結論
アンベブはブラジルを中心とする中南米とカナダの大手ビール・飲料メーカーである。筆者の結論は、2026年10月23日の台帳価格を基準にすれば「やや割高」だ。圧倒的な販売網と収益力は本物だが、数量が伸び悩む市場で税負担と少数株主の立場を考えると、十分な安全域はない。
2025年の全社売上は約158億ドル、純利益は約28億ドル。ブラジルのビール販売数量は前年比4.5%減ったが、1ヘクトリットル当たり売上は4.8%増えた。値上げと高級化で数量の穴を埋める力がある。2026年4~6月にはブラジルのビール数量が5.0%増に転じた。ただし2026年10月29日公表予定の第3四半期は、評価時点ではまだ確認できない。
10年後の中立は、ビール市場の緩やかな縮小をシェア維持と非アルコール飲料で補い、全社営業利益を約52億ドル、純利益を約41億ドルとみる。強いブランドでも再投資の高収益が永久に続くとは限らない。現金を二重に数えず、配当と買い戻しを含めて資本コスト8.0%で割り引くと、5つの筋書きの加重価値は約433億ドルとなり、台帳時価総額518億ドルに届かない。
なお、10月26日の市場時価総額は約435億ドルまで下がった。基準日以降の急落で、同じ事業価値に対する評価は「適正」に近づく。10月23日基準の判定と、直近の市場価格に対する判断を混同しないことが大切だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も店の棚に残る飲料を持っているかを最初に考える。ブラーマやグアラナは現地の生活に深く根づき、ビールを造る工場だけ買っても、返却瓶と販売網まで一朝一夕には再現できない。ブラジルの小売が細かく分かれていることは、アンベブにはむしろ追い風だ。この点では所有し続ける意味のある事業である。
ただし、よい企業と、いくらで買ってもよい企業は違う。2025年の純利益は約28億ドル、フリーキャッシュフローは約36億ドルだった。生産設備を維持し、物流を更新した後にも大きな現金が残るが、その全額が自由に使えるわけではない。利益の増加に見合う瓶、冷蔵設備、配送能力と運転資金への再投資は必要である。近年の株主還元はこの負担と両立しているため、経営の姿勢は評価できる。
再投資の質を見ると、国内で既に大きなシェアを持つことは両刃の剣になる。競合からさらに棚を奪う余地は限られ、価格を上げれば所得に敏感な顧客が離れる。海外の高インフレ市場では表面の単価も当てにならない。株主に残る利益は、売上高よりも価格転嫁後の営業利益率と、現金還元が継続するかで決まる。
筆者は、強い堀ゆえに成長をすべて否定はしないが、控えめな数量と税負担をまず見る。親会社が議決権を握り、税の争いにも不確実性がある以上、安全域は普通の消費財より厚く欲しい。10月23日の価格では十分でないが、同月26日の下落後には価値との差が大きく縮んだ。相場の急落を企業の実力の低下と取り違える必要もない。
何で稼ぐ会社か
売上の中心はブラジルのビールで、ブラーマ、スコール、アンタークチカに加え、コロナ、ステラ・アルトワ、スパーテンなどを扱う。自社醸造に加え、回収して繰り返し使う瓶、卸売店への配送、店頭の冷蔵設備を一体で動かす。ブラジルには約100万の小売拠点があり、2025年末は直営配送拠点89か所と専属卸207事業を使った。ビールを1ヘクトリットル売るたびに純売上が入り、そこから原料、容器、配送、広告、設備費を引いた額が残る。
非アルコール飲料はグアラナ・アンタークチカ、ペプシ、ペプシ・ブラック、ゲータレードなどである。ペプシコからの製造・販売許諾やレッドブルの販売契約も活用する。2025年の数量は約3361万ヘクトリットルで、ビールとは異なる成長要因を持つ。糖分への懸念を受けて無糖商品を増やしており、2026年4~6月は数量が減っても単価上昇で売上を増やした。
中央米州・カリブではドミニカ共和国のプレジデンテやパナマのバルボアなどが柱である。南米南部ではアルゼンチンのキルメス、ブラーマなどが強く、物価と通貨の不安定さがドル換算の稼ぎを揺らす。カナダではラバットを通じてバドワイザー、ミケロブ・ウルトラ、ブッシュなどを販売する。現地ブランドと世界ブランドの両方を扱うことが競争上の利点だ。
飲料そのものに加え、卸向け発注基盤のBEESと配達のゼ・デリバリーが販売の入口を握る。2025年のゼ・デリバリーは約6700万件を届けた。ただしプラットフォームの流通総額を飲料売上と二重に足してはいけない。2026年1月にはキューバ事業を連結から外し、50%持分を持分法で扱う形へ移した。BEESは自社飲料の受注導線であって席課金のソフトではなく、AIエージェント代替で売上が消える指定業種には当たらない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単にまねできない強みは、ブランドだけでなく配送網の密度にある。卸が多数の小さな店を巡る市場では、先に冷蔵設備と返却瓶の回収経路を持つ会社ほど、一箱当たりの費用が下がる。2025年のブラジルのビール市場では、公開調査がアンベブ系の数量シェアを約64%、ハイネケン系を約22%とした。競合にも規模はあるが、首位の棚と物流の強さはなお大きい。
価格決定力には実績がある。2025年のブラジルビールは単価が4.8%上がり、2026年4~6月も自社商品ベースで4.4%上昇した。高級ブランドと無糖ビールの伸びは、利益率を維持する材料だ。2025年のブラジルビールの正常化営業利益率は25.6%、中米・カリブは35.1%だった。汎用品の安売り競争だけで稼ぐ会社ではない。
