結論
ブラウン・フォーマンは、ジャックダニエル(Jack Daniel's)を中核に、ウッドフォード・リザーブ、オールドフォレスター、ヘラドゥーラなどを持つ米国の酒類メーカーである。2026 年 4 月期は売上 39.3 億ドル(オーガニックで横ばい)、営業利益 10.0 億ドル(-10%)、純利益 7.2 億ドル、ROE 17.8%。営業利益はジンマーレとディプロマティコの減損 1.3 億ドルを除くと 11.3 億ドル、利益率 28.8%。2026 年 5〜7 月期は売上 -1%、営業利益はオーガニックで +4%、2027 年 4 月期の見通しは、売上ほぼ横ばい・営業利益はオーガニックで -3〜-5% である。
米国の飲酒率は 54% と過去最低に張り付き、米国のスピリッツ売上は 2025 年に -2.2%(DISCUS)。同社も、ジャックダニエル・テネシーウイスキーが -4%(オーガニック)、テキーラが -6%、カナダの棚から米国産が外れて現地売上が 6 割近く減るなど逆風が重なる。一方で、ウイスキーの新しい味(テネシーブラックベリー)、メキシコ・ブラジルなど新興国(+12%)、缶入りカクテル(RTD。ニューミックスが +41%)が穴を埋めている。
10 年の中立は、ウイスキーの数量が年 -1%、価格が年 +2.2%(物価 3.5% に届かない)、利益率 26% で、純利益は 8.7 億ドル。減損を除いた今の水準(8.2 億ドル)より年 0.6% 伸びるだけである。資本コスト 8.5%・長期の g 1.0%・ROE 19.6% で、利益ベースの正当化 PER は来年の利益に 12.4 倍(下限の 1 ÷ k = 11.8 倍の少し上)。10 年目の利益に PER 12.1 倍、時価総額 105 億ドル。今の 135 億ドルを下回り、確率を重ねた結論は「割高」である。
バリュー投資の観点では、ブランドと財務の軽さ(純負債は EBITDA の約 1.8 倍)は評価できるが、縮む市場で価格を物価並みに上げ続けられるかが読めず、安全域は厚くない。2026 年にはペルノ・リカールとの合併協議(4 月に決裂)、サザラックの買収提案(時価総額を 1 割強上回る約 150 億ドル、拒否)があったが、成立していない案件は織り込まず、今の会社だけで置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。ジャックダニエルは世界中で認知され、熟成の時間と配給網は複製しにくい。ただし今より強いとは言えない。飲酒率が構造的に下がる中、堀は守るためのもので、価格を決める力は、数量が減った時に試される。値上げは 2025 年に米国の酒類全体で売上を下げた。
オーナー利益は、設備投資が減価償却とほぼ釣り合う(今年度は 0.6〜0.7 億ドルと軽い)ので、純利益に近い 8 億ドル前後と見る。2026 年 4 月期のフリーキャッシュフロー 8.9 億ドルは、熟成原酒の仕込みを絞った分が上乗せされた値で、これが続くとは見ない。時価総額 132 億ドルに対するオーナー利益利回りは約 6%。国債 5% をわずかに上回るが、物価(3.5%)に届かない価格の伸びなら、実質では目減りする。
安全域は、中立の 10 年後(純利益 8.7 億ドル、PER 12.1 倍、時価総額 105 億ドル)と配当・自社株買いの合計 78 億ドルで、今の値段に対して年 3% ほど(資本コスト 8.5% に届かない)。悲観の 10 年(数量 年 -2.5%、価格が物価に大きく届かない)では時価総額が 45 億ドルまで 3 分の 1 に縮む。財務は軽く、買収の提案が出ている点が下値を支えるが、ブラウン家が応じない限り働かない。経営は長期で穏やかに評価できる一方、減損の履歴が示す買収の目利きの弱さは気になる。確信度は中程度で、米国の飲酒減の速さと価格の効きは読みにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は蒸留酒の製造・販売で、売上の約 7 割がウイスキー、約 1 割半が缶入りカクテル(RTD)、残りがテキーラ、ラム(ディプロマティコ)、ジン(ジンマーレ、フォーズ)、リキュール(シャンボール)である。中心のジャックダニエルは、テネシーウイスキー(本体)にアップル・ハニー・ファイア・ブラックベリーなどの派生品、ジェントルマン・ジャック、ジャックダニエル・コカ・コーラの RTD まで広がる。ウッドフォード・リザーブとオールドフォレスターはバーボンの高価格帯で、近年 +4〜5% と伸びている。
売り方は、米国では酒類卸売業者を通じて小売・飲食店に売る三層構造で、2026 年 4 月期は新しく 11 の卸を 25 の市場に入れた。日本などでは自社配給に切り替えて利益を取りにいく。地域は米国が約 4 割、先進国の海外(ドイツ・英国・オーストラリアなど)が約 3 割弱、新興国(メキシコ・ブラジル・トルコ・ポーランドなど)が約 25%、免税が 5% 弱。
利益は、数量(9 リットルケース)× 1 ケースの純売上 × 利益率で決まる。2026 年 4 月期の販売量は、ウイスキー 2,090 万ケース(0%)、RTD 2,360 万ケース(+9%)、テキーラ 190 万ケース(-7%)、その他 110 万ケース。1 ケースの売上は、ウイスキー約 139 ドル、RTD 約 23 ドル、テキーラ約 133 ドル。会社は事業を 1 つの区分で開示するため、カテゴリー別の営業利益は推定(ウイスキー 32.5%、テキーラ 22%、RTD 16%、その他 22%)で置いた。費用は、熟成原酒(数年〜十数年前の高い原料・樽の費用)、ガラス、輸送、広告(売上の約 12%)で、熟成原酒の費用は数年続いて上がる。2025 年にコルベル(スパークリングワインの販売委託)が終わり、樽を作る子会社も売却した(使用済み樽の売上が 68% 減)。
