結論
富士急行は、富士山麓の鉄道・バスと、富士急ハイランドやホテルを一体で営む会社だ。営業利益の 6 割近くは運輸が稼ぎ、売上の 4 割強はレジャーが占める。2026 年 3 月期は営業利益 88 億円と過去最高だった。
筆者の結論は、今の値段は 10 年後の利益に対して高すぎる、というものだ。足元の ROE は 14% あるが、利益を積み上げるほど自己資本が厚くなり、10 年後は 9% 台に下がる。
強みは、富士山という動かせない観光資源を持ち、運輸が 25% 近い利益率を出していることだ。弱みは、一つの地域に事業が集まっている点だ。コロナ禍では 2021 年 3 月期に純損失 28 億円を出した。
もう一つ気になるのは、山梨県との土地の問題だ。別荘地の売買は転貸承認が下りず止まっている。
経営計画どおりに進んでも、10 年先の利益は今の 1.4 倍ほどにとどまる。この水準では、今の時価総額に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、富士山麓にこれだけの観光資産を集めた事業は、再現できない。10 年先も、客は富士山を見に来るだろう。
ただし、持ち続けたい会社かを問うと、答えは迷う。利益のうち再投資に回る分が多く、ROE が下がる。成長を買うために、株主に戻る分が小さい。
運輸の安定は評価する。地域独占で、運賃は認可で守られている。だが、利益のほぼ半分を稼ぐレジャーは、客数の波と人件費に振り回される。コロナ禍で赤字に落ちた会社を、強い堀の持ち主とは呼びにくい。
山梨県の土地の問題も、予測できない部分だ。別荘地は止まったままで、結果次第で会社の資産と稼ぎ方が変わりうる。わからない要素が残る以上、確信度は下げる。
安全域の目では、今の値段は 10 年後の利益に対して厚みがない。良い会社だが、払う値段が高すぎると筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 4 つある。
運輸は売上 206 億円・営業利益 51 億円で、利益の中心だ。富士山麓電気鉄道(大月〜河口湖)と岳南電車の鉄道に加え、乗合・高速・貸切バス、タクシー、熱海と初島を結ぶ船、芦ノ湖の遊覧船を持つ。河口湖駅への JR 直通特急が増え、訪日客の入り口になっている。
レジャー・サービスは売上 253 億円で最大だが、利益は 25 億円と薄い。富士急ハイランドが売上 125 億円、ホテルが 66 億円、ゴルフ・スキーとアウトドア施設 PICA がそれぞれ 18 億円ある。ハイランドは 2018 年に入園料を無料にし、園内の消費で稼ぐ形に変えた。
不動産は売上 27 億円と小さいが、利益率は 20% ある。山中湖畔(約 3,200 区画)と十里木高原(約 2,700 区画)の別荘地を分譲・管理してきたが、山梨県の転貸承認が下りず、販売と仲介は止まっている。
その他は百貨店・建設・ミネラルウォーターなどで、売上 80 億円。水は 34 億円で伸びが早い。富士北麓に生活の全部を押さえる、小さな沿線経営だ。
優良さと弱いところ
堀は、富士山という資源と、鉄道・バス・ホテル・遊園地を同じ地域に束ねた構成にある。富士山麓の周遊を、会社の中で完結させやすい。
運輸の利益率は 25% 近い。ただし運賃は国の認可で、費用が上がってからしか改定できない。値決めの力があるというより、地域独占の安定を持つ会社だ。
弱いのは、一つの地域と少数の施設への集中だ。ハイランドは東京ディズニーリゾートや名古屋圏の大型施設と客を競う。ホテルは訪日客の波に左右される。コロナ禍で赤字になった事実は軽くない。
資本効率は今は良い。ROE は 14% で、過去 10 年の中央値 9.7% を上回る。ただし自己資本は 5 年で 3 割以上厚くなり、配当性向 30% では、これ以上は上がりにくい。
経営は、前の中計の目標を全て達成し、借入も減らした。ここは評価できる。一方、政策保有株が純資産の 2 割を超え、会社自身も縮減を掲げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民鉄の複合経営は、鉄道が伸びない前提で、不動産・ホテル・流通で成長を探す業界だ。人口は減るので、定期客の需要は長期で痩せる。一方、定期外の観光客は訪日客が支える。
富士急行は、その観光の追い風を最も受ける立地にある。河口湖駅には外国人客が多い。JR 直通特急の増便や、自動運転 EV バスの実証も運輸を押し上げた。
東急や阪急阪神のような大都市の再開発型とは違い、郊外・観光型だ。梅田や渋谷のように賃料が一段と上がる土地は持っていない。伸びは、観光客数と客単価に頼る。
競合は、ハイランドでは東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ジブリパークなどの大型施設だ。富士山麓では、他の観光バス会社やホテルとも客を分ける。
需要の質も変わりつつある。国内客は日帰りの近場需要、訪日客は宿泊と体験の需要で、後者のほうが単価は高い。ホテルと PICA の稼働が上がれば、運輸とレジャーが同じ客から二重に稼げる。
分かれ目は、訪日客の持続、富士山のオーバーツーリズムへの地元の反応、人手不足による人件費高、そして山梨県との土地の問題の決着だ。
資本政策と M&A
還元は、安定配当を基本に、配当性向 30% を目途とする方針だ。配当は年 1 回の期末払いで、2027 年 3 月期もわずかに増える予想だ。自社株買いは機動的に行うとするが、実績は小さい。
2029 年 3 月期に営業利益 105 億円、純利益 62 億円を目指す。ROE は 12% 以上、中長期で 14% 以上と掲げた。借入は純負債 299 億円まで減らし、ネット DE レシオ 1.0 倍以下を保つ。
資金の使い道は、成長投資が中心だ。遊園地の新しい乗り物、ホテルの増強、バスの電動化などに回す。
