結論
日本カーボンは、炭素を素材に半導体の製造装置部品、航空機エンジン向けの繊維、製鋼用の電極を作る会社だ。
筆者の結論は、おおむね適正である。稼ぎの核は小さいが強い。ただ、会社の大半を占める電極と汎用の炭素製品が、全体の利益率を押し下げている。
いちばん光るのは炭化けい素繊維、通称ニカロンだ。売上は全体の1割だが、営業利益は3割を占める。米GEと仏サフランとの合弁で航空機エンジンに入り、代わりになる供給元は少ない。
逆にいちばん気になるのは人造黒鉛電極だ。中国勢の安値に押され、利益はほぼ出ていない。国内最大手の東海カーボンも、生産能力を4割減らしている。
足元の利益は谷にある。2026年12月期の営業利益は43億円の予想で、2018年の164億円には遠い。10年かけてファインカーボンが回復すれば価値は育つが、今の値段はその回復をほぼ織り込んでいる。
筆者がもっとも重く見るのは、この会社が資本をうまく使えていない点だ。純利益の大半を配当に回し、工場の更新に毎年多くを使う。自己資本の増え方は遅く、10年たっても利益の伸びは物価分が中心になる。そこに、ニカロンの強さがどこまで全体を引き上げるかが分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、いい部分を持つが、全体を長く持ちたい会社ではない。
まず事業の質。ニカロンは10年後も存在し、堀は広がる可能性がある。ファインカーボンは普通だ。電極は10年後に今の規模であるかどうかも怪しい。
次に、株主のものになる利益。工場の更新と新設備に毎年多くを使うため、営業の稼ぎがそのまま株主の手元に残るわけではない。純利益の7割を配当に回すと、自己資本はほとんど増えない。
経営は誠実に見える。持ち合いを売り、還元を増やす方向だ。ただ電極の整理は遅い。2018年の好況期に稼いだお金を、将来の稼ぎにどう変えたかは見えにくい。
最後は値段。筆者の見立てでは、10年後の価値は今の値段の周りに収まる。安全域は薄い。ファインカーボンが力強く回復して初めて、割安になる。
もう一つ。純現金が47億円あっても、運転資金と設備の更新に消える部分が多い。表面の自己資本比率の高さほど、手元に自由に使える余裕があるわけではない。この点を割り引いて見るべきだと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく3つに分かれる。
一つ目はファインカーボン。半導体や太陽電池の製造装置で使う断熱材や、高温に耐える炭素複合材、特殊な黒鉛材料を作る。リチウムイオン電池の負極材も富山工場で量産する。顧客の設備投資に連動する事業で、売上は全体の約6割にあたると筆者は見る。
二つ目が人造黒鉛電極。電炉で鉄スクラップを溶かす時に使う、消耗品の太い黒鉛の棒だ。売上は約3割と見る。世界ではグラフテックや方大炭素、東海カーボンなどが競う。鉄の生産と中国の輸出価格で、利益が大きく振れる。
三つ目が炭化けい素繊維。航空機エンジンの軽量部材(セラミックス複合材)に使う、髪の毛より細い繊維だ。2025年は売上が5割増え、利益率は3割を超えた。
炭素製品関連が売上の約86%を占める。ほかに産業機械の製造・修理と不動産賃貸が少しある。海外売上比率は43%で、生産は国内の工場に集中している。
事業ごとの稼ぎ方の違いを押さえておきたい。ファインカーボンは顧客と共同で仕様を作る受注型で、一度納めると数年は続く。電極は鉄鋼メーカーへの定期的な納入で、価格は市況で動く。ニカロンは合弁会社を通じて、エンジンの量産ペースに合わせて納める。三つの事業は景気の山と谷がずれるため、全体としては少し均されるが、半導体と鉄鋼が同時に落ちる局面では利益が一気に細る。
優良さと弱いところ
優良さは、事業ごとにまるで違う。
いちばん強いのは炭化けい素繊維だ。この繊維は認定を取るまでに何年もかかり、航空機エンジンは一度採用されると長く使われる。営業利益率は36%に達した。堀、つまり他社がまねできない強みはここにある。
ファインカーボンは普通の堀だ。装置メーカーと共同で作り込むため、顧客は簡単に乗り換えない。だが東洋炭素や東海カーボンという強い相手がいて、値段は市場に決められる面が大きい。パワー半導体の失速で、2025年は炭素製品の利益が4割以上減った。
電極は堀と呼べるものがない。出荷しても値段が合わなければ赤字になる商品だ。
財務は健全だ。自己資本比率は63%、純現金は約47億円ある。ただ資本効率は低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で8%にとどまり、高かったのは2018〜19年の電極ブーム期だけだった。
