。数量 28(今の1.36倍)× 価格 9.5(今の1.36倍)、営業利益率 18.5%
- 太陽光発電・不動産:数量 60.0(発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定))× 価格 0.30(百万 kWh あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。数量 60(今の1.00倍)× 価格 0.3(今の1.20倍)、営業利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.49 倍、時価総額 1,115 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の新計画に近い姿。前の計画を前倒しで達成した実績があり、やや厚く置く。
中立 38% 下水道が支え、杭は薄利のまま 利益 58 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,763 円898 億円
下水道の更新は着実に進むが、管の数量は工事の人手と自治体の予算に抑えられ、緩やかな伸びにとどまる。プレキャストは増え、ヒューム管と合わせた数量は今の 25% 増。製品の値段は物価並みに上がる。杭は、マナックの分で数量が増え、市場の縮みと相殺して今の 15% 増にとどまる。利益率は 6% 台前半だ。全体の営業利益は 45 億円で、会社の 2031 年の目標を物価で補正した額の 8 割にあたる。ROE は 7.7% で、資本コストとほぼ並ぶ。還元は利益の 5 割で、残りは設備と買収に回る。会社は悪くなく、特別な超過成長もない 10 年だ。
- 基礎事業(杭):数量 56.0(出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定))× 価格 6.70(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定))→ 売上 375 億円・営業利益 24 億円。数量 56(今の1.15倍)× 価格 6.7(今の1.34倍)、営業利益率 6.4%
- 下水道関連(ヒューム管・プレキャスト):数量 25.7(出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定))× 価格 9.38(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定))→ 売上 241 億円・営業利益 41 億円。数量 25.7(今の1.25倍)× 価格 9.38(今の1.34倍)、営業利益率 17.0%
- 太陽光発電・不動産:数量 60.0(発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定))× 価格 0.30(百万 kWh あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。数量 60(今の1.00倍)× 価格 0.3(今の1.20倍)、営業利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.25 倍、時価総額 826 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:下水道の底堅さと杭の薄利を業界の見通しの中心で置いた形。会社の計画より少し低く見る。
やや悲観 24% 杭が薄利に沈み、官需も伸びない 利益 32 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 762 円388 億円
人手不足で工事が進まず、下水道の更新需要は予想ほど出荷に現れない。ヒューム管の数量は今よりわずかに増える程度で、値上げも物価に届かない。杭は、同業との値引き競争が続き、利益率は 5% に下がる。マナックの統合でも、規模のわりに利益が出ない。全体の営業利益は 25 億円と、今とほぼ同じだ。物価の分を引けば実力は落ちている。ROE は 5% 近くで、普通の建材会社として評価される。還元は配当が中心になり、投資は抑える。太陽光と不動産の収益は小さく、全体の穴は埋まらない。自治体の予算が厳しい年は、受注の取り合いで値段が下がる。会社は優良さを保つが、成長は止まり、物価に追いつくだけの利益で 10 年が過ぎる。
- 基礎事業(杭):数量 52.0(出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定))× 価格 6.50(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定))→ 売上 338 億円・営業利益 17 億円。数量 52(今の1.07倍)× 価格 6.5(今の1.30倍)、営業利益率 5.0%
- 下水道関連(ヒューム管・プレキャスト):数量 22.0(出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定))× 価格 9.00(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定))→ 売上 198 億円・営業利益 29 億円。数量 22(今の1.07倍)× 価格 9.0(今の1.29倍)、営業利益率 14.5%
- 太陽光発電・不動産:数量 58.0(発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定))× 価格 0.28(百万 kWh あたりの売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。数量 58(今の0.97倍)× 価格 0.28(今の1.12倍)、営業利益率 20.0%
倍率:事業の ROE は 5% 近く、資本コストを下回る。PER の上限は 1÷k の約 12.9 倍。杭の薄利と官需の伸び悩みから、上限の 6 割台半ばに置く。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 272 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:杭の価格競争と官需の予算抑制が重なる形。会社の目標が実績より高いことを踏まえ、厚めに置く。
悲観 10% 官需と杭の両方で構造的に負ける 利益 10 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 399 円203 億円
更生工法やプラスチック管にヒューム管が置き換わり、下水道の数量は 2 割近く減る。自治体の予算も伸びない。杭は、新築の着工減と同業の値下げで赤字すれすれまで下がる。買収したマナックの工場は稼働が上がらず、減損が出る。全体の営業利益は 7 億円まで落ち込む。もはや優良な建材会社ではない。それでも借金がなく、配当は最低限を守る。手元の現金と、太陽光・不動産の収益が会社の床になる。経営の立て直しとして、事業の売却や再編も現実になる。大株主の太平洋セメントや旭コンクリート工業との関係が、再編の形を決める。株主への配当は守られるが、自己株式の買い入れは止まる。設備の更新は先送りされ、競争力が一段と落ちる。
- 基礎事業(杭):数量 44.0(出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定))× 価格 6.20(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定))→ 売上 273 億円・営業利益 10 億円。数量 44(今の0.91倍)× 価格 6.2(今の1.24倍)、営業利益率 3.5%
