結論
積水樹脂は、道路まわりの防音壁・防護柵・標識と、民間向けのフェンスや包装機を作る樹脂加工の会社だ。筆者の結論は、事業の質は悪くないが、今の値段は事業の稼ぐ力を先取りしすぎている、というものだ。
一番の理由は資本効率の低さだ。自己資本は約 1,000 億円あるのに、純利益は 40 億円前後にとどまる。ROE は 4% で、資本コストの 7.5% に届かない。ためた利益が株主のために働いていない。会社は中期計画で営業利益 130 億円を掲げるが、今期の計画は 63 億円以上と、その半分だ。
良い材料もある。高速道路向けの防音壁は好調で、スポーツ用の人工芝も大きく伸びた。直近の四半期は営業利益が 6 割増えた。借金はほぼ無く、増配も 17 期続いている。
それでも、10 年先を数量と値段から積むと、中立の営業利益は 100 億円前後になる。ROE は 6% 台にとどまり、資本コストを超えにくい。割り引いた価値は、今の時価総額を 3 割ほど下回る。ただし、利益率が昔の水準へ戻る筋書きも十分にあり、確率はその分厚く置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の魅力は「長持ちする地味な製品」と「無理のない財務」だ。防音壁や防護柵は、一度立てれば何十年も使われ、そこに更新と追加の需要が続く。借金がなく、増配も続く。ここは評価できる。
一方で、オーナーとして持ち続けたいかと言われると、資本の使い方に不満が残る。自己資本の 1,000 億円は、のれんと持ち合い株と現金に分かれ、稼ぐ部分が薄い。営業利益率が 7% 台まで落ちたのも気になる。買収で規模は増えたが、利益は規模ほど増えていない。
筆者は、値段を決める力が強くない事業に、高い倍率を払うのは危ういと考える。ROE が資本コストを超えるまでは、会社の価値は純利益を 13 倍前後で評価するのが限度だ。
安全域もない。今の値段は、利益率が昔の水準に戻ることをかなり織り込んでいる。戻れば報われるが、戻らなければ損をする。わかりやすい事業ではあるが、払う値段の側に余裕がない。
何で稼ぐ会社か
積水樹脂は、押出成形という樹脂を細長く成形する技術を軸にした会社だ。決算は公共分野と民間分野の 2 つに分かれる。
公共分野は売上の約半分(416 億円)を占める。高速道路や鉄道に立つ防音壁、車線を分ける柱、防護柵、道路標識、路面標示材が中心だ。スポーツ用の人工芝も公共分野に入る。顧客は道路会社や自治体だが、実際の販売は代理店と施工業者を通る。製品は設計や仕様に組み込まれるため、一度採用されると同じ製品が使われやすい。欧州ではドイツの道路保安用品メーカー WEMAS を傘下に持つ。
民間分野は売上の 366 億円で、利益はこちらのほうが厚い(営業利益 39 億円)。メッシュフェンス、目隠し塀、戸建て向けの外構、野菜の袋詰めなどに使うストレッチフィルム包装機、農業資材、結束バンドを扱う。顧客は施工業者・商社・代理店だ。
2024 年に防雪・防風製品の理研興業を完全子会社にし、2026 年 10 月には韓国の道路安全用品会社 Hi-Q(ベトナムに工場を持つ)を約 68 億円で取得した。国内の公共需要を土台に、アジアと欧州へ広げる構えだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、公共分野の「仕様に入っていること」と、施工まで含めた提案力にある。防音壁は会社自身が国内シェアは大きいと語る分野で、押出成形の設計力が効く。ただし市場シェアの数字は開示されておらず、強みの大きさは数字で示せない。
一方で、値段を自分で決められる会社ではない。公共の仕事は入札や予算の枠がある。民間のフェンスは LIXIL や日鉄建材など競合が多い。防護柵では浅野金属工業なども並ぶ。強い堀とは言えず、普通の堀と見る。
弱みは資本効率だ。のれんが 123 億円、投資有価証券が 173 億円あり、自己資本の厚い部分が稼いでいない。営業利益率は 2022 年 3 月期の 16.5% から 7% 台まで落ちた。原因は輸送費などのコスト増と、取得した会社の利益率の低さだ。
経営は資本効率を直す姿勢を見せている。政策保有株は縮減を進め、今期は約 3 割減らす計画だ。その売却代金を還元に回している点は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
公共分野の需要は、道路・鉄道・都市のインフラ予算に連なる。新しく作る分は人口減で細るが、老朽化した設備の更新と、騒音・防災・安全への対応は積み上がる。直近でも、高速道路向けの防音壁材が好調だった。路面標示材も増収増益だった。交通安全製品は減益で、ここは競争と原価の影響が出ている。
注目は人工芝で、決算説明では大幅に伸びたとされる。学校やスポーツ施設の更新が背景にあるとみられる。自動運転や、電波を通す透明な素材といった新しい用途も、会社は重点分野に置く。
民間分野は住宅の戸数に左右される。戸建て向け外構は減収減益だった。人口が減る国内で、住宅まわりの数量は伸びにくい。一方、目隠し塀、防音目隠し塀、ストレッチフィルム包装機、農業資材は伸びている。
海外は、ドイツの WEMAS を取り込んだ欧州が増収増益だ。アジアでは仮設資材と交通安全が狙いで、Hi-Q の取得もその一環だ。ただし海外売上の目標(200 億円以上)はまだ遠い。競合は、防護柵では浅野金属工業、フェンスでは LIXIL・日鉄建材、防音壁では日鉄神鋼建材などがあげられる。
