結論
コンステレーション・ブランズは、メキシコ産のモデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアを米国で売るビール会社である。2026 年 2 月期は売上 91 億ドル(大衆ワインの売却で -10%)、営業利益 27 億ドル、純利益 17 億ドル、ROE 21%。利益のほぼ全部がビール(売上 83 億ドル、営業利益率 38.0%)から出る。2026 年 6〜8 月期は出荷が +5.5% でも、小売への販売数量は -0.6%(モデロ・エスペシアル 約 -2%、コロナ・エクストラ 約 -5%、パシフィコ +19%)で、売上の約 4 割を占めるヒスパニック消費者の弱さ、飲酒率の低下(米国成人で 54%)、アルミ缶への 50% 関税が重い。2028 年 2 月期の見通しは撤回された。
事業の質は高いが、需要が縮む産業の上にある。ブランド・メキシコの醸造能力・米国の流通網は堀だが、数量は毎年 1〜2% 減る見込みで、価格も会社自身が年 1〜2% と言い、物価(3.5%)に届かない。10 年の中立は、数量が年 -1.3%、価格が年 +2.5%、ビール営業利益率 35.5% で、純利益は 19.6 億ドルと今の調整後の水準とほぼ同じ。名目で横ばいの g 0%・k 9.0% の正当化 PER(1 ÷ k = 11.1 倍)を利払い後の純利益に掛けると時価総額は約 218 億ドル、今(231 億ドル)の 0.94 倍で、配当と自社株買いを足した年率は約 6% と資本コスト 9.0% に届かない。
バリュー投資の観点では、借金の多さと価格の弱さを quality(+1.0%)で資本コスト 9.0% に入れ、成長が名目でも伸びない産業は長期の g(中立 0%)に入れて、倍率は正当化 PER(1 ÷ k)に置いた。確率を重ねた本質価値は今より約 13% 低く、「やや割高」。ただし 10 年の悲観(数量 年 -3%、利益率 29%)では 10 年で元本割れに近く、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。ただし今より強いとは言えない。米国でのメキシコ産ビールの永久・専用の使用権、モデロ・コロナの強いブランド、低費用のメキシコ醸造所、卸売網は複製しにくく、堀は健在だが、ビール市場が年 2% 縮む中で、堀は守るためのもので、広げるものではない。
次にオーナー利益を見る。2027 年 2 月期のフリーキャッシュフロー 16〜17 億ドルは設備投資(約 8 億ドル)で押されており、投資が普通の水準(減価償却並み)に戻る 2029 年以降は純利益に近い 20 億ドル前後になる。時価総額 231 億ドルに対する今のオーナー利益利回りは約 7〜8%。国債 5% を上回るが、利益は名目で横ばいで、物価(3.5%)に負けて実質では毎年 3% 減る。
安全域は、中立の 10 年後(純利益 19.6 億ドル、PER 11.1 倍)で時価総額 218 億ドル(今の 0.94 倍)、配当と自社株買いを足した年率は約 6% で、資本コスト 9.0% に届かない。悲観の 10 年(数量 年 -3%、利益率 29%)では純利益 9.6 億ドル、時価総額 89 億ドルと 6 割強減り、還元を足しても 10 年で 1 割強の損になる。純負債が EBITDA の 3 倍で、利益が落ちた時に財務の余裕が小さい。経営は近年、買収より還元に寄せており評価できるが、カノピーの失敗は忘れない。確信度は中程度で、数量の減る速さと関税は予測しにくい。
何で稼ぐ会社か
事業の中心はビールで、売上の約 9 割、営業利益のほぼ全部を占める。メキシコの醸造所(ベラクルス州に新設中)でモデロ・エスペシアル、コロナ・エクストラ、パシフィコ、ビクトリアなどを造り、米国へ輸入して、独立系の卸売業者を通じてスーパー・コンビニ・飲食店に売る。米国でのこれらのブランドの使用権は、永久・専用の再許諾(ブランドの所有者は AB InBev 系)として同社が持つ。モデロ・エスペシアルは金額で米国首位級、数量ではミケロブ・ウルトラが首位である。
利益は、数量 × 1 ケースの売上 × 営業利益率で決まる。2026 年 2 月期の推定は、数量 4.2 億ケース(24 本入り換算)、1 ケース約 20 ドル、ビールの営業利益率 38.0%(前期 39.7%)。数量は米国のビール市場全体(推定 約 25 億ケース)の約 17%。価格はミックスと値上げで上がるが、会社は長期で年 1〜2% を目標にし、直近の 4〜6 か月は横ばい。費用は原料(大麦・アルミ缶)、輸送、メキシコ工場の人件費と減価償却で、2026 年はアルミ缶への関税が利益率を押し下げた。