大株主は公益財団法人の堀内浩庵会(12%)とエフ・ジェイ(12%)。合わせて 4 分の 1 近くを持ち、買収の対象になる確率は低い。大型の M&A をする会社でもない。
政策保有株(上場 21 銘柄・約 100 億円)の縮減は、利益が少し出る材料だ。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の55億円が10年後に約 64億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
富士山の人気は、この 10 年で一段階上がった。訪日客は 2025 年に 4,200 万人を超え、河口湖は国際的な観光地として定着した。JR 直通特急の増便と自動運転バスで、東京からの入り口も広がっている。
会社は 2029 年 3 月期に営業利益 105 億円を目指す。前の中計では、目標を全て達成した。足元の営業利益は 88 億円で過去最高を更新し、運輸は売上も利益も 1 割近く伸びた。
Greater Mt.Fuji の利用者は 1,939 万人。目標は 3,000 万人だ。ハイランド、ホテル、PICA、バスが客を送り合う仕組みが回れば、客単価も数量も伸びる。
山梨県との転貸承認が下りれば、止まっている別荘地の分譲と仲介が再び動く。区画は約 5,900 あり、土地の販売益は大きい。政策保有株の縮減も進み、借入は減って自己資本は厚い。
配当は増配を重ね、自社株買いの枠も使える。ROE 14%、純負債 299 億円は小さく、利益の質は高い。10 年で利益は 1.5 倍を超えうる。
慎重な見方
今の利益は、観光の好況と円安の組み合わせで出た最高益だ。コロナ禍の 2021 年 3 月期は営業赤字 31 億円、純損失 28 億円で、ほぼ 1 年で利益が消えた。事業は景気と観光客数に正面から晒される。
ハイランドは入園を無料にしたので、客単価は園内消費に頼る。東京ディズニーリゾートやユニバーサルに、地方の遊園地は構造的に客数で勝てない。減損 9.6 億円もレジャーで出ている。
運輸の運賃は国の認可で、費用が上がってからしか直せない。人件費の高騰で、運輸の利益率は 25% から落ちる。山梨の人口は減り、定期客は先細る。
山梨県との土地の問題は、まだ終わっていない。別荘地の売買が止まり、県は賃料が鑑定評価の 6 分の 1 以下と主張している。会社に不利な結果になれば、不動産事業の土台が揺らぐ。
利益を積み上げても、投資に回るので自己資本が厚くなり、ROE は 14% から下がる。利益が 10 年で 1.4 倍にとどまれば、今の値段を正当化できない。
どちらに重みを置いたか
運輸の安定と、富士山の観光資産という強気の言い分は確かだ。ただ、レジャーの波と、一つの地域への集中、県との土地の問題という慎重な見方のほうが重い。確率は中立に 32% を置き、楽観・やや楽観を 32%、やや悲観・悲観を 36% とした。10 年の利益は 1.4 倍にとどまり、ROE は 14% から 9% 台へ下がる。今の時価総額はその利益に対して高く、総合は約 −59% の割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,266 円1,203 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 489 円259 億円)。 今の値に割り戻すと 1,440 円764 億円、今との差 −45.1%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,609 円1,915 億円 | 633 円336 億円 | +61.7% | +4.9% | 424 円225 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,225 円1,711 億円 | 588 円312 億円 | +45.3% | +3.8% | 839 円445 億円 |
| 中立 | 32% | 2,769 円1,469 億円 | 539 円286 億円 | +26.1% | +2.3% | 1,058 円562 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,166 円619 億円 | 433 円230 億円 | −39.0% | −4.8% | 368 円195 億円 |
| 悲観 | 13% | 320 円170 億円 | 185 円98 億円 | −80.8% | −15.2% | 66 円35 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,266 円1,203 億円 | 489 円259 億円 | +5.0% | +0.5% | 2,755 円1,462 億円 |
今の株価時価総額 2,624 円1,392 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 再開発と周遊が噛み合い、ハイランド頼みを脱する 利益 110 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 3,609 円1,915 億円
富士山麓の周遊が定着し、ハイランド・ホテル・アウトドア・バスが相互に客を送り合う。
レジャー・サービスの数量は 3 割増え、営業利益率は 13% まで戻る。
山梨県との転貸承認が下り、別荘地の分譲と仲介が再び動く。不動産は小粒ながら利益率 24% の稼ぎ頭になる。
運輸は JR 直通特急と自動運転バスで定期外を伸ばし、乗客は実質で 6% 増える。運賃は物価にほぼ追いつく。
借り換えで利払いは年 7 億円ほど増えるが、本業の伸びが上回る。自社株買いも機動的に使い、ROE は 11% 台を保つ。
