結論
北海道中央バスは、小樽・札幌・道央を地盤とする路線バスの会社だ。バスに加えて、建設、清掃・警備、不動産、観光を持つ。売上は384億円、営業利益は26.5億円で、2026年3月期は過去最高の純利益27.8億円を出した。
筆者の結論は「割高」だ。時価総額は135億円で、純現金118億円がその9割近くを占める。事業そのものを、ほとんど値段を払わずに手に入れている形になる。ただ、純現金は車両の更新と運転士の賃上げに使うべき資金で、全部が株主のものではない。親会社が37%を持ち、配当性向も5.6%と低い。現金が株主に戻る道は細い。
利益の質にも不安がある。直近の営業利益は、2024年12月の運賃改定と観光の追い風が重なった山だ。会社自身が今期を営業利益16億円、4割の減益と予想し、4〜6月期は3.4億円の営業赤字に沈んだ。過去10年のROEの中央値は2.6%で、資本コストを下回る。コロナ期には2期続けて赤字を出した。
10年の姿は、人口減で旅客が減り、運賃で補い切れない、というものだ。営業利益は名目で20億円まで下がる。上振れの鍵は運転士の確保と運賃改定、観光、不動産だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、北海道中央バスは「安く買えるが、育てて儲ける会社ではない」。まず守りは強い。自己資本比率は70%、借入の残高はなく、純現金は118億円。不況でも倒れない。時価総額は135億円で、その9割近くが純現金だ。
次に稼ぐ力を見る。過去10年のROEの中央値は2.6%。コロナ期には2期続けて赤字を出した。今の利益は、運賃改定と観光の追い風が重なった山で、会社自身が4割の減益を予想している。
土地は97億円、建物は52億円と簿価が大きい。賃貸等不動産の時価は確認できず、含み益は数字に入れていない。バスの車庫や営業所は事業に要る土地で、売れば事業が止まる。賃料は利益に残るので、価値には足さない(二重を避ける)。
経営陣の資本配分は、これからの課題だ。配当性向5.6%、自社株買いなしという実績は、現金を溜め込む姿勢に見える。親会社が37%を持つため、少数株主の声は届きにくい。
そのうえで値段を見ると、純現金のうち事業に要らない分を半分だけ数え、事業は低いPERで見る。この内訳に、現金が10年先まで戻らない遅れを割り引くと、本質価値は今の時価総額を大きく下回る。安全域は厚く見えるが、安さの証拠ではないと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
2026年3月期の連結売上は384億円。事業は6つに分かれる。
中心は旅客自動車運送で、セグメント売上は198億円、営業利益は9.7億円。札幌圏と道央の路線バス、高速バス、空港連絡バスを運行する。運賃は国の認可制で、2024年12月に改定した。運転士の不足から、札幌圏では路線を減らし、運行回数を絞る動きが続く。一方で空港バスは増やしている。
建設業は売上125億円、営業利益9.4億円で、利益率はバスより高い。道内の土木・建築を請け負う。
観光関連は売上32億円、営業利益4.3億円。定期観光バス、ホテルなどを持つ。コロナ期には大きな赤字を出した部門で、訪日客の戻りで利益が出ている。
清掃業・警備業は売上37億円、営業利益1.1億円。不動産は売上8億円と小さいが、営業利益は2.8億円と利益率が高い。その他は売上29億円で、営業利益は0.2億円にとどまる。
セグメントの売上は合計が連結売上より大きい。グループ内の取引を含むためで、筆者は連結に合わせて按分した。従業員は連結で約2,500人、単体で約1,400人。主要株主は親会社の中央バス総業で、37%を持つ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、路線の密度と許認可にある。札幌圏から道央、小樽まで張り巡らした路線網は、一朝一夕に作れない。運賃は国の認可制で、原価の上昇は運賃改定で転嫁できる。景気で乗客が大きく減る事業でもない。
ただし、この堀が守れるのは需要の減少を値上げで埋める力までで、利益を増やす力ではない。運転士の確保が最大の制約で、賃金は運賃より先に動く。運賃を上げても、認可を待つ間は利益が削られる。実際に、札幌圏では路線を減らす動きが続いている。
多角化は、利益の質を二つに割った。建設は営業利益率が8%を超え、不動産は3割を超える。これらがバスの低収益を補っている。ただし建設は景気と公共事業の波を受け、観光はコロナ期の大きな赤字を経験した。
資本効率は弱い。自己資本は329億円と厚いのに、ROEは過去10年の中央値で2.6%。2026年3月期の8.5%は、運賃改定と観光の追い風が重なった特別な年だ。純現金と土地・上場株式が多く、利益を生む資産が少ない。
財務は極めて堅い。自己資本比率は70%、借入の残高はなく、当座貸越の枠は129億円ある。倒れる心配はほぼないが、それは堅いというだけで、安いとは別の話になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方のバスは、人口減と運転士不足に挟まれた事業だ。全国の乗合バスの輸送人員は、コロナ前の水準まで戻っていない。長期では減る需要で、運転士不足を理由にした減便や路線廃止が各地で増えた。路線廃止が届出制に変わり、撤退しやすくなったことも背景にある。