経営は2025年に投資有価証券を売って35億円の利益を出した。持ち合いの整理を進める姿勢は評価できる。一方、同年には火災で8億円の損失も出している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の入り口は3つ、世界の半導体投資、鉄の電炉化、航空機のエンジンだ。
半導体は、2025年にパワー半導体の需要が失速し、ファインカーボンが落ち込んだ。AI向けの先端半導体は強いが、同社が得意とするパワー半導体と太陽電池の装置は回復が遅れている。回復すれば受注は戻るが、波は避けられない。
電極は、世界で供給が余っている。中国とインドの安い製品が流れ込み、東海カーボンは日本と欧州の生産能力を5.6万トンから3.2万トンへ減らす決断をした。米国の関税で北米向けは一時的に増えたが、構造は変わらない。電炉化は追い風だが、鉄の生産量が縮めば需要は増えない。
航空機は、新型機のエンジンに複合材が広がる流れで、ニカロンが採用される場面が増える。納入先が限られ、航空機の生産ペースに左右される点は弱みだ。
循環の位置は谷の手前から底だ。2026年は半導体の回復を見込んでも営業利益率が10%台前半の予想で、2023〜24年の17%台には戻っていない。
同業との位置も整理する。ファインカーボンでは東洋炭素と東海カーボンが先行し、日本カーボンは断熱材や複合材などの得意分野に絞って戦う。電極ではグラフテックが首位で、日本の大手は東海カーボンと日本カーボンだけが残った。いずれも黒鉛電極の価格を市況で決められないという点は同じだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、年間の配当を据え置いている。配当に回る金額は約22億円で、2026年の予想純利益27億円の8割近い。会社は中計で、安定配当と機動的な自社株買いを掲げた。
SECカーボンは日本カーボン株の4%超を持つ筆頭株主で、日本カーボンも同社株を約4%持つ。2022年に黒鉛電極で資本業務提携を結んだ相手だ。2024年には韓国のKISCOとも提携した。2025年には投資有価証券を売り、35億円の利益を出している。
買収の歴史は大きくない。提携を重ねて電極の過剰能力を整理する道は、可能性が残る。時価総額が540億円と小さく、10年内に他社に買われる確率は、筆者は2割弱とみる。
気になるのは、設備投資が重いことだ。2025年は有形固定資産の取得に55億円を使い、営業の稼ぎを上回った。投資が成果に結びつくまでは、還元に回る余裕は限られる。
中計の「GO BEYOND 2030」は、収益性の向上と株主還元の強化を重点に置く。具体的な営業利益や自己資本利益率の数値目標は、筆者が確認できた範囲では見当たらなかった。数字で責任を持つ姿勢が弱いことは、資本の使い方を評価するうえで気になる点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ニカロンは長い成長の入り口にある。新型の航空機エンジンは、軽くて熱に強い複合材を増やしている。2025年は売上が5割増、営業利益が7割増だった。供給元が限られるため、値段は物価以上に通せる。
ファインカーボンは谷を抜ける。パワー半導体の失速は在庫調整によるもので、電気自動車と再生可能エネルギーの需要は長期で伸びる。AI向けのデータセンターでは電力の変換装置が増え、炭素の断熱材や黒鉛の部材が要る。会社は中計で売上を年10%ずつ増やすと掲げている。
電極は、世界の供給過剰が整理に向かう。東海カーボンが能力を4割減らし、米国は中国製に関税をかけた。需給が締まれば、電極の利益は2018年のように大きく跳ねる。
財務は純現金があり、持ち合いの売却で自己資本も軽くなる。還元が増えれば、自己資本利益率は10%を超える。2026年の中間決算は会社予想を大きく上回った。底は過ぎた。
電極の筋書きが外れても、ファインカーボンと航空機だけで全体の稼ぎを支えられる、というのが強気の核心だ。営業利益に占めるニカロンの比率は、5年前から倍近くに上がっている。この比率がさらに上がれば、会社の質は目に見えて変わる。
慎重な見方
利益の質は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値は8%で、資本コストをやっと超える程度だ。高かったのは2018〜19年の電極ブームだけで、その後は元に戻った。
電極の問題は価格ではなく構造だ。中国は鉄鋼の過剰能力を抱え、安い電極を輸出し続ける。東海カーボンのように能力を削るのは、需要が戻らないとの判断だ。日本カーボンは規模で劣り、同じ手が打てない。
ファインカーボンは東洋炭素や東海カーボンと同じ土俵で争う。値段を決めるのは顧客だ。パワー半導体は中国勢の増産で、値下がりが続く恐れがある。
