結論
三谷セキサンは、ビルや工場の基礎に打ち込むコンクリートの杭(パイル)で、国内 2 位の会社だ。首位とほぼ並ぶ。筆者の結論は「やや割高」である。事業は良い。ただ今の利益は山の頂にあり、10 年で見れば、たまり続ける現金の使われ方が値打ちを決める。
稼ぎの源は杭だ。売上の 8 割強を占め、2026 年 3 月期の営業利益率は 17.7%に達した。工場に大きな資本を寝かせず稼ぐ、軽い事業である。国内の杭の出荷は、2005 年の 373 万トンから 200 万トンまで細った。それでも当社は大型物件を取り、販売量を伸ばした。
会社の予想は慎重だ。2027 年 3 月期の営業利益は 142 億円と、2 割近い減益を見込む。競合との価格競争と原材料高が理由である。第 1 四半期は 9%の増益だったので、予想はやや低めに見える。それでも、いまの利益率が続くとは筆者は見ない。
もう一つの顔は資産だ。現金が 466 億円あり、借金はほぼない。三谷商事株を中心とする有価証券も 369 億円ある。二つで時価総額の 6 割近い。ただ持ち合いが厚く、株主に戻る道は細い。
中立の 10 年後は営業利益 156 億円、時価総額 2,070 億円。強気が当たれば今の 2.5 倍、悲観が当たれば半分に沈む。確率で重みをつけた本質価値は、今より 18%低い。
バリュー投資の観点から
この会社を長く持ちたいか。筆者の答えは「事業は持ちたい。ただし値段と資本の使い方に注文がある」だ。
事業は必需の部材で、10 年後も存在する。設備が軽く、利益のわりに元手が要らない。ここは高く評価できる。ただし、投資が止まっているわけではない。2026 年 3 月期の設備投資は 62 億円と、減価償却の約 2 倍に増えた。建設中の設備も 34 億円ある。
堀は浅い。値段を決めるのは相手で、首位との価格競争が続く。いまの利益率は過去の 1.5 倍で、山にいる。この水準に高い倍率を払うのは危うい。
気になるのは、たまったお金だ。現金と有価証券は時価総額の 6 割近い。使い道は事業に見えず、三谷商事との持ち合いが厚い。こうした資産は、配当や自社株買いで株主に戻って初めて値打ちになる。戻る道が細いため、筆者は帳簿の半分しか数えない。
安全域は悲観の床にある。悲観でも、現金と売れる有価証券の税引き後は 700 億円ほど残る。今の時価総額の半分に当たる。倒産は考えにくい。ただ、中立の筋書きでも、今の値段に見合う本質価値には届かない。払う値段に、十分な安全域があるとは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 3 本ある。杭を中心とするコンクリート二次製品、情報関連、そしてホテルや環境衛生などのその他だ。
中心は杭である。杭は、ビルや工場の下に打ち込み、建物の重さを硬い地盤へ伝える部材だ。遠心力でコンクリートを固めて工場でつくり、現場で打ち込む。会社は杭のほか、電柱などのポール、環境製品、砂利も扱う。この部門の 2026 年 3 月期の売上は 832 億円、営業利益は 147 億円だった。全社の営業利益の 8 割以上を稼ぐ。
設備が軽く、資本の効きが高い。部門の資産は 610 億円ほどで、利益はその 4 分の 1 近くに当たる。ただ、杭は着工に左右される。顧客はゼネコンやハウスメーカーなどで、大口の物件では価格交渉が厳しい。
売り方にも特徴がある。杭を売るだけでなく、打ち込む施工まで手がける。プレボーリング工法などの独自の工法と、施工の記録を管理するシステムを持つ。会社は「12 年連続シェア 1 位」を掲げる。ただ 2024 年度の出荷では、首位のジャパンパイルに約 2 ポイント届かず 2 位だった。
情報関連は、コンピュータ周辺装置の販売とソフトの受託開発だ。子会社のゲイトウェイ・コンピュータを 2025 年度に売り、規模は大きく縮んだ。今後は小さな付け足しになる。
その他は、ホテルと賃貸ビル、環境衛生(廃棄物の収集運搬や施設管理)、太陽光発電だ。売上 92 億円で営業利益 22 億円と利益率は高い。ホテルは改修で稼働が落ちたが、杭が不調の年にも下支えする、安定した副業である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、工場の数と施工力にある。ただし深い堀ではない。
杭は重く、遠くへ運ぶと採算が合わない。全国に工場を持つ会社だけが、各地の現場へ届けられる。国内の出荷の約 6 割を、首位と当社が握る。この寡占は、新しい参入者を阻む。
一方、堀を守る力は弱い。首位のジャパンパイルと当社は、ほぼ同じ量を出し合う。差は 2 ポイントほどで、10 年前は当社が首位だった。大型物件は価格で争う。会社自身が、競合との価格競争の激化を毎年の見通しに書いている。値段を自分で決められる事業ではない。
強みは資本の軽さだ。直近の ROE は 13.6%。設備に寝かせる資金が少なく、利益に対して必要な元手が小さい。しかも自己資本の大半は余った現金と有価証券で、事業そのものの資本効率は、見かけの ROE よりずっと高い。
弱点は 3 つある。第 1 は、利益率が山にいること。営業利益率は 2023 年 3 月期の 11.6%から 17.6%まで上がった。過去には 4% 台の年もある。第 2 は需要の縮小で、杭の出荷は 2005 年から半分近くに減った。第 3 は資本の使い方で、現金の山を事業に使う場が見えない。
