結論
イトーヨーギョーは、神戸を地盤にコンクリート製品と空調設備の施工・販売を営む小さな会社だ。道路や下水の製品で売上の 6 割弱、輸入の空調機器と施工で 4 割弱、残りは賃貸マンションからなる。東証スタンダードと名証メインに上場している。
筆者の結論は、本質価値は今の時価総額をやや下回る、というものだ。前期は営業利益が 3.4 億円と、過去 12 年で最高の水準になった。ただ今期の計画は 2 億円で、第 1 四半期の営業利益は前年の 1 割に落ちた。
堅実さは本物だ。自己資本比率は 7 割で、現金が借入を 6 億円上回る。配当も出している。
一方で、国内のコンクリート製品は需要が細る市場にあり、規模の小さい会社が値決めの力を持つのは難しい。配当は利益の 2 割ほどにとどまる。資本の稼ぐ力は資本コストにわずかに届かない。
この会社は、悪くない事業を適正な値段で持つ会社だ。安全域を取れるほど安くはない。
前期の好調は、建築設備の大型案件と原価の落ち着きが重なった結果と見る。毎年繰り返せる利益ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は壊れにくいが、増えにくい。前期の ROE は 8% で、資本コストをわずかに超えた。ただ過去 10 年の中央値は 4% 台で、この水準が続く保証はない。
事業の中身は、規格品を地元の現場に運ぶ仕事だ。他社がまねできない強みとまでは言えない。値決めの力が乏しいので、物価が上がる世界では、利益は原価と賃金に押される。
資本の使い方は慎重だ。借入は少なく、配当も出す。安全域は、厚い現金と 7 割の自己資本にある。ただ現金の戻り方は、持株比率や株主の顔ぶれが見えにくいので、満額では数えない。
10 年持ちたい会社かと問われれば、答えは「悪くないが、買う値段次第」だ。今の値段には、その安全域が足りない。
現金は魅力だが、時価総額の 4 分の 1 でしかない。残りの 4 分の 3 を、資本コストをわずかに下回る事業に払うことになる。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。最大はコンクリート関連で、売上の約 6 割。道路の側溝や縁石などの道路関連製品、下水や排水に使うバイコンパイプ、マンホール、ゴムジョイントを作り、公共工事の現場に納める。
2 つ目は建築設備機器関連で、売上の約 4 割。海外メーカーの空調機器を仕入れ、施工と保守まで請け負う。受注は前期に 9 割近く増え、受注残も厚い。最大の販売先は神戸都市振興サービスで、売上の 1 割強を占める。
3 つ目は不動産関連で、兵庫県西宮市などの賃貸マンションを持つ。売上は 1.2 億円と小さいが、営業利益率は高く、安定した下支えになっている。
従業員は 124 人。売上の半分近くが公共工事とその周辺にあるため、年度の上期と下期で売上に偏りが出る。
製品の多くは規格品で、他社との違いが出にくい。差がつくのは運搬の距離と現場への対応の速さだ。
売上の中心は、道路管理者や自治体が発注する小さな工事の積み重ねだ。1 件あたりの金額は小さく、大型案件に頼らない代わりに、利益の振れも小さい。賃貸の収入は、その下支えになる。
優良さと弱いところ
優良さは中程度だ。強みは地盤と財務にある。神戸・阪神間で道路製品の現場に長く入り、運搬の距離が近いことが、重くて割に合わない製品の競争を和らげている。自己資本比率は 7 割で、倒れにくい。
弱みは値決めの力の乏しさだ。公共工事は入札で価格が決まり、セメントや電力の値上がりを売価に移せない年がある。過去 10 年の ROE の中央値は 4% 台で、資本コストを下回り続けてきた。
前期の営業利益率 8.5% は、建築設備の大型案件と原価の落ち着きが重なった山だった。ここから先、同じ利益率が続くとは見ていない。
経営は慎重で、設備投資も年 1 億円前後と控えめだ。中期計画では売上 40 億円、経常利益 2.5 億円を掲げ、前期に前倒しで達成した。目標は低めに置くタイプで、計画を信用できる反面、成長の意欲は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコンクリート製品は、長い縮小の途中にある。ヒューム管の需要はピークの 4 割も残っていない。杭の出荷も 20 年で半分近くに細った。人口が減り、新設の道路や下水が減る一方、老朽化した設備の更新が下支えする。国土強靱化の予算がその更新を後押ししている。
同業には、日本ヒュームやベルテクスなどの大手がある。大手は下水道の大型案件と周辺事業の買収で利益を稼ぐ。イトーヨーギョーのように近畿の小さな会社は、地元の道路製品と小口の注文で戦う。
空調施工は、築古ビルの設備更新が需要を作る。ただ施工の人手が足りず、受注が増えても売上に変えにくい。人件費は物価以上に上がる。
セメントと電力の価格が原価を左右する。両方とも物価で上がる前提で、売価に移せるかが利益率を決める。
供給側では、需要の縮小と原価高で、地場の小さなメーカーが数を減らす方向にある。需要が縮むなかで供給が減れば、生き残った会社は値上げをしやすくなる。ただ、その恩恵を受けるのは規模の大きい会社が先だ。
公共の発注は、価格だけでなく、納期と品質の実績も見られる。長く納めてきた会社に有利に働く面がある。
資本政策と M&A
