結論
ヤマウホールディングスは、九州で側溝や護岸ブロックなどのコンクリート製品を作り、水門や堰、橋の継ぎ目の装置まで手がける公共土木の会社だ。筆者の結論は「適正圏」。利益は景気と公共予算の山にあると承知のうえで、山をならして置いても今の値段とほぼ釣り合うと見る。
この会社の過去10年は、営業利益率が2%台から16.7%まで上がった。資材高を販売価格へ移し、製造原価と販管費を削った結果だ。山であるのは確かで、筆者も中立の利益率を12%台まで下げて置いた。会社自身の中計目標(12.5%)とほぼ同じ水準である。
それでも、10年後の中立の純利益は今の9割台が残る。配当と現金の積み上がりを含めた確率加重の価値は、今の時価総額134億円を5%ほど上回る程度だ。時価総額は純利益の6倍と低いが、その低さは山の利益への割り引きである。ROEは16%、自己資本比率は61%で、借金もこなせる。
怖いのは九州の過当競争と、2030年度で一巡する国土強靱化の予算だ。悲観の筋書きでは利益率は2%まで戻り、値段は今の4割に下がる。確率は1割強に置いた。上振れは大きいが下振れも深く、期待の年率は資本コストに届かない。値段の低さを、筆者は妥当な割り引きと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「山にいるが、値段が山を織り込んでいない」例と映る。公共事業は10年後も必要だが、強い堀がある商売ではない。だから筆者は、利益率を半分に戻す筋書きまで丁寧に置いた。
株主の手元に残るオーナー利益は、営業利益35億円から設備更新と運転資金を引いた額で、前期の営業キャッシュフローは16億円だった。純利益22億円との差は運転資金の増加などによるもので、利益の現金化は遅れている。数字を鵜呑みにしないほうがよい。
資本の使い方は評価できる。借金を減らし、純現金を積み、配当を毎年増やしている。ただ、配当性向30%は低く、余った現金の戻り方には不安が残る。
安全域は薄めだ。時価総額は純利益の6倍、自己資本の1倍に届かないが、利益率が山にある事業だからこその値段である。利益が3分の1に縮んでもPERは18倍ほどに収まるので、大やけどは避けられる。10年先を予測しづらい公共頼みの事業としては、買い手に有利でも不利でもない、妥当な値段と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
持株会社の下に、ヤマウ、中外道路など連結8社がぶら下がる。九州を主な市場に、連結売上は212億円。従業員は811名だ。
稼ぎ頭はコンクリート製品で、売上122億円、セグメント利益26億円。利益率は21%に達する。河川や港の護岸ブロック、道路の側溝、カルバート(地中の箱型の水路)などの土木製品と、舗装材やベンチなどの景観製品、水を通す蓋や誘導ブロックなどのレジンコンクリート製品を作る。
水門・堰は売上40億円、利益5.6億円。ダムや河川の水を止める大型の鋼製ゲートを製造・施工し、保守も請け負う。地質調査・のり面工事と構造物の点検・補修は合わせて売上28億円で、利益は4億円強。橋や高架道路の継ぎ目に使う伸縮装置は売上21億円と、特需が終わって前期に3割近く減り、のれんの償却もあって赤字だ。
売上の10%を超える取引先はなく、顧客は国・自治体・ゼネコンに広く分かれる。ただ、公共事業が主な買い手なので、国と自治体の予算に左右される。売上は上半期より下半期に偏る。設備投資は年7億円台で、減価償却費7.6億円と見合う。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と筆者は見る。コンクリート製品は重くて運搬費がかさむため、商圏は工場の近隣に限られる。九州に複数の工場を持つ地盤は強みだが、会社自身が九州圏は過剰供給構造と認めており、値段を自分で決められる事業ではない。
それでも利益率が上がったのは、資材・物流費の販売価格への転嫁と、製造原価の低減が進んだためだ。コンクリート製品の営業利益率は、前期に21%まで上がった。
資本効率は高い。過去10年のROE中央値は15%で、前期は16%。自己資本比率は61%で、現金49億円に対し有利子負債は33億円と、純現金が18億円ある。
経営の質は、中計「Plan C3」の運営に表れている。営業利益率12.5%・ROIC10%という目標を、最終年度の前に超えた。のれんを積んだ伸縮装置の特需終了や、橋の発注減は誤算だったが、全体の利益で吸収した。人件費の上昇や人材の確保が次の課題だ。平均年収は約500万円で、前期は6%下がった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場の大きさは、公共事業の予算で決まる。コンクリート二次製品は、道路・河川・港・下水など社会資本の建設と更新に使われ、需要は人口ではなく国と自治体の財布で動く。九州は災害が多く、防災・減災の需要が強い。
追い風は、国土強靱化だ。2025年6月に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画は、2026〜2030年度の5年間で事業規模おおむね20兆円強を投じる。老朽化した橋・水路の更新も重なり、数量は5年は底堅いと筆者は見る。
