結論
ユニリーバは、ダヴ、レクソナ、ワセリン、サンシルク、アックス、パーシル、クノール、ヘルマンズなどを世界で販売する生活必需品企業である。筆者の結論は、長く保有できる優良事業だが、現在の値段には十分な安全域がなく、やや割高というものだ。ブランドの強さは本物だが、そのすべてが将来の数量成長や値上げに結び付くわけではない。
2025年12月期の添付財務データでは、売上570億ドル、営業利益114億ドル、純利益69億ドルである。アイスクリーム事業の分離後、事業は美容・ウェルビーイング、パーソナルケア、家庭用品、食品の4部門になった。2026年上期の既存事業売上は4.8%成長し、数量・構成の寄与が4.2%だった。第2四半期には数量成長が5.5%まで加速しており、ブランドの競争力は改善している。
最大の変化は、2026年3月に合意したマコーミックとの食品事業統合である。2027年半ばまでの完了を目指すが、現時点では未成立だ。成立すれば、ユニリーバ株主は統合後のマコーミック株式を受け取り、ユニリーバ本体は美容・パーソナルケア・家庭用品に集中する。これは単なる売却ではなく、株主が保有する事業の組み替えである。
未成立の取引を利益や現金に先取りせず、現有4事業の経済価値を基準にすると、2036年の中立は売上約822億ドル、純利益約99億ドルとなる。10年間の正味還元は約706億ドルを見込む。資本コスト7.5%で5つの筋書きを評価した本質価値は約1,246億ドルとなり、添付の時価総額1,454億ドルを約14%下回る。期待される年率リターンは約4.6%である。事業への確信は比較的高いが、価格への確信はそこまで高くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ユニリーバは10年後も必要とされる事業を数多く持つ。洗濯、身体の衛生、歯磨き、調理は一時的な流行ではない。世界の人口と所得が増えれば、使用回数や高価格品の購入も増える。技術が変わっても商品そのものを使う需要は残りやすく、ブランドへの信頼は長い時間をかけて積み上がる。
ただし、優良企業と優良投資は同じではない。消費者は値上げに反応する。品質差が小さい洗剤なら安い商品へ移るし、高級美容なら新しいブランドへ乗り換える。強い堀があるのは確かだが、すべての部門でその堀が広がっているわけではない。米国制汗剤の過去のシェア低下は、ブランドを永久に強いものとして扱ってはいけない証拠である。
オーナー利益の目安は、2025年の純利益約69億ドルとフリーキャッシュフロー約74億ドルにある。設備を維持し、ブランドへ広告費を投じた後でも、多くの現金を株主へ返せる。資本コストより高いROICは魅力的だが、今後の買収や新商品に同じ利回りが保証されるわけではない。事業規模が大きいほど、高い追加投資利回りを保つことは難しくなる。
筆者が特に重視するのは、資本配分である。食品の再編が成立すれば、株主は本体と新しい食品会社の両方を保有することになる。経営がその価値を現金と株式で適切に配分できれば、再編には意味がある。ただし、取引完了前の価値を利益に重ねて評価することはしない。
安定した生活必需品の需要、高い資本効率、相応の株主還元は長期保有に向く。しかし、予想が外れた場合でも資本コストを十分に上回る利回りを得られるかと問うと、現在の値段は魅力に欠ける。価格が本質価値を下回る安全域が欲しい。
何で稼ぐ会社か
ユニリーバの収益は、消費者が日々使う商品を大量に売ることで生まれる。売上の基本は販売数量と平均単価の積である。人口、世帯数、衛生習慣、新興国の所得が数量を左右し、ブランド力、製品改良、容量変更、高価格品への移行が単価を左右する。スーパー、ドラッグストア、卸売業者、電子商取引、業務用販売が主要な販路となっている。
美容・ウェルビーイングは、ダヴ、サンシルク、ワセリンに加え、ニュートラフォル、リキッドI.V.、高級美容ブランドなどを持つ。2025年の売上は約145億ドルで、4部門の中でも新しい消費習慣を作る余地が大きい。ただし、高級美容やサプリメントは流行と競争の影響を受けやすく、日用品ほど需要を予測できない。
パーソナルケアは約149億ドルの売上を持ち、ダヴの石けんやボディウォッシュ、レクソナの制汗剤、アックス、ラックス、ペプソデントなどを販売する。肌を洗う、体臭を抑える、歯を磨くという需要は10年後も残る。ダヴのように複数のカテゴリーへ広がれるブランドは、広告投資を繰り返し活用できる点で価値が高い。
家庭用品は約131億ドルの売上で、洗濯洗剤、柔軟剤、食器洗い洗剤、住居用洗剤を扱う。パーシル、コンフォート、サンライト、シフ、ドメストスなどが中心だ。インド、ブラジル、インドネシアなどでは洗濯習慣の高度化が数量を支える。反面、低価格品との違いが消費者に見えにくい場合、値上げを続けることは難しい。
食品は約146億ドルの売上を持ち、クノール、ヘルマンズなどの調味料、スープ、マヨネーズ、業務用食品を販売する。成熟市場では数量が伸びにくいが、調理補助製品や外食向けには安定した需要がある。2026年3月に合意したマコーミックとの統合が成立すれば、この部門の大半はユニリーバの連結対象から外れる。
2025年の4部門の売上は会社開示をドル換算すると添付の570億ドルと整合する。一方、添付の営業利益114億ドルは会社の基礎的営業利益に近く、報告営業利益とは差がある。事業別の比較では基礎的営業利益を出発点にし、純利益では金融費用、税金、非基礎的費用、少数株主持分を考慮する。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単にまねできない強みは、世界的なブランド、流通網、広告投資、製品開発力である。ダヴやワセリンは長年の使用実績があり、消費者は安さだけでは商品を選ばない。大手小売にとっても、こうしたブランドを棚から外すことは容易ではない。地域ごとに異なる価格帯の商品を用意できることも、世界規模のメーカーならではの強みだ。
値上げの実績にも証拠がある。2022年と2023年は原材料インフレの中で価格を大きく引き上げ、利益率を守った。一方、2025年の既存事業売上成長3.5%の内訳は数量1.5%、価格2.0%である。2026年上期は数量4.2%に対して価格0.6%となり、成長の中心が数量へ移った。値上げだけで利益を増やし続けられる会社ではないことも明らかだ。
