結論
ヨータイは、製鉄所やセメント窯、ガラス窯の内側を守る耐火物の専業メーカーだ。筆者の結論は、やや割高である。いちばんの理由は、成長の道が細いことだ。利益率は高く財務も強いが、国内の鉄鋼という需要の本体が縮んでいく。
2026年3月期の売上は296億円、営業利益は36億円で、営業利益率は12%だ。耐火物が売上の8割強、築炉や環境装置のエンジニアリングが残りを占める。自己資本比率は81.5%、有利子負債はほぼない。
足元の大きな出来事は、2025年に麻生グループの投資会社ASNFホールディングスが、公開買付けで株式の35.4%を取得したことだ。ヨータイは賛同し、上場は続いた。筆者は、これは買収の完了ではなく、第一歩にとどまる可能性もあると見る。
10年後の中立で、営業利益率は11%台、ROEは6%台と見る。国内鉄鋼の縮小を、非鉄・ガラスと海外がほぼ打ち消すが、利益は物価並みにしか伸びない。配当性向は60%以上と高く、自己資本が増えにくい点は評価できる。ただ、中期経営計画の目標は未達の見込みで、海外の売上はまだ17億円と小さい。確率で重みをつけた価値は、今の時価総額を2割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヨータイは「小さいが質の良い部材屋」に映る。
耐火物は、顧客の窯に深く入り込む商売で、取り替えの需要が続く。営業利益率は12%で、無借金、自己資本比率は81.5%と財務は強い。景気の波も、鉄鋼一辺倒の会社ほどは大きくない。
課題は、成長の道だ。国内の鉄鋼は細り、非鉄とガラスは小さく、海外は始まったばかりだ。筆者は、10年後の中立の純利益を29億円ほどと見る。今の25億円から、物価並みにしか伸びない。
資本の使い方では、配当性向を高く保つ点を評価する。ためた利益を無理に事業に投じず、株主に返している。ただ、現預金57億円と投資有価証券38億円が、売上の4分の1に当たる。
最大の変数は、ASNFだ。35%を持つ最大株主は、少数株主にとって、買収の上積みという機会にも、経営の自由度が下がる負担にもなる。安全域は、悲観でも資産の売却価値が時価総額の半分ほど残る点にある。ただし特別に安い値段ではない。
何で稼ぐ会社か
ヨータイの稼ぎ方は、窯や炉の内張りを作って売ることだ。製鉄の炉、セメントを焼く窯、ガラスを溶かす窯は、1,000度を超える熱にさらされる。内側を耐火物で覆わないと、窯が持たない。耐火物は消耗するので、定期的な修繕で取り替えの需要が続く。
耐火物等の事業は、2026年3月期に売上242億円、セグメント利益48億円で、利益率は20%近い。顧客は鉄鋼が中心で、セメント、ガラス、非鉄金属、窯業と幅がある。大阪府貝塚市に本社を置き、岡山県の吉永工場など、国内に生産拠点を持つ。2022年には柴田窯業原料から耐火物の原料を作る事業を譲り受け、原料の調達を内製に寄せた。
エンジニアリング事業は、炉の築造や環境装置を手がけ、売上は54億円と過去最高だった。非鉄金属向けと環境装置の大型案件が伸びた。
海外の売上は17億円とまだ小さい。中国に販売の子会社を持ち、インド・タイ・インドネシアで受注を取った。インドネシアでは築炉会社との提携で拡販している。
決算は期末に集中する傾向があり、窯の定期修繕の時期に需要が重なる。燃料は重油から天然ガスへの転換を進めており、吉永工場は2026年11月、日生工場ではトンネルキルンの省エネ化を同年12月に予定している。
優良さと弱いところ
ヨータイの強みは、顧客の窯に合わせた配合と施工の実績にある。耐火物は、窯ごとに温度や雰囲気が違い、顧客が一度採用すると、実績を重ねた製品を続けて使う。信頼を積む商売で、新規参入の壁は高い。この関係が、営業利益率12%、耐火物の利益率20%近いという水準を支えている。
弱みは三つある。第一に、鉄鋼への偏りだ。国内の粗鋼生産は、高炉の休止とともに縮小が続く。2026年3月期も鉄鋼メーカーの生産量は減った。第二に、原燃料の上昇だ。中国産の原料価格や燃料費が高止まりしており、価格改定でようやく補っている。第三に、規模が小さい。海外売上は17億円しかなく、世界で戦う力はまだ小さい。
資本効率は、中程度だ。ROEは7.3%で、過去10年の中央値9.7%を下回る。自己資本比率が81.5%と厚いのが原因で、無借金のため、ROEが上がりにくい。
経営の評価は、慎重に保つ。第二次中期経営計画は、売上で20億円、経常利益で6億円の未達を見込む。ただ配当性向60%以上の方針は守っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ヨータイの業界は、国内の素材産業に張りついている。
鉄鋼向けが最大で、国内の粗鋼生産は2024年に前年比3.4%減の8,400万トンまで縮んだ。耐火物の需要も、これに連動して縮んでいる。高炉から電炉への転換は、脱炭素の流れの中で進む。長い目では、国内の鉄鋼向けは細る。
セメント、ガラス、非鉄金属は鉄鋼ほど縮まない。窯の修繕は周期的に続き、2026年3月期は非鉄・ガラスの大型受注が鉄鋼の減少を補った。電子部品向けの窯も、海外を中心に受注が増える。
業種ノートの見方は、耐火物の数量は実質で10年ほぼ横ばい、価格は名目で年1〜3%と、鉄鋼メーカーとの長期契約で原燃料の上昇を一部通せるというものだ。重油から天然ガスへの燃料転換は、吉永工場が2026年11月、瑞浪工場がその後と進む。
循環の位置は、鉄鋼の需要の山を過ぎ、横ばいに近い。中東情勢や円安は、原燃料のリスクとして残る。
日本の耐火物は年間約120万トンが消費され、その約8割が鉄鋼向けだ。つまり、需要の大半が、国内の粗鋼生産という一つの数字に結びついている。ここが、ヨータイの10年の最大の変数である。