ニカロンは納入先がGEとサフランのほぼ2社に絞られ、エンジンの認定が外れる、あるいは別の繊維に置き換わると売上が急に消える。
設備投資が重く、純利益の大部分を配当に回すと、自己資本はほとんど積み上がらない。2026年の営業利益は43億円の予想で、2025年から1割減る。成長が謳われるわりに、利益は縮んでいる。
配当の約束も重い。年間の配当は22億円で、純利益が27億円の予想に対して8割を超える。業績が谷に入れば、配当を守るか、投資を削るかの選択を迫られる。自社株買いを増やす余力は、現金の薄さを考えるとほとんどない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。ニカロンの強さは本物だが、全体の利益の3割にとどまる。ファインカーボンの回復は、資本コストを大きく超える稼ぎにまで至らないと見る。電極は10年後に利益を出す事業として残るかどうかも、確かではない。
確率は中立を最大に置き、やや悲観と悲観に合わせて3割台後半を置いた。強気の見方どおりに進めば、10年後の価値は今の時価総額を3〜5割上回る。ただしその筋書きは、電極と半導体と航空機が同時にうまくいく必要があり、確率は1割未満とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,456 円789 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,888 円306 億円)。 今の値に割り戻すと 5,419 円573 億円、今との差 +10.6%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 17,004 円1,799 億円 | 4,253 円450 億円 | +333.8% | +15.8% | 1,701 円180 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,263 円1,298 億円 | 3,629 円384 億円 | +224.3% | +12.5% | 3,178 円336 億円 |
| 中立 | 35% | 8,013 円848 億円 | 2,958 円313 億円 | +123.9% | +8.4% | 3,840 円406 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,802 円297 億円 | 2,344 円248 億円 | +5.0% | +0.5% | 1,287 円136 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,151 円122 億円 | 1,673 円177 億円 | −42.4% | −5.4% | 339 円36 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,456 円789 億円 | 2,888 円306 億円 | +111.1% | +7.8% | 10,344 円1,094 億円 |
今の株価時価総額 4,900 円518 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 電極が立ち直り、ファインカーボンも伸びる 利益 110 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 17,004 円1,799 億円
世界の電極の供給が整理され、需給が締まる。東海カーボンの能力削減に続いて中国の輸出が細り、電極は2018年ほどではないが、利益の出る事業に戻る。
ファインカーボンは、パワー半導体と電池の負極材が本格的に伸びる。AIデータセンターの電力装置にも使われ、10年で出荷は7割以上増える。ニカロンは新型エンジンの量産で数量が2倍半に広がる。
営業利益率は21%まで上がり、利益は今の3倍を超える。還元も厚く、自己資本利益率は14%近くになる。堀も広がるが、成長が一巡する10年後には、市場も高い倍率を長く払わない。
- ファインカーボン・負極材:数量 1,873(出荷量(トン換算))× 価格 2,680(1トンあたり売上(万円))→ 売上 502 億円・営業利益 95 億円。数量 1.75 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 19.0%
- 人造黒鉛電極:数量 2.2(出荷量(万トン))× 価格 60(1トンあたり売上(万円))→ 売上 132 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍、価格 1.20 倍、営業利益率 9.0%
