結論
大垣共立銀行は、岐阜県大垣市を地盤に岐阜・愛知・三重・滋賀へ店を持つ地方銀行である。貸出は約 4.6 兆円、預金は約 5.9 兆円で、預金が貸出を大きく上回る預金超過の銀行だ。
筆者の結論は、今の値段は 10 年先の価値に比べて高い、というものだ。市場は最近の増益と金利のある世界への期待を織り込んでいる。だが、この銀行は利益に比べて自己資本が厚く、コスト率も高い。利ざやが広がっても、稼ぐ力が資本コストを超える姿は 10 年の中心には描けない。
足元の数字は見た目より強い。2026 年 3 月期の純利益は 194 億円だが、経常利益は 221 億円で、税の負担が軽かった分が乗っている。来期の会社予想は経常 305 億円、純利益 206 億円で、こちらのほうが実力に近い。
政策保有株の圧縮、事業承継・M&A の助言、市場運用の立て直しという中期経営計画の方向は正しい。それでも地盤の岐阜は人口が減る。名古屋圏と近隣の統合行に挟まれ、規模の不利も残る。中立の 10 年後の ROE は 6% 前後、資本コスト 8.3% には届かない。
見ておきたいのは大株主の動きだ。ありあけキャピタルが保有を 9.6% まで積み上げており、還元や資本政策への働きかけが始まれば、この見立ては上へ動く余地がある。
バリュー投資の観点から
この銀行を長く持ちたいかと問われれば、答えは割安になったときだけ、となる。
事業は分かりやすい。預金を集め、貸し出し、利ざやを得る。金利のある世界では利ざやが広がり、預金の厚さが強みになる。この点は評価できる。
だが、バリュー投資の観点で見るべきは、株主のものになる利益と、その利益が資本に対してどれだけ稼げるかだ。ROE は 5% 台で、資本コストの 8% を大きく下回る。利益をためても価値は増えにくく、むしろ還元に回してほしい。総還元性向 30% の目標は、その点で物足りない。
堀は並みで、地盤の人口は減り、近隣では統合が進む。強気に傾けない理由がここにある。
安全域の面では、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額を大きく下回る。今の値段には、金利上昇の恩恵がすでに相当入っている。見通しが外れた時の下値の守りは薄い。
一方、ROE が資本コストに近づく展開が来れば、見立ては大きく変わる。その分かれ目を決めるのは、コスト率と還元だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、地元の企業と家計から預かった預金を貸し出し、その利ざやを得ることだ。貸出金は約 4.6 兆円で、中小・中堅企業向けが約 3 分の 2、住宅ローンなどの個人向けが約 3 分の 1 を占める。預金は貸出より約 1.3 兆円多く、余った資金は有価証券で運用する。
有価証券は約 1.1 兆円。国債・外債・株式・投信で構成する。外債は海外の短期金利が上がると外貨調達コストが重くなり、利益を押し下げてきた。そのため中期経営計画のもとで外債の残高を減らし、金利リスクも縮めている。
貸出に頼らない収益として、投信・保険・証券の預かり資産、決済、法人向けの事業承継や M&A の助言がある。事業承継・M&A の専担者を 7 人から 12 人へ増やし、M&A 手数料を 1.5 倍以上にする目標を掲げる。グループには OKB 証券、OKB キャピタル、共友リース、OKB 信用保証などがある。
店舗は岐阜・愛知を中心に多く、窓口機能に絞った軽量店を試し、事務は本部へ集約している。コストを減らす途上にあり、この改革が利益率を決める。
優良さと弱いところ
強みは地盤の深さと、預金の厚さである。岐阜県西部の大垣を本拠に、長年かけて築いた個人・中小企業の取引があり、預金は貸出の 1.3 倍近い。預金で貸出をまかなえるため、金利が上がる局面で調達に困らない。JCR の格付けは A で、見通しは安定的だ。
弱みは三つある。一つ目は利益に比べて自己資本が厚く、ROE が低いことだ。過去 10 年の ROE の中央値は 3% で、今期の見込みでも 5〜6% にとどまる。二つ目はコスト率の高さである。中期経営計画の目標でもコアの経費率は 75% 以下で、大手地銀より高い。三つ目は自己資本比率が 5% 台と薄いことだ。含み益を含む純資産がこの水準で、株式や債券の値下がりが資本に響きやすい。
堀は並みだ。県内の取引は粘るが、貸出の金利を自分で決められるほどではない。岐阜の人口は減り、名古屋圏の大手行は近く、近隣では統合が進む。強い堀とは言えず、残る割合は普通の 1/2 とみる。
経営は資本配分の改善に動いている。政策保有株は時価ベースで連結純資産比 29% から 20% 程度へ縮め、総還元性向 30% を目標にする。ただし 30% は低めで、資本を厚く持つ銀行としては物足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
金利のある世界は、地方銀行にとって 20 年ぶりの追い風だ。短期金利が 2% へ向かう間、貸出金利は変動金利の貸出を中心にほぼ追随する。預金金利は一部しか上がらない。差の分だけ利ざやが広がる。大垣共立銀行も 2027 年 3 月期に経常利益が約 4 割増える予想を出している。
一方で、地域の貸出需要は伸びない。岐阜県は人口が減り、事業所数も細る。名目で 2% 台の貸出の伸びが精いっぱいで、量で稼ぐ時代ではない。広がった利ざやの一部は、預金の獲得競争で預金者へ戻る。
再編が競争の形を変える。しずおか FG と名古屋銀行、千葉銀行と千葉興業銀行が統合に動き、りそなと十六 FG の関係も取りざたされる。近隣で十六 FG などが規模を得ると、貸出と IT 投資の両面で単独経営の不利が強まる。逆に、大垣共立銀行は統合の相手として名前が挙がる可能性がある。
