結論
バッファローは、国内でWi-Fiルーター、外付けHDD、NASの首位を握るパソコン周辺機器の会社だ。純現金が時価総額の3割あり、財務は堅い。だが筆者は、今の利益は山の高さにあると見る。10年で測った本質価値は、今の時価総額をわずかに下回る水準になった。
稼ぎの源は、店頭と法人に売るネットワーク機器だ。台数シェアは5割前後で、値上げが通ったことで利益率が上がった。一方、売上の3割を占める外付けHDDやDVDドライブは、クラウドとスマートフォンに押されて縮む。CPUの代理店販売は、売上の4分の1を占めるが利益は薄い。独占販売していた空気清浄機Airdogは、2025年8月に契約が終わった。
2026年3月期の純利益は81億円。会社は次の期に50億円まで下がると見ている。その原因は、円高の追い風と値上げの効果が一巡する点にあると筆者は読む。10年後の中立では、純利益は67億円ほどに落ち着く。
資本の使い方は評価できる。シマダヤのスピンオフで事業を絞り、自社株買いを重ねてきた。余った現金を株主に返す姿勢は本物だ。ただし中核の市場が成長しない以上、倍率を高く置く理由はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「首位を取っているが、市場そのものが伸びない」事業だ。
10年後もバッファローの商品は国内の店頭に並ぶ。ルーターと外付けHDDの首位は簡単には揺らがない。だが、10年後に今より強いかと問われれば、そうは言えない。ストレージは縮み、Airdogは消え、安価な競合は強くなる。堀の広がりは見えない。
オーナーとして見たい点は、稼いだ利益のうち、事業に再投資せず株主に返せる分だ。この会社は工場を持たず、再投資の必要が小さい。利益の多くを配当と自社株買いで返し、純現金を保つ。資本配分は、筆者がもっとも安心できる部分だ。
安全域は、純現金と堅い財務にある。純現金は時価総額の3割あり、悲観でも大きく崩れない。ただし事業の見通しが低いので、利益に高い倍率を掛けることはできない。
わかりにくい点は、利益の持続性だ。値上げと円高で利益率は2026年3月期に7.9%まで上がったが、10年のスパンでは6〜7%が妥当と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
バッファローは、パソコンの周りに置く機器を企画して売る会社だ。工場は持たず、国内外の協力工場に作らせる。ファームウェア(機器の中のソフト)は自社で書く。売上は2026年3月期で1,173億円。半分近くをネットワーク機器とストレージが占める。
ネットワーク機器は、Wi-Fiルーター、中継機、ハブ、法人向け無線LANだ。BCN(家電量販店の販売データ)の台数シェアで、ルーターは55%、無線LAN全体でも45%を握る。競合はエレコム、NEC、アイ・オー・データ機器、台湾のTP-Link。
ストレージは、外付けHDD、NAS(家庭や会社に置くデータの保管箱)、SSD、DVDドライブだ。外付けHDDは台数の63%、NASは63%を同社が占める。ただし量は減っている。
卸売品は、子会社のシー・エフ・ディー販売が扱う米AMDのCPU「Ryzen」などのパーツだ。上期の売上は前年から4割増えたが、粗利は薄い。
関連サービスにはデータの復旧・消去とネットワークの施工がある。小さいが、法人の人手不足を背景に伸びている。
2026年3月期から報告セグメントはIT関連事業の1つになり、食品のシマダヤは2024年10月に切り離された。Airdogの独占販売契約は2025年8月に終わった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、あるにはあるが、広くも深くもない。
強みは3つある。1つ目は、店頭と量販店での圧倒的なシェアだ。仕入れ量が多いので、HDDなどの部材を安く買える。2つ目は、ファームウェアを自社で書く力だ。ルーターは常に攻撃を受けるので、更新を続けられる体制が要る。経産省のセキュリティ認証制度「JC-STAR」に32シリーズが対応していることは、法人向けで効く。3つ目は、法人の設置・保守まで請け負う体制だ。
弱みは、値段を自分で決めにくいことだ。台湾・中国系の安価な機器があり、通信会社は無料でルーターを配る。原材料のメモリやHDDは世界の相場で動く。2023年3月期から2024年3月期の営業利益率は1〜3%台まで落ちた。
利益率が最近高いのは、前期の値上げと円高が効いたためだ。円が1円高くなると営業利益は約3億円増える。この追い風は永続しない。
資本効率は高い。工場を持たない軽い事業なので、自己資本利益率(ROE)は10%台を保てる。ここ10年の中央値は10.8%だ。ただし2026年3月期の18.8%は、自社株買いで自己資本が薄くなった分と円高の追い風が重なった結果だ。経営は、利益のほとんどを株主に返す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の周辺機器市場は、成熟と縮小のあいだにある。
ネットワーク機器は、量が減らない。世帯数はほぼ横ばいで、Wi-Fiの世代が上がるたびに買い替えが起きる。法人でも、無線LANと設置の更新が続く。需要は安定しているが、伸びる市場ではない。競争が問題だ。台湾・中国系の安価な機器は、性能が上がっているのに値段が低い。通信会社が無料で配るルーターの比率も、じわじわ上がっている。
ストレージは、構造的に縮む。写真や動画はスマートフォンとクラウドに行き、外付けHDDやDVDドライブを買う理由が減る。残るのは、バックアップや法人のNASだ。世界のAI向けデータセンターがHDDやメモリを大量に買う局面では、仕入れ値が上がる。小売の値段に転嫁できるかが分かれ目になる。
卸売のパーツは、自作パソコンとゲームの需要に乗る。米AMDの代理店という立場は、契約が続く限り安定するが、粗利は数%にとどまる。
新リース会計基準は、同社の事業にはほとんど効かない。借りている資産が少ないからだ。
