結論
ニッコーは金沢の白山に工場を構える老舗で、浄化槽などの住宅設備、電子部品向けのセラミック基板、ホテルや客船で使う業務用の食器の三つで稼ぐ。年の売上は 160 億円、2026 年 3 月期の営業利益は 7 億円と 15 年ぶりの高さになった。
筆者の結論は「やや割高」だ。立ち直りは本物で、とくにセラミック基板は受注が伸び、2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 4 割増えた。それでも、稼ぎの 7 割を占める浄化槽は新築の住宅に縛られ、市場は細っていく。自己資本は 28 億円と薄く、退職金の負債と借入を抱えて無配が続く。今の値段は、基板の伸びが長く続く姿をかなり先取りしている。
経営は創業家の三谷家が握る。2024 年に一族の防災機器の会社ヤマトプロテックへ新株を割り当て、債務超過すれすれの財務を立て直した。今は再建の途中で、株主に戻す段階ではない。
筆者が見ているのは、基板の伸びが一過性の受注で終わるのか、それとも利益の柱に育つのかだ。そこが見えるまで、値段に見合う安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ニッコーは「いい種を持つが、まだ畑が痩せている会社」だ。浄化槽の保守は毎年入る収入で、セラミック基板には他社がまねしにくい焼き物の技術がある。この二つは 10 年後も残るだろう。
一方で、本社の費用が重く、陶磁器はほとんど稼がない。自己資本は 28 億円しかなく、退職金の負債を差し引くと守りは薄い。過去 12 年のうち 5 年は営業赤字だった。
筆者はオーナー利益、つまり株主が受け取れる利益を、通常の税を払った後で年 5 億円前後と見る。基板が伸びれば 10 年で倍も見えるが、配当が無い以上、その果実は会社の中に積まれる。資本コスト 8.25% で 10 年を割り引くと、今の時価総額には届かない。基板の伸びが 3 年続き、配当が戻れば、評価は変わる。それまでは、事業の種の良さに比べて、株主の取り分の見通しはまだ心もとない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は住設環境機器だ。2026 年 3 月期の売上 110 億円で、全社の 7 割を占める。下水道の届かない家の排水をきれいにする浄化槽、台所の生ごみを砕いて流すディスポーザー、ホテルや集合住宅向けのシステムバス「バンクチュール」を作る。売った浄化槽の点検や改修を請け負う保守の仕事も大きく、毎年の安定した収入になる。
二つめはセラミック基板で、売上は 30 億円だ。食器づくりで磨いた焼き物の技術を、電子部品の土台に生かしている。レシートなどを刷る感熱プリンタの頭に使うグレーズ基板と、何層にも重ねた積層基板「セラフィーユ」が伸びている。利益率は 14% と三つの中で最も高い。
三つめが創業の陶磁器だ。ボーンチャイナの「NIKKO」の名で、ホテル、航空会社、大型の客船に業務用の食器を納める。売上は 20 億円だが、利益はほぼゼロだ。捨てられる食器を肥料に変える「BONEARTH」という小さな新事業もある。
本社の費用は年 9 億円と重く、三つの事業の利益を合わせた 16 億円から引くと、全社の営業利益は 7 億円になる。
優良さと弱いところ
事業の質はまだら模様だ。浄化槽は大手の数社で分け合う市場で、保守の契約が積み上がるので利益は安定している。2026 年 3 月期も値上げが通り、利益率は 10% を超えた。
セラミック基板は技術の強みがある。感熱プリンタの頭に使うグレーズ基板は作れる会社が限られ、受注は伸びている。ただ客は少数の電子部品の会社で、注文の波に振られやすい。
弱いのは陶磁器と財務だ。陶磁器は長く赤字と黒字を行き来した。財務は 2021〜2023 年に自己資本が 10 億円を割り、2024 年の増資でようやく立て直した。退職金の負債が 11 億円あり、自己資本比率は 28% にとどまる。
筆者は、過去 12 年で営業赤字が 5 年あった事実を重く見る。今の利益は 15 年ぶりの高さで、これを標準と見るには早い。利益の厚さが続くかは、あと数年の実績を見ないと判断できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
浄化槽の市場は、新しく建つ家の数に縛られる。新設の住宅は年 80 万戸を割り、人口の減る地方ほど細る。2026 年 3 月期も小型の浄化槽は前年より減った。一方で、古い「単独処理」の浄化槽を台所の水まで処理する合併式へ替える補助が国と自治体から出ており、置き換えの需要が下支えする。能登半島地震のような災害の復旧でも需要が立つ。
浄化槽は売ったあとの点検と清掃が法律で決まっており、保守の仕事は家の数が減っても急には減らない。値上げも通りやすい。
セラミック基板の市場は、電子部品の景気の波に乗る。感熱プリンタはレジや物流のラベル、医療の記録で使われ、ネット通販の荷物が増えるほど需要が増える。積層基板は車や通信の部品に使われ、京セラや村田製作所のような大手と同じ土俵になる。ニッコーは大手が手を出しにくい小さな量の特注で生きている。
業務用の食器は、ホテルと航空会社と客船の投資に左右される。訪日客の増加で国内のホテルの建設は続くが、量産品は中国や東南アジアの安い食器と競う。
三つの市場はどれも大きな伸びは望めない。ニッコーが伸ばせるのは、小さな量の特注で選ばれる基板の分野だけだと筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策は再建の途中にある。2024 年 9 月に創業家の三谷家が率いるヤマトプロテックへ 7.6 億円の新株を割り当て、薄かった自己資本を厚くした。株数は 24% 増えた。
