結論
相鉄ホールディングスは横浜と神奈川県央を結ぶ相模鉄道を軸に、不動産・ホテル・スーパーを持つ中堅の鉄道グループである。稼ぎの柱は意外にもホテルと不動産で、2026年3月期は営業利益 388 億円のうち、ホテルが 164 億円、不動産が 140 億円、運輸は 57 億円だった。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。理由は借金の重さにある。純有利子負債は 4,200 億円を超え、営業利益の約 11 倍に当たる。借り換えのたびに金利が上がり、10 年で利払いは年 100 億円ほど増える。この負担が、本業の伸びをほぼ食ってしまう。
過去最高の利益にも注意が要る。ホテルの利益は大阪・関西万博で単価が上がった年の数字で、山にあたる。分譲も粗利益率が落ちている。会社自身も 2027年3月期は減益を見込む。
強みもある。横浜駅西口に集まる商業施設は、他社が作れない土地の集まりだ。新横浜線で東急線・都心へ直通し、沿線の価値は上がっている。ただ、その直通線の利用は当初計画の 7 割にとどまり、施設使用料の負担は重い。
10 年で見ると、営業利益は 479 億円と今より 2 割ほど増えるが、物価の伸びには届かない。純利益は 238 億円と今と同じ水準で、ROE は 6.5% にとどまる。資本コスト 8.25% を稼げない会社に、高い倍率はつけられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い土地を持つ、借金の重い複合経営」と見る。
まず、10 年先も事業が残るかは問題ない。横浜駅西口の土地と沿線の鉄道は、長く価値を持つ。堀は広くはないが、狭くもない。
オーナー利益を考えると、評価は厳しくなる。3 年で 1,970 億円の投資は純利益の約 8 年分で、純利益と減価償却を合わせても足りない。株主が自由に使える利益は、見た目の 250 億円よりずっと少ない。
経営の資本配分は守りだ。格付けを守り、配当を抑える姿勢は誠実だが、借金を増やして不動産を買い増す点は、金利が上がる局面では危うい。ホテルの利益が万博の特需だった可能性も、利益の質を下げる。
安全域は薄い。借金が営業利益の 10 倍を超える会社は、金利が 1% 動くだけで利益が 1 割以上動く。ROE が資本コストを超えない中立の姿に、高い値段は払えない。ただ、駅前の土地という資産は確かにあり、悲観でも資産の床が下値を支える。
何で稼ぐ会社か
相鉄は 4 つの事業で稼ぐ。いちばん利益が大きいのはホテルで、2026年3月期は売上 751 億円・営業利益 164 億円だった。相鉄フレッサインなど宿泊特化のホテルを横浜・東京・大阪などで運営し、利益率は 22% と高い。ただし、これは万博の特需を含む。
次に大きいのが不動産で、売上 688 億円・営業利益 140 億円。横浜駅西口の相鉄ジョイナスなどの商業施設とオフィスの賃貸が土台で、沿線の分譲マンションが上乗せされる。セグメントの資産は 4,600 億円と、グループ資産の半分以上を占める。分譲は年ごとの出入りが大きく、前期は粗利益率が落ちて減益だった。
運輸は売上 444 億円・営業利益 57 億円。2023年に新横浜線が開通し、東急線と直通するようになった。輸送人員は増えているが、鉄道・運輸機構への施設使用料が新しく固定費として乗る。
流通は売上 972 億円と最大だが、営業利益は 9 億円しかない。沿線のスーパーなどで、人の暮らしを支える一方、稼ぐ力は薄い。
この会社の稼ぎは、鉄道が人を運び、不動産とホテルがその人を受け止める形だ。ただ、利益の主役は鉄道ではなく、景気と訪日客で振れる事業になっている。
優良さと弱いところ
堀は横浜駅西口の土地にある。相鉄ジョイナスや相鉄ムービルの敷地など、駅前の一等地が自社のものだ。この集積は他社がまねできない。ただし、横浜駅の反対側には JR 東日本系の駅ビルがあり、商業の客は取り合いになる。
鉄道の運賃は国の認可で決まる。独占の強みはあるが、値上げは費用が積み上がってからで、物価に遅れる。相鉄の沿線は東急・小田急・京急ほど都心に近くない。新横浜線で東急に直通し、立地は良くなったが、利用は計画を下回る。
ROE は 12% 前後と、過去 10 年の中央値とほぼ同じ水準だ。ただし、この数字は低金利の借金に支えられている。借り換えが進めば利払いが増え、ROE は 6〜7% に下がる。自己資本比率は 25% と、同業の中でも薄い。
経営は財務を気にしている。信用格付け A 格の維持と自己資本比率の改善を掲げ、配当性向は 30% の目安にとどめる。守りの姿勢は評価できるが、成長投資に 3 年で 1,970 億円を投じるので、借金は減らない。筆者が気にしているのは、投資の利回りが借金の金利を安定して上回るかどうかだ。
ホテルの利益率の高さは、万博と訪日客の追い風が生んだ面が強い。供給が増えれば単価は下がる。堀というより、景気の波に乗った利益と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民鉄各社は、人口減で定期の客が伸びない一方、定期外とインバウンドが運賃収入を支える構図にある。相鉄の沿線は首都圏の郊外にあたり、人口の減り方は関西の私鉄より緩やかだが、通学・通勤の客は長期で細る。