ワイン・スピリッツは、2025 年に大衆ワインの主力をザ・ワイン・グループへ売却し、残るのはキム・クロフォードやミ・カンポなどの高価格帯。2026 年 6〜8 月期の売上は 1.6 億ドル、営業利益率 3.8% で、売上の 1 割弱・利益はほぼ出ない。決算期は 2 月期で、kabufu の「2025/12」は 2026 年 2 月期にあたる。事業ごとの 2026 年 2 月期の数字は、会社の開示(ビール 83.2 億ドル、ワイン・スピリッツ 8.2 億ドル)。
優良さと弱いところ
堀は 4 つある。第 1 は米国でのメキシコ産ビールの永久・専用の使用権で、競合が同じブランドを売ることはできない(コロナ ハード セルツァーをめぐる訴訟でも同社が勝った)。第 2 はブランドで、モデロ・エスペシアルは金額で米国首位級、売上の約 4 割を占めるヒスパニック消費者に深く根づく。第 3 はメキシコの醸造所の低い費用で、ビールの営業利益率 38% は、同じビールのモルソン・クアーズ(約 14%)の 2.7 倍にあたる。第 4 は米国の卸売網で、2026 年 2 月期は米国の追跡チャネルでシェアを 0.4 ポイント上げた。
資本効率は高く、営業利益率は 30% 台前半、ROE は 21%(買収の減損と自社株買いで自己資本は 81 億ドルと小さい)、フリーキャッシュフローは約 18 億ドル。ただし設備投資は売上の 8〜9%(2027 年 2 月期は約 8 億ドル)と重く、ベラクルス新醸造所の減価償却(年 0.75 億ドル)が 2028 年 2 月期から利益率を約 0.9 ポイント押し下げる。
弱点は 4 つ。一本足(ビールが売上の約 9 割)、使用権のブランドは他社所有、低所得層(ヒスパニックが売上の約 4 割で、業界平均の約 15% の 2.7 倍)に偏ること、純負債が EBITDA の約 3 倍あること。買収では、カナビス企業カノピーへの投資で 2019・2021・2022 年に純損失を出し、ワインの買収も減損のうえ売却した。資本配分は、近年は自社株買いと配当に寄せ、評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のビール市場は、構造的に縮んでいる。Gallup の調査で飲酒する成人は 2023 年 62%、2024 年 58%、2025・2026 年 54% と過去最低に張り付き、IWSR は 2025 年の米国のビール消費を -2% とし、バンク・オブ・アメリカはさらに -4% を見る。理由は、若い世代の飲酒離れ、健康意識、GLP-1 薬の普及(米国成人の 13% 超)、THC 飲料・缶入りカクテル・ノンアルコールへの置き換えである。数量が減る中、メーカーは値上げと高価格帯のミックスで売上を守ってきたが、低所得層の財布が限界に近い。
同社に固有の逆風は、売上の約 4 割がヒスパニック消費者で、業界平均(約 15%)の 2.7 倍に偏ること。モデロの購買層は約 5 割がヒスパニックで低所得寄りとされ(Bernstein)、移民取り締まりと家計の悪化で購買が落ちた。アルミ缶への 50% 関税は、輸入ビールの缶のコストを直撃した。
競合はアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)が最大で、ミケロブ・ウルトラ(低カロリーで数量首位)とバドライトを持つ。ほかにモルソン・クアーズ(国産の安価ビール中心、営業利益率 約 14%)、ハイネケン(Heineken、テカテ・ドス エキス)。同社は 2026 年 2 月期にシェアを上げたが、モデロ・コロナが減り、パシフィコ・ビクトリアで埋める形。循環では、2008〜09 年に株価は -54%、2020 年に -24%(配当込み)。分かれ目は、飲酒率が下げ止まるか、ヒスパニック消費者が戻るか、関税が解けるか。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2026 年 2 月期は 16 億ドル超を還元し、うち自社株買いが 9 億ドル超、配当は約 7 億ドル(配当性向 約 30%)。2027 年 2 月期は年初来で 5.3 億ドルを買い、2028 年 2 月期までの残りの枠は 25 億ドル。株式報酬は年 1 億ドル程度と小さく、正味の還元は配当と自社株買いの合計から約 1 億ドルを引いた額になる。
財務の目標は純負債の EBITDA 倍率 約 3.0 倍。長期債は元本 104 億ドル(2028 年 2 月期に 18 億ドル、2029 年に 9 億ドルが満期)、純支払利息は 3.5 億ドル。2026 年 5 月には 4.85% で 5 億ドルを借り(2031 年満期)、3.70% の債を繰上げ償還しており、借り換えのたびに利払いが増える。