運輸・レジャー・不動産の三つが同時に良い方向へ動く、いちばん恵まれた 10 年だ。実現すれば、富士山麓の小さな複合企業が、地域の総合リゾート会社として評価される。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の55億円が10年後に約 64億円(物価で一律に増やすと約 53億円)。営業利益は +11億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 運輸(鉄道・バス・タクシー・船):数量 31.8(年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定))× 価格 918(1 人あたり収入(円))→ 売上 292 億円・営業利益 84 億円。乗客+6%・運賃1.34倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 64億円)
- レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA):数量 13.0(年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定))× 価格 3,494(1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む))→ 売上 454 億円・営業利益 59 億円。数量+30%・価格1.38倍・利益率13%
- 不動産(別荘地・賃貸):数量 15.0(賃貸・管理の床面積(万㎡、推定))× 価格 3.70(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 13 億円。数量1.5倍(別荘地売買が再開)
- その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど):数量 8.8(取引・出荷の件数換算(百万件、推定))× 価格 1,387(1 件あたり収入(円))→ 売上 122 億円・営業利益 12 億円。数量+10%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.17 倍、時価総額 1,889 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:Greater Mt.Fuji の利用者 3,000 万人(今 1,939 万人)の目標が 10 年でほぼ実現し、別荘地の転貸承認も下りる必要がある。条件が重なるので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 中期経営計画をほぼ達成し、緩やかに伸びる 利益 98 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 3,225 円1,711 億円
2029 年 3 月期に営業利益 105 億円に届き、その後も名目の物価に少し上乗せする形で伸びる。
運輸の乗客は 4% 増。インバウンドの定着が、地元の定期客の減少を埋める。
レジャー・サービスは数量が 2 割増え、ULTRA Q など新しい乗り物とホテル客室の増強が効く。
別荘地の売買は限定的に再開するが、県との関係は完全には元に戻らない。
借り換えの利払い増は年 7 億円ほど。配当と自社株買いで利益の 4 割を戻し、ROE は 10% 台半ばで落ち着く。
計画の線上を進む、現実的な上振れだ。大きな賭けをせず、増える客を丁寧に取り込む形で、会社の規律が果実になる 10 年と見る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の55億円が10年後に約 64億円(物価で一律に増やすと約 54億円)。営業利益は +10億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 運輸(鉄道・バス・タクシー・船):数量 31.2(年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定))× 価格 911(1 人あたり収入(円))→ 売上 284 億円・営業利益 80 億円。乗客+4%・運賃1.33倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 64億円)
- レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA):数量 12.0(年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定))× 価格 3,443(1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む))→ 売上 413 億円・営業利益 50 億円。数量+20%・価格1.36倍
- 不動産(別荘地・賃貸):数量 13.0(賃貸・管理の床面積(万㎡、推定))× 価格 3.64(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 10 億円。数量1.3倍
- その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど):数量 8.6(取引・出荷の件数換算(百万件、推定))× 価格 1,367(1 件あたり収入(円))→ 売上 117 億円・営業利益 11 億円。数量+7%
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 16.97 倍、時価総額 1,663 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2029 年 3 月期に営業利益 105 億円の計画で、前の中計は目標を全て達成した実績がある。達成の確度は高いが、その先の伸びは人口減に削られるので 2 割強。