資本効率は良好である。会社が開示する2025年の基礎的ROICは19.0%で、今回の資本コスト7.5%を大きく上回る。ただし、買収で生まれたのれんや自己株式取得による自己資本の縮小も、帳簿上のROEを高く見せる。過去のROE約37%がそのまま新規投資に再現されるとは考えない。追加投資の利回りは既存事業より低くなる余地がある。
経営陣は30の重点ブランドへ資金を集中しており、これらは売上の78%を占める。2026年上期には重点ブランドの数量成長が5.4%に達した。これはブランド投資が実際の販売数量につながった証拠である。反面、ブランド買収や事業売却を繰り返すため、組織の複雑さと一時費用が生じやすい。
AIエージェント代替の指定業態には該当しない。消費者が洗剤や制汗剤そのものを使わなくなるわけではないからだ。AIによる広告制作や需要予測の効率化は進むが、ブランドへの信頼、製品性能、製造能力、店頭流通という堀は残る。ただし、広告制作の低コスト化は競合にも利益をもたらし、小規模ブランドが消費者を獲得しやすくなる可能性がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の家庭用品・パーソナルケア市場は成熟しているが、数量が一様に減る産業ではない。北米と欧州では世帯数や使用回数が安定する一方、インド、東南アジア、アフリカでは所得の増加によって使用量や商品単価が上がる。ユニリーバは新興国への展開が深く、北米中心の競合とは数量の成長余地が異なる。2026年上期の新興国売上は既存事業ベースで7.0%成長した。
美容市場ではロレアルが有力な競争相手である。同社の市場資料では世界の美容市場は2025年に約3,000億ユーロ規模とされ、ロレアルは世界シェアを2020年の約10.2%から2025年には11.9%へ伸ばした。ユニリーバの美容事業は量販品と新興国に強いが、科学的効能を訴求する高級品ではロレアル、エスティ ローダー、資生堂などとの競争が続く。
パーソナルケアでは、米国の制汗剤市場が堀の強さと限界を示す。ユーロモニターの2026年調査では、ユニリーバの米国市場シェアは2020年の41%から2025年の36%へ低下した。同期間にプロクター・アンド・ギャンブルは31%から33%へ上昇した。ユニリーバは2026年上期に米国制汗剤市場で首位へ戻ったと説明しているが、過去のシェア喪失が解消したとまでは言えない。
家庭用品ではプロクター・アンド・ギャンブル、ヘンケル、花王、チャーチ・アンド・ドワイトなどが競う。世界の洗濯用品市場は2025年に約1,126億ドルという外部推計があり、同資料ではプロクターの市場シェアが35.1%、ユニリーバが15.0%とされる。ただし、これは洗濯用品の推計であり、家庭用品部門全体のシェアとは異なる。プロクターの家庭・洗濯用品はユニリーバより規模が大きく、製品開発費と広告費をかけられる。
食品では、世界のソース・ドレッシング・調味料市場だけで2025年に約1,697億ドルという推計がある。ここへスープや調理補助食品を加えると対象市場はさらに広がる。クラフト・ハインツ、ネスレ、マコーミック、地域ブランドが競合する。ヘルマンズは成熟市場で認知度が高いが、2026年上期には米国の高級マヨネーズやアボカド油製品でシェアを失っており、ブランドが強くても商品革新を止めれば負ける。
業界全体の課題は、小売の自社ブランド、ネット通販、新興国のローカル企業、原材料価格、包装材規制である。小売の集中はメーカーの交渉力を削るが、有名ブランドは棚への集客力を持つため、完全に価格を支配されるわけではない。中立では、世界の日用品数量が緩やかに増え、価格は物価並みかやや下で伸びると考える。ユニリーバは美容でシェアを守り、制汗剤で一部を取り戻し、家庭用品では低価格競争との均衡を保つ。
資本政策と M&A
ユニリーバの資本配分は、ブランドへの再投資、配当、自社株買い、小型買収を組み合わせるものである。2025年には約60億ユーロを配当と自社株買いで還元した。2026年上期には15億ユーロの自社株買いを完了している。会社は中期的に配当性向約60%、2026〜2029年の自社株買い総額60億ユーロ、年間約15億ユーロの小型買収を方針として示している。
過去10年の買収と売却は評価が分かれる。ホーリックスや高級美容・ウェルビーイング事業への投資は成長領域を増やしたが、買収価格が高ければ、その後の利益が伸びても株主価値は増えにくい。茶事業の売却、2025年のアイスクリーム事業分離など、以前取得した事業を整理する動きも続いている。成長性を高める方向は妥当だが、過去の買収がすべて成功だったとは見ない。
2026年3月には、食品事業の大部分をマコーミックと統合する契約を締結した。公表条件では、ユニリーバと既存株主が統合会社の65.0%を受け取り、そのうち55.1%が既存株主へ直接配分される。ユニリーバ本体は9.9%を保有し、さらに157億ドルの現金を受け取る予定である。2026年10月時点では当局審査や相手側株主承認が残り、2027年半ばまでの完了が目標だ。食品の利益、分配される株式、現金売却代金を同時に全額足すことはできない。
2025年末の添付データでは純負債は265億ドルである。2026年6月末の会社開示では純負債は260億ユーロとなり、基礎的EBITDAの2.3倍に増えた。借金は過大とまでは言えないが、金融費用の上昇によって成長投資と還元の自由度は小さくなる。支配株主による特殊な議決権支配はなく、普通株とADRの経済的持分は同じである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ユニリーバのブランド群は、世界の生活必需品産業でも非常に強い。洗剤、石けん、制汗剤、ヘアケアという繰り返し購入される商品を持ち、景気が悪くなっても消費が消えない。2026年上期には販売数量が明確に改善した。特に家庭用品の数量成長は7.4%に達し、インドやブラジルで競争力を取り戻している。これは単なる値上げではなく、消費者が実際に商品を買う量が増えたということだ。
成長領域もある。美容・ウェルビーイングではダヴ、ワセリン、サンシルク、高級美容、栄養補助食品が需要を広げられる。2026年上期には美容・ウェルビーイングの既存事業売上が5.9%成長した。ロレアルの強さは無視できないが、ユニリーバには新興国の幅広い所得層へ商品を売る経験がある。商品の効能を高め、使用習慣を増やせば、数量と平均単価の両方が伸びる。
