結論
日本興業は香川県さぬき市のコンクリート製品の会社だ。道路の擁壁や水路の箱型の部材を工場で作り、工事の現場へ運ぶ。筆者の結論は「やや割安」。自己資本利益率(ROE)は資本コストに届かないが、防災と維持補修の仕事が底堅く、今の値段は平年の利益の 7 年分ほどにすぎないからだ。
2026 年 3 月期は売上 163 億円、営業利益 8 億円と、ともに過去最高だった。大型の箱型の部材や高速道路の橋脚の型枠が伸び、値上げも通った。2027 年 3 月期は大型案件の反動で減益を見込むが、それでも利益は 10 年前の 2 倍の水準にある。
現場で型枠を組んでコンクリートを流し込む代わりに、工場で作った部材を据え付ける。この切り替え、つまりプレキャスト化が、建設の人手不足で追い風になっている。国土強靱化と流域治水の予算も、四国と中部、関東の工場を支える。
弱みは、地方の公共工事に頼ることと、値段が入札で決まりやすいことだ。景観の舗装材とエクステリアは赤字すれすれで、全社の利幅を薄めている。それでも、筆者は今の値段が悲観の筋書きまでかなり織り込んでいると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、日本興業は「地味だが、なくならない仕事」を持つ会社だ。道路の擁壁や水路の部材は、国がある限り作り直しが要る。工場の近くの工事を取る地域の商売で、遠くの大手が値段で攻め込みにくい。
弱いのは稼ぐ力の水準だ。利幅は物価と入札に削られ、ROE は資本コストに届かない。オーナーとして残る利益は、純利益から工場の更新を引くと年 3〜4 億円ほどだろう。帳簿の 4 割という今の値段は、この弱さを知ったうえでもなお低い。
筆者が気に入っているのは、経営が資本コストを口にし始めたことだ。ROE を上げる約束を数字で守り、配当を増やした。プレキャスト化の追い風が続き、利幅が 5% 台で定着するなら、今の値段は利益の 6〜7 年分にすぎない。大きく勝つ会社ではないが、払う値段に対して安全域がある。
何で稼ぐ会社か
売上の 7 割強は土木資材だ。道路の擁壁、水路や地下の通路に使う箱型の部材(ボックスカルバート)、側溝、港湾の部材などを工場で作る。役所や建設コンサルタントに設計の段階から自社の製品を提案し、図面に載せてもらうのが営業の要だ。2023 年には法面の補修を手がける葉月工業を子会社にし、斜面の維持補修まで仕事を広げた。
2 割強は景観資材で、公園や駅前、商業施設の外構に敷く舗装の平板や、石に似せたベンチなどを作る。バリアフリーの舗装材が主力だが、大型の特注品が伸びる一方で、主力品は苦戦している。
残る 6% がエクステリアで、子会社のニッコーエクステリアが庭や犬の遊び場向けの製品を売る。価格の競争が厳しく、利益はほとんど出ていない。
工場は香川を中心に四国、中国、近畿、中部に構える。コンクリートの部材は重く、運べる範囲が限られるので、工場の近くの工事を取るのが商売の基本だ。売上は年度末に工事が集まる下期に偏り、上期は赤字になりやすい。
低炭素の「Neco コンクリート」や、ひび割れを自ら直すコンクリートを使った製品も広げており、脱炭素を求める役所の発注で選ばれる材料を増やしている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、設計の段階で製品を図面に載せてもらう提案の力と、地域の工場網だ。役所の設計に自社の型番が入れば、入札で施工会社が変わっても部材はほぼ日本興業から買われる。三次元のデータで特注の部材を設計し、難しい物件を取る力もある。
ただ堀は浅い。同じ地域には同業のコンクリート製品の会社が多く、標準品は値段で比べられる。セメントと鉄筋が上がった時に、値上げが追いつかず利幅が削られた年も多い。過去 10 年の営業利益率は 2〜5% で、資本コストに届く利益を出した年は一度もない。
資本の使い方は改まりつつある。2025 年に掲げた計画で株主資本コストを 5.5〜6.5% と自ら見積もり、ROE をそこまで上げると約束した。2026 年 3 月期の ROE は 7.0% で、まず目標に届いた。筆者は資本コストをもう少し高く見るが、経営が資本の値段を意識し始めた点は評価したい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コンクリート製品の需要は、公共工事の予算で決まる。道路や河川の新しい工事は人口の減少で細るが、古くなった橋や水路の補修、豪雨に備えた流域治水、大地震への備えは増えている。国土強靱化の予算は 2026 年度から新しい 5 か年の計画に移り、規模は前の計画を上回る。量は新設の細りと補修・防災の伸びが打ち消し、10 年でほぼ横ばいと筆者は見る。
追い風はプレキャスト化だ。現場でコンクリートを打つ職人が減り、工期を短くしたい役所と施工会社は、工場で作った部材を使いたがる。部材の比重が上がれば、量が横ばいでも製品の需要は増える。
値段の面では、セメントと人件費が物価並みに上がり、製品の値段もそれを追う。入札で決まる標準品は値上げが遅れがちだが、特注の部材と補修の工事は値段を保ちやすい。
業界には地域ごとの中堅が並ぶ。九州のヤマックス、北陸のヤマウ、全国の日本ヒュームやベルテクスがいる。再編はゆっくり進んでおり、日本興業も葉月工業を買った。筆頭株主の積水樹脂が 4 分の 1 弱を持ち、提携の形も将来の論点になる。
資本政策と M&A