新横浜線の開通で、相鉄は都心と新幹線に直接つながった。東急新横浜線の利用は開業当初に計画の 7 割と報じられた。定期の客が想定に届かなかったためで、新幹線との乗り換えやイベントの定期外は堅い。
不動産は横浜が主戦場だ。2024年に鶴屋町地区の再開発ビルが開業し、西口の競争は強まった。相鉄は 2024年に横浜駅西口の大改造構想を発表し、相鉄ムービルを2026年9月に閉館して一体開発に入る。完成は 2040 年代と遠く、資金は 10 年のうち前半に出ていく。
ホテルは訪日客の増加で単価が上がったが、東京・横浜・大阪の宿泊特化型は供給が増えている。万博の反動で 2027年3月期は減益の見込みだ。
競合は、鉄道では JR 東日本の横須賀線・湘南新宿ライン、小田急、京急、東急が重なる。不動産・ホテルでは大手デベロッパーが横浜に厚く出ている。
分かれ目は 3 つ。新横浜線の定着、西口開発の資金の回収、金利上昇のなかで借金をどこまで減らせるかである。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、借金で成長投資を回す形だ。第 7 次中期経営計画(2025〜2027年度)では 3 年で約 1,970 億円を投じ、うち不動産の取得・開発が約 1,130 億円、ホテルや賃貸マンションなどの成長投資が約 500 億円を占める。2028年3月期の営業利益 380 億円・純利益 224 億円を目標にする。
還元は配当性向 30% を目安とする安定配当で、自社株買いは大きくない。2025年2月には約 206 億円の株式の売出しがあった(目的までは確かめられなかった)。上場株の保有は 2024年3月期で 470 億円ほどあるが、含み益の額は確かめられなかった。
買収で規模を広げる会社ではない。TOB の当事者になる可能性は、グループの規模が小さく不動産の含み資産を持つので、ゼロとは言えない。kabufu の推計では 10 年以内の TOB・買収の確率は 19.5% だが、鉄道会社は規制と沿線の事情があり、筆者は確率に織り込んでいない。
借金の重さが最大の制約で、配当を増やす余地は小さい。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の250億円が10年後に約 327億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
相鉄は、いま変わりつつある。新横浜線で東急線・都心・新幹線につながり、沿線の価値は構造的に上がった。利用が当初計画の 7 割でも、定期外は新幹線との乗り換えやイベントで堅く、時間をかけて取り戻す余地がある。
不動産は、横浜駅西口の一体開発という 20 年の長い仕事を抱える。相鉄ムービルの跡地から始め、ジョイナスの建て替えまで進めば、賃料の水準そのものが変わる。星川・天王町など沿線の開発も具体的に動いている。第 7 次中計は 3 年で 1,970 億円を投じ、2028年3月期に営業利益 380 億円を目指す。
ホテルは宿泊特化型で、人手のかからない運営に強みがある。訪日客の増加は構造的で、横浜・東京・大阪の需要は簡単には崩れない。2026年3月期の ROE は 12% あり、収益力は高い。財務も、格付け A 格と自己資本比率 20% 台後半という目標を置き、規律を持っている。
不動産の売却益や含み資産も効く。駅前の土地は帳簿より高い価値を持つはずで、金利が落ち着けば一気に利益の質が変わる。借金は重いが、担保になる資産も厚い。会社が資産を売って借金を減らす道を選べば、ROE の回復は想定より早い。
慎重な見方
借金が重すぎる。純有利子負債は営業利益の約 11 倍、有利子負債 ÷ EBITDA は 10 倍を超える。借り換えのたびに金利が上がり、10 年で利払いは年 100 億円以上増える。今の純利益 248 億円は、低金利の借金に支えられた数字だ。
過去最高の利益は、万博の特需とホテルの山で出ている。ホテルの利益は 3 年前の赤字から 164 億円に戻ったが、東京・横浜・大阪の供給は増えており、単価は下がりやすい。分譲は粗利益率が落ちて、不動産は減益だ。会社自身が 2027年3月期の減益を見込む。
新横浜線は、需要が計画の 7 割にとどまり、鉄道・運輸機構への施設使用料が固定費として乗る。運輸の利益はようやく 57 億円で、2019年3月期の 84 億円には届かない。
西口の大改造は 2040 年代の話で、資金は先に出ていく。成長投資 1,970 億円が借金で賄われる以上、ROE は資本コストに届かないままだろう。流通は売上 972 億円に対して利益が 9 億円で、事業としての意味が薄い。
どちらに重みを置いたか
土地と直通線の価値は強気の見方のとおりだが、借金の重さと利益の山という慎重な見方のほうが強い。確率は中立を軸に、上側 30%、下側 38% と、悲観の側に厚く置いた。中立の ROE は資本コストに届かず、PER は 10 倍。総合は 4 割弱の割高になった。
