結論
品川リフラは、鉄鋼の炉に使う耐火物の会社だ。売上の約 8 割が鉄鋼向けで、れんがから連続鋳造用の機能材、炉の築造までを手がける。2025 年 10 月に社名を品川リフラクトリーズから改め、欧州とブラジルの買収で海外を一気に広げた。
結論は、やや割高である。2026 年 3 月期の純利益は 261 億円と跳ねたが、中身は賃貸不動産の売却益 372 億円で、減損 97 億円も含む。本業の営業利益は 136 億円で、ほぼ横ばいだ。
稼ぐ力そのものは、資本コストを下回る水準にとどまる。10 年後も営業利益率は 8% 前後とみる。国内の鉄鋼が縮む中で、海外の買収が量を補う。だが顧客は少数の大手で、値上げの主導権はない。
救いは、不動産の売却で借金を返し、財務に余裕が出た点だ。ただ、買収した海外の拠点では減損が出ている。成長を買う戦略の成否は、まだ見えない。値段を払うなら、買収の成果が数字に出てからでも遅くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い会社だが、儲かる会社ではない。
まず、10 年後もこの事業はあるか。ある。鉄鋼が動く限り耐火物は消耗する。ただ、国内は縮む。海外で量を補えるかが問われる。
次に、稼いだ利益が株主の取り分になるか。ここが弱い。営業利益率は 10% に届かず、ROE は資本コストをやや下回る。利益の多くは設備と買収に回り、資本が増えた割に利益が増えない。
経営はどうか。不動産を売って借金を減らす判断は評価できる。一方で、買収した会社の減損が早くも出ている。成長を買うなら、買った後の収益を見る目が要る。
安全域はあるか。2026 年 3 月期の純利益は売却益が大半で、本来の稼ぎは 100 億円前後だ。この利益に、10 倍前後の倍率しか付かない会社とみる。10 年後の価値は、今の時価総額に届かない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、鉄鋼メーカーの炉を守る消耗品である。製鉄の炉や取鍋は高温で内張りが削れる。その内張りに使う耐火物を、定期的に取り替える仕事だ。
事業は 4 つに分かれる。耐火物が売上の約 6 割で、利益の約 6 割も稼ぐ。炉の築造や補修を請け負うエンジニアリングが約 3 割、断熱材が約 1 割、先端機材は 2% ほどだ。
耐火物には、れんがのほか、鋼を鋳型に流し込む連続鋳造の工程で使う機能材がある。ここは使用量が多く、精密な品質が求められる。顧客の鉄鋼メーカーとは、設計から施工まで一緒に仕事をする。
海外は急速に広がった。5 年で売上が約 4.7 倍になり、目標の海外比率は 45% だ。2024 年 10 月にオランダの Gouda を約 1.4 億ユーロで買い、2025 年にはブラジルの Reframax の 6 割を取得した。2026 年 3 月には米国でも買収した。
売上は 2026 年 3 月期に 1,777 億円で、会社は 2031 年 3 月期に 2,400 億円を目指す。
断熱材を担っていたイソライト工業は、2022 年に完全子会社にした。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、鉄鋼メーカーとの長い付き合いと、顧客の炉に入り込んだ施工力だ。耐火物は鉄鋼の生産コストの小さな部分だが、品質が悪いと炉が止まる。顧客は安さだけでは乗り換えにくい。
ただ、筆者が重く見るのは弱みの方だ。顧客は鉄鋼大手で、数が少ない。値段を決めるのは顧客の側だ。原料のマグネシアなどが上がっても、すぐには転嫁できない。
利益率も高くない。営業利益率は過去 10 年で 5〜10% の間で、10% を超えたことがない。2026 年 3 月期は 7.7% だった。
資本の使い方にも注文がある。買収は積極的で、同じ期に赤穂工場とブラジル・Reframax などで 97 億円を減損した。将来見通しを保守的にした結果だという。成長のために買った資産が、すぐに減損になるのは気がかりだ。
同業の黒崎播磨と比べても、飛び抜けた堀があるわけではない。良い会社だが、独占的な会社ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
耐火物は、鉄鋼の生産量に連動する。国内の耐火物消費は年 120 万トンほどで、その約 8 割が鉄鋼向けだ。粗鋼生産は 2024 年に 8,400 万トンと 3.4% 減り、耐火物の需要も縮んだ。
国内は構造的に細る。日本製鉄は高炉を 15 基から 10 基に減らす構想を示し、JFE も高炉の電炉化を検討している。電炉は高炉より耐火物の使用量が少ない。国内の数量は、10 年で 1〜2 割減ってもおかしくない。
世界でも状況は厳しい。最大手のオーストリアの RHI Magnesita は、鉄鋼需要が景気の底にあり、中国の輸出増と値段の弱さが続くと述べている。中国の安い製品は、海外市場の競争を激しくする。
追い風は 2 つある。1 つは脱炭素で、電炉や新しい設備で耐火物の仕様が変わることだ。もう 1 つは、連続鋳造用の機能材が世界で広がることだ。会社は中国で新工場を建てている。