課題はその先だ。5年後の予算は未定で、人口減少で自治体の財政は細る。会社も中長期的には公共投資が縮むと有価証券報告書に書く。業界全体の出荷は、過去20年で大きく減ってきた。
競争の形は地域戦だ。九州には同業が多く、受注を取りに行くと値崩れが起きやすい。直近は資材高で各社が値上げに動き、価格転嫁が通ったが、需要が緩めば値引き競争が再燃しうる。数量は実質で年1%前後ずつ細り、価格は物価に届かない伸びにとどまる、と置くのが自然である。山の利益がそのまま続くとは考えにくい。会社が九州に拠点を絞る点も、需要の偏りにつながる。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向30%程度を目安にした安定配当だ。前期の配当は総額6.7億円で、配当性向は30.3%。今期は小幅の増配を予想する。加えて前期は1.5億円の自己株式取得を実施し、自己株式は約25万株に増えた。
配当性向が3割と低いので、現金は積み上がりやすい。会社はPBRが1倍程度で推移していることを課題とし、ROICを基準にした投資判断とIR強化を掲げている。
成長のための手は、M&Aと新分野だ。2020年に中外道路を傘下に収め、道路関連の事業を広げた。のれんの償却が利益を押し下げる局面もある。今は補強・補修分野への参入と、CO2を使った低炭素型コンクリート「CNEcon」の販売拡大に力を入れている。中長期の「VISION 2035」では、インフラ整備の総合ソリューションを目指す。
政策保有株は上場6銘柄で小さく、整理の方針を示している。10年の還元は、配当性向30%に自己株式取得を足した総還元性向で、純利益の合計の約36%に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率の上昇は構造的だ。資材と物流費の上昇を販売価格に移せる環境が定着し、製造原価の低減と販管費の削減も続いている。会社の中計目標(営業利益率12.5%)を2年前倒しで超え、最終年度にはさらに上回る見込みだ。
需要は国土強靱化で守られている。2026〜2030年度に20兆円強の事業規模が決まり、九州は豪雨災害のたびに水路や護岸の整備が急がれる。ヤマウは九州に工場網を持ち、運びにくい重い製品で地の利が効く。水門・堰の保守や、構造物の点検・補修という、老朽化が生む新しい需要も立ち上がっている。
財務も強い。自己資本比率は61%に上がり、現金は有利子負債を上回った。配当性向30%の低さは、裏返せば還元を増やす余地が大きいことを意味する。PBR1倍を課題と明言した会社が、自己株式の取得を実際に進め始めたのは前向きな変化だ。
そして値段は純利益の6倍にすぎない。利益が今の6割に縮んでも、PERは10倍ほどにとどまる。低成長でも、配当と現金の積み上がりだけで、十分なリターンになる。
慎重な見方
利益率16.7%は、この会社の歴史では異常値だ。2015〜2019年度の営業利益率は2〜4%台で、11年前の売上は同じ200億円台でも利益は4分の1以下だった。ここ4年の急上昇は、資材高の転嫁、大型案件、国土強靱化の特需が重なった山である。
九州は過剰供給の地域と会社自身が認めている。需要が緩めば値引き競争が再燃し、転嫁した値段はすぐ戻される。5か年加速化対策が終わった後、予算が一巡する2031年度以降の公共事業は読めない。
足元では、橋の継ぎ目の装置が特需の終了と万博の交通規制で3割近く減り、のれん償却を含めて赤字になった。水門・堰も繰越受注の減少で減収だ。前期は売上が7%減り、営業利益は横ばいを保ったが、これは原価低減で作った数字である。
また、営業キャッシュフローは16億円と純利益の7割にとどまる。配当性向30%は低く、余った現金は株主に戻らない可能性がある。値段が安いのは、市場が山の利益を割り引いているからだ。
どちらに重みを置いたか
事業の堀の浅さと山の利益という弱気の指摘は、利益率を12%台まで下げて置くことで取り込んだ。それでも価値が今とほぼ釣り合うのは、値段が純利益の6倍と低いからだ。確率は、中立を4割弱、やや悲観を3割弱に置いた。上振れ(楽観とやや楽観)は2割ほど、悲観は1割強。強気に傾けず、悲観側にも厚みを持たせた。結果は、わずかに割安側に寄った適正である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,837 円293 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,136 円69 億円)。 今の値に割り戻すと 3,014 円183 億円、今との差 +36.7%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 9,431 円571 億円 | 1,601 円97 億円 | +400.3% | +17.5% | 662 円40 億円 |
| やや楽観 | 16% | 7,740 円469 億円 | 1,403 円85 億円 | +314.7% | +15.3% | 1,463 円89 億円 |