資本政策と M&A
還元は厚い。中期計画では、総還元性向 100% 以上を 2027 年 3 月期まで続け、配当は累進配当(減らさない)で、配当性向 40% 以上を 2030 年 3 月期まで守る。今期の配当は 17 期連続の増配で、来期は大きな増配を見込む。自社株買いの枠も 27 億円ある。
ただ、純利益に対して配当が重く、自己資本は思うほど減らない。その分 ROE は上がりにくい。
政策保有株は 2027 年 3 月期に約 3 割減らす計画で、2026 年 9 月には四国化成ホールディングスの全株を売った。売却益は特別利益になるが、価値としては含み益が現金に変わるだけだ。
M&A は中期計画で 100 億円の枠がある。前の計画では 50 億円の目標に対して 180 億円を使い、WEMAS とエクスタイルを取得した。今回の Hi-Q は約 68 億円だ。買収の価格が妥当か、取得後に利益率が上がるかは、これから 3〜5 年で確かめる段階にある。買われる側になる可能性は、積水化学工業が 5% 前後の株主として見える程度で、特別高いとは見ない。
10年の還元は、総還元性向100%以上(2027年3月期まで)のあと配当性向40%以上の累進配当に戻る前提で、中立は純利益の75%。純利益を超えないので、余った現金は別に足してよい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共のインフラ更新が追い風になる。道路や橋の老朽化は進み、騒音対策・防災・交通安全への投資は増え続ける。高速道路向けの防音壁はすでに好調で、人工芝も伸びている。この流れが続けば、公共分野の数量は 10 年で 4 割増える。
欧州と韓国・ベトナムに手を広げたことも大きい。WEMAS は増収増益で、Hi-Q が加われば、アジアで同じ品質の交通安全製品を作って売れる。海外売上 200 億円の目標も現実味を帯びる。
利益率は戻る。原価の上昇は値上げで吸収でき、のれんの償却が終われば利益を押し下げる要因が減る。直近の四半期は営業利益が 6 割増えた。民間分野はもともと利益率が 10% を超え、包装機や農業資材は伸びている。中期計画の営業利益 130 億円は、数年遅れで届く。
財務も軽い。純現金で、政策保有株を売った資金で還元を厚くできる。ROE が 8% を超えれば、資本コストを超える会社として評価が変わる。
慎重な見方
資本効率の悪さは構造的だ。自己資本が 1,000 億円あるのに純利益は 40 億円で、ROE は資本コストの半分ほどだ。会社が掲げた営業利益 130 億円は、今期の計画 63 億円の 2 倍で、現実的ではない。
公共分野は予算と入札に縛られ、値段を決める力が弱い。交通安全製品は減益で、競争と原価に押されている。人口が減る国内の道路新設は先細り、更新需要の規模は予算次第だ。
買収も不安だ。のれんはすでに 123 億円あり、Hi-Q の約 68 億円が加わる。WEMAS や理研興業が売上を押し上げた一方で、利益率はむしろ下がった。取得した会社の利益が思ったほど出なければ、のれんの減損が出る。
民間分野は、人口減で戸建て外構が縮み、フェンスは価格競争が強い。輸送費や人件費の上昇も続く。ROE が資本コストを超えない限り、ためた利益は割り引かれる。今の時価総額は、昔の利益率が戻ることを前提にしており、安全域がない。
どちらに重みを置いたか
どちらも一理あるが、資本効率という構造の弱さは強気では消せない。ROE が資本コストを下回る限り、倍率は 1÷k の約 13 倍が天井になる。この点で、慎重な見方が強い。
その一方で、利益率が昔の水準へ戻る可能性は小さくない。直近の四半期の伸びと、のれん償却の減り方を考えると、中立より上の筋書きにも十分な確率を置いた。確率は楽観を 8%、やや楽観を 20% とし、全体は慎重寄りの中立にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,254 円978 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,275 円383 億円)。 今の値に割り戻すと 2,563 円770 億円、今との差 −17.1%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,394 円1,921 億円 | 1,561 円469 億円 | +157.4% | +9.9% | 636 円191 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,370 円1,313 億円 | 1,394 円419 億円 | +86.6% | +6.4% | 1,153 円346 億円 |
| 中立 | 40% | 3,434 円1,032 億円 | 1,368 円411 億円 | +55.4% | +4.5% | 1,921 円577 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,677 円504 億円 | 1,245 円374 億円 | −5.5% | −0.6% | 643 円193 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,255 円377 億円 | 499 円150 億円 | −43.2% | −5.5% | 175 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,254 円978 億円 | 1,275 円383 億円 | +46.5% | +3.9% | 4,528 円1,361 億円 |