筆者は事業の質を「良いが、永遠ではない」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
杭の需要は、ビルや工場が何棟建つかで決まる。いま国内の出荷は 200 万トンだ。ピークの 2005 年は 373 万トンで、ほぼ半分になった。
落ち込みは一直線ではない。2016 年から 2022 年は 270 万トン前後で横ばいだった。2023 年に 213 万トン、2024 年に 200 万トンと急に下がったのは、着工の遅れで案件の時期がずれたことが大きい。2025 年度は業界の出荷が 0.2%減にとどまり、民間は増えた。下げ止まりの兆しはある。
今後の需要の中心は、建て替えと再開発、物流施設、防災の公共工事だ。いずれも杭を使う。一方、新築住宅は人口減で細る。筆者は、10 年で年 1.5%ほどの緩やかな縮みを中心に置く。
競争の形は、上位 2 社の勝負だ。ジャパンパイルと当社がそれぞれ約 3 割、日本コンクリート工業と日本ヒュームが約 9%ずつを持つ。需要が縮む中で工場を持ち続けるため、各社は稼働率を守ろうと値引きに走りやすい。会社の見通しも、競合との価格競争と原材料の高止まりを挙げている。
直近の値上げは追い風だった。人件費・運賃・鋼材の上昇を価格に載せ、2025 年度は杭部門の営業利益が 4 割近く伸びた。この値上げが定着するかが、今後の分かれ目になる。
環境の規制も効く。コンクリートは製造時に CO2 を出す。当社は産業副産物を直接使う新工法(CO2 を約 6 割減らせる)で、国土交通大臣の認定を取った。環境に強い杭は、官公需や大手の物件で選ばれやすくなる。
資本政策と M&A
資本の使い方は守りで、ゆっくり変わりつつある。
2026 年 3 月期の配当は純利益の 26%だった。自社株買い 14 億円を足しても、総還元は 35%ほどにとどまる。会社は「安定的な還元と、設備・研究開発・M&A のための内部留保」を方針とし、数値の目標は出していない。この年は配当を 4 割増やし、4 月に株式を 4 分割した。株を買いやすくする狙いである。
それでも現金は年々たまる。現金は 466 億円、有価証券は 369 億円。純現金は 10 年前の 3 倍になった。
特徴的なのは持ち合いだ。当社は三谷商事の筆頭株主で、約 15%を持つ。逆に三谷商事も、当社の約 9%を持つ。当社の自己株も約 16%ある。オーナー系のグループで、市場の圧力は強くない。
M&A は、情報関連の子会社を売った。事業の整理は進めたが、大型の買収は目につかない。TOB の可能性は、持ち合いが厚いため低いと筆者は見る。外から資本の効率を問われるかは、東証の要請しだいだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
杭の需要は底に近い。全国の出荷は 200 万トンまで落ち、ここから先の落ち込みは小さい。2025 年度は業界が 0.2%減にとどまり、民間は増えた。建て替えと再開発、物流施設の建設が、新築住宅の減少を埋める。
当社は需要が横ばいの中でも、大型物件を取って販売量を増やした。2026 年 3 月期の杭部門は、売上が 22%、営業利益が 40%伸びた。建設中の設備は 34 億円まで積み上がり、増産の余力もある。シェアを取り戻せば、固定費が薄まり、利益率はさらに上がる。
値上げは定着しつつある。人件費・鋼材・運賃を価格に載せることに、顧客も慣れた。出荷の約 6 割を上位 2 社が持つ業界で、価格は崩れにくい。第 1 四半期の営業利益も 9%伸びた。通期予想の 19%減益は、低すぎる。
資産もある。現金 466 億円と有価証券 369 億円は、借金のない安全弁だ。配当は 1 年で 4 割増え、自社株買いも続く。この余力が株主に戻れば、今の時価総額は低い。市場は事業を、6 倍弱の利益でしか評価していない。
環境の面でも先を行く。CO2 を約 6 割減らす新工法で、国の認定を得た。脱炭素の流れは、競合より当社に有利に働く。
慎重な見方
今の利益は山の頂だ。営業利益率は 2023 年 3 月期の 11.6%から、17.6%まで上がった。値上げと大型物件が重なった結果で、続く保証はない。会社自身が 2027 年 3 月期に 19%の減益を見込み、競合との価格競争と原材料高の続きを挙げている。
需要は構造的に細る。杭の出荷は 2005 年の 373 万トンから 200 万トンになった。人口減で新築が減る流れは変わらない。年 1.5%ずつ縮めば、10 年で 15%減る。この規模で、首位と当社が約 3 割ずつを取り合えば、値引きは避けにくい。しかも当社は 2024 年度にシェアを下げ、首位との差が広がった。
鋼材や人件費の上昇を、すべて価格に載せられる保証もない。大口の入札では顧客が強い。
たまったお金の使い道が見えない。現金と有価証券は時価総額の 6 割近いのに、中期経営計画は公開資料で確認できず、数値の目標もない。三谷商事との持ち合いが、市場の目を弱める。総還元は純利益の 35%で、お金がたまる速さのほうが勝つ。