| 中立 | 38% | 6,190 円375 億円 | 1,271 円77 億円 | +238.4% | +13.0% | 2,835 円172 億円 |
| やや悲観 | 28% | 2,078 円126 億円 | 842 円51 億円 | +32.4% | +2.8% | 818 円50 億円 |
| 悲観 | 12% | 820 円50 億円 | 809 円49 億円 | −26.1% | −3.0% | 195 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,837 円293 億円 | 1,136 円69 億円 | +170.9% | +10.5% | 5,973 円362 億円 |
今の株価時価総額 2,205 円134 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 強靱化が続き、転嫁と原価低減が定着 利益 30 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 9,431 円571 億円
国土強靱化の予算が2031年度以降も切れ目なく続き、九州の護岸・水路の更新が途切れない。同業の淘汰も進み、価格転嫁が定着して単価は物価を超える38%増。補強・補修や低炭素型コンクリート「CNEcon」が新しい稼ぎになり、営業利益率は15%台に乗る。伸縮装置は特需の反動を抜けて採算が戻る。純利益は30億円に達し、配当と自己株式取得で総還元性向は4割近くに高まる。会社は2035年のビジョンを達成圏に入れ、ROEは10%前後を保つ。売上は10年で3割強伸びて290億円に届き、会社の2035年ビジョンを現実の数字に近づける。ただし強い堀を持たない事業なので、ここまで揃う確率は低い。
- コンクリート製品:数量 40.0(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 4.20(1 万トンあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 30 億円。出荷量 1.0 倍、単価 1.38 倍、営業利益率 18%
- 水門・堰:数量 80.0(施工・保守の件数(件・年、推定))× 価格 0.68(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 8 億円。件数 1.0 倍、単価 1.36 倍、営業利益率 14%
- 地質調査・点検補修・その他:数量 600(施工・調査の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。件数 1.0 倍、単価 1.36 倍、営業利益率 13%
- 橋梁・高架道路用の伸縮装置:数量 1,000(出荷セット数(セット・年、推定))× 価格 0.03(1 セットあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。セット数 1.0 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 16.67 倍、時価総額 511 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化が2031年度以降も続き、価格転嫁が定着し、新分野(補強補修・低炭素コンクリート)も立ち上がる連続成功が要る。確度は低い。
やや楽観 16% 強靱化の需要に乗り、利益率14%を保つ 利益 25 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 7,740 円469 億円
強靱化の5年間は需要が堅く、その後も老朽化した橋・水路の更新が数量を支える。出荷量は10年で4%減にとどまり、単価は34%増。九州では同業の価格規律が保たれ、営業利益率は14%台を維持する。水門・堰は保守の積み上げで安定し、点検・補修は老朽化の追い風で伸びる。伸縮装置は特需の反動を抜けて小さな黒字に戻る。純利益は25億円で、配当性向30%に自己株式取得が加わる。売上は270億円前後まで増え、実質の数量は小さく縮む。それでも価格が物価並みに近く上がるため、利益の絶対額は今を上回る。会社が掲げる補強・補修への参入も、少しずつ収益に寄与する。
- コンクリート製品:数量 38.4(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 4.08(1 万トンあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 26 億円。出荷量 0.96 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 16.5%
- 水門・堰:数量 78.4(施工・保守の件数(件・年、推定))× 価格 0.66(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 7 億円。件数 0.98 倍、単価 1.32 倍、営業利益率 12.5%
