結論
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)は、レイノルズの米国事業と世界各地の紙巻きたばこを土台に、ニコチンパウチのVelo、電子たばこのVuse、加熱式のgloを育てる世界的大手である。筆者の結論はやや割高だ。紙巻きの値上げ力は今なお強いが、数量が減る事業から新製品へ利益を移す仕事は、見た目ほど簡単ではない。
2025年の売上338億ドルのうち、燃焼式たばこが約79%を占める。米国ではレイノルズがNewportやCamelを持ち、世界ではDunhillやLucky Strikeなどが厚い販売網を支える。しかし2025年の紙巻き数量は世界で7.9%減った。2026年上期にも米国や欧州で数量減が続き、値上げで売上を守る構図は変わっていない。
成長の有力候補はVeloである。2026年上期は現代型パウチの売上が為替一定で65.9%増え、米国の数量シェアも29.8%まで上がった。2026年9月の投資家説明会では、新カテゴリー売上を2030年まで年率10%台半ばで伸ばす方針を示した。一方、加熱式は競争が激しく、Vuseも違法な使い捨て製品との戦いが続く。
10年後の中立では売上約435億ドル、営業利益157億ドル、純利益104億ドルを見込む。新製品は伸びるが、紙巻きの減少と利益構成の変化をすべて埋めるほどではない。正味の配当・自社株買いを10年間で1000億ドルとし、5つの筋書きの確率を織り込んだ現在価値は約1136億ドルとなった。台帳の時価総額1308億ドルを約13%下回る。
配当を受け取りながら長く保有できる現金創出力は魅力である。ただし、帳簿の自己資本には過去の大型買収で生まれた無形資産が多い。売上の安定だけで安心せず、Veloが紙巻きに代わる十分な利益を生むか、残った現金を株主へ返せるかを見続ける必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に確かめるのは、この会社が10年後にも必要とされるかである。ニコチンを使う成人は残り、規制の厳しい市場で合法的な商品を安定供給できる大手の役割も残るだろう。しかし紙巻きの本数が減ることは避けがたく、今日の高い利益率を永久に保つ事業ではない。
魅力は、毎年の小さな設備投資から大きな現金を生む点にある。値上げが通る間は、売上の数量成長がなくても株主に資金を返せる。2025年は訴訟和解や税金の支払いによって現金収支が悪化したが、それだけで通常時の稼ぐ力が失われたわけではない。ただし和解後の継続的な支払義務はオーナー利益から差し引いて考える必要がある。
評価を難しくするのは、新しい製品の成長と古い製品の減少を同じ利益率で扱えないことだ。Veloの成長率は魅力的だが、研究開発費と販促費を引いた増分の利益を見たい。gloでは競争相手に機器の魅力で負ける可能性があり、Vuseでは違法品との競争が収益性を揺らす。見通しが不確かな部分に高い価値を付けるべきではない。
経営者には、2017年の大型買収で生じた巨額の無形資産と負債を引き継いだ責任がある。保有するITC株式も価値の一部だが、その持分利益を純利益に含めるなら株式価値を別に重複加算しない。株主にとって望ましいのは、規律ある設備投資、負債の管理、実際に残る利益からの還元である。
中立の10年後は高い成長を期待していない。それでも配当と買い戻しによって相当の資金を回収できる。ただし規制が同時に厳しくなると、利益も還元も大きく損なわれる。長く保有する事業として理解できる部分は多いが、現在の価格には十分な安全域がない。
何で稼ぐ会社か
BATの稼ぎの中心は、成人のニコチン需要に対して、ブランドを持つ製品を繰り返し販売することである。商品は毎日あるいは短い周期で消費され、店頭での認知、流通網、各国の認可が重要になる。紙巻きは設備投資に比べて多額の営業現金を生むが、健康被害と規制を背景に販売本数は構造的に減っている。
米国のレイノルズ事業は特に収益性が高い。2025年は燃焼式を約440億本換算で販売し、売上は約122億ドルだった。Newport、Camel、Natural American Spiritなどを持ち、数量が減っても価格と商品構成の改善で売上を補ってきた。ただし2025年の米国数量は7.7%減少し、2026年上期も減少が続いた。米国外は約4330億本換算を販売し、ブラジル、ドイツ、メキシコ、パキスタンなどで強い地位を持つ。
第二の柱は煙の出ない商品である。Vuseは液体を気化する電子たばこで、消耗品の継続購入が収益源になる。2025年の消耗品出荷は5億3800万個で、米国の計測可能な市場では高い金額シェアを持つ。gloは加熱機器と専用スティックを販売し、2025年には約201億本を出荷した。こちらは機器の普及が専用スティックの継続需要をつくるが、IQOSとPloomとの競争が激しい。
第三の柱がVeloを中心とする現代型ニコチンパウチである。2025年の販売数量は122億個で、前年から47.1%増えた。スウェーデンなどの成熟市場に加え、米国のVelo Plusが拡大している。GrizzlyやKodiakなどの従来型口腔たばこもあるが、消費者がパウチへ移るため数量は減少している。
2025年の製品別売上をドル換算し、燃焼式を米国と米国外に分け、Vuse、glo、Velo、従来型口腔製品、その他の7つで事業を把握する。製品別の営業利益は直接開示されないため、地域別の収益性、新カテゴリーの貢献利益、販売費と本社費から推定した。会社全体の営業利益134.5億ドルとは調整項目で接続している。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社が簡単には奪えない強みは、ブランド、販売網、規制対応力の組み合わせである。たばこは広告や販売方法に厳しい制約があり、新しいブランドを全国へ広めることが難しい。既存メーカーは小売店との長い関係を持ち、規制当局への申請や品質管理にも経験がある。
最大の証拠は値上げの実績だ。2025年の燃焼式は数量が大きく減ったが、為替一定の売上は増えた。米国では価格と商品構成による押し上げが大きく、欧州や中南米でも値上げが数量減を和らげた。ニコチン需要には習慣性があり、ブランドへの愛着も残る。ただし値上げが永遠に続くわけではない。高価格は違法品や安価な製品への移行を速めることがある。
新製品の堀は一様ではない。Vuseは米国の合法的な閉鎖型電子たばこで有力だが、違法製品が広く流通するとシェアの数字ほど利益を守れない。gloは専用機器とスティックの組み合わせを持つものの、IQOSやPloomに対する技術優位は確認できない。Veloは販売網と製品改良で急成長しているが、ZYNという強い先行ブランドとの競争が続く。
資本効率には光と影がある。紙巻きは維持投資が比較的小さく、増分の利益を株主へ返しやすい。一方、新カテゴリーでは研究開発、認可、販促、生産能力の増強に資金を使うため、増分ROICが十分高いと断定するには早い。2023年の大型減損は、過去の買収価格が将来の稼ぐ力を過大評価していたことを示した。
