結論
三谷商事は、福井を地盤に建設資材・燃料・ゴンドラ・ケーブルテレビ・車の販売・ソフト開発まで手がける複合商社である。筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、割安と言えるほどの余裕はない、というものだ。
稼ぐ力は上がっている。営業利益は10年で2倍近くになり、利益率は9.6%と過去最高だ。企業向けの建設資材、ゴンドラ、ODA(政府開発援助)の医療機器が、セグメント利益の約4分の3を稼ぐ。ただ、この利益率が10年続くとは見ない。燃料や建設資材は国内の人口減で数量が細り、ODAは案件の波が大きい。
時価総額の4割にあたる純現金も、この会社の特徴だ。会社自身が、実質現預金が事業の値段を上回ることを課題に挙げる。だが還元は配当性向35%前後と控えめで、自社株買いも10億円ほどにとどまる。筆者は、余った現金の半分だけを株主の取り分と数える。
中立の10年後は、営業利益が400億円前後、ROEは11%台に落ち着く。強い堀(他社がまねできない強み)があるわけではなく、評価が動く鍵は、現金の使い方が変わるかどうかである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くない会社を悪くない値段で持てるか、という見方になる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は大きい。投下資本は10年で年1.6%しか増えず、新しい投資は多く要らない。純利益の多くが現金として残る。ただ、その現金は貯まり続けている。
堀は、この会社の最も弱い所だ。地域に根づいた取引網には価値がある。だが、値段を自分で決められる事業は少ない。燃料や建設資材は市場の値段に従う。ゴンドラや情報システムのように利益率の高い事業はあるが、会社全体を支えるほどの大きさではない。
経営の資本の使い方は、評価が割れる。ROICの高さは評価できる。一方で、貯まる現金を事業にも株主にも回さない期間が長かった。配当を増やし始めた変化は前向きだ。
払う値段には、安全域が薄い。純現金は値段を下支えする。しかし、その現金が株主に戻るかどうかは、経営の判断次第だ。戻る保証のない現金を満額で数えることは、筆者はしない。
何で稼ぐ会社か
三谷商事は福井市に本社を置く商社である。売上3,390億円を、3つの事業で稼ぐ。
最大は企業サプライ関連で、売上は1,674億円、全体の約5割だ。セグメント利益は261億円と大きく、利益率は15.6%と高い。中身は雑多で、建設資材、ガソリンなど石油製品とLPガス、建設現場のゴンドラ、風力発電、スパイス、タイヤの卸、ODA関連の医療機器が並ぶ。近年はゴンドラ、ODA、スパイスが利益を押し上げた。一方、燃料とガスケットは数量が減っている。
生活・地域サービス関連は売上1,402億円で、利益率は2.9%と薄い。福井ケーブルテレビ、介護、トヨタ系のカーディーラー、ガソリンスタンド、生コン、LPガスと住宅設備が入る。最終消費者に近い分、地元の人口と景気にそのまま左右される。
情報システム関連は売上314億円と小さいが、利益率は16.8%と高い。情報機器の販売、ソフトの開発、保守サービスを担う。福井の情報処理センターに始まる、会社の古い事業でもある。
持分法適用の関連会社に、東証上場の三谷セキサンがある。議決権の約18.6%を、直接と合算で持つ。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、一つの大きな堀ではなく、事業の組み合わせにある。
強みは、地元に根を張った取引網と、利益率の高い小さな事業をいくつも持つ点だ。ゴンドラ、風力、スパイス、ODA関連の医療機器、情報システムは、それぞれ市場が小さい。だが競合が少なく、利益率は高めだ。資本の効率も良い。税引き後の事業の稼ぎを投下資本で割ったROICは、約30%ある。
財務も固い。自己資本比率は59%、純現金は1,070億円だ。景気が崩れても、会社が揺らぐ心配は小さい。
弱みは三つある。第一に、国内の数量だ。燃料も建設資材もケーブルテレビも、人口とともに細る。第二に、利益の波だ。ODAは前期の大口の反動で減益になった。ミャンマーなど途上国のリスクも付いて回る。第三に、成長の乏しさだ。投下資本は10年で年1.6%しか増えていない。利益の増加は、新しい投資よりも利益率の改善によるものだ。
筆者は、強い堀とまでは見ない。利益率が上がった分を、そのまま10年続く力とは数えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
三谷商事の稼ぎ場は、国内の建設、エネルギー、生活インフラ、企業のIT化である。成長市場はなく、数量は人口とともに細るのが基本だ。