強気の見方で一番強いのは、駅前の土地という替えのきかない資産だ。しかし資産の価値は、借金の金利と同じ速さでは増えない。慎重な見方で一番強いのは、利益が山にあることと、借金の重さが金利で試される 10 年が始まっていることだ。楽観の側は新横浜線の定着、悲観の側は直通の空振りと分譲の不振という、具体的な出来事に根拠を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,658 円3,511 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 760 円729 億円)。 今の値に割り戻すと 2,167 円2,080 億円、今との差 −15.2%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,432 円6,175 億円 | 1,092 円1,048 億円 | +194.4% | +11.4% | 677 円650 億円 |
| やや楽観 | 21% | 5,306 円5,094 億円 | 920 円883 億円 | +143.6% | +9.3% | 1,307 円1,255 億円 |
| 中立 | 32% | 4,621 円4,436 億円 | 815 円782 億円 | +112.7% | +7.8% | 1,739 円1,670 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,355 円1,301 億円 | 634 円609 億円 | −22.1% | −2.5% | 478 円458 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,146 円1,100 億円 | 396 円380 億円 | −39.7% | −4.9% | 216 円207 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,658 円3,511 億円 | 760 円729 億円 | +72.9% | +5.6% | 4,417 円4,240 億円 |
今の株価時価総額 2,556 円2,453 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 新横浜線が定着し、横浜駅西口と客室の拡大が当たる 利益 358 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,432 円6,175 億円
新横浜線の利用が計画を超えて増え、沿線の定期・定期外がともに伸びる。横浜駅西口の相鉄ムービル跡地の一体開発が 2030 年代に動き出し、ジョイナスの建て替えまで見通せる。不動産は床が 25% 増え、賃料も物価以上に上がる。ホテルは出店を続け、訪日客の増加が横浜・東京・大阪の単価を支える。運賃は認可で物価に追いつき、運輸の利益率は直通開業前の水準に戻る。借り換えで利払いは年 100 億円ほど増えるが、本業の伸びがそれを上回る。ROE は資本コストをわずかに超えるが、重い借金が倍率を抑える。
(名目の前提)運賃は認可で物価に遅れて追いつき、賃料・客単価は物価並みに上がる。人員・床・客室は実質で置いた。借金の借り換えによる利払い増を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の250億円が10年後に約 327億円(物価で一律に増やすと約 311億円)。営業利益は +16億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 10億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 運輸(相模鉄道の鉄道・バス):数量 268(年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定))× 価格 2.33(1 人あたり運輸収入(百円))→ 売上 624 億円・営業利益 100 億円。人員 +5%(新横浜線の定着)・運賃 1.34 倍・利益率16%・償却は物価で増やさず按分(10年後 327億円)
- 不動産(賃貸・分譲):数量 75.0(賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定))× 価格 16(1 ㎡あたりの実効売上(万円))→ 売上 1,204 億円・営業利益 265 億円。床 1.25 倍・賃料 1.40 倍・利益率 22%
- ホテル:数量 713(年間販売客室数(万室、推定))× 価格 1.70(1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む))→ 売上 1,209 億円・営業利益 242 億円。室数 1.15 倍・単価 1.40 倍・利益率 20%
- 流通(スーパー・小売):数量 65.0(年間来店客数(百万人、推定))× 価格 20(客単価(百円))→ 売上 1,302 億円・営業利益 20 億円。来店 横ばい・価格 1.34 倍・利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 358 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.89 倍、時価総額 4,615 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃改定が通り、新横浜線の利用が計画を取り返す筋書きは、直通の実績(計画の 7 割)から強くは置けない。借金が重いので 1 割弱にとどめた。
