結論
名古屋鉄道は愛知・岐阜を走る私鉄で、鉄道・バスを軸に、不動産・運送・ホテル・百貨店・航空関連までを持つ中京圏の沿線複合企業である。筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。いちばんの理由は借金の重さで、金利が上がる 10 年で利益の伸びの大半を利息が食う。
2026年3月期は営業利益が 362 億円で、前の期より 14% 減った。トラック事業の赤字と分譲マンションの引き渡し減が重なった。交通は 218 億円と増益で、事業の土台は崩れていない。
注目の名古屋駅再開発は、2025年12月に施工会社の入札辞退で見直しに入り、着工は未定だ。投資規模を絞る方向で、2026年度中に方向性が示される。投資の回収時期は大きく後ろへずれる。
今期は営業利益 450 億円を見込む。運送の立て直しと不動産の回復が前提だ。筆者は、そこまでの回復は織り込めると見る。ただ、純有利子負債は 6,193 億円と時価総額の 1.7 倍あり、10 年の中立でも ROE は 5% 弱にとどまる。資本コストは 8.25% で、上回れない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、中京圏の鉄道という地盤は良い。ただ、買う値段が問題になる会社だ。
オーナーの目で見ると、稼ぐ利益の多くが利息と更新投資に消える。純有利子負債が営業利益の 17 倍もあると、事業が少し崩れただけで株主の取り分が大きく動く。わかりやすい事業と堅い地盤はあるが、財務の余裕がない。
再開発の見直しは評価できる。入札が成り立たない局面で、投資規模を絞る判断は、資本を壊さないという意味で正しい。一方、建て替えのために営業を終えた百貨店本店とホテルの収益が、数年にわたって抜ける。
経営の資本配分では、中計の目標が実力と離れている点が気になる。ROE 8% を掲げて、足元は 4.7% だ。目標を実現できる道筋は、運送の黒字化と不動産の回復に頼る。
安全域は、今の値段では確保されていない。10 年の中立でも、利益は借入の利息で伸びを削られる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 4 つある。交通、運送、不動産、そしてホテル・観光・百貨店・航空関連などの事業だ。
交通は鉄軌道、バス、タクシーで、2026年3月期の売上は 1,783 億円、営業利益は 218 億円。名古屋を中心に岐阜・豊橋・知多・犬山へ延びる路線網は、中京圏の通勤・通学を押さえる。中部国際空港へのアクセスや、バス事業の宮城交通の連結も加わった。
運送は名鉄 NX 運輸のトラック事業と海運で、売上 1,708 億円。営業損益は 77 億円の赤字だ。取扱量が減り、人件費が上がった。NX グループとの統合で拠点と経営資源をまとめている最中である。
不動産は賃貸、分譲、管理で、売上 1,148 億円・営業利益 136 億円。賃貸は 96 億円で増益、分譲は引き渡しが減って 32 億円に落ちた。物流施設や駅ビルの開発も進めている。
残りは、ホテル・観光施設・旅行(営業利益 34 億円)、百貨店などの流通(19 億円の赤字)、ヘリコプターや空港支援の航空関連サービス(26 億円)、設備保守や情報システムなどのその他(53 億円)だ。名鉄百貨店本店は 2026年2月28日に営業を終えた。2027年3月期からは、報告の区分が交通・運送・不動産・レジャー生活サービス・航空情報技術サービスの 5 つに変わる。
優良さと弱いところ
強みは中京圏という地盤そのものだ。愛知にはトヨタ自動車をはじめ製造業が集まり、通勤・通学の需要が厚い。名古屋駅と主要駅を押さえる路線網は、鉄道事業で他社がまねできない。
弱みは、利益を生みにくい形になっていることだ。純有利子負債は営業利益の約 17 倍で、同じ領域の阪急阪神や東急より重い。過去 10 年の ROE の中央値は 6.4% で、資本コストを下回る年が続いてきた。
運送が足を引っ張る点も見逃せない。トラック事業は 2 年続けて赤字で、2026年3月期は 89 億円の赤字だった。ドライバー不足は業界全体の問題で、統合の効果が出るかが分かれ目になる。
経営の資本配分には、筆者は慎重な目を向ける。2026年3月期は営業 CF 614 億円に対し、設備投資などで投資 CF が 1,509 億円出た。差は借金で埋めた。名駅の再開発の見直しは、この投資の重さを経営が自覚した証拠でもある。堀は普通と置く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民鉄は、人口減で定期の客が減り、訪日客や観光の定期外が補う構図が続く。名鉄の沿線は、東京や大阪ほど人口が集まらない。名古屋圏の人口は緩やかに減り、郊外では減り方が速い。
運賃は認可制で、費用が積み上がってから改定する。物価が上がる局面では、運賃が遅れて追いつく形になる。人件費とバリアフリー投資の回収を理由に、各社が改定に動いている。
競合は、名古屋―岐阜・豊橋などで並走する JR東海と、名古屋駅を共有する近鉄だ。路線の重なる区間では速さと本数で勝負になる。不動産は、駅前の再開発をめぐって他の鉄道会社やデベロッパーと競う。
