結論
ニチアスは、熱を断ち、漏れを保つ素材とエンジニアリングの会社だ。製油所や化学プラントの保温工事、ガスケット、自動車の遮熱部品、半導体装置向けのふっ素樹脂までを手がける。
筆者の結論はやや割高である。会社は堅実で、利益率も10年で大きく上がった。ただ、今の株価は半導体向けの急回復と高い利益率が長く続くことを前提にしている。倍率が普通の水準に戻るだけで、価値は今の値段を 2〜3 割下回る。
強みは、約3,000社の顧客に食い込んだ現場力と、複数の機能を重ねて提案できる材料力だ。稼ぎの柱は国内プラントの補修で、人口減の影響を受けにくい。景気や半導体の波が収益を左右するのは、高機能製品と自動車部品だ。
一方で、市場そのものは大きく伸びない。数量は10年で横ばいか微減とみて、伸びの大半を値上げと半導体の回復に頼る。会社の目標は営業利益率17%台で、筆者もそこへ近づくとみるが、その先は難しい。
過去には耐火被覆材の認定不正(2007年)という傷もある。品質への信頼を守る経営かどうかは、これからも点検が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い会社だが良い値段ではない。
まず事業の質を見る。10年後もこの会社はあるか。ある。補修の仕事は止まらず、顧客との関係も深い。堀は広がるのか。半導体向けの技術は強みになりうるが、プラント事業の堀は「現場と信頼」で、じわじわと効くものだ。急に広がることはない。
次に、株主のものになる利益、つまり事業を続けるための再投資を引いた後の利益を見る。工場や職人への投資は要るが、資本の食い方は軽い。自己資本利益率が10%台を保てるのは、その表れだ。
経営はどうか。還元の目安を引き上げ、戦略投資枠が余れば返すという姿勢は良い。ただ、2007年の認定不正という過去は、品質管理を経営の最優先に置き続けられるかという問いを残す。
最後は値段だ。今の株価は、半導体の急回復と17%台の利益率が続くことを前提にしている。そうなっても、10年後の価値は今の時価総額に届かない。これ以上に強い成長を信じない限り、安全域はない。値段が妥当と言える水準まで下がるのを待つ会社だと、筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「断つ・保つ」の技術だ。熱を断ち、流体の漏れを防ぐ。この二つを核に、5つの事業を持つ。
最大はプラント向け工事・販売だ。売上の約3割を占め、製油所・化学・発電所の配管や設備に断熱材を巻き、定期修理のたびに補修する。熟練の職人が要る仕事で、顧客との関係が長く続く。
工業製品は売上の約2割で、ガスケット(接合部の漏れ止め)と断熱材を産業界に幅広く売る。利益率は5事業の中でも高い。自動車部品は同じく約2割で、エンジンや排気まわりの遮熱材・防音材を、子会社を通じて作る。
高機能製品は約16%と小さいが、景気が良い時の利益の振れ幅が最も大きい。半導体装置向けのふっ素樹脂部材(ナフロンなど)、耐熱シール、フィルターが中身で、装置メーカーの投資に連動する。建材は鉄骨の耐火被覆材「マキベエ」などで、約11%だ。
海外はシンガポール、マレーシア、インドネシア、中国、タイ、メキシコ、チェコなどに拠点がある。中期計画は2026年度の海外売上を580億円に置く。液化水素の保冷・シール材や核融合(Helical Fusionとの提携)にも手を伸ばしている。
優良さと弱いところ
筆者がいちばん評価するのは、補修という「止められない仕事」を握っている点だ。プラントの断熱は壊れてから慌てて頼む類の工事ではなく、定期修理の計画に組み込まれる。顧客は施工の品質と納期を重く見て、安さだけでは乗り換えにくい。これが堀、つまり他社が簡単にまねできない強みの中身だ。
資本効率も良くなった。営業利益率は2015年3月期の7%台から15%前後まで上がり、自己資本利益率も13%台にある。自己資本比率は約78%、純現金も約470億円ある。財務は盤石だ。
弱みは三つある。第一に、自動車部品と建材は利益率が10%前後にとどまり、会社全体の平均を押し下げている。第二に、高機能製品は半導体の波で受注が大きく動く。26年3月期の軟調で、それは証明済みだ。第三に、2007年の耐火認定不正のように、品質の信頼に傷がつく事案を過去に起こしている。
総じて、良い会社だが、飛び抜けて独占的な会社ではない。競合のバルカーや日本ピラー工業も、同じシール分野で張り合っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は成長産業ではなく、保全と更新の産業だ。国内の製油・化学・鉄鋼などの設備は古く、止められないので補修が続く。ただ、人口減と設備の統廃合で、工事量が大きく増える理由は乏しい。
追い風は三つある。第一に、半導体工場の建設と装置投資だ。装置の中で薬液や腐食性ガスに触れる部材はふっ素樹脂が多く、投資が戻れば高機能製品の受注が戻る。第二に、水素やLNG、データセンターなど新しい設備の保温・保冷需要だ。第三に、人手不足による工事単価の上昇である。
向かい風は、自動車の電動化だ。排気系の遮熱部品はエンジン車ほど要らなくなる。国内の新築着工の減少も、建材には重い。