一方、全社の利益率はかつての水準から大きく下がった。添付の財務では2014年の営業利益率37%に対し、2025年は約23%である。値上げだけで原材料、広告、配送費、成長投資の負担を消せない。帳簿上のROEは約17%で資本コストを超えるが、今後の新規投資が同じ利回りを出すとは限らない。
最大の留保は支配構造にある。親会社アンハイザー・ブッシュ・インベブと関係財団が議決権の約73%を握り、少数株主は大型投資や還元方針を左右しにくい。世界ブランドのライセンスは利点である反面、独立した価格・販路戦略の裁量を弱める。堀は強いが、その利益を外部株主が自由に処分できるわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ブラジルのビールは成熟市場であり、数量の急成長を当てにしない。2025年の市場調査ではアンベブ系が約64%、ハイネケン系が約22%を占め、残りをペトロポリスなどが争う。農業省の集計による2025年の国内生産は約156百万ヘクトリットル。ただし生産と小売で測った市場シェアは分母が違い、アンベブの出荷89百万ヘクトリットルを単純に割って厳密な小売シェアとはしない。気温、所得、飲酒習慣で数量は大きく振れる。
年齢構成が相対的に若い中南米は、米国の酒類市場より需要の持続力があると考える。一方で、人口だけでビール数量が増えるわけではない。ノンアルコール、低糖、即飲型飲料へ嗜好が移れば、従来のピルスナービールは縮む。ハイネケンが高級品を増やし、値上げの幅を狭めれば、首位のアンベブも広告費と販促費を増やさざるをえない。
中央米州・カリブではドミニカ共和国のビール市場が約510万ヘクトリットルで、現地子会社の数量シェアは公開調査で約95%と高い。南米南部の中核アルゼンチンでは、キルメス系が小売数量で約60%、競合のCCUが約29%とされる。カナダではラバット系が約33%、モルソン系が約35%で拮抗する。地域によって堀の強さは違う。
税制も無視できない。ブラジルでは2027年から酒類や糖入り飲料に関わる選択税が導入される予定だが、最終的な税率はなお不透明である。税の転嫁が遅れれば利益率に響く。アルゼンチンの高インフレや通貨安も、現地で上がった単価がドル建て利益の増加を意味しないことを示す。競合より利益率が高いことと、その利益が10年後にドルで増えることは別の問いである。
資本政策と M&A
経営は大型買収より、配当と自社株買いに比重を移している。添付の財務では2016~2025年の純利益累計が約276億ドル、配当累計が約229億ドルで、自社株買いと株式報酬の相殺を考えても稼ぎの約8割を還元した。2025年は特に厚い配当を行い、株式報酬を差し引く正味還元は約39億ドルだった。配当の大きさを毎年恒常的と見るのは危険だが、余剰金を寝かせ続ける会社でもない。
2025年10月には最大2億800万株の自社株買い枠を設定し、2026年7月までに約1億9850万株を取得した。2026年7月公表時点の年初来株主還元は約59億レアルで、同年10月と年末に支払う資本利子配当も決定した。ブラジルビールの2026年の現金売上原価単価については前年比4.5~7.5%増の見通しを維持する一方、長期の売上成長率や還元総額には数字の約束がない。
過去の買収には、ドミニカ共和国のCNDの取り込みなど販路を広げた成功がある。カナダのラバットも重要な基盤だ。ただし親会社とのブランド許諾や組織再編は少数株主が主導できない。キューバ事業の連結除外のような地域の入れ替えを含め、今後も大型の価値創造を前提にはしない。資本コストを超える再投資先が乏しければ、過度な買収より現金還元を優先するべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
首位の販売網は、商品の広告よりも長く残る優位性である。ブラジルの小売は約100万拠点に分散し、専属卸と直営配送を持つアンベブは、新商品を素早く流せる。2025年のブラジルのビール数量は落ちたが、プレミアム商品の伸びは強かった。2026年4~6月にはビール数量が前年同期比5.0%増となり、営業の立て直しも見える。翌年までに棚を取り戻せば、かつての数量減は一時的な天候と消費不振で説明できる。
価格面でも実績がある。2025年の国内ビール単価は4.8%上がった。コロナ、スパーテン、ミケロブ・ウルトラなど高価格帯と無糖の選択肢は広がり、ハイネケンとの競争でも主流品と高級品を両方そろえている。中米・カリブの現地ブランドはさらに強く、ドミニカ共和国では現地子会社が市場の大半を握る。成熟したカナダでもラバットの販路を使って低糖・即飲型へ移れる。
BEESとゼ・デリバリーは独立した巨大IT会社として値を付けるものではない。しかし卸の受発注を効率化し、離反を減らす実用的な手段にはなる。買収より還元に資金を振り向ければ、流通網を守る設備投資を続けても株主に現金が戻る。純現金があり、競合の安売りが続いても財務が揺らぎにくい。ブラジルの税制改正が穏当で、数量回復が続けば、今の市場が評価している以上の利益を長期間残せる。
慎重な見方
高い市場シェアは成長余地の小ささでもある。アンベブが首位のブラジルでは、ハイネケンがプレミアム商品の生産能力を増やし、若い顧客との接点を強めている。ビールの数量は2025年に4.5%減り、2026年4~6月の回復にはサッカー大会による一時需要も含まれた。これを10年続く需要回復の証拠とするには早い。温暖化による気温変動、所得格差、健康志向が重なれば、主流ブランドから静かに顧客が離れていく。
利益を削る最大の問題は税である。ブラジルでは2027年から酒類などの選択税が始まり、税率や転嫁の帰結が不透明だ。さらに20-Fには大きな税務係争が載っている。2026年上期にも不利な行政判断が続き、一部は引当金がない。すべてを払うと決まったわけではないが、将来の特別損失が純現金と還元余力を削る可能性は残る。