10年で見ると、業界の売上は名目で横ばいか緩やかな減少になる。物価で値段は上がるが、量が縮むからだ。同社の分かれ目は、ネットワークと法人サービスの比率をどこまで高められるかにある。
資本政策と M&A
資本政策は、筆者がこの会社を評価する最大の理由だ。
事業を絞る動きは徹底している。2024年10月に食品のシマダヤを株式分配型スピンオフで切り離し、2025年4月には持株会社を吸収合併して事業会社になった。代表取締役が持つ株を従業員に贈与し、譲渡制限付株式報酬も入れた。経営の形は軽くなった。
株主還元は、連結配当性向30〜40%を目安にしつつ、自社株買いを重ねる。累計の自社株買いは444億円。2026年3月期は、10月末までで約75億円を買った。その結果、外国為替法上の外国投資家に当たらなくなった。
M&Aは小さく、資本業務提携が中心だ。セキュアとは調達・施工・コンタクトセンターの集約、ビットキーとはスマートロックの施工・保守で組む。買収で価値を壊すことは、いまのところ起きていない。
気になる点が2つある。1つは、その他の関係会社であるメルコグループが議決権の30.7%を持ち、買い手が現れにくいこと。もう1つは、純現金257億円があるのに、中期経営計画の数値目標が見当たらないことだ。10年以内のTOB(株式公開買い付け)の確率は、kabufu のシミュレーションで約2割だ。
10年の還元は、配当性向30〜40%の方針に自社株買いを足した形で、中立は純利益の合計の約8割に置いた。余った現金は還元に入れず、別に足している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ルーターと外付けHDD、NASの首位は、量販店と法人の両方で固めた立場だ。台数シェアは5割から6割を保ち、前期の値上げは競合にも追随されて定着した。営業利益はIT事業だけで見ると、2024年3月期の赤字から2026年3月期の92億円まで立て直した。この体制は簡単には崩れない。
Airdogが消えても、売上の中ではネットワーク機器の利益のほうが大きい。法人向けの無線LAN、NAS、設置・保守は、人手不足を背景に外注が増える。セキュリティ認証のJC-STARに対応した機器は、官公庁や法人の調達で選ばれやすくなる。ビットキーとセキュアとの提携で、施工と調達のコストも下がる。
資本の使い方も優れている。累計444億円の自社株買い、30〜40%の配当性向、食品事業のスピンオフと、経営は株主の取り分を増やす方向で動いてきた。純現金257億円があり、減益が来ても配当も自社株買いも続けられる。会社予想の純利益50億円は、第1四半期の進捗が高く、保守的な数字に見える。
慎重な見方
利益が高いのは、値上げと円高が一度に効いたからだ。2023年3月期と2024年3月期は、営業利益率が2〜3%台まで落ちた。10年の中央値で見れば、純利益は50億円から60億円の水準だ。会社自身が次の期に純利益を50億円へ下げると言っている。
市場が悪い。外付けHDDやDVDドライブの需要は、クラウドとスマートフォンに食われている。ルーターも、通信会社が無料で配る機器と、台湾・中国系の安い機器に挟まれる。同社の無線LANの台数シェアは45%前後で、10年でここから下がる方向だ。Airdogの独占販売は終わり、その利益は戻らない。CPUの卸売は、米AMDの代理店契約が続く間だけの薄利の商売で、契約が変われば消える。
生成AI向けの投資でHDDやメモリの価格が上がると、仕入れ値だけが先に上がり、転嫁が遅れる。中期経営計画の数値目標が出ていないことも、成長の道筋が見えない表れだ。純現金は魅力だが、事業が縮むなら、利益に掛ける倍率は低くなる。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は資本配分と純現金で、慎重な根拠は市場の縮小と利益の山だ。10年で測ると、慎重な側のほうが強い。市場が縮み、競合が価格を下げる構造は、値上げ1回では変わらない。
確率は、中立を3割台半ばに置き、やや悲観を楽観側より重くした。楽観は7%、悲観は13%。純現金と軽い資産が悲観の深さを抑えるので、悲観を2割には置いていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,713 円1,119 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,320 円551 億円)。 今の値に割り戻すと 3,762 円893 億円、今との差 +5.0%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,235 円2,192 億円 | 3,502 円831 億円 | +255.3% | +13.5% | 892 円212 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,315 円1,736 億円 | 3,030 円719 億円 | +188.6% | +11.2% | 1,862 円442 億円 |
| 中立 | 35% | 5,423 円1,287 億円 | 2,512 円596 億円 | +121.3% | +8.3% | 2,777 円659 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,778 円659 億円 | 1,926 円457 億円 | +31.2% | +2.8% | 1,270 円301 億円 |
| 悲観 | 13% | 786 円187 億円 | 1,007 円239 億円 | −50.0% | −6.7% | 233 円55 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,713 円1,119 億円 | 2,320 円551 億円 | +96.2% | +7.0% | 7,034 円1,669 億円 |