資本政策と M&A
株主還元の方針は、連結配当性向60%か、1株あたりの下限額のいずれか高い方を基準にする。2026年3月期の配当性向は67%だった。2027年3月期の予想も、ほぼ同額の配当だ。自己株式の取得も、財務戦略として検討するとしている。
いちばん大きな資本政策は、2025年の公開買付けだ。麻生グループの出資で作られたASNFホールディングスが、今の株価より高い価格で公開買付けを行い、発行済株式の35.4%を取得した。上限は3分の1ほどに置かれ、総議決権の3分の1以上を確保できる水準だ。ヨータイは賛同し、上場は維持された。住友大阪セメントも12.9%を持つ。セメント窯の資材調達先として、取引関係の維持が目的だと開示している。
筆者は、ASNFが今後さらに持ち分を高めて完全に取り込む可能性を、ゼロとは見ない。ただ、具体的な開示はなく、確率は重く見ない。
投資は3年で80億円の計画だ。戦略投資に40億円、更新に15億円、DXに5億円を充てる。投資有価証券が38億円ある(上場株17銘柄)が、簿価は小さい。
還元の置き方:10年の中立で純利益の合計の65%ほどを配る。会社の方針に沿った形で、現預金は大きくは積み上がらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
耐火物は、窯が動く限り、消耗品として需要が続く事業だ。ヨータイは配合と施工の実績で、顧客の窯に入り込んでいる。耐火物等のセグメント利益率は20%近くあり、同業の大手と比べても高い。2026年3月期は鉄鋼の生産が減っても、価格改定と非鉄・ガラスの大型受注で増益を保った。
海外は、インド・タイ・インドネシアで受注を取り始めた。採用テストをする顧客が増えており、種まきの段階を終えつつある。エンジニアリングも過去最高で、環境装置の案件が続く。
ASNFが35%を持つ意味も大きい。麻生グループのような長期の株主が入ったことで、経営に規律と販路の支えが加わる。TOBで買った以上、株価を上げる動機がある。配当性向は60%以上、ROE10%以上とPBR1倍以上を掲げ、財務は無借金。今の時価総額は自己資本とほぼ同じで、資産の裏づけは厚い。
燃料を天然ガスに替える投資が終われば、原燃料費の変動も小さくなる。3年で80億円の投資計画も、財務の余力で賄える。
慎重な見方
国内の鉄鋼向けは、構造的に縮む。高炉の休止は続き、電炉への転換で需要の形も変わる。2026年3月期も、鉄鋼メーカーの生産減が響いた。第二次中計は売上で20億円、経常利益で6億円の未達を見込み、会社自身が環境変化を想定より厳しいと認めている。
原燃料の高止まりも重い。中国産の原料価格は読めず、価格改定が遅れれば利益率は急に下がる。海外売上は17億円しかなく、数年で国内の穴を埋める規模ではない。中国の子会社は、旧子会社を譲渡した過去もあり、海外展開の足取りは重い。
資本の面でも課題がある。自己資本比率81.5%は財務の強さである一方、資本効率の低さを意味する。ROEは7.3%で、資本コストに届かない。ASNFは35%を持つが、買収後の戦略は不明で、TOBの価格より高く売り抜けられる保証はない。少数株主にとって、大きな株主の存在は両刃の剣だ。
現預金は2021年3月期をピークに減っている。営業キャッシュフローは25億円と前期より4割減り、投資と配当で出ていくお金が上回った。無借金とはいえ、配当性向を高く保つ余力は無限ではない。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。耐火物の質の高さは認めるが、国内鉄鋼の縮小を打ち消す力が、実績の側に足りない。確率は中立に3割強、悲観側に3割台を置き、強気側は3割強に抑えた。ASNFによる買収の上積みは、確率として小さく織り込むにとどめた。
なお、財務の厚みと配当の高さが下値を支える点は、悲観の深さを浅くする方向に効いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,892 円349 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 881 円163 億円)。 今の値に割り戻すと 1,476 円272 億円、今との差 −12.1%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,415 円630 億円 | 1,317 円243 億円 | +181.8% | +10.9% | 473 円87 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,479 円458 億円 | 1,068 円197 億円 | +111.2% | +7.8% | 780 円144 億円 |
| 中立 | 34% | 1,957 円361 億円 | 986 円182 億円 | +75.3% | +5.8% | 1,001 円185 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,084 円200 億円 | 650 円120 億円 | +3.3% | +0.3% | 382 円70 億円 |
| 悲観 | 12% | 845 円156 億円 | 298 円55 億円 | −31.9% | −3.8% | 137 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,892 円349 億円 | 881 円163 億円 | +65.2% | +5.1% | 2,773 円512 億円 |