優良さと弱いところ
堀は 4 つある。第 1 は、ジャックダニエルの世界規模のブランドと、150 年を超える蒸留所の歴史。米国のスピリッツ市場全体で価値が下がる中でも、高級バーボン(ウッドフォード、オールドフォレスター)は伸びている。第 2 は熟成の時間で、原酒は数年先の販売量を見て仕込むため、後から追いつくのが難しい。第 3 は、82 年連続の配当と 42 年連続の増配に表れる、ブラウン家の長期の視点。議決権のある A 株の過半はブラウン家(ウルフ・ペン・ブランチ LP など)が持ち、短期の圧力に動じない。第 4 は財務の軽さで、純負債は EBITDA の約 1.8 倍(推定)、格付けも高い。
資本効率は、営業利益率が 25〜29%、ROE が 18〜22%(自己資本 40 億ドルのうち、のれんと無形資産が大きい)。10 年前の ROE 50% は自社株買いと借金によるもので、今は借金も自己資本も増え、ROE は落ち着いた。
弱点は 4 つ。第 1 は、米国で飲酒が減る中で価格の値上げが効きにくくなっていること(米国のスピリッツは数量 +1.9%、売上 -2.2%)。第 2 は、テキーラ(ヘラドゥーラ -10%)やジャックダニエル本体(-4%)など、主力の一部が縮んでいること。第 3 は、買収の失敗(ジンマーレ・ディプロマティコの減損 1.3 億ドル、ジンマーレへの追加払いが最大 9,000 万ユーロ)。第 4 は、ブラウン家の支配により、株主が買収の提案(サザラックの約 150 億ドル)に応じる機会が少ないこと。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のスピリッツ市場は、2025 年に売上 364 億ドル(-2.2%)、数量 3.18 億ケース(+1.9%)と、数量は増え価格が下がった。アメリカンウイスキーは売上 51 億ドル(-0.9%)、テキーラ・メスカルは 64 億ドル(-4.1%)、RTD は大きく伸びた。Gallup の調査で飲酒する米国成人は 2023 年の 62% から 54% へ下がり、若い世代の飲酒離れ、健康意識、GLP-1 薬、大麻・THC 飲料への置き換えが続く。業界ノートの中立は、酒類全体の数量が 10 年で年 -1.5%、単価は年 +3.0% である。
輸出環境は悪い。アメリカンウイスキーの EU 向けは 2025 年に -35%、カナダ向けは州の酒販が米国産を棚から外したため約 -70%。同社のカナダの売上は全体の約 1% だが、現地で約 6 割減り、2027 年 4 月期も続く見込み。EU は報復関税を取りやめた。
競合は、ディアジオ(Diageo。クラウン・ロイヤル、ドン・フリオ)、ペルノ・リカール、ビームサントリー(ジム・ビーム、メーカーズマーク)、ヘブンヒル、バッファロー・トレース(サザラック)、キャンパリなど。ジャックダニエルは世界で最も売れるアメリカンウイスキーの 1 つだが、米国では値引き販促と、小規模蒸留所のクラフトも増えた。RTD ではコカ・コーラ(ジャックダニエル・コカ・コーラ)と組む一方、ニューミックスなどの新興国の RTD が伸びている。循環では、2008〜09 年の株価は -35%、2020 年は -18%(配当込み)で、生活必需品の中でも下げは浅い。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2026 年 4 月期は配当 4.3 億ドル(連続増配)と自社株買い 4.0 億ドル(2025 年 12 月に終了)で 8.3 億ドル。2027 年 4 月期は第 1 四半期に自社株買いがなく、設備投資が 0.6〜0.7 億ドルと軽いため、フリーキャッシュフローは配当を超えて余る。2026 年 5〜7 月期の純負債は約 21 億ドルで、時価総額の約 16%。長期債は 20.8 億ドル(最も近い満期は 2028 年 7 月の 2.60% 英ポンド債 4.0 億ドル、その後は 2033 年から)、コマーシャルペーパー 3.6 億ドル(4.03%)。借り換えのたびに金利が上がるが、満期が遠く、利払いの増加は小さい。
M&A は 2026 年に大きく動いた。3 月末にペルノ・リカールとの対等合併の協議を認め、4 月 28 日に「受け入れ可能な条件に至らず」終了(債務構造と経済条件)。5 月にサザラックが約 150 億ドルを提案して拒否され、7 月には A 株主(ほとんどがブラウン家)に再提案したが、取締役会は「対応不要」とした。成立していない案件なので、今の会社だけで筋書きを置いた。
過去の M&A は、ジンマーレとディプロマティコの減損に表れるように、割高で買う癖がある。リストラは 2025 年に従業員の約 12% を削減し、樽の子会社を売却した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ジャックダニエルは、150 年の歴史と世界中の認知で、価格を決める力を持つ数少ないブランドである。2026 年 4 月期はオーガニックで売上横ばい・営業利益 -2% と、米国の酒類全体(売上 -2.2%)より底堅く、2026 年 5〜7 月期は営業利益がオーガニックで +4%、粗利益率は 60.2% と 0.4 ポイント上がった。米国の売上は在庫調整を除けばオーガニックで横ばいで、ウッドフォード・リザーブとオールドフォレスターは +4〜5%、テネシーブラックベリーは 1 年で 30 万ケース近くと、新製品のヒットが続く。
成長の穴は埋まりつつある。新興国は +12%(メキシコ +13%、ブラジル +12%)、RTD は +7%(ニューミックス +33%)で、2026 年 5〜7 月期の販売量は +8%(出荷 +7%、缶入りカクテルは +14%)と増えた。リストラで従業員の 12% を減らし、2027 年 4 月期から効果が出る。カナダの棚外し(売上の約 1%)や使用済み樽の売上減は、いずれも小さな逆風で、解ければ戻る。