最後に、今期の純利益は情報関連の子会社の売却益で膨らんでいる。それを除けば約 130 億円で、来期はさらに下がる。資産があっても、使わなければ値打ちは上がらない。
どちらに重みを置いたか
数字の勝負では、慎重な見方がやや強い。利益率は山にあり、需要は細り、たまった現金の戻り方も細い。一方で事業は軽く資産は厚いため、悲観でも沈みは浅い。そこで、中立に 4 割弱を置き、やや悲観に 3 割近くを寄せた。楽観は 6%に抑え、悲観は 12%とした。確率は、中立を最も厚く、慎重な側の合計(4 割)を強気の側(2 割強)より重くする形だ。強気が示す値上げの定着と受注の強さは、第 1 四半期の増益に裏づけがあるため、やや楽観に 16%を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,406 円2,384 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 736 円515 億円)。 今の値に割り戻すと 2,165 円1,515 億円、今との差 +0.3%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,291 円4,403 億円 | 1,097 円768 億円 | +242.4% | +13.1% | 443 円310 億円 |
| やや楽観 | 16% | 4,964 円3,474 億円 | 922 円645 億円 | +172.7% | +10.6% | 942 円659 億円 |
| 中立 | 38% | 3,889 円2,722 億円 | 762 円533 億円 | +115.5% | +8.0% | 1,767 円1,237 億円 |
| やや悲観 | 28% | 2,273 円1,591 億円 | 613 円429 億円 | +33.7% | +2.9% | 808 円565 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,002 円701 億円 | 510 円357 億円 | −30.0% | −3.5% | 181 円127 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,406 円2,384 億円 | 736 円515 億円 | +91.9% | +6.7% | 4,141 円2,899 億円 |
今の株価時価総額 2,158 円1,510 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 値上げが定着し、シェアを首位近くまで戻す 利益 197 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 6,291 円4,403 億円
杭の需要が下げ止まり、値上げが定着し、当社がシェアを首位近くまで戻す。全国の出荷は年 0.6%の減にとどまり、10 年後は 190 万トン弱になる。再開発と物流施設、防災の工事が、新築住宅の減少を埋める。当社は大型物件に強く、シェアは 33%へ上がる。
価格は物価を上回り、10 年で 1.5 倍になる。増産で固定費が薄まり、杭の営業利益率は 18%を保つ。全社の営業利益は 257 億円、純利益は 197 億円だ。
余った現金は、配当と自社株買いに回り始める。還元は純利益の半分に近づく。持ち合いの見直しや、遊休資産の売却も進む。ここまでそろうのは、長い期間では難しい。
- コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利):数量 62.0(国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める)× 価格 21(1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む)→ 売上 1,289 億円・営業利益 232 億円。全国 188 万 t × シェア 33% = 62.0 万 t(今の 1.03 倍)× 価格 1.50 倍、営業利益率 18.0%
- 情報関連:数量 50.0(受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.40(取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 52 億円・営業利益 5 億円。ゲイトウェイ売却後に残る事業(今の 44 前後)× 価格 1.40 倍、営業利益率 10%
- その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光):数量 105(ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.45(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 141 億円・営業利益 35 億円。ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光の合計活動量 105 × 価格 1.45 倍、営業利益率 25%