今の株価時価総額 3,585 円851 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 法人とWi-Fiの伸びで利益の柱が太る 利益 110 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 9,235 円2,192 億円
Wi-Fi 7 から次の世代への買い替えが続き、国内の家庭と中小企業のネットワーク機器は量が減らない。同社は法人向けのルーター、無線 LAN、NAS を、設置と保守の仕事とセットで売る形を広げ、国内の首位を守りながら値上げを通す。ビットキーやセキュアとの提携も実り、施工・保守・IoT の売上が伸びる。ストレージは縮むが、残る需要では同社の存在感がさらに増す。卸売の CPU も自作パソコン需要に乗って堅調だ。原価と為替の変動を値上げでこなす力が証明され、営業利益率は 8% を超える。余った現金は戻し続け、自己資本は膨らまない。
- ネットワーク機器:数量 748(国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 56.3%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 421 億円・営業利益 63 億円。法人と家庭の更新が続く(市場 1.15 倍・シェア 42%)
- メモリ・ストレージ機器:数量 1,283(国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 37.5%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 481 億円・営業利益 31 億円。NAS が穴を埋める(市場 0.9 倍・シェア 28%)
- 卸売品(CPU・パーツ):数量 3,080(国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 16.1%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 495 億円・営業利益 16 億円。自作パソコン需要が堅調(市場 1.1 倍・シェア 12%)
- その他周辺機器・サービス・Airdog:数量 1,980(国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 12.1%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 239 億円・営業利益 24 億円。施工・保守・IoT が伸びる(Airdog 終了後)
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.92 倍、時価総額 2,192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:Wi-Fi の世代交代と法人のネットワーク更新が続き、同社が値上げを通せる展開。起きれば大きいが、価格競争の強い市場なので 1 割未満に置く。
やや楽観 18% ネットワークが稼ぎ頭になり、ストレージの縮小を補う 利益 91 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 7,315 円1,736 億円
ネットワーク機器の台数は横ばいから微増で、法人案件が積み上がる。同社の価格改定は競合も追随し、利益率はいまの高さを大きく崩さない。ストレージは外付け HDD と DVD ドライブが縮むが、NAS と SSD が穴を埋める。施工・データ復旧などのサービスは、人手不足の法人が外注するため、売上が着実に伸びる。卸売は薄利のままだが、数量は保たれる。全体として売上は名目で年 2% 台、営業利益は今の水準より 2 割ほど増える。ビットキーやセキュアとの提携の成果も、施工と調達のコスト減として少しずつ出る。経営は自己株式の取得を続け、利益の大半を株主へ返す。10 年後のこの会社は、地味だが利益の質が今より少し良い。
- ネットワーク機器:数量 702(国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 53.6%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 376 億円・営業利益 55 億円。法人案件が積み上がる(市場 1.08 倍・シェア 40%)
- メモリ・ストレージ機器:数量 1,211(国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 36.2%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 438 億円・営業利益 25 億円。HDD と DVD は縮み、NAS・SSD が補う(市場 0.85 倍・シェア 27%)
- 卸売品(CPU・パーツ):数量 2,940(国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 15.4%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 453 億円・営業利益 14 億円。数量は保つ(市場 1.05 倍・シェア 11.5%)
- その他周辺機器・サービス・Airdog:数量 1,890(国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 9.4%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 177 億円・営業利益 18 億円。サービスが着実に伸びる
