結論
南総通運は、千葉県の臨海部で倉庫と運送を営む物流会社だ。稼ぎの柱は倉庫で、営業利益の半分強を生む。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。
一番の理由は資本の稼ぐ力にある。自己資本は 229 億円と厚い。ただその 7 割が簿価の土地と建物で、ROE は 6% 前後にとどまる。資本コストの 7.5% に届かない会社は、帳簿の厚みをそのまま価値とは認めにくい。
倉庫は稼働率が上がり、利益率は 3 割を超えた。物流用地への投資も続いていて、10 年で利益は名目では伸びる。ただ物価が年 3% 上がる世界では、本社費も人件費も同じだけ上がる。利益の伸びは物価に追いつく程度で、実質では横ばいだ。
倉庫の稼働が崩れない限り、大きく傷む会社ではない。一方で、帳簿の土地に含みがあるのか、開示から確かめられていない。確かめられない分は、価値に入れていない。
筆者がもう一つ重く見るのは、設備投資の重さだ。毎年の投資が償却費を上回るため、利益が出ても株主に渡るお金は限られる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社かを問う。答えは、倉庫は良いが、全体としては並だ。
倉庫は立地と荷主との関係で、10 年先も稼ぐ力が残る。ただ、その稼ぎは物価に追いつく程度の成長で、新しい投資に回すお金が多い。投資が多ければ、株主に渡るお金は少ない。
自己資本 229 億円のうち、土地が 167 億円ある。時価が簿価を上回る可能性はあるが、開示の範囲では確かめられない。確かめられないものに値段は付けない。
払う値段に安全域があるかを考えると、楽観の筋書きでも今の時価総額を大きく超えない。悲観の筋書きでは、売れる資産の額が下支えするが、それも今の値段の 4 割にとどまる。割安とは言いにくく、値段を安全域が支える会社でもない。
経営者が資本をどう配分するかも見る。配当を厚くし、借入で用地を買い足す姿勢は、守りの堅実さとして評価できる。ただ自己資本が厚い割に ROE が低く、資本を使い切れていない。
何で稼ぐ会社か
南総通運は、千葉県を地盤とする総合物流会社だ。売上は 165 億円、営業利益は 20 億円(2026/03 期)。事業は 5 つに分かれる。
稼ぎの中心は倉庫事業だ。売上 46 億円で、営業利益は 15 億円と利益率は 34%。荷主の求めに応じて倉庫や配送センターを建て、保管と荷役を請け負う。自社で建てる設備を荷主の専用に近い形で使ってもらうため、一度入った荷主は動きにくい。
貨物自動車運送は売上 71 億円で最も大きいが、利益は 5.8 億円。運賃収入が中心で、ドライバーの確保と燃料費が利益を左右する。附帯事業は売上 37 億円。荷役や流通加工などの作業を請け負うが、人手が多く利益率は 5% ほどだ。
不動産事業は店舗・事務所・駐車場の賃貸で、売上は 7 億円、利益は 4.8 億円。建設は 1.7 億円の小さな事業。全社では本社費が約 8 億円かかり、5 つの事業の利益の合計から引かれる。
倉庫と運送を組み合わせ、一つの荷主に保管から配送までを提供できるのが、地場の会社としての強みだ。附帯事業と建設は、その周りで仕事を取るための補助的な位置づけにある。
優良さと弱いところ
堀は、倉庫の立地と荷主との関係にある。千葉の臨海部で物流用地を自社で持ち、荷主のための倉庫を建てる。荷主は一度入れば、設備と人を動かすコストが重く、簡単には移れない。
直近の利益率は過去最高圏にある。営業利益率は 12% 台で、過去 12 年の中央値 11% より高い。倉庫の稼働率の上昇が効いた。筆者は、この水準が 10 年続くとは置かない。景気の谷では荷主が減り、固定費の重い倉庫は利益率が落ちやすい。
資本効率は弱い。自己資本比率は 66.5% と高いが、自己資本の 7 割が土地と建物で、ROE は 5〜7% にとどまる。設備投資は償却費を上回り続け(2026/03 期は 18 億円対 13 億円)、現金が増えない。
経営は堅実だ。配当性向は約 5 割で、自社株買いはほぼ無い。派手な買収もしない。物流用地を買い、倉庫を建てることで少しずつ稼ぐ力を増やす。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流業界は、2024 年から人手不足が運賃を押し上げる局面にある。トラックの時間外労働に上限が付き、2025 年度のドライバー不足は 20 万人を超える見込みだ。標準的な運賃は 2024 年に約 8% 上がり、荷待ちや荷役が長いと割増も付く。運送会社にとって、運賃を荷主に認めてもらいやすい環境になった。
ただ、ドライバーの確保には人件費がかかる。運賃の上昇が人件費の上昇を上回るかは、会社ごとに差が出る。南総通運の運送は利益率が 8% 台で、地場の運送会社として悪くない水準だ。
倉庫は、物流用地が足りず、稼働率が高い。千葉の臨海部は首都圏の物流の拠点で、大手の物流会社や地場の会社が競う。荷主の求めに合わせて建てる専用の倉庫は、市況の影響を受けにくい。ただ、荷主の大型の撤退があれば、稼働率が一気に落ちる。
人口が減る日本では、数量の伸びは見込みにくい。倉庫の面積を増やして稼ぐ会社が勝つ業界だ。
競争は大手の物流会社だけでなく、同じ地域の地場の会社とも起きる。用地は取得できる場所が限られ、新しい倉庫を建てられるかが差になる。建築費は 10 年で 3 割ほど上がる前提で、新設の採算は厳しくなる。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当が中心だ。配当性向は約 5 割で、来期はさらに増やす計画。自社株買いはほぼ行っていない。
純有利子負債は 43 億円と時価総額の 3 割弱。借入は 79 億円で、自己資本比率は高い。物流用地の取得と倉庫の建設で、建設仮勘定が 12 億円ある。投資を借入で賄うため、借り換えで金利が 3.5% に上がると利払いが少しずつ増える。
買収・再編は目立たない。時価総額が小さく、土地と倉庫の資産を持つため、買われる側として動く余地はある。ただ筆者は、ここに期待は置かない。
借入の返済と新しい投資のバランスが、今後の還元の余地を決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
倉庫が今の水準を保ち、さらに増える。千葉の臨海部は首都圏の物流の拠点で、物流用地が足りない。南総通運は用地を買い、倉庫を建てている。建設仮勘定が 12 億円あり、完成すれば面積が増える。荷主の専用に近い倉庫は、動きにくい。倉庫の利益率が 3 割を保てば、倉庫だけで 20 億円の営業利益になる。
運送は 2024 年問題で運賃が上がる局面にある。標準的な運賃の改定で、荷主が値上げを受け入れやすくなった。ドライバーの確保が難しい中で、地場の運送会社は価格を決める力を増している。運賃の上昇が人件費の上昇を上回れば、運送の利益率は 9% に届く余地がある。保管料も、荷主の専用に近い倉庫ほど値上げが通りやすく、物価並みの改定が続く。