倍率:事業の純利益 187 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)747 億円。全体の PER 19.6 倍、時価総額 4,403 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの定着、シェアの回復、現金の還元の 3 つがそろう形。10 年のあいだに価格競争が一度も再燃しないことが条件で、重ならない。
やや楽観 16% 需要の縮みは小さく、値上げが物価を上回る 利益 159 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 4,964 円3,474 億円
需要の縮みは年 1%弱に収まり、値上げはおおむね物価を上回って通る。当社のシェアは 32%まで戻る。
価格は 10 年で 1.42 倍、杭の営業利益率は 16%。山の利益率からは少し下がるが、過去の水準よりは高い。全社の営業利益は 202 億円、純利益は 159 億円になる。
首位との差は、大型物件の受注力と、環境に強い新工法で保つ。値上げは人件費と鋼材の上昇をほぼ吸収し、杭の利益は山から 1 割ほど下がるだけで済む。副業のホテルや環境衛生も、今の利益を保つ。
還元は純利益の約半分へ上がるが、現金はそれでもたまる。持ち合いの解消までは進まず、余った現金の戻り方は今の評価のままだ。
- コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利):数量 57.6(国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める)× 価格 20(1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む)→ 売上 1,134 億円・営業利益 181 億円。全国 180 万 t × シェア 32% = 57.6 万 t(今の 0.96 倍)× 価格 1.42 倍、営業利益率 16.0%
- 情報関連:数量 45.0(受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.36(取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。ゲイトウェイ売却後に残る事業(今の 44 前後)× 価格 1.36 倍、営業利益率 9%
- その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光):数量 102(ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.38(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 130 億円・営業利益 31 億円。ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光の合計活動量 102 × 価格 1.38 倍、営業利益率 24%
倍率:事業の純利益 149 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)729 億円。全体の PER 18.45 倍、時価総額 3,474 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第 1 四半期の増益と大型物件の受注は、強気の根拠として実績がある。ただ、通期予想は減益で、山の利益率が続く保証はない。
中立 38% 山の利益率が平らになり、現金だけが積み上がる 利益 127 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 3,889 円2,722 億円
需要は年 1.5%ずつ減り、10 年後は 170 万トン強になる。当社のシェアは 31%。値上げは物価並みの 1.34 倍にとどまり、価格競争で、杭の営業利益率は 14%へ下がる。今の山からは平らになる形だ。
全社の営業利益は 156 億円で、今より 1 割ほど低い。純利益は 127 億円。副業のホテルや環境衛生が、杭の波を和らげる。
還元は純利益の 45%まで上がる。それでも現金はたまり続け、10 年後の余った現金は 1,270 億円になる。持ち合いが厚く、この資産の半分しか株主に戻らない。事業は強くても、資産が値打ちになりにくい筋書きだ。
- コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利):数量 53.0(国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める)× 価格 19(1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む)→ 売上 984 億円・営業利益 138 億円。全国 171 万 t × シェア 31% = 53.0 万 t(今の 0.88 倍)× 価格 1.34 倍、営業利益率 14.0%