今の株価時価総額 1,679 円310 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 電炉化と非鉄・ガラス向けが伸び、アジアの耐火物で存在感を持つ 利益 46 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,415 円630 億円
耐火物の需要が、鉄鋼の縮小を非鉄金属・ガラス・電子部品向けと海外が上回って増える。インド・タイ・インドネシアで築炉会社との提携が実を結び、中国子会社の販路も育つ。顧客が採用テストを終えた製品が、継続的な受注に変わる。
エンジニアリングは、環境装置と非鉄向けの大型案件が続き、売上が3割増える。
吉永・瑞浪工場の天然ガス転換で燃料費が安定し、価格改定も通る。10年後の売上は450億円台、営業利益率は14%台と、直近の水準を上回る。株主還元は配当性向65%で続き、ROEは10%に近づく。ここまで来れば、ヨータイは国内の鉄鋼依存の会社ではなく、アジアの耐火物会社として評価される。
- 耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け):数量 266(当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 135(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 359 億円・営業利益 75 億円。実質1.10倍(非鉄・ガラス・海外が鉄鋼の縮小を上回る)、価格指数135
- エンジニアリング(築炉・環境装置):数量 70.3(当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 138(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 97 億円・営業利益 16 億円。実質1.3倍(環境装置・非鉄の大型案件)、価格指数138
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 630 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の鉄鋼が縮む中で、非鉄・ガラス・海外が穴を埋めて余りあるという、いくつもの当たりが10年続く必要がある。中計の未達が続く今、確度は高くない。
やや楽観 22% 非鉄・海外が鉄鋼の縮小をおぎない、利益は着実に伸びる 利益 37 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,479 円458 億円
鉄鋼向けの数量は、高炉の休止で少しずつ減る。だが、鉄鋼メーカーとの長期の取引関係の中で、原燃料の上昇分を価格に載せる力がある。非鉄・ガラス・電子部品向けと海外が、減る分を補う。
エンジニアリングは過去最高の売上を保ち、環境装置の案件も続く。海外では、築炉会社との提携先が増え、採用テストを終えた顧客が継続的な発注に移る。
10年後の売上は400億円ほど、営業利益率は12%台。配当性向は60%を守り、自己資本はほとんど増えない。ROEは8%ほどで、資本コストをわずかに上回る。燃料転換の投資が終わり、原燃料費の変動も小さくなる。
- 耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け):数量 249(当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 130(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 324 億円・営業利益 65 億円。実質1.03倍、価格指数130
- エンジニアリング(築炉・環境装置):数量 62.2(当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 135(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 84 億円・営業利益 13 億円。実質1.15倍、価格指数135
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 458 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鉄鋼向けは細るが、価格改定が通り、非鉄とガラスがそれを補う。海外の受注は小さな規模から着実に伸びる。
中立 34% 中立:鉄鋼の縮小を非鉄と価格改定が打ち消し、利益は物価並みに横ばい 利益 29 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,957 円361 億円
鉄鋼向けの数量は国内の粗鋼生産とともにじわじわ減る。非鉄金属、ガラス、セメントの修繕需要が下支えするが、海外はまだ小さい。耐火物全体の数量は、10年で3%ほど減る。
価格は、鉄鋼メーカーとの長期契約で、原燃料の上昇を一部しか転嫁できない。物価より低い年2%の上昇にとどまる。
エンジニアリングは、案件の波はあるが、売上は物価並みに伸びる。10年後の売上は370億円ほど、営業利益率は11%台。今の水準(12%)から少し下がる。配当性向60%を守りつつ、自己資本は増え、ROEは6%台にとどまる。中計が掲げたROE10%以上は、10年たっても届かない。ASNFの存在が資本政策を動かす可能性は残るが、中立にはその分を織り込まない。