配当は無配が続き、2027 年 3 月期も 0 の予想だ。業績の予想も 2019 年 3 月期から出していない。会社は短期の利益より長い目の経営を優先すると説明している。
外国人の株主はほぼおらず、個人が 6 割を持つ。創業家の支配は強く、外から買収される余地は小さい。配当の再開は、退職金の負債と借入を減らした後になると筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
セラミック基板は本物の成長の芽だ。2026 年 3 月期にグレーズ基板は 17%、積層基板は 21% 伸び、2027 年 3 月期の第 1 四半期は事業全体で売上が 4 割増え、利益は 3 倍になった。増産の体制も整えた。ネット通販のラベル、医療、車載の部品と、使い道は広がっている。基板の売上が 10 年で 2 倍になれば、利益は今の 4 億円から 10 億円を超える。
浄化槽も見た目ほど弱くない。古い単独処理の浄化槽を合併式へ替える補助が続き、保守の契約は積み上がる。値上げが通り、利益率は 10% を超えた。新築が減っても、保守と置き換えで売上は保てる。
財務の立て直しも進む。2024 年の増資と黒字で自己資本は 3 年前の 4 倍になった。退職金の負債も減り始めている。利益が積み上がれば、10 年で自己資本は 100 億円近くになり、配当の再開も見えてくる。
本社の費用を絞れれば、営業利益率は 7% 台まで上がる。そうなれば純利益は 13 億円を超え、今の時価総額は小さく見える。
慎重な見方
浄化槽は新築の住宅に縛られた市場で、新設の住宅は毎年減っていく。小型の浄化槽は 2026 年 3 月期も減った。下水道の整備が進む地域では、浄化槽そのものが要らなくなる。稼ぎの 7 割がこの事業にあるのは重い。
セラミック基板の伸びは、少数の客の注文の波に乗っているだけかもしれない。OA 機器向けは米国の関税で客の工場が減産し、売上が減った。感熱プリンタは電子の領収書の普及で長い目では細る。積層基板では京セラや村田製作所のような大手と戦う。
陶磁器は長く稼げていない。ホテルや客船の特注で一時的に売上が膨らんでも、量産品は安い輸入品に押される。本社の費用は年 9 億円と重く、三つの事業の利益の半分以上を食う。
財務も危うい。自己資本は 28 億円しかなく、退職金の負債が 11 億円ある。2021〜2023 年は自己資本が 10 億円を割り、増資で救われた。景気が崩れれば、また同じ道をたどる。無配が続く限り、株主の手元には何も届かない。
どちらに重みを置いたか
セラミック基板の伸びは強気の見方の言うとおり数字に表れているが、まだ 1 年半の実績だ。稼ぎの 7 割を占める浄化槽が細る市場にあることと、財務の薄さは慎重な見方の指摘が重い。筆者は基板の伸びを中立に一部入れつつ、確率はほぼ真ん中に置き、楽観側をわずかに厚くした。中立は浄化槽の縮小を基板の伸びが補う姿だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 382 円111 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 36 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 197 円57 億円、今との差 +11.2%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 953 円276 億円 | 86 円25 億円 | +486.9% | +19.4% | 83 円24 億円 |
| やや楽観 | 22% | 659 円191 億円 | 62 円18 億円 | +307.6% | +15.1% | 159 円46 億円 |
| 中立 | 38% | 365 円106 億円 | 35 円10 億円 | +125.9% | +8.5% | 152 円44 億円 |
| やや悲観 | 21% | 88 円25 億円 | 10 円3 億円 | −44.4% | −5.7% | 21 円6 億円 |
| 悲観 | 11% | 28 円8 億円 | 0 円0 億円 | −84.4% | −17.0% | 3 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 382 円111 億円 | 36 円10 億円 | +135.9% | +9.0% | 417 円121 億円 |
今の株価時価総額 177 円51 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 基板が 2 倍に育ち、利益率は 7% 台へ 利益 14 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 953 円276 億円
セラミック基板が利益の柱に育つ。感熱プリンタの頭、車載や通信の積層基板と使い道が広がり、出荷は 10 年で 2 倍になる。単価も物価に近く上がり、売上は 70 億円を超え、利益率は 16% に上がる。
浄化槽は数量を保つ。単独処理からの置き換えと保守の契約が新築の減少を埋め、値上げで利益率は 12% に上がる。陶磁器も客船とホテルの特注で小さく黒字を保つ。
本社の費用は物価並みに増えるが、売上の伸びで薄まる。全社の営業利益は 19 億円、純利益は 13 億円台になる。配当は再開し、10 年で 25 億円を戻す。自己資本は 100 億円近くに厚くなる。