- 情報関連:数量 44.0(受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.34(取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。ゲイトウェイ売却後に残る事業(今の 44 前後)× 価格 1.34 倍、営業利益率 8%
- その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光):数量 98.0(ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.34(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 121 億円・営業利益 27 億円。ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光の合計活動量 98 × 価格 1.34 倍、営業利益率 22%
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)725 億円。全体の PER 15.72 倍、時価総額 2,722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の緩やかな縮み、物価並みの値上げ、利益率の平らな戻りを、業種のノートの中心値で置いた形。最も厚く置く。
やや悲観 28% 価格競争が長引き、利益が今の半分になる 利益 80 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,273 円1,591 億円
価格競争が長引く。値上げは物価に届かず、10 年で 1.22 倍にとどまる。需要は年 2%強で縮み、当社のシェアは 30%に下がる。
杭の営業利益率は 10%。営業利益は 90 億円と、今の半分になる。純利益は 80 億円。ホテルなどの副業は安定するが、杭の穴は埋まらない。
工場は過剰になり、稼働率を守る値引きが続く。余った現金は残るが、事業の稼ぐ力は大きく落ちる。
首位との価格競争は 10 年を通じて収まらない。鋼材と人件費の上昇は、価格の 2 割増にしか載らない。新しい工場の投資も稼働率の低さで回収が遅れ、持ち合いと現金の山だけが残る。還元は純利益の 45%を保ち、株主には配当が届く。
- コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利):数量 47.4(国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める)× 価格 17(1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む)→ 売上 801 億円・営業利益 80 億円。全国 158 万 t × シェア 30% = 47.4 万 t(今の 0.79 倍)× 価格 1.22 倍、営業利益率 10.0%
- 情報関連:数量 40.0(受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.25(取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。ゲイトウェイ売却後に残る事業(今の 44 前後)× 価格 1.25 倍、営業利益率 5%
- その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光):数量 92.0(ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.25(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 106 億円・営業利益 20 億円。ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光の合計活動量 92 × 価格 1.25 倍、営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 63 億円(全社の純利益から余った現金の利息 17 億円を除く)、事業の自己資本 343 億円で、事業の ROE 18%。k 7.5%、残る割合 1/2 から RONIC 13.3%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 4.0% で上限 16.5 倍。利益の質が落ちる筋書きなので、上限の 6 割に置く(やや悲観は稼ぐ力から置き、7 割へ引き上げない)。上限の 60%(11.44 倍)。余った現金 989 億円は戻り方 0.5 を掛けて足す。
確率:需要の縮みと上位 2 社の価格競争が重なる形。会社自身が価格競争の激化を毎年挙げており、中立より重く見るため、中立に次ぐ厚さにする。
悲観 12% 構造的な値崩れで、軽い事業が重荷になる 利益 20 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,002 円701 億円