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 17.84 倍、時価総額 1,736 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェアを守りながら法人向けと保守・施工サービスを積む、筋の通った上振れ。10 年の間にはありうる展開として 2 割弱。
中立 35% ネットワークの利益を守り、ストレージの縮小を値上げで受ける 利益 67 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 5,423 円1,287 億円
ネットワーク機器は、国内の世帯数がほぼ横ばいのなか、Wi-Fi の高速化で買い替えが続き、数量は今と変わらない。ただしシェアは 39% から 37% へ緩やかに下がる。台湾・中国系の安価な機器と通信会社の配布機器が、同社の取り分を少しずつ削るからだ。ストレージは外付け HDD や DVD ドライブの需要が細り、市場の量は 2 割縮む。値上げで売上は持つが、利益率は 5% 止まりになる。Airdog の独占販売はすでに終わり、その利益は戻らない。卸売の CPU は量を保つが、利益率は 2% 台の薄利が続く。全体で営業利益は 80 億円強に落ち着き、今の水準より 1 割ほど低い。
- ネットワーク機器:数量 650(国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 49.6%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 322 億円・営業利益 42 億円。数量は横ばい、シェアは緩やかに低下(市場 1.0 倍・シェア 37%)
- メモリ・ストレージ機器:数量 1,140(国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 34.8%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 397 億円・営業利益 20 億円。外付け需要が細る(市場 0.8 倍・シェア 26%)
- 卸売品(CPU・パーツ):数量 2,800(国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 14.7%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 413 億円・営業利益 10 億円。数量は保つが薄利(市場 1.0 倍・シェア 11%)
- その他周辺機器・サービス・Airdog:数量 1,710(国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 7.4%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 126 億円・営業利益 10 億円。Airdog が抜けた後の周辺機器とサービス
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 16.98 倍、時価総額 1,252 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内首位のシェアを保ち、ストレージの縮小を値上げと原価低減で受ける展開。最も起こりやすい筋書き。
やや悲観 27% 中国勢と通信会社の機器に押され、利益が半減する 利益 42 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 2,778 円659 億円
台湾・中国系の機器が値段を下げ、通信会社が配る無線ルーターの比率も上がる。ネットワーク機器の台数は微減、シェアは 33% まで下がり、値上げの余地も狭まる。ストレージは外付け HDD の需要が 3 割近く縮み、DVD ドライブはほぼ消える。生成 AI 向けの需要でメモリや HDD の仕入れ値が上がっても、小売の値段に転嫁しきれない局面が出る。卸売は代理店契約の条件次第で利益が薄くなる。同社は人員を絞ってしのぐが、営業利益は 50 億円台まで落ちる。それでも純現金があるため、配当と自社株買いは続けられる。
- ネットワーク機器:数量 618(国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 44.2%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 273 億円・営業利益 27 億円。安値機器と配布機器に押される(市場 0.95 倍・シェア 33%)
- メモリ・ストレージ機器:数量 1,026(国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 32.2%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 330 億円・営業利益 13 億円。外付け HDD が 3 割近く縮む(市場 0.72 倍・シェア 24%)
- 卸売品(CPU・パーツ):数量 2,520(国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 13.4%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 338 億円・営業利益 7 億円。代理店条件が悪化(市場 0.9 倍・シェア 10%)
- その他周辺機器・サービス・Airdog:数量 1,620(国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 6.0%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 98 億円・営業利益 6 億円。周辺機器の競争が厳しい