運送は、トラック業界全体の 2024 年問題(残業規制)を抱える。運転手が足りず、運賃は上がるが、人件費も上がる。名鉄 NX 運輸は NX グループとの統合で、拠点の重複をなくして収益の改善を狙う。
今後の分かれ目は、名駅再開発の再設計、運送の黒字化、金利上昇の 3 つだ。建設の人手不足が続けば、再開発の費用は上がり続ける。
名古屋圏は製造業の集積が厚く、景気の波は他の大都市圏より大きい。自動車の生産が落ちれば、貨物と定期外の客が同時に減る。その分、運送と観光の利益は振れやすい。
資本政策と M&A
株主還元は中期経営計画で、連結配当性向 30% 以上と、年間配当の下限を設ける。2027年3月期から適用する。自己株式の取得は必要に応じて機動的に行う、というだけで、額の約束はない。
ただ、2026年3月期の純利益 230 億円に対し、下限の配当を払うと配当性向は 5 割を超える。下限配当は、利益が落ちた年には借入で払う形になりやすい。
資本配分の優先は安全投資、次に不動産などの成長投資で、株主還元はその結果とされる。ROE は 2026 年度に 8% 程度という目標だが、足元は 4.7% と開きが大きい。
M&A では、宮城交通を連結し、NX グループとの運送統合を進める。名駅の再開発は近鉄、日本生命などと進める事業だ。TOB や再編の当事者になる材料は、今のところ見当たらない。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の465億円が10年後に約 660億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
名鉄は、いちばん悪い年を底に回復に入っている。2026年3月期の営業利益 362 億円は、トラック事業の赤字 89 億円と分譲の谷が重なった数字だ。この 2 つが平常に戻るだけで、営業利益は 450 億円に届く。会社は今期をその姿で見ている。
交通は増収増益で、鉄軌道の人員も戻った。バスは宮城交通の連結で利益が伸び、タクシーも黒字が定着した。ホテルと観光施設は訪日客を取り込み、利益が 3 割伸びた。事業の土台はむしろ強くなっている。
再開発の見直しは前向きに見るべきだ。投資額が 8,880 億円という巨額から、人手不足の中で実行できる大きさに縮む。借金の膨張に歯止めがかかり、実行の確度が上がる。名鉄百貨店本店の閉鎖で流通の赤字も止まる。
配当に下限が付き、1 株利益が回復すれば還元は安定する。愛知はトヨタを中心とする製造業の集積があり、沿線の購買力は全国でも高い。運賃改定が続く間は、物価の上昇を価格に転嫁できる。10 年で営業利益が 700 億円に届く道は、現実的に見える。
慎重な見方
借金が重すぎる。純有利子負債は 6,193 億円で、営業利益の 17 倍に達する。金利が 3.5% に上がれば、借り換えだけで年 155 億円の利息が増える。これは今の営業利益の 4 割にあたる。
運送は 2 期連続の赤字で、拡大している。ドライバー不足で取扱量が落ち、人件費が上がる。NX グループとの統合の効果は、まだ数字に出ていない。統合のために別の費用がかかる恐れもある。
名駅再開発は、2025年12月に入札辞退で止まった。着工時期は未定で、解体を終えた敷地は収益を生まない。百貨店とホテルの営業は終わっており、駅前の稼ぎが数年抜ける。建設の人手不足が続く限り、規模を絞っても再設計は難航しやすい。
中計の ROE 8% は、足元の 4.7% からかけ離れている。過去 10 年、ROE は資本コストをほぼ下回り続けた。下限配当は、利益が落ちる年には借入で払うことになる。人口減の中、鉄道事業の数量は伸びない。
どちらに重みを置いたか
地盤の強さと回復の余地は強気の見方の通りだが、借金の重さと運送の赤字は慎重な見方のほうが強い。確率は中立を 32% に置き、楽観・やや楽観を 28%、やや悲観・悲観を 40% に寄せた。中立でも ROE は 5% 弱で資本コスト 8.25% に届かず、PER は上限の 8 割台に置いた。借金を足した EV ÷ 営業利益は中立で 15 倍。総合は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,217 円2,389 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 551 円1,081 億円)。 今の値に割り戻すと 922 円1,808 億円、今との差 −50.4%、 期待の年率 −0.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,680 円5,258 億円 | 997 円1,956 億円 | +97.8% | +7.1% | 294 円577 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,840 円3,610 億円 | 728 円1,429 億円 | +38.1% | +3.3% | 514 円1,008 億円 |
| 中立 | 32% | 1,259 円2,471 億円 | 604 円1,186 億円 | +0.2% | +0.0% | 596 円1,170 億円 |