南米南部のアルゼンチンは、高い名目成長がドル換算で消える市場だ。カナダではラバットとモルソンがほぼ互角で、低カロリーや即飲型飲料への移行も既存の瓶ビールと同じ利益率とは限らない。親会社の影響が強いため、事業再編の条件やブランド使用料に少数株主の拒否権は乏しい。量販店と小売店が価格を優先し、販売数量が長く減れば、今の高い利益率は守れない。
どちらに重みを置いたか
地域で支配的な販路と純現金は明らかな強みであり、単純な衰退ビール会社ではない。しかし2025年の数量の弱さ、2027年以降の税負担、親会社主導の資本政策を考えると、強みをそのまま高成長に読み替えるべきではない。2026年のブラジルビールの回復は中立の支えとし、楽観を広げすぎない。
楽観・やや楽観は合計29%、やや悲観・悲観は35%、中立は36%と、慎重側に少し寄せた。10月23日の台帳基準で本質価値は約16%低く「やや割高」である。10月26日の急落後の相場ではほぼ適正となるため、判定の基準日を必ず区別する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3.51 ドル551 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 1.67 ドル261 億ドル)。 今の値に割り戻すと 2.76 ドル433 億ドル、今との差 +3.8%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6.69 ドル1,049 億ドル | 2.07 ドル325 億ドル | +229.3% | +15.1% | 0.79 ドル124 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 5.10 ドル800 億ドル | 2.01 ドル315 億ドル | +167.3% | +12.6% | 1.42 ドル223 億ドル |
| 中立 | 36% | 3.80 ドル596 億ドル | 1.82 ドル285 億ドル | +111.3% | +9.6% | 2.02 ドル317 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 1.83 ドル287 億ドル | 1.37 ドル215 億ドル | +20.3% | +2.4% | 0.77 ドル120 億ドル |
| 悲観 | 11% | 0.74 ドル115 億ドル | 0.86 ドル135 億ドル | −40.0% | −6.6% | 0.18 ドル28 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 3.51 ドル551 億ドル | 1.67 ドル261 億ドル | +94.6% | +8.5% | 5.18 ドル812 億ドル |
今の株価時価総額 2.66 ドル417 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:プレミアム化と全地域の回復 利益 56 億ドル · PER 18.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.69 ドル1,049 億ドル
ブラジルのビール市場は10年で数量がほぼ横ばいに戻る。ハイネケンへの流出を抑え、コロナやスパーテンが高級品の棚を広げるため、アンベブの国内ビール数量は9900万ヘクトリットルに増える。現在の小売シェア約64%から70%台前半まで上がる強い想定だ。単価は物価を少し上回って上昇し、国内ビールの営業利益率は28.5%へ改善する。
非アルコールは無糖のグアラナとペプシがコカ・コーラから販路を取り、4400万ヘクトリットルに育つ。ドミニカ共和国のプレジデンテが競争力を保ち、中央米州・カリブも増産する。アルゼンチンでは通貨不安が収まり、キルメスの数量と利益率が回復する。カナダのラバットはモルソンと市場を二分したまま、即飲型と低糖商品の比率を上げる。
ブラジルの選択税が大幅な負担増とならず、過去の税務係争も大損失にはならない。2026年のビール数量回復が一時的な大会需要に終わらず、物流の規模とデジタル発注が利益率を押し上げる。大型買収をせず、期間中に約325億ドルを正味還元しても、設備更新と高収益商品の投資を続けられる。
- ブラジル・ビール:数量 99.0(百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量))× 価格 116(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 115 億ドル・営業利益 33 億ドル。ブラジル市場数量はほぼ横ばい、実質シェア年+1%程度で約64%から70%台前半へ
- ブラジル・非アルコール飲料:数量 44.0(百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷))× 価格 72(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 9 億ドル。無糖品でコカ・コーラからシェアを奪い、数量年+2.7%
- 中央米州・カリブ:数量 15.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 245(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 37 億ドル・営業利益 14 億ドル。ドミニカ共和国の独占的な販売網を維持し、他国でも増量