競合は事業ごとに違う。ガスケットやふっ素樹脂ではバルカーや日本ピラー工業、プラント保温工事では専業の工事会社が相手だ。断熱材の世界では海外の大手と競う場面もある。ただし、現場に職人を抱えて工事まで一貫して請ける会社は少ない。
今は循環のどこにいるか。半導体向けは谷を抜け、回復の入り口に立つ。会社は2026年8月に27年3月期の経常利益予想を505億円へ引き上げた。他の事業は堅調だ。だから足元の数字は良く見える。ただ、これは波の上り坂で、10年の平均ではない。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。中期計画は総還元性向50%以上、配当は自己資本に対して5%以上を目安にする累進配当を掲げる。自己株は発行済株式の10%を目安に持ち、適宜消却する。
資金の使い道は2年で1,420億円。通常の設備に660億円、成長投資に170億円、新設の戦略投資枠に290億円、還元に300億円と置く。戦略投資枠が余れば追加で還元するという。筆者は、この「余ったら返す」姿勢を評価する。
自己資本比率はこれ以上高めない方針で、現金を抱え込まない姿勢も明確だ。政策保有株は上場14銘柄あり、純資産に占める割合を減らす方針である。
M&Aは小粒な事業の補強が中心で、大型買収で価値を壊した過去は見当たらない。時価総額が約6,700億円ある会社で、10年以内に買収される可能性は高くない。気になるのは、戦略投資枠の使い道が半導体や水素の新規事業に偏ると、採算の読みにくい投資になることだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は構造的に上がった。営業利益率は2015年3月期の7%台から15%前後になり、会社の目標は17%台だ。値上げと工事の高度化が進んだ結果で、一度上がった利益率は簡単には戻らない。
半導体の追い風はこれから本格化する。AI向けの投資でウェハー工場の装置投資は高い水準が続くとみて、薬液や腐食性ガスに触れるふっ素樹脂部材の使用量が増える。会社自身も2026年8月に利益予想を引き上げ、高機能製品の回復が想定を上回ると説明した。
プラント事業は堅い。国内の石油・化学設備は老朽化し、補修は先送りできない。しかも液化水素や核融合、データセンターなど新しい保冷・保温の需要が出てくる。この分野で現場工事まで抱える会社は少ない。
還元も厚くなる。配当の目安は自己資本の5%に上がり、戦略投資枠が余れば追加で還元する。この姿勢が続けば、利益の伸びを上回って株主に返る。
自動車部品と建材も改善の途上にある。建材は構造改革で前期の利益が大きく伸びた。電動化向けの新しい部品が立ち上がれば、自動車の弱さは補える。会社の目標どおり営業利益率が17%台に乗れば、今の利益は3割以上増える。
慎重な見方
今の値段は先を見すぎている。半導体向けの回復は、26年3月期の落ち込みの反動が大きい。装置投資は2〜3年ごとに谷が来る。谷では高機能製品の利益が一気に縮み、全社の利益率も落ちる。
主力のプラント事業は、数量が伸びない。国内の石油・化学・鉄鋼は縮む方向で、工事量は増えにくい。利益の伸びは値上げと人件費の転嫁に頼ることになり、その余地には限りがある。
自動車部品は、電動化で排気まわりの部品が減る。建材も国内の新築が細る。両方で売上の約3割を占めるが、利益率は10%前後と低く、構造改革に追われる。
過去の傷もある。2007年の耐火認定不正と、石綿をめぐり被害者団体との交渉を拒んだという2012年の報道だ。品質や補償の問題が再び出れば、信頼と収益の両方が傷つく。成熟した素材会社として、倍率が10倍台前半に戻ることを、投資家は織り込むべきだ。
配当の目安を引き上げたのも、高い成長を描けないことの裏返しとも読める。使い道に迷うほど有望な投資先が見えない、ということだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。会社の質は認めるが、数量が伸びない事業が大半で、価値の伸びは値上げと半導体の回復に限られる。半導体の波は、中立でも半分程度しか長続きしないとみた。
確率は、中立を最大にしつつ、10年ではやや悲観と悲観に合わせて3割強を置いた。強気の見方が正しい場合の10年後の価値は、今の時価総額を4割ほど上回る水準にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,648 円6,847 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,192 円2,237 億円)。 今の値に割り戻すと 2,870 円5,387 億円、今との差 −13.0%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 6.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,032 円1.13 兆円 | 1,295 円2,430 億円 | +122.1% | +8.3% | 733 円1,375 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,118 円9,608 億円 | 1,282 円2,407 億円 | +94.0% | +6.9% | 1,472 円2,763 億円 |