- 住設環境機器:数量 10,970(浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定))× 価格 140(1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む))→ 売上 154 億円・営業利益 18 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 12.0%
- 機能性セラミック商品:数量 2,026(セラミック基板の出荷(万枚・推定))× 価格 360(1 枚あたりの売上(円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 12 億円。数量 2.00 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 16.0%。電子部品の単価は量産で下がる力が働き、物価ほど上がらない
- 陶磁器:数量 98.0(業務用食器の出荷(万個・推定))× 価格 2,800(1 個あたりの売上(円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.39 倍、時価総額 250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:基板の受注の伸びが 10 年続き、浄化槽の値上げも定着する姿。直近の受注の勢いは本物なので 8% と少し厚くした。
やや楽観 22% 基板が 7 割伸び、浄化槽は保守で踏みとどまる 利益 10 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 659 円191 億円
セラミック基板の出荷は 10 年で 7 割増える。グレーズ基板と積層基板が伸び、OA 機器向けの減少を補う。利益率は 15% を保つ。
浄化槽は新築の減少で数量が少し減るが、保守と置き換え、値上げで売上は 140 億円台に増える。利益率は 11% だ。陶磁器は細々と黒字を保つ。
営業利益は 14 億円、純利益は 10 億円近くになる。配当は 5 年目ごろに再開し、10 年で 18 億円を戻す。自己資本は 85 億円になり、退職金の負債の重さは薄れる。
創業家の支配は変わらないが、財務が厚くなれば借入の利息も減る。
- 住設環境機器:数量 10,531(浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定))× 価格 137(1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む))→ 売上 144 億円・営業利益 16 億円。数量 0.96 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 11.0%
- 機能性セラミック商品:数量 1,722(セラミック基板の出荷(万枚・推定))× 価格 354(1 枚あたりの売上(円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 9 億円。数量 1.70 倍・価格 1.18 倍・営業利益率 15.0%。電子部品の単価は量産で下がる力が働き、物価ほど上がらない
- 陶磁器:数量 93.1(業務用食器の出荷(万個・推定))× 価格 2,740(1 個あたりの売上(円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.39 倍、時価総額 169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の基板の伸びが半分ほどの勢いで続く姿。第 1 四半期の受注の伸びを見て 2 割強に置いた。
中立 38% 中立:基板が 4 割伸び、浄化槽の縮小を補う 利益 6 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 365 円106 億円
浄化槽は新築の減少で数量が 1 割弱減る。保守と置き換えが下支えし、値段は物価並みに上がるので、売上は 135 億円になる。利益率は 10% だ。
セラミック基板の出荷は 10 年で 4 割増えるが、電子部品の単価は物価ほど上がらない。売上は 50 億円近くになり、利益率は 13% に落ち着く。陶磁器は利益がほぼゼロのままだ。
本社の費用は物価とともに 12 億円近くに増える。全社の営業利益は 8 億円台、通常の税を払った純利益は 6 億円弱だ。配当は後半に小さく再開し、10 年の還元は 10 億円にとどまる。自己資本は 70 億円台に厚くなる。
- 住設環境機器:数量 10,092(浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定))× 価格 134(1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む))→ 売上 135 億円・営業利益 14 億円。数量 0.92 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 10.0%
- 機能性セラミック商品:数量 1,418(セラミック基板の出荷(万枚・推定))× 価格 345(1 枚あたりの売上(円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 6 億円。数量 1.40 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 13.0%。電子部品の単価は量産で下がる力が働き、物価ほど上がらない