経営の改革にも意味がある。30の重点ブランドに資金を集中し、売上の伸びが弱いブランドや市場を整理する。広告・研究開発・設備投資を組み合わせた投資を続けながら、2025年の基礎的営業利益率は20%へ改善した。2026年上期も20%台を維持している。食品の再編が予定どおり進めば、本体の事業構成は成長性の高いカテゴリーへ傾く。
世界の名目需要が物価と数量増加で年4%程度伸びれば、10年で売上は大きく増える。重点ブランドがシェアを維持し、高価格品を増やせれば、営業利益は売上より速く伸びる。ROICが資本コストを上回る状態が続くため、利益の一部を再投資しながら配当と自社株買いを続けられる。
食品のマコーミック統合も、価値を壊すだけの売却ではない。既存株主は統合後の会社の株式を受け取り、食品ブランドの経済価値を引き続き保有する。規模の拡大と流通の相乗効果が実現すれば、独立した食品事業より高い収益力を得る余地もある。生活必需品の需要、世界的なブランド、新興国の数量成長がそろう会社として、長期の競争力を高く評価できる。
慎重な見方
ユニリーバの過去の強さを将来へそのまま延ばすことは危険である。売上は長い期間を通じて大きく伸びておらず、その間に多くの事業売却と買収が行われた。売上の増減には為替と事業構成の変更が混ざっている。2026年上期の数量成長は優れた結果だが、その一部にはブラジルでの価格競争力回復や販促の効果がある。高い成長率が10年続くとは限らない。
ブランドの衰えはゆっくり進む。米国の制汗剤では2020年から2025年にかけて市場シェアが低下した。ダヴやレクソナが有名でも、プロクター・アンド・ギャンブルや新興ブランドはより魅力的な商品を作れる。ネット通販では小規模メーカーも顧客へ直接届く。広告制作や販売分析のAI化は競合の参入費用を引き下げ、これまで規模の大きさで守られていた優位を弱める。
家庭用品では、コストコやアマゾンの自社ブランド、地域ごとの低価格メーカーが競争を強める。新興国で数量が増えても、価格の低い商品が中心なら利益の伸びは限定される。原材料や包装材の値上がりを販売価格へ転嫁すると数量が減り、転嫁しなければ利益率が下がる。2026年上期の価格寄与0.6%は、物価3.5%を継続して転嫁できると断定できない理由である。
資本政策にも不確実性がある。2025年末の純負債は大きく、2026年上期にはさらに増えた。高い金利で借り換えると、営業利益が増えても株主の純利益が期待ほど増えない。過去の買収で生まれたのれんと商標権の価値も、事業の成長率が落ちれば減損の対象になる。
食品再編は特に慎重に見る必要がある。取引には競争当局の承認が必要であり、英国でも審査が始まっている。統合後の食品会社には相応の借金が残り、費用削減と事業統合が計画どおり進まなければ、株主へ配分される持分の価値は低下する。経営が美容・ウェルビーイングへの買収を続け、投資利回りが悪化すれば、見かけの成長はあっても株主価値は増えない。優良ブランドへの期待が高いほど、その失望は大きくなる。
どちらに重みを置いたか
事業が長く存続するという点では、強気の見方が優勢である。2026年の数量回復は重要な証拠であり、プロクターなどと競いながら世界的なブランドを守る力もある。しかし、価格決定力は無制限ではなく、食品再編には大きな未確定要素が残る。確率は楽観側27%、中立35%、悲観側38%と慎重な側へ寄せた。これは需要そのものが消えるからではなく、シェア、利益率、資本配分の複数の不確実性があるためだ。資本コストは品質に応じて7.5%とし、再編の実行リスクは確率と利益の筋書きで表した。期待値では現在の時価総額を約14%下回り、やや割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 75.80 ドル1,664 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 29.80 ドル654 億ドル)。 今の値に割り戻すと 57.53 ドル1,263 億ドル、今との差 −11.8%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 140.36 ドル3,081 億ドル | 36.90 ドル810 億ドル | +171.6% | +12.2% | 12.41 ドル272 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 111.29 ドル2,443 億ドル | 35.76 ドル785 億ドル | +125.3% | +10.0% | 29.41 ドル646 億ドル |
| 中立 | 35% | 86.38 ドル1,896 億ドル | 32.16 ドル706 億ドル | +81.6% | +7.3% | 41.49 ドル911 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 42.66 ドル937 億ドル | 26.42 ドル580 億ドル | +5.9% | +0.7% | 17.96 ドル394 億ドル |
| 悲観 | 12% | 19.92 ドル437 億ドル | 16.17 ドル355 億ドル | −44.7% | −7.1% | 4.33 ドル95 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 75.80 ドル1,664 億ドル | 29.80 ドル654 億ドル | +61.8% | +5.9% | 105.60 ドル2,318 億ドル |
今の株価時価総額 65.26 ドル1,433 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 楽観:新興国の数量成長と高価格化が定着する 利益 140 億ドル · PER 21.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 140.36 ドル3,081 億ドル
2036年には、美容・ウェルビーイングの販売数量が現在の約1.37倍、パーソナルケアが約1.31倍になる。インド、東南アジア、アフリカで日用品の使用量が増え、北米ではダヴやワセリンが高価格商品の市場を広げる。ロレアルとは異なる価格帯と販路で顧客を獲得し、制汗剤ではプロクター・アンド・ギャンブルからシェアを取り戻す。数量増加は広告費の伸びを上回り、営業利益率を改善させる。