2025年の自己資本は約645億ドルだが、巨額ののれんや商標が含まれている。財務の厚さを帳簿だけで評価するのは危険である。AIエージェント代替の対象となる人月、席課金、業務ソフト、情報サービスの事業には該当しない。AIは製造や商品開発の効率化には役立っても、ニコチンの実物需要を直接置き換えるものではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のたばこ市場は、数量が減る紙巻きと、数量が伸びる煙の出ない製品に分かれている。紙巻き市場は成熟国で縮小し、新興国でも税制、健康意識、違法品の影響を受ける。BATは2026年の世界の紙巻き市場について数量約3%減を見込んだ。2026年9月の投資家説明会でも、世界の紙巻き数量は2030年に向けて減り続けるという前提を示している。
市場は寡占的だが、各社の強さは国によって異なる。米国の紙巻きではアルトリア、BAT傘下のレイノルズ、インペリアル傘下のITGが主要企業である。BATの2025年の米国数量シェアは約33%だった。米国外ではフィリップ モリス インターナショナル、日本たばこ産業、インペリアル ブランズが競争相手となる。BATはブラジルで約70%、パキスタンで約80%など、主要国で高い数量シェアを持つ。
競争の中心は新しいニコチン製品へ移っている。ニコチンパウチの世界市場は2025年の約55億ドルから2030年には約150億ドルへ拡大するという業界見通しがある。BATのVeloは2025年に主要市場の数量シェア33.4%を持ち、2026年上期には39.2%へ上昇した。ただしこれは会社が定義する主要市場の数字であり、世界全体のシェアではない。米国ではZYNが最大の競争相手となる。
電子たばこではVuseが米国の計測可能な流通市場で金額シェア55.9%に達した。ただし不正な使い捨て製品の販売は計測外の需要を生み、正規メーカーの成長を妨げる。加熱式ではフィリップ モリスのIQOSが大きな販売量を持つ。2025年のIQOS関連スティック出荷は約1551億本で、BATのgloの約201億本を大きく上回った。日本たばこ産業のPloomも製品改良によって存在感を高めている。
規制の方向は長期的には厳しくなると考える。米国のメンソール規制とニコチン含有量の引き下げ案、欧州の風味規制、各国の物品税が数量と価格を左右する。米国の政策には凍結や優先順位の変更もあるため、特定の規制が必ず施行されるとは考えない。反対に、違法ベイプの取り締まりや認可手続きの整備は、BATの合法的な商品に追い風となる。
10年後の中心的な問いは、世界のニコチン需要が消えるかどうかではない。需要が紙巻きから移る速度と、その移行先で誰が利益を得るかである。BATには販売網を移行先へ活用する機会があるが、紙巻きの高い利益率をそのまま持ち込める保証はない。
資本政策と M&A
資本配分の歴史で最も重い判断は、2017年のレイノルズ完全子会社化である。残る57.8%を約494億ドルの現金と株式で買収し、米国市場の強いブランドを手に入れた。しかし、その後の紙巻き数量の減少で、2023年には米国のれんと商標に巨額の減損を計上した。買収は販売網と現金創出力を得た一方、支払った価格の全額が株主価値になったとは評価できない。
2025年の配当は約69億ドル、自社株買いは約16億ドルだった。経営は英ポンド建て配当の成長を維持する方針で、2026年には約17億ドル相当の自社株買いを予定している。正味の還元には株式報酬などによる希薄化を控除して考える。
2026年9月の会社説明では、2026年の為替一定の売上成長は3〜5%の下限付近、調整後営業利益成長は4〜6%の下限付近を見込む。調整後の利益指標はIFRSの純利益とは異なる。2030年までの新カテゴリー売上成長は年率10%台半ば、同カテゴリーの貢献利益率は30%以上が目標である。
純有利子負債は2025年末に約420億ドルあり、借り換え負担は無視できない。カナダのたばこ訴訟和解では2025年に大きな現金支払いが発生し、その後も利益に応じた支払いが続く。インドのITC株式を一部売却した資金は財務改善と還元に役立ったが、持分の追加売却は将来の投資収益も減らす。
2026年の開示では上場廃止や非公開化の合意は確認できない。今後の大型買収は過去の反省を踏まえて慎重であるべきだ。筆者は、成長投資で資本コストを超える収益が確かめられない部分では、債務返済と配当を優先する方が株主に有利と考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
BATには、世界でも少数の企業しか持たないニコチン事業の総合的な販売網がある。米国ではレイノルズが紙巻き、電子たばこ、パウチ、従来型口腔たばこを販売し、販売員と小売店との関係を共用できる。規制への対応費用が高まるほど、合法的な商品を開発して全国に流通させられる大企業には有利になる。
紙巻きについても数量減だけを見るのは片手落ちである。2025年には世界の燃焼式販売数量が減ったにもかかわらず、為替一定の売上は増えた。米国では価格と商品構成の改善によって売上を守っている。ブランドへの需要が続けば、数量が少しずつ減っても大きな現金を生み、その資金で新製品への投資と株主還元を続けられる。
Veloは単なる将来構想ではない。2025年にはパウチ数量が47.1%増え、2026年上期にも売上が大きく伸びた。米国の数量シェアは2025年の18.0%から2026年上期に29.8%へ上がり、主要市場全体のシェアでも首位級の地位を築いた。2026年後半に予定されるVelo Maxの投入で、上位商品の単価と利益率を改善する余地もある。
2026年9月の会社目標どおり、新カテゴリーの売上が2030年まで年率10%台半ばで伸び、貢献利益率が30%以上になれば、紙巻き依存は着実に薄まる。Vuseの合法市場での優位が続き、glo Hiloが加熱式の競争力を取り戻すなら、成長の柱は複数になる。新製品の利益が紙巻きの減少を上回れば、10年後には現在よりはるかに多くの現金を株主へ返せる。
慎重な見方
最大の問題は、売上の約8割を占める燃焼式たばこが構造的に縮んでいることである。2025年のBATの世界紙巻き数量は7.9%減り、米国でも7.7%減少した。これは一時的な不況だけで説明できない。禁煙、健康意識、増税、違法流通、パウチへの移行が同時に進んでいる。
値上げには限界がある。税負担を含む小売価格が上がりすぎれば、消費者は安価な商品や違法品へ移る。アルトリアや日本たばこ産業も数量減を価格で補うため、どの企業にも同じ戦略が長期にわたって成功するとは限らない。規制当局がニコチン含有量や風味を制限すれば、価格以前に商品の魅力が損なわれる。
新製品の競争も厳しい。米国のパウチはフィリップ モリスのZYNが強く、Veloの急成長がそのまま高い利益率になる保証はない。電子たばこでは違法な使い捨て製品が価格と品揃えで正規商品を圧迫する。gloはIQOSに大きく出荷量で劣り、日本たばこ産業のPloomも存在感を高めている。新カテゴリーの売上が伸びても、会社全体の利益が伸びない可能性がある。
財務上の問題も残る。2017年のレイノルズ買収後、米国商標の価値は大幅に減損された。2025年末の純有利子負債は約420億ドルで、カナダの訴訟和解による現金支払いも続く。2025年のフリーキャッシュフローが大きく減ったことは、会計上の利益と自由に使える現金が異なることを示している。