| やや悲観 | 26% | 580 円1,139 億円 | 398 円781 億円 | −47.4% | −6.2% | 254 円499 億円 |
| 悲観 | 14% | 580 円1,139 億円 | 204 円400 億円 | −57.8% | −8.3% | 110 円215 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,217 円2,389 億円 | 551 円1,081 億円 | −4.9% | −0.5% | 1,768 円3,470 億円 |
今の株価時価総額 1,859 円3,648 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 再開発が小さく固まり、運送も黒字に戻る 利益 419 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,680 円5,258 億円
名駅の再開発は規模を絞って着工し、名鉄百貨店の跡地を含む駅前の収益が 2030 年代に立ち上がる。不動産の営業利益は 330 億円規模に育つ。
運送は名鉄 NX 運輸と NX グループの事業統合が実を結ぶ。拠点の重複が消え、荷主との運賃交渉も進み、赤字が止まって営業利益率は 4% 台に戻る。交通は愛知・岐阜の人口が踏みとどまり、中部国際空港と観光の定期外が増えて、輸送人員が横ばいを保つ。
ホテルや観光施設も訪日客を取り込み、その他事業の利益は 170 億円台になる。会社全体の営業利益は 900 億円台に乗る。それでも借入の利息が重く、ROE は 7% 台で資本コストに届かない。
(名目の前提)運賃は認可制で物価に 1〜2 年遅れて追いつき、賃料・運送料は物価並みに上がる。人や貨物の数は実質で置いた。借り換えで利払いが 10 年後に年 155 億円ほど増える分と、成長投資の借入の利息を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の465億円が10年後に約 660億円(物価で一律に増やすと約 683億円)。営業利益は −23億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 95億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 交通(鉄軌道・バス・タクシー):数量 714(年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定))× 価格 3.41(1 人あたり収入(百円))→ 売上 2,437 億円・営業利益 318 億円。人員+2%(空港・観光)・運賃 1.34 倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 660億円)
- 運送(トラック・海運):数量 33.0(貨物取扱量(百万トン、推定))× 価格 79(1 トンあたり収入(百円))→ 売上 2,591 億円・営業利益 117 億円。取扱量 1.10 倍・統合効果で利益率 4.5%
- 不動産(賃貸・分譲・管理):数量 165(賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定))× 価格 13(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 2,178 億円・営業利益 327 億円。床 1.38 倍(再開発・物流施設)・賃料 1.38 倍
- ホテル・観光・流通・航空関連ほか:数量 100(取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定))× 価格 3.84(1 件あたり収入(千円))→ 売上 3,845 億円・営業利益 173 億円。件数横ばい・単価 1.38 倍
倍率:事業の純利益 419 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 5,078 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発の再設計、運送の黒字化、金利負担の吸収が 10 年で揃う必要がある。揃えば強いが、3 つとも当たる確率は高くない。
やや楽観 20% 中計どおりに運送が黒字化し、不動産が伸びる 利益 283 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,840 円3,610 億円
運送は統合の効率化が進み、トラック事業の赤字が止まる。海運は安定し、運送全体で小さな黒字に戻る。
不動産は物流施設と駅ビルの新規開発に加え、縮小した名駅再開発の第 1 期が 2030 年代前半に動き出す。賃貸が分譲の波を支え、営業利益は 260 億円台になる。交通は人口減を訪日客と空港需要で相殺し、人員は 1% 減にとどまる。
百貨店本店の閉鎖で流通の赤字は止まり、ホテルと観光施設が利益を押し上げる。営業利益は 760 億円ほどになる。借入の利払いは増えるが、利益の伸びが上回り、ROE は 6% 弱まで戻る。