財務は軽く(純負債は EBITDA の約 1.8 倍)、設備投資も 0.6〜0.7 億ドルに絞られ、配当を払ってなお自社株買いに回せる。サザラックが時価総額の 1 割強上乗せの約 150 億ドルを出した事実が示すとおり、資産の価値は今の株価より高い。資本コスト 8.5% の式では、利益が名目で年 1% 伸びても PER は 12 倍台と控えめで、強気の見方はそこに余地を見る。
慎重な見方
米国のスピリッツは、数量が 1.9% 増えても売上は 2.2% 減った。値上げが効かず、消費者は安い品に移る。Gallup の飲酒率 54% は過去最低に張り付き、GLP-1 薬と THC 飲料が若い世代を奪っている。同社の中核のジャックダニエル・テネシーウイスキーは、オーガニックで -4% と縮み続けている。
成長の穴を埋めている部分は、実は利益が薄い。RTD(営業利益率は推定 16%)と新興国は伸びるが、ウイスキー(推定 33%)の減りを同じ利益で埋められない。テキーラは -6%、ヘラドゥーラは -17% で、2027 年 4 月期の見通しは営業利益 -3〜-5%。熟成原酒の費用上昇は数年続き、使用済み樽の売上が消え、カナダは 2027 年 4 月期も戻らない。アルミ・ガラス・輸送の関税の費用も重い。
さらに、経営の目利きに疑問がある。ジンマーレとディプロマティコで 1.3 億ドルの減損を出し、ジンマーレには最大 9,000 万ユーロの追加払いが残る。ペルノ・リカールとの合併が決裂し、サザラックを拒否した後で、2026 年 4 月期のオーガニックの SG&A は、取引協議の費用などで 7% 増えた。ブラウン家の支配で、買収の提案が出ても株主は何も決められない。値段は、飲酒が減る市場で価格が物価に届かない会社の値であり、今より安くなる理由がある。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の軽さは強気の見方が強く、数量と価格の見通しは慎重な見方が強い。中立は、数量が年 -1%、価格が年 +2.2%、利益率が 26% まで下がるという、飲酒の構造的な減りを認めたうえで、ブランドが物価の半分以上は価格に乗せられるという置き方にした。確率は、悲観とやや悲観の合計を 10 年で 44% と、慎重な見方にやや寄せた。減った分が RTD と新興国に行く一方、利益の薄い分野への置き換えが利益の質を落とすためである。結論は、利益ベースの正当化 PER で測ると今の時価総額を下回る「割高」である。k を quality で付け直した(6.0% → 8.5%)影響が大きく、強気の見方が勝つのは数量の下げ止まりが見えた時である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 20.43 ドル95 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 15.55 ドル73 億ドル)。 今の値に割り戻すと 19.38 ドル90 億ドル、今との差 −35.8%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 37.00 ドル173 億ドル | 21.53 ドル101 億ドル | +94.0% | +6.8% | 3.51 ドル16 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 29.22 ドル136 億ドル | 19.11 ドル89 億ドル | +60.2% | +4.8% | 8.22 ドル38 億ドル |
| 中立 | 33% | 22.58 ドル105 億ドル | 16.60 ドル78 億ドル | +29.8% | +2.6% | 12.93 ドル60 億ドル |
| やや悲観 | 28% | 15.21 ドル71 億ドル | 13.84 ドル65 億ドル | −3.7% | −0.4% | 8.13 ドル38 億ドル |
| 悲観 | 16% | 9.58 ドル45 億ドル | 10.33 ドル48 億ドル | −34.0% | −4.1% | 3.18 ドル15 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 20.43 ドル95 億ドル | 15.55 ドル73 億ドル | +19.2% | +1.8% | 35.98 ドル168 億ドル |
今の株価時価総額 30.18 ドル141 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:飲酒率が下げ止まり、新興国と RTD で数量を保つ 利益 12 億ドル · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 37.00 ドル173 億ドル
10 年後(2036 年 4 月期)、米国の飲酒率が 50% 前後で下げ止まり、ジャックダニエルは新興国(メキシコ・ブラジル・ポーランド)と自社配給の市場で数量を伸ばし、ウイスキー全体の数量は横ばい(2,090 万ケース)。1 ケースの売上は物価並みの 1.37 倍(年 +3.2%)で、高級バーボンと派生品が引っ張る。RTD は 5,400 万ケース(今の 2.3 倍)に伸び、ニューミックスがメキシコとブラジルに根づく。熟成原酒の費用上昇は 2030 年までに峠を越え、営業利益率は 28.7% に戻る。売上 58.9 億ドル、営業利益 16.9 億ドル、純利益 12.4 億ドル。10 年の配当と自社株買いは合計で約 100 億ドル、純負債は EBITDA の約 1.5 倍。
- ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど):数量 20.9(販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア)× 価格 190(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 14 億ドル。数量 +0.0%/年・価格 +3.2%/年
- テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ):数量 1.9(販売量(百万ケース))× 価格 182(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +0.0%/年・価格 +3.2%/年
- 缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD):数量 54.3(販売量(百万ケース))× 価格 23(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量 +8.7%/年・価格 +0.0%/年
- その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど):数量 1.1(販売量(百万ケース))× 価格 291(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +0.0%/年・価格 +3.2%/年
倍率:ROE 30.7%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 19.6%、g 2.2%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 14.1 倍(来年の利益に対して)。ROE が k を大きく超え、ブランドの再投資の超過利益は 1/2 残る。10 割に近い 9.7 割に置いた。上限の 9.7 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 14.0 倍。時価総額 = 純利益 12 億ドル × 14.0 倍 = 173 億ドル。
確率:飲酒率が 50% 前後で下げ止まり、新興国の自社配給と RTD がジャックダニエルの穴を埋めて価格も物価並みに戻る展開。10 年先まで全部が当たる必要があり、6% とした。
やや楽観 17% やや楽観:高価格帯のバーボンと RTD が伸び、価格は物価に近づく 利益 11 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 29.22 ドル136 億ドル
10 年後、ウイスキーの数量は年 -0.5%(1,990 万ケース)、1 ケースの売上は年 +2.8%(1.32 倍)。ウッドフォード・オールドフォレスターなど高価格帯が伸び、ジャックダニエル本体は縮むが派生品が補う。RTD は年 +7.4% で 4,720 万ケース、テキーラは年 -0.5%。ディアジオやビームサントリーの販促は続くが、価格を決める力は保たれる。営業利益率は 27.6%。売上 53.3 億ドル、営業利益 14.7 億ドル、純利益 10.7 億ドル。10 年の配当と自社株買いは合計で約 89 億ドル。
- ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど):数量 19.9(販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア)× 価格 183(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 12 億ドル。数量 -0.5%/年・価格 +2.8%/年
- テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ):数量 1.8(販売量(百万ケース))× 価格 172(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 -0.5%/年・価格 +2.7%/年
- 缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD):数量 47.2(販売量(百万ケース))× 価格 23(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量 +7.2%/年・価格 +0.0%/年
- その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど):数量 1.1(販売量(百万ケース))× 価格 277(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 -0.2%/年・価格 +2.7%/年
倍率:ROE 24.8%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 16.6%、g 1.6%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.1 倍(来年の利益に対して)。超過利益の持続は楽観よりやや短い。9.6 割に置いた。上限の 9.6 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 12.8 倍。時価総額 = 純利益 11 億ドル × 12.8 倍 = 136 億ドル。
確率:数量の減りが年 -0.5% にとどまり、高価格帯のバーボンと RTD が伸びる展開。ブランドの価格を決める力が保たれる前提。