建設資材は、公共工事とインフラ更新が下支えする。ただ住宅投資は人口減で縮み、価格は資材高の転嫁で支えている。燃料は、脱炭素と車の燃費改善でガソリンも灯油も量が減る。LPガスも同じ流れだ。競争は、地場の建材商社や石油元売りの特約店との値引き合戦になりやすい。筆者は、これらの数量が年1%前後ずつ細ると見る。
伸びる側にいるのは、ゴンドラ、風力、ITだ。人手不足で外壁の工事や点検の機械化が進み、ゴンドラの需要は続く。情報システムは、中小企業や自治体のIT化が追い風になる。ケーブルテレビは逆に、スマホと動画配信に押されて加入が細る。
景気の谷では、設備に近い商社の利益が大きく落ちる。2009年には、機械商社の受注が3〜5割減った。三谷は建設、燃料、生活が中心で振れは小さいが、ゴンドラとITは設備投資に連動する。
地方の商社は、再編の対象にもなりやすい。会社は大量買付けへの対応方針を2026年5月に更新し、守りを固めた。TOBで買われる可能性は低い。
資本政策と M&A
資本政策の最大の論点は、積み上がった現金である。
純現金は1,070億円で、時価総額の約4割に当たる。会社は、実質現預金がEV(時価総額に純負債を足した、事業の値段)を上回ることを課題に挙げる。それでも還元は控えめだ。2026年3月期の配当は前期から5割近く増えたが、配当性向は34.6%である。自社株買いは2026年8月に約10億円で、規模は小さい。
政策保有株は、上場32銘柄で約28億円と小さい。当期は上場4銘柄と非上場3銘柄を売った。資産の整理は進むが、利益や還元を大きく動かす額ではない。
買収では、目立つ大型案件が見当たらない。三谷セキサンの約18.6%の持分が、資産として残る。筆者が確認できた範囲では、数値目標を掲げた中期経営計画も見当たらない。数字に縛られない自由さは、現金の使い道が見えにくい弱みでもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率が構造的に上がった会社である。営業利益率は2015年3月期の3.8%から9.6%に上がった。ゴンドラ、風力、スパイス、ODAのような利益率の高い小さな事業が育ったからだ。企業サプライ関連だけで、セグメント利益は261億円ある。
人手不足は、これから10年続く。外壁の工事や点検は、人の手では回らなくなる。ゴンドラのように機械で置き換える需要は伸びる。情報システムも、中小企業や自治体のIT化で、利益率16%台が続く。
財務は、攻めにも守りにも強い。純現金は1,070億円、投下資本の利益率は約30%ある。会社自身が、現金が多すぎることを課題に挙げている。配当は前期から5割近く増え、自社株買いも動き出した。還元の姿勢が変わり始めたことは、評価の転機になりうる。
純現金が時価総額の4割を占めるので、下値も固い。還元が厚くなれば、事業の価値に現金の価値が上乗せされ、10年後の株主の取り分は大きく膨らむ。
慎重な見方
今の利益率は、10年続かない。企業サプライ関連の利益率は、2023年3月期の10.8%から15.6%まで上がった。ODAの大口案件やスパイスの値上げのように、一時的な要因が混じる。前期にはODAが反動で減益になったばかりだ。
数量は、人口とともに細る。生活・地域サービス関連の1,400億円は、ケーブルテレビ、ガソリン、車、介護と、どれも人口と脱炭素に逆らえない。連結の売上は、10年で年1.6%ずつ縮んだ(会計基準の変更の影響も含む)。
現金は、株主のものになるとは限らない。配当性向は35%前後で、自社株買いは10億円ほどだ。投下資本は10年で年1.6%しか増えず、買収も目立たない。現金が貯まるだけで、過去10年のROEの中央値は9.9%と、資本コストを少し上回る程度にとどまる。
三谷セキサンの持分や上場株の保有も、利益への貢献は小さい。純現金を時価総額の4割と見ても、使い道が決まるまでは見かけの強さにすぎない。
どちらに重みを置いたか
純現金と利益率の改善は本物で、悲観側に寄せすぎる理由はない。一方、数量が人口で細る事業が多く、堀も強くないので、楽観側にも寄せられない。中立を最も厚くし、やや楽観とやや悲観は同じ重さにした。現金の戻り方が不確かな分、楽観は小さめに置いた。悲観は、国内の人口減と脱炭素に高利益事業のつまずきが重なる構造的な負けとして、1割を残した。確率をやや悲観に厚くしたのは、利益率が過去最高にある今、戻る方向の力の方が強いと考えるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,957 円5,090 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,539 円1,315 億円)。 今の値に割り戻すと 4,126 円3,525 億円、今との差 +39.3%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,628 円8,227 億円 | 1,883 円1,609 億円 | +288.6% | +14.5% | 921 円787 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,031 円6,862 億円 | 1,710 円1,461 億円 | +228.8% | +12.6% | 2,143 円1,831 億円 |