煙の出ない製品は燃焼式より利益率が低い段階にある。紙巻きの高い利益が薄れ、新製品には販促と認可の費用がかかり、借金と訴訟の負担が続けば、配当を維持するだけで精いっぱいになる。最悪の場合、事業の会計上の自己資本は残っていても、普通株主に帰属する経済価値は大きく失われる。
どちらに重みを置いたか
BATは紙巻きの値上げ力を保ち、Veloでも実際にシェアを伸ばしている。その点では事業の存続と一定の現金創出力に確信を持てる。しかし新製品への移行が会社全体の利益を増やすかには不確実性が大きい。過去の買収で生じた巨額の無形資産と借金も無視できない。
10年の確率は楽観側24%、中立38%、悲観側38%とした。フィリップ モリスより新カテゴリーの収益構成が未成熟である一方、米国の複数カテゴリーで販売網を使えるため、全面的な衰退を中心にはしない。資本コストは8.0%で、同領域の2社より借金と移行負担を重く評価した。結果は現在価値が時価総額を約13%下回るやや割高であり、配当だけでは安全域の不足を埋めきれない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 57.87 ドル1,273 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 37.36 ドル822 億ドル)。 今の値に割り戻すと 52.23 ドル1,149 億ドル、今との差 −15.1%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 150.70 ドル3,314 億ドル | 50.02 ドル1,100 億ドル | +226.3% | +15.1% | 12.04 ドル265 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 100.35 ドル2,207 億ドル | 45.48 ドル1,000 億ドル | +137.0% | +11.2% | 26.25 ドル577 億ドル |
| 中立 | 38% | 60.49 ドル1,330 億ドル | 45.48 ドル1,000 億ドル | +72.2% | +7.4% | 40.27 ドル885 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 28.97 ドル637 億ドル | 27.29 ドル600 億ドル | −8.6% | −1.2% | 14.06 ドル309 億ドル |
| 悲観 | 13% | 4.13 ドル91 億ドル | 15.92 ドル350 億ドル | −67.4% | −16.0% | 2.61 ドル57 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 57.87 ドル1,273 億ドル | 37.36 ドル822 億ドル | +54.8% | +5.7% | 95.23 ドル2,094 億ドル |
今の株価時価総額 61.52 ドル1,353 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 6% 楽観:Veloが世界的な成長の柱となり、紙巻きの稼ぎも長持ちする 利益 199 億ドル · PER 16.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 150.70 ドル3,314 億ドル
2035年には米国の燃焼式数量が現在の約77%、米国外が約82%残る。Newportなどのブランドが値上げを通し、米国の価格は1.90倍、米国外は1.73倍となる。紙巻きだけでも売上約384億ドルを維持し、レイノルズの販売網が引き続き利益を支える。
新カテゴリーは成長の主役になる。Vuseの数量は約2.1倍、gloは約2.2倍となり、Veloなどの現代型パウチは約4.8倍まで増える。Veloは米国でZYNと並ぶ有力ブランドとして定着し、欧州と新興国でも販売を拡大する。2026年に始まった新製品の投入が奏功し、販促効率と工場稼働率も改善する。
売上は約628億ドル、営業利益は約280億ドル、純利益は約199億ドルに達する。カナダ和解費用を負担しても現金創出力は厚く、10年間で約1100億ドルを正味還元できる。大規模な買収は行わず、増えた利益の多くを成長投資、負債返済、配当へ振り分ける。新カテゴリーの成功で10年後も強い堀が残り、利益成長が続く。
- 米国燃焼式たばこ(レイノルズ):数量 34.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.53(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 179 億ドル・営業利益 116 億ドル。米国数量は2025年の0.77倍。価格1.90倍で数量減を上回る。レイノルズの値決め力が維持される。
- 米国外燃焼式たばこ:数量 355(販売数量(十億本換算))× 価格 0.06(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 206 億ドル・営業利益 105 億ドル。数量0.82倍、価格1.73倍。主要国の占有率を維持し、高価格商品への構成改善が進む。
- 電子たばこ(Vuse):数量 1,130(消耗品出荷数量(百万個))× 価格 5.56(消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 63 億ドル・営業利益 14 億ドル。数量2.10倍、価格1.47倍。違法品の取り締まりで正規市場の販売が増え、Vuse Ultraが定着する。
- 加熱式たばこ(glo):数量 44.0(加熱式スティック出荷数量(十億本))× 価格 0.09(スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 40 億ドル・営業利益 10 億ドル。数量2.19倍、価格1.50倍。glo Hiloの競争力回復と海外展開が成功する。
- 現代型ニコチンパウチ(Veloほか):数量 58.0(ニコチンパウチ出荷数量(十億個))× 価格 0.18(パウチ1個当たりの純売上(ドル))→ 売上 105 億ドル・営業利益 42 億ドル。数量4.75倍、価格1.44倍。Veloが高付加価値商品として世界の主要市場で成長する。
- 従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど):数量 5.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.36(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 8 億ドル。数量0.91倍、価格1.45倍。従来型利用者が比較的長く残り、価格決定力も維持する。
- 葉たばこ外販・流通関連その他:数量 120(実質取引量の推定指数(2025年=100))× 価格 0.15(指数1点当たりの純売上(億ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質取引量指数1.20倍、価格1.50倍。流通事業の効率が上がる。