名古屋圏にはメガバンクと名古屋銀行、あいち FG がいる。法人向けの高い利ざやを狙える一方、競争も厳しい。手数料の分野では NISA の拡大と相続の増加が追い風だが、ネット証券との競争がある。
大手行の動きも見逃せない。メガバンクが地方の優良企業を取りに来れば、利ざやの上昇は思うほど続かない。
資本政策と M&A
還元は安定配当を基本に、総還元性向 30% を目標とする(直近 5 年の実績は 3 割台前半。10 年の中立もそれに近い 35% に置いた)。業績と自己資本比率を見て自社株買いを足す方針だが、自己資本比率 5% 台では、手厚い還元には慎重にならざるをえない。2026 年 10 月には 1 株を 5 株に分ける株式分割を行った。
政策保有株は時価ベースで連結純資産比 29% あり、2027 年 3 月末までに 20% 程度へ縮める計画だ。保有銘柄は 235 から 216 へ減った。売却益は一時の増益になるが、資本効率の改善に使えるかが問われる。
再編については、自ら動くより、動かれる側に回る公算が大きい。TOB・買収の確率の推定は 10 年以内で 15.6%。株主では、地方銀行の投資に特化するありあけキャピタルが 2025 年末から買い増しを続け、2026 年 10 月に 9.59% に達した。保有の目的や具体的な提案は確認できていない。
ガバナンスの要点は、この株主が何を求めるかだ。資本政策や統合に関する提案が出れば、市場はそこに反応する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利は 2% へ向かい、貸出の利ざやは構造的に広がる。大垣共立銀行は預金が貸出の 1.3 倍近くあり、調達で苦労しない。預金の粘りが強ければ、預金金利の上げは小さく、利ざやの広がりは大きい。会社の予想でも来期の経常利益は約 4 割増える。
中期経営計画の打ち手も効き始めている。事業承継・M&A の専担者を増やし、手数料収益を伸ばす。外債の残高を減らして外貨調達コストの重しを外し、国内債の利回り上昇を取り込む。エリア制と軽量店、事務の集約でコスト率も下がる。政策保有株は計画どおり圧縮され、売却益と余力が資本の厚みと自社株買いに回る。
近隣の統合の波は、むしろ味方になりうる。統合する側は IT とシステムの統合に数年を費やす。その間に、顧客の取引を取り込める。単独でも、地元の取引が粘るなら十分に戦える。
さらに、ありあけキャピタルのような大株主が資本効率の改善を後押しすれば、還元は計画以上に厚くなる。ROE が資本コストに近づけば、倍率は今より上がる余地が大きい。
慎重な見方
ROE は 5% 台で、資本コストの 8% に遠い。利ざやが広がっても、預金獲得の競争で預金者へ戻る分があり、利益の増え方は思うほど大きくない。2026 年 3 月期の純利益 194 億円は税の戻りが乗っており、実力は経常利益 221 億円から見た 150 億円前後だ。
地盤の岐阜は人口が減り、貸出需要は伸びない。名古屋圏にはメガバンクがおり、近隣では十六 FG やしずおか FG と名古屋銀行が統合で規模を得る。単独の規模で IT 投資と店舗網を維持するのは重く、コスト率は下がりにくい。中期経営計画の経費率目標も、大手地銀並みとは言えない水準だ。
自己資本比率は 5% 台と薄い。株式と債券の値下がりが資本に直結し、還元は抑えられる。総還元性向 30% の目標は低く、株主へ戻る額は小さい。外債は残高を減らしたが、評価損の危うさは残る。
市場は金利上昇の恩恵を織り込み、今の値段は予想利益に対して高い。ROE がこの先も資本コストを下回るなら、PBR 1 倍は遠い。
どちらに重みを置いたか
金利上昇の追い風は本物で、強気の見方の指摘は正しい。それでも、ROE が資本コストに届かず、地盤の人口減とコスト率の高さが残るという慎重な見方のほうが、10 年の価値を決める力は強い。確率は中立に最も重みを置き、慎重側をやや厚くした。ありあけキャピタルによる資本政策の働きかけがあれば強気側の確率は上がるが、確認できていない以上、確率には入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,592 円3,270 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 437 円898 億円)。 今の値に割り戻すと 1,011 円2,076 億円、今との差 −33.8%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,610 円5,362 億円 | 622 円1,278 億円 | +111.7% | +7.8% | 323 円664 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,176 円4,471 億円 | 522 円1,073 億円 | +76.7% | +5.9% | 594 円1,220 億円 |
| 中立 | 30% | 1,942 円3,989 億円 | 447 円918 億円 | +56.4% | +4.6% | 717 円1,472 億円 |
| やや悲観 | 23% | 938 円1,926 億円 | 389 円800 億円 | −13.1% | −1.4% | 305 円627 億円 |
| 悲観 | 15% | 360 円739 億円 | 243 円500 億円 | −60.5% | −8.9% | 90 円186 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,592 円3,270 億円 | 437 円898 億円 | +32.9% | +2.9% | 2,029 円4,168 億円 |