配当は連結の配当性向 30% 前後を目安にし、2026 年 3 月期は記念の分を含めて総額 1.6 億円を払った。2027 年 3 月期も利益の 3 割強を配る見通しだ。自己株は発行済みの 5% ほどを持つ。
計画では 2033 年度に売上 250 億円、営業利益 20 億円、ROE 8% を掲げる。そのために設備の更新と成長の投資を計画的に行い、周辺の買収で仕事を広げるという。葉月工業の買収は利益に寄与しており、小さな買収を重ねる形は理にかなう。
筆頭株主は積水樹脂で 23.7%、次いで取引先の共栄会と従業員の持株会が並び、UBE 三菱セメントと伊予銀行も持つ。安定株主が半分近くを握り、積水樹脂がさらに株を買い増して取り込む筋書きも、10 年のうちには考えられる。借金は純額で 25 億円ほどで、利払いは利益に比べて軽い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設の人手不足は、工場で部材を作る会社の味方だ。現場で型枠を組める職人は減り続け、役所も施工会社も工場製の部材を選ぶ。日本興業は設計の段階で自社の製品を提案し、特注の大型部材を作る力を持つ。2026 年 3 月期の最高益は、この流れが数字に出た結果だ。
国土強靱化の新しい 5 か年の計画は前の計画より大きく、流域治水と老朽化した水路の補修は四国でも増える。葉月工業の法面補修のように、維持補修の仕事を買収で広げる道もある。
経営は資本の値段を意識し始めた。2033 年度に営業利益 20 億円、ROE 8% を掲げ、第 1 段階の目標は 1 年早く達した。今の値段は帳簿の 4 割、平年の利益の 7 年分で、利益が計画の半分に届くだけでも安すぎる。筆頭株主の積水樹脂が取り込みに動けば、値段はすぐに見直される。
財務も堅い。自己資本比率は 50% で、借金は利益の数年分で返せる。谷が来ても配当を続けられる体力がある。
慎重な見方
2026 年 3 月期は大型案件が重なった山で、会社自身が翌期の減益を見込んでいる。過去 10 年の営業利益率は 2〜5% で、山の利益を平年と見るのは危うい。
公共工事の量は人口とともに細る。四国の人口は全国より速く減り、新しい道路や河川の工事は先細りだ。国土強靱化の予算も、財政が厳しくなれば削られる。標準品は入札で値段が決まり、セメントと人件費が上がっても値上げは遅れる。
景観資材とエクステリアは赤字すれすれで、全社の利幅を薄めている。計画の 250 億円は今の 1.5 倍で、買収なしには届かない。ROE は資本コストに届いた年がなく、安定株主が半分近くを握るので、資本の使い方を外から変える力も弱い。帳簿の 4 割は、稼がない資本の値段として妥当にすぎない。
脱炭素の流れも重荷になりうる。セメントは二酸化炭素を多く出す材料で、炭素の値段が上がれば原価はさらに膨らむ。低炭素の製品は値段で選ばれにくい。
どちらに重みを置いたか
山の利益を平年と見ないという慎重な見方の指摘はもっともだ。だが、プレキャスト化と補修の需要は構造の変化で、利幅が過去の平均より高い水準に移ったことは認めてよい。確率は同じ領域の会社に合わせて中立を 4 割弱に置き、やや悲観をやや楽観より少し重くした。それでも、今の値段が低すぎるので、結論は割安の側に出る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,559 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 640 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 1,621 円47 億円、今との差 +37.5%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,455 円159 億円 | 1,029 円30 億円 | +449.9% | +18.6% | 454 円13 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,868 円113 億円 | 857 円25 億円 | +300.8% | +14.9% | 851 円25 億円 |
| 中立 | 38% | 2,908 円85 億円 | 686 円20 億円 | +204.8% | +11.8% | 1,366 円40 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,149 円34 億円 | 514 円15 億円 | +41.1% | +3.5% | 416 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 737 円22 億円 | 206 円6 億円 | −20.0% | −2.2% | 113 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,559 円75 億円 | 640 円19 億円 | +171.3% | +10.5% | 3,199 円93 億円 |
今の株価時価総額 1,179 円34 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% プレキャスト化と買収で計画に届く 利益 12 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,455 円159 億円