| 中立 | 38% | 6,757 円5,774 億円 | 1,568 円1,340 億円 | +181.1% | +10.9% | 3,164 円2,703 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,130 円2,675 億円 | 1,363 円1,165 億円 | +51.7% | +4.3% | 989 円845 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,640 円1,402 億円 | 1,161 円992 億円 | −5.4% | −0.6% | 280 円239 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,957 円5,090 億円 | 1,539 円1,315 億円 | +153.1% | +9.7% | 7,496 円6,405 億円 |
今の株価時価総額 2,962 円2,531 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 人手不足と高利益の小事業が重なり、現金も還元に回る 利益 410 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 9,628 円8,227 億円
人手不足が10年続き、ゴンドラによる外壁工事や点検の機械化が定着する。風力と情報システムも伸び、企業サプライ関連と情報システム関連の利益率が高いまま、数量も増える。ODAの医療機器は新しい国と案件に広がり、一時的な反動を乗り越える。
生活・地域サービス関連は人口減で細るが、福井の事業の整理と値上げで利益率を保つ。営業利益は560億円前後と、今の1.7倍になる。
会社は貯まった現金を、成長への投資と還元にはっきり回す。配当性向と自社株買いが厚くなり、ROEは14%近くまで上がる。筆者は、この道が最も良い10年だと見るが、すべてが当たる必要がある。
- 企業サプライ関連事業:数量 9.2(取引先数(千社))× 価格 2,930(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 2,695 億円・営業利益 431 億円。数量1.15倍・価格1.40倍・利益率16.0%
- 生活・地域サービス関連事業:数量 118(顧客・取引先の接点数(千件))× 価格 157(1件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,841 億円・営業利益 64 億円。数量0.98倍・価格1.34倍・利益率3.5%
- 情報システム関連事業:数量 2.7(顧客数(千社))× 価格 2,199(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 594 億円・営業利益 104 億円。数量1.35倍・価格1.40倍・利益率17.5%
倍率:事業の純利益 401 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 19.01 倍、時価総額 8,227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ゴンドラ・ITの伸び、ODAの大口の継続、現金の積極還元がすべてそろう必要があり、連続で当たる確率は高くない。
やや楽観 22% 利益率は高止まりし、還元が少しずつ増える 利益 350 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 8,031 円6,862 億円
ゴンドラ、風力、情報システムは着実に伸び、企業サプライ関連の利益率は15%台を保つ。ODAは案件が入れ替わりながら続く。燃料と建設資材の数量は細るが、値上げと高付加価値品への切り替えで補う。
生活・地域サービス関連は、ケーブルテレビと燃料が細り、介護と車の整備で支える。利益率は薄いまま、横ばいに近い。
営業利益は470億円前後に増え、ROEは12%台になる。配当性向は4割台に上がり、自社株買いも続く。大きな買収はないが、現金の使い方は今より前向きになる。人口減の逆風は続くが、利益率の高い小さな事業が全体を押し上げる。物価の伸びに近い成長を、10年かけて着実に積み上げる姿である。