倍率:10年後のROEは198.8÷1004.6=19.8%。資本コストk=8.0%、強い堀の残存割合2/3からRONICは約15.9%。長期gは3.5%で、紙巻き市場の実質数量減を新カテゴリーの市場拡大とシェア維持が補い、価格が物価並み以上に上がる結果として求める。正当化PER=(1−0.035/0.159)/(0.080−0.035)×1.035=約17.92倍。新カテゴリーの利益率と成長の双方が実現する最良の筋書きとして上限の93%で16.67倍。198.8×16.67=3314.0億ドル。買収償却を純利益から別に足し戻さず、倍率にも上乗せしない。
確率:米国の違法ベイプへの取り締まりが進み、VeloがZYNと競いながら占有率を維持し、glo Hiloの製品刷新も成功する。紙巻き数量の減少が米国で年2〜3%程度まで落ち着く必要があり、規制と競争の複数の条件が同時に好転するため6%にとどめる。
やや楽観 18% やや楽観:Veloの成長が続き、紙巻きの減少を十分に補う 利益 149 億ドル · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 100.35 ドル2,207 億ドル
紙巻きは米国で現在の約70%、米国外で約77%の数量を残す。米国ではアルトリアとの寡占が続き、価格を上げてもブランド利用者の大部分は維持される。米国外でもブラジルやパキスタンなどの強い地位を保ち、値上げで数量減を補う。
Veloは2030年まで高い成長を続け、2035年にはパウチ出荷が現在の約3.7倍となる。米国のシェアはZYNとの競争でやや低下するが、欧州と新興国で利用者を増やす。Vuseは数量約1.8倍へ伸び、gloも新型機器でシェア低下に歯止めをかける。ただし競争相手への販促費が残るため、新カテゴリー全体の採算は最良の筋書きほど高くない。
売上は約529億ドル、営業利益は約218億ドル、純利益は約149億ドルとなる。新製品への追加投資と負債の返済を優先し、正味の還元は10年間で1000億ドルとする。経営は大型買収を控え、販売網と自社商品の開発に資本を使う。2035年には新カテゴリーの収益基盤が十分に育ち、現在より高い利益を長期に維持できる。
- 米国燃焼式たばこ(レイノルズ):数量 31.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.49(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 153 億ドル・営業利益 96 億ドル。数量0.70倍、価格1.79倍。米国の値上げ力が比較的強く残る。
- 米国外燃焼式たばこ:数量 335(販売数量(十億本換算))× 価格 0.05(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 182 億ドル・営業利益 87 億ドル。数量0.77倍、価格1.62倍。主要市場の販売網を維持する。
- 電子たばこ(Vuse):数量 970(消耗品出荷数量(百万個))× 価格 5.22(消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 51 億ドル・営業利益 10 億ドル。数量1.80倍、価格1.38倍。Vuseの合法市場での競争力が改善する。
- 加熱式たばこ(glo):数量 38.0(加熱式スティック出荷数量(十億本))× 価格 0.09(スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 32 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量1.89倍、価格1.42倍。glo Hiloが一部の主要国で成功する。
- 現代型ニコチンパウチ(Veloほか):数量 45.0(ニコチンパウチ出荷数量(十億個))× 価格 0.18(パウチ1個当たりの純売上(ドル))→ 売上 79 億ドル・営業利益 28 億ドル。数量3.69倍、価格1.40倍。Veloの成長と採算改善が進む。
- 従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど):数量 4.4(販売数量(十億本換算))× 価格 0.36(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量0.80倍、価格1.43倍。減少速度は比較的穏やか。
- 葉たばこ外販・流通関連その他:数量 112(実質取引量の推定指数(2025年=100))× 価格 0.14(指数1点当たりの純売上(億ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量指数1.12倍、価格1.44倍。物流効率の改善を織り込む。
倍率:ROEは148.5÷839.6=17.7%。k8.0%、強い堀の残存割合2/3からRONICは約14.5%。長期g3.0%は、紙巻きの実質数量減をVeloとVuseの市場拡大が上回り、価格上昇を合わせた結果。正当化PERは2035年利益基準で約16.33倍。新カテゴリーは成長するが米国での競争費用が残るため、その91%の14.86倍を使う。148.5×14.86=2206.7億ドル。
確率:Veloの2025年から2026年への市場シェア拡大と、2030年までの会社目標には実績の裏付けがある。ただしgloの回復とVuseの競争改善は部分的にとどまり、紙巻きの数量減も続くため、楽観より起こりやすい18%とした。
中立 38% 中立:紙巻きの利益をVeloが補うが、全社の純利益は大きく伸びない 利益 104 億ドル · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 60.49 ドル1,330 億ドル
2035年には米国の燃焼式数量が約270億本換算まで減る。価格は10年間で1.73倍となり、数量減をおおむね補う。米国外の燃焼式は約3000億本換算に減るが、主要国のブランドと販売網によって価格は1.55倍となる。紙巻きの利益は大きく失われないものの、現在より多くの数量を売ることはできない。
Veloなど現代型パウチの出荷は約3.0倍に増える。世界市場の拡大に加え、米国で一定のシェアを保つが、ZYNとon! PLUSとの競争で高い利益率は限定される。Vuseは数量約1.38倍、gloは約1.44倍となるが、違法ベイプやIQOS、Ploomとの競争で成長が鈍る。煙の出ない製品の売上比率は約31%となり、会社の2035年50%目標には届かない。
売上は約435億ドル、営業利益157億ドル、純利益104億ドルとなる。2025年の純利益には一時的な投資関連利益の影響があるため、平常時の利益成長は見かけほど弱くない。借り換え負担とカナダ和解後の現金流出を考慮しつつ、配当と自社株買いによって10年間で1000億ドルを正味還元する。大型買収は想定せず、留保利益を必要最小限に抑える資本配分が続く。