中立 33% 中立:数量は年 -1%、価格は物価の 6 割強、利益率 26% 利益 9 億ドル · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 22.58 ドル105 億ドル
10 年後、米国のスピリッツ市場は数量で年 -1.2% 縮み(飲酒率の低下、GLP-1 薬、THC 飲料)、ウイスキーの数量は同社で年 -1.0%(1,880 万ケース)。1 ケースの売上は年 +2.2%(1.24 倍。物価 3.5% の 6 割強)。ウッドフォード・オールドフォレスターは伸びるが、ジャックダニエル本体が縮み、新興国が穴を埋める。RTD は年 +5.4%(4,010 万ケース)、テキーラは年 -1.6%。熟成原酒の費用の上昇が 2030 年ごろまで続き、人件費・ガラス・輸送が物価で上がるため、営業利益率は 26.0%。売上 46.8 億ドル、営業利益 12.2 億ドル、純利益 8.7 億ドル(今の減損を除く水準の年 +0.6%)。10 年の配当と自社株買いは合計で約 78 億ドル。
- ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど):数量 18.8(販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア)× 価格 172(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 10 億ドル。数量 -1.0%/年・価格 +2.2%/年
- テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ):数量 1.6(販売量(百万ケース))× 価格 159(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 -1.6%/年・価格 +1.8%/年
- 缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD):数量 40.1(販売量(百万ケース))× 価格 23(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量 +5.4%/年・価格 -0.2%/年
- その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど):数量 1.0(販売量(百万ケース))× 価格 266(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 -0.5%/年・価格 +2.3%/年
倍率:ROE 19.6%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 14.0%、g 1.0%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.4 倍(来年の利益に対して)。ROE が k を超えるので中立の PER は 1 ÷ k を下回らせない。式の値が下限に近いため 9.7 割に置いた。上限の 9.7 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 12.1 倍。時価総額 = 純利益 9 億ドル × 12.1 倍 = 105 億ドル。
確率:飲酒の構造的な減少は続くが、新興国と新製品で数量の減りを抑え、価格は物価の 6 割強で上がる、議論の落としどころ。
やや悲観 28% やや悲観:数量が年 -1.9% まで落ち、価格が物価の半分 利益 7 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 15.21 ドル71 億ドル
10 年後、ウイスキーの数量は年 -1.9%(1,710 万ケース)、1 ケースの売上は年 +1.4%(1.15 倍)。米国の飲酒率が 45% 台に下がり、ジャックダニエル本体が年 -3% で縮み、ビームサントリーとサザラックの値引きに価格を合わせる。RTD は年 +3.4%(3,300 万ケース)、テキーラは年 -2.8%。新興国の成長は為替と関税で鈍る。営業利益率は 24.5%。売上 39.1 億ドル、営業利益 9.6 億ドル、純利益 6.7 億ドル。ジンマーレなどの減損で自己資本が 5 億ドル減る。10 年の配当と自社株買いは合計で約 65 億ドル。
- ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど):数量 17.1(販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア)× 価格 159(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 27 億ドル・営業利益 8 億ドル。数量 -2.0%/年・価格 +1.4%/年
- テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ):数量 1.4(販売量(百万ケース))× 価格 146(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -2.8%/年・価格 +1.0%/年
- 缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD):数量 33.0(販売量(百万ケース))× 価格 22(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +3.4%/年・価格 -0.5%/年