- 耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け):数量 235(当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 125(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 293 億円・営業利益 56 億円。実質0.97倍(国内鉄鋼の縮小を非鉄・海外が打ち消す)、価格指数125(業種ノートの名目年1〜3%。原燃料の転嫁は一部)
- エンジニアリング(築炉・環境装置):数量 54.1(当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。実質横ばい、価格指数134(物価並み)
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 361 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの耐火物の見方(数量は実質ほぼ横ばい、価格は名目年1〜3%)を当て、国内鉄鋼の縮小を非鉄・ガラスと海外が打ち消すと置く。会社の予想(売上300億円、経常利益39億円)の延長でもある。
やや悲観 22% 高炉の休止が加速し、耐火物の数量と値段が下がる 利益 17 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,084 円200 億円
高炉が次々と休止し、鉄鋼向けの数量は15%ほど減る。顧客の鉄鋼メーカーは電炉への転換でコストを抑えようとし、耐火物にも値下げを求める。価格は物価を下回り、年1.7%の上昇にとどまる。
非鉄・ガラス向けは堅いが、鉄鋼の穴を埋めるには小さい。エンジニアリングも案件が減る。
10年後の売上は300億円で、営業利益は23億円ほど。配当性向60%の方針は、利益の減少とともに配当額が下がる。厚い自己資本は積み上がり、ROEは4%ほどに落ちる。厚い自己資本が積み上がっても、稼ぐ力は戻らない。海外の売上も小さいままで、国内の穴を埋められない。
- 耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け):数量 213(当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 118(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 251 億円・営業利益 40 億円。実質0.88倍、価格指数118(鉄鋼の値下げ要求で物価を下回る)
- エンジニアリング(築炉・環境装置):数量 51.4(当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 120(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 62 億円・営業利益 7 億円。実質0.95倍、価格指数120
倍率:事業の ROE 4.1% が k 8% を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値。構造的に縮む筋書きで、稼ぐ力(純利益 ÷ k)に近づけず、10.83 倍に置いた。
確率:国内鉄鋼の高炉休止が前倒しで進み、顧客の鉄鋼メーカーが部材の値下げを迫る想定。国内の粗鋼生産は縮小が続いており、十分ありうる。
悲観 12% 国内鉄鋼の基盤が崩れ、耐火物の需要が蒸発する 利益 −7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 845 円156 億円
国内の高炉が大量に休止し、鉄鋼向けの数量が3割減る。中国などの安い耐火物が入り込み、非鉄・ガラスでも価格が崩れる。海外の販路は育たない。
10年の累計でも利益はわずかで、営業利益率は数%に落ちる。配当は大きく減らされ、新しい設備の一部は減損になる。吉永・瑞浪工場の天然ガス転換の投資が回収できず、固定費の重さだけが残る。
評価は稼ぐ力ではなく、持っている資産の価値で決まる。ただし借金がなく、現預金・売上債権・棚卸資産・投資有価証券が厚いので、床は高い。ASNFが追加で買う場合も、床に近い値段で買われる可能性が出る。
- 耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け):数量 169(当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 105(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 178 億円・営業利益 11 億円。実質0.7倍、価格指数105(値崩れ)
- エンジニアリング(築炉・環境装置):数量 37.9(当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 105(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。実質0.7倍、価格指数105
倍率:鉄鋼向けが崩れて稼ぐ力はほぼ消える。無借金で現預金・売上債権・棚卸資産が厚いので、売れる資産の税後を床にした(約 156 億円)。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。