M&A は、近年は大型を避け、2026 年は SpikedAde(スピリッツ系の缶入りカクテル。現金 0.75 億ドルと最大 2.78 億ドルの条件付き対価)を買った。過去はカノピー(カナビス)やワインの買収で価値を壊しており、今後も小型の補完買収が中心とみる。大型の買収は、使用権の範囲と負債の水準から難しいとみる。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 4.5 億ドル(10-Q・2026 年 3 月〜8 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コンステレーションは、米国でメキシコ産ビールの永久・専用の使用権を持つ、参入障壁の高い会社である。2026 年 2 月期にビールの営業利益率は 38.0% と、モルソン・クアーズの約 14% を大きく上回り、米国のビール追跡チャネルでシェアを 0.4 ポイント上げた。2026 年 6〜8 月期も、利益率は 39.0%、パシフィコは +19%、ビクトリアは +15% と、モデロ・コロナの減少を新しいブランドが埋めている。
最大の逆風であるヒスパニック消費者の弱さは、移民政策と家計の一時的な圧迫が主因で、米国のヒスパニック人口は増え続ける。ベラクルスの新醸造所で能力を増やし、費用削減 6 億ドルの実績があり、アルミ関税もいずれ緩む。フリーキャッシュフローは 16〜17 億ドル、時価総額の 7% に相当し、年 4% 近くの自社株買いが 1 株の価値を押し上げる。
資本コスト 9.0% でも、利益が名目で横ばいなら式の倍率は 11.1 倍で、調整後の PER(約 11 倍)と並ぶ。数量の下げ止まりが見えれば、上に余地がある。
慎重な見方
米国のビールは構造的に縮んでいる。飲酒率は 62% から 54% へ下がり、GLP-1 とノンアルコール・THC 飲料への置き換えは止まらない。同社はその中でも特に弱い立場にある。売上の約 4 割が低所得のヒスパニック消費者で、移民取り締まりと家計の悪化で購買が落ちており、モデロ・エスペシアルは約 -2%、コロナ・エクストラは約 -5% で減り続ける。パシフィコの伸びは同じブランド群の共食いに近く、全体の数量は 2026 年 2 月期に -2.1%。価格は会社自身が年 1〜2% と言い、物価の 3.5% に届かない。
費用側では、アルミ缶の 50% 関税とベラクルスの減価償却で、利益率は 2028 年 2 月期に下がる。前回の中期目標(売上 中〜高い 1 桁の成長、営業利益率 33〜35%)は達成されず、2028 年 2 月期の見通しは撤回された。一本足で、ブランドの所有者は AB InBev 系であり、自社の裁量で動ける範囲は狭い。
財務は純負債が EBITDA の 3 倍で、利益が 2 割落ちれば 3.6 倍に上がる。PER が低いのは、利益が落ち続けることを市場が織り込んでいるからで、安い理由がある。
どちらに重みを置いたか
事業の質と価格・数量の議論は拮抗する。強気の見方は、数量の減りが年 1% 程度に収まれば本質価値が今を上回りうることを示し、慎重な見方は、減りが年 2% を超え、価格が物価に届かない時の下値の深さを示す。確率は慎重な見方にやや寄せた(10 年の悲観・やや悲観の合計は 42%)。確率を重ねた本質価値は今より約 13% 低く、結論は「やや割高」。k を quality で付け直した(6.5% → 9.0%)影響が大きい。悲観は財務の重さと一本足を考え、10 年で 15% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 111.65 ドル196 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 100.57 ドル177 億ドル)。 今の値に割り戻すと 112.52 ドル198 億ドル、今との差 −19.0%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 194.97 ドル342 億ドル | 148.38 ドル261 億ドル | +147.0% | +9.5% | 27.47 ドル48 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 152.08 ドル267 億ドル | 126.16 ドル222 億ドル | +100.2% | +7.2% | 47.30 ドル83 億ドル |
| 中立 | 33% | 124.05 ドル218 億ドル | 107.37 ドル189 億ドル | +66.5% | +5.2% | 76.37 ドル134 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 80.25 ドル141 億ドル | 82.87 ドル146 億ドル | +17.4% | +1.6% | 44.04 ドル77 億ドル |