- その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど):数量 1.0(販売量(百万ケース))× 価格 245(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -1.0%/年・価格 +1.4%/年
倍率:ROE 16.3%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.4%、g 0.0%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍(来年の利益に対して)。成長が止まり、稼ぐ力(純利益 ÷ k)が基準。式の値の 1 ÷ k の 9 割に置き、市場や過去の水準・PBR は使わない。上限の 9.0 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 10.6 倍。時価総額 = 純利益 7 億ドル × 10.6 倍 = 71 億ドル。
確率:数量が年 -1.9%(ウイスキー)まで落ち、価格が物価の半分程度にとどまる展開。THC 飲料・ノンアルコール・GLP-1 薬の影響が続く、縮む産業の主流シナリオとして 28% と厚くした。
悲観 16% 悲観:構造的な負け。数量が毎年 3% 減り、価格を決める力を失う 利益 5 億ドル · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 9.58 ドル45 億ドル
10 年後、構造的に負けた姿。米国の飲酒率が 40% 台前半に下がり、ウイスキーの数量は年 -3.0%(1,550 万ケース)、1 ケースの売上は年 +0.5%(1.05 倍)と物価に大きく届かない。ジャックダニエルのブランドが小規模蒸留所とクラフトに押され、値引きなしでは売れず、テキーラは年 -5%(114 万ケース)。RTD は年 +1.0% にとどまる。人件費・原料が物価で上がり、営業利益率は 21.5%。売上 31.5 億ドル、営業利益 6.8 億ドル、純利益 4.6 億ドル。ジンマーレ・ディプロマティコの追加減損などで自己資本が 12 億ドル減る。10 年の配当と自社株買いは合計で約 48 億ドル。配当は据え置かれ、自社株買いは止まる。
- ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど):数量 15.5(販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア)× 価格 146(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量 -3.0%/年・価格 +0.5%/年
- テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ):数量 1.1(販売量(百万ケース))× 価格 133(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -5.0%/年・価格 +0.0%/年
- 缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD):数量 26.0(販売量(百万ケース))× 価格 21(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +1.0%/年・価格 -0.8%/年
- その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど):数量 0.9(販売量(百万ケース))× 価格 223(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -2.2%/年・価格 +0.5%/年
倍率:ROE 12.3%、k 8.50%(基本 8.0% + quality +0.5%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 10.4%、g -2.0%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍(来年の利益に対して)。数量が毎年減り価格を決める力を失う局面。稼ぐ力(純利益 ÷ k)に g をかけた値の 85% に置き、市場や過去の水準・PBR は使わない。上限の 8.5 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 9.8 倍。時価総額 = 純利益 5 億ドル × 9.8 倍 = 45 億ドル。
確率:ブランドの価格を決める力が消え、数量が年 -3% 近く減り、利益率が 21% 台まで下がる構造的な負け。買収の減損も重なる。ブランドの強さと財務の軽さを考え、悲観は通常より厚くせず 16% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ウイスキー(ジャックダニエル・ウッドフォード・オールドフォレスターなど)
ジャックダニエルを中心とするテネシーウイスキーとバーボン。利益の大半。
| 数量販売量(百万ケース、9 リットル換算)= 米国・海外の市場 × シェア | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.9 | 139 | 29 | 9 |
| 10 年後 中立 | 18.8 | 172 | 32 | 10 |