(名目の前提)運賃は認可制で物価に 1〜2 年遅れて追いつき、賃料・運送料は物価並みに上がる。人や貨物の数は実質で置いた。借り換えで利払いが 10 年後に年 155 億円ほど増える分と、成長投資の借入の利息を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の465億円が10年後に約 660億円(物価で一律に増やすと約 692億円)。営業利益は −32億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 109億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 交通(鉄軌道・バス・タクシー):数量 693(年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定))× 価格 3.36(1 人あたり収入(百円))→ 売上 2,330 億円・営業利益 271 億円。人員−1%・運賃 1.32 倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 660億円)
- 運送(トラック・海運):数量 30.9(貨物取扱量(百万トン、推定))× 価格 77(1 トンあたり収入(百円))→ 売上 2,391 億円・営業利益 60 億円。取扱量 1.03 倍・利益率 2.5%
- 不動産(賃貸・分譲・管理):数量 150(賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定))× 価格 13(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 1,952 億円・営業利益 264 億円。床 1.25 倍・賃料 1.36 倍
- ホテル・観光・流通・航空関連ほか:数量 98.0(取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定))× 価格 3.79(1 件あたり収入(千円))→ 売上 3,713 億円・営業利益 149 億円。件数 0.98 倍(百貨店縮小)・単価 1.36 倍
倍率:事業の純利益 283 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 3,430 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(営業利益 700 億円、2030 年度)に近い道だが、運送の立て直しと再開発の再設計が両方うまく行く必要がある。
中立 32% 中立:人口減と重い金利を、不動産と運送の立て直しで埋める 利益 189 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,259 円2,471 億円
営業利益は 600 億円台に戻るが、金利の負担が利益の伸びの大半を食う。
運送は統合で赤字を止めるものの、ドライバー不足で運賃を上げる一方、人件費も上がる。利益率は 1% 程度にとどまる。不動産は物流施設や駅周辺の中規模開発が積み上がり、名駅再開発は規模を絞って遅れて進む。
交通は沿線の人口が緩やかに減り、運賃の引き上げが人員減を補う。ホテル・観光施設は堅いが、百貨店と旅行は薄利のままだ。営業利益は 617 億円、純利益は 300 億円になる。ROE は 5% 弱で、資本コストには届かない。
(名目の前提)運賃は認可制で物価に 1〜2 年遅れて追いつき、賃料・運送料は物価並みに上がる。人や貨物の数は実質で置いた。借り換えで利払いが 10 年後に年 155 億円ほど増える分と、成長投資の借入の利息を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の465億円が10年後に約 660億円(物価で一律に増やすと約 701億円)。営業利益は −41億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 119億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 交通(鉄軌道・バス・タクシー):数量 679(年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定))× 価格 3.31(1 人あたり収入(百円))→ 売上 2,248 億円・営業利益 229 億円。人員−3%(沿線の人口減)・運賃 1.30 倍(物価に約 2 年遅れ)・償却は物価で増やさず按分(10年後 660億円)
- 運送(トラック・海運):数量 30.0(貨物取扱量(百万トン、推定))× 価格 76(1 トンあたり収入(百円))→ 売上 2,287 億円・営業利益 23 億円。取扱量横ばい・利益率 1.0%
- 不動産(賃貸・分譲・管理):数量 138(賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定))× 価格 13(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 1,769 億円・営業利益 212 億円。床 1.15 倍・賃料 1.34 倍・利益率 12%