今の株価時価総額 1,527 円3,137 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 岐阜で利ざやが乗り、手数料と市場運用も育つ 10 年 利益 445 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,610 円5,362 億円
短期金利は 2%、長期金利は 3% に定着し、法人・個人の貸出利ざやは広がる。預金の粘りが強く、預金金利の上げは緩やかにとどまる。事業承継・M&A の専担者を増やした営業が実り、手数料収益は貸出の伸びを大きく上回る。外債を減らした市場運用は外貨調達コストの重しが消え、国内債中心で安定して稼ぐ。エリア制と軽量店、事務の本部集約でコスト率は構造的に下がり、近隣の統合ドミノの中でも単独で存在感を保つ。政策保有株は計画どおり圧縮され、売却益と余力が自己資本の厚みと自社株買いに回る。ROE は資本コストに迫るが、地盤の人口減がある以上、そこまでが限度だ。
- 法人貸出:数量 4.2(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.02(預貸の利ざや(率))→ 売上 643 億円・営業利益 289 億円。残高等 4.15 兆円(名目)× 率 1.55%、利益率 45%
- 個人貸出:数量 2.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 262 億円・営業利益 94 億円。残高等 2.05 兆円(名目)× 率 1.28%、利益率 36%
- 預かり資産・手数料:数量 4.8(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 360 億円・営業利益 144 億円。残高等 4.80 兆円(名目)× 率 0.75%、利益率 40%
- 市場運用:数量 1.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(外貨調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 195 億円・営業利益 136 億円。残高等 1.50 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 70%
倍率:事業の純利益 445 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 5,362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの拡大、手数料収益の育成、市場運用の安定、再編による効率化が 10 年そろう前提。ROE が資本コストに届くかどうかの境目で、重なる確率は高くない。
やや楽観 22% 中期経営計画が概ね実現する 10 年 利益 371 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,176 円4,471 億円
中期経営計画の方向が 10 年おおむね続く。貸出利回りは改善し、岐阜・愛知の中小企業向けの貸出は名目で緩やかに伸びる。助言・預かり資産の手数料は着実に増えるが、劇的な伸びではない。市場運用は外債の残高を抑えたまま国内債の利回り上昇を取り込む。店舗の再編とデジタル化でコスト率は少しずつ下がる。政策保有株は圧縮が進み、還元性向は 4 割近くに高まる。県内での競争は続くが、地盤は崩れない。ROE は 6% 台半ばに乗る。それでも資本コストには届かず、中堅地銀の中位にとどまる。名古屋圏での取引拡大は少しずつ進むが、大手行との差は縮まらない。
- 法人貸出:数量 4.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 573 億円・営業利益 241 億円。残高等 3.95 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 42%
- 個人貸出:数量 2.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 244 億円・営業利益 81 億円。残高等 2.00 兆円(名目)× 率 1.22%、利益率 33%
- 預かり資産・手数料:数量 4.6(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 331 億円・営業利益 126 億円。残高等 4.60 兆円(名目)× 率 0.72%、利益率 38%
- 市場運用:数量 1.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(外貨調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 181 億円・営業利益 121 億円。残高等 1.45 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 67%
倍率:事業の純利益 371 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 4,471 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向(貸出利回りの改善・助言収益の拡大・政策保有株の圧縮)がおおむね実現する。同じ地方銀行の上位レンジに近い置き方。
中立 30% 利ざやは広がるが、地盤の人口減が利益の伸びを抑える 10 年 利益 331 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,942 円3,989 億円