- 南米南部:数量 37.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 161(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 60 億ドル・営業利益 15 億ドル。キルメス系がCCUとの競争に勝ち、通貨の大幅悪化がない
- カナダ:数量 8.5(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 323(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 27 億ドル・営業利益 7 億ドル。低糖と即飲型でモルソンに対抗し数量をほぼ維持
倍率:k8.0%、強い堀による超過収益残存2/3、伸びに要る帳簿の自己資本ROE24.0%(事業純利益55.23÷事業用自己資本230.10)からRONIC18.7%。市場数量の長期ほぼ横ばい、シェア微増、名目単価+3.5~4.0%からg4.0%。来期利益の正当化PERに10年目適用の(1+g)を掛けると上限20.43倍。利益の質、ブラジル課税・南米通貨の変動、少数株主の制限を考え、その91.0%の18.59倍とした。純現金の税後利息を控除した事業純利益55.23×PER+余剰現金22=時価総額1048.76億ドル。株価・過去倍率は使っていない。
確率:ブラジルの市場成熟を覆すほどのシェア拡大と南米安定が必要であり、全条件がそろう可能性は高くない。
やや楽観 20% やや楽観:販路優位を維持し値上げ定着 利益 48 億ドル · PER 16.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5.10 ドル800 億ドル
ブラジルのビール市場は成熟しても、ハイネケンとの寡占は崩れない。飲酒量の伸びは乏しいが、上位ブランドへの乗り換えと店頭シェアの微増により、国内ビール数量は9400万ヘクトリットルになる。単価は10年間で約1.4倍に上がり、広告費増加を吸収して営業利益率は27%を保つ。2026年4~6月の販売回復がその出発点となる。
ブラジルの非アルコール飲料は4000万ヘクトリットルへ拡大する。コカ・コーラの強さは変わらないが、グアラナと無糖品が棚を守る。中央米州・カリブではドミニカ共和国の市場支配力を維持し、南米南部ではアルゼンチンのインフレ調整後にもゆっくり増益する。カナダではモルソンとの競争により大きな数量増はなく、より単価の高い商品に移る。
選択税や原料高の影響を価格転嫁し、税務係争は限定的な費用で収まる。BEESは販路を守る道具として役立つが、独立した新規事業利益を上乗せしない。期間の純利益の大半を配当と自社株買いに使い、株式報酬を引いた正味還元は約315億ドルとなる。
- ブラジル・ビール:数量 94.0(百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量))× 価格 114(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 107 億ドル・営業利益 29 億ドル。市場年-0.3%程度、シェア年+0.8%程度で数量年+0.5%
- ブラジル・非アルコール飲料:数量 40.0(百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷))× 価格 69(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 8 億ドル。無糖飲料で相対シェアが上がり数量年+1.8%
- 中央米州・カリブ:数量 14.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 235(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 33 億ドル・営業利益 12 億ドル。ドミニカの高いシェアを保ち、地域人口とともに増量
- 南米南部:数量 35.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 152(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 53 億ドル・営業利益 13 億ドル。アルゼンチンの実質数量が微増し価格転嫁が続く
- カナダ:数量 8.3(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 312(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 6 億ドル。モルソンとの寡占維持、数量は年-0.4%程度
倍率:k8.0%、強い堀による超過収益残存2/3、伸びに要る帳簿の自己資本ROE23.1%(事業純利益47.60÷事業用自己資本205.65)からRONIC18.1%。市場数量の微減をシェアと無糖需要が補い、単価+3.4%程度でg3.4%。来期利益の正当化PERに10年目適用の(1+g)を掛けると上限18.26倍。利益の質、ブラジル課税・南米通貨の変動、少数株主の制限を考え、その90.0%の16.43倍とした。純現金の税後利息を控除した事業純利益47.60×PER+余剰現金18=時価総額800.04億ドル。株価・過去倍率は使っていない。
確率:中米と無糖飲料の成長、ブラジルの値上げが続く道はあるが、同時に税負担を抑えなければならない。