- 炭化けい素繊維:数量 52.0(出荷量(トン))× 価格 28,896(1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円))→ 売上 150 億円・営業利益 57 億円。数量 2.60 倍、価格 1.40 倍、営業利益率 38.0%
- 産業機械・不動産ほか:数量 66.0(受注・賃貸の件数換算)× 価格 0.27(1件あたり売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。数量 1.10 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 24.0%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)39 億円。全体の PER 16.14 倍、時価総額 1,799 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電極の需給が締まり、半導体と航空機が同時に強くなる姿。条件が多く重なるため1割未満。
やや楽観 20% 半導体と航空機が伸びを支える 利益 84 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 12,263 円1,298 億円
半導体の回復とニカロンの伸びが重なる。ファインカーボンは出荷が5割増え、利益率も17%まで戻る。ニカロンは数量が2倍強に伸び、利益率は3割台半ばを保つ。
電極は整理が進み、赤字は止まって小さな利益が出る。ただ売上は縮むため、全体への寄与は小さい。
営業利益率は19%近くになり、中計が描く成長にほぼ届く。還元は計画どおりで、自己資本利益率は11〜12%に上がる。優良さは保たれるが、電極の重しは残る。
ニカロンは、航空機の生産が計画どおりに増え続ける前提だ。電池の負極材は、車載向けで需要が安定し、赤字の部分が減る。会社の優良さは、ファインカーボンの値決め力が少し強まる形で保たれる。
- ファインカーボン・負極材:数量 1,605(出荷量(トン換算))× 価格 2,640(1トンあたり売上(万円))→ 売上 424 億円・営業利益 72 億円。数量 1.50 倍、価格 1.32 倍、営業利益率 17.0%
- 人造黒鉛電極:数量 2.2(出荷量(万トン))× 価格 58(1トンあたり売上(万円))→ 売上 124 億円・営業利益 9 億円。数量 0.98 倍、価格 1.15 倍、営業利益率 7.0%
- 炭化けい素繊維:数量 44.0(出荷量(トン))× 価格 28,277(1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円))→ 売上 124 億円・営業利益 45 億円。数量 2.20 倍、価格 1.37 倍、営業利益率 36.0%
- 産業機械・不動産ほか:数量 63.0(受注・賃貸の件数換算)× 価格 0.27(1件あたり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 23.0%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)39 億円。全体の PER 15.08 倍、時価総額 1,298 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の回復とニカロンの伸びが重なり、電極の赤字が消える姿。2割。
中立 35% 回復はするが、資本コストをやっと超える 利益 61 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 8,013 円848 億円
ファインカーボンは谷を抜けて、出荷は3割増える。ニカロンも航空機の需要で数量が1.8倍に伸び、全体の稼ぎの柱になる。
電極は国内の鉄鋼の縮小で出荷が1割減り、値段も物価に届かない。薄い利益を出すだけで、全体の足かせのままだ。
営業利益率は16%ほど。2023〜24年の17%台に近いが、そこからは伸びない。成長の大半は物価分で、数量は一部の事業に偏る。
配当を厚く出すため、自己資本はあまり積み上がらず、自己資本利益率は9%近くにとどまる。資本コストをやっと超える水準で、特別な割増は付かない。
電極の価格が物価並みに上がらないのは、中国とインドの安値品が世界の値段を決め続けるからだ。国内でも鉄鋼メーカーとの交渉は厳しく、コストの上昇分を満額で転嫁できない。ここでは10年で1割の上昇にとどまると置く。
- ファインカーボン・負極材:数量 1,391(出荷量(トン換算))× 価格 2,560(1トンあたり売上(万円))→ 売上 356 億円・営業利益 52 億円。数量 1.30 倍、価格 1.28 倍、営業利益率 14.5%