- 陶磁器:数量 88.2(業務用食器の出荷(万個・推定))× 価格 2,680(1 個あたりの売上(円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.15 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:基板の伸びと浄化槽の縮小が打ち消しあう、いちばん起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 21% 基板の伸びが止まり、利益が 3 割に縮む 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 88 円25 億円
セラミック基板の受注の伸びは数年で止まる。OA 機器向けの減少と、積層基板での大手との競争で、出荷は 10 年で 1 割しか増えない。単価も上がらず、利益率は 9% に落ちる。
浄化槽は新築の減少が速まり、数量は 15% 減る。値上げは物価に届かず、利益率は 9% だ。陶磁器は小さな赤字に戻る。
本社の費用は削るが、全社の営業利益は 3 億円ほどにとどまる。純利益は 2 億円で、配当はほとんど出せない。自己資本はゆっくりとしか厚くならず、退職金の負債が重く残る。
創業家は支え続けるが、株主の取り分は 10 年でほとんど増えない。
- 住設環境機器:数量 9,325(浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定))× 価格 130(1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む))→ 売上 121 億円・営業利益 11 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 9.0%
- 機能性セラミック商品:数量 1,114(セラミック基板の出荷(万枚・推定))× 価格 324(1 枚あたりの売上(円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍・価格 1.08 倍・営業利益率 9.0%。電子部品の単価は量産で下がる力が働き、物価ほど上がらない
- 陶磁器:数量 78.4(業務用食器の出荷(万個・推定))× 価格 2,500(1 個あたりの売上(円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 -1.0%
倍率:ROE 4.7% が k 8.25% を下回るので PER は 1÷k=12.5 倍まで。稼ぐ力(純利益 2.0 億円 ÷ k = 25 億円)を上限に、利益の振れを見て 10.0 倍に置く。PBR は 0.47 倍で中立の 0.82 倍を下回る。
確率:基板の伸びが一過性の受注で終わり、新築の減少が速まる姿。過去 12 年で営業赤字が 5 年あった歴史から 2 割強に置いた。
悲観 11% 悲観:浄化槽が細り、財務が再び痩せる 利益 −4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 28 円8 億円
下水道の整備と新築の減少で浄化槽の数量は 3 割減る。値上げも通らず、利益率は 5% に落ちる。
セラミック基板は電子の領収書の普及と大手との競争で出荷が 3 割減り、赤字になる。陶磁器は量産から手を引き、特注だけの小さな事業に縮む。
本社の費用を削っても、全社は年 4 億円の営業赤字に沈む。赤字が続き、自己資本は 10 億円まで減る。2021〜2023 年と同じく、創業家の支援なしには財務が持たない状態に戻る。配当はもちろん出ない。
増資で生き延びても、既存の株主の取り分はさらに薄まる。保守の契約だけが細く残る。
- 住設環境機器:数量 7,679(浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定))× 価格 120(1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む))→ 売上 92 億円・営業利益 5 億円。数量 0.70 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 5.0%
- 機能性セラミック商品:数量 709(セラミック基板の出荷(万枚・推定))× 価格 300(1 枚あたりの売上(円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 -2.0%。電子部品の単価は量産で下がる力が働き、物価ほど上がらない
- 陶磁器:数量 29.4(業務用食器の出荷(万個・推定))× 価格 2,300(1 個あたりの売上(円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.30 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 -10.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は測れないので、売れる資産の床で置いた。今の自己資本 27.7 億円に PBR 0.289 倍を掛けた 8 億円。