やや楽観 21% 直通効果と不動産投資が計画どおり実り、着実に伸びる 利益 283 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,306 円5,094 億円
第 7 次中期経営計画の投資 1,970 億円が計画どおり収益を生む。新横浜線は計画の 7 割から少しずつ取り戻し、運輸は人口減を直通の客で相殺する。不動産は床が 17% 増え、星川・天王町など沿線の開発と賃貸マンションが利益を積む。ホテルは万博の山から下がるが、新しい客室が単価の上昇を支える。分譲は粗利益率が戻りきらず、不動産の利益率は 20% 台前半にとどまる。利払いは 10 年で年 100 億円超増えるが、増えた営業利益が吸収する。
(名目の前提)運賃は認可で物価に遅れて追いつき、賃料・客単価は物価並みに上がる。人員・床・客室は実質で置いた。借金の借り換えによる利払い増を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の250億円が10年後に約 327億円(物価で一律に増やすと約 317億円)。営業利益は +10億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 17億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 運輸(相模鉄道の鉄道・バス):数量 258(年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定))× 価格 2.30(1 人あたり運輸収入(百円))→ 売上 592 億円・営業利益 87 億円。人員 +1%・運賃 1.32 倍・利益率14.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 327億円)
- 不動産(賃貸・分譲):数量 70.2(賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定))× 価格 16(1 ㎡あたりの実効売上(万円))→ 売上 1,095 億円・営業利益 224 億円。床 1.17 倍・賃料 1.36 倍・利益率 20.5%
- ホテル:数量 688(年間販売客室数(万室、推定))× 価格 1.65(1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む))→ 売上 1,133 億円・営業利益 210 億円。室数 1.11 倍・単価 1.36 倍・利益率 18.5%
- 流通(スーパー・小売):数量 63.7(年間来店客数(百万人、推定))× 価格 20(客単価(百円))→ 売上 1,276 億円・営業利益 13 億円。来店 −2%・価格 1.34 倍・利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 283 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 3,430 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画(2028/03 期に営業利益 380 億円)の延長線で、会社の資本配分を考えれば一番ありそうな上側の姿。
中立 32% 中立:人口減を直通と不動産の床で相殺 利益 227 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,621 円4,436 億円
運輸は人口減で人員が 3% ほど減り、運賃改定は物価に 2 年ほど遅れて 1.30 倍にとどまる。新横浜線の施設使用料が重く、運輸の利益率は 12% で止まる。不動産は取得と開発で床が 10% 増え、賃料は物価並みに上がる。ホテルは万博の山を越えて利益率が 17% に下がる。分譲は年ごとに揺れ、流通は食品の値上がりを吸収しきれず利益が薄いまま。営業利益は 479 億円で、物価の 1.34 倍には届かない。借り換えの利払い増 106 億円が利益を削り、ROE は 6.5% にとどまる。
(名目の前提)運賃は認可で物価に遅れて追いつき、賃料・客単価は物価並みに上がる。人員・床・客室は実質で置いた。借金の借り換えによる利払い増を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の250億円が10年後に約 327億円(物価で一律に増やすと約 320億円)。営業利益は +7億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 23億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 運輸(相模鉄道の鉄道・バス):数量 247(年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定))× 価格 2.26(1 人あたり運輸収入(百円))→ 売上 559 億円・営業利益 74 億円。人員 −3%・運賃 1.30 倍(認可の遅れ)・利益率13.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 327億円)