確率:鉄鋼の高炉が一気に休止し、海外にも出られず、部材の値崩れが重なる二重の負けが必要。過去の赤字期はないが、2003年3月期には営業利益がほぼゼロになった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
耐火物等(鉄鋼・セメント・ガラス・非鉄・窯業向け)
製鉄・セメント・ガラス・非鉄金属の炉や窯の内張りに使う耐火物の製造・販売と、取り替えの需要への対応。
| 数量当社の実質の取り分(耐火物の消費量 × シェア、今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 242 | 100 | 242 | 48 |
| 10 年後 中立 | 235 | 125 | 293 | 56 |
取り方:決算説明の耐火物等事業(売上241.8億円・セグメント利益47.6億円)を置いた。トン数の開示が無いので、売上を実質の取り分として置く。国内の耐火物消費量は年約120万トンで、その約8割が鉄鋼向け(業種ノート)。価格は物価の指数(今=100)、rev_factor=0.01で億円に換算する。数量は実質で、物価は価格の側に入れた。
エンジニアリング(築炉・環境装置)
炉の築造・補修と、環境装置の設計・施工。非鉄金属向けと環境装置の大型案件が中心。
| 数量当社が受ける工事の実質の量(今の値段基準の売上・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54.1 | 100 | 54 | 8 |
| 10 年後 中立 | 54.1 | 134 | 73 | 10 |
取り方:決算説明のエンジニアリング事業(売上54.1億円・セグメント利益7.96億円。過去最高)を置いた。件数の開示が無いので、売上を実質の取り分として置く。価格は物価の指数(今=100)、rev_factor=0.01で億円に換算する。
リスクと懸念
国内鉄鋼の縮小
耐火物の需要の多くは鉄鋼向けで、国内の粗鋼生産は高炉の休止とともに縮んでいる。2024年は前年比3.4%減の8,400万トンだった。電炉への転換で需要の形も変わるため、数量の減少は構造的な向かい風になる。
原燃料の高止まり
中国産の原料価格や燃料費は高止まりしており、価格改定でようやく補っている。顧客の鉄鋼メーカーは購買力が強く、転嫁が遅れる局面がある。中東情勢や円安も、原燃料のコストを押し上げる。
中計の未達
第二次中計は、最終年度の2027年3月期に、売上で20億円、経常利益で6億円の未達を見込む。会社は環境変化が想定以上だったと認めている。次の中計で目標の置き方を変えないと、市場の信頼を失う。
最大株主ASNFの意向
ASNFは35.4%を持つ最大株主で、将来の経営方針や資本政策に影響しうる。持ち分をさらに高める動きは少数株主に機会になるが、買収後の戦略は開示されておらず、不確実性が残る。
海外展開の遅れ
海外の売上は17億円で、前期の大型案件の反動もあり減った。中国の旧子会社を譲渡した経緯もあり、海外展開の足取りは重い。国内の縮小を海外が埋めるには時間がかかる。
資本効率の低さ
自己資本比率81.5%は財務の強さの一方で、ROE7.3%と資本コストに届かない。目標のROE10%以上は、利益の伸びか自己資本の圧縮が要る。自己株式の取得は検討とされるにとどまる。
今後の分かれ目
- ASNFが追加の公開買付けで持ち分を引き上げる
- 少数株主にはプレミアムの機会になる。経営の独立性は下がるが、完全子会社化なら上場は終わる。
- 海外売上が3年で50億円を超える
- 国内鉄鋼の縮小を打ち消す道が見え、強気側の確率を引き上げる材料になる。
- 自己株式の取得や配当性向の引き上げが発表される
- ROEが改善し、資本効率の評価が上がる。PERの上限に近づく可能性が出る。
- 国内の高炉休止が前倒しで進む
- 鉄鋼向けの数量が大きく減り、やや悲観の筋書きに近づく。
- 原燃料の価格が急落する
- 価格改定の反動で利益率が上がる一方、顧客の値下げ要求が強まる可能性がある。
見ておくもの
- 国内の粗鋼生産量と高炉の休止計画
- 耐火物等の営業利益率(原燃料価格との差)
- 海外売上と新規顧客の採用状況(インド・タイ・インドネシア)
- ASNFの持ち分の変化と、第三次中期経営計画の資本政策
- 吉永・瑞浪工場の天然ガス転換の効果
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PBR 0.90倍)を見ずに、その時点のROEと資本コスト8%から正当化PERを出し、上位の筋書きは上限の8.5割、中立は式の9割に置いた。やや悲観は稼ぐ力、悲観は売れる資産の税後(約156億円)で床を置いた。数量は実質、価格は物価1.34倍が基本で、耐火物は業種ノートの名目年1〜3%に合わせて下げた。現預金57億円は運転資金と投資計画で必要と見て分けていない。ASNFによる買収は確率として小さく織り込み、価値には直接足していない。過去や同業の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.09→13.7 倍・やや楽観 PER 10.08→12.5 倍・中立 PER 9.76→12.5 倍・やや悲観 PER 10.5→10.83 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.75% = 8.25%。ASNFの動きなど個別の不確かさは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。