| 中立 | 34% | 4,185 円7,856 億円 | 1,246 円2,338 億円 | +64.6% | +5.1% | 1,846 円3,466 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,715 円3,220 億円 | 1,171 円2,199 億円 | −12.5% | −1.3% | 606 円1,138 億円 |
| 悲観 | 12% | 701 円1,317 億円 | 817 円1,534 億円 | −54.0% | −7.5% | 182 円342 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,648 円6,847 億円 | 1,192 円2,237 億円 | +46.7% | +3.9% | 4,840 円9,085 億円 |
今の株価時価総額 3,299 円6,193 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 半導体が高水準を保つ 利益 552 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 6,032 円1.13 兆円
半導体の装置投資が10年を通じて高水準で推移し、世界のWFE市場が今の2.4倍まで広がる。ふっ素樹脂部材は新しい工程で使用量が増え、当社の取り分も0.25%まで広がる。高機能製品は売上が今の3倍を超え、利益率25%に乗る。
プラントは水素・LNG・データセンターの保冷需要が加わって、施工量が伸びる。補修の担い手不足で、高い単価を通せる立場も強まる。自動車は電動化の影響を新分野の部品で補い、台数の減少を抑える。
営業利益率は19%台に乗り、会社の目標を大きく超える。還元は厚く、自己資本利益率は13%台で保たれる。堀は広がるが、成長の鈍る10年後には、市場も高い倍率を長く払わない。
- プラント向け工事・販売:数量 108(施工量(万人日))× 価格 11(1人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 1,192 億円・営業利益 209 億円。数量 108、価格 1.38 倍、営業利益率 17.5%
- 工業製品:数量 3.3(出荷量(万トン換算))× 価格 245(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 809 億円・営業利益 174 億円。数量 3.3、価格 1.38 倍、営業利益率 21.5%
- 自動車部品:数量 1,000(納入先車両の台数(万台))× 価格 0.64(1台あたり売上(万円))→ 売上 639 億円・営業利益 80 億円。数量 1000、価格 1.24 倍、営業利益率 12.5%
- 高機能製品:数量 5.2(当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分)× 価格 207(円ドル150円×物価倍率)→ 売上 1,081 億円・営業利益 270 億円。数量 7.0、価格 1.38 倍、営業利益率 25.0%(市場は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質で置いた)
- 建材:数量 390(出荷・施工面積(万m2))× 価格 1.04(1m2あたり売上(万円))→ 売上 404 億円・営業利益 46 億円。数量 390、価格 1.38 倍、営業利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 552 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 6.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 2.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.52 倍、時価総額 11,323 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年にわたり半導体が高水準を保ち、利益率が上がり続ける姿。会社の取り分拡大と新分野が重なる必要があり、1割。
やや楽観 23% 新分野が縮小を打ち消す 利益 476 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 5,118 円9,608 億円
半導体は波を繰り返しながらも、10年で装置市場が2.1倍に広がる。高機能製品は売上が今の3倍強になり、利益率も23%台で安定する。
プラントは新しい設備の保冷・保温で、施工量が国内の縮小を打ち消す。自動車は電動化で台数が1割弱減るが、値下げの圧力は限られる。建材は新築の減少を耐火の需要で補う。
営業利益率は18%台。還元は計画どおりで、自己資本は緩やかに積み上がる。堅実な素材メーカーとして、倍率は10倍台前半が定着する。