供給側の制約も重い。2024年からの拘束時間の規制で、運転士一人当たりの稼働が減った。増便したくても運転士がいない。事業者は、採算の悪い路線を減らし、残した路線で運賃を上げる方向に動いている。北海道中央バスも2024年12月に運賃を改定し、2026年3月期の増益の土台になった。
追い風は、訪日客と観光だ。空港連絡バスや高速バスの需要を支える。札幌圏は道内で人口が集まる地域で、郊外や小樽方面に比べると、乗客の減り方は穏やかだ。
逆風は、冬の除雪や暖房の費用、車両の更新費の上昇、そして運転士の賃金だ。会社は車両の多くをリースで入れていて、2026年3月期の設備投資43億円のうち34億円がバスのリースだった。新しい車両は高い値段で入るので、リース料は物価とともに上がる。
今期の会社予想は営業利益16億円で、前期より4割減る。4〜6月期は営業赤字だった。10年で見ると、旅客は人口減で5〜10%減り、運賃は物価に近い水準まで上がる、というのが筆者の標準的な見立てだ。ただし運賃は認可を待つ分だけ遅れ、賃金に追いつくのが後になる。
資本政策と M&A
配当は2026年3月期の総額が約1.7億円で、配当性向は5.6%。純現金118億円、自己資本329億円という厚さに比べて、還元はごくわずかだ。自社株買いの実績は確認できなかった。親会社の中央バス総業が37%を持ち、少数株主に現金が回る力は弱い。
2025年2月に改革本部を置いて「第二の創業」を掲げたが、数字の目標は出ていない。資本政策が変わるかは、まだ見えない。
上場株式は42銘柄で22億円、うち北洋銀行が12.6億円。非上場株は28銘柄で2.3億円。会社は取引関係の維持のためとする。
株主優待は、3月と9月の年2回。100株で乗車運賃の半額券が年60枚、1枚千円分の優待利用券が3枚、スキー場などの半額券が4枚つく。2026年3月の権利分から、10%割引券が千円分の券3枚に変わった。費用は開示がなく、筆者は半額券が空席への乗車で実費が小さいことから年0.5億円と推定し、10年で5億円を還元に加えた。金額が小さく、評価への影響は限られる。
投資は車両のリースが中心だ。当座貸越の枠129億円は借りていない。親会社による非上場化や完全子会社化は、開示の範囲では確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額135億円に対し、純現金は118億円ある。借入はなく、自己資本比率は70%、当座貸越の枠は129億円だ。事業を、現金を引いた十数億円で手に入れる形になる。PBRは0.4倍と、清算に近い値段だ。
事業が稼ぐ力も戻ってきた。2024年12月の運賃改定の後、2026年3月期の営業利益は26.5億円、純利益は27.8億円と過去最高を更新した。運賃は認可制で、賃金の上昇は改定で転嫁できる。観光関連は営業利益率が15%に達し、建設は8%を超える。不動産は3割を超える。バス一本ではなく、利益の源が分散している。
2025年に置いた改革本部は「第二の創業」を掲げた。資本効率への圧力が、親会社と市場の双方から強まれば、現金の返し方が変わる。配当性向5.6%は、引き上げの余地が大きい。優待も拡充の方向で、株主を大事にする姿勢が出てきた。
10年の姿では、観光と不動産が支え、営業利益は名目で30億円近くまで届く。そうなれば純現金の積み上がりも加わり、今の値段の2倍の価値もありうる。
慎重な見方
今の営業利益は山にすぎない。会社自身が今期を営業利益16億円、4割減と予想し、4〜6月期は3.4億円の営業赤字だった。運賃改定の効果と観光の追い風が一巡し、賃上げと車両費が先に効いている。
純現金118億円は、全部が株主のものではない。車両の更新が毎年続き、設備投資43億円のうち34億円がバスのリースだ。運転士不足で賃金も上がる。この資金が、事業に使われ続けるかぎり、現金の厚さは評価に結びつかない。
親会社が37%を持ち、配当性向は5.6%。10年以上、現金を溜め込んでも還元しない会社だ。ROEは過去10年の中央値で2.6%と資本コストに届かず、PBR0.4倍は、市場がこの資本効率の悪さを見ている結果でもある。
事業の将来も厳しい。人口減で旅客は減り、運転士不足で減便が続く。札幌圏でも路線を減らす動きが出ている。コロナ期には2期続けて赤字を出し、観光と建設も景気に左右される。
純現金の厚さに目を奪われず、現金が戻る道があるかを見るべきだ。戻らない現金は、PBR0.4倍の理由にすぎない。
どちらに重みを置いたか
筆者は、堅さは本物だが値段は高いと判断した。純現金と許認可に守られ、下値は固い。一方、稼ぐ力は低く、現金が株主に戻る道も細い。戻らない現金を10年先まで割り引くと、今の時価総額には届かない。
確率は、やや悲観と悲観を合わせて3割台半ばに置いた。強気は合わせて3割弱、中立に4割弱を置いた。資本の使い方への不安は、現金の戻り方を0.5に抑えることと、事業の倍率を式の上限の7〜8割にとどめることで重く見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,297 円243 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 775 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 5,050 円132 億円、今との差 −1.9%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 17,120 円448 億円 | 1,529 円40 億円 | +262.1% | +13.7% | 1,305 円34 億円 |