- 不動産(賃貸・分譲):数量 66.0(賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定))× 価格 15(1 ㎡あたりの実効売上(万円))→ 売上 1,014 億円・営業利益 193 億円。床 1.10 倍・賃料 1.34 倍・利益率 19%
- ホテル:数量 670(年間販売客室数(万室、推定))× 価格 1.62(1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む))→ 売上 1,086 億円・営業利益 185 億円。室数 1.08 倍・単価 1.34 倍・利益率 17%(万博の山から低下)
- 流通(スーパー・小売):数量 61.8(年間来店客数(百万人、推定))× 価格 20(客単価(百円))→ 売上 1,238 億円・営業利益 10 億円。来店 −5%・価格 1.34 倍・利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 227 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,751 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上と下の議論の落としどころ。運賃は物価に遅れて追いつき、ホテルは万博の山から下がる。
やや悲観 24% 分譲の不振とホテル供給の増加が重なる 利益 120 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,355 円1,301 億円
分譲の粗利益率が戻らず、賃貸の伸びが投資の利回りに届かない。ホテルは万博後の反動に東京・横浜・大阪の供給増が重なり、単価が伸びず利益率は 13.5% まで下がる。運輸は新横浜線の人員が計画を下回ったまま、施設使用料と人件費が固定費として残る。流通は薄利で、店舗の整理も出る。利払いは 10 年で年 110 億円ほど増え、純利益は今の 6 割に落ちる。配当は守るが自己株買いは出ない。
(名目の前提)運賃は認可で物価に遅れて追いつき、賃料・客単価は物価並みに上がる。人員・床・客室は実質で置いた。借金の借り換えによる利払い増を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の250億円が10年後に約 327億円(物価で一律に増やすと約 330億円)。営業利益は −3億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 36億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 運輸(相模鉄道の鉄道・バス):数量 240(年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定))× 価格 2.21(1 人あたり運輸収入(百円))→ 売上 530 億円・営業利益 47 億円。人員 −6%・運賃 1.27 倍・利益率8.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 327億円)
- 不動産(賃貸・分譲):数量 61.8(賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定))× 価格 15(1 ㎡あたりの実効売上(万円))→ 売上 921 億円・営業利益 147 億円。床 1.03 倍・賃料 1.30 倍・利益率 16%
- ホテル:数量 620(年間販売客室数(万室、推定))× 価格 1.57(1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む))→ 売上 976 億円・営業利益 132 億円。室数 横ばい・単価 1.30 倍・利益率 13.5%
- 流通(スーパー・小売):数量 59.8(年間来店客数(百万人、推定))× 価格 19(客単価(百円))→ 売上 1,162 億円・営業利益 3 億円。来店 −8%・価格 1.30 倍・利益率 0.3%
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 120 ÷ k 8.25% = 1,412 億円)より資産の床のほうが大きいので、売れる資産の税後 1,100 億円(floor_assets_oku)を時価総額にそのまま置いた。今の自己資本 2,032 億円に対する PBR は 0.54 倍。償却を計算どおりに置き直して利益が細り、悲観と同じ床で値が付く。
確率:借金が重く、分譲と宿泊という景気で振れる事業が利益の半分を占める。直通の需要不足がすでに出ている。