配当は利益の 2 割ほどで、前期の配当性向は 20% だった。自己株式の取得はない。現金が借入を 6 億円上回り、自己資本比率は 7 割を超える。上場株式を 4 銘柄、1.6 億円持つが、全体の価値を左右する額ではない。
中期計画の最終年度(2027 年 3 月期)の目標は、売上 40 億円、経常利益 2.5 億円。前期に両方とも超えたが、今期の計画は経常 2.7 億円で、水準は維持する。
2024 年に名証メインにも上場した。M&A は会社の方針に出てこない。TOB の可能性は、現金が厚く規模が小さいため残るが、足元で動きはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
前期の営業利益は 3.4 億円と、前の期の 1.7 倍に増えた。コンクリート関連は営業利益が 3 倍になり、建築設備は受注が 9 割近く伸びて受注残が積み上がった。価格転嫁が進み、営業利益率は構造的に 1 段上がったとみてよい。
国土強靱化の予算は 5 か年加速対策で続き、老朽化した道路・下水の更新は今後 10 年の需要を支える。築古ビルの空調更新は、建築設備の追い風だ。
財務は鉄壁に近い。現金が借入を 6 億円上回り、自己資本比率は 7 割。時価総額の 4 分の 1 が現金で、事業が稼ぐ利益はその上に乗る。小さな会社が配当を続け、今期の計画を保守的に置くことも、慎重な経営の表れだ。
利益がもう 1 段伸びれば、本質価値は今の値段を上回る。
さらに、建築設備の受注残は 5 億円ほどあり、今期の売上の一部を支える。第 1 四半期の落ち込みは、納期の偏りで説明できる。
賃貸の不動産は、帳簿の価額が 17 億円ある。
慎重な見方
前期は建築設備の大型案件と原価の落ち着きが重なった山で、再現しにくい。今期の計画は営業利益 2 億円と、前期の 6 割に戻る。第 1 四半期の営業利益は前年の 1 割に落ちた。山のあとの平常化はすでに始まっている。
過去 10 年、純利益は 3 億円の赤字から 4 億円の黒字まで揺れ、ROE の中央値は 4% 台だ。資本コストを稼げない年のほうが多い。
公共工事は入札で価格が決まり、セメントと電力の値上がりを売価に移せない。主要な販売先への依存もある。同業の大手は買収で規模を広げ、地方の小さな会社は価格で押される。
現金は事業の運転資金と設備更新にも使われ、全額が株主のものとは言えない。持株比率が見えにくく、戻り方も不確かだ。本質価値は、今の値段を超えない。
加えて、時価総額が小さく、売買が薄い。株主が現金の戻りを求める力も弱く、現金は事業の中に滞留しやすい。
賃貸の不動産は、帳簿の価額 17 億円に対して利益は 0.4 億円にとどまり、資本の稼ぎとしては薄い。
どちらに重みを置いたか
前期の山と今期の計画の落差が大きく、慎重な側の言い分がやや強い。営業利益率は平常に戻る中立を最も厚くし、悲観側の確率を 3 割台後半に置いた。現金の厚さは認めて余った現金として足したが、戻り方は満額にしていない。結果として、本質価値は今の値段をやや下回る。
確率は、中立に 4 割弱、楽観側の合計を 25% に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,205 円36 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 240 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 707 円21 億円、今との差 −13.3%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,953 円58 億円 | 438 円13 億円 | +193.4% | +11.4% | 167 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,688 円50 億円 | 338 円10 億円 | +148.6% | +9.5% | 365 円11 億円 |
| 中立 | 38% | 1,433 円42 億円 | 253 円7 億円 | +106.9% | +7.5% | 641 円19 億円 |
| やや悲観 | 27% | 754 円22 億円 | 163 円5 億円 | +12.5% | +1.2% | 247 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 162 円5 億円 | 83 円2 億円 | −69.9% | −11.3% | 25 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,205 円36 億円 | 240 円7 億円 | +77.3% | +5.9% | 1,445 円43 億円 |
今の株価時価総額 815 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 国土強靱化と空調更新が重なり、利益率が定着 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,953 円58 億円
国土強靱化の予算が続き、道路関連の製品とマンホールの出荷が 10 年間ほぼ今の水準を保つ。原材料の値上がりを売価に移せる力が定着し、コンクリート関連の営業利益率は 9% 前後に乗る。