| やや楽観 | 20% | 13,438 円352 億円 | 1,070 円28 億円 | +181.7% | +10.9% | 2,902 円76 億円 |
| 中立 | 38% | 10,544 円276 億円 | 841 円22 億円 | +121.1% | +8.3% | 4,326 円113 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,613 円121 億円 | 459 円12 億円 | −1.5% | −0.2% | 1,268 円33 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,512 円66 億円 | 191 円5 億円 | −47.5% | −6.2% | 270 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,297 円243 億円 | 775 円20 億円 | +95.6% | +6.9% | 10,072 円263 億円 |
今の株価時価総額 5,150 円135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 乗客が戻って増え、運賃が賃金に追いつく 利益 28 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 17,120 円448 億円
訪日客と道内観光が伸び続け、空港バスと高速バスが増える。運転士の確保に成功し、減便は止まって、旅客数は10年で2%減にとどまる。運賃は物価を少し上回って通り、バス本体の営業利益率は5%に乗る。
建設は道内の更新工事が途切れず、施工量が5%増える。観光関連は需要が戻って利益率が14%に届く。不動産は用地の活用が進み、賃貸と分譲が3割増える。
会社全体の営業利益は37億円、利益率は6.8%。直近の山(6.9%)に並ぶ水準で、これを超える筋書きは置かない。
「第二の創業」の改革本部が資本効率の改善まで踏み込み、配当と優待も厚くなる。ただ自己資本が厚いため、ROEは5%に届かない。
- 旅客自動車運送(路線・高速・空港バス):数量 4,312(旅客数(万人・筆者の推定))× 価格 5.64(1人あたり売上(百円・名目))→ 売上 243 億円・営業利益 12 億円。旅客数2%減、1人あたり1.40倍。営業利益率5%
- 建設業:数量 118(施工量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.38(工事単価の指数(今を1))→ 売上 162 億円・営業利益 13 億円。施工量5%増、工事単価1.38倍。営業利益率8%
- 清掃業・警備業:数量 33.2(契約量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.36(単価の指数(今を1))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。契約量横ばい、単価1.36倍。営業利益率3.5%
- 不動産:数量 9.5(賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.35(単価の指数(今を1))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。量3割増、単価1.35倍。営業利益率36%
- 観光関連:数量 32.5(利用量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.40(単価の指数(今を1))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。量15%増、単価1.40倍。営業利益率14%
- その他:数量 25.8(取扱量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。量横ばい、単価1.34倍。営業利益率2%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 413 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:観光の追い風、札幌圏の需要、運賃改定の定着、改革本部の成果が全部重なる筋書き。過去10年で営業利益率が6%を超えたのは直近だけなので、1割に届かない確率にとどめた。
やや楽観 20% 観光と不動産が支え、営業利益率が5%台に乗る 利益 21 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 13,438 円352 億円
旅客数は人口減で5%減るが、運賃は物価並みに通る。バス本体の営業利益率は3.5%まで戻る。運転士の賃上げが先行する年はあっても、改定の後追いで取り返す。