今の株価時価総額 3,090 円929 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 更新需要と海外が重なり、利益率が昔に戻る 利益 116 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 6,394 円1,921 億円
道路や橋の更新と防災投資が続き、公共分野の数量は 10 年で 4 割強増える。欧州の WEMAS に加えて、韓国とベトナムの Hi-Q が収益に乗り、アジアで交通安全製品を現地生産して売る形が定着する。
民間分野は、外構の縮みを包装機と農業資材が打ち返し、数量は今より少し増える。値上げが定着し、原価の上昇を価格に移せる。のれんの償却が終わりに近づき、営業利益率は 12% 前後まで戻る。
営業利益は 160 億円を超え、中期計画の 130 億円を数年遅れで超える姿だ。ROE は 9% 近くまで上がり、資本コストを上回る会社として見られる。還元は続け、政策保有株の売却資金も株主へ回る。
- 公共分野:数量 60,320(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 845 億円・営業利益 101 億円。欧州・アジアの拡大と防災製品で公共が伸びる
- 民間分野:数量 40,260(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 564 億円・営業利益 79 億円。値上げが定着し外構以外の包装機・農業資材が伸びる
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 16.22 倍、時価総額 1,921 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の更新需要・海外の拡大・値上げの定着・のれん償却の減少がそろう組み合わせ。条件が重なるので確率は低めにした。
やや楽観 20% 更新需要が支え、利益率が少しずつ戻る 利益 87 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 4,370 円1,313 億円
公共分野は、高速道路の更新と人工芝・防音壁の需要で数量が 3 割近く増える。欧州の増益が続き、アジアも少しずつ収益に乗る。民間分野は外構の縮みを包装機とフェンスが補い、数量はほぼ横ばいだ。
値上げは物価並みに通り、営業利益率は 10% 前後まで戻る。営業利益は 120 億円台に届くが、中期計画の水準にはまだ遠い。買収したのれんは償却が進み、利益の重しが軽くなる。
ROE は 7% 台で、資本コストに届くか届かないかの水準にとどまる。増配は続くが、自己資本の厚さは変わらず、倍率は大きくは上がらない。
- 公共分野:数量 53,248(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.37(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 730 億円・営業利益 73 億円。高速道路の更新と海外が数量を押し上げる
- 民間分野:数量 37,698(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 513 億円・営業利益 64 億円。外構の縮みを包装機・フェンスが補う
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 14.7 倍、時価総額 1,313 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の更新と海外の拡大が進み、利益率が昔の水準の途中まで戻る姿。中立より少し良い結果として、楽観より厚い確率を置いた。
中立 40% 更新需要が支え、利益率は 9% 程度に戻る 利益 70 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,434 円1,032 億円
公共分野の数量は 10 年で 1 割強増える。老朽化した設備の更新と、取得した海外会社(WEMAS・Hi-Q)の分が増分の中心だ。国内の新設は縮み、人口減の影響は更新需要が相殺する。民間分野は、戸建て外構が縮み、数量は 3% ほど減る。
値上げは物価並みに通る。営業利益率は、公共で 8.5%、民間で 12% 程度まで戻る。のれん償却が減り、値上げが定着するからだ。ただし昔の 15% には届かない。取得した会社の利益率が低く、原価や人件費の上昇も続く。
営業利益は 100 億円前後で、中期計画の水準には届かない。ROE は 6% 台にとどまる。増配と自社株買いは続き、自己資本はあまり増えない。
- 公共分野:数量 47,840(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 641 億円・営業利益 55 億円。更新需要と取得した海外会社で数量は 1 割強増える