建築設備では、築 30 年を超えた建物の空調更新が神戸を中心に増える。受注残が積み上がり、施工の人手を確保できた分だけ売上が伸びる。
賃貸は西宮などの物件で安定した利益を出し続ける。会社全体の利益は今期の水準を名目で 4 割上回る。それでも、資本の稼ぐ力は資本コストをわずかに下回る。
小さな会社がここまで条件に恵まれるのは例外で、確率は 1 割に届かない。
楽観の利益でも、今の時価総額を数割上回る程度にとどまる。
- コンクリート関連:数量 85.0(年間の出荷(千トン、推定))× 価格 0.37(1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。出荷(千トン) 85、単価は今の 1.38 倍、営業利益率 9.0%
- 建築設備機器関連:数量 340(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。年間の案件数(推定) 340、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 8.0%
- 不動産関連:数量 100(賃貸の戸数(推定))× 価格 0.02(1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸の戸数(推定) 100、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 38.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化予算と空調の更新が 10 年続き、かつ値上げが定着するのは、小さな会社にとって条件がそろいすぎる。少数に置く。
やや楽観 18% 今期の好調がおおむね続く 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,688 円50 億円
コンクリート関連は出荷が 1〜2 割減にとどまり、値上げでその分を埋める。営業利益率は 8% で、前期の水準に近い。
建築設備機器は受注が前期に 9 割近く増え、受注残も厚い。空調の施工は人手がボトルネックで、価格は取れるが、数量は伸びにくい。
不動産賃貸は賃料の改定が物価に遅れ、利益は微増にとどまる。全体の利益は今期の水準を 1 割ほど上回る。
現金は少しずつ積み上がり、配当は利益の 3 割台で続く。
新しい事業や買収には手を出さず、本業の延長で稼ぎ続ける。
賃料も物価に遅れて上がるので、不動産の利益は微増にとどまる。
- コンクリート関連:数量 82.0(年間の出荷(千トン、推定))× 価格 0.36(1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。出荷(千トン) 82、単価は今の 1.35 倍、営業利益率 8.0%
- 建築設備機器関連:数量 320(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。年間の案件数(推定) 320、単価は今の 1.35 倍、営業利益率 7.0%
- 不動産関連:数量 100(賃貸の戸数(推定))× 価格 0.02(1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸の戸数(推定) 100、単価は今の 1.32 倍、営業利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の利益率の大幅な改善が、一時の追い風でなく構造に近いなら、この筋書きが現実になる。一定の確率を置く。
中立 38% 公共需要を守りながら、利益率は平常に戻る 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,433 円42 億円
コンクリート関連の出荷は、公共工事の横ばいと人口減が相殺し、10 年で 1 割ほど減る。単価は物価の上昇をほぼ映し、営業利益率は 6〜7% に落ち着く。
建築設備は空調の更新需要で案件数を保つが、人手の制約から伸びない。賃貸は賃料の改定が物価に遅れ、利益はほぼ横ばいで推移する。
この会社には、利益を一気に伸ばす材料も、一気に崩す材料もない。堅実に稼ぎ、現金を少しずつ積む。自己資本は 10 年で厚みを増すが、ROE は資本コストに届かない。
気がかりは、人手の不足で施工が詰まることと、公共予算の波だ。どちらも会社が制御できない。
賃貸の収入だけが、全体の利益を下から支える。
- コンクリート関連:数量 78.0(年間の出荷(千トン、推定))× 価格 0.36(1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。出荷(千トン) 78、単価は今の 1.32 倍、営業利益率 6.5%
- 建築設備機器関連:数量 300(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。年間の案件数(推定) 300、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 6.5%