建設の職人の不足が深まり、役所は道路や水路の部材をほぼ工場製に切り替える。国土強靱化の予算は新しい 5 か年の計画で厚くなり、流域治水と老朽化した水路の補修が四国と中部で増える。日本興業は周辺の同業と補修の会社を買い、出荷は 10 年で 2 割強増える。
特注の大型部材の比重が上がり、1 トンの値段は物価より 6% 速く上がる。土木の利幅は 7.5% まで上がり、景観資材も特注品に絞って黒字が定着する。営業利益は計画の 20 億円に近づき、ROE は 8% を超える。積水樹脂との提携が深まり、資材の調達と販路でも利がある。
- 土木資材:数量 58.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.55(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 15 億円。58 万トン × 3.55 万円(物価 1.34 倍 × 特注の比重 1.06)、利益率 7.5%
- 景観資材:数量 13.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 4.02(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。13 万トン × 4.02 万円(物価並み)、利益率 4%
- エクステリア:数量 25.0(販売点数(万点・推定))× 価格 0.67(1 点あたりの売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。25 万点 × 0.67 万円、利益率 3%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.83 倍、時価総額 159 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2033 年度の計画は今の 1.5 倍の売上で、買収なしには届かない。プレキャスト化と買収の両方が当たる確かさは低いので 1 割未満。
やや楽観 18% 補修と防災が支え、利幅 6% 台が定着 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,868 円113 億円
新設の工事は細るが、補修と防災の工事がそれを上回り、出荷は 10 年で 6% 増える。特注の部材が増え、1 トンの値段は物価より 2% 速く上がる。土木の利幅は 7% で、2026 年 3 月期の水準が平年になる。
景観資材は大型の特注品で少し黒字を出し、エクステリアも赤字を脱する。営業利益は 13 億円前後で、ROE は 7% 弱と資本コストの手前まで来る。配当は利益の 3 割強を払い続け、自己株も少しずつ買う。買収は補修の小さな会社を一つ二つ足す程度だ。積水樹脂との取引も少しずつ広がる。上期の赤字も小さくなり、年間の利益が安定する。
- 土木資材:数量 50.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.42(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 12 億円。50 万トン × 3.42 万円、利益率 7%
- 景観資材:数量 12.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 4.02(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。12 万トン × 4.02 万円、利益率 2%
- エクステリア:数量 22.0(販売点数(万点・推定))× 価格 0.67(1 点あたりの売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。22 万点 × 0.67 万円、利益率 1%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期に計画の第 1 段階を 1 年早く達しており、プレキャスト化の流れも続く。山の利益の一部が平年に残る姿は無理がない。
中立 38% 量は横ばい、利幅は山と谷の間 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,908 円85 億円
公共工事の量は、新設の細りと補修・防災の伸びが打ち消し、出荷は 10 年でわずかに減る。プレキャスト化で部材の比重は上がるが、量の増えにはつながらない。1 トンの値段は物価並みに上がる。
土木の利幅は 6% で、2026 年の山の 7% 弱と過去の平均の 4% の間に落ち着く。景観資材はほぼ収支とんとん、エクステリアも利益を出せない。営業利益は 10 億円弱、純利益は 6〜7 億円で、ROE は 5% 台にとどまる。
配当は利益の 3 割を払い続け、帳簿は少しずつ厚くなる。会社は四国の堅い部材の作り手として続くが、資本コストに届く年は来ない。
- 土木資材:数量 46.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.35(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 154 億円・営業利益 9 億円。46 万トン × 3.35 万円(物価 1.34 倍)、利益率 6%