| 悲観 | 15% | 50.64 ドル89 億ドル | 62.94 ドル111 億ドル | −18.3% | −2.0% | 17.04 ドル30 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 111.65 ドル196 億ドル | 100.57 ドル177 億ドル | +52.7% | +4.3% | 212.22 ドル373 億ドル |
今の株価時価総額 138.98 ドル244 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:飲酒率が下げ止まり、ビール利益率 38.5% を保つ 利益 27 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 194.97 ドル342 億ドル
10 年後(2036 年 2 月期)、飲酒率が 50% 前後で下げ止まり、ヒスパニック人口の増加と、輸入プレミアムビールの浸透が数量を支える。ビール数量は 4.1 億ケース(年 -0.3%)、1 ケースの売上は物価並みの 1.41 倍。ベラクルスで能力を増やしても、規模の経済で営業利益率は 38.5%。ビール売上 114 億ドル、営業利益 42 億ドル、純利益 27 億ドル(今の調整後の 1.3 倍)。モデロはミケロブ・ウルトラと並ぶ米国の二大ブランドとして残り、パシフィコ・ビクトリアが第 3・第 4 の柱になる。ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポ)は営業利益率 12% で 1 億ドル。純負債は 3.0 倍で増えた EBITDA の分だけ還元に回り、10 年の正味還元は約 260 億ドルの規模。PER 12.5 倍(g 1.5%・k 9.0% の式。ROE が k を大きく超える)、時価総額は約 342 億ドル。
- ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど):数量 4.1(出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア)× 価格 28(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 114 億ドル・営業利益 44 億ドル。市場 -1.2%/年 × シェア +0.9%/年
- ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど):数量 0.1(出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定))× 価格 77(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。キム・クロフォード等の数量 +3%/年
倍率:ROE 58.1%、k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 33.5%、g 1.5%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 12.7 倍(来年の利益に対して)。ROE が k を大きく超え、ブランドで再投資の超過利益が残る。9.7 割に置いた。上限の 9.7 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 12.5 倍。時価総額 = 純利益 27 億ドル × 12.5 倍 = 342 億ドル。
確率:若い世代の飲酒離れが止まり、プレミアム輸入ビールが成長を回復し、関税も解消する展開。10 年先まで全部が当たる必要があり、8% とした。
やや楽観 17% やや楽観:数量 年 -0.8%、価格は物価並みに近づく 利益 23 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 152.08 ドル267 億ドル
10 年後、ビール数量は年 -0.8%(3.9 億ケース)、1 ケースの売上は年 +3.0%(物価に少し届かず 1.34 倍)。営業利益率は 37.0%、ビール売上 103 億ドル、営業利益 36 億ドル、純利益 23 億ドル。競合のミケロブ・ウルトラ(健康志向の低カロリー)は数量で首位を維持するが、モデロ・パシフィコは価格帯の高い層で売上を守る。THC 飲料・缶入りカクテルは分散した新興の競合にとどまる。10 年の正味還元は 222 億ドル。成長が名目で年 +0.8% の局面を資本コスト 9.0% の式で見て PER 11.5 倍。
- ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど):数量 3.9(出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア)× 価格 27(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 103 億ドル・営業利益 38 億ドル。市場 -1.6%/年 × シェア +0.8%/年
- ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど):数量 0.1(出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定))× 価格 74(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +2%/年
倍率:ROE 36.8%、k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 22.9%、g 0.8%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍(来年の利益に対して)。超過利益は残るが成長は小さい。9.7 割に置いた。上限の 9.7 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 11.5 倍。時価総額 = 純利益 23 億ドル × 11.5 倍 = 267 億ドル。
確率:数量の減りが年 1% 以内にとどまり、価格が物価並みに戻る展開。モデロ・コロナが米国の消費者に根づいたままという前提。
中立 33% 中立:縮む市場でシェアを守り、純利益はほぼ横ばい 利益 20 億ドル · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 124.05 ドル218 億ドル
10 年後、米国のビール市場は年 -2.0% で縮み(若い世代の飲酒離れ、健康意識、THC 飲料・ノンアルコールへの置き換え)、会社はヒスパニック人口の増加とパシフィコ・ビクトリアでシェアを相対で年 +0.7% 上げ、数量は年 -1.3%(3.7 億ケース)。1 ケースの売上は物価 1.41 倍に届かない年 +2.5%(1.28 倍。会社の価格ミックス目標 1〜2% より上、物価より下)。ビール売上は 93 億ドル、営業利益率 35.5%(減価償却と人件費が価格の伸びを上回る)、営業利益 31 億ドル、純利益 20 億ドル。競合はミケロブ・ウルトラの勢いとモルソン・クアーズ(利益率 14% 台)の安売りが続き、モデロの価格優位は縮むが崩れない。10 年の正味還元は 188 億ドル(純利益の合計とほぼ同じ)。PER 11.1 倍は、利益が名目で横ばいの会社の式の値(1 ÷ k、k 9.0%)。時価総額は約 218 億ドル。
- ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど):数量 3.7(出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア)× 価格 25(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 93 億ドル・営業利益 33 億ドル。市場 -2.0%/年 × シェア +0.7%/年
- ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど):数量 0.1(出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定))× 価格 70(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量 +0%/年(売却後の水準)
倍率:ROE 25.5%、k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 17.2%、g 0.0%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.1 倍(来年の利益に対して)。成長が止まる g 0 では再投資の超過利益が式に出ないので、中立の PER は下限の 1 ÷ k そのもの。上限の 10 割に置いた。上限の 10.0 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 11.1 倍。時価総額 = 純利益 20 億ドル × 11.1 倍 = 218 億ドル。
確率:人口と飲酒率の構造的な低下は続くが、モデロ・パシフィコの強さでシェアを少し伸ばす、議論の落としどころ。
やや悲観 27% やや悲観:数量 年 -2.3%、価格が物価に届かず利益率 33% 利益 14 億ドル · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 80.25 ドル141 億ドル