競合は国内では黒崎播磨、世界では RHI Magnesita のほか、連続鋳造に強い Vesuvius がいる。足元は循環の底に近く、数字が悪い年を過ぎた形だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向 40% を目標にしている。2025 年 3 月期は性向 42%、2026 年 3 月期の予想は 43% だった。ただし、買収を含む成長投資を優先するとしており、自社株買いに積極的とは言えない。
資金繰りは、不動産の売却で楽になった。2023 年に名古屋の遊休地を約 57 億円、2025 年に座間の土地を約 47 億円、2026 年に賃貸不動産を 372 億円で売っている。売却のたびに大きな特別利益が出るが、これは繰り返せない。
買収は大型で、Gouda が約 1.4 億ユーロ、Reframax が 6 割取得、米国にも広げた。中計は次の第 7 次で戦略を見直すと言う。気になるのは、買った会社の減損がすでに出ていることだ。
中計は、資本コスト 6.5% を上回る投資を行うと言う。ただ、直近の ROIC の目標は 10% で、買収後の統合が進むかが分かれ目になる。時価総額は 900 億円ほどで、10 年以内に再編や買収の対象になる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は買収で一段上がる。Gouda とブラジルの Reframax で、欧州と南米に生産とサービスの拠点を持った。国内の鉄鋼が縮んでも、海外の売上は 5 年で 4.7 倍になった。目標の 45% に届けば、量の減少は補える。
連続鋳造用の機能材は成長分野だ。使用量が多く、品質の差が顧客の生産性に出る。中国の新工場が動けば、値段と利益率が上がる。
営業利益率は 10% を超えられる。海外の施工まで一貫して請け負える会社は少なく、買収した会社と組んで値上げを通せる。会社も 11% を掲げる。人手のかかる築炉工事は、担い手の少ない国で単価を上げやすい。
不動産の売却で借金も減った。財務に余裕ができ、買収の次の段階にも進める。第 7 次中計で戦略を見直すことは、その証拠だ。
今の時価総額は低く、事業が計画に近づけば再評価の余地は大きい。国内の縮小が見えている分、海外の成長への期待が株価に十分には入っていない。10 年先の配当も、利益の伸びに合わせて増えていく。
慎重な見方
今の見かけの利益に惑わされてはいけない。2026 年 3 月期の純利益は、売却益 372 億円が支えた。会社の予想では、翌期は 100 億円まで下がる。これが本来の稼ぎだ。
国内は縮む。高炉の休止と電炉への転換で、耐火物の使用量は減る。海外の買収で量は補えても、値段の主導権は顧客が握る。営業利益率は過去 10 年で 10% を超えたことがない。
買収の中身も心配だ。同じ期に赤穂工場、ブラジル、Reframax で減損が 97 億円出た。見通しを保守的にしたというが、買った直後に価値が削れた事実は重い。
ROE は 10 年かけても 7% 前後で、資本コストに届かない。そういう会社に、高い倍率は付かない。利益がいくら増えても、資本の増え方がそれを上回れば、1 株あたりの価値は伸びない。
配当性向 40% は、使い道に迷うほど有望な投資先が少ないことの裏返しにも読める。海外の買収を重ねても、資本が増えるだけで利益率が上がらなければ、株主の取り分は薄まるだけだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。会社の質は認めるが、稼ぐ力が資本コストに届かない点は動かない。買収の成果を見るには時間が要り、その間に国内の縮小が先に進む。
確率は、中立を最大にしつつ、やや悲観と悲観に合わせて 3 割台半ばを置いた。強気の見方が正しい場合でも、10 年後の価値は今の時価総額を 2 倍弱にする程度にとどまる。本業の稼ぎと資本の効率を見る限り、慎重な見方の方が説得力を持つ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,979 円1,360 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,047 円478 億円)。 今の値に割り戻すと 2,175 円992 億円、今との差 +10.3%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,952 円2,716 億円 | 1,321 円603 億円 | +268.8% | +13.9% | 582 円266 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,495 円2,051 億円 | 1,159 円529 億円 | +186.7% | +11.1% | 1,131 円516 億円 |
| 中立 | 35% | 3,494 円1,594 億円 | 1,019 円465 億円 | +128.8% | +8.6% | 1,579 円721 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,293 円590 億円 | 997 円455 億円 | +16.2% | +1.5% | 550 円251 億円 |
| 悲観 | 13% | 544 円248 億円 | 874 円399 億円 | −28.1% | −3.2% | 184 円84 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,979 円1,360 億円 | 1,047 円478 億円 | +104.2% | +7.4% | 4,026 円1,837 億円 |