- 企業サプライ関連事業:数量 8.6(取引先数(千社))× 価格 2,846(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 2,436 億円・営業利益 365 億円。数量1.07倍・価格1.36倍・利益率15.0%
- 生活・地域サービス関連事業:数量 114(顧客・取引先の接点数(千件))× 価格 157(1件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,785 億円・営業利益 57 億円。数量0.95倍・価格1.34倍・利益率3.2%
- 情報システム関連事業:数量 2.5(顧客数(千社))× 価格 2,167(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 542 億円・営業利益 91 億円。数量1.25倍・価格1.38倍・利益率16.8%
倍率:事業の純利益 342 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 18.32 倍、時価総額 6,862 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の改善は実績があり、還元の増加も始まっている。上振れは十分にありうる。
中立 38% 中立:国内の数量は細り、利益率は少し下がる 利益 302 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 6,757 円5,774 億円
国内の数量は細る。燃料と建設資材は年1%前後ずつ減り、ケーブルテレビも加入が細る。一方、ゴンドラ、風力、情報システムが伸び、全体では企業サプライ関連の数量は横ばいを保つ。
企業サプライ関連の利益率は、ODAの大口の反動とスパイスの値上げの一巡で、15.6%から14%へ戻る。生活・地域サービス関連は3%、情報システム関連は16%が続く。営業利益は400億円前後と、物価の伸びを下回る。
会社は配当性向を3割台から4割台へ引き上げるが、現金は貯まり続ける。ROEは事業だけで見ると11%台に落ち着く。特別な上振れも、大きな失敗もない、会社の実力どおりの10年である。
- 企業サプライ関連事業:数量 8.0(取引先数(千社))× 価格 2,804(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 2,243 億円・営業利益 314 億円。数量1.00倍・価格1.34倍・利益率14.0%
- 生活・地域サービス関連事業:数量 112(顧客・取引先の接点数(千件))× 価格 157(1件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,747 億円・営業利益 52 億円。数量0.93倍・価格1.34倍・利益率3.0%
- 情報システム関連事業:数量 2.3(顧客数(千社))× 価格 2,104(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 484 億円・営業利益 77 億円。数量1.15倍・価格1.34倍・利益率16.0%
倍率:事業の純利益 294 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)600 億円。全体の PER 17.61 倍、時価総額 5,774 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量の減少と高利益事業の伸びが相殺する、最も起こりやすい姿。利益率は過去最高から少し戻ると置く。
やや悲観 22% 利益率が戻り、国内の数量も細る 利益 214 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 3,130 円2,675 億円
ODAの大口案件の反動が長引き、スパイスの値上げも一巡して、企業サプライ関連の利益率は11〜12%へ戻る。燃料と建設資材の数量は年1%を超えて減る。
生活・地域サービス関連は、ケーブルテレビの解約、ガソリンの縮小、車の販売減が重なり、利益率が2%台に下がる。情報システム関連は伸びが鈍る。
営業利益は280億円前後と、今を2割近く下回る。現金は貯まるが、還元は進まず、積み上がった現金は事業の稼ぎに寄与しない。ROEは8%台まで下がり、資本コストにわずかに届く程度になる。人口減の地方で、利益率の高い事業の一部が元の水準へ戻る。慎重な見方が当たれば、この姿が現実に近い。
- 企業サプライ関連事業:数量 7.2(取引先数(千社))× 価格 2,720(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,959 億円・営業利益 225 億円。数量0.90倍・価格1.30倍・利益率11.5%