建設は施工量が横ばいで、単価は物価並み。観光関連は量が8%増え、利益率12%を保つ。不動産は量が2割増える。
営業利益は28億円、利益率5.4%。直近の26.5億円と同じ規模を、名目で保つ姿だ。物価が1.34倍になるので、実質では2割ほど目減りしている。
配当は性向10%台にとどまるが、優待は続く。ROEは4%弱で、資本コストに届かない。純現金は車両のリースと賃上げに一部を使いながらも、10年で厚みを増す。
- 旅客自動車運送(路線・高速・空港バス):数量 4,180(旅客数(万人・筆者の推定))× 価格 5.56(1人あたり売上(百円・名目))→ 売上 233 億円・営業利益 8 億円。旅客数5%減、1人あたり1.38倍。営業利益率3.5%
- 建設業:数量 112(施工量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.36(工事単価の指数(今を1))→ 売上 152 億円・営業利益 11 億円。施工量横ばい、工事単価1.36倍。営業利益率7%
- 清掃業・警備業:数量 33.2(契約量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。契約量横ばい、単価1.34倍。営業利益率2.5%
- 不動産:数量 8.8(賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.32(単価の指数(今を1))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。量2割増、単価1.32倍。営業利益率35%
- 観光関連:数量 30.5(利用量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.38(単価の指数(今を1))→ 売上 42 億円・営業利益 5 億円。量8%増、単価1.38倍。営業利益率12%
- その他:数量 25.8(取扱量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。量横ばい、単価1.34倍。営業利益率1%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 319 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024年の運賃改定と観光の戻りで利益が出ている今を、そのまま続けられる筋書き。会社自身が今期を4割減益と見ているため、中立より重くはしなかった。
中立 38% 乗客減を運賃で補い、利益は名目でほぼ横ばい 利益 16 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 10,544 円276 億円
旅客数は人口減と減便で8%減る。運賃は物価に近い1.36倍まで通るが、賃上げが先行するので、バス本体の営業利益率は2.5%にとどまる。2026年3月期の5.5%は、運賃改定の直後と観光の追い風が重なった山だ。
建設は施工量が5%減り、利益率は5.5%に戻る。観光関連は横ばいで、利益率9%。不動産は1割増える。
営業利益は20億円、利益率4.1%。名目で見れば直近より少ないが、物価が1.34倍になるため、実質では3割近く目減りする。
車両は大半をリースで入れる。更新の車両は新しい高い値段で入るので、リース料と償却は物価で増える。この分を利益率に織り込んだ。
還元は配当が今の総額並みで、優待が加わる。性向は1割前後で、現金は積み上がる。ROEは3%で、過去10年の中央値(2.6%)に近い。
- 旅客自動車運送(路線・高速・空港バス):数量 4,048(旅客数(万人・筆者の推定))× 価格 5.48(1人あたり売上(百円・名目))→ 売上 222 億円・営業利益 6 億円。旅客数8%減、1人あたり1.36倍。営業利益率2.5%
- 建設業:数量 106(施工量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(工事単価の指数(今を1))→ 売上 143 億円・営業利益 8 億円。施工量5%減、工事単価1.34倍。営業利益率5.5%
- 清掃業・警備業:数量 33.2(契約量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 45 億円・営業利益 1 億円。契約量横ばい、単価1.34倍。営業利益率2%
- 不動産:数量 8.1(賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.30(単価の指数(今を1))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。量1割増、単価1.30倍。営業利益率33%
- 観光関連:数量 28.3(利用量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。量横ばい、単価1.34倍。営業利益率9%