家庭用品も新興国で販売数量を増やし、洗剤の濃縮化や高機能化によって単価を引き上げる。食品はクノールとヘルマンズのブランド価値が維持され、競合との競争でも数量を伸ばす。会社全体の売上は約1,008億ドル、営業利益は約229億ドル、純利益は約140億ドルに達する。ブランド投資と製品開発の成果が繰り返し販売につながり、高い資本効率が残る。
マコーミックとの食品統合については、未成立のため相手企業の利益や売却代金を上乗せしない。現有食品事業の経済価値を継続して保有する比較用の筋書きである。取引成立後は分配株式と本体の価値に分けて評価し直す必要がある。10年間の正味還元は810億ドルを見込む。大型買収による過度な借金を避け、株主への還元と成長投資の両方が成立する。
- 美容・ウェルビーイング:数量 34.3(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 8.34(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 286 億ドル・営業利益 66 億ドル。数量は年約3.2%成長。新興国の市場拡大とシェア獲得を合わせる。価格は年約3.7%上昇し、高級美容とウェルビーイングの構成比が高まる。
- パーソナルケア:数量 58.7(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 4.75(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 279 億ドル・営業利益 70 億ドル。数量は年約2.7%成長。米国制汗剤のシェア回復と新興国の使用量増加が続く。価格は年約3.7%上昇する。
- 家庭用品:数量 70.3(販売数量(億個、標準包装換算の推計))× 価格 3.07(標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 216 億ドル・営業利益 39 億ドル。数量は年約1.6%成長。インドとブラジルで市場の拡大とシェア向上が進む。単価は年約3.5%上昇する。
- 食品:数量 78.9(販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計))× 価格 2.89(標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 228 億ドル・営業利益 55 億ドル。数量は年約1.2%成長。調理補助食品と新興国の食品需要が増える。単価は年約3.3%上昇する。未成立の統合企業の利益は含まない。
倍率:2036年の帳簿ROEは140.39÷412.4=34.0%。資本コストk=7.5%、strongの超過収益残存割合2/3からRONIC=25.2%。長期の名目成長g=3.8%は市場数量約1.0%、シェア・製品構成約0.3%、実現価格約2.5%という成熟後の事業条件から導く。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=約23.8倍。利益の質を高く評価するが、競争が残るため上限の約90%である21.5倍を採用する。140.39億ドル×21.5倍=3,018.38億ドル。純現金の上乗せはない。
確率:美容・パーソナルケア・家庭用品が同時に数量とシェアを伸ばし、利益率も改善する筋書き。2026年上期は好調だが、この状態が10年間続くには競合への継続的な勝利が必要なため7%とした。
やや楽観 20% やや楽観:重点ブランドが順調に成長する 利益 119 億ドル · PER 20.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 111.29 ドル2,443 億ドル
美容とパーソナルケアでは、新興国の所得成長に合わせて販売数量が増え、ダヴやワセリンの高価格商品が定着する。世界の美容市場ではロレアルが主導権を持ち続けるが、ユニリーバは量販価格帯とデジタル販路で独自の顧客を維持する。米国の制汗剤ではプロクターとシェアを分け合い、2025年の弱さから一部を回復する。
家庭用品ではインドとブラジルが数量成長を支える。世界の洗濯用品市場ではプロクターが規模の優位を維持するが、ユニリーバは新興国の流通網を生かして成長する。食品では先進国の需要が伸び悩む一方、調理補助食品と業務用販売が堅調に推移する。既存事業の利益率は緩やかに改善し、全社営業利益率は約21.4%となる。
会社全体の売上は約922億ドル、営業利益は約197億ドル、純利益は約119億ドルに増える。2026年時点の大きな数量回復がそのまま10年間続くわけではないが、ブランドへの投資と製品改良の成果が残る。食品統合は未成立のため、相手企業の利益や予定売却代金を先取りしない。株式報酬と増資を差し引いた正味還元は10年間で785億ドルとなり、株主は現金を受け取りながら事業の成長にも参加できる。
- 美容・ウェルビーイング:数量 31.1(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 8.18(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 254 億ドル・営業利益 55 億ドル。数量は年約2.2%、価格は年約3.5%の上昇。高級美容の構成比拡大が継続する。
- パーソナルケア:数量 53.8(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 4.66(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 250 億ドル・営業利益 59 億ドル。数量は年約1.8%、価格は年約3.5%の上昇。制汗剤のシェアをおおむね維持する。
- 家庭用品:数量 66.9(販売数量(億個、標準包装換算の推計))× 価格 3.04(標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 203 億ドル・営業利益 34 億ドル。数量は年約1.1%、価格は年約3.4%の上昇。新興国が数量を支える。