10 年後、ビール数量は年 -2.3%(3.3 億ケース)、1 ケースの売上は年 +1.8%(1.20 倍)と物価に届かない。ヒスパニック系の若い世代も米国式の飲酒習慣(低カロリー・ノンアルコール)に近づき、モデロ・コロナの購買層が縮む。ミケロブ・ウルトラとの価格差が詰まり、プレミアムの理由が薄れる。ビール売上は 79 億ドル、営業利益率 33.0%、営業利益 23 億ドル、純利益 14 億ドル。利払いは負債 3.2 倍で 5 億ドル台。ワイン・スピリッツは営業利益率 6% で 0.4 億ドル。10 年の正味還元は 146 億ドル。成長が名目で年 -1.5% の局面で、稼ぐ力(純利益 ÷ k)に成長をかけて PER 9.9 倍、時価総額は約 141 億ドル。
- ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど):数量 3.3(出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア)× 価格 24(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 79 億ドル・営業利益 26 億ドル。市場 -2.8%/年 × シェア +0.5%/年
- ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど):数量 0.1(出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定))× 価格 66(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -1%/年
倍率:ROE 15.9%、k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 12.4%、g -1.5%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.1 倍(来年の利益に対して)。ROE が k を下回る局面。稼ぐ力(純利益 ÷ k)に成長 g をかけた値の 9 割に置き、市場の値付けは使わない。上限の 9.0 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 9.8 倍。時価総額 = 純利益 14 億ドル × 9.8 倍 = 141 億ドル。
確率:数量が毎年 2% 超減り、価格が物価に届かない展開。ビール全体の縮みと、THC 飲料・缶入りカクテル・ノンアルコールへの置き換えが進む。縮む産業の主流シナリオとして 27% と厚くした。
悲観 15% 悲観:構造的な数量減と価格競争で優良さを失う 利益 10 億ドル · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 50.64 ドル89 億ドル
10 年後、構造的に負けた姿。数量は年 -3.0% で 3.1 億ケースまで減り(市場が年 -3% 縮み、会社はシェアを守れない)、価格は年 +1.0% と物価に大きく届かない。アルミ缶・人件費は物価で上がるので利益率は 29% まで下がる。ビール売上 68 億ドル、営業利益 17 億ドル、純利益 9.6 億ドル(今の調整後の半分)。THC 飲料・缶入りカクテル・ノンアルコールへの置き換えとプライベートブランド化で、ブランドの価格を決める力が弱まる。ワイン・スピリッツは赤字を脱せず、買収(SpikedAde のようなスピリッツ系 RTD)で減損が出る。10 年の正味還元は 110 億ドルで、自社株買いは細る。成長が名目で年 -3% の局面として、稼ぐ力に g をかけて PER 9.2 倍、時価総額は約 89 億ドル。
- ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど):数量 3.1(出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア)× 価格 22(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 68 億ドル・営業利益 20 億ドル。市場・会社とも 約 -3.0%/年
- ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど):数量 0.1(出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定))× 価格 55(1 ケースあたりの純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量 -3%/年・赤字近く