中立 32% 富士山の人気は続くが、人口減と費用高で名目並みの成長 利益 85 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,769 円1,469 億円
中心の姿は、物価並みに伸びる堅実な地方複合企業だ。
運輸は乗客がほぼ横ばい。山梨の人口減を、訪日客と直通特急の増便が打ち消す。運賃は認可で物価に少し遅れて 3 割上がる。
レジャー・サービスは数量が 1 割強増えるが、人件費と設備更新が重く、利益率は 11% にとどまる。
不動産は賃貸が中心で、別荘地の売買は止まったまま、あるいは小さく動く程度。
利払いは年 7 億円ほど増える。営業利益は 10 年で 1.4 倍、純利益は 79 億円になる。
強みも弱みも今のまま続く、最も起こりやすい姿だ。大きく崩れず、大きく伸びもしない。名目の物価に少し足した分だけ、利益が積み上がる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の55億円が10年後に約 64億円(物価で一律に増やすと約 55億円)。営業利益は +9億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 運輸(鉄道・バス・タクシー・船):数量 30.6(年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定))× 価格 897(1 人あたり収入(円))→ 売上 275 億円・営業利益 74 億円。乗客+2%・運賃1.31倍・利益率26.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 64億円)
- レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA):数量 11.2(年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定))× 価格 3,392(1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む))→ 売上 380 億円・営業利益 42 億円。数量+12%・価格1.34倍・利益率11%
- 不動産(別荘地・賃貸):数量 11.5(賃貸・管理の床面積(万㎡、推定))× 価格 3.59(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。数量1.15倍・価格1.34倍
- その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど):数量 8.3(取引・出荷の件数換算(百万件、推定))× 価格 1,347(1 件あたり収入(円))→ 売上 112 億円・営業利益 10 億円。数量+4%・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.54 倍、時価総額 1,406 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運輸は強く、レジャーは波がある。県との土地問題は決着に時間がかかる。強気と慎重の言い分が拮抗するので、最も厚く置いた。
やや悲観 23% 訪日客の頭打ちと費用高で、利益が足踏みする 利益 57 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,166 円619 億円
富士山の混雑への反発や為替の変化で訪日客の伸びが止まり、ハイランドとホテルの客数は横ばいに戻る。
人件費と電気代の上昇を価格に転嫁しきれず、レジャーの利益率は 8% に下がる。
運輸は乗客が 4% 減り、運賃改定の認可も遅れて、物価に 2 割ほど届かない。
山梨県との土地の問題が長引き、別荘地の売買は止まったまま。不動産の伸びは名目の賃料だけになる。
借り換えの利払いが年 7 億円増えるうえ、投資の借入が膨らむ。営業利益は 10 年たっても今とほぼ同じ水準にとどまる。
一つひとつは小さな不調だが、重なると利益が伸びなくなる。投資は続けるので借入が増え、ROE も下がる。コロナ禍ほどの崩れではないが、成長の足が止まる姿だ。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の55億円が10年後に約 64億円(物価で一律に増やすと約 58億円)。営業利益は +6億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 運輸(鉄道・バス・タクシー・船):数量 28.8(年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定))× 価格 863(1 人あたり収入(円))→ 売上 249 億円・営業利益 58 億円。乗客−4%・運賃1.26倍・利益率23.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 64億円)
- レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA):数量 9.8(年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定))× 価格 3,291(1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む))→ 売上 323 億円・営業利益 26 億円。数量−2%・価格1.30倍・利益率8%