倍率:事業の ROE が約 8% で資本コストと同じ水準まで下がる。ROE が k 以下なら PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍で、利益の質が落ちるぶん 12.28 倍にした。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍の額を足している。
確率:台湾・中国系メーカーと通信会社配布の機器にシェアを削られ、卸売の薄利も重い。起こりうる下振れとして 3 割近くに置く。
悲観 13% 構造的に負ける:ルーターの値崩れとストレージ需要の消滅 利益 15 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 786 円187 億円
ルーターは通信会社が無料で配る機器と中国勢の安値に挟まれ、店頭で売る機器の量が 15% 減る。シェアは 26% まで落ち、利益率は 6% にとどまる。ストレージはクラウドとスマートフォンの普及で外付けの需要が半分近くに縮み、同社の取り分も 2 割へ下がる。卸売は代理店契約の更新に失敗するか、競合の流通網に取られて半減する。固定費の重さが残り、全体の営業利益は 20 億円前後まで細る。それでも純現金と在庫・売掛金の回収が株価の床になり、会社が清算に近づく展開ではない。配当と自社株買いは利益の範囲に絞り、現金を守る。
- ネットワーク機器:数量 553(国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 34.8%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 192 億円・営業利益 12 億円。値崩れと配布機器への置き換え(市場 0.85 倍・シェア 26%)
- メモリ・ストレージ機器:数量 784(国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 26.8%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 210 億円・営業利益 4 億円。クラウド移行で半減(市場 0.55 倍・シェア 20%)
- 卸売品(CPU・パーツ):数量 1,960(国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 10.7%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 210 億円・営業利益 2 億円。代理店契約を失う(市場 0.7 倍・シェア 8%)
- その他周辺機器・サービス・Airdog:数量 1,440(国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 4.0%(同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。サービスも縮小
倍率:悲観の純利益は約 15 億円で ROE は 3% と k を大きく下回る。ためた利益は額面未満の価値なので PER は 1÷k の約 11.8 倍が上限で、構造的な負けの度合いを見て 8 倍にした。余った現金は 0.5 倍の額を足している。
確率:ルーターが通信会社の配布機器と中国勢に置き換わり、ストレージ需要も細る構造的な負け。悲観は quality と別の理由で上げ下げしないが、主力が消費者向けの周辺機器である以上、1 割台に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ネットワーク機器
Wi-Fi ルーター・中継機・ハブ・LAN アダプター、法人向け無線 LAN。国内首位。
| 数量国内ネットワーク機器(家庭・中小企業・法人向け)の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 39.2% | 255 | 46 |
| 10 年後 中立 | 650 | 49.6% | 322 | 42 |
取り方:上期の売上 120 億円(前年同期比 +13.7%)から通期を約 255 億円と推定した。市場は国内の Wi-Fi・ルーター・ハブ・法人向け無線 LAN を合わせて約 650 億円と置いた(開示は無く、同社売上と BCN の台数シェアから逆算した推定)。数量は実質、物価 3% は価格(シェア × 物価の倍率)に入れた。
メモリ・ストレージ機器
外付け HDD・NAS・SSD・DVD ドライブ・USB メモリー・メディア。
| 数量国内の外付けストレージ・光学ドライブ・メモリー市場の規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,425 | 27.0% | 385 | 23 |
| 10 年後 中立 | 1,140 | 34.8% | 397 | 20 |
取り方:上期の売上 182 億円(+1.7%)から通期を約 385 億円と推定した。BCN の台数シェアは外付け HDD 63%・NAS 63%・DVD ドライブ 55% と高いが、単価の低い品が多く、金額のシェアは約 27%、市場は約 1,400 億円と置いた(推定)。
卸売品(CPU・パーツ)
AMD の CPU「Ryzen」などパソコンパーツの代理店販売(子会社シー・エフ・ディー販売)。
| 数量国内の自作パソコン向け CPU・パーツ流通の市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,800 | 11.3% | 315 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 14.7% | 413 | 10 |