倍率:ROE 9.7%、k 9.00%(基本 8.0% + quality +1.0%)、残る割合 普通 1/2、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.3%、g -3.0%(事業の数量 × シェア × 価格から出した値。ROE から出していない)で、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.1 倍(来年の利益に対して)。数量が構造的に減り価格競争に負ける局面。稼ぐ力(純利益 ÷ k)に g をかけた値の 85% に置き、市場の値付けは使わない。上限の 8.5 割に置いた。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 9.2 倍。時価総額 = 純利益 10 億ドル × 9.2 倍 = 89 億ドル。
確率:ブランドの価格を決める力が消え、数量が毎年 3% 減り、利益率が 29% まで下がる構造的な負け。一本足と負債 3 倍の会社なので 15% と、悲観を通常より厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ビール(モデロ・コロナ・パシフィコ・ビクトリアなど)
メキシコの醸造所で造り、米国へ輸入して卸売業者経由で売るビール。利益のほぼ全部がここから出る。
| 数量出荷数量(億ケース、24 本入り換算の推定)= 米国のビール市場(約 25 億ケース)× シェア | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.2 | 20 | 83 | 32 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 25 | 93 | 33 |
取り方:売上 83.2 億ドルと営業利益率 38.0%(営業利益 31.6 億ドル)は 2026 年 2 月期のビール事業の開示値。数量 4.2 億ケース(24 本入り換算)は推定で、米国のビール市場(約 1.8 億バレル ≒ 25 億ケース)× シェア 約 17%(16.8%)。1 ケースの売上 19.8 ドルは売上 ÷ 数量。米国のビール市場は年 -2% 前後で縮み、会社は年 +0.8% 分シェアを上げる前提が中立。価格は物価並み(3.5%)でなく、会社が言う 1〜2% を少し上回る年 +2.5% を中立とした(直近の価格ミックスは横ばい、低所得層の財布が限界に近い)。競合はミケロブ・ウルトラ(AB InBev、数量首位)とモルソン・クアーズ(国産の安価ビール中心、営業利益率 約 14%)。
ワイン・スピリッツ(キム・クロフォード、ミ・カンポなど)
2025 年に大衆ワインの主力を売却した後に残る高価格帯のワインとスピリッツ。
| 数量出荷数量(億ケース、9 リットル換算の推定) | 価格1 ケースあたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.2 | 55 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 70 | 8 | 1 |
取り方:売上 8.2 億ドルと営業利益率 1.3%(営業利益 0.1 億ドル)は 2026 年 2 月期の開示値で、売却した大衆ワインの最初の数か月分を含む。2026 年 6〜8 月期の売上は 1.6 億ドル(年換算 約 6.4 億ドル)で、売却後の水準は 6〜7 億ドル。数量 0.15 億ケース(1,500 万ケース)は推定で、売却分を含む。残る品の数量は +3%(キム・クロフォード +11%、ミ・カンポ +51%)と伸びるが、米国のワインは数量 -8%(WSWA)で縮む市場。
リスクと懸念
ヒスパニック消費者の弱さと移民政策
売上の約 4 割がヒスパニック消費者(業界平均は約 15%)。低所得に偏り、移民取り締まりの強化・失業・家計の悪化で購買が落ちる。モデロ・エスペシアルとコロナ・エクストラの減少の主因で、回復の時期は見通しにくい。
飲酒率の低下とカテゴリの縮み
Gallup の飲酒率は 62%(2023 年)から 54%(2026 年)へ下がった。GLP-1 薬・ノンアルコール・THC 飲料・缶入りカクテルへの置き換えが進み、ビールの数量は年 2〜4% 減る見方がある。値上げで売上を守る余地は、低所得層の財布で限られる。
アルミ関税と利益率の低下
アルミ缶への 50% 関税で、2026 年 2 月期のビール営業利益率は 170 ベーシスポイント下がり 38.0%。ベラクルス新醸造所の減価償却(年 0.75 億ドル、約 0.9 ポイント)が 2028 年 2 月期から加わる。関税が長引く・価格を上げられない場合、利益率は 35% を割る。