今の株価時価総額 1,972 円900 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外の伸びと高機能材がかみ合う 利益 179 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 5,952 円2,716 億円
国内の鉄鋼が縮んでも、海外の拠点が量を補う。欧州の Gouda とブラジルの Reframax が既存の顧客網に乗り、耐火物の出荷量は今より 1 割強増える。連続鋳造用の機能材は世界で採用が進み、値付けも物価並みを少し上回る。
エンジニアリングは、炉の築造や補修を海外でも請け負う力がつく。断熱材と先端機材は、脱炭素と半導体周辺で伸びる。
営業利益率は 10% に届き、会社が掲げる 11% に近づく。還元は利益の 4 割台半ばで続く。ただ、鉄鋼向けが 8 割を占める構造は変わらない。10 年後の成長が落ち着いた段階では、市場も高い倍率を長くは払わない。
- 耐火物:数量 56.5(出荷量(万トン))× 価格 30(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,714 億円・営業利益 189 億円。数量 1.12 倍、価格 1.38 倍、営業利益率 11.0%
- エンジニアリング:数量 80.8(施工量(万人日))× 価格 8.97(1 人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 725 億円・営業利益 51 億円。数量 1.15 倍、価格 1.38 倍、営業利益率 7.0%
- 断熱材:数量 1.0(出荷量(万トン換算))× 価格 283(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 294 億円・営業利益 50 億円。数量 1.30 倍、価格 1.38 倍、営業利益率 17.0%
- 先端機材:数量 820(出荷個数(万個))× 価格 0.14(1 個あたり平均単価(万円))→ 売上 113 億円・営業利益 18 億円。数量 2.00 倍、価格 1.38 倍、営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 178 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 15.06 倍、時価総額 2,716 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界で連続鋳造用の機能材が伸び、買収した欧州・ブラジルの拠点が採算に乗る姿。鉄鋼の需給という外部要因にも恵まれる必要があり、1 割弱に置く。
やや楽観 20% 海外の伸びが国内の縮小を上回る 利益 144 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 4,495 円2,051 億円
国内の鉄鋼は高炉の休止で細るが、海外の売上が増えて量の落ち込みを埋める。耐火物の出荷量は 6% ほど増え、値段は物価をやや下回る程度で通る。
エンジニアリングは買収した拠点の施工が積み上がり、断熱材も堅調だ。先端機材は小さいながら 5 割増える。
営業利益率は 9% 台まで上がる。会社の 11% には届かないが、過去最高圏を保つ。還元は利益の 4 割台半ばで、自己資本は緩やかに積み上がる。
堀、つまり他社がまねできない強みは鉄鋼メーカーとの長い付き合いにあり、10 年先も保たれる。ただ、顧客が少数の大手に偏る構造は変わらず、値決めの主導権は握れない。
- 耐火物:数量 53.4(出荷量(万トン))× 価格 29(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,575 億円・営業利益 158 億円。数量 1.06 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 10.0%
- エンジニアリング:数量 76.6(施工量(万人日))× 価格 8.84(1 人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 677 億円・営業利益 44 億円。数量 1.09 倍、価格 1.36 倍、営業利益率 6.5%
- 断熱材:数量 0.9(出荷量(万トン換算))× 価格 279(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 256 億円・営業利益 41 億円。数量 1.15 倍、価格 1.36 倍、営業利益率 16.0%
- 先端機材:数量 615(出荷個数(万個))× 価格 0.14(1 個あたり平均単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 12 億円。数量 1.50 倍、価格 1.36 倍、営業利益率 14.5%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 14.1 倍、時価総額 2,051 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外展開が計画に近い形で進み、国内の縮小を打ち消す姿。中計の目標には届かないが改善は続く。2 割に置く。