利ざやは広がるが、利益の伸びは名目の経済成長をわずかに上回る程度にとどまる。岐阜の人口は減り続け、貸出残高は名目で年 2% 台の伸びが限度だ。預金の獲得コストが上がり、広がった利ざやの一部は預金者に戻る。手数料収益は育つが、コスト率は高止まりする。政策保有株の売却益は一巡し、自己資本比率は 5% 台から緩やかに上がる。与信費用は景気の山と谷をならした水準に戻る。近隣の銀行が統合で規模を得ても、単独経営は続ける。ROE は 6% 前後に改善するにとどまる。金利の追い風は確かに効くが、利益の伸びは地盤の弱さに相殺され、資本コストを上回る姿には届かない。株主への還元も、総還元性向 3 割台半ば(実績の 3 割台前半を少し上回る)で落ち着く。
- 法人貸出:数量 3.9(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 539 億円・営業利益 216 億円。残高等 3.85 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 40%
- 個人貸出:数量 2.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 234 億円・営業利益 73 億円。残高等 1.95 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 31%
- 預かり資産・手数料:数量 4.4(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 308 億円・営業利益 111 億円。残高等 4.40 兆円(名目)× 率 0.70%、利益率 36%
- 市場運用:数量 1.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(外貨調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 168 億円・営業利益 111 億円。残高等 1.40 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 66%
倍率:事業の純利益 331 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 3,989 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利 2% の定着で利ざやは広がるが、地盤の人口減と高いコスト率が利益の伸びを抑える。最も重みを置く中心の姿。
やや悲観 23% 名古屋圏と再編の波に押され、収益力が伸び悩む 10 年 利益 214 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 938 円1,926 億円
名古屋圏の貸出競争と近隣の統合行の攻勢で、法人貸出の利ざやは思うほど広がらない。岐阜の人口減は計画より速く、貸出の伸びは名目でも 1% 台に鈍る。手数料収益の育成は遅れ、コスト率は下がらない。自己資本の薄さから、収益が伸びない中でも還元を抑えざるをえない。与信費用は景気後退で一時的に膨らみ、外債・株式の評価損も資本を削る。大手行並みの IT 投資を単独でまかなう負担も重い。10 年を通して ROE は資本コストを大きく下回り続ける。収益が伸びないのに預金のコストだけが上がり、貸出の利ざやは期待ほど広がらない。株主へ戻る額は小さく、地元での存在感も薄れていく。
- 法人貸出:数量 3.6(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 444 億円・営業利益 155 億円。残高等 3.55 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 35%
- 個人貸出:数量 1.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 194 億円・営業利益 51 億円。残高等 1.80 兆円(名目)× 率 1.08%、利益率 26%
- 預かり資産・手数料:数量 3.9(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 242 億円・営業利益 75 億円。残高等 3.90 兆円(名目)× 率 0.62%、利益率 31%
- 市場運用:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(外貨調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 136 億円・営業利益 85 億円。残高等 1.30 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 62%
倍率:10 年後の ROE は約 4.3%(純利益 214 億円÷自己資本 4,940 億円)で k 8.3% を大きく下回る。堀が弱く(残る割合 1/3)、g を 3% に下げた式で 10〜11 倍が上限の目安。競争と規模の不足で稼ぐ力が鈍る姿として 9.0 倍に置く。今の自己資本に対する倍率は約 0.53 倍。
確率:名古屋圏の大手行との貸出競争、近隣の統合行(十六 FG・しずおか FG と名古屋銀行など)の規模の経済、自己資本の薄さによる還元の制約が重なる。10 年では起こりやすい。
悲観 15% 構造的に負け、資本効率が戻らない 10 年 利益 84 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 360 円739 億円