- 民間分野:数量 35,502(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 476 億円・営業利益 57 億円。人口減で住宅外構は縮むがフェンス・包装機が支える
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 1,032 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の更新需要と人口減による民間の縮みが拮抗し、買収の効果が一部だけ出る姿。慎重な見方が強いことを踏まえて、確率はやや低めにとどめた。
やや悲観 22% 予算の伸びが鈍く、値上げが通らない 利益 43 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,677 円504 億円
公共分野は、予算の枠が伸びず数量が横ばいになる。入札では値下げ圧力が強く、価格は物価に追いつかない。交通安全製品は競争に押される。取得した海外会社の利益率も上がらない。
民間分野は、人口減で戸建て外構が縮み、フェンスは安い輸入品との競争が強まる。数量は 15% 減り、値上げは物価ほど通らない。
営業利益は 60 億円前後で、今とほぼ変わらない。ROE は 4% 台にとどまる。のれんの一部が減損になり、増配は続けても、中計の ROE 8% は遠のく。
経営は政策保有株の売却と自社株買いで資本効率を直そうとするが、利益そのものが増えないため、効果は限られる。人口が減る国内に頼る構図は変わらず、海外の売上も目標の 200 億円には届かないまま、10 年が過ぎる。
- 公共分野:数量 41,600(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 541 億円・営業利益 38 億円。予算の伸びが鈍く入札で値が上がらない
- 民間分野:数量 31,110(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.28(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 398 億円・営業利益 36 億円。住宅外構の縮みと競争で値上げが通らない
倍率:事業の ROE 4.4% は k 7% 以下なので、PER は 1÷k=13.3 倍が上限(ためた利益は元の額に届かない)。利益が細り、のれんの減損リスクも残るので、やや悲観は上限の8.2割の 11 倍に置いた。時価総額は(純利益 43 − 余った現金 90 億の税後利息)× PER + 余った現金 × 戻り方。
確率:公共予算の伸びが鈍り、競争で値上げが通らず、買収の効果も出ない姿。ROE が低いままという懸念を踏まえて、確率を厚めに置いた。
悲観 10% 公共予算が絞られ、買収も不発で構造的に負ける 利益 9 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,255 円377 億円
公共予算が絞られ、防音壁・防護柵の数量が 15% 減る。入札で値下げ圧力が強まり、価格は物価に大きく遅れる。WEMAS や Hi-Q の買収は利益が出ず、のれんの大部分を減損する。
民間分野は、戸建て外構が急速に縮み、安い輸入品がフェンス市場を取る。数量は 3 割減り、値上げはほとんど通らない。
営業利益は 15 億円ほどに落ち、もはや優良な会社とは言えない。残る価値は、政策保有株と土地・設備・在庫を売って得られる資産だ。増配は途絶え、経営は事業の入れ替えを迫られる。
財務は軽いので存続の不安はない。ただ、のれんの大部分を減損し、自己資本は薄くなる。今の自己資本の 4 割ほどの値段が、売れる資産から見た床になる。
- 公共分野:数量 35,360(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 424 億円・営業利益 13 億円。公共予算が絞られ海外の買収も不発
- 民間分野:数量 25,620(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.15(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 295 億円・営業利益 15 億円。外構・フェンスは安価な品に置き換わる
倍率:10 年の構造的に負ける筋書き。純利益は 10 億円ほどに細り、稼ぐ力(純利益÷k)は 140 億円未満にとどまる。稼ぐ力でなく、売れる資産で測る。今の自己資本 992 億円のうち、売却できる分を約 380 億円とみて、今の自己資本に 0.38 倍を掛けた。
確率:公共予算の縮小・価格競争・買収の失敗・住宅外構の急減が重なる、優良さが失われた 10 年。公共が予算と入札に縛られ、買収のれんが大きいことを踏まえて 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共分野
高速道路・鉄道の防音壁、防護柵、道路標識・路面標示材、交通安全製品、スポーツ用人工芝、欧州の道路保安用品を扱う。顧客は道路会社・自治体で、代理店と施工業者を通して売る。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 41,600 | 1.00 | 416 | 27 |