- 人造黒鉛電極:数量 2.0(出荷量(万トン))× 価格 55(1トンあたり売上(万円))→ 売上 111 億円・営業利益 5 億円。数量 0.92 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 4.5%
- 炭化けい素繊維:数量 36.0(出荷量(トン))× 価格 27,658(1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円))→ 売上 100 億円・営業利益 33 億円。数量 1.80 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 33.0%
- 産業機械・不動産ほか:数量 60.0(受注・賃貸の件数換算)× 価格 0.27(1件あたり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 21.0%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)39 億円。全体の PER 13.49 倍、時価総額 848 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ファインカーボンは回復し、ニカロンも伸びるが、電極は薄利のまま。最も起こりやすい姿として3割台半ば。
やや悲観 25% 電極が足を引っ張り続ける 利益 33 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 2,802 円297 億円
半導体の回復が弱く、中国のパワー半導体メーカーの増産で値段も下がる。ファインカーボンは出荷が小さく伸びるだけで、利益率は11%にとどまる。
電極は世界の供給過剰が続き、数量は2割減る。値段が物価に追いつかず、利益は出ない。
ニカロンは伸びるが、納入先の生産ペースに左右され、利益率は3割を割る。
営業利益は今の水準を割り、配当を維持するのが精いっぱいになる。自己資本利益率は5%台まで下がり、資本コストに届かない。財務の健全さは保たれるが、もう優良とは呼べない。
配当は据え置くのが精いっぱいで、設備投資も絞られる。ファインカーボンの顧客との関係は続くが、値段を決めるのは顧客になる。
- ファインカーボン・負極材:数量 1,124(出荷量(トン換算))× 価格 2,300(1トンあたり売上(万円))→ 売上 258 億円・営業利益 28 億円。数量 1.05 倍、価格 1.15 倍、営業利益率 11.0%
- 人造黒鉛電極:数量 1.8(出荷量(万トン))× 価格 50(1トンあたり売上(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍、価格 1.00 倍、営業利益率 0.0%
- 炭化けい素繊維:数量 28.0(出荷量(トン))× 価格 25,800(1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円))→ 売上 72 億円・営業利益 20 億円。数量 1.40 倍、価格 1.25 倍、営業利益率 28.0%
- 産業機械・不動産ほか:数量 57.0(受注・賃貸の件数換算)× 価格 0.24(1件あたり売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍、価格 1.20 倍、営業利益率 15.0%
倍率:事業の ROE 5.4% が k 8% 以下なので PER の上限は 1÷k=11.8 倍。電極の赤字と半導体の失速で稼ぐ力が弱いため、上限の 7 割に置く。(上限の約 70%)(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.2 倍・時価総額 296 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:半導体の回復が弱く、電極の整理も進まない姿。資本効率が低く単一顧客の弱みもあるため、4分の1と厚く置いた。
悲観 12% 電極が崩れ、SiCも置き換わる 利益 13 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 1,151 円122 億円
構造的に負ける。電極は中国とインドの安値に押されて数量が半分近くに縮み、赤字が続く。ファインカーボンは中国勢の増産で値段が崩れ、出荷も減る。
ニカロンは、エンジンの認定が別の繊維に置き換わり、数量も値段も今を割る。
営業利益は今の4割以下で、赤字の事業も抱える。配当は大きく減らされ、自己資本利益率は2%台に落ちる。