- 食品:数量 74.3(販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計))× 価格 2.89(標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 214 億ドル・営業利益 50 億ドル。数量は年約0.6%、価格は年約3.3%の上昇。成熟市場の弱さを新興国が補う。
倍率:2036年の帳簿ROEは36.2%、k=7.5%、strongの残存割合2/3からRONIC=26.7%。長期g=3.5%は市場数量約0.6%、シェア・製品構成約0.2%、価格約2.7%の合成であり、ROEから成長を導いていない。正当化PERは10年目の利益に対し約22.5倍となる。成長の一部が成熟することを考え、上限の約91%である20.4倍を採用する。時価総額は118.63億ドル×20.4倍=2,420.05億ドル。
確率:2026年上期の販売数量の改善が定着し、インド・米国・ブラジルで一定のシェアを維持する筋書き。数量回復の証拠があるため2割の確率を与える。
中立 35% 中立:ブランドを守り、物価と緩やかな数量成長で伸びる 利益 99 億ドル · PER 18.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 86.38 ドル1,896 億ドル
美容・ウェルビーイングは、新興国の人口と所得の増加、高価格ヘアケア、スキンケア、健康関連商品の普及で数量が年1%強伸びる。ロレアルや地域の美容企業との競争は続くが、ダヴやワセリンが持つ量販価格帯の優位は残る。パーソナルケアでは米国制汗剤のシェアをおおむね守り、インドや東南アジアで使用量が増える。ただし、単価の上昇率は物価をやや下回る。
家庭用品は世界の使用量が少し増える一方、低価格品や自社ブランドが数量シェアの一部を奪う。インドやブラジルの成長が成熟国の停滞を補い、全体の数量成長は年0.3%程度にとどまる。食品は先進国の需要が弱く、数量は横ばいになる。価格は緩やかに上昇するが、クラフト・ハインツなどとの競争で高い値上げは続かない。
2036年の売上は約822億ドル、営業利益は約167億ドル、純利益は約99億ドルとなる。ブランド力は損なわれず、営業利益率は現在とほぼ同水準を保つ。株主への正味還元は10年間で約706億ドルとなり、内部留保は成長投資と財務の維持に充てられる。食品再編については、未成立の段階でマコーミックの利益や売却代金を先取りせず、現在の食品事業の経済価値を比較可能な形で残す。成立後は本体価値と分配株式を分けて再評価する必要がある。
- 美容・ウェルビーイング:数量 28.4(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 8.02(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 228 億ドル・営業利益 46 億ドル。数量は年約1.3%増加。市場成長約1.5%からシェアの小幅低下を引く。価格は年約3.3%増加する。
- パーソナルケア:数量 48.7(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 4.52(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 220 億ドル・営業利益 50 億ドル。数量は年約0.8%増加。新興国の成長と先進国の成熟を相殺する。価格は年約3.2%増加する。
- 家庭用品:数量 61.8(販売数量(億個、標準包装換算の推計))× 価格 2.92(標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 181 億ドル・営業利益 28 億ドル。数量は年約0.3%増加。新興国の市場拡大から低価格競争によるシェア喪失を差し引く。価格は年約3.0%増加する。
- 食品:数量 70.0(販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計))× 価格 2.75(標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 192 億ドル・営業利益 43 億ドル。数量は横ばい。新興国での需要増加と成熟市場での数量減少が相殺する。価格は年約2.8%増加する。
倍率:2036年の帳簿ROEは99.46÷312.4=31.8%。k=7.5%、強い堀の残存割合2/3からRONIC=23.7%。長期g=3.2%は、成熟後の世界市場数量約0.5%、シェア変化約−0.2%、実現価格約2.9%から導く。これはROEや市場評価倍率から出した成長率ではない。正当化PER=(1−0.032÷0.237)÷(0.075−0.032)×1.032=約20.8倍。ブランドの持続性を評価しつつ、買収と競争の不確実性を考慮して上限の約90%である18.7倍とする。99.46億ドル×18.7倍=1,859.90億ドル。純現金の上乗せはない。
確率:世界の日用品需要が緩やかに増え、ユニリーバは新興国で数量を増やす一方、先進国で一部シェアを失う。2026年の高い数量成長は次第に正常化すると考え、最も確率を厚くした。
やや悲観 26% やや悲観:シェアを失い、値上げが物価に届かない 利益 70 億ドル · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 42.66 ドル937 億ドル
美容ではロレアルと地域の新興ブランドが高価格品の顧客を奪う。ダヴやワセリンは残るが、高価格品の伸びが期待を下回り、販売数量は緩やかに減る。パーソナルケアではプロクター・アンド・ギャンブルが米国の制汗剤や身体用洗浄品でシェアを伸ばし、ユニリーバの数量は年0.6%程度減少する。ブランドの認知度は残っても、棚を維持するための販促費が増える。
家庭用品はさらに弱い。小売の自社ブランドや地域の洗剤メーカーが価格差を広げる。新興国の使用量増加だけではシェア低下を補えず、数量は年1%程度減少する。食品もクラフト・ハインツや地域企業との競争で数量を失い、価格上昇率は物価を下回る。