取り方:上期の売上 157 億円(+42.5%)から通期を約 315 億円と推定した。市場は約 2,800 億円と置いた(開示は無く、推定)。シー・エフ・ディー販売の売上は 324 億円(有価証券報告書の主要子会社)で、この規模と整合する。薄利の商売で、営業利益率は 3% とした。
その他周辺機器・サービス・Airdog
マウス・キーボード・Web カメラ・ケーブル、データ復旧・消去、ネットワーク施工。Airdog は 2025 年 8 月に独占販売契約が終了。
| 数量国内の周辺機器・復旧・施工サービスの市場規模(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格同社の取り分(市場 1 億円あたりの売上=シェア × 物価の倍率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,800 | 12.1% | 218 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,710 | 7.4% | 126 | 10 |
取り方:上期のその他周辺機器 26 億円・関連サービス 16 億円・Airdog 97 億円から通期を約 218 億円(うち Airdog は約 120 億円)と推定した。市場は約 1,800 億円と置いた(推定)。Airdog の売上は先で消えるので、このセグメントのシェアは 12% から 5% 台へ下がる前提になる。
リスクと懸念
利益は円高と値上げの山にある
2026年3月期の営業利益率7.9%は、円高と前期の値上げが重なった結果だ。円が1円安くなると営業利益は約3億円減る。会社は次の期に純利益を50億円へ下げると見ており、10年では6〜7%の利益率が妥当と見る。
ストレージの構造的な縮小
外付けHDDとDVDドライブはクラウドとスマートフォンの普及で縮み続ける。同社の台数シェアは高いが、量が減るので売上は守れない。NASが穴を埋めるかが焦点だ。
台湾・中国系機器と通信会社の配布機器
ルーターは、安価な機器と通信会社の無料配布に挟まれる。シェアが5ポイント下がるだけで、ネットワーク機器の利益の1割近くが消える。
仕入れ価格の上昇を転嫁できない
AI向けのデータセンター需要でHDDやメモリが値上がりすると、仕入れ値が先に上がる。小売の値段に転嫁できない期間は、粗利が圧迫される。
卸売の代理店契約に依存
売上の4分の1を占めるCPU卸売は、特定のメーカーの代理店契約に左右される。契約条件が悪化するか、他の流通網に取られれば、売上は大きく落ちる。利益は薄いが、固定費の吸収に効いている。
Airdog の独占販売終了の後が見えない
2025年8月に独占販売契約が終わり、約120億円の売上と、その利益が消えた。穴を埋める新しい商品や事業の姿が、まだ数字では見えない。
中期経営計画の数値目標がない
成長の方針は示されているが、売上や利益の数値目標は見当たらない。経営の規律は高いが、成長への道筋は外から測りにくい。
今後の分かれ目
- ネットワーク機器の台数シェアが5割を割り込む
- 値上げの余地が狭まり、利益の柱が細る。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- 法人向けのネットワーク・NAS・施工の売上比率が高まり、利益率が10%台に乗る
- ストレージの縮小を補う体質になり、中立から楽観の側へ確率が動く。
- HDD・メモリの仕入れ値が急騰し、小売価格へ転嫁できない期間が長引く
- 営業利益率が3〜4%台へ落ち、やや悲観の筋書きに近づく。
- メルコグループの持株比率や、創業家に近い大株主の動きに変化が出る
- TOBや再編の可能性が高まり、買い手がつく場合は倍率の上振れ要因になる。
- 代理店契約が失われ、卸売品の売上が半減する
- 売上は減るが利益への影響は小さい。固定費の吸収が難しくなり、利益率は下がる。
- 中期経営計画で数値目標と成長投資の方針が示される
- 成長の道筋が測れるようになり、確率を中立から楽観側へ寄せる材料になる。
見ておくもの
- ルーター・無線LAN・NASの台数シェア(BCNなど)の推移
- ネットワーク機器の売上と営業利益率
- 外付けHDD・DVDドライブの売上の減り方
- HDD・メモリの仕入れ価格と小売価格の改定
- 法人向けの設置・保守サービスの売上
- 自社株買いと配当性向の実績
- 円相場(円高は利益の追い風)
- メルコグループの持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ず、セグメントごとの数量(市場の量)とシェア、物価の価格で 10 年後の利益を積み、その時点の ROE・資本コスト(基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%)・長期の g(4%)から正当化 PER を計算して置いた。堀は弱いとして残る割合を 1/3 にし、ROE が k を超える中立は 1÷k を下限にした。悲観は純利益÷k の稼ぐ力から置き、過去の PBR は使っていない。リースは借りる資産が少なく、新リース会計基準の影響は小さいので、10 年後の数字も今と同じ形で置いた。純現金の約 150 億円は事業と切り分けて足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→18.92 倍・やや楽観 PER 13.5→17.84 倍・中立 PER 12→16.98 倍・やや悲観 PER 10.5→12.28 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して k 8%。純現金なので上乗せ(distress)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。