一本足とブランドの所有者
売上の約 9 割がビール、そのほとんどが 4 ブランド。ブランドの所有者は AB InBev 系で、同社は米国での永久・専用の使用権を持つ。訴訟では勝ったが、契約の範囲(缶入りカクテル・ノンアルコールへの拡張)に制約が残る。
競合の攻勢(ミケロブ・ウルトラ・テカテ)
ミケロブ・ウルトラは数量首位で、低カロリー志向に乗る。AB InBev の値引き販促やハイネケンのテカテ・ドス エキスが、メキシコ産ビールの価格差を詰める。プレミアムの理由が薄れると、価格を決める力が下がる。
純負債 EBITDA の約 3 倍と借り換え
純負債は約 111 億ドルで、時価総額の 48%。長期債の 2028 年 2 月期に 18 億ドル、2029 年に 9 億ドルが満期で、借り換えのたびに金利が 3.4% から 4.85% 前後へ上がる。利益が 2 割落ちれば倍率は 3.6 倍で、自社株買いが止まる。
買収・投資の失敗の履歴
カノピー(カナビス)への投資で 2019・2021・2022 年に純損失を出し、ワインの買収も減損のうえ売却した。2026 年の SpikedAde(最大 3.5 億ドル)など新分野への買収が再び価値を壊す可能性がある。
今後の分かれ目
- ビールの depletion(小売への販売)が 2 四半期連続で -2% を下回ったら
- ヒスパニック消費者の弱さが想定より深い。10 年のやや悲観の確率を上げ、長期の g を下げて見直す。
- パシフィコとビクトリアの伸びが +20% を超え、全体の depletion がプラスに戻ったら
- 新ブランドがモデロ・コロナの穴を埋める段階に入った。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 米国のアルミ缶関税が解除され、ビール営業利益率が 38% 以上に戻ったら
- 利益率の下振れが解ける。中立のビール営業利益率を 1〜2 ポイント上げて見直す。
- Gallup の飲酒率が 50% を割り、IWSR のビール消費が -4% を超えて減ったら
- 構造的な縮みが速い。10 年の悲観の確率を 20% に上げ、価格が物価に届かない前提を強める。
- 純負債 EBITDA 倍率が 3.3 倍を超えて自社株買いが止まったら
- 財務の余裕が尽き、還元が細る。悲観・やや悲観の確率を上げ、倍率を下げる。
- 2027 年 2 月期の調整後利益の見通しの上限を達成し、2028 年 2 月期の見通しを再開したら
- 経営の見通しが立った合図。中立の確率を厚くし、10 年の悲観を 1〜2 ポイント下げてよい。
見ておくもの
- ビールの depletion(モデロ・エスペシアル・コロナ・エクストラ・パシフィコ・ビクトリア別)
- ビールの営業利益率(37〜38% が保てるか)と、アルミ関税
- ヒスパニック消費者の購買と移民政策
- Gallup の飲酒率・IWSR・Circana のビール数量とシェア(ミケロブ・ウルトラとの差)
- 純負債 EBITDA 倍率と長期債の借り換え金利、自社株買いのペース
- ベラクルス新醸造所の稼働(2028 年 2 月期初)と設備投資
- ワイン・スピリッツの営業利益率と、SpikedAde など新分野の買収
倍率と資本コストの決め方
今の PER を見る前に、ビールとワイン・スピリッツに分けて、数量(米国のビール市場 25 億ケース × シェア)× 1 ケースの売上(年 +2.5%、会社の目標 1〜2% より上、物価 3.5% より下)× 営業利益率(35.5% 中立)で 10 年後の売上と利益を積み上げた。倍率は k 9.0%(基本 8.0% + quality +1.0%。負債の重さと価格の弱さ)、g(中立 0%)、ROE の式どおり(中立は g 0 なので下限の 1 ÷ k = 11.1 倍)。悲観側は稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置き、市場や過去の倍率は使っていない。悲観を厚くして(10 年で 42%)慎重側に寄せた。結論は今の株価に合わせたものではない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β 0.70 × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。ビールは景気後退でも数量が 0〜5% しか落ちない生活必需品だが、負債が重く、価格が物価に届かない恐れがある分を quality で上乗せした。縮む産業・一本足・ヒスパニック消費者への偏りは k に足さず、筋書き(数量・価格・利益率)と確率(悲観を厚く)、長期の g で表した。
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