2036年の売上は約685億ドルにとどまり、営業利益は約121億ドル、純利益は約70億ドルとなる。需要が消えるわけではないが、現在と比べて企業の競争上の地位が弱まっている。配当は維持を優先しながら自社株買いを減らし、10年間の正味還元は580億ドルとなる。大規模な買収で失敗しなくても、数量と価格を同時に伸ばせない状態が続くだけで、株主の得られる価値は大きく低下する。
- 美容・ウェルビーイング:数量 24.3(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 7.57(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 184 億ドル・営業利益 32 億ドル。数量は年約0.3%減少。美容のシェア低下が市場成長を打ち消す。価格は年約2.7%増加にとどまる。
- パーソナルケア:数量 42.4(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 4.22(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 179 億ドル・営業利益 35 億ドル。数量は年約0.6%減少。制汗剤と洗浄品のシェアを競合に奪われる。価格は年約2.5%増加する。
- 家庭用品:数量 54.3(販売数量(億個、標準包装換算の推計))× 価格 2.76(標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 150 億ドル・営業利益 19 億ドル。数量は年約1.0%減少。自社ブランドと地域メーカーへ移行する。価格は年約2.4%増加にとどまる。
- 食品:数量 66.6(販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計))× 価格 2.59(標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 173 億ドル・営業利益 35 億ドル。数量は年約0.5%減少。成熟市場の競争が新興国の伸びを上回る。価格は年約2.2%増加する。
倍率:2036年の帳簿ROEは23.0%、k=7.5%、strongの残存割合2/3からRONIC=17.8%。長期g=2.3%は、世界市場数量約0.2%、シェア低下約−0.5%、販売価格約2.6%から導く。正当化PERの上限は10年目利益に対し約17.1倍だが、構造的なシェア喪失のため約74%の12.6倍とする。70.44億ドル×12.6倍=887.54億ドル。稼ぐ力の上限である純利益÷k=約939億ドル、および売却可能資産約200億ドルと照合した。過去のPBRの底を利用していない。
確率:日用品の需要は残るが、先進国の自社ブランドと新興国の低価格競争で数量が減る筋書き。米国制汗剤で過去にシェアを失った実績と2026年の低い価格寄与を重視し、26%とした。
悲観 12% 悲観:世界的ブランドの価格決定力が構造的に衰える 利益 37 億ドル · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 19.92 ドル437 億ドル
2036年には、ユニリーバのブランドは知られていても、消費者が以前ほど高い価格を払わなくなっている。美容ではロレアルや新興ブランドが顧客を奪い、パーソナルケアではプロクター・アンド・ギャンブルと低価格メーカーがシェアを伸ばす。広告費を増やしても数量は戻らず、値引きや小容量品への移行で利益率が下がる。美容とパーソナルケアの販売数量は現在より約18%減少する。
家庭用品では低価格商品への移行がさらに進む。洗剤や柔軟剤の性能差が小さく見えるようになり、ユニリーバの数量は約26%減る。食品も地域ブランドや大手競合との競争で数量が減少する。物価が3.5%で上昇する中、商品価格の上昇率は年1.8%にとどまり、実質的な値下げが続く。
2036年の売上は約544億ドル、営業利益は約70億ドル、純利益は約37億ドルとなる。事業の利益率は過去の低い時期を下回る構造的な水準まで低下する。期間中に美容や食品関連資産などで約89億ドルの累積減損・損失を織り込み、純利益累計は440億ドルとする。配当は減額され、自社株買いも縮小するため、正味還元は355億ドルとなる。
これは倒産を中心にした筋書きではない。ブランドと工場は残り、売れる事業もある。ただし、資本コストを上回る追加投資先が減り、株主が享受する稼ぐ力は大幅に低くなる。マコーミックとの食品統合が遅延または不成立となる場合の機会損失も含むが、成立しない取引の相手企業の利益や現金は計上しない。
- 美容・ウェルビーイング:数量 20.4(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 6.93(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 142 億ドル・営業利益 17 億ドル。数量は年約2.0%減少。新興ブランドとロレアルにシェアを奪われる。価格は年約1.8%増加にとどまる。
- パーソナルケア:数量 36.8(販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計))× 価格 3.94(標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 145 億ドル・営業利益 20 億ドル。数量は年約2.0%減少。米国制汗剤と身体洗浄品でシェアが低下する。価格は年約1.8%増加する。
- 家庭用品:数量 44.2(販売数量(億個、標準包装換算の推計))× 価格 2.60(標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 115 億ドル・営業利益 10 億ドル。数量は年約3.0%減少。小売の自社ブランドと地域メーカーに大きく負ける。価格は年約1.8%増加する。
- 食品:数量 57.2(販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計))× 価格 2.49(標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計))→ 売上 143 億ドル・営業利益 23 億ドル。数量は年約2.0%減少。調味料と調理補助食品で競合にシェアを奪われる。価格は年約1.8%増加する。