10 年のどこかで信用収縮が起き、与信費用が急増する。地盤の人口減が加速し、貸出の量が実質で縮み始める。広がった利ざやは預金競争とネット銀行・メガバンクの攻勢で削られ、手数料収益の育成も実らない。外債・株式の評価損で自己資本が痛み、自己資本比率の薄さが貸出と還元の両方を縛る。再編の波に乗れず単独で規模を失い、システム費用だけが重くなる。もはや優良な地方銀行とは言えず、稼ぐ力は資本コストを大きく下回ったまま、資本効率は戻らない。利益は今期の半分以下にとどまり、再編の相手としても条件の悪い立場に追い込まれる。
- 法人貸出:数量 2.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 256 億円・営業利益 87 億円。残高等 2.70 兆円(名目)× 率 0.95%、利益率 34%
- 個人貸出:数量 1.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 115 億円・営業利益 25 億円。残高等 1.35 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 22%
- 預かり資産・手数料:数量 2.9(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 145 億円・営業利益 41 億円。残高等 2.90 兆円(名目)× 率 0.50%、利益率 28%
- 市場運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(外貨調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 80 億円・営業利益 44 億円。残高等 1.00 兆円(名目)× 率 0.80%、利益率 55%
倍率:ROE 2.1% が k 8.30% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 12.0 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.26 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 6.5 倍になる。自己資本の 0.2 倍に相当するのは 9.4 倍だが、やや悲観より低く置くため 8.8 倍にとどめた。やや悲観の 9.0 倍より低い。構造的に負けた姿。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:信用収縮と人口減の加速、外債・株式の評価損による資本の毀損が重なる。自己資本比率が 5% 台と薄く、同業の中でもこの尾を厚めに置く(質の差は k でなく確率で表す)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
岐阜・愛知を中心とする中小・中堅企業向けの事業性貸出。事業承継や M&A の助言から生まれる貸出を含む。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.01 | 330 | 82 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 0.01 | 539 | 216 |
取り方:貸出金 4.62 兆円のうち法人・事業性を約 3.0 兆円と置いた(内訳は推定)。預金で調達した資金の利ざやを 1.10% と置く。業界の前提と同じく、預金金利が政策金利の上げに付いていく割合(預金ベータ)を 4 割、残高は名目で年 2.5% の伸び(地域の人口減を入れ、業界の中心値よりやや低め)、利ざやは 10 年で約 +0.30% 広がるとした。利ざやは率なので物価では上がらない。営業利益の欄は経常利益で置く(銀行に営業利益は無い)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+27%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 0.01 | 147 | 29 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 0.01 | 234 | 73 |
取り方:個人向け約 1.55 兆円(住宅ローン中心、内訳は推定)、利ざや 0.95%。残高は名目で年 2.3%(岐阜の人口減を入れる)、利ざやは 10 年で約 +0.25%。住宅ローンは固定が多く金利上昇の波及が遅い。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+26%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預かり資産・手数料
投信・保険・証券の預かり資産、決済、法人向けの助言(M&A・事業承継)から入る手数料収益。
| 数量手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済など。兆円) | 価格実効の手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.01 | 195 | 49 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 0.01 | 308 | 111 |
取り方:預かり資産と決済・助言の取扱高をあわせて 3.0 兆円、実効の手数料率 0.65% と置いた(役務収益は推定)。預かり資産は名目で年 3.9%(資産形成の広がりを入れる)、手数料率は 10 年で小幅に上がる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+8%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場運用