純現金と固定資産は残るが、稼ぐ力は薄い。市場はこの会社を、資産が稼がない会社として評価する。
電極の赤字を止めるには工場の閉鎖が要り、特別損失が出る。ニカロンは同じ繊維を作る海外の競合が採用先を広げ、認定の枠が減る。ファインカーボンも顧客の内製化が進み、設備が余る。 閉鎖と減損で約 150 億円の特別損失が出て、自己資本も縮む。
- ファインカーボン・負極材:数量 856(出荷量(トン換算))× 価格 2,100(1トンあたり売上(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 13 億円。数量 0.80 倍、価格 1.05 倍、営業利益率 7.0%
- 人造黒鉛電極:数量 1.2(出荷量(万トン))× 価格 48(1トンあたり売上(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.55 倍、価格 0.95 倍、営業利益率 -4.0%
- 炭化けい素繊維:数量 18.0(出荷量(トン))× 価格 22,704(1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。数量 0.90 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 20.0%
- 産業機械・不動産ほか:数量 51.0(受注・賃貸の件数換算)× 価格 0.22(1件あたり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の ROE 2.2% が k 8% 以下なので PER の上限は 1÷k=11.8 倍。稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 148 億円だが、悲観では電極の赤字処理と減損が続くため、稼ぐ力の 7 割弱(やや悲観の 8.2 倍よりやや高い程度)に置く。純現金と売れる資産の税後の床は別欄に書いた。(上限の約 70%)
確率:電極の構造的な負けに、ニカロンの置き換えなどが重なる。資本効率が低く、赤字の期も過去にあるため12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファインカーボン・負極材
半導体・太陽電池の製造装置向け断熱材や炭素複合材、特殊黒鉛材、電池の負極材。装置メーカーの投資に連動する。
| 数量出荷量(トン換算) | 価格1トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,070 | 2,000 | 214 | 28 |
| 10 年後 中立 | 1,391 | 2,560 | 356 | 52 |
取り方:開示は炭素製品全体(売上 324 億円・営業利益 30 億円)のみ。電極と分けて、ファインカーボン(負極材を含む)は売上 214 億円、営業利益 28 億円と推定した(推定、開示なし)。1,070 トンの出荷で 1 トンあたり 2,000 万円(断熱材・複合材・特殊黒鉛の平均)とした。数量は半導体投資で伸び、価格は物価並みに上げやすいが競合で少し下がる。
人造黒鉛電極
電炉で鉄スクラップを溶かす製鋼用の人造黒鉛電極。中国の安値輸出で収益が薄い。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.2 | 50 | 110 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 55 | 111 | 5 |
取り方:同じく推定で売上 110 億円、営業利益 2 億円とした(推定)。年 2.2 万トンの出荷で 1 トンあたり 50 万円。数量は国内鉄鋼の縮小で緩やかに減り、価格は中国の安値で物価に届かない。
炭化けい素繊維
航空機エンジン向け炭化けい素連続繊維(ニカロン)。米GE・仏サフランとの合弁でも量産する。
| 数量出荷量(トン) | 価格1トンあたり売上(万円。1 kgあたり約 20.6 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 20,640 | 41 | 15 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 27,658 | 100 | 33 |
取り方:開示は売上 41.28 億円、営業利益 14.79 億円。出荷量を年 20 トン、1 kgあたり約 20.6 万円と置いた(推定、開示なし)。航空機エンジンの複合材の広がりで数量が伸びる。 先の数量はトン(出荷量)で、航空機エンジンの複合材の広がりによる実物の需要。名目の市場の伸びではない。