- 生活・地域サービス関連事業:数量 102(顧客・取引先の接点数(千件))× 価格 152(1件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,549 億円・営業利益 34 億円。数量0.85倍・価格1.30倍・利益率2.2%
- 情報システム関連事業:数量 2.0(顧客数(千社))× 価格 2,042(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 408 億円・営業利益 57 億円。数量1.00倍・価格1.30倍・利益率14.0%
倍率:事業の純利益208億円(現金の利息を除く)・事業 ROE 8.3%。RONIC=k 7%+1/2×(ROE−k)=8.0%、g 4% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.4倍。利益率が戻り、稼ぎの質も落ちるので、上限から離した。上限の約8割の10.7倍に置いた。
確率:利益率の高い事業の一部が反動で落ち、国内の数量減が効く筋書き。慎重な見方の方が事業の構造をよく捉えており、やや厚く置いた。
悲観 10% 国内の需要が構造的に縮み、高利益の事業もつまずく 利益 127 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,640 円1,402 億円
国内の人口減と脱炭素が一気に効く。燃料と建設資材の数量が2割以上減り、メーカーの直販や大手との値引き合戦で、価格も物価に追いつかない。ゴンドラは競合が増え、ODAは途上国の政情不安で案件が止まる。
生活・地域サービス関連は、ケーブルテレビの解約と地方の人口減で、利益率が1%台に沈む。
営業利益は150億円前後まで落ちる。現金は積み上がるが、買収で失敗する分もあり、株主に戻る額は細る。もう優良な会社とは呼べなくなる、構造的な負けの10年である。純現金だけが残り、事業としての魅力は薄れる。株主への還元も、事業の縮小とともに先細りになる。
- 企業サプライ関連事業:数量 6.2(取引先数(千社))× 価格 2,511(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 1,567 億円・営業利益 133 億円。数量0.78倍・価格1.20倍・利益率8.5%
- 生活・地域サービス関連事業:数量 90.0(顧客・取引先の接点数(千件))× 価格 140(1件あたり年間売上(万円))→ 売上 1,262 億円・営業利益 19 億円。数量0.75倍・価格1.20倍・利益率1.5%
- 情報システム関連事業:数量 1.8(顧客数(千社))× 価格 1,884(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 339 億円・営業利益 37 億円。数量0.90倍・価格1.20倍・利益率11.0%
倍率:事業の純利益122億円・事業 ROE 5.1% は k 7% 以下なので、上限は 1÷k=12.9倍。事業の ROE が資本コストを下回る構造的な負け筋なので、上限 1÷k から大きく離した。上限の約7割の9.0倍に置いた。
確率:国内の人口減と脱炭素が重なり、高利益事業もつまずく複合の負け。10年なら無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
企業サプライ関連事業
建設資材・石油製品・LPガス・ゴンドラ・風力発電・スパイス・タイヤ卸・ODA関連の医療機器など、企業間の取引を主とする事業。
| 数量取引先数(千社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 2,093 | 1,674 | 261 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 2,804 | 2,243 | 314 |
取り方:建設資材・燃料・ゴンドラ・スパイス・医療機器など多品目の取引先を約8千社と推定し、2026年3月期の売上1,674億円から1社あたり年間売上を割り戻した。開示は取引先数でなく売上だけなので、数量は取引先数の推定で置いた。セグメント利益は261億円(利益率15.6%)。
生活・地域サービス関連事業
ケーブルテレビ・介護・カーディーラー・ガソリンスタンド・生コン・LPガスと住宅設備など、最終消費者に近い事業。
| 数量顧客・取引先の接点数(千件) | 価格1件あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 117 | 1,402 | 41 |
| 10 年後 中立 | 112 | 157 | 1,747 | 52 |