中立 36% 中立:国内数量横ばいと緩やかな増益 利益 41 億ドル · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.80 ドル596 億ドル
ブラジルでは飲酒人口の伸び悩みでビール市場数量が年0.5%程度縮む。アンベブは高級ビールと既存の返却瓶網で相対シェアを年0.6%程度上げ、国内ビール数量は約9000万ヘクトリットルとほぼ横ばいに戻る。価格は物価並みの年3.3%程度で上がるが、ハイネケンの販促により営業利益率は25.5%にとどまる。
非アルコール飲料は無糖品の増加で3700万ヘクトリットルに達するが、コカ・コーラの牙城は崩せない。中央米州・カリブは人口増加で1320万ヘクトリットルへ伸びる。南米南部ではキルメスが約60%のシェアを守る一方、アルゼンチンの通貨と費用の変動で大幅な実質成長はない。カナダのラバットはモルソンとの争いが続き、数量が緩やかに減る。
税制改革の選択税と容器・物流費の上昇が値上げ効果を一部消す。2026年の数量回復をそのまま10年間の高成長とは見ず、大きな買収もしない。純利益は約41億ドルとなり、10年間に約285億ドルを正味還元する一方、約58億ドルを増える運転資金や更新投資に残す。
- ブラジル・ビール:数量 90.0(百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量))× 価格 112(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 101 億ドル・営業利益 26 億ドル。市場数量年-0.5%、相対シェア年+0.6%でほぼ横ばい
- ブラジル・非アルコール飲料:数量 37.0(百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷))× 価格 67(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。非酒類市場が微増し、コカ・コーラへの競争力を維持
- 中央米州・カリブ:数量 13.2(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 230(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 10 億ドル。域内市場の数量増を取り込むが利益率は保守的
- 南米南部:数量 33.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 140(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 10 億ドル。アルゼンチンに過大な超インフレ名目値上げを認めない
- カナダ:数量 8.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 301(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 5 億ドル。カナダ全体のビール数量は減少、シェアは横ばい近辺
倍率:k8.0%、強い堀による超過収益残存2/3、伸びに要る帳簿の自己資本ROE20.0%(事業純利益40.57÷事業用自己資本203.30)からRONIC16.0%。ビール市場数量-0.5%、相対シェア+0.2%前後、価格+3.0%を中心にg2.7%。来期利益の正当化PERに10年目適用の(1+g)を掛けると上限16.10倍。利益の質、ブラジル課税・南米通貨の変動、少数株主の制限を考え、その89.0%の14.33倍とした。純現金の税後利息を控除した事業純利益40.57×PER+余剰現金15=時価総額596.37億ドル。株価・過去倍率は使っていない。
確率:2026年のブラジルビールの回復を認めつつ、市場成熟と税制改革が数量・単価の伸びを制約する最も自然な道である。
やや悲観 24% やや悲観:税負担とシェア流出 利益 25 億ドル · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.83 ドル287 億ドル
ブラジルの飲酒離れと所得停滞が続き、ビール市場は年1%程度縮む。ハイネケンが高級ブランドの棚を奪い、アンベブ自身も少しずつシェアを失うため、国内ビール数量は約7800万ヘクトリットルへ落ちる。価格は10年で約29%しか上げられず、容器と配送の費用上昇が先行する。国内ビール営業利益率は21.5%へ下がる。
非アルコール飲料はコカ・コーラの販促と地方の低価格商品に押され、数量は3200万ヘクトリットルへ減る。中央米州・カリブは市場支配力をある程度維持するが税負担で利益率が鈍る。アルゼンチンではキルメスがCCUと価格競争を繰り返し、南米南部の営業利益率は17%に低下する。カナダのラバットもモルソンに数量を奪われる。
ブラジルの酒類選択税が価格転嫁を難しくし、税務係争の対応費用も継続する。ただし国内の物流網はまだ価値があり、倒産寸前ではない。純利益は約25億ドルに減り、株主還元は10年で約215億ドルに細る。残る現金と売却可能資産はあるが、かつての優良性を高く評価する筋書きではない。
- ブラジル・ビール:数量 78.0(百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量))× 価格 104(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 81 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場年-1.0%、シェア年-0.35%で10年数量約-13%