- その他:数量 25.8(取扱量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.34(単価の指数(今を1))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。量横ばい、単価1.34倍。営業利益率0.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)52 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 246 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の会社予想(営業利益16億円)と直近の実績(26.5億円)の間に、10年の利益を置く。バスは人口減と運転士不足、観光とコロナ期の赤字は景気の振れ、という実情に最も近い筋書きとして4割弱を置いた。
やや悲観 25% 運転士不足で減便が続き、バスが赤字に近づく 利益 9 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 4,613 円121 億円
旅客数は人口減と減便で14%減る。運賃は認可を待つ間に賃上げが先行し、1人あたりは1.30倍にとどまる。バス本体の営業利益率は0.5%まで落ちる。
建設は民間の工事が細り、施工量が1割減る。観光関連は景気の悪化で量が1割減り、利益率は6%に下がる。不動産だけが堅い。
営業利益は10億円、利益率2.3%。コロナ前の水準に近い。
配当は維持するが、優待の継続は難しくなる。現金は積み上がるものの、車両更新と賃上げで一部が消える。ROEは2%を割る。会社は不採算の路線を整理し、残した路線の運賃を上げて守りに入る。
- 旅客自動車運送(路線・高速・空港バス):数量 3,784(旅客数(万人・筆者の推定))× 価格 5.24(1人あたり売上(百円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 1 億円。旅客数14%減、1人あたり1.30倍。営業利益率0.5%
- 建設業:数量 101(施工量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.30(工事単価の指数(今を1))→ 売上 131 億円・営業利益 5 億円。施工量1割減、工事単価1.30倍。営業利益率4%
- 清掃業・警備業:数量 31.5(契約量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.30(単価の指数(今を1))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。契約量5%減、単価1.30倍。営業利益率1.5%
- 不動産:数量 7.7(賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.25(単価の指数(今を1))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。量5%増、単価1.25倍。営業利益率32%
- 観光関連:数量 25.4(利用量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.30(単価の指数(今を1))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。量1割減、単価1.30倍。営業利益率6%
- その他:数量 23.2(取扱量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.30(単価の指数(今を1))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。量1割減、単価1.30倍。営業利益率−1%
倍率:ROE約1.7%は資本コスト7.5%に遠く届かない。RONICは約5.2%、g 2%の正当化PERは約9.1倍。稼ぐ力が弱いので上限の約6.5割の6.0倍に置いた。余った現金は戻り方0.5で足し、谷で食う分は引く。
確率:運転士不足による減便は、すでに札幌圏で起きている。人口減と観光の振れが重なり、バス本体の利益が消える筋書きで、中立に次ぐ2割台半ばを置いた。
悲観 10% バス事業が構造的に赤字になり、事業の価値が消える 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 2,512 円66 億円
旅客数は25%減り、路線の大幅な縮小が続く。運賃は認可を待つ間に賃金が上がり、バス本体は赤字になる。観光関連は量が25%減って利益が消え、建設も施工量が25%減る。
営業利益は赤字に沈み、配当は最低限に絞る。優待は縮小し、会社は人員と車両の削減で生き延びる道を選ぶ。コロナ期のように営業赤字が複数年続いても、純現金があるので倒れはしない。
少数株主に残る価値は、事業の稼ぎでなく、売れる資産で決まる。余った現金の半分、上場している政策保有株、売れる土地だ。バスの停留所や車庫など、事業に要る土地は売れない。事業は小さくなって生き残り、路線の多くは自治体の補助に頼る形になる。