取り方:ケーブルテレビの加入世帯、車の購入客、給油客、介護の利用者、生コンの取引先などの接点を約12万件と推定し、売上1,402億円から1件あたりを割り戻した。実態は異なる事業の寄せ集めなので数量は代理の値である。セグメント利益は41億円(利益率2.9%)。
情報システム関連事業
情報機器の販売、ソフトウェア開発、保守サービス。福井の情報処理センターに始まる事業。
| 数量顧客数(千社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1,570 | 314 | 53 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 2,104 | 484 | 77 |
取り方:企業・自治体・学校などの顧客を約2千社と推定し、売上314億円から1社あたりを割り戻した。セグメント利益は53億円(利益率16.8%)。
リスクと懸念
ODAの大口案件の反動と途上国リスク
企業サプライ関連の利益には、ODA関連の医療機器の大口案件が含まれる。前期は販売が集中した反動で減益になった。案件は年ごとに波があり、ミャンマーなど途上国の政情不安で止まる恐れもある。高い利益率の一部が、一時的な利益である可能性がある。
燃料・LPガスの数量減
脱炭素と車の燃費改善で、ガソリンや灯油、LPガスの数量は構造的に減る。企業サプライ関連の燃料卸と、生活・地域サービス関連のガソリンスタンドの両方に効く。数量の減少が値上げで補えなければ、両方の利益が同時に削られる。
地方の人口減と生活関連事業の縮小
生活・地域サービス関連は売上1,402億円で、ケーブルテレビ、介護、車の販売、ガソリンが中心だ。福井を含む地方の人口減は、どの事業の数量にも効く。利益率が2.9%と薄いので、わずかな売上減でも利益は大きく減る。
景気後退と建設・設備投資の落ち込み
建設資材とゴンドラは、建設投資と設備投資に連動する。景気後退や金利上昇で工事が止まれば、数量と値段の両方に響く。2009年には機械商社の受注が3〜5割減った。三谷は事業が分散しているが、両方が同時に落ちる局面は避けられない。
現金が貯まるだけで株主に戻らない恐れ
純現金は時価総額の約4割あるが、配当性向は35%前後で、自社株買いも10億円ほどだ。数値目標を掲げた中期計画も確認できなかった。買収防衛策も更新しており、現金の使い方が変わらなければ、事業の価値の上乗せ分が株価に現れにくい。
リースと投資の備えが見かけの強さを削る
純現金は借入を引いた額であり、ケーブルテレビや風力の設備投資、ガソリンスタンドの修繕、ゴンドラの保有など、先に出ていく現金がある。新しいリース会計は2028年3月期から貸借対照表に載り、数字の形が変わる。純現金を見かけどおりの強さと数えると、過大になる。
今後の分かれ目
- ODA関連の医療機器の売上が、大口案件の反動のあとも増えたら
- 企業サプライ関連の利益率の前提を上げ、やや楽観側に確率を寄せる。
- 配当性向が4割を超え、自社株買いが数十億円規模に増えたら
- 余った現金の戻り方の見立てを上げ、評価を引き上げる。
- 企業サプライ関連の利益率が、14%を下回って下がり続けたら
- スパイスやODAの一時的な要因が剥げたと見て、やや悲観側に確率を寄せる。
- 燃料とLPガスの数量が年2%を超えて減り続けたら
- 生活・地域サービス関連の前提を下げ、悲観側の確率を上げる。
- ゴンドラの受注が景気の落ち込みで急減したら
- 設備投資に近い事業の見方を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 数十億円を超える買収を、利益率の低い事業に使ったら
- 資本の使い方への評価を下げ、余った現金の戻り方を見直す。
見ておくもの
- 企業サプライ関連の利益率と、ゴンドラ・ODA・スパイスの動き
- 配当性向と自社株買いの規模
- 燃料・LPガスの数量
- 生活・地域サービス関連の利益率
- 情報システム関連の売上の伸び
- 純現金の推移と買収の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は、k 7% と事業のROEから出した正当化PERの上限に対し、強い堀がないことを踏まえて7〜9割で置いた。現金は事業の利益と分け、戻り方0.5で足した。今の株価や過去の倍率は倍率の根拠にしていない。新リース会計は2028年3月期から数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.1→19.01 倍・やや楽観 PER 14.2→18.32 倍・中立 PER 13.1→17.61 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.00%。