- ブラジル・非アルコール飲料:数量 32.0(百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷))× 価格 61(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。コカ・コーラと地場低価格品に押され数量減
- 中央米州・カリブ:数量 11.3(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 212(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 7 億ドル。税負担と競合で数量と高い利益率が縮む
- 南米南部:数量 28.5(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 125(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 6 億ドル。キルメスがCCUと価格競争、ドル利益率が低下
- カナダ:数量 7.2(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 285(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。モルソンに数量を奪われ、販売単価も物価未満
倍率:k8.0%、強い堀でもシェア喪失時の超過収益残存2/3、事業自己資本ROE12.4%、RONIC10.9%。市場数量-1%超、相対シェア微減、単価+2.5%前後からg1.0%。式の10年目適用の正当化PER上限は13.11倍だが、構造的な劣化と税の争いのため11.30倍に下げた。事業純利益24.59×11.30+残存現金9=286.91億ドル。悲観側の稼ぐ力の上限は純利益24.59÷k+現金9=316.42億ドルで、時価総額はこれ以下。過去の谷のPBRは使わない。
確率:2025年の数量減、ハイネケンの攻勢、南米の所得・通貨の弱さが続けば十分起こりうる。
悲観 11% 悲観:主要市場で競争に負ける 利益 12 億ドル · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0.74 ドル115 億ドル
10年で構造的に負けた姿である。ブラジルのビール市場が年2%近く縮む中、ハイネケンと低価格のペトロポリスに棚を奪われ、アンベブの国内数量は6500万ヘクトリットルまで落ちる。小売シェアは現在の64%から50%台前半へ低下し、価格は10年で13%しか上がらない。主流ブランドの値上げが通らず、国内ビールの営業利益率は17%まで落ち込む。
非アルコールはコカ・コーラや地場の格安飲料に押され、2700万ヘクトリットルへ減る。ドミニカ共和国の独占的な地位にも規制と販促競争が入り、中央米州・カリブの利益率は26%まで縮む。南米南部ではアルゼンチンの購買力低下と通貨不安が再燃し、キルメスを持つ優位性をドル利益に変えられない。カナダのラバットもモルソンに市場を取られる。
ブラジルの選択税が重く、税務係争の一部が敗訴となる。期間中に一時的な減損・訴訟費用を約30億ドル計上し、10年の純利益累計は約167億ドルにとどまる。配当と自社株買いの正味還元は約135億ドルに減る。資産の売却価値は残るが、かつての市場支配力に高い倍率は払えない。
- ブラジル・ビール:数量 65.0(百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量))× 価格 91(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場数量年-1.8%、シェア年-1.4%程度で10年数量-27%、50%台へ
- ブラジル・非アルコール飲料:数量 27.0(百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷))× 価格 52(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。コカ・コーラ・地場飲料に負け数量-20%
- 中央米州・カリブ:数量 9.3(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 190(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 5 億ドル。ドミニカ優位にも規制や低価格競争が入る
- 南米南部:数量 22.0(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 102(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 2 億ドル。アルゼンチンの通貨とインフレで収益力が著減
- カナダ:数量 6.5(百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量))× 価格 255(1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。モルソンとRTDに販売数量を奪われる
倍率:k8.0%、強い堀でもシェア喪失時の超過収益残存2/3、事業自己資本ROE6.2%、RONIC6.8%。市場数量-2%程度、シェア低下、単価+1~2%で名目g-1.0%。式の10年目適用の正当化PER上限は12.62倍だが、構造的な劣化と税の争いのため9.50倍に下げた。事業純利益11.51×9.50+残存現金6=115.31億ドル。悲観側の稼ぐ力の上限は純利益11.51÷k+現金6=149.82億ドルで、時価総額はこれ以下。過去の谷のPBRは使わない。