- 地質調査・点検補修・その他:数量 588(施工・調査の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 5 億円。件数 0.98 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 11.5%
- 橋梁・高架道路用の伸縮装置:数量 900(出荷セット数(セット・年、推定))× 価格 0.03(1 セットあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。セット数 0.9 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 15.97 倍、時価総額 408 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化の5年が堅く、その後も更新需要が残る。会社の中計(12.5%)を上回る利益率が続く。実現の確度は中程度。
中立 38% 中立:数量は細り、利益率は12%台へ戻る 利益 21 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 6,190 円375 億円
出荷量は10年で8%減り、単価は物価より低い30%増にとどまる。売上は250億円まで増えるが、実質では縮む。営業利益率は12%台に戻り、過去の山の16.7%からは4ポイント下がる。コンクリート製品の利益率は21%から15%へ下がり、同業との値引き競争が一部で戻る。伸縮装置は小さな黒字に戻る。純利益は21億円で、今の水準をわずかに下回る。配当性向30%に自己株式取得を足し、総還元性向は36%を保つ。現金は積み上がり、自己資本は275億円に達する。今の16.7%という山の利益は戻らず、実質では2割ほど縮む。それでも純利益は今の9割台を保つ。
- コンクリート製品:数量 36.8(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 3.96(1 万トンあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 22 億円。出荷量 0.92 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 15%
- 水門・堰:数量 73.6(施工・保守の件数(件・年、推定))× 価格 0.64(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 5 億円。件数 0.92 倍、単価 1.28 倍、営業利益率 11%
- 地質調査・点検補修・その他:数量 570(施工・調査の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。件数 0.95 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 10%
- 橋梁・高架道路用の伸縮装置:数量 800(出荷セット数(セット・年、推定))× 価格 0.03(1 セットあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。セット数 0.8 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 15.13 倍、時価総額 314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化の恩恵は5年で薄れ、数量は細るが、価格転嫁の一部は残る。中計の目標水準(営業利益率12.5%)に落ち着く素直な筋書き。
やや悲観 28% 価格競争が戻り、利益率は7%台へ 利益 10 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 2,078 円126 億円
強靱化の5年が終わった後、予算は細る。九州の同業が稼働率を維持するために値下げに走り、転嫁した値段が戻される。コンクリート製品の出荷量は2割近く減り、営業利益率は9%台へ落ちる。水門・堰も繰越受注の減少で伸び悩む。伸縮装置は需要が戻らず、採算割れが続く。純利益は10億円まで縮み、配当性向30%は保つが自己株式取得は止まる。売上は名目では横ばい圏だが、実質では2割以上縮む。会社は新分野で補おうとするが、収益の柱になるには時間がかかる。のれんの減損が一部で出る可能性も高く、利益の質も下がる。公共工事の入札では、価格だけで競う場面がさらに増える。
- コンクリート製品:数量 32.8(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 3.77(1 万トンあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 12 億円。出荷量 0.82 倍、単価 1.24 倍、営業利益率 9.5%
- 水門・堰:数量 68.0(施工・保守の件数(件・年、推定))× 価格 0.61(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。件数 0.85 倍、単価 1.22 倍、営業利益率 7%