- ホテル・観光・流通・航空関連ほか:数量 95.0(取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定))× 価格 3.73(1 件あたり収入(千円))→ 売上 3,547 億円・営業利益 124 億円。件数 0.95 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 189 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元は運送の赤字と分譲の谷が重なった年で、回復の余地と金利負担の両方が見える。中立は会社計画の下で、回復が部分的にとどまる姿に置いた。
やや悲観 26% 再開発の凍結が長引き、運送の赤字が居座る 利益 24 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 580 円1,139 億円
名駅の再開発は、建設業の人手不足で入札が成り立たないまま足踏みを続ける。解体した跡地の収益化が 2030 年代後半まで遅れ、不動産の利益率は 10% 台前半に下がる。
運送は荷動きの減少と人件費の上昇で赤字が残り、リストラ費用がかさむ。交通は郊外の人口減が速く、運賃の引き上げが追いつかない。バスやタクシーの運転手不足も、減便の形で効いてくる。
利払いは 10 年後に年 150 億円以上増え、営業利益 446 億円からほとんど残らない。配当の下限は守るが、自社株買いはしない。純利益は 160 億円にとどまる。
(名目の前提)運賃は認可制で物価に 1〜2 年遅れて追いつき、賃料・運送料は物価並みに上がる。人や貨物の数は実質で置いた。借り換えで利払いが 10 年後に年 155 億円ほど増える分と、成長投資の借入の利息を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の465億円が10年後に約 660億円(物価で一律に増やすと約 720億円)。営業利益は −60億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 137億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 交通(鉄軌道・バス・タクシー):数量 651(年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定))× 価格 3.21(1 人あたり収入(百円))→ 売上 2,089 億円・営業利益 149 億円。人員−7%・運賃 1.26 倍(認可が遅れる)・償却は物価で増やさず按分(10年後 660億円)
- 運送(トラック・海運):数量 27.9(貨物取扱量(百万トン、推定))× 価格 74(1 トンあたり収入(百円))→ 売上 2,064 億円・営業利益 −10 億円。取扱量 0.93 倍・小幅の赤字
- 不動産(賃貸・分譲・管理):数量 125(賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定))× 価格 12(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 1,552 億円・営業利益 163 億円。床 1.04 倍・賃料 1.30 倍
- ホテル・観光・流通・航空関連ほか:数量 88.0(取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定))× 価格 3.62(1 件あたり収入(千円))→ 売上 3,187 億円・営業利益 96 億円。件数 0.88 倍・単価 1.30 倍
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 24 ÷ k 8.25% = 291 億円)より資産の床のほうが大きいので、売れる資産の税後 1,340 億円(floor_assets_oku)を時価総額にそのまま置いた。今の自己資本 4,851 億円に対する PBR は 0.235 倍。償却を計算どおりに置き直して利益が細り、悲観と同じ床で値が付く。
確率:再開発の再設計が長引く現状と、運送の赤字が拡大した直近の実績の延長線上にある。借入の多さが重なると、この道に入りやすい。
悲観 14% 構造的に負け、減損で資産を売って凌ぐ 利益 −258 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 580 円1,139 億円
名駅の再開発は投資が見合わず、計画の大半を取りやめる。解体済みの敷地の価値は下がり、減損が出る。
運送は赤字が止まらず、拠点の売却と人員の削減で縮む。交通は愛知・岐阜の郊外で人口が大きく減り、廃線や減便の議論が出る。運賃の改定も、利用者負担への反発で遅れる。
利払いは年 150 億円以上増え、営業利益 204 億円では賄えず、純損益は赤字になる。配当の下限は守れず、保有株や不動産を売って借入を返す。自己資本は減損で細る。