- 旅客自動車運送(路線・高速・空港バス):数量 3,300(旅客数(万人・筆者の推定))× 価格 4.64(1人あたり売上(百円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 −5 億円。旅客数25%減、1人あたり1.15倍。営業利益率−3%
- 建設業:数量 84.0(施工量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.15(工事単価の指数(今を1))→ 売上 97 億円・営業利益 2 億円。施工量25%減、工事単価1.15倍。営業利益率2%
- 清掃業・警備業:数量 28.2(契約量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.20(単価の指数(今を1))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。契約量15%減、単価1.20倍。営業利益率0%
- 不動産:数量 7.0(賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.15(単価の指数(今を1))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。量5%減、単価1.15倍。営業利益率28%
- 観光関連:数量 21.2(利用量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.15(単価の指数(今を1))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。量25%減、単価1.15倍。営業利益率0%
- その他:数量 20.6(取扱量(実質、今の値段で換算した億円))× 価格 1.15(単価の指数(今を1))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。量2割減、単価1.15倍。営業利益率−3%
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。売れる資産の税後約64億円(床の欄)に合わせ、今の自己資本328.7億円に0.20倍を掛けた。
確率:運転士不足と人口減で、バスが補助なしに成り立たなくなる筋書き。コロナ期に2期赤字を出した実績があり、観光と建設も同時に崩れる場合を1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
旅客自動車運送(路線・高速・空港バス)
札幌圏と道央を地盤とする乗合バス、高速バス、空港連絡バス。基幹事業で、運賃は国の認可制。
| 数量旅客数(万人・筆者の推定) | 価格1人あたり売上(百円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,400 | 4.03 | 177 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4,048 | 5.48 | 222 | 6 |
取り方:2026/03期のセグメント売上は198.0億円、営業利益9.7億円(開示)。セグメント売上の合計は連結売上より大きいため、連結売上383.8億円に合わせて0.896倍し177.4億円とした。旅客数は開示を確認できなかったので、4,400万人相当×1人あたり約4.0百円の推定。2024年12月の運賃改定が土台にある。
建設業
道内の土木・建築工事。官公庁と民間の両方を受ける。
| 数量施工量(実質、今の値段で換算した億円) | 価格工事単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 112 | 1.00 | 112 | 9 |
| 10 年後 中立 | 106 | 1.34 | 143 | 8 |
取り方:2026/03期のセグメント売上125.0億円、営業利益9.44億円(開示)。連結に合わせ0.896倍した112.0億円。件数の開示はなく、実質の施工量と工事単価の指数で置く。営業利益率は約8.4%で、バスより高い。
清掃業・警備業
施設の清掃、警備、ビルメンテナンス。人件費が原価の大半。
| 数量契約量(実質、今の値段で換算した億円) | 価格単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.2 | 1.00 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 33.2 | 1.34 | 45 | 1 |
取り方:2026/03期のセグメント売上37.05億円、営業利益1.14億円(開示)。連結に合わせ0.896倍した33.2億円。営業利益率は約3.4%。
不動産
札幌圏などの賃貸と分譲。バス事業の用地を活かした事業を含む。
| 数量賃貸・分譲量(実質、今の値段で換算した億円) | 価格単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.3 | 1.00 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 8.1 | 1.30 | 11 | 4 |