- 地質調査・点検補修・その他:数量 528(施工・調査の件数(件・年、推定))× 価格 0.06(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。件数 0.88 倍、単価 1.25 倍、営業利益率 6%
- 橋梁・高架道路用の伸縮装置:数量 650(出荷セット数(セット・年、推定))× 価格 0.02(1 セットあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。セット数 0.65 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 0%
倍率:ROE 4.1% が k 8% より低く、ためた利益は額面未満。PER の上限は 1÷k=11.8 倍で、やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 6 割の 7.0 倍に置いた。余った現金は今の 8 億円の 0.75 倍を足した。
確率:強靱化の後、予算が細り、九州の価格競争が再燃する。業界ノートの中立より厳しいが、過去の水準(2〜5%)よりは上に残る。
悲観 12% 構造的に負ける:予算減と値崩れ 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 820 円50 億円
強靱化の後、国と自治体の予算が大きく縮み、九州では同業が設備過剰を抱えて値崩れが起きる。出荷量は3割減り、単価は物価に届かず15%増にとどまる。営業利益率は2%まで落ち、過去の水準に戻る。のれんの減損が出て伸縮装置は撤退に近づく。配当は削られ、自己株式取得は止まる。ただ、借金は少なく、現金も残るため事業は続く。値段を決めるのは稼ぐ力ではなく、工場と運転資本の手残りである。水門・堰の保守や点検・補修といった小さな柱が会社を支えるが、全体の穴は埋まらない。会社は規模の縮小に合わせて人員と工場を絞り、固定費の削減を急ぐことになる。
- コンクリート製品:数量 28.0(出荷量(万トン・年、推定))× 価格 3.50(1 万トンあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 4 億円。出荷量 0.70 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 4%
- 水門・堰:数量 56.0(施工・保守の件数(件・年、推定))× 価格 0.56(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。件数 0.70 倍、単価 1.12 倍、営業利益率 2%
- 地質調査・点検補修・その他:数量 450(施工・調査の件数(件・年、推定))× 価格 0.06(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。件数 0.75 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 2%
- 橋梁・高架道路用の伸縮装置:数量 500(出荷セット数(セット・年、推定))× 価格 0.02(1 セットあたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。セット数 0.5 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 −5%
倍率:稼ぐ力は純利益 2 億円で、k 8% で割っても 26 億円と小さい。床は純現金の半分と、工場・用地・運転資本の回収を簿価の 3 割と見て 50 億円とし、今の自己資本 138 億円の 0.36 倍に置いた。
確率:強靱化の後に公共予算が大きく削られ、九州で値崩れが長引く複合の筋書き。2015〜2019年度の水準(利益率2%台)に戻る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンクリート製品
護岸ブロック、側溝、カルバート、舗装材、レジンコンクリート製品。九州の公共土木向け。
| 数量出荷量(万トン・年、推定) | 価格1 万トンあたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 3.04 | 122 | 26 |
| 10 年後 中立 | 36.8 | 3.96 | 146 | 22 |
取り方:売上121.7億円を出荷量40万トン(推定。開示なし)で割り、1 トンあたり約3万円とした。側溝・護岸ブロックは2万円台、景観・レジン製品は高く、平均で3万円前後と見た。営業利益はセグメント利益26億円(開示)。
水門・堰
水門・堰の製造・施工・保守。
| 数量施工・保守の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 0.50 | 40 | 6 |
| 10 年後 中立 | 73.6 | 0.64 | 47 | 5 |