- 景観資材:数量 11.2(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 4.02(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。11.2 万トン × 4.02 万円、利益率 1%
- エクステリア:数量 20.0(販売点数(万点・推定))× 価格 0.67(1 点あたりの売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。20 万点 × 0.67 万円、利益率 0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新設の細りと補修・防災の伸びが打ち消し、利幅は 2026 年の山と過去の平均の間に落ち着く。同じ領域の会社と同じ置き方で、いちばん起こりやすい。
やや悲観 25% 予算が絞られ、値上げが追いつかない 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,149 円34 億円
国の財政が厳しくなり、国土強靱化の予算は前の計画並みに据え置かれる。四国の人口の減少で新しい工事が細り、出荷は 10 年で 15% 減る。セメントと人件費は物価並みに上がるが、入札で決まる標準品の値段は 5% 届かない。
土木の利幅は 3% に戻り、過去の平均を下回る。景観資材とエクステリアは赤字に沈む。営業利益は 3 億円台、純利益は 2 億円ほどで、ROE は 2% 前後。配当は自己資本の 2% 弱を払うのがやっとで、稼ぐ力は帳簿の値打ちを大きく下回る。計画の 250 億円は遠い目標として掲げられたまま、話題に上らなくなる。
- 土木資材:数量 40.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.18(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 127 億円・営業利益 4 億円。40 万トン × 3.18 万円、利益率 3%
- 景観資材:数量 10.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.82(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。10 万トン × 3.82 万円、利益率 −1%
- エクステリア:数量 16.0(販売点数(万点・推定))× 価格 0.64(1 点あたりの売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。16 万点 × 0.64 万円、利益率 −2%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は 25 億円ほど。床は売れる資産で、今の自己資本 86 億円の 0.35 倍の 30 億円。工場の土地と売掛金から借金を引いた額の税後が目安。中立の PBR 0.53 倍より低い。
確率:過去 10 年の大半は利幅 2〜3% で、山の利益が戻らない姿は十分にありうる。同じ領域の会社に合わせ 4 分の 1 とした。
悲観 12% 公共工事が細り、地域の工場が余る 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 737 円22 億円
国の財政の悪化で公共工事の予算が削られ、四国の新しい工事はほとんど無くなる。補修の工事も先送りされ、出荷は 10 年で 3 割近く減る。同業との値下げの競争で、1 トンの値段は物価に 1 割届かない。
土木は利益が出ず、景観資材とエクステリアは赤字が続く。工場をいくつか閉じ、配当は減らす。積水樹脂や同業に事業ごと譲る道も出てくる。価値は工場の土地と事業を売った値段の税後で、今の自己資本の 4 分の 1 ほどにとどまる。地方の部材の作り手が、工事とともに細っていく姿だ。帳簿に残る工場の多くは、値段のつかない設備になる。
- 土木資材:数量 34.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.00(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 0 億円。34 万トン × 3.0 万円(物価に 1 割届かない)、利益率 0%
- 景観資材:数量 8.0(製品の出荷(万トン・推定))× 価格 3.60(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。8 万トン × 3.6 万円、利益率 −3%
- エクステリア:数量 12.0(販売点数(万点・推定))× 価格 0.60(1 点あたりの売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。12 万点 × 0.6 万円、利益率 −3%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。床は売れる資産で、今の自己資本 86 億円の 0.25 倍の 21.5 億円。工場を閉じて土地を売った値段の税後から借金を引いた額。