- 米国燃焼式たばこ(レイノルズ):数量 27.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.48(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 129 億ドル・営業利益 74 億ドル。数量0.61倍、価格1.73倍。米国の年間数量減は約4.8%、価格上昇は年5.6%程度。
- 米国外燃焼式たばこ:数量 300(販売数量(十億本換算))× 価格 0.05(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 156 億ドル・営業利益 67 億ドル。数量0.69倍、価格1.55倍。主要市場ではシェアをおおむね維持するが、違法品と税制が数量を削る。
- 電子たばこ(Vuse):数量 740(消耗品出荷数量(百万個))× 価格 4.84(消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 36 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量1.38倍、価格1.28倍。合法市場では伸びるが、価格と競争費用に圧力が残る。
- 加熱式たばこ(glo):数量 29.0(加熱式スティック出荷数量(十億本))× 価格 0.08(スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 23 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量1.44倍、価格1.34倍。gloは一部市場で回復するがIQOSへの劣位が残る。
- 現代型ニコチンパウチ(Veloほか):数量 37.0(ニコチンパウチ出荷数量(十億個))× 価格 0.17(パウチ1個当たりの純売上(ドル))→ 売上 63 億ドル・営業利益 18 億ドル。数量3.03倍、価格1.35倍。2030年まで高成長、その後は成熟へ向かう。
- 従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど):数量 3.7(販売数量(十億本換算))× 価格 0.35(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 5 億ドル。数量0.67倍、価格1.40倍。現代型パウチへの移行で需要が減る。
- 葉たばこ外販・流通関連その他:数量 106(実質取引量の推定指数(2025年=100))× 価格 0.14(指数1点当たりの純売上(億ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量指数1.06倍、価格1.41倍。実質成長は小さく物価上昇が中心。
倍率:中立のROEは104.4÷669.6=15.59%。k8.0%、強い堀の残存割合2/3からRONICは約13.1%。長期g1.8%は、世界の紙巻き数量減と新カテゴリーの成熟による実質成長の弱さを、価格上昇が部分的に補う結果であり、ROEから作った値ではない。正当化PER=(1−0.018/0.131)/(0.080−0.018)×1.018=約14.16倍。紙巻きが減る一方、新カテゴリーの価格競争と規制費用が残るため、上限の90%の12.74倍。時価総額は104.4×12.74=1330.1億ドル。純負債420億ドルを加えたEVは約1750億ドルで、営業利益157億ドルの約11.1倍であり、EVでも過度な価値を付けていない。
確率:2025年の販売数量減と2026年の価格改定、新カテゴリーの成長実績を併せて判断した。Veloの2030年までの成長は続くが、その後は普及率の上昇で減速する。gloとVuseの競争費用が残るため、会社の売上成長目標を10年間そのまま延ばさない中心的な筋書きとして38%とした。
やや悲観 25% やや悲観:規制と新製品の競争で利益が半減し、配当が縮む 利益 52 億ドル · PER 10.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.97 ドル637 億ドル
米国では紙巻き数量が約230億本換算となり、現在のほぼ半分に減る。値上げは続くが、価格は1.57倍にとどまる。違法品、安価な製品への移行、健康意識の変化が重なり、レイノルズの強いブランドでも数量減を補いきれない。米国外でも規制と税負担で販売数量が現在の約57%まで減る。
Veloのパウチ数量は約1.9倍になるが、ZYNやon! PLUSとの販促競争が激しくなる。Vuseは違法品の浸透が続き、数量がほぼ横ばいにとどまる。gloはIQOSとPloomにシェアを奪われ、成長投資の回収が進まない。新カテゴリーは販売量が残っても、高い利益率を生めない。
売上は約303億ドル、営業利益約87億ドル、純利益52億ドルまで落ちる。借り換え後の利払いと訴訟関連の支出が利益を圧迫し、経営は自社株買いを減らして借金返済を優先する。配当は初期に維持されるが、後半には減配となり、10年間の正味還元は600億ドルに縮む。利益を再投資しても資本コストに届かなくなり、事業の優良さはかなり損なわれる。
- 米国燃焼式たばこ(レイノルズ):数量 23.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.43(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 50 億ドル。数量0.52倍、価格1.57倍。規制と低価格品への移行で利益率が低下。
- 米国外燃焼式たばこ:数量 245(販売数量(十億本換算))× 価格 0.05(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 112 億ドル・営業利益 40 億ドル。数量0.57倍、価格1.36倍。税制と違法流通による需要減が強い。
- 電子たばこ(Vuse):数量 540(消耗品出荷数量(百万個))× 価格 4.39(消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 24 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量ほぼ横ばい、価格1.16倍。違法品と値下げ競争が続く。
- 加熱式たばこ(glo):数量 21.0(加熱式スティック出荷数量(十億本))× 価格 0.07(スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 14 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量1.04倍、価格1.15倍。gloの競争力は弱く収益性も低い。
- 現代型ニコチンパウチ(Veloほか):数量 23.5(ニコチンパウチ出荷数量(十億個))× 価格 0.15(パウチ1個当たりの純売上(ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量1.93倍、価格1.18倍。市場成長は続くがVeloのシェアと価格決定力が弱まる。