産業機械・不動産ほか
産業用機械の製造・修理と不動産賃貸。
| 数量受注・賃貸の件数換算 | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 0.20 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.27 | 16 | 3 |
取り方:開示は売上 12.09 億円、営業利益 3.30 億円。件数換算の置き(推定)。
リスクと懸念
人造黒鉛電極の構造的な過剰
世界で電極の供給が余り、中国とインドの安い製品が出回る。東海カーボンは能力を4割削った。日本カーボンは同じ整理を打てるほど規模が大きくなく、赤字か、ほぼ利益が出ない状態が長引く恐れがある。
半導体投資の波
ファインカーボンは装置メーカーの投資に連動する。2025年にパワー半導体の失速で炭素製品の利益が4割以上減った。回復の勢いが弱ければ、中計の10%成長は実現しない。
航空機エンジンの単一顧客
ニカロンはGEとサフランの合弁を通じた納入が中心だ。エンジンの認定が外れたり、別の繊維に置き換わったり、航空機の生産が滞れば、利益の3割を占める事業が急に縮む。
設備投資の重さ
2025年は有形固定資産の取得に55億円を使い、営業の稼ぎを上回った。投資が成果に結びつかなければ、配当の原資が細る。2025年は火災の損失も8億円出ており、生産が国内の工場に集中する点も弱みだ。
為替と原材料
海外売上比率は43%で大部分が外貨建て。ヘッジはあるが円高は利益を削る。原料炭やコークスの高騰で、電極や炭素製品の原価が上がりやすい。
持ち合いと提携の整理
SECカーボンと互いに4%ずつ持ち合う。電極の提携が深まれば再編もあるが、うまく進まなければ、お金だけ出して成果が薄い提携になる。KISCOとの提携も成果が見えにくい。
今後の分かれ目
- パワー半導体と太陽電池の装置投資が回復し、ファインカーボンの受注が2年続けて増える
- ファインカーボンの数量と利益率の想定を上げ、やや楽観以上の確率を増やす。
- ニカロンを採用する新型エンジンの量産が前倒しになる、または採用が増える
- SiC繊維の数量を上げる。逆に認定の取り消しや置き換えが出れば、悲観の確率を増やす。
- 電極で提携先との生産の統合や、能力の削減が決まる
- 赤字が止まる前提で電極の利益率を上げる。ただし売上は縮むので数量を下げる。
- 中国やインドの電極の輸出価格が大きく下がる
- 電極の価格を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 自社株買いと消却を継続的に行い、還元性向を引き上げる
- 10年の還元を増やす。ただし事業の稼ぎそのものは変わらない。
- SECカーボンとの再編やTOBの話が出る
- 買収の価格と条件を確かめる。保有株の価値や、電極の整理が進むかで評価を直す。
見ておくもの
- ファインカーボンと炭素製品関連の営業利益の推移
- 炭化けい素繊維の売上と利益率
- 人造黒鉛電極の輸出価格と、中国・インドの供給動向
- 設備投資額と営業キャッシュフロー
- 還元の方針(自社株買いの有無)、SECカーボンとの関係
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の利益率と10年後の自己資本から出した ROE と、k 8%(基本 7.5% に quality +1.0%)、g 4% から導く正当化 PER に置いた。今の PER や株価、同業の倍率を見て決めていない。筋書きは先に数量 × 価格で積み、倍率は後から決めた。炭素製品の内訳(ファインカーボンと電極)は開示がなく推定。2025年の純利益 48 億円は売却益などを含むため、ならした約 30 億円を流れの起点にした。純現金は 47 億円で時価総額の 9% と 1 割未満のため、excess_cash は立てない。リースは工場中心で軽く、新リース会計基準(2028/03 期以降)の影響は家賃の形が変わる程度なので、10年後の数字は今の形でそろえた。 持ち合い株の含み益(評価差額金の税後)は余った現金に 0.5 で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.9→16.14 倍・やや楽観 PER 12→15.08 倍・中立 PER 11.8→13.49 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0%。同じ領域の東海カーボン・品川リフラの水準に近い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。