- 下水道関連(ヒューム管・プレキャスト):数量 17.0(出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定))× 価格 8.40(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定))→ 売上 143 億円・営業利益 16 億円。数量 17(今の0.83倍)× 価格 8.4(今の1.20倍)、営業利益率 11.0%
- 太陽光発電・不動産:数量 50.0(発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定))× 価格 0.26(百万 kWh あたりの売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 50(今の0.83倍)× 価格 0.26(今の1.04倍)、営業利益率 10.0%
倍率:事業の ROE は 2% を割る。官需と杭の構造的な負けで、やや悲観(PER 8.5 倍)より高い PER にならないよう、床の純現金 91 億円とほぼ同じ約 95 億円(9.5 倍)に置く。純現金 91 億円は計画で使うが、床の資産として値が付くとみる。
確率:官需の予算抑制、更生工法への置き換え、杭の過当競争、買収の失敗が重なる形。長い期間なので 1 割とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基礎事業(杭)
ビルや倉庫、橋の土台になるコンクリート杭の製造と施工。マナックを含む。
| 数量出荷量(万トン/年、杭+基礎工事を製品重量に換算した推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円(施工を含む、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 48.6 | 5.00 | 243 | 13 |
| 10 年後 中立 | 56.0 | 6.70 | 375 | 24 |
取り方:売上 243 億円を、1 トンあたり約 5 万円(杭の製品と施工の平均と仮定)で割った推定値。開示は売上と営業利益のみ。マナックの売上 60 億円は 2027 年 3 月期から加わるので、数量はそのぶん増える。
下水道関連(ヒューム管・プレキャスト)
ヒューム管・推進管・合成鋼管・マンホールなど、工場でつくる下水道向けの製品。
| 数量出荷量(万トン/年、製品重量に換算した推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 7 万円(付加価値の高い製品を含む、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.6 | 7.00 | 144 | 26 |
| 10 年後 中立 | 25.7 | 9.38 | 241 | 41 |
取り方:売上 144 億円を、1 トンあたり約 7 万円(ヒューム管より高い合成鋼管・プレキャストの混合と仮定)で割った推定値。ヒューム管で国内シェア約 2 割を持つ。開示は売上と営業利益のみ。
太陽光発電・不動産
太陽光の売電と、不動産の賃貸。
| 数量発電・賃貸の取扱量(百万 kWh 相当、推定) | 価格百万 kWh あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.25 | 15 | 4 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.30 | 18 | 4 |
取り方:全社の売上 402 億円から基礎と下水道を引いた約 15 億円を、売電単価に近い 売電単価に近い値で割った推定値。営業利益 4 億円は、セグメントの合計から逆算した推定。
リスクと懸念
更生工法とのすみ分け
老朽した下水管の多くは、管の内側に樹脂を張る更生工法で直せる。管を埋め替える需要は、更新の総量ほど増えない。更生に流れる比率が高まれば、ヒューム管の数量は減る。
官需の予算と人手
顧客の中心は国と自治体だ。予算が増えても、工事を担う人手が足りなければ出荷に結びつかない。建設技能者は 2045 年までに半分近く減るとされる。北陸では出荷が 2 割以上減った年がある。
杭の薄利と買収の統合
杭の営業利益率は 5% 台で、同業との競争が厳しい。買収したマナックは営業利益が 1 億円ほどで、規模が増えても利益が増えない可能性がある。工場の統合と値引きの抑制が鍵になる。
目標と実績の差
新計画は営業利益率 8%、ROE 8% 以上を掲げる。過去 10 年で営業利益率は 6.3% が最高で、ROE が 8% を超えた年はない(最高は 7.1%)。計画の達成に失敗すれば、資本効率の改善を前提にした見方は崩れる。
資金繰りと希薄化
新計画は 5 年で、営業の稼ぎを上回る資金を使う。手元の現金は減っていく。自己株式の処分で、既存の株主は 8.8% 薄まった。支払条件の変更で営業の現金の流れが今期マイナスになった点も、確認が要る。
大株主との関係
太平洋セメントが 11.65%、旭コンクリート工業が 5% を持つ。買収防衛策はやめた。取引先が大株主であることは、販売や買収の自由度を縛る面と、再編に動く面の両方がある。
今後の分かれ目
- 会社が予想に入れていない新たな下水道の管路計画(740km 分)が、自治体の発注として具体化したら
- ヒューム管とプレキャストの数量が上振れる。楽観とやや楽観の確率を上げる。
- 2027 年 3 月期の営業利益が 29 億円の予想を上回り、杭の利益率が 6% を超えたら
- マナックの統合が効いている証拠になる。やや楽観の確率を上げ、杭の利益率の前提を引き上げる。
- ヒューム管の出荷が 2 年続けて 1 割以上減ったら
- 更生工法への置き換えが進んだとみる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 太平洋セメントや旭コンクリート工業が持ち株を増やす、または TOB の話が出たら
- 再編が現実になる。ただ、買収価格がそのまま本質価値になるわけではない。価格が事業の稼ぐ力を超えるかを確認する。
- 営業の現金の流れが 2 期続けてマイナスのままなら
- 支払条件の変更だけでは説明できず、運転資金が膨らんでいる。財務の余裕の見方を引き下げる。
- マナックまたは他の事業で減損が出たら
- 資本配分の質を疑う材料になる。確率を悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 全国ヒューム管協会の出荷量と、会社のヒューム管・プレキャストの受注
- 下水道の老朽管の更新予算と、更生工法と管の埋め替えの比率
- 杭の営業利益率とマナックの統合効果(中部での稼働)
- 営業の現金の流れと手元の純現金の推移
- 大株主(太平洋セメント・旭コンクリート工業)の持ち株の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から逆算せず、まず基礎・下水道・太陽光不動産の 3 つで数量と価格を積み、ROE から倍率を出した。中立の ROE は資本コスト 7.25% とほぼ同じで、PER は 1÷k の約 12.9 倍を上限に 8 割台前半に置いた。今の PER や PBR は参照していない。純現金は 91 億円で時価総額の 17% だが、5 年の計画で投資と還元に約 66 億円使う資金収支のため、余った現金として分けていない。悲観の床は稼ぐ力(純利益÷k)で置いた。リースは小さく、2028 年 3 月期からの新リース会計の影響は大きくないと見る。10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→16.58 倍・やや楽観 PER 11.6→15.49 倍・中立 PER 11.6→14.25 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。