- 従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど):数量 2.8(販売数量(十億本換算))× 価格 0.30(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量0.51倍、価格1.20倍。従来型の顧客離れが加速する。
- 葉たばこ外販・流通関連その他:数量 85.0(実質取引量の推定指数(2025年=100))× 価格 0.12(指数1点当たりの純売上(億ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量指数0.85倍、価格1.25倍。販売網の縮小で採算が悪化する。
倍率:10年後のROEは52.0÷834.6=6.23%でk8.0%を下回る。したがって正当化PERの上限は1/k=12.5倍。長期g0.5%は、紙巻き数量の構造的な減少に新カテゴリーの緩やかな成長と価格上昇を加えた結果。内部留保が十分な価値を生まないため、上限まで評価せず10.2倍とした。52.0×10.2=530.4億ドル。稼ぐ力52.0÷0.08=650億ドルを下回り、売れる資産の保守的な床も上回る。
確率:米国の紙巻き数量減が続き、値上げの限界が見え始める。Veloは伸びるがZYNとの競争で採算が低下し、gloとVuseも規制費用を負担する。全面的な事業崩壊ほど極端ではないものの、10年間なら十分起こりうるため25%とした。
悲観 13% 悲観:紙巻き規制と新製品の失敗が重なり、株主価値が大幅に失われる 利益 12 億ドル · PER 7.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.13 ドル91 億ドル
米国の燃焼式数量は現在の約39%まで落ちる。メンソールやニコチン含有量の規制が強まり、Newportなどのブランド価値が傷つく。価格を上げても違法品や他のニコチン製品への移行が速く、数量減を補えない。米国外でも厳しい物品税と風味規制が広がり、数量は現在の約40%に減る。
VeloはZYNに市場の主導権を握られ、販売量が残っても利益率を高められない。Vuseは違法な競合品を排除できず、gloは新機器への投資を回収できない。従来型口腔製品も急速に縮み、煙の出ない製品への移行戦略が会社全体の利益を支えられなくなる。
売上は約177億ドル、営業利益は約29億ドル、純利益は約12億ドルまで低下する。2029年前後に米国商標などの無形資産で約360億ドルの追加減損が発生する筋書きとし、10年間の減損前利益累計約500億ドルから差し引いたGAAP純利益累計は約140億ドルとなる。初期には配当を払うが、その後は大幅な減配と自社株買い停止を余儀なくされ、正味還元は350億ドルにとどまる。買収による救済は想定せず、債務と和解費用の支払いを優先する。会社は存続しても、普通株主の取り分は著しく小さくなる。
- 米国燃焼式たばこ(レイノルズ):数量 17.0(販売数量(十億本換算))× 価格 0.35(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 21 億ドル。数量0.39倍、価格1.25倍。規制によって主要ブランドの収益力が崩れる。
- 米国外燃焼式たばこ:数量 175(販売数量(十億本換算))× 価格 0.04(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 66 億ドル・営業利益 16 億ドル。数量0.40倍、価格1.12倍。課税と違法品への流出で価格改定も十分できない。
- 電子たばこ(Vuse):数量 330(消耗品出荷数量(百万個))× 価格 3.71(消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 12 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量0.61倍、価格0.98倍。競争に負け、規制対応費用が利益を削る。
- 加熱式たばこ(glo):数量 13.0(加熱式スティック出荷数量(十億本))× 価格 0.06(スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む))→ 売上 8 億ドル・営業利益 −1 億ドル。数量0.65倍、価格1.05倍。競争力を失い営業赤字となる。
- 現代型ニコチンパウチ(Veloほか):数量 17.0(ニコチンパウチ出荷数量(十億個))× 価格 0.13(パウチ1個当たりの純売上(ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量1.39倍、価格1.01倍。市場は残るがVeloの競争力と採算が低下。
- 従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど):数量 1.7(販売数量(十億本換算))× 価格 0.26(1本換算の純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量0.31倍、価格1.02倍。従来型の利用者が大幅に減少。
- 葉たばこ外販・流通関連その他:数量 60.0(実質取引量の推定指数(2025年=100))× 価格 0.11(指数1点当たりの純売上(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量指数0.60倍、価格1.10倍。残る物流業務も利益を生まない。
倍率:ROEは12.1÷434.6=約2.8%で、資本コスト8.0%を大きく下回る。長期gは0%とし、紙巻きと従来型の数量減が新カテゴリーの増加を打ち消す。ROEがk以下のためPER上限は1/k=12.5倍だが、事業が構造的に負け、利益の再投資が価値を壊す筋書きなので7.5倍にとどめる。時価総額は12.1×7.5=90.8億ドルで、稼ぐ力の単純年金価値12.1÷0.08=151.3億ドル以下。税引後処分資産の床40億ドルを上回り、過去の谷のPBRや将来の積み上がった自己資本には倍率を掛けない。
確率:メンソール、ニコチン含有量、風味、課税などの規制が広い市場で同時に厳しくなり、燃焼式の数量減が急加速する。新カテゴリーも競争に負け、巨額の商標減損と配当削減が必要になる。全てが重なるのは極端だが、依存度の高い米国ブランドと過去の買収履歴を考えると無視できず13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国燃焼式たばこ(レイノルズ)
Newport、Camel、Natural American Spirit、Pall Mallなどの米国紙巻きと手巻き用製品。販売本数が減るなかでも値上げによって大きな利益を生む。
| 数量販売数量(十億本換算) | 価格1本換算の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 44.0 | 0.28 | 122 | 72 |
| 10 年後 中立 | 27.0 | 0.48 | 129 | 74 |