構造的な負けになる。需要が 2005 年からの縮小ペースに戻り、年 3.5%ずつ減って 140 万トンまで落ちる。首位との値引きの応酬で、当社のシェアは 28%へ下がり、価格は 10 年で 1.05 倍と物価に大きく届かない。
鋼材と人件費の上昇を転嫁できず、杭の営業利益率は 3%まで落ちる。営業利益は 20 億円を切る。工場は過剰になり、減損で自己資本が 300 億円ほど減る。
それでも倒産は遠い。現金と売れる有価証券の税引き後が、床になる。値打ちは、稼ぐ力ではなく、この資産で決まる。
配当は利益が減っても急には落とさない。10 年間の還元の合計が、後半の薄い純利益を上回る年が出て、手元の現金の取り崩しと、有価証券の一部売却で払う。事業は縮むが、財務は傷まない。ただ、株主が得るのは資産の値打ちだけになる。
- コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利):数量 39.2(国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める)× 価格 15(1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む)→ 売上 570 億円・営業利益 17 億円。全国 140 万 t × シェア 28% = 39.2 万 t(今の 0.65 倍)× 価格 1.05 倍、営業利益率 3.0%
- 情報関連:数量 30.0(受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.10(取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。ゲイトウェイ売却後に残る事業(今の 44 前後)× 価格 1.10 倍、営業利益率 0%
- その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光):数量 85.0(ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.10(活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0))→ 売上 86 億円・営業利益 12 億円。ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光の合計活動量 85 × 価格 1.10 倍、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益は 20 億円前後で、稼ぐ力(÷ k)は 250 億円ほどにすぎない。値打ちは、純現金と売れる有価証券の税引き後(床の資産)と、今の自己資本 1,016 億円への PBR 0.69 倍で見る。三谷商事株など有価証券は、含み益の税を引き、減損と谷の損失を見込んで 280 億円。現金は 440 億円。三谷商事との持ち合いは売りにくいので満額は数えない。
確率:構造的な値崩れに、減損が重なる形。上位 2 社で出荷の約 6 割を握る寡占と、純現金の厚さが歯止めになるため、1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンクリート二次製品(杭・ポール・環境製品・砂利)
コンクリートの杭を中心に、ポール・環境製品・砂利を売り、杭は打ち込む施工まで手がける。
| 数量国内パイル需要(万トン/年)× シェア。ポール・環境製品・砂利はパイル換算に含める | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。施工・ポール・砂利を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 14 | 832 | 147 |
| 10 年後 中立 | 53.0 | 19 | 984 | 138 |
取り方:2024 年度の全国出荷 200 万トン(協会)が 2025 年度は 0.2% 減。当社の販売量は大型物件で増え、シェア約 30% = 60 万トンと推定。部門売上 831.6 億円をこれで割った。施工とポール・砂利の売上を含むため 1 トンの値段より高い。推定である。
情報関連
コンピュータ周辺装置の販売とソフトの受託開発。子会社のゲイトウェイ・コンピュータは 2025 年度に売却した。
| 数量受託開発・機器販売の取扱量(2026/03 を 100 とした指数) | 価格取扱量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 75 | 16 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 1.34 | 44 | 4 |
取り方:2026/03 は売却前の半年を含む売上 74.5 億円。売却後に残る事業の規模は、会社予想の売上減から約 44 と推定した。小さな部門で、物量の開示はなく指数で置く。
その他(ホテル・環境衛生・賃貸・太陽光)
ホテル、賃貸ビル、廃棄物の収集運搬と施設管理、太陽光発電。杭の波を和らげる安定した副業。