会社の優良さ(顧客との関係、価格を決める力、資本効率)は保たれ、中計の目標を超える水準で安定する。ただし成長の大半は値上げと半導体で、数量の伸びは限られる。
- プラント向け工事・販売:数量 103(施工量(万人日))× 価格 11(1人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 1,121 億円・営業利益 188 億円。数量 103、価格 1.36 倍、営業利益率 16.8%
- 工業製品:数量 3.2(出荷量(万トン換算))× 価格 242(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 761 億円・営業利益 156 億円。数量 3.15、価格 1.36 倍、営業利益率 20.5%
- 自動車部品:数量 950(納入先車両の台数(万台))× 価格 0.63(1台あたり売上(万円))→ 売上 597 億円・営業利益 69 億円。数量 950、価格 1.22 倍、営業利益率 11.5%
- 高機能製品:数量 4.5(当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分)× 価格 204(円ドル150円×物価倍率)→ 売上 914 億円・営業利益 215 億円。数量 6.0、価格 1.36 倍、営業利益率 23.5%(市場は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質で置いた)
- 建材:数量 370(出荷・施工面積(万m2))× 価格 1.02(1m2あたり売上(万円))→ 売上 377 億円・営業利益 41 億円。数量 370、価格 1.36 倍、営業利益率 10.8%
倍率:事業の純利益 476 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 6.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 2.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍。全体の PER 20.18 倍、時価総額 9,608 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の成長と新分野が補修の縮小を打ち消し、目標に近い利益率を保つ姿。2割強。
中立 34% 成長と縮小が釣り合う 利益 398 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 4,185 円7,856 億円
半導体は成長を続けるが、波は避けられず、10年の平均では装置市場が1.9倍に広がる。高機能製品は今の2.5倍に育つが、他の事業は横ばいだ。
プラントは国内の縮小と新分野の拡大が釣り合い、施工量は横ばい。値段は物価並みに上がる。自動車は電動化で台数が1割減り、利益率は10%台前半にとどまる。建材も新築の減少で小さくなる。
営業利益率は16%台後半。会社の目標に近づくが、そこから先へは伸びない。成長は物価分が中心で、倍率は成熟した水準に収まる。会社は優良なまま、特別な割増は付かない。
堀は保たれ、顧客との関係も続く。ただ、利益を押し上げる原動力が物価と半導体に偏るため、10年後の株主の取り分は、今の時価総額に届かない。
- プラント向け工事・販売:数量 98.0(施工量(万人日))× 価格 11(1人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 1,051 億円・営業利益 168 億円。数量 98、価格 1.34 倍、営業利益率 16.0%
- 工業製品:数量 3.0(出荷量(万トン換算))× 価格 238(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 714 億円・営業利益 139 億円。数量 3.0、価格 1.34 倍、営業利益率 19.5%
- 自動車部品:数量 900(納入先車両の台数(万台))× 価格 0.62(1台あたり売上(万円))→ 売上 556 億円・営業利益 58 億円。数量 900、価格 1.20 倍、営業利益率 10.5%
- 高機能製品:数量 3.6(当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分)× 価格 201(円ドル150円×物価倍率)→ 売上 726 億円・営業利益 156 億円。数量 4.84、価格 1.34 倍、営業利益率 21.5%(市場は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質で置いた)