悲観 14% 構造的に稼ぐ力を失う:直通が空振り、不動産とホテルが失速 利益 −40 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,146 円1,100 億円
新横浜線の利用が計画に届かないまま、施設使用料だけが固定費として残る。運輸の人員は 12% 減り、運賃も物価に追いつけない。不動産は取得した物件の賃料が伸びず、分譲は売れ残る。ホテルは供給過多と人手不足で稼働も単価も落ち、利益率は 7% まで下がる。借り換えで利払いは 10 年で年 120 億円ほど増え、純利益はほぼ消える。配当は最低限に抑え、資産の売却で借金を減らす。株主から見れば、稼ぐ力ではなく持っている資産の値段で測る会社になる。
(名目の前提)運賃は認可で物価に遅れて追いつき、賃料・客単価は物価並みに上がる。人員・床・客室は実質で置いた。借金の借り換えによる利払い増を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の250億円が10年後に約 327億円(物価で一律に増やすと約 354億円)。営業利益は −27億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 55億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 運輸(相模鉄道の鉄道・バス):数量 224(年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定))× 価格 2.09(1 人あたり運輸収入(百円))→ 売上 469 億円・営業利益 −4 億円。人員 −12%・運賃 1.20 倍・利益率-0.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 327億円)
- 不動産(賃貸・分譲):数量 57.0(賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定))× 価格 14(1 ㎡あたりの実効売上(万円))→ 売上 784 億円・営業利益 86 億円。床 0.95 倍・賃料 1.20 倍・利益率 11%
- ホテル:数量 558(年間販売客室数(万室、推定))× 価格 1.45(1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む))→ 売上 811 億円・営業利益 57 億円。室数 0.90 倍・単価 1.20 倍・利益率 7%
- 流通(スーパー・小売):数量 55.2(年間来店客数(百万人、推定))× 価格 18(客単価(百円))→ 売上 990 億円・営業利益 −5 億円。来店 −15%・価格 1.20 倍・利益率 −0.5%
倍率:稼ぐ力(純利益 17 億円 ÷ k 8.25% = 200 億円)より売れる資産の床のほうが大きいので、資産の床 1,100 億円を時価総額にそのまま置いた。今の自己資本 2,032 億円に対する PBR は 0.54 倍。純有利子負債 4,226 億円を足した EV ÷ 営業利益は 35.7 倍と 20 倍を超えるが、利益が谷の年で測るので参考にとどめ、価値は資産の床で見ている。
確率:借金が営業利益の 10 倍と重く、金利が上がる局面では下振れが一気に出る。業界の悲観の深さ(東急・京王より重い借金)に合わせた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
運輸(相模鉄道の鉄道・バス)
相模鉄道の本線・いずみ野線・新横浜線と相鉄バス。横浜と海老名・湘南台を結び、新横浜線で東急線・都心へ直通する。
| 数量年間輸送人員(百万人、鉄道とバス。推定) | 価格1 人あたり運輸収入(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 255 | 1.74 | 444 | 57 |
| 10 年後 中立 | 247 | 2.26 | 559 | 74 |
取り方:運輸の売上 443.8 億円を、鉄道(2024/03 期 2.15 億人)とバスの輸送人員(約 3 千万人)に新横浜線の増分を足した約 2.55 億人(推定)で割った。運賃は国の上限認可で、費用が積み上がってから改定する。
不動産(賃貸・分譲)
横浜駅西口の相鉄ジョイナスなどの商業・オフィス賃貸と、沿線の分譲マンション。分譲は年ごとの出入りが大きい。
| 数量賃貸・分譲を床面積に換算した実効面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたりの実効売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 11 | 688 | 140 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 15 | 1,014 | 193 |
取り方:不動産の売上 688 億円を、賃貸床と分譲の販売面積を合わせた実効面積約 60 万㎡(推定)で割った。分譲は粗利益率が落ちて前期から減益。増える床は 3 年 1,132 億円の不動産取得・開発、賃料は物価並みに上がる。