- 不動産(別荘地・賃貸):数量 10.0(賃貸・管理の床面積(万㎡、推定))× 価格 3.35(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 5 億円。数量横ばい・価格1.25倍
- その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど):数量 7.8(取引・出荷の件数換算(百万件、推定))× 価格 1,287(1 件あたり収入(円))→ 売上 101 億円・営業利益 7 億円。数量−2%・価格1.28倍
倍率:ROE 7.5% は k 7.5% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。稼ぐ力(純利益 53 億円)を基準に、利益が足踏みし利払い増を吸収しきれない筋書きなので、上限の 7.6 割の 9.5 倍に置いた。純有利子負債 299 億円を今の値で足した EV ÷ 営業利益は 8.8 倍。
確率:訪日客の一部の国への依存、オーバーツーリズムへの反発、人手不足による人件費高が重なる想定。コロナで一度赤字になった事業構造から、起きやすい。
悲観 13% 県有地を失い、観光地としての力も後退する 利益 20 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 320 円170 億円
県有地の賃貸借をめぐる争いが会社の不利に決着し、別荘地の事業は大きく縮む。
同じ地域の他の施設との連携も弱まり、周遊の仕組みが崩れる。
ハイランドは人気が一巡し、東京や名古屋の大型施設に客を奪われる。利益率は 3% まで落ちる。
運輸は乗客が 12% 減り、運賃は物価に追いつかない。地方バスの路線縮小も避けられない。
借入の利払いは年 12 億円まで増え、純利益は 20 億円まで細る。事業の稼ぐ力を基準に値を付ければ、時価総額は今の 1 割台まで下がる。
富士山麓に集中した事業の弱さが、すべて表に出る筋書きだ。確率は低いが、起きれば優良な会社とは呼べなくなる。還元は最低限にとどまる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の55億円が10年後に約 64億円(物価で一律に増やすと約 64億円)。営業利益は +0億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- 運輸(鉄道・バス・タクシー・船):数量 26.4(年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定))× 価格 788(1 人あたり収入(円))→ 売上 208 億円・営業利益 29 億円。乗客−12%・運賃1.15倍・利益率14%・償却は物価で増やさず按分(10年後 64億円)
- レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA):数量 8.5(年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定))× 価格 2,987(1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む))→ 売上 254 億円・営業利益 8 億円。数量−15%・価格1.18倍・利益率3%
- 不動産(別荘地・賃貸):数量 5.0(賃貸・管理の床面積(万㎡、推定))× 価格 2.95(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。県有地を失い数量半減
- その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど):数量 7.2(取引・出荷の件数換算(百万件、推定))× 価格 1,156(1 件あたり収入(円))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。数量−10%・価格1.15倍
倍率:ROE 2.8% は k 7.5% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。稼ぐ力(純利益 20 億円)を基準に、県有地を失い構造的に稼ぐ力が細る筋書きなので、上限の 6.8 割の 8.5 倍に置いた。売れる資産として数えるのは政策保有株くらいで、純有利子負債 299 億円を引くと床にならないので、資産の床は使わない。純有利子負債 299 億円を今の値で足した EV ÷ 営業利益は 11.6 倍。
確率:山梨県との賃貸借の争いが会社に不利に決まる、富士山観光の人気が落ち着く、人口減が重なる構造的な負けを想定。確率は低いが、一つの地域に集中している点は軽く扱えない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
運輸(鉄道・バス・タクシー・船)
富士山麓電気鉄道・岳南電車の鉄道、乗合・高速・貸切バス、ハイヤー・タクシー、熱海〜初島の航路と芦ノ湖の遊覧船。
| 数量年間の延べ利用者数(百万人、鉄道・バス・タクシー・船。推定) | 価格1 人あたり収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 685 | 206 | 51 |
| 10 年後 中立 | 30.6 | 897 | 275 | 74 |
取り方:運輸の売上 205.5 億円(内部取引込み)を、鉄道 441 万人・バス・タクシー・船を合わせた延べ約 3,000 万人(推定)で割った 1 人あたり収入。運賃は国の認可で、費用が上がってから改定するため物価に 1〜2 年遅れる。
レジャー・サービス(ハイランド・ホテル・PICA)
富士急ハイランド(遊園地)、ホテル、ゴルフ・スキー、アウトドア施設 PICA。