倍率:2036年の帳簿ROEは37.06÷267.4=13.9%、k=7.5%、strongの残存割合2/3からRONIC=11.7%。長期g=1.3%は、市場数量約0%、シェア低下約−1.2%、実現価格約2.5%に基づく。正当化PER上限は10年目利益に対して約14.5倍だが、長期のシェア喪失と利益の質の低下を反映して11.8倍とする。37.06億ドル×11.8倍=437.31億ドル。これは稼ぐ力の上限37.06÷7.5%=約494億ドル以下であり、税後の売却可能資産175億ドルを上回る。過去の谷のPBRは使用しない。
確率:強いブランドが残るため事業消滅は想定しないが、長期間のシェア低下、買収資産の減損、価格競争が同時に起こる場合を考える。事業再編と競争の不確実性を踏まえ12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
美容・ウェルビーイング
ダヴ、サンシルク、ワセリン、ニュートラフォル、リキッドI.V.、高級美容ブランドなど。ヘアケア、スキンケア、健康・ウェルビーイングの商品を販売する。
| 数量販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計) | 価格標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 5.80 | 145 | 28 |
| 10 年後 中立 | 28.4 | 8.02 | 228 | 46 |
取り方:2025年の会社開示売上128.48億ユーロを、添付factsの全社ドル売上570億ドルと整合する換算比率で約145億ドルとする。会社は絶対販売個数を開示しないため、標準容器換算で25億個、メーカー平均単価5.80ドルを推定した。世界のヘアケア市場は2025年約972億ドル、スキンケアは2026年約1,750億ドルという外部推計があり、ウェルビーイングも加えた競争市場は大きい。対象市場の境界と小売・メーカー価格の差があるため、全体シェアの精密な推定はできないが、売上換算では数%台の大手とみる。競合はロレアル、プロクター・アンド・ギャンブル、エスティ ローダー。2025年の基礎的営業利益率19.2%から営業利益27.9億ドルを取る。数量と単価は会社開示値ではなく、製品構成に基づく推計である。
パーソナルケア
ダヴ、レクソナ、アックス、ラックス、ライフブイ、ペプソデントなど。制汗剤、石けん、ボディウォッシュ、口腔ケア用品を販売する。
| 数量販売数量(億個、標準容器・包装換算の推計) | 価格標準容器・包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 45.0 | 3.30 | 149 | 34 |
| 10 年後 中立 | 48.7 | 4.52 | 220 | 50 |
取り方:2025年の会社開示売上131.61億ユーロを約148.5億ドルに換算した。標準容器45億個、メーカー平均単価3.30ドルは、低価格の石けん・歯磨きと高価格の制汗剤を混ぜた推定値である。対象市場は世界の身体洗浄・制汗剤・口腔ケアであり、単一の世界シェアは公表されない。市場シェアの実証値として、ユーロモニターの米国制汗剤調査は2025年のユニリーバ36%、プロクター33%を示す。これは部門全体のシェアではない。2025年の基礎的営業利益率22.6%を使用し、営業利益を33.6億ドルとする。
家庭用品
パーシル、コンフォート、サンライト、シフ、ドメストスなど。洗濯洗剤、柔軟剤、食器洗い洗剤、住居用洗剤を販売する。
| 数量販売数量(億個、標準包装換算の推計) | 価格標準包装1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 2.18 | 131 | 19 |
| 10 年後 中立 | 61.8 | 2.92 | 181 | 28 |
取り方:2025年の会社開示売上115.65億ユーロを約130.5億ドルに換算した。洗濯粉末・液体・柔軟剤・家庭用洗剤の標準包装60億個、平均メーカー単価2.175ドルと推定する。ユニリーバの家庭用品市場説明では、洗濯洗浄、柔軟剤、住居衛生を合わせた世界市場は約1,500億ユーロ規模であり、売上換算の対象市場比率は約8%となる。ただし、世界市場は小売価格が中心で、メーカー売上と厳密には一致しない。2025年の外部洗濯用品市場推計では、プロクターのシェア約35%、ユニリーバ約15%という値があり、これは洗濯用品に限る。2025年の基礎的営業利益率14.9%で営業利益19.4億ドルを取る。
食品
クノール、ヘルマンズ、マイユなど。調理補助食品、調味料、マヨネーズ、ソース、スープ、業務用食品を扱う。2026年10月時点ではマコーミックとの統合契約が未完了であり、現有事業として扱う。
| 数量販売数量(億個、標準包装・業務用換算の推計) | 価格標準包装・業務用換算1個当たり平均メーカー販売単価(ドル、推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 70.0 | 2.09 | 146 | 33 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 2.75 | 192 | 43 |
取り方:2025年の会社開示売上129.29億ユーロを約146億ドルに換算する。家庭用のスープ、調味料、ソースと業務用食品を標準包装70億個、平均メーカー単価約2.086ドルに換算した推計である。業務用の大容量包装を含むため、実際の販売容器数ではない。世界のソース・ドレッシング・調味料市場は2025年約1,697億ドルとの外部推計があり、調理補助食品を加えると対象市場はさらに大きい。会社全体の数量シェアは開示されず、カテゴリー別の市場範囲も異なる。競合はクラフト・ハインツ、ネスレ、マコーミック。2025年の基礎的営業利益率22.6%で営業利益32.9億ドルとする。未成立の食品統合による相手企業の売上・利益は加えない。
リスクと懸念
食品再編の成立条件と株主の取り分