ホテル
相鉄フレッサインなどのビジネスホテルを首都圏・関西・地方に展開する。横浜・東京・大阪が中心。
| 数量年間販売客室数(万室、推定) | 価格1 室あたり売上(万円、宿泊・宴会・飲食を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 620 | 1.21 | 751 | 165 |
| 10 年後 中立 | 670 | 1.62 | 1,086 | 185 |
取り方:ホテルの売上 750.6 億円を、年間の販売客室数約 620 万室(推定)で割った。1 室 1.2 万円は宿泊のほか宴会・飲食を含む。2026/03 期は大阪・関西万博で宿泊単価が上がった年で、利益率 21.9% は山にあたる。
流通(スーパー・小売)
沿線のスーパーなどの小売。売上は大きいが利益はほぼ出ない。
| 数量年間来店客数(百万人、推定) | 価格客単価(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65.0 | 15 | 972 | 9 |
| 10 年後 中立 | 61.8 | 20 | 1,238 | 10 |
取り方:流通の売上 972 億円を、年間来店客数約 6,500 万人(推定)と客単価(約 15 百円)に分けた。食品の値上がりは価格に入り、数量は人口減でじわじわ減る。
リスクと懸念
借金の重さと金利
純有利子負債は営業利益の約 11 倍。借り換えで金利が 3.5% 前後に上がると、10 年で利払いが年 100 億円ほど増え、純利益の 4 割に当たる。成長投資が借金で賄われるため、減らす余地も小さい。
ホテルの利益が山にある
ホテルの営業利益 164 億円は大阪・関西万博の特需を含む。2027年3月期は反動減を会社自身が見込む。東京・横浜・大阪で宿泊特化型の供給が増えれば、単価と稼働は下がる。
新横浜線の需要不足と固定費
東急との直通線は、需要が当初計画の 7 割と報じられた。定期の客が想定に届かない一方、施設使用料は毎年固定費として残る。運輸の利益が伸びない原因になる。
分譲の粗利益率の低下
不動産の分譲は粗利益率が落ち、2026年3月期に不動産は減益だった。年ごとの出入りが大きく、利益の質は賃貸より低い。
西口開発の長さ
横浜駅西口の大改造は完成が 2040 年代で、資金は前半に出ていく。横浜市など関係者との協議も要り、工期が延びれば投資の回収が遅れる。
流通の薄利
流通は売上 972 億円に対し営業利益 9 億円。食品の値上がりや人件費を価格に転嫁しきれず、店舗の整理や減損が出る可能性がある。
今後の分かれ目
- 新横浜線の利用が計画の 9 割まで戻ったら
- 運輸の利益率の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を厚くしてよい。
- 長期金利が 3% を超えて上がり続けたら
- 利払いが想定より増え、やや悲観・悲観側に確率を寄せる。
- ホテルの営業利益が 120 億円を割ったら
- 万博の山からの低下が深く、不動産とホテルの利益率を下げる。
- 西口の一体開発に市と合意し、着工の時期が決まったら
- 不動産の床の伸びの前提を上げてよい。ただし資金の負担も同時に増える。
- 不動産を売って借金を減らす方針が出たら
- 利払いの負担が下がり、ROE の改善の根拠になる。
見ておくもの
- 新横浜線の輸送人員と東急線直通の利用実績
- ホテル業の営業利益と客室単価・稼働率
- 不動産分譲の粗利益率と販売戸数
- 純有利子負債と有利子負債 ÷ EBITDA、自己資本比率の推移
- 横浜駅西口の一体開発の計画と資金負担
倍率と資本コストの決め方
倍率は式で置き、今の PBR 1.2 倍や同業の PER には寄せていない。中立の ROE 6.5% は k 8.25% に届かず、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍で、上限の 8.5 割の 10.0 倍に置いた。やや楽観は 9 割、楽観は下限の 11.8 倍。やや悲観は稼ぐ力から 8.5 倍、悲観は売れる資産の床。k は基本 7.5% に quality 1.0% で、近鉄・西武と同じ重さ、阪急阪神より重い。借金が営業利益の約 11 倍で、阪急阪神(約 10.6 倍)とほぼ同じ重さだが、規模が小さく利益がホテルと分譲で振れるので循環も上げた。結果の割高は計算どおり。リースは新会計基準(2028/03 期から BS に載る)で形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。含み益は悲観の床にだけ使い、中立〜楽観には賃料・売却益が純利益に入っているので足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→12.89 倍・やや楽観 PER 10.6→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。規制運賃と沿線の土地による下げを、重い借金の上げが打ち消してなお残る。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。