- 不動産関連:数量 100(賃貸の戸数(推定))× 価格 0.02(1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸の戸数(推定) 100、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 35.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期は建築設備の大型受注と原価の落ち着きが重なり、営業利益率が過去 12 年で最高になった。今期の計画は営業利益で前期の 6 割に戻る。この平常化を中立にした。
やや悲観 27% 公共予算の減少と原価高で利益が削られる 利益 2 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 754 円22 億円
公共投資の予算が頭打ちから減少に転じ、コンクリート製品の出荷は 7 割台に落ちる。セメント価格と電力費の上昇を売価に移せず、営業利益率は 4% 台前半に下がる。
建築設備では、空調の施工を担う人手が足りず、受注があっても売上にならない。外貨建ての輸入商品の仕入れも、円安で利益が削られる。
賃貸の不動産は利益を保つが、全体を押し上げるほどではない。利益は今期の 6 割ほどに縮む。今期の計画がそのまま下振れし続ける形だ。
配当は据え置かれるが、現金の積み上がりは遅くなり、設備更新と運転資金に回る分が増える。
- コンクリート関連:数量 72.0(年間の出荷(千トン、推定))× 価格 0.35(1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。出荷(千トン) 72、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 4.5%
- 建築設備機器関連:数量 270(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。年間の案件数(推定) 270、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 5.0%
- 不動産関連:数量 95.0(賃貸の戸数(推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃貸の戸数(推定) 95、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 32.0%
倍率:ROE 3.4% が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=12.5 倍。利益が薄く、上限の 7.0 割の 8.8 倍に置いた。余った現金 3.0 億円は戻り方 0.75 を掛けて足した(悲観側は今の額の 0.75 倍)。
確率:コンクリート製品は国内の需要が長期で細っており、競合は同じ規格品で値引き競争を仕掛けてくる。価格を転嫁できない年が続く確率は高い。
悲観 10% 国内需要の縮小と値下げ競争で赤字に近づく 利益 0 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 162 円5 億円
公共投資の予算が大きく減り、大手のヒューム管・コンクリート製品メーカーが近畿で価格を下げて攻める。出荷は 6 割台に落ち、売価は物価に追いつかない。営業利益率は 1% 台に沈む。
建築設備は空調の更新需要が先送りされ、最大の販売先を失うと受注が急に細る。賃貸の不動産だけが、かろうじて黒字を支える。
会社は設備を縮め、人員を整理しながら現金を守る。ただ手元の現金は運転資金と設備の更新にも使われ、株主に戻る分は少ない。
結果として、利益は薄い黒字にとどまり、配当を続けるのがやっとになる。
手元の現金は、事業を守るために減っていく。
- コンクリート関連:数量 62.0(年間の出荷(千トン、推定))× 価格 0.32(1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。出荷(千トン) 62、単価は今の 1.18 倍、営業利益率 1.5%
- 建築設備機器関連:数量 220(年間の案件数(推定))× 価格 0.06(1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 220、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 2.0%
- 不動産関連:数量 90.0(賃貸の戸数(推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃貸の戸数(推定) 90、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 25.0%
倍率:ROE 0.9% が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=12.5 倍。優位を失った後は、市場の稼ぎでなく稼ぐ力(純利益÷k)で測り、上限の 7.0 割の 8.8 倍に置いた。余った現金 3.0 億円は戻り方 0.75 を掛けて足した(悲観側は今の額の 0.5 倍)。