(名目の前提)運賃は認可制で物価に 1〜2 年遅れて追いつき、賃料・運送料は物価並みに上がる。人や貨物の数は実質で置いた。借り換えで利払いが 10 年後に年 155 億円ほど増える分と、成長投資の借入の利息を純利益から引いた。還元は資産の売却で最低限を保つ。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の465億円が10年後に約 660億円(物価で一律に増やすと約 768億円)。営業利益は −108億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 209億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 交通(鉄軌道・バス・タクシー):数量 616(年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定))× 価格 3.01(1 人あたり収入(百円))→ 売上 1,851 億円・営業利益 22 億円。人員−12%・運賃 1.18 倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 660億円)
- 運送(トラック・海運):数量 24.9(貨物取扱量(百万トン、推定))× 価格 68(1 トンあたり収入(百円))→ 売上 1,700 億円・営業利益 −51 億円。取扱量 0.83 倍・赤字が続く
- 不動産(賃貸・分譲・管理):数量 110(賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定))× 価格 11(1 ㎡あたり年間収入(万円))→ 売上 1,215 億円・営業利益 97 億円。床 0.92 倍・賃料 1.15 倍
- ホテル・観光・流通・航空関連ほか:数量 80.0(取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定))× 価格 3.34(1 件あたり収入(千円))→ 売上 2,675 億円・営業利益 40 億円。件数 0.80 倍・単価 1.20 倍
倍率:稼ぐ力は赤字でゼロ。売れる資産の税後 1,340 億円(floor_assets_oku)の 8.5 割(売り急ぎの値引きと課税の取りこぼし)の 1,139 億円に置いた。今の自己資本 4,851 億円に対する PBR は 0.24 倍。構造的に稼ぐ力を失う筋書き。純有利子負債 6,193 億円を足した EV ÷ 営業利益は 76.4 倍と 20 倍を超えるが、利益が極端に低い年で測るので参考にとどめ、価値は資産の床で見る。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.235 倍・時価総額 1,139 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:再開発の頓挫、運送の累積赤字、人口減の加速が同時に来る。1 つずつなら耐えられるが、借入が多く重なると傷が深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
交通(鉄軌道・バス・タクシー)
名鉄の鉄軌道(名古屋本線・犬山線・常滑線など)、名鉄バス・宮城交通などの乗合バス、タクシー。
| 数量年間輸送人員(百万人、鉄軌道・バス・タクシーの合計。推定) | 価格1 人あたり収入(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 2.55 | 1,783 | 218 |
| 10 年後 中立 | 679 | 3.31 | 2,248 | 229 |
取り方:交通の売上 1,783 億円(鉄軌道 1,015・バス 555・タクシー 235)を、鉄軌道・バス・タクシーの年間輸送人員の合計約 7 億人(推定)で割った 1 人あたり収入。運賃は認可制で、費用の上昇が積み上がってから改定するため物価に 1〜2 年遅れる。人口は緩やかに減る。
運送(トラック・海運)
名鉄 NX 運輸のトラック事業と、海運事業。NX グループと事業統合中。
| 数量貨物取扱量(百万トン、推定) | 価格1 トンあたり収入(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 57 | 1,708 | −77 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 76 | 2,287 | 23 |
取り方:運送の売上 1,708 億円(連結の内部取引を除いた形)を、年間の貨物取扱量約 3,000 万トン(推定)で割った 1 トンあたり収入。営業損益は 77 億円の赤字。運賃は 2024 年問題で上がる一方、人件費も上がる。
不動産(賃貸・分譲・管理)
駅ビル・物流施設などの賃貸、マンション分譲、不動産管理。名駅再開発を含む。
| 数量賃貸・分譲の稼働床面積(万㎡、分譲は引き渡し床を換算。推定) | 価格1 ㎡あたり年間収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 9.57 | 1,148 | 136 |
| 10 年後 中立 | 138 | 13 | 1,769 | 212 |