| 10 年後 中立 | 47,840 | 1.34 | 641 | 55 |
取り方:公共分野の 2026 年 3 月期売上 416 億円は、対象市場(国内の防音壁・防護柵・標識標示・交通安全・人工芝、欧州の道路保安、アジアの交通安全)の実質規模を約 5,000 億円と推定し、シェア約 8.3% で割り戻した。開示が無いため、数量は市場規模(億円)× シェア(%)の推定値で、シェアは数量の側に置き、価格は値段の指数とした。
民間分野
メッシュフェンス、目隠し塀、戸建て外構、ストレッチフィルム包装機、農業資材、結束バンドを扱う。顧客は施工業者・商社・代理店。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36,600 | 1.00 | 366 | 39 |
| 10 年後 中立 | 35,502 | 1.34 | 476 | 57 |
取り方:民間分野の 2026 年 3 月期売上 366 億円は、対象市場(国内のメッシュフェンス・目隠し塀・戸建て外構・包装機・農業資材・結束バンド)の実質規模を約 4,500 億円と推定し、シェア約 8.1% で割り戻した。開示が無いため推定で、シェアは数量の側に置き、価格は値段の指数とした。
リスクと懸念
資本効率が低いまま続く
自己資本 1,000 億円に対し純利益は 40 億円前後で、ROE は 4% にとどまる。中期計画の ROE 8% には届かず、利益率が戻らなければ、ためた利益が株主のために働かない状態が長く続く。倍率の天井は 13 倍ほどにとどまる。
公共の予算と入札に縛られる
公共分野は売上の半分を占め、道路会社・自治体の予算と入札に左右される。値段を自分で決める力が弱く、交通安全製品は減益だった。予算が絞られると、数量と価格の両方が下がる。
買収ののれんと減損
のれんは 123 億円あり、Hi-Q の約 68 億円が加わる。WEMAS や理研興業は売上を押し上げたが、利益率は下がった。取得した会社の利益が計画に届かなければ、減損で自己資本と利益が削られる。
国内の人口減と住宅需要の縮み
民間分野は戸建て外構が減収減益で、フェンス・目隠し塀も住宅の戸数に連なる。人口が減る国内で、数量は伸びにくい。包装機や農業資材が補えるかが分かれ目になる。
輸送費・原材料・人件費の上昇
営業利益率は 16.5% から 7% 台に落ち、輸送コストの増加が減益要因にあがった。樹脂原料の値上がりを価格に移せなければ、利益が削られる。物価が 3% で上がる世界では、価格転嫁の速さが利益率を左右する。
海外展開の実行力
海外売上は 200 億円以上を目標にするが、まだ遠い。欧州は増収増益だが、アジアは立ち上げの段階だ。言葉・商習慣・規格の違いで、日本のやり方がそのまま通るとは限らない。
今後の分かれ目
- 高速道路の防音壁や人工芝の受注が 2〜3 年続けて伸びる
- 公共分野の数量が積み上がり、利益率の回復が早まる。強気の筋書きに近づく。
- のれんの減損が出る
- 買収の価値が壊れたことになり、自己資本と利益が削られる。慎重な筋書きの確率が上がる。
- 営業利益率が 3 年以内に 10% を超える
- 利益率が昔に戻る道筋が見え、ROE が資本コストを超える可能性が出る。倍率の評価が上がる。
- 政策保有株の売却資金で大規模な自社株買いが行われる
- 自己資本が減って ROE が上がる。利益は変わらないが、一株あたりの価値は増す。
- 公共予算が大きく削られる
- 公共分野の数量と価格が同時に下がり、慎重な筋書きに近づく。
- Hi-Q の取り込みが計画通りに進み、アジアの売上が伸びる
- 海外売上の目標に近づき、数量の伸びが上振れする。
見ておくもの
- 公共分野と民間分野の営業利益率(のれん償却前後)
- 防音壁・人工芝・路面標示材の受注の伸び
- Hi-Q・WEMAS の売上と利益率
- 政策保有株の売却額と自社株買いの規模
- のれんの減損の有無
- 中期計画の営業利益 130 億円目標に対する進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見る前に、セグメントごとの市場規模×シェアと値段の指数から利益を積み、ROE と資本コスト 7% から上限(ROE が k 以下なら 1÷k)を求めて置いた。結果が割高に出たのは、自己資本が厚くて ROE が資本コストに届かないためで、今の株価の高さに合わせたわけではない。悲観は過去の PBR の底ではなく、投資有価証券や設備の売却価値から置いた。新リース会計は 2028 年 3 月期から数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形(家賃を費用に入れる形)で置いた。 持ち合い株の含み益は、有報の「その他有価証券評価差額金」(税後)45 億円を余った現金として戻り方 0.5 で足した(取得原価の分は足さない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→16.22 倍・やや楽観 PER 12.5→14.7 倍・中立 PER 12→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。