確率:神戸を中心とする限られた地盤で、公共予算の減少と大手の攻勢が同時に来る複合の筋書き。実際に利益が出ない年は過去に何度もあり、確率を 1 割に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンクリート関連
道路関連製品、バイコンパイプ、マンホール、ゴムジョイントなどの製造・販売。公共工事向けが中心。
| 数量年間の出荷(千トン、推定) | 価格1 千トンあたりの売上(億円。セメント・電力・賃金の上昇を売価に移して物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 0.27 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.36 | 28 | 2 |
取り方:出荷の重さは開示されないので、売上 22.97 億円を、コンクリート二次製品の平均的な単価(1 トンあたり約 2.7 万円と推定)で割って約 8.5 万トンとした(推定)。市場全体は国内で縮小が続くため、数量は 10 年で 0.9 倍前後を中立とした。
建築設備機器関連
海外メーカーの空調機器の販売、施工、保守。神戸を地盤にする。
| 数量年間の案件数(推定) | 価格1 案件あたりの売上(億円。機器と人件費の上昇で物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.05 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.07 | 20 | 1 |
取り方:案件数は開示されないので、売上 15.18 億円を 1 件あたり約 500 万円と推定して約 300 件とした(推定)。受注は 15.9 億円で受注残 5.0 億円。
不動産関連
兵庫県西宮市などの賃貸マンションの賃貸・管理。
| 数量賃貸の戸数(推定) | 価格1 戸あたりの年間賃料(億円。賃料は物価に遅れて上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.02 | 2 | 1 |
取り方:戸数は開示されないので、売上 1.17 億円を 1 戸あたり月 10 万円弱と推定して約 100 戸とした(推定)。賃貸施設の帳簿価額は 16.9 億円。
リスクと懸念
公共工事への依存
コンクリート関連は公共工事向けが中心で、予算が減れば出荷が落ちる。入札で価格が決まるため、需要が減った年は値引きの圧力も強まる。国土強靱化の予算の延長が見通せない年は、業績が急に振れる。
セメント・電力の値上がり
原価の大半はセメント、骨材、電力で、物価を上回って上がる年がある。売価に移すのに 1 年以上かかることがあり、その間の利益率は薄くなる。
特定の取引先への依存
建築設備では、神戸都市振興サービスが最大の販売先で、売上の 1 割強を占める。この取引先の発注が減れば、建築設備の利益が大きく動く。
空調施工の人手
施工の人手が足りず、受注があっても売上にできない年が出る。人件費は物価より速く上がるおそれがある。
輸入商品の為替
空調機器は海外メーカーから外貨建てで仕入れる。円安になると原価が上がり、売価に移せなければ利益が減る。
利益の山と谷
前期の営業利益率 8.5% は過去 12 年で最高で、今期の計画は営業利益 2 億円に戻る。第 1 四半期の営業利益は前年の 1 割だった。前期の水準を前提にすると、利益を高く見すぎる。
今後の分かれ目
- 建築設備の受注残が、売上に変わる速度が上がったら
- 空調施工の人手の制約が緩んだ合図で、中立の営業利益率を上げてよい。やや楽観の確率を厚くする。
- セメントや電力の値上がりを、売価にすぐ移せなくなったら
- コンクリート関連の利益率は 4% 台に下がる。やや悲観の確率を上げる。
- 国土強靱化の予算が打ち切られたら
- 出荷は 1 〜 2 割落ち、利益率も下がる。悲観の筋書きに近づく。
- 自己株式の取得や増配が方針として出たら
- 現金の戻り方を 1.0 に引き上げる材料になる。余った現金の価値が増す。
- 第三者が TOB を発表したら
- 現金の厚さと小さな時価総額が買う側の動機になりうる。買付価格は本質価値の前後で比べるだけで、分析の前提は変わらない。
見ておくもの
- 建築設備の受注残と、売上への転換の速度
- コンクリート関連の営業利益率と、原価の動き
- 公共投資の予算(国土強靱化)
- 現金と借入、配当の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の倍率を見ず、ROE が資本コストに届かない会社の上限(1÷k)の何割かで置いた。中立の営業利益率は 6.7% と、前期の 8.5% の山を下回る。純利益÷営業利益は過去の中央値 0.93 に合わせた。減価償却は年 0.9 億円で、取得時の値段のまま。更新の投資は建築費の上昇で増えるので、償却を上回る分は現金が出る。余った現金は 3 億円とし、運転資金と季節の偏りを残した(リースの約束は大きくないとみる)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.25→12.12 倍・やや楽観 PER 10.62→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。