国債・外債・株式・投信など有価証券 1 兆円強の運用収益(外貨調達コスト控除後)。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格外貨調達コスト控除後の運用利回り(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 0.01 | 108 | 65 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 0.01 | 168 | 111 |
取り方:有価証券残高 1.08 兆円、外貨調達コスト控除後の利回り 1.0%。外債を減らしてきたので外貨調達コストの重しは軽くなる。再投資の利回りは上がるが、預金の利払いも増えるので差し引き 10 年で +0.2% 程度とした。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+20%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
リスクと懸念
地盤の人口減と貸出の伸び悩み
岐阜県は人口が減り、事業所数も細る。貸出の量は名目でも年 2% 台の伸びが限度で、実質では縮む年も出る。地盤を離れた愛知での競争は厳しく、量の穴を価格だけで埋めるのは難しい。
預金競争で利ざやが戻る
短期金利が上がると、預金の獲得競争が激しくなる。ネット銀行やメガバンクが預金金利を上げれば、地銀の預金コストも上がり、貸出利ざやの広がりが想定より小さくなる。預金が貸出の 1.3 倍あるため、預金コストの影響は大きい。
薄い自己資本と評価損
自己資本比率は 5% 台。株式と債券の値下がりが、含み益を含む資本を直接削る。政策保有株は時価ベースで純資産の約 3 割あり、株価が下がれば資本も減る。還元と貸出の両方が縛られる。
高いコスト率と IT 投資の負担
中期経営計画のコア経費率の目標は 75% 以下で、大手地銀より高い。軽量店や事務の集約でコストを減らす途上にあるが、近隣の統合行が規模でシステム費用を薄めると、単独の負担は相対的に重くなる。
近隣の統合と名古屋圏の競争
しずおか FG と名古屋銀行、十六 FG とりそななど、近隣の統合が進む。規模を得た競合が法人貸出の金利で攻めれば、岐阜・愛知の中小企業向け貸出の利ざやは削られる。
外債・市場運用の重しと評価損
外債は残高を減らしたが、海外短期金利の上昇による外貨調達コストは、これまで利益を押し下げてきた。残る外債の評価損や、運用の読み違いが出れば、中期経営計画の市場運用で稼ぐ目標が崩れる。
大株主の動きと市場の織り込み
ありあけキャピタルが 9.59% まで買い進め、その目的は確認できていない。資本政策の提案が出れば株価は動くが、提案がなければ期待がしぼむ。足元の増益期待が今の値段に入っている点も、見通しが外れた時の下値を薄くする。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を 2% へ向けて計画より速く上げ、預金の粘りも保てたら
- 強気側の確率を上げてよい。法人貸出の利ざやが決算でどこまで広がったかを確かめる。
- ありあけキャピタルなど大株主が、還元や資本政策、再編について具体的な働きかけを始めたら
- 自社株買いや政策保有株の売却が早まり、資本効率の改善が前倒しになりうる。やや強気側へ確率を移す。
- 十六 FG など近隣行の統合が進み、岐阜県内の貸出競争が激しくなったら
- 法人貸出の利ざやの広がりが想定より小さくなる。やや慎重な見方に確率を寄せる。
- 外債・株式の評価損で自己資本比率が 5% を割り込むような局面が来たら
- 還元が止まり、貸出も絞られる。悲観側の確率を上げる。
- 事業承継・M&A の手数料が計画の 1.5 倍に向けて伸びたら
- 貸出に頼らない収益が育っている証拠になる。手数料収益の見通しを上げる。
- 大手行・地銀の経営統合の相手として大垣共立銀行の名前が挙がったら
- 統合による経費率の改善は見込めるが、希薄化や統合費用の負担もある。条件を見て判断する。
見ておくもの
- 預貸利ざやと預金コスト(預金ベータ)の推移
- 岐阜・愛知の貸出残高の伸びと与信費用
- 事業承継・M&A の手数料収益
- 自己資本比率と政策保有株の純資産比
- ありあけキャピタルの保有目的と提案
- 近隣行(十六 FG・しずおか FG・名古屋銀行)の統合の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10 年後の ROE と k 8.3%(基本 7.5% + quality 0.8%)・g 4.0% から、利益ベースの上限(ROE が k を下回るので 1÷k=12.0 倍)を出し、中立は 8.5 割、やや楽観は 9 割、楽観は 9.5 割に置いた。やや悲観・悲観は構造的に稼ぐ力が落ちた姿から 9.0 倍・8.8 倍(悲観は ROE÷k に比例して目減りさせ、やや悲観より低く)で、今の PER や過去の底値からは置いていない。銀行は預金が仕入れのため、リースの基準変更の影響は小さい。k が 1% 高いと中立の PER は約 1 倍下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→12.05 倍・やや楽観 PER 10.85→12.05 倍・中立 PER 10.2→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足して k 8.3%(決まり v2。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(大株主の動き、統合の波)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せは 0。