- 建材:数量 350(出荷・施工面積(万m2))× 価格 1.01(1m2あたり売上(万円))→ 売上 352 億円・営業利益 35 億円。数量 350、価格 1.34 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 398 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 6.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 2.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.68 倍、時価総額 7,835 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の成長と国内の縮小が釣り合い、利益率は目標近辺で止まる姿。3割台前半。
やや悲観 21% 取り分が下がり電動化も重なる 利益 271 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,715 円3,220 億円
半導体の波が深く、10年の平均でも装置市場の伸びは今の1.5倍にとどまる。中国勢の部材内製化や競合の台頭で、当社の取り分も少し下がる。
プラントは国内設備の統廃合で施工量が1割減り、値上げが通りにくくなる。自動車は電動化で台数が2割減り、建材も新築の減少が続く。
営業利益率は13%台に下がり、利益は今の水準を割る。還元は維持するのが精いっぱいで、市場は低成長の素材会社として低い倍率を付ける。
電動化と国内の縮小が重なる中で、値上げは人件費の転嫁にとどまる。補修の仕事そのものは残るため、赤字にはならず、安定した配当会社として評価される。
堀は薄れ、価格を決める力も弱まる。それでも財務は健全で、純現金と厚い自己資本が安全域を支える。
- プラント向け工事・販売:数量 90.0(施工量(万人日))× 価格 10(1人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 914 億円・営業利益 128 億円。数量 90、価格 1.27 倍、営業利益率 14.0%
- 工業製品:数量 2.7(出荷量(万トン換算))× 価格 226(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 609 億円・営業利益 104 億円。数量 2.7、価格 1.27 倍、営業利益率 17.0%
- 自動車部品:数量 800(納入先車両の台数(万台))× 価格 0.58(1台あたり売上(万円))→ 売上 461 億円・営業利益 39 億円。数量 800、価格 1.12 倍、営業利益率 8.5%
- 高機能製品:数量 2.5(当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分)× 価格 191(円ドル150円×物価倍率)→ 売上 483 億円・営業利益 77 億円。数量 3.4、価格 1.27 倍、営業利益率 16.0%(市場は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質で置いた)
- 建材:数量 310(出荷・施工面積(万m2))× 価格 0.95(1m2あたり売上(万円))→ 売上 295 億円・営業利益 24 億円。数量 310、価格 1.27 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の ROE 9.3%、k 6.25%、残る割合1/2 から RONIC 8.0%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 3.2% で上限 17.0 倍。設備投資の抑制と人件費の上昇で ROE が 9% に落ちる年。上限の 6 割台半ばに置く。(上限の約 65% の 11.0 倍)
確率:半導体で取り分が下がり、自動車の電動化も重なる姿。数量が伸びない事業が大半で、慎重な見方が強いため2割強とやや厚く置いた。
悲観 12% 構造的な負け 利益 127 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 701 円1,317 億円
構造的に負ける。半導体向けでは取り分が競合に移り、国内外の装置メーカーが部材を内製・集約して高機能製品の利益が消える。プラントの補修は、石油・化学の国内設備が畳まれて大きく縮む。
自動車は電動化で主力の遮熱部品が使われなくなり、建材は新築が細り続ける。価格も下がり、物価に追いつかない。
加えて品質や補償の問題が再発すれば、信頼と収益の両方が傷つく。営業利益は今の半分以下で、自己資本利益率は5%台まで下がる。もう優良会社とは呼べず、株価は自己資本を下回る水準で評価される。
純現金と自己資本の厚みが、最後の下値の支えになる。
- プラント向け工事・販売:数量 78.0(施工量(万人日))× 価格 9.20(1人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 718 億円・営業利益 65 億円。数量 78、価格 1.15 倍、営業利益率 9.0%
- 工業製品:数量 2.3(出荷量(万トン換算))× 価格 204(1トンあたり平均単価(万円))→ 売上 470 億円・営業利益 52 億円。数量 2.3、価格 1.15 倍、営業利益率 11.0%