取り方:2026/03期のセグメント売上8.19億円、営業利益2.78億円(開示)。連結に合わせ0.896倍した7.34億円。営業利益率は約38%と高いが、規模は小さい。
観光関連
定期観光バス、ホテル・レジャー、旅行業など。
| 数量利用量(実質、今の値段で換算した億円) | 価格単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.3 | 1.00 | 28 | 4 |
| 10 年後 中立 | 28.3 | 1.34 | 38 | 3 |
取り方:2026/03期のセグメント売上31.54億円、営業利益4.25億円(開示)。連結に合わせ0.896倍した28.3億円。営業利益率は約15%と高く、訪日客の増加が効いた年。コロナ期には大きな赤字を出した部門でもある。
その他
車両整備・販売、保険代理店、飲食・物販などの周辺事業。
| 数量取扱量(実質、今の値段で換算した億円) | 価格単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.8 | 1.00 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 25.8 | 1.34 | 35 | 0 |
取り方:2026/03期のセグメント売上28.76億円、営業利益0.20億円(開示)。連結に合わせ0.896倍した25.8億円。利益はほぼゼロ。
リスクと懸念
運転士不足と賃上げの先行
運転士の確保は最大の制約で、賃金は物価を超えて上がる。運賃の認可を待つ間は利益が削られ、札幌圏では路線を減らす動きがすでに出ている。採用が計画を下回れば、減便が続いて乗客が離れる。
今期の大幅な減益
2026年3月期の増益は、運賃改定の直後と観光の追い風が重なった山で、会社予想の営業利益は16億円と4割減る。4〜6月期は3.4億円の営業赤字だった。通期が下振れすれば、中立の出発点が下がる。
人口減で乗客が戻らない
全国の乗合バスの輸送人員はコロナ前の水準まで戻らず、道内は人口減が速い。路線の維持に自治体の補助が要る地域もあり、補助の方針が変われば路線の採算が変わる。
観光と建設の景気感応
観光関連はコロナ期に大きな赤字を出した。建設は公共と民間の工事量に左右される。この2つが同時に崩れると、バスの低収益を支える柱が消える。
現金が株主に戻らないこと
親会社が37%を持ち、配当性向は5.6%。純現金が積み上がっても、還元が増えなければ、少数株主には価値が届かない。資本政策が変わるかは数字の目標が出ていないため見通せない。
車両更新費の上昇
車両の多くはリースで、更新の車両は新しい高い値段で入る。物価が上がるほど、リース料と償却が増え、見かけの利益を現金が下回る形になる。
今後の分かれ目
- 運転士の採用が計画どおり進み、減便が止まって旅客数が増える
- 中立の旅客数前提を上げ、やや楽観以上に重みを移す。ただしROEが資本コストを超えない限り、倍率は大きく上げない。
- 配当性向が30%を超える、または自社株買いが始まる
- 資本政策の変化とみて、余った現金の戻り方を0.5から0.75へ上げる。
- 運賃改定が賃上げと同時期に認可され、バスの営業利益率が5%を超えて定着する
- バス本体の利益率前提を上げる。ただし山と見るか定着と見るかは、2期続くかで判断する。
- 通期の営業利益が会社予想の16億円を下回る
- 中立の出発点が下がる。やや悲観・悲観に重みを移す。
- 親会社の中央バス総業による買い付けや非上場化が公表される
- 筋書きの外にある上振れ要因になる。提案の価格が本質価値を上回るかは別に確かめる。
- 改革本部が数字の目標(ROE・配当性向)を公表する
- 資本政策の方向が見える。目標の水準に応じて、確率を楽観側へ寄せる。
見ておくもの
- 営業利益の通期実績と会社予想(16億円)
- 運転士の採用・離職と、減便・路線の動き
- 運賃改定の認可のタイミングと賃上げの率
- 配当性向(5.6%)と自社株買いの有無
- 観光関連と建設の営業利益の振れ
- 改革本部の数字の目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、資本コスト7.5%と事業のROE、長期成長(2〜3%)から式で置いた。中立の10年のROEは約3%で、過去10年の中央値2.6%を超えない。中立の営業利益率は4.1%で、直近の山(6.9%)より低く、コロナ期の谷(−14.4%)には戻らない前提を置いた。純利益÷営業利益は中立で0.78と、過去10年の中央値0.77に合わせた。純現金は全額を余りとせず、運転資金とリース債務への備えを除いた70億円だけを余りとし、戻り方は親会社の37%保有と低い配当性向から0.5に抑えた。賃貸等不動産の時価は確認できず、含み益は価値に足さない。セグメントの旅客数・単価は開示を確認できず、筆者の推定を含む。数量は実質、価格は名目(物価10年1.34倍)で置き、車両のリース料と償却は新しい値段で増える前提を利益率に織り込んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→13.33 倍・やや楽観 PER 8→13.33 倍・中立 PER 7.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。