確率:飲酒需要の長期縮小と税務敗訴、価格決定力の喪失が重なる極端な筋書き。純現金があるので破綻より構造的な劣化としてみる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ブラジル・ビール
ブラーマ、スコール、アンタークチカ、コロナなど。小売と飲食店へビールと周辺酒類を販売する。
| 数量百万ヘクトリットル(ビールと周辺酒類の実出荷数量) | 価格1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 89.4 | 81 | 72 | 18 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 112 | 101 | 26 |
取り方:2025年通期6-Kの国内ビール実出荷8939万ヘクトリットル、売上402.306億レアルを使用。添付の全社売上157.9億ドルへの換算比率5.589レアル/ドルで72.0億ドル、単価80.54ドル/hl。地域公表の正常化営業利益は103.139億レアル≒18.46億ドル。Euromonitorの2025年小売数量シェア64%から、比較可能性に留保付きで市場を約1億4000万hlと逆算。競合ハイネケンは約22%、残りはペトロポリス等。政府の国内生産約1億5600万hlは小売と分母が異なる。
ブラジル・非アルコール飲料
グアラナ・アンタークチカ、ペプシ、ゲータレード、無糖炭酸などを製造・販売する。
| 数量百万ヘクトリットル(非アルコール飲料の実出荷) | 価格1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 33.6 | 47 | 16 | 4 |
| 10 年後 中立 | 37.0 | 67 | 25 | 6 |
取り方:2025年通期6-Kの非アルコール実出荷3361万hl、売上88.001億レアルからドル売上15.75億・単価46.86ドル/hl、正常化営業利益21.710億レアル≒3.88億ドル。会社20-Fでは同事業の94%が炭酸飲料の数量で、コーラ味は市場58%、グアラナ味は19%。主敵はコカ・コーラと地方の低価格銘柄。ABIRの飲料全体年320億リットルは水などを含み、これをそのままシェア分母にしない。相互に重なる炭酸市場を含む対象数量は推定1億3500万hlで初期シェア約25%とするが未開示の推定値。
中央米州・カリブ
ドミニカ共和国のプレジデンテ、パナマのバルボアなど。酒類と清涼飲料を販売する。
| 数量百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量) | 価格1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.0 | 163 | 20 | 7 |
| 10 年後 中立 | 13.2 | 230 | 30 | 10 |
取り方:2025年6-Kの地域数量1204万hl、売上109.639億レアルを全社factsのドル額に換算し売上19.62億ドル、単価163.01ドル/hl。地域正常化営業利益38.493億レアル≒6.89億ドル。20-Fのドミニカ共和国ビール市場510万hl、Euromonitorの現地子会社小売数量シェア約95%が堀の裏付け。CACにはグアテマラとパナマ、現地非酒類も含むため現地市場だけを数量分母には使わない。キューバ事業は2026年1月に持分法へ移行。
南米南部
アルゼンチンのキルメスを中心に、ボリビア、チリ、パラグアイ、ウルグアイで飲料を売る。
| 数量百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量) | 価格1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.2 | 100 | 32 | 7 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 140 | 46 | 10 |
取り方:2025年6-Kの地域数量3216万hl、売上179.883億レアルから32.20億ドル、単価100.12ドル/hl、正常化営業利益40.461億レアル≒7.24億ドル。アルゼンチンビール市場は20-Fで約1540万hl、Euromonitorではキルメス系小売数量約60%、CCU約29%。ここにボリビア・チリなどの数量を加えた地域全体である。アルゼンチンのIAS29超インフレ会計と通貨換算で、表面上の単価伸長をそのまま10年延長しない。
カナダ
ラバットを通じてバドワイザー、ブッシュ、ミケロブ・ウルトラ、即飲型を販売する。
| 数量百万ヘクトリットル(地域の実出荷数量) | 価格1ヘクトリットル当たり純売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.6 | 213 | 18 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 301 | 24 | 5 |
取り方:2025年6-Kの地域数量862万hl、売上102.595億レアルから18.33億ドル、単価212.59ドル/hl、正常化営業利益22.941億レアル≒4.10億ドル。Euromonitorの2025年カナダ市場のビール数量シェアはラバット約33%、モルソン約35%。ラバット862万hlにはビール以外や流通契約も含むので市場総量は逆算に使わず、シェアは酒類市場の競争構造の目安に留める。