確率:国の財政が公共工事を削る筋書きで、地方の工場は真っ先に余る。予算が厚くなっている今、1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木資材
擁壁・ボックスカルバート・側溝・港湾部材などのプレキャストコンクリート製品と、法面の補修。
| 数量製品の出荷(万トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 47.0 | 2.50 | 118 | 8 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 3.35 | 154 | 9 |
取り方:2026/03 期の土木資材の売上 117.8 億円。出荷の開示はなく、施工と補修を含めて 1 トンあたり 2.5 万円前後と推定して割った。利益は中間のセグメント利益 2.2 億円と、下期に偏る季節性から通期 8 億円前後と推定(全社費は配賦済み)。
景観資材
公園・駅前・商業施設の外構に使う舗装平板・擬石のファニチャー。
| 数量製品の出荷(万トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.8 | 3.00 | 35 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.2 | 4.02 | 45 | 1 |
取り方:2026/03 期の景観資材の売上 35.4 億円。舗装の平板は土木の部材より単価が高く、1 トンあたり 3 万円と推定して割った。中間は 0.9 億円の赤字で、通期はほぼ 0 と推定。
エクステリア
子会社ニッコーエクステリアが庭・犬の遊び場向けの製品を売る。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.50 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.67 | 13 | 0 |
取り方:2026/03 期のエクステリアの売上 10.0 億円。1 点 0.5 万円前後の製品と推定して割った。中間 0.2 億円の赤字から通期も小さな赤字と推定。
リスクと懸念
公共工事の予算
売上の大半は国と自治体の工事に連れて動く。国土強靱化の新しい 5 か年の計画は厚いが、国の財政が厳しくなれば真っ先に削られうる。地方の工事ほど先送りされやすい。
山の利益の反動
2026 年 3 月期は大型案件が重なり、過去最高の利益になった。会社自身が翌期の減益を見込んでいる。過去 10 年の利幅は 2〜5% で、山を平年と見るのは危うい。
セメントと人件費
原料のセメント・骨材・鉄筋と、工場と運搬の人件費が物価並みかそれ以上に上がる。入札で値段が決まる標準品は値上げが遅れ、利幅が削られた年が過去に何度もある。
四国の人口の減少
工場の多くがある四国は、全国より速く人口が減る。新しい道路や河川の工事が細り、地域の同業との値段の競争が強まる。
景観とエクステリアの赤字
景観資材とエクステリアは赤字すれすれで、主力の舗装材は苦戦している。立て直しが遅れれば、土木の利益を食い続ける。
筆頭株主との関係
積水樹脂が 23.7% を持つ。提携が深まれば利になるが、取り込みの値段が少数株主に不利に決まる恐れもある。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社の見通しの 7 億円前後で着地したら
- 2026 年の山の多くが平年の利益として残るとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 国土強靱化の予算が新しい 5 か年の計画どおりに厚くついたら
- 補修と防災の量の見通しを上げてよい。
- 景観資材が 2 年続けて黒字になったら
- 全社の利幅の重しが外れたとみて、中立の利益を上げる。
- 積水樹脂が株を買い増す、または公開買付けを行ったら
- 取り込みの値段が今の本質価値を上回るかを見る。
- セメントの値上げに対して製品の値上げが 2 年続けて遅れたら
- 値決めの弱さが戻ったとみて、やや悲観に寄せる。
見ておくもの
- 土木資材の売上と利益率
- 景観資材の損益
- 国土強靱化・流域治水の予算
- 中長期計画(2033 年度 営業利益 20 億円・ROE 8%)への進み具合
- 配当性向と自己株の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 8.0%(基本 7.5% に値決めと寿命で +0.5%。同じ領域の会社は 7.8〜8.8%)と、各筋書きの ROE から式で出した。中立の ROE は 5.3% で k に届かないので PER の上限は 1÷k の 12.5 倍、その 8 割を使った。確率は同じ領域の会社の置き方(悲観側 4 割弱)に揃えた。今の PBR や過去の PER は見ていない。2026 年 3 月期の利益は山なので、10 年の利幅は山と過去の平均の間に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.83 倍・やや楽観 PER 10.6→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。