中立 35% 量は横ばい、値段は物価に届かない 利益 115 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,494 円1,594 億円
国内は高炉の休止と電炉への転換で耐火物の使用量が減る。海外の拡大とグループの買収分がそれを埋め、出荷量は 10 年でほぼ横ばいに収まる。
値段は物価の伸びを下回る。鉄鋼メーカーは値下げを求め、原料のマグネシアなどの上昇を転嫁するのにも時間がかかる。耐火物の単価は 10 年で 3 割増にとどまる。
営業利益率は 8% 前後で、直近の 7.7% から少し上がる。エンジニアリングと断熱材が下支えする。還元は配当性向 4 割台を保ち、残りは設備と買収に回る。
買収後の統合が順調なら、会社の質は保たれる。ただ、これで ROE は 7% 前後にとどまり、資本コストに届かない。会社が大きくなっても、株主の取り分は大きくならない。
- 耐火物:数量 50.4(出荷量(万トン))× 価格 29(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,441 億円・営業利益 130 億円。数量 1.00 倍、価格 1.30 倍、営業利益率 9.0%
- エンジニアリング:数量 73.1(施工量(万人日))× 価格 8.71(1 人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 637 億円・営業利益 35 億円。数量 1.04 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 5.5%
- 断熱材:数量 0.9(出荷量(万トン換算))× 価格 275(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 242 億円・営業利益 36 億円。数量 1.10 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 15.0%
- 先端機材:数量 521(出荷個数(万個))× 価格 0.13(1 個あたり平均単価(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 9 億円。数量 1.27 倍、価格 1.34 倍、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,554 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小と海外の拡大が釣り合い、利益率は過去の山の少し上で止まる姿。3 割台半ばで最大に置く。
やや悲観 24% 鉄鋼の縮小が値段にも響く 利益 77 億円 · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 1,293 円590 億円
国内の粗鋼生産が想定より早く縮み、高炉の休止が続く。耐火物の出荷量は 1 割近く減り、値段も物価の伸びを大きく下回る。
海外では中国やインドの安い製品と競り合う。買収した拠点の収益は伸びず、減損が追加で出る。エンジニアリングは受注の波に左右され、利益率が 4% 台に下がる。
営業利益率は 6% 台で、今の利益を 1 割ほど上回るのがやっとだ。ROE は 5% 台に落ちる。配当は維持するが、自社株買いや大きな投資は難しくなる。
赤字にはならない。補修に使う耐火物は鉄鋼が動く限り要るためだ。それでも、素材の一製品を大手と分け合う構造のままでは、成長した果実は取れない。
- 耐火物:数量 46.9(出荷量(万トン))× 価格 28(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,289 億円・営業利益 101 億円。数量 0.93 倍、価格 1.25 倍、営業利益率 7.8%
- エンジニアリング:数量 68.2(施工量(万人日))× 価格 8.45(1 人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 576 億円・営業利益 26 億円。数量 0.97 倍、価格 1.30 倍、営業利益率 4.5%
- 断熱材:数量 0.8(出荷量(万トン換算))× 価格 262(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 199 億円・営業利益 26 億円。数量 0.95 倍、価格 1.28 倍、営業利益率 13.0%
- 先端機材:数量 451(出荷個数(万個))× 価格 0.13(1 個あたり平均単価(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍、価格 1.28 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の ROE 5.3% は k 7.5% を大きく下回る。RONIC 6.9%、g 3.5% の正当化 PER は 9.9 倍。稼ぐ力の薄れた筋書きで、上限の 7 割に置く。(上限の約 70% の 6.9 倍)