取り方:2025年20-Fの米国地域の燃焼式売上9218百万ポンドを、factsの全社売上に整合する約1.319ドル/ポンドで換算した。数量は米国の紙巻き約430億本とその他燃焼式約10億本の合計440億本換算。純売上単価は121.6億ドル÷440億本で約0.276ドル。十億本とドル/本の積を億ドルに直すためrev_factorは10。2025年の米国数量シェアは約33%。アルトリアとITGが主な競合。営業利益は地域の高い収益性、値上げ実績、商標償却、本社費の帰属を考慮した推定で、製品別の開示値ではない。
米国外燃焼式たばこ
Dunhill、Kent、Lucky Strike、Rothmansなどを世界各地で販売する。数量減を価格改定で補うが、物品税と違法流通の影響は国によって大きい。
| 数量販売数量(十億本換算) | 価格1本換算の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 433 | 0.03 | 145 | 64 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.05 | 156 | 67 |
取り方:2025年の世界燃焼式売上20201百万ポンドから米国9218百万ポンドを差し引き、factsと一致する換算率で144.9億ドルとした。世界の紙巻き4650億本とその他燃焼式約120億本換算から米国440億本換算を除くと、米国外は約4330億本換算。単価は約0.0335ドル/本。ブラジルの数量シェア約69.8%、ドイツ23.3%、メキシコ38.7%、パキスタン80.2%などの主要国データを参考に市場数量とシェアを分ける。利益率は国別製品構成と地域利益を考慮した推定。
電子たばこ(Vuse)
液体を気化するVuseの機器と消耗品。規制に適合した閉鎖型商品の継続購入が中心だが、違法使い捨て製品が競争相手となる。
| 数量消耗品出荷数量(百万個) | 価格消耗品1個換算の純売上(ドル、機器売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 538 | 3.78 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 740 | 4.84 | 36 | 6 |
取り方:2025年20-FのVapour売上1542百万ポンドを20.35億ドルへ換算。消耗品出荷5億3800万個は会社開示で、前年比12.6%減。純売上を消耗品数量で割った約3.78ドルには機器等の売上も含むため、消耗品だけの販売価格ではなく売上換算単価である。百万個×ドル/個÷100が億ドルとなるためrev_factorは0.01。2025年の米国計測市場のVuse金額シェアは51.7%、2026年上期は55.9%。製品利益率は2026年の新カテゴリー貢献利益の開示を参考に推定した。
加熱式たばこ(glo)
gloの加熱機器と専用スティック。日本、欧州、韓国などで販売し、IQOSとPloomとの製品競争が強い。
| 数量加熱式スティック出荷数量(十億本) | 価格スティック1本換算の純売上(ドル、機器売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.1 | 0.06 | 12 | −2 |
| 10 年後 中立 | 29.0 | 0.08 | 23 | 3 |
取り方:2025年の加熱式売上914百万ポンドを12.06億ドルに換算。出荷数量201億本は会社開示で、前年比3.7%減。1本換算の売上は0.060ドルで、機器売上も含む。主要競争相手のフィリップ モリスは2025年に加熱式スティック約1551億本を出荷した。BATの主要市場におけるglo数量シェアは2025年に1.5ポイント低下。Hiloへの製品切り替え費用を考慮し、製品別営業利益は小幅赤字と推定した。
現代型ニコチンパウチ(Veloほか)
Velo PlusやGrizzlyのニコチンパウチ。煙を出さず口内で使用する製品で、米国と欧州が主な成長市場となる。
| 数量ニコチンパウチ出荷数量(十億個) | 価格パウチ1個当たりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.2 | 0.13 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 37.0 | 0.17 | 63 | 18 |
取り方:2025年20-FのModern Oral売上1165百万ポンドを15.37億ドルに換算。出荷122億個は会社開示で前年比47.1%増。純売上単価は約0.126ドル/個。主要市場の数量シェアは2025年に33.4%、2026年上期は39.2%。米国では18.0%から29.8%へ上昇した。ZYNとon! PLUSが主要競合。2025年の世界パウチ市場約55億ドルという業界推定を使うが、小売市場とメーカー純売上で集計範囲が違うため、単純な売上割り算を厳密な世界シェアとはしない。製品利益は販促費と能力増強費を引いた推定。
従来型口腔たばこ(Grizzly・Kodiakなど)
米国の湿式無煙たばこやスヌース。既存顧客から利益を生むが、現代型パウチへの移行で数量が減っている。
| 数量販売数量(十億本換算) | 価格1本換算の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.5 | 0.25 | 14 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 0.35 | 13 | 5 |
取り方:2025年20-FのTraditional Oral売上1043百万ポンドを13.76億ドルに換算。会社開示の数量は55億本相当で前年比9.1%減。湿式たばこの重量を本数相当に換算した数量であり、実際のパウチ個数ではない。2025年の価格・構成改善は7.4%で、数量減を一部補った。米国が売上の約96%を占める。Grizzlyの既存ブランド力を考慮した営業利益率は推定である。
葉たばこ外販・流通関連その他
外部への葉たばこの販売、流通や倉庫業務など、主要なニコチン製品以外の売上。事業全体への影響は小さい。
| 数量実質取引量の推定指数(2025年=100) | 価格指数1点当たりの純売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.10 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 106 | 0.14 | 15 | 1 |
取り方:2025年20-FのOther売上745百万ポンドを約9.86億ドルに換算。主な内容は葉たばこ外販、倉庫、物流など。取引重量や件数は統一単位で開示されないため、2025年の実質取引量を100とする指数を使用した。価格は1指数点当たりの億ドルで、他の製品の実物単価とは異なる。将来の数量指数は取引量の推定であり、物価上昇は価格指数にだけ入れる。利益率は関連事業の性質から保守的に推定した。
リスクと懸念
米国のメンソール・ニコチン含有量規制