- 自動車部品:数量 650(納入先車両の台数(万台))× 価格 0.54(1台あたり売上(万円))→ 売上 351 億円・営業利益 11 億円。数量 650、価格 1.05 倍、営業利益率 3.0%
- 高機能製品:数量 2.0(当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分)× 価格 165(円ドル150円×物価倍率)→ 売上 332 億円・営業利益 27 億円。数量 2.7、価格 1.10 倍、営業利益率 8.0%(市場は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質で置いた)
- 建材:数量 260(出荷・施工面積(万m2))× 価格 0.84(1m2あたり売上(万円))→ 売上 218 億円・営業利益 7 億円。数量 260、価格 1.12 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE 4.4% が k 6.25% 以下なので PER は 1÷k=14.8 倍まで。プラントの停止が続き、補修の現場力も薄れる構造的な負け筋。事業の純利益 134 億円の稼ぐ力(÷ k)の 7 割に置く。純現金 469 億円は稼ぐ力の 7 割とほぼ同じ水準で、床として別に足さない。(上限の約 70% の 10.4 倍)
確率:競合や内製化で高機能製品が崩れ、国内設備の縮小と品質・補償の問題が重なる構造的な負け。過去に不祥事があることも考え、12%と厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プラント向け工事・販売
製油・化学・発電プラントの保温・保冷・耐火工事と、その材料の販売。定期修理に合わせて継続的に出る。
| 数量施工量(万人日) | 価格1人日あたり売上(万円、材料込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 99.4 | 8.00 | 795 | 120 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 11 | 1,051 | 168 |
取り方:開示は金額だけなので、1人日あたり売上を8万円と仮定して施工量を99.4万人日と推定した(推定)。数量は国内プラントの補修量に連動し人口減や設備統廃合で伸びにくい。価格は人件費と材料の上昇で物価並みに上がる。
工業製品
ガスケット(接合部の漏れ止め)、断熱材、工業用シール材。産業界に広く売る。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格1トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 178 | 533 | 101 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 238 | 714 | 139 |
取り方:断熱材とガスケットの混合の平均単価を177.7万円とし、出荷量を3.0万トン換算と推定した(推定)。数量は国内の稼働設備の量に連動して横ばい。価格は物価並みに通せる。
自動車部品
エンジンと排気まわりの遮熱材・防音材・ガスケット。子会社を通じ自動車メーカーへ納める。
| 数量納入先車両の台数(万台) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 0.52 | 515 | 53 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.62 | 556 | 58 |
取り方:1台あたり約5,150円で、約1,000万台の車に載ると推定した(推定)。電動化で排気まわりの部品が減り数量は10年で1割減とみる。自動車メーカーの値下げ要求で価格は物価に届かず、10年1.20倍とした。
高機能製品
半導体製造装置向けふっ素樹脂部材(ナフロン)、耐熱シール、フィルター。装置メーカーの投資に連動する。
| 数量当社が受ける装置向け部材の売上(億ドル、実質)=WFE市場×当社の取り分 | 価格円ドル150円×物価倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 150 | 391 | 69 |
| 10 年後 中立 | 3.6 | 201 | 726 | 156 |
取り方:世界のウェハー製造装置(WFE)市場を約1,170億ドルとし、当社の取り分を約0.22%(2.6億ドル)と推定した(推定、開示なし)。価格欄は円ドル150円に物価倍率を掛けた指数。取り分は市場の広がりと技術力で動く。 先の数量は WFE の名目の見通しを物価 1.34 倍で割った実質の市場で置く(物価分は価格側)。
建材
鉄骨の耐火被覆材(マキベエなど)、不燃・断熱の建築材料と工事。
| 数量出荷・施工面積(万m2) | 価格1m2あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 380 | 0.75 | 285 | 27 |