取り方:2026 年 4 月期のウイスキー売上は 28.97 億ドル(前年度のカテゴリー別売上 28.28 億ドルに +3% を掛けた推定)で、販売量(デプレッション)2,090 万ケース(0%)、1 ケース約 139 ドル。利益率 32.5% は推定(会社は事業を 1 区分で開示。全社の営業利益 11.3 億ドル(減損除く)に合うよう配分)。米国のアメリカンウイスキーの数量は年 -1% で縮み、新興国が補う。価格は物価(3.5%)でなく、米国のスピリッツ価格が下がっている現状(2026 年 4 月期のオーガニックの価格・ミックスは約 +1%)を見て年 +2% 前後。競合はディアジオ・ビームサントリー・ヘブンヒルなど。 10 年中立の価格は物価(1.41 倍)でなく 1.24 倍(年 +2.2%):米国のスピリッツ全体で価格が下がる中、ブランド力で物価の 6 割強は乗せられるとみる。
テキーラ(エルヒマドール・ヘラドゥーラ)
メキシコで作るテキーラ。成長が止まっている。
| 数量販売量(百万ケース) | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.9 | 133 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 159 | 3 | 1 |
取り方:売上 2.52 億ドル(前年度 2.62 億ドル × 0.96)、販売量 190 万ケース(-7%)、1 ケース約 133 ドルの推定。ヘラドゥーラは米国で数量が減り -10%、エルヒマドールは -2%。利益率 22% は推定。米国のテキーラ・メスカルは売上 -4.1% の市場で、競合はディアジオ(ドン・フリオ、カサミーゴス)、コンステレーション(RTD 缶入りのテキーラ)、安価なテキーラ。 価格は 10 年 1.20 倍で物価に届かない:米国のテキーラは売上が数量より大きく落ちる値崩れの市場で、ヘラドゥーラは値下げで数量を守る局面。
缶入りカクテル(RTD。ニューミックス・ジャックダニエルの RTD)
缶入りのカクテル。米国とメキシコ・ブラジルで伸びる。
| 数量販売量(百万ケース) | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23.6 | 23 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.1 | 23 | 9 | 2 |
取り方:売上 5.45 億ドル(前年度 4.91 億ドル × 1.11)、販売量 2,360 万ケース(+9%)、1 ケース約 23 ドル。メキシコの RTD(ニューミックス)は低価格で、ケースあたり価格が低い。ジャックダニエルの RTD/RTP は -5%。利益率 16% は推定。市場は米国のスピリッツ系 RTD が 38 億ドル(+16%)と最も伸び、新興国も伸びる。競合はディアジオ、ブードゥーなど新興ブランド、ビールメーカーの RTD。 価格(1 ケースの売上)は 10 年で 0.98 倍:低価格のニューミックス(メキシコ)が伸びる構成の変化で平均が上がらず、米国の RTD は値引きで競争する。
その他(ディプロマティコ・ジンマーレ・シャンボール・原酒売りなど)
ラム・ジン・リキュールと、使用済み樽などの原酒売り。
| 数量販売量(百万ケース) | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.1 | 213 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 266 | 3 | 1 |
取り方:売上 2.34 億ドル(その他 2.01 億ドル+原酒売り 0.33 億ドル)、販売量 110 万ケース、1 ケース約 213 ドル。2025 年 6 月にコルベルの販売委託が終わり、使用済み樽の売上は 68% 減ったので、今後は 2026 年 5〜7 月期(その他 0.39 億ドル・原酒売り 0.06 億ドル)の水準に近づく。ディプロマティコ +11%、ジンマーレ +30% と伸びるが、減損が出た。利益率 22% は推定。
リスクと懸念
米国の飲酒の構造的な減少と価格の効きの弱まり
Gallup の飲酒率は 2023 年の 62% から 2026 年の 54% へ下がり、GLP-1 薬・THC 飲料・ノンアルコールへの置き換えが続く。米国のスピリッツは 2025 年に数量 +1.9% でも売上 -2.2% と、価格が下がった。ジャックダニエルの値上げで数量の減りを補う前提が崩れると、中立の価格(年 +2.2%)を下回り、利益率が 25% を割る。
主力の縮みとテキーラの低迷
ジャックダニエル・テネシーウイスキーはオーガニックで -4%、テキーラは -6%(ヘラドゥーラ -10%、2026 年 5〜7 月期は -18%)。売上の約 7 割がウイスキーで、本体の縮みを派生品(アップル・ブラックベリー)で補う構図は、新製品の寿命に左右される。
関税・カナダの棚外し・輸出環境
カナダでは州の酒販が米国産を棚から外し、同社のカナダ売上は 6 割近く減って 2027 年 4 月期も続く見込み(全体の約 1% だが、利益率は高い)。アメリカンウイスキーの EU 向けは 2025 年に -35%。アルミ・ガラスの関税による費用上昇も重い。報復関税が再燃すると、海外の利益が削られる。
熟成原酒の費用上昇と利益率の低下
数年〜十数年前に仕込んだ原酒の費用上昇が、数年かけて売上原価に出る(会社は「数年続く」と説明)。2027 年 4 月期の営業利益は -3〜-5%(オーガニック)。使用済み樽の売上が消え、樽の子会社を売却した影響も残る。粗利益率 60% を保てなければ、営業利益率は 25% 台に落ちる。
流通の変更と新製品への依存
2026 年 4 月期に新しい卸を 11 社、25 市場で入れ、飲食店の取り扱いを一部失った。在庫調整で出荷が飲食店・小売の販売量を下回る期間もある。テネシーブラックベリーのような新製品がヒットしても、前の年の反動で伸びが鈍る。
買収の目利きと資本配分