確率:新築の減少と基板の失速、陶磁器の赤字が重なる負け筋。2021〜2023 年に自己資本が 10 億円を割った前例から 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住設環境機器
浄化槽・ディスポーザー・システムバス「バンクチュール」の製造販売と、浄化槽の保守・改修。
| 数量浄化槽などの設置・保守(基・1 基 100 万円換算の推定) | 価格1 基あたりの売上(万円・名目、保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,970 | 100 | 110 | 12 |
| 10 年後 中立 | 10,092 | 134 | 135 | 14 |
取り方:数量の開示は無い。小型から大型までの浄化槽、ディスポーザー、システムバス、保守を、1 基あたり 100 万円の売上に換算した基数で数え、売上 109.7 億円から 10,970 基と推定した。物価と値上げの分は 1 基あたりの売上に入れる。営業利益 11.64 億円は開示のセグメント利益。
機能性セラミック商品
感熱プリンタの頭に使うグレーズ基板、積層基板「セラフィーユ」、アルミナ基板、OA 機器向けの部品。
| 数量セラミック基板の出荷(万枚・推定) | 価格1 枚あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,013 | 300 | 30 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,418 | 345 | 49 | 6 |
取り方:数量の開示は無い。基板 1 枚あたりの売上を平均 300 円(小さなアルミナ基板から積層基板までの平均)と置き、売上 30.4 億円から 1,013 万枚と推定した。電子部品の単価は物価ほど上がらないので、中立の価格は 10 年 1.15 倍とする。営業利益 4.24 億円は開示。
陶磁器
ボーンチャイナ「NIKKO」などの業務用の食器を、ホテル・航空会社・客船・海外へ。
| 数量業務用食器の出荷(万個・推定) | 価格1 個あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 98.0 | 2,000 | 20 | 0 |
| 10 年後 中立 | 88.2 | 2,680 | 24 | 0 |
取り方:数量の開示は無い。業務用の食器 1 個あたりの売上を平均 2,000 円と置き、売上 19.6 億円から 98 万個と推定した。2026 年 3 月期は大型客船の特注で売上が膨らんだ年。営業利益 0.41 億円は開示。
リスクと懸念
新築の住宅の減少
浄化槽は下水道の届かない家に付くので、新しく建つ家の数に売上が縛られる。新設の住宅は年 80 万戸を割り、地方ほど細る。稼ぎの 7 割がこの事業にあり、置き換えと保守だけでは減少を埋めきれないおそれがある。
基板の客の注文の波
セラミック基板の客は少数の電子部品の会社だ。2026 年 3 月期は米国の関税で OA 機器向けが減った。今の受注の伸びが一過性で終われば、全社の利益の伸びの源が消える。
薄い自己資本と退職金の負債
自己資本は 28 億円、退職金の負債は 11 億円ある。2021〜2023 年は自己資本が 10 億円を割り、創業家の会社への増資で立て直した。景気が崩れれば、また増資で株主の取り分が薄まりうる。
重い本社の費用
本社の費用は年 9 億円で、三つの事業の利益の半分を超える。物価とともに人件費が上がれば、事業の利益が伸びても全社の利益は増えにくい。
創業家の支配と無配
創業家の三谷家の支配が強く、配当は無配が続く。業績の予想も出さない。株主に戻す時期と額を外から促す手立ては乏しい。
今後の分かれ目
- セラミック基板の売上が 2 年続けて 2 割以上伸びたら
- やや楽観の筋書きに確率を移せる。基板が浄化槽の縮小を補う利益の柱になりつつある証拠だ。
- 配当を再開したら
- 財務の立て直しが終わった合図で、利益が株主に戻り始める。本質価値は上に動く。
- 小型の浄化槽の出荷が年 5% 超の減少を続けたら
- 中立より下の筋書きに近づく。保守と置き換えだけで稼ぎの 7 割を支えるのは難しい。
- 退職金の負債と借入の合計が 15 億円を下回ったら
- 財務の弱さが薄れ、悲観の確率を下げられる。
- 陶磁器が再び赤字に戻ったら
- 本社の費用と合わせて全社の利益を削る。事業の縮小や売却の判断が問われる。
見ておくもの
- セラミック基板の四半期ごとの売上とセグメント利益
- 小型浄化槽の出荷と新設住宅の着工戸数
- 退職金の負債と有利子負債の残高
- 配当の再開の有無
- 本社の費用(調整額)の推移
倍率と資本コストの決め方
セグメントの数量は開示が無いので売上から推定し、物価は価格の側に入れた(基板は物価ほど上がらず 1.15 倍)。倍率は ROE と k 8.25% から正当化 PER で置き、中立 10.5 倍は今の PER(約 6 倍、繰延税金資産の計上で純利益が膨らんだ数字)や PBR 1.8 倍を見て決めていない。悲観は今の自己資本と売れる資産から床を出し、過去の PBR の底は使っていない。純利益の起点は一過性の税の戻りを外して 5.2 億円にならした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→18.39 倍・やや楽観 PER 12→17.39 倍・中立 PER 11→15.15 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。