| 10 年後 中立 | 350 | 1.01 | 352 | 35 |
取り方:1m2あたり約0.75万円で、年約380万m2と推定した(推定)。国内の新築着工の減少で数量は緩やかに縮む。価格は物価並み。
リスクと懸念
半導体の装置投資の波
高機能製品は装置メーカーの投資に連動する。26年3月期のように、受注が1年で2割以上落ちる年が来る。回復の最中にある今は強気に見えるが、次の谷は必ず来る。谷では固定費の重さから、この事業の利益率が急に下がる。全社の利益に占める比率は小さいが、振れ幅は大きい。
国内プラントの縮小
主力のプラント事業は国内の石油・化学・鉄鋼設備に依存する。設備の統廃合や海外移転で施工量が減れば、値上げでは補えない。補修は止まらないが、母数が小さくなる影響は10年で効いてくる。人口減と産業の海外移転が続く以上、避けにくい流れだ。
自動車の電動化
エンジンと排気まわりの遮熱・防音部品は、電気自動車に移ると使われる量が減る。売上の約2割を占める事業で、10年で数量が1割以上減るとみている。電池向けの部品で補えるかが分かれ目だ。値下げ要求も続くため、利益率の改善は容易でない。
品質と補償の過去
2007年に耐火被覆材で不正な試験体による大臣認定の取得が明らかになった。石綿をめぐる補償や訴訟の負担は、開示から規模を確認できていない。品質の問題が再び出れば、信頼と収益の双方に響く。起きてからでは遅く、管理体制の継続的な点検が要る。
倍率の縮み
半導体の回復と17%台の利益率を織り込んだ今の株価は、期待が外れた時に倍率が先に縮む。利益が計画どおりでも、倍率が成熟した素材会社の水準に戻れば、株価は下がる。割高な局面では、良い決算が出ても株価が動かないことがある。
人手と工事の担い手
プラント工事は熟練の職人に依存する。人手不足で工事を受けきれない、あるいは人件費の上昇を価格に転嫁できないと、利益率が上がらない。逆に、この制約が値上げを通しやすくする面もある。採用と育成に時間がかかる点は、成長の足かせでもある。
今後の分かれ目
- WFE(ウェハー製造装置)市場の見通しが上方修正され、高機能製品の受注が2年以上続けて増える
- 高機能製品の取り分と利益率の想定を引き上げ、やや楽観以上の筋書きの確率を上げる。ただし倍率は循環の山として低めに保つ。
- 半導体の装置投資が急に減速し、高機能製品の売上が前年から2割以上落ちる
- やや悲観・悲観の確率を上げる。固定費の重さで全社の利益率が1〜2ポイント下がると見る。
- 自動車部品の売上が電動化で急に縮む、または電池向けの新しい部品が立ち上がる
- 前者は数量の想定を下げ、後者は台数の減少を打ち消すとして自動車部品の見通しを直す。
- 耐火・断熱材の品質問題や石綿の補償で、新しい費用が開示される
- 一時的な費用に加え、信頼の毀損による数量・価格への影響を悲観の筋書きに加える。
- 戦略投資枠で大型の買収や新規事業への投資が決まる
- 採算の見通しを確認する。資本効率の高い補強なら評価し、本業と遠い事業なら資本の使い方の評価を下げる。
- 会社が自己株買いと消却を継続的に実施し、還元性向を引き上げる
- 株主の取り分が増える分、10年の還元の想定を引き上げる。ただし倍率の想定は変えない。
見ておくもの
- 高機能製品の四半期売上と受注の動き(WFE市場の見通しとの比較)
- プラント向け工事・販売の施工量と、人手不足による単価の動き
- 自動車部品の利益率と、電動化対応部品の売上
- 中期計画の達成状況(営業利益率17%台・自己資本利益率15%以上)と、戦略投資枠の使い道
- 石綿・品質問題に関する新しい開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE と k 6.25%(基本の7.5%に寿命−0.5%・値決め−0.25%)、長期の成長 g 3.25% から出る正当化 PER の 8.5〜9 割に置いた。今の PER 約 21 倍や株価の水準を見て決めていない。筋書きは先に数量 × 価格で積み、倍率は後から ROE と k で決めた。結果として、中立でも今の時価総額を下回り、やや割高になる。純現金は 469 億円で時価総額の 7% と 1 割に届かず、事業の運転資金とリースを引くと余りは小さいため excess_cash は立てない。リースは工場・工事拠点中心で店舗型ではなく、新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益は少し増え負債が増えるが、10 年の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。配当の水準は一次資料で確認できていないため、還元は純利益の 6〜7 割(悲観は 95%)の幅に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.56→20.52 倍・やや楽観 PER 16.85→20.18 倍・中立 PER 15.77→19.68 倍)。
資本コスト 6.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。