ジンマーレ(0.45 億ドル)とディプロマティコ(0.87 億ドル)の減損を 2026 年 4 月期に計上し、ジンマーレには最大 9,000 万ユーロの追加払いが残る。ペルノ・リカールとの合併協議は 4 月に決裂した。割高な買収で価値を壊す癖が再発すると、ROE が落ちる。
ブラウン家の支配と株主の選択肢
議決権のある A 株の過半はブラウン家(ウルフ・ペン・ブランチ LP)が持つ。サザラックの約 150 億ドルの提案を取締役会が拒否したように、家が応じない限り、株主は買収の提案を受けられない。家が売却に傾く・事業が弱くなって家が売る場合の条件は読めない。
今後の分かれ目
- ジャックダニエル・テネシーウイスキーの米国の販売量(デプレッション)が 2 四半期連続で -5% を下回ったら
- ブランドの縮みが想定より速い。10 年のやや悲観の確率を上げ、ウイスキーの価格の伸びを物価の半分以下に置き直す。
- 米国のスピリッツの数量・売上(DISCUS・ニールセン)がともにプラスに戻り、飲酒率(Gallup)が 54% を上回ったら
- 構造的な減少が止まる合図。楽観・やや楽観の確率を上げ、長期の g を 1.5〜2% に上げて見直す。
- 米国のアメリカンウイスキーの輸入関税の報復が解け、カナダの棚に米国産が戻ったら
- 海外の利益が戻る。カナダは売上の約 1% だが、利益率が高く、2027 年 4 月期の営業利益の見通しを 1 ポイント上げて見直す。
- 2028 年 4 月期の営業利益がオーガニックで減り続け、利益率が 26% を割ったら
- 熟成原酒の費用が価格で転嫁できていない。中立の利益率を 1〜2 ポイント下げ、悲観の確率を上げる。
- ブラウン家が買収・合併の提案(ペルノ・リカール・サザラックなど)に応じる姿勢に変わったら
- 会社全体の価値に上乗せが入る一方、筋書きは今の会社だけで置いているので、成立した条件を見て置き直す。
- 新たな買収(5 億ドル超)で割高に買う、または追加の減損が出たら
- 資本配分への信頼が下がる。ROE と確率を見直し、悲観を厚くする。
見ておくもの
- ジャックダニエル・テネシーウイスキーと派生品(アップル・ブラックベリー)の米国の販売量(デプレッション)
- 米国のスピリッツの数量と売上(DISCUS・ニールセン)、Gallup の飲酒率、RTD のシェア
- 営業利益率(粗利益率 60% と熟成原酒の費用)と、2027 年 4 月期のオーガニック営業利益 -3〜-5% の達成
- 新興国(メキシコ・ブラジル・ポーランド)の成長率と、ニューミックスの販売量
- カナダの棚の再開、EU・米国の関税、アルミ缶・ガラスの費用
- 純負債 EBITDA 倍率、自社株買いの再開、コマーシャルペーパーの借り換え金利
- ブラウン家(A 株)の発言、ペルノ・リカール・サザラックなど買い手の動き
倍率と資本コストの決め方
今の PER や時価総額を見る前に、ウイスキー・テキーラ・RTD・その他の 4 つに分け、数量(百万ケース)× 1 ケースの売上 × 営業利益率で 10 年後の売上と利益を積み上げた。価格は物価 3.5% でなく、米国のスピリッツの価格が下がっている現状と、会社の言う価格・ミックスの伸び(約 +1%)から年 +2.2% を中立にした。倍率は k 8.5%(基本 8.0% + quality +0.5%)、g 1.0%(数量 × シェア × 価格から)、ROE 19.6% の式どおり(ROE が k を超えるので下限の 1 ÷ k の少し上、PER 12.1 倍)。悲観側は稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置き、今や過去の PER・PBR は使っていない。悲観を厚くして(10 年で 44%)慎重側に寄せた。成立していない買収提案は織り込まなかった。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 0.60 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。ウイスキーは景気後退でも需要が落ちにくく(リーマン期の株価は -35%、2020 年は -18%)、事業は傾いていない。飲酒率の構造的な低下・関税・主力の一部の縮み・ブラウン家の支配は k に足さず、筋書き(数量・価格・利益率)と確率(悲観を厚く)、長期の g で表した。
同じ業種(生活必需品)の AI 分析
読んだ資料
- Brown-Forman 2026 年 4 月期(FY2026)決算 8-K(2026-06-04)
- Brown-Forman 2027 年 4 月期 第 1 四半期決算 8-K(2026-09-02)
- Brown-Forman 10-Q(2026 年 7 月 31 日期。株数・債務の満期)
- Brown Forman Q4 Earnings Call Highlights(MarketBeat/Yahoo Finance)
- Pernod Ricard and Brown-Forman call off merger talks(The Drinks Business)
- Brown-Forman rejects Sazerac takeover bid(Drinks International)
- Spirits sales fall 2.2% in US in 2025(The Spirits Business・DISCUS)
- Brown-Forman 2025 年 4 月期 10-K(カテゴリー別売上)
- Brown-Forman Expects Jack Daniel's to Stay Off Shelves in Most of Canada(Vinetur)
- BF.B 株価・時価総額(MarketScreener)