| 数量年間の延べ利用者数(百万人、遊園地・ホテル・アウトドア・ゴルフ・スキー。推定) | 価格1 人あたり収入(円、入園・宿泊・飲食・物販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 2,532 | 253 | 25 |
| 10 年後 中立 | 11.2 | 3,392 | 380 | 42 |
取り方:レジャーの売上 253 億円を、延べ約 1,000 万人(推定。Greater Mt.Fuji の 1,939 万人は運輸も含む全社の数)で割った。ハイランドは入園無料で、園内の消費と宿泊で稼ぐ。単価は物価並みに上がる。
不動産(別荘地・賃貸)
山中湖畔・十里木高原の別荘地の分譲・管理と、甲府富士急ビルなどの賃貸。
| 数量賃貸・管理の床面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり年間収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 2.68 | 27 | 5 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 3.59 | 41 | 8 |
取り方:不動産の売上 26.8 億円を、賃貸・管理の床約 10 万㎡(推定)で割った。山中湖畔の別荘地は山梨県の土地転貸承認が得られず、売買・仲介が止まっているので、今の売上はほぼ賃貸と管理。
その他(百貨店・建設・ミネラルウォーターなど)
百貨店、建設(富士急建設)、ミネラルウォーターの製造販売、情報処理など。
| 数量取引・出荷の件数換算(百万件、推定) | 価格1 件あたり収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 1,005 | 80 | 7 |
| 10 年後 中立 | 8.3 | 1,347 | 112 | 10 |
取り方:その他の売上 80 億円を、百貨店の取引・水の出荷・建設の件数換算で約 800 万件(推定)とみて割った。水は売上 34 億円で前期比 +9.8%。利益率は 9% 前後。
リスクと懸念
山梨県との土地の争い
山中湖畔の別荘地は県有地を借りており、県は賃料が鑑定評価の 6 分の 1 以下と主張している。転貸承認が下りず、販売と仲介は止まったまま。会社に不利に決まれば、不動産事業と別荘関連の稼ぎが大きく縮みうる。
一つの地域への集中
稼ぎのほぼ全部が富士山麓にある。噴火や天候、観光客の流れが変わる出来事が起きれば、鉄道・バス・ホテル・遊園地が同時に打撃を受ける。コロナ禍で 2021 年 3 月期に純損失 28 億円を出した。
レジャーの利益率の低下
レジャーは売上が 2% 伸びたのに営業利益は 4% 減った。人件費・電気代・設備更新が重く、減損も 9.6 億円出た。ハイランドは東京や名古屋の大型施設と客を競う。
訪日客の依存と反動
河口湖駅は外国人客が多く、一部の国や為替に左右される。2025 年末には中国からの入国者が大きく減った月がある。混雑への地元の反発も強まりうる。
人口減と人手不足
山梨の人口は減り、定期客は先細る。運転士・ホテル人員の確保が難しくなり、人件費が運賃の改定より速く上がる。地方バスの路線維持も重い。
政策保有株
上場株 21 銘柄の約 100 億円は、純資産の 2 割を超える。会社は縮減を掲げるが、地元の銀行株が大半で、売却が遅れると資本効率を下げる。
今後の分かれ目
- 山梨県との転貸承認が下り、別荘地の分譲が再開したら
- 不動産の数量と利益率の前提を上げ、楽観側の確率を増やす。
- 県との争いが会社に不利に決着したら
- 不動産と別荘関連の稼ぎを大きく下げ、悲観側に確率を寄せる。
- Greater Mt.Fuji の利用者が 2,500 万人を超えて伸びたら
- レジャーの数量の前提を上げ、やや楽観側に確率を寄せる。
- 訪日客が減り、ハイランドとホテルの客数が前年を割ったら
- レジャーの利益率の前提を下げ、やや悲観側に寄せる。
- 運賃改定が認可され、運輸の利益率が 25% を保ったら
- 運輸の価格の前提を上げ、中立の利益を少し増やす。
- 自社株買いが年 20 億円規模で定着したら
- 還元の前提を上げ、ROE の下がり方を緩める。
見ておくもの
- Greater Mt.Fuji の利用者数(今 1,939 万人、目標 3,000 万人)
- 山梨県との土地の調停・訴訟の進み具合と転貸承認
- レジャー・サービスの営業利益率(今 9.8%)
- 運輸の営業利益率(今 24.6%)と運賃改定
- 政策保有株の縮減(純資産比 23% → 20% 未満)
倍率と資本コストの決め方
数量と名目の価格から 10 年の利益を積み、倍率は式で置いた。今の株価が 2 倍でも半分でも、価値の数字は変わらない作りにした。k は基本 7.5% に quality 0.5% で、京阪・西鉄と同じ。ROE が 9% 台で k を超えるので、式の下限 1÷k = 12.5 倍に近い 13.0 倍とした。結果の割高(−59%)は、今の ROE 14% が 10 年後は 9% 台に下がることと、今の時価総額の高さから来る。借入が主なので、リースの新会計基準の影響は小さい。数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.17 倍・やや楽観 PER 13.4→16.97 倍・中立 PER 13→16.54 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。観光・レジャーの景気への振れ(+0.5)と、一地域集中・人口減(+0.25)を、運輸の認可運賃と富士山という代わりの無い立地(−0.25)が少し打ち消す。県との土地の争いは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。