取り方:不動産の売上 1,148 億円(賃貸 642・分譲 448・管理 160 から内部取引を除く)を、賃貸と分譲の床面積換算約 120 万㎡(推定)で割った実効単価。物流施設や駅周辺の新しい床の分だけ数量が増え、賃料は物価で上がる。分譲は引き渡し戸数で毎年振れる。
ホテル・観光・流通・航空関連ほか
ホテル、観光施設、旅行、百貨店などの流通、ヘリコプターや空港支援の航空関連サービス、設備保守・情報システムなど。
| 数量取引・利用の件数(百万件、宿泊・旅行・店舗・サービスの合計。推定) | 価格1 件あたり収入(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.79 | 2,786 | 94 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 3.73 | 3,547 | 124 |
取り方:レジャー・サービス 1,068 億円、流通 696 億円、航空関連 326 億円、その他 696 億円の合計 2,786 億円を、取引・利用の件数約 1 億件(推定)で割った 1 件あたり収入。利益率は 3% 台と薄い。名鉄百貨店本店の閉店で流通の数量は縮む。
リスクと懸念
名駅再開発の再設計と投資の重さ
施工会社の入札辞退で着工時期は未定になった。投資規模を絞る方向だが、建設業の人手不足は続く。解体した百貨店・ホテルの敷地が収益を生むまで数年かかり、その間は費用だけが残る。再設計が長引けば、収益化はさらに後ろへずれる。
金利上昇による利払いの増加
純有利子負債は 6,193 億円で、営業利益の 17 倍に及ぶ。借り換えのたびに金利が上がり、10 年で年 155 億円ほど利息が増える見込みだ。利益の伸びを借入の利息が吸収し、株主に残る取り分が増えにくい。
運送事業の赤字の長期化
トラック事業は 2 期連続の赤字で、2026年3月期は 89 億円の赤字だった。ドライバー不足と人件費の上昇が続く。NX グループとの統合の費用が先に出て、効果が遅れる恐れがある。赤字が続けば減損や追加の資金支援が要る。
沿線人口の減少と定期客の縮小
愛知・岐阜の郊外では人口の減り方が速く、通勤・通学の定期が細る。訪日客と空港の需要が補うが、東京圏や関西圏ほどの厚みはない。運賃改定が人員減を補えなければ、交通の利益が目減りする。
分譲マンションの業績の振れ
分譲は引き渡し戸数で利益が大きく動く。2026年3月期は分譲の営業利益が 93 億円から 32 億円へ落ちた。賃貸は増益だが、分譲の谷が深い年は不動産全体の利益が 3 割近く減る。
目標の ROE と実績の開き
中期経営計画は 2026 年度に ROE 8% 程度を掲げるが、足元は 4.7%。再開発の遅れと運送の赤字で、目標の達成は難しい。下限配当は、利益が落ちる年には借入で払う形になる。
今後の分かれ目
- 名駅再開発の新しい計画が発表され、投資規模と着工時期が決まったら
- 投資額が小さく工期が見えるなら、不動産の前提を上向きにし、楽観側の確率を上げてよい。額が大きいままなら、借入の増加を織り込む。
- 運送の営業損益が黒字に戻ったら
- 統合の効果が出たとみて、運送の利益率を引き上げ、やや楽観側へ確率を寄せる。
- 運送の赤字が拡大して、減損や追加の資金支援が出たら
- 運送の前提を下げ、やや悲観側の確率を上げる。
- 純有利子負債が 7,000 億円を超えて増えたら
- 利払いの前提を重く見て、中立の純利益を引き下げる。
- 自社株買いが年数百億円の規模で定着したら
- 還元の前提を上げ、同じ利益でも自己資本の積み上がりを抑える方向で見直す。
- 運賃改定が物価に追いつかない形で認可されたら
- 交通の価格の前提を下げ、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 名駅再開発の再設計の発表(投資額・着工時期)
- 運送事業の営業損益と名鉄 NX 運輸の統合の進み方
- 純有利子負債と、営業利益に対する倍率の推移
- 不動産の賃貸利益と、分譲の引き渡し戸数
- 鉄軌道・バスの輸送人員と運賃改定の認可
倍率と資本コストの決め方
数量と名目の単価から利益を積み、倍率は式で置いた。今の株価には寄せていない。ROE が k 8.25% に届かない中立は、PER の上限 1÷k = 12.1 倍の 8.3 割に置いた。k は基本 7.5% に quality 0.75%(循環 +0.25・値決め力 −0.25・借金 +0.75・寿命 0)。借入の重さは近鉄・西武に近く、k も同じ領域の中で近鉄 8.5%・阪急阪神 7.5% の間に置いた。含み益は悲観の床にだけ使い、中立〜楽観には賃料・売却益が純利益に入っているので足していない。新リース会計基準(2028/03 期から)で BS の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10.8→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75%(循環 +0.25・値決め力 −0.25・借金 +0.75・寿命 0)= 8.25%。運送の市況と重い借金の分を上げ、認可運賃の分を下げた。再開発の遅れと運送の赤字は k に足さず、筋書きと確率で表した。