確率:国内の鉄鋼縮小が速く、海外の買収も採算が出ない姿。耐火物は景気と鉄鋼の波を受けやすく、買収の減損も実際に出ているため、2 割強とやや厚く置く。
悲観 13% 構造的な負け 利益 37 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 544 円248 億円
鉄鋼の国内生産が大きく縮み、高炉用の耐火物が使われなくなる。電炉は耐火物の使い方が少なく、取り替え頻度も低い。耐火物の出荷量は 2 割以上減る。
海外では中国の過剰生産が続き、値段は物価に追いつかない。買収した欧州とブラジルの拠点は、減損の後も利益を出せない。
営業利益率は 4% 台まで落ち、利益は今の半分になる。ROE は 3% 前後で、資本コストをはるかに下回る。もう優良な素材会社とは呼べない。
配当は大きく減らさざるを得ない。ただ、財務が急に傷むほどの赤字にはならない。耐火物の補修需要はなお残り、稼ぐ力は細ってもゼロにはならない。
- 耐火物:数量 39.3(出荷量(万トン))× 価格 25(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 969 億円・営業利益 58 億円。数量 0.78 倍、価格 1.12 倍、営業利益率 6.0%
- エンジニアリング:数量 56.2(施工量(万人日))× 価格 7.48(1 人日あたり売上(万円、材料込み))→ 売上 420 億円・営業利益 13 億円。数量 0.80 倍、価格 1.15 倍、営業利益率 3.0%
- 断熱材:数量 0.6(出荷量(万トン換算))× 価格 226(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 14 億円。数量 0.80 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 10.0%
- 先端機材:数量 328(出荷個数(万個))× 価格 0.11(1 個あたり平均単価(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。数量 0.80 倍、価格 1.10 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の ROE 3.0% は k 7.5% よりはるかに低い。稼ぐ力(純利益 ÷ k)は約 440 億円で、1÷k の 11.8 倍が上限。構造的に負けた会社なので、その 55% の 6.5 倍に置く。自己資本の多くは設備と買収ののれんで、売れる資産としては数えない。(上限の約 55% の 6.5 倍)
確率:高炉の電炉転換と海外の安値競争で、主力の耐火物の需要基盤が崩れる構造的な負け。買収の失敗も重なる。過去にも赤字の期があり、1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
耐火物
鉄鋼の転炉・取鍋・連続鋳造に使う耐火れんがや不定形耐火物、連続鋳造用の機能材。顧客の 8 割は鉄鋼。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.4 | 22 | 1,108 | 94 |
| 10 年後 中立 | 50.4 | 29 | 1,441 | 130 |
取り方:開示は金額だけ(セグメント売上 1,108 億円)なので、平均単価を 1 トン 22 万円と仮定し出荷量を 50 万トンと推定した(推定)。国内の耐火物消費は年 120 万トン規模で、うち当社グループの国内分は 2 割前後と見る。利益はセグメント利益の構成比(耐火物が約 63%)からの推定。数量は鉄鋼の生産と海外展開で動く。価格は鉄鋼メーカーの値下げ圧力で物価を下回ると置く。
エンジニアリング
炉の築造・補修などの施工と、Gouda(オランダ)など買収した海外の施工会社。
| 数量施工量(万人日) | 価格1 人日あたり売上(万円、材料込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.3 | 6.50 | 457 | 24 |
| 10 年後 中立 | 73.1 | 8.71 | 637 | 35 |
取り方:開示は金額だけ(セグメント売上 457 億円)。1 人日 6.5 万円と仮定して施工量を 70 万人日と推定(推定)。利益は構成比からの推定で、利益率は 5% 台。数量は炉の稼働と補修量に連動し、人件費は物価で上がるため価格は物価並みに通せる。
断熱材
セラミックファイバーなど高温用の断熱材。工業炉や自動車・環境向け。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 205 | 164 | 26 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 275 | 242 | 36 |
取り方:開示は金額だけ(セグメント売上 164 億円)。平均単価を 1 トン 205 万円と仮定して 0.8 万トンと推定(推定)。利益率は耐火物より高い 16% 前後と推定。数量は工業炉と環境向けの需要で緩やかに増える。
先端機材