| 数量ホテル客室・床面積・処理量の合計活動量(2026/03 を 100 とした指数) | 価格活動量 100 あたりの売上の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 92 | 22 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 1.34 | 121 | 27 |
取り方:売上 92.4 億円、営業利益 22.3 億円。施設ごとの物量の開示がなく、指数で置く。ホテルはインバウンドで好調だが改修で稼働が落ち、環境衛生の収集運搬は減った。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
杭部門の営業利益率は 17.7% と、過去の 8〜12% 台を大きく上回る。値上げと大型物件の効果が薄れ、価格競争で値引きが戻れば、利益は需要の減少より速く落ちる。会社自身が 2027 年 3 月期に 19% の減益を見込んでいる。
杭の需要の構造的な縮小
国内の杭の出荷は 2005 年の 373 万トンから 200 万トンに減った。人口減と新築の減少が続けば、固定費の重い工場の稼働率が下がる。上位 2 社の値引きが再燃すると、利益が一気に削られる。
首位との競争と大口の入札
ジャパンパイルとのシェア差は約 2 ポイントで、2024 年度は当社が下がった。大型物件は入札で、ゼネコンの価格交渉も強い。鋼材・人件費・運賃の上昇を価格に載せきれない年が出る。
余った現金と持ち合い
現金と有価証券は時価総額の 6 割近い。三谷商事との持ち合いやオーナー系の株主構成から、市場の圧力は弱い。使い道が事業に見つからなければ、現金は 2% の利息しか生まず、資本の効率を下げる。
脱炭素の費用
コンクリートは製造時に CO2 を出す。炭素税や排出量取引、建築物の環境評価が厳しくなれば、費用が増える。新工法で CO2 を約 6 割減らせるが、設備と認定の対応が競合より遅れれば不利になる。
着工の遅れと工事の期ずれ
杭は基礎工事で、建物の着工が遅れれば出荷が後ろへずれる。人手不足や建築費の高騰で、物流施設や再開発の着工が先送りされると、1 年単位で売上と利益が大きく動く。
副業と情報関連の縮小
情報関連は子会社の売却で小さくなり、ホテルは改修で稼働が落ちた。副業は杭の波を和らげてきたが、規模が小さく、杭の悪化を埋めるほどの力はない。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の杭部門の営業利益率が 15% 以上で着地したら
- 値上げの定着が裏づけられ、やや楽観の確率を上げる。会社予想の減益は保守的だったことになる。
- 全国の杭の出荷が 180 万トンを割り、当社のシェアも下がったら
- 需要の縮みと値引きが重なった形で、やや悲観・悲観の確率を上げる。工場の減損も視野に入る。
- 中期経営計画で ROE や総還元性向の目標が示されたら
- 余った現金の戻り方が 0.5 より上がる。本質価値の見直しの材料になる。
- 三谷商事との持ち合いの解消や、有価証券の売却が発表されたら
- 資産が現金化され、自社株買いや配当の原資になる。戻り方を引き上げて見直す。
- 首位との値引き競争が再燃し、鋼材や人件費の上昇を価格へ転嫁できなくなったら
- 杭の営業利益率が 10% 台前半を割る。やや悲観の確率を上げる。
- CO2 を約 6 割減らす新工法が大手の物件や官公需で採用されたら
- 環境面の差別化が数量とシェアに効く形で、やや楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- コンクリートパイル・ポール協会の全国出荷と、当社・首位のシェア
- 杭部門の営業利益率(四半期)
- 現金・有価証券の残高と、配当・自社株買いの合計
- 三谷商事との持ち合いの変化(保有比率)
- 中期経営計画の公表と、資本効率・還元の数値目標
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から逆算せず、先に杭の全国需要 × シェア × 1 万トンあたりの売上でセグメントを積んだ。倍率は事業の ROE(余った現金を除く)から正当化 PER を出し、中立は上限の 7 割強、やや悲観は上限の 6 割に置いた。悲観は稼ぐ力でなく、現金と売れる有価証券の税引き後(床)から出した。今の時価総額と比べたのは最後で、事業を低い倍率で評価する市場の見方にも寄せていない。純現金が時価総額の 3 割あるため、余った現金は 700 億円を別に足し、戻り方 0.5 を掛けた。リースは小さく、新リース会計の影響は大きくない(形は今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえた)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.47→19.6 倍・やや楽観 PER 14.71→18.45 倍・中立 PER 13.14→15.72 倍・やや悲観 PER 9.89→11.44 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。