取り方:売上40.0億円(開示)を年80件(推定)で割り、1 件あたり0.5億円とした。大型案件は数億円、保守は小口。件数は開示がなく推定。営業利益はセグメント利益5.6億円(開示)。
地質調査・点検補修・その他
地質調査、のり面工事、構造物の点検・補修、情報機器販売、不動産賃貸。
| 数量施工・調査の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.05 | 30 | 6 |
| 10 年後 中立 | 570 | 0.07 | 37 | 4 |
取り方:地質調査・土木工事19.7億円、点検・補修8.4億円、情報機器・不動産などの合計から連結売上と突き合わせた30.0億円を、年600件(推定)で割った。営業利益は同セグメント利益の合計5.7億円(開示を合算)。
橋梁・高架道路用の伸縮装置
橋や高架道路のつなぎ目に使う伸縮装置の製造・施工。
| 数量出荷セット数(セット・年、推定) | 価格1 セットあたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.02 | 21 | −2 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.03 | 21 | 1 |
取り方:売上20.7億円(開示、前期比27.6%減)を年1,000セット(推定)で割った。特需の終了と万博の交通規制で発注が減り、のれんの償却を含めたセグメントは2.0億円の営業損失(開示)。
リスクと懸念
公共事業の予算
売上の大半は国と自治体の予算で決まる。2026〜2030年度は国土強靱化の実施中期計画で守られるが、2031年度以降は未定だ。人口減で自治体の財政が細れば、数量は想定より速く縮む。
九州の過当競争
会社は九州圏を過剰供給の構造と有価証券報告書に書く。需要が緩むと値下げ競争が再燃し、転嫁した値段が戻される。利益率が2〜4%だった2019年度までの水準に戻る恐れがある。
利益率が山にあること
営業利益率16.7%は、この会社の歴史で最も高い。資材高の転嫁、大型案件、原価低減が重なった結果で、そのまま続くと考えるのは危うい。筆者は中立で12%台まで下げて置いた。
伸縮装置とのれん
橋・高架道路用の伸縮装置は特需が終わり、前期は3割近く減収して赤字になった。のれんや顧客関連資産の減損が出れば、利益が一度に大きく削られる。
キャッシュの質
前期の営業キャッシュフローは16億円で、純利益22億円を下回った。運転資金の増加などが利益の現金化を遅らせている。工事を伴う案件が増えるほど、運転資金の負担は重くなる。
人材と費用
工場の人材確保と賃金の上昇が続く。ヤマウ単体の平均年収は約500万円で、前期は6%下がっており、働き手の確保が課題になりうる。電力・セメントなど原材料価格の上昇を転嫁できない年もありうる。
今後の分かれ目
- 2031年度以降の国土強靱化の予算枠が第1次より小さくなったら
- 数量の減りを速め、やや悲観・悲観の確率を上げる。予算の議論は2029〜2030年度に動く。
- 営業利益率が2期続けて14%を超えたら
- 価格転嫁が定着したとみて、中立の利益率を上げる。楽観側へ確率を寄せる。
- 九州で同業が大規模な値下げや設備増強に動いたら
- 価格規律が崩れる兆しとみて、利益率を8%台へ下げて置き直す。
- 配当性向が40%を超える、または自己株式取得が拡大されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づける。割安の解消が早まる。
- 伸縮装置でのれんの減損が出たら
- 一過性の損失として純利益を見直す。営業利益の本体が崩れていなければ、価値は変えない。
- 補強・補修や低炭素コンクリート「CNEcon」の売上が1割を超えたら
- 新しい稼ぎが立ち上がったとみて、楽観・やや楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- 国土強靱化の予算枠(2031年度以降の議論)
- コンクリート製品のセグメント利益率(前期21%)
- 九州の同業の価格動向と受注の変化
- 営業キャッシュフローと純利益の差
- 配当性向と自己株式取得の方針
倍率と資本コストの決め方
数量は出荷量・件数の推定(開示なし)で、物価3%は価格に1.12〜1.38倍として入れ、二重がけはしていない。中立の営業利益率12.4%は会社の中計目標(12.5%)と同じで、前期の16.7%を山として下げて置いた。倍率は k 8%(基本7.5%+循環0.5%+値決め力0.5%)と、ROEが k 以下で出る上限1÷k=11.8倍の6〜9割で置いた。今のPER(約6倍)や過去のPBR、同業の値付けは使っていない。悲観の床は純現金と工場・用地の回収価値で、過去のPBRの底からは置いていない。新リース会計基準の形変更は、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→16.67 倍・やや楽観 PER 10→15.97 倍・中立 PER 8.5→15.13 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。