リスクと懸念
ブラジルの選択税と税務係争
ブラジルでは2027年に酒類などへの選択税が始まり、最終税率は未確定である。2026年3月末時点で会社が可能損失と分類する税務係争は約1048億レアルに達し、一部で不利な行政判断も出た。これは確定債務や全額の支払見込みではないが、純現金を超える費用に育てば利益・資産・配当に同時に響く。
ハイネケンによる国内ビールのシェア奪取
国内ビール小売数量の約64%を握るが、ハイネケンも約22%を持ち、高級ブランドで攻勢をかけている。2025年のブラジルビール数量は4.5%減り、2026年の回復にはサッカー大会の需要もある。市場シェアが毎年1ポイント近く落ちれば、物流の規模があっても製造固定費を吸収しきれなくなる。
南米通貨と超インフレ会計
アルゼンチンの価格上昇は、ドルで測る単価上昇と同じではない。IAS29の超インフレ会計と換算差は地域売上の比較を難しくし、税や輸入原料費も揺らす。為替を固定した長期モデルとは異なる実際の通貨安が続けば、現地数量を守っても連結純利益は伸びない。
支配株主とブランド使用権
親会社アンハイザー・ブッシュ・インベブと関係財団が約73%の議決権を支配する。世界ブランドの製造・販売許諾は強みだが、その条件変更や地域再編、配当方針に一般株主が意見を通しにくい。自社株買いの株主価値が高くても、関連当事者間の取引を継続して監視する必要がある。
ノンアルコールへの転換と健康志向
ビールから無糖飲料やノンアルコールビールへ需要が移る。アンベブも対応しているが、炭酸飲料ではコカ・コーラと地方の低価格製品が強い。自社の新商品が既存ビールを置き換えるだけなら全社利益は増えず、低糖・即飲型の広告費や小売の値引き要求で営業利益率が下がりうる。
原料・容器・物流・気候
麦芽、アルミ缶、再利用瓶、輸送燃料と電力の値上がりは単価の上昇と同時に起こる。熱波や豪雨は来店頻度と農産物供給に影響する。2026年の国内ビールの現金売上原価単価見通しは4.5~7.5%増であり、値上げがこれに追いつかなければ高シェアでも利益率が削られる。
買収と余剰現金の誤認
現金37億ドルに対し有利子負債は約6億ドルだが、配当未払いや税・運転資金の支払は残る。純現金の全額を即時配当できると考えると価値を過大評価する。過去に成功した地域買収と同じ収益性で新しい買収を繰り返せる保証もなく、のれんや撤退費の損失を悲観で考慮する。
今後の分かれ目
- ブラジルビール数量が4四半期連続で市場を上回り、会社のシェア上昇が実測で確認できたら
- 主流品と高級品の両方で販路の堀が厚くなった証拠として、やや楽観の数量と確率を上方修正する。
- ハイネケンのシェアが25%を超え、アンベブの国内シェアが60%を割ったら
- 物流の規模と値上げ力が弱まるため、中立の国内ビール数量と利益率を下げ、やや悲観を厚くする。
- 選択税の確定税率が高く、国内ビールの価格転嫁後利益率が23%を下回ったら
- 中立の営業利益率を下げ、税の構造的な悪化を悲観側へ寄せて計算し直す。
- 非アルコール飲料の数量が3年連続で伸び、無糖品の利益率も改善したら
- コカ・コーラに対する競争力が確認できるので非アルコールの数量・単価と成長持続率を上げる。
- 税務係争で巨額の支払義務が確定したら
- 現金の床と配当余力を支払額だけ差し引き、税負担に応じて自己資本と悲観確率を修正する。
- 正味の年間株主還元が利益を継続的に上回る一方で借金が増え始めたら
- 余剰現金の戻り方を維持できないとして、長期の正味還元を抑え、純現金への評価を見直す。
- 南米南部で数量が回復してもドル換算売上が連続減少したら
- 通貨と超インフレ会計の悪影響が実質の価格決定力を上回っており、南米南部の単価と利益率を切り下げる。
見ておくもの
- ブラジルビールの四半期数量、NR/hl(自社商品のみ)、市場小売シェアとハイネケンとの差
- ブラジル非アルコール飲料の数量、無糖商品の比率、コカ・コーラとのシェア
- 中央米州・カリブのプレジデンテ販売数量、キューバ連結外しの影響
- 南米南部のIAS29影響を除いた数量・現地単価・ドル換算利益
- カナダのラバットとモルソンのビール数量シェア
- ブラジルの選択税率と税務係争の判決、引当金と支払現金
- BEESの受注割合、ゼ・デリバリーのリピート件数と飲料の販売利益への寄与
- 自社株買い枠の消化額、正味配当、株式報酬控除後の純現金
倍率と資本コストの決め方
2025年の地域別販売数量と純売上を用い、単価を算出した。地域の正常化営業利益の合計約40.6億ドルと財務台帳の全社営業利益35.8億ドルの差は、比較上の調整額に分離した。地域別の売上を全社比率で機械配分していない。
長期のgは市場数量、シェア、単価の見通しから導き、ROEや株価から逆算していない。倍率はk8.0%と強い堀に応じたRONICから求め、現在と過去の市場倍率に寄せていない。
ADS1口は普通株1株で、台帳の約156.8億株は会社全体の株数を表す。10月23日の台帳時価総額約518億ドルに対し、10月26日は約435億ドルへ急落した。価格変動が主因で、自社株買いによる株数減もある。基準日が違っても本質価値の数字を動かしていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に4項目合計0.0%を加えた8.0%。為替ショック、親会社の支配、税務係争の個別リスクはkへの追加で二重計上せず、数量と利益率、悲観の確率で表す。比較対象のディアジオ・ブラウン・フォーマンの8.5%より低いのは純現金と南米市場での高い数量シェアのため。