半導体・電子向けのセラミックス部材などの先端機材。小さいが利益率は高い。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1 個あたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 410 | 0.10 | 41 | 6 |
| 10 年後 中立 | 521 | 0.13 | 70 | 9 |
取り方:開示は金額だけ(セグメント売上 41 億円)。1 個 0.1 万円と仮定し 410 万個と推定(推定)。利益率は 15% 弱と推定。半導体など新分野の需要で数量が伸びる余地がある。
リスクと懸念
国内の鉄鋼の縮小
高炉の休止と電炉への転換で、国内の耐火物の使用量は減る。日本製鉄は高炉を 15 基から 10 基に減らす構想を示した。国内は売上の柱で、10 年で 1〜2 割縮んでも不思議はない。海外で補えるかが分かれ目だ。
買収した海外拠点の減損
2026 年 3 月期に、赤穂工場、ブラジルの SRB、Reframax で減損 97 億円を出した。買収は Gouda、Reframax、米国と続いており、統合がうまくいかなければ追加の減損が出る。減損は利益を一度に削り、自己資本も減らす。
少数の顧客と値決め
顧客は鉄鋼大手が中心で、数が少ない。耐火物は製品の差が小さく、値段は顧客が握る。原料のマグネシアなどが上がっても、転嫁に時間がかかる。物価が年 3% 上がる世界で、価格が物価に届かないと、利益率が下がる。
海外の安値競争
中国の耐火物メーカーは過剰な生産能力を持ち、輸出を増やしている。最大手の RHI Magnesita も、中国の輸出増が値段の弱さにつながっていると述べた。海外の売上を増やす戦略は、まさにこの競争と正面から向き合う。
利益の質と不動産売却
2026 年 3 月期の純利益 261 億円は、賃貸不動産の売却益 372 億円が支えた。売却は繰り返せず、会社予想の翌期は 100 億円に下がる。見かけの ROE は 24% でも、本来の稼ぎで測れば 10% を下回る。
鉄鋼の景気
粗鋼生産は景気と建設に左右される。2008〜2009 年と 2020 年に利益が大きく削られ、赤字の期もあった。足元は底に近いとの見方もあるが、回復が遅れれば、海外の拠点の固定費が重くなる。
今後の分かれ目
- 国内の粗鋼生産が年 8,000 万トンを割り込み、高炉の休止が加速する
- 国内の耐火物数量の想定を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。海外の補完が進んでいるかを併せて確認する。
- Gouda や Reframax など買収子会社の利益率が 2 年続けて改善し、追加の減損が出ない
- 買収の成果を認め、楽観側の確率を上げる。エンジニアリングと耐火物の利益率の想定を上げる。
- 追加の減損や、海外拠点の赤字が開示される
- 資本の使い方の評価を下げ、悲観の確率を上げる。自己資本の想定も減らす。
- 連続鋳造用の機能材で中国の新工場が立ち上がり、海外の売上比率が 45% を超える
- 海外の数量の想定を上げる。ただし価格競争の影響を見て、利益率の上げ幅は慎重に置く。
- 第 7 次中期経営計画で自社株買いや政策保有株の売却など、資本政策が示される
- 還元の想定を引き上げる。ただし、本業の利益が増えない限り、倍率の想定は変えない。
- 同業の再編や、鉄鋼メーカーとの資本関係の変化が起きる
- 再編の条件を確認し、会社の価値が適正に評価されているかを見る。
見ておくもの
- 国内粗鋼生産の月次と高炉の休止計画
- Gouda・Reframax など海外子会社の利益率と減損の有無
- 連続鋳造用機能材の海外売上と中国の新工場の稼働
- 第 7 次中期経営計画の目標と資本政策
- 原料(マグネシアなど)の価格と製品価格の転嫁
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE と k 7.5%(基本 7.5% に循環・値決め・寿命で +1.0%)、長期の成長 g 3.5% から出る正当化 PER の 85% 程度に置いた。今の PER や株価、過去の PBR は見ていない。先に数量 × 価格で積み、倍率は後から決めた。結果として、中立でも今の時価総額を下回る。純負債 128 億円で純現金はなく、excess_cash は立てない。金利の上昇で利払いは年 3 億円ほど減る程度で、純利益には織り込んだ。リースは工場・施工拠点が中心で店舗型ではなく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年の数字は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。セグメント利益の額は開示を確認できず、構成比から推定した。 持ち合い株の含み益(評価差額金の税後)は余った現金に 0.5 で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.16→15.06 倍・やや楽観 PER 10.31→14.1 倍・中立 PER 9.34→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。同じ領域の東海カーボン(+1.2%)より借金と市況の振れが小さく、ニチアス(−0.8%)より値決め力が弱い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。