米国の燃焼式利益はNewportなどの強いブランドに依存する。メンソール禁止や紙巻きのニコチン含有量を大幅に下げる規制が施行されれば、販売数量とブランド価値が同時に傷つく。規制案の停止や見直しもあるため施行を確定とはしないが、実現時の影響は大きい。悲観では数量減だけでなく営業利益率と商標の処分価値にも反映している。
紙巻きの数量減と値上げの限界
2025年の世界紙巻き数量は7.9%減った。価格を上げても顧客が残る力は強いが、小売価格の上昇は禁煙、安価なブランド、違法品への移行を促すことがある。米国と米国外の数量減を別々に見る必要があり、2025年の高い価格・構成改善が毎年続くと考えるのは危険だ。数量と価格の両方が期待を下回れば、現金創出力は急速に弱まる。
Veloの競争と新カテゴリーの採算
Veloの成長は2026年時点で強いが、米国にはフィリップ モリスのZYNという有力な先行企業がある。シェアを獲得するための販促費や新製品への投資が増えると、売上高の伸びほど利益は増えない。会社が2030年に目標とする新カテゴリー貢献利益率30%以上は、連結IFRS営業利益率とは異なるため、そのまま全社の利益率に加算しない。
Vuse・gloの技術競争と違法ベイプ
Vuseは正規流通で高いシェアを持つが、違法な使い捨てベイプの販売は計測可能な市場の外に需要を奪う。取り締まりが弱まれば正規メーカーの成長は鈍る。gloではIQOSとPloomの新型機器が競争相手となり、消費者が機器を乗り換えると専用スティックの継続収入も失う。2つの製品を紙巻きと同じ収益性で評価するのは危険である。
純負債、借り換え金利、カナダ和解
2025年末の純負債は420億ドルで、借り換えに伴う利払い増は10年時点で税前約7億ドルと推定される。2025年にはカナダの訴訟和解に伴う約26億ポンドの現金支払いがあり、フリーキャッシュフローが大きく減った。和解後も対象事業の利益に応じた支払いが続く。純利益と現金還元力の差が開けば、配当や買い戻しが制限される。
無形資産、過去のM&Aとガバナンス
レイノルズ買収で取得した商標とのれんは大きく、2023年に巨額の減損が起きた。帳簿上の自己資本をそのまま清算価値とみなすことはできない。ITCの持分と永久ハイブリッド債、少数株主持分も普通株主の取り分を考えるうえで重要になる。経営が再び高価格の大型買収を選べば、今後の配当原資や負債削減余力を損ないかねない。
為替、物品税、地域別の政策変更
BATは英国に本社を置くが、売上と利益は米国、欧州、アジア、中南米などに広がる。モデルではドル換算と為替を固定して比較したが、現実にはポンド、ドル、各国通貨の変動が報告利益と配当に影響する。物品税、風味規制、違法流通対策も地域ごとに異なる。特に豪州やバングラデシュで起きたような急な市場環境の変化は、世界全体の数量予測を外す原因となる。
今後の分かれ目
- Veloの米国数量シェアが30%前後を維持し、販売増とともに利益率が改善したら
- 販促で数量を買うだけでなく、ブランドとして定着した証拠になる。やや楽観の可能性が上がり、現代型パウチの増分利益と長期の成長力を引き上げて評価する。
- 米国の紙巻き数量減が2年続けて年7%を超え、価格改定でも売上を守れなくなったら
- レイノルズの値上げ力が数量減に追いつかなくなったことを意味する。やや悲観と悲観の確率を引き上げ、米国燃焼式の営業利益率と商標価値を下げる。
- Vuseの米国合法市場シェアが高水準を保ち、違法ベイプの取り締まりが持続したら
- 正規商品の数量回復が続く可能性が高まる。Vuseの売上と利益率をやや楽観に近づける。ただし計測外の違法市場が十分に縮んだかも確認する。
- glo Hiloの投入後も日本と欧州で加熱式シェアが下がり続けたら
- 機器開発と販促投資の回収が遅れ、専用スティックの数量予想を下げる。投資の増分ROICが資本コストを下回るなら、事業の選別や投資縮小を評価に反映する。
- 米国でメンソール禁止またはニコチン含有量制限の最終規則が成立し、実施日が確定したら
- Newportなどの販売数量と利益率への影響を改めて評価する。対象製品と移行期間に応じて悲観側の確率と深さを引き上げ、必要なら商標の追加減損を織り込む。
- 新カテゴリーの貢献利益率が2030年に30%以上へ上がり、全社の現金創出も改善したら
- 成長投資の採算が改善した証拠となる。会社の調整後指標だけでなく、償却と販促費を含めたIFRS利益とキャッシュフローを確認し、中立の営業利益と増分ROICを引き上げる。
- 純負債倍率が目標の2.0〜2.5倍に収まり、和解金支払い後も配当と自社株買いを賄えたら
- 資本配分に対する確信が高まる。借り換え負担と減配のリスクを下げ、正味還元の累計を増やして評価する。逆に借入れで還元を続けるなら価値の改善とはみなさない。
見ておくもの
- 米国紙巻きの業界数量とレイノルズの数量シェア。2025年のBAT米国数量シェア約33%からの変化
- 燃焼式の数量減と価格・商品構成改善の差。値上げ後も純売上を維持できているか
- Veloの米国数量シェア。2025年18.0%、2026年上期29.8%からの推移とZYNとの競争
- 現代型パウチの売上成長率、実際の製品利益、2030年の新カテゴリー貢献利益率30%以上への進捗
- Vuseの合法市場シェアと違法ベイプの流通状況。2026年上期の米国金額シェア55.9%の持続性
- glo HiloとPloom、IQOSの主要国における加熱式シェア。数量と販促費を合わせて見る
- フリーキャッシュフロー、純負債、カナダ和解後の現金支払い、配当と正味自社株買い
- 米国FDAのメンソール・ニコチン規制、パウチ認可、欧州と日本の風味規制や物品税
倍率と資本コストの決め方
事業価値を現在の株価や過去のPERから逆算していない。2025年の会社開示による燃焼式、電子たばこ、加熱式、現代型パウチ、従来型口腔製品、その他の販売数量と売上を起点に、各筋書きで実質数量と名目単価を別々に推計した。製品ごとの営業利益は販促費、競争、規制を反映し、全社純利益は借り換え金利と税負担を考慮した。倍率はk8.0%、市場数量と価格から求めた長期g、ROE、強い堀の残存割合2/3による正当化PERの範囲で決定した。中立12.74倍は理論上限14.16倍の90%であり、市場の倍率に合わせた数字ではない。
自己資本は2025年末644.6億ドルに期間のGAAP純利益累計を足し、正味還元を引いている。悲観では途中の無形資産減損を累計利益に含めた。2025年の営業利益と純利益は添付factsを正とし、2026年上期と9月の開示は見通しの修正に使用した。現金は純負債状態なので余剰現金を別に加算しない。ITC持分も利益との二重計上を避ける。5つの筋書きの割引現在価値は約1136億ドルで、台帳時価総額1308億ドルとの差は約マイナス13.1%。この結果を受け入れ、適正に見せる調整は行っていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%にquality 0.0%を加え、資本コストを8.0%とする。βや現在の株価の変動からは決めない。事業は継続して利益を生んでおり、存続危機に対するextraは加えない。個別の規制、訴訟、M&Aの不確実性は数量、利益率、悲観確率に反映する。同領域のPMとMOの7.5%より0.5ポイント高いのは、米国商標の減損履歴と負債、移行投資による現金余力の差による。