マコーミックとの食品事業統合は2026年3月に合意したが、2026年10月時点では未完了である。競争当局の承認、相手側の株主承認、事業分離費用、統合後の負債などが残る。英国の競争当局は2026年9月に審査を開始した。予定どおり成立しても、ユニリーバ本体の利益が減る一方、株主は別会社の株式を受け取るため、両者を分けて価値を測る必要がある。
販売数量の回復と値上げの両立
2026年上期の数量成長は4.2%と強いが、価格寄与は0.6%にとどまった。値上げを抑えて数量を取り戻した地域では、再度の値上げによって数量が弱くなる可能性がある。物価3.5%の環境で価格上昇率が長く物価を下回れば、売上の実質成長だけでなく原材料費との関係から営業利益率にも影響する。
小売自社ブランドと競合メーカー
プロクター・アンド・ギャンブル、ロレアル、ヘンケル、コルゲート、地域メーカーに加え、コストコやアマゾンの自社ブランドが競争相手となる。米国制汗剤では過去にシェアを失った実績があり、ブランドの認知度だけでは販売数量を守れない。小売との交渉力が低下すると、販促費や値引きが増え、利益率が下がる。
負債と借り換え金利
2025年末の純負債は265億ドル、2026年6月末には260億ユーロまで増加した。基礎的EBITDAに対する純負債は約2.3倍である。借り換え金利が高い状態が続くと、資金調達費用が増え、利益成長の一部を相殺する。食品再編の現金受領が遅れれば、予定している自社株買いの自由度も下がる。
買収資産とのれんの減損
ユニリーバは美容、ウェルビーイング、食品などで買収を行ってきた。2025年末には大きなのれんと無形資産が残っている。買収したブランドの販売数量や利益率が期待を下回れば、将来の利益だけでなく帳簿の自己資本にも減損が生じる。帳簿のROEが高いことを、新規投資の高収益性の保証と考えることはできない。
原材料・関税・為替
洗剤原料の界面活性剤、包装材、植物油、香料、輸送費などは市況の影響を受ける。輸入関税や調達網の変更も費用を増やす。新興国では現地通貨安がドル換算売上を減らす可能性がある。本評価は共通前提として為替を固定しているが、現実の報告利益には換算差が生じる。
製品規制と環境対応
包装用プラスチック、化学物質、香料、洗剤成分、環境表示などに対する規制が厳しくなれば、配合変更や設備投資が必要になる。健康関連商品では効能表示への規制も重要だ。個々の費用は吸収できても、消費者の信頼を失う事故や表示問題が起きると、ブランドの価格決定力に長期の傷が残る。
今後の分かれ目
- 美容・パーソナルケアの数量成長が年3%以上で4四半期続き、平均価格も年2%以上上昇する
- 数量と値上げを両立する力が確認できる。楽観・やや楽観の確率を引き上げ、美容とパーソナルケアの2036年売上と営業利益率を上方修正する。
- 全社の数量成長が2四半期以上マイナスとなり、値上げをしても既存事業売上が年2%未満にとどまる
- 価格への反応が強くなっている。やや悲観の確率を引き上げ、数量と平均単価の両方を見直す。
- 米国制汗剤の市場シェアが再び33%を下回り、プロクターに首位を奪われる
- パーソナルケアの堀が弱まっていると判断する。販売数量と利益率を引き下げ、長期の成長率も再評価する。
- マコーミックとの食品事業統合が2027年に予定条件で完了する
- 食品事業をユニリーバ本体の将来利益から外し、受領した現金、保持するマコーミック株式、株主に分配されたマコーミック株式を別々に評価する。旧食品利益と分配株式の二重計上を避け、10年価値を再構成する。
- 純負債が基礎的EBITDAの3倍を超え、その状態が続く
- 借り換え負担と財務制約が大きくなる。自社株買いを減らし、利払い増を純利益へ反映し、悲観側の確率を引き上げる。
- 家庭用品の営業利益率が13%未満へ低下し、数量シェアも2年連続で失われる
- 一時的な原材料高ではなく競争力の低下を疑う。家庭用品の10年後の利益率を引き下げ、やや悲観・悲観の筋書きを厚くする。
- 重点30ブランドの数量成長が全社を継続して上回り、ROICが18%以上を維持する
- ブランド集中と再投資の利回りが確認できる。中立の利益成長に対する確信を高めるが、ROICの高さだけを理由に長期の売上成長率を引き上げない。
見ておくもの
- 2026年10月28日の第3四半期発表以降の数量・価格寄与と通期ガイダンス
- 美容・ウェルビーイング、パーソナルケア、家庭用品の部門別数量成長率
- 米国制汗剤市場におけるユニリーバとプロクター・アンド・ギャンブルのシェア
- 重点30ブランドの既存事業売上成長率と数量成長率
- 家庭用品の営業利益率とインド・ブラジルでの数量シェア
- マコーミックとの食品統合の競争当局審査、完了日、最終的な分配条件
- 純負債÷基礎的EBITDA、借り換え金利、配当と自社株買いの正味還元額
- 基礎的ROIC、買収後のブランド成長率、のれんの減損
- 売上に対する広告・研究開発・設備投資の比率と、利益率の改善
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額から逆算せず、2025年の4事業の売上と基礎的営業利益を出発点に、数量成長、実現単価、営業利益率を積み上げた。事業別の絶対販売個数は未開示であるため標準包装換算の推計であり、精度に限界がある。2025年の会社報告営業利益と添付factsの営業利益には非基礎的費用の扱いによる差があるため、部門の利益率は同一基準で揃えた。倍率はk、事業のROE、RONIC、数量と価格から導いたgで決め、現在・過去・同業のPERやPBRを根拠にしていない。自己資本は各筋書きで2025年末182.4億ドルに純利益累計を加え、正味還元を差し引いた。悲観の床は売却可能資産と稼ぐ力の両方で点検した。2026年10月28日の第3四半期発表は日本時間の評価時点では未公表である。食品統合は未成立のため相手企業の利益、予定現金受領、将来の分配株式を先取りしない。取引成立後は現有4事業を継続保有した比較用評価をそのまま使えず、分離後のユニリーバ本体と分配株式に分けた再評価が不可欠である。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本資本コスト8.0%にquality−0.5%を加え、7.5%とする。βや現在の株式市場の評価倍率は使用しない。金利、原材料、食品再編、シェア喪失の個別リスクは追加の資本コストにせず、5つの筋書きと確率に反映する。