土地は簿価 167 億円で、取得時期の古いものは時価が簿価を大きく上回る可能性がある。含み益が開示されれば、純資産の見方が変わる。配当性向 5 割の安定した還元もあり、10 年持てば配当だけで資金の一部が戻る。
物流の人手不足は荷主にとって切実で、倉庫から配送まで任せられる会社に仕事が集まりやすい。
慎重な見方
今の利益率は過去最高圏にあり、それが続くとは限らない。倉庫の稼働率は荷主次第で、大口が一つ抜ければ下がる。固定費が重い分、落ちる時は速い。
ROE は 6% 前後で、資本コストの 7.5% に届かない。自己資本の 7 割が土地・建物で、利益を生まない資産が厚い。設備投資は償却を上回り、現金が増えない。借入は 79 億円あり、金利が 3.5% に上がれば利払いが増える。
物価が 3% 上がる世界では、本社費・人件費・修繕費も 3% ずつ上がる。倉庫の保管料も上がるが、荷主との交渉に時間がかかる。減価償却は取得原価のままなので、会計の利益は膨らむが、倉庫を建て替える時の費用は建築費の上昇で膨らみ、現金は出ていく。会計の利益と現金の乖離が大きい。
土地の含みは開示から確かめられない。確かめられないものを根拠に値段は付けられない。
また、倉庫を増やすほど稼働率の維持は難しくなる。荷主が決まる前に建てれば、空きが出た分だけ償却が先に利益を削る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。倉庫は良いが、ROE が k に届かず、投資が多く、倍率に上限がある。強気の見方の土地の含みは、確かめられないので価値に入れていない。確率は、中立に 38% を置き、強気側の 3 割と慎重側の 3 割で挟んだ。倉庫の稼働が高い今の利益率を、10 年の標準とは置かない。そのため中立の利益率は倉庫 31%・運送 7.8% に下げ、悲観の確率は 1 割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,158 円204 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 775 円73 億円)。 今の値に割り戻すと 1,683 円159 億円、今との差 +2.8%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,808 円361 億円 | 1,014 円96 億円 | +194.7% | +11.4% | 386 円37 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,081 円292 億円 | 908 円86 億円 | +143.9% | +9.3% | 878 円83 億円 |
| 中立 | 38% | 2,549 円241 億円 | 834 円79 億円 | +106.8% | +7.5% | 1,286 円122 億円 |
| やや悲観 | 22% | 673 円64 億円 | 644 円61 億円 | −19.5% | −2.1% | 290 円27 億円 |
| 悲観 | 10% | 592 円56 億円 | 359 円34 億円 | −41.8% | −5.3% | 95 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,158 円204 億円 | 775 円73 億円 | +79.3% | +6.0% | 2,934 円278 億円 |
今の株価時価総額 1,636 円155 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 倉庫の増設が当たり、稼働が高止まりする 利益 23 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 3,808 円361 億円
千葉の物流用地に建てた倉庫が計画どおり埋まり、倉庫の面積が 10 年で 2 割増える。保管料は物価より少し速く上がり、利益率は 35% に乗る。運送はドライバー不足による運賃上昇が定着し、利益率は 9% に届く。不動産は賃料が物価並みに上がる。
本社費は 10 年で 1.34 倍に増えるが、増収の効果で吸収できる。営業利益は 35 億円に近づく。利益が増える分、投資と還元の両方に回せる。
自己資本は 300 億円台に乗り、ROE は資本コストに近づく。ただ、そこまで伸びても倍率は 11〜12 倍が上限で、成長株のような値は付かない。物流倉庫は強いが、稼げる額には上限がある。
- 貨物自動車運送:数量 104(取扱量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.97(指数 1 あたりの運賃(億円、名目))→ 売上 101 億円・営業利益 9 億円。数量 1.04 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- 倉庫:数量 120(倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.64(指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目))→ 売上 77 億円・営業利益 27 億円。数量 1.20 倍・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 35.0%
- 附帯事業:数量 103(作業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.49(指数 1 あたりの請負料(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。数量 1.03 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.5%
- 不動産:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.10(指数 1 あたりの賃料(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 66.0%
- 建設・その他:数量 100(事業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.06(指数 1 あたりの単価(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.41 倍、時価総額 361 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい倉庫が埋まり、運賃の上昇も定着し、さらに本社費が抑えられる必要がある。3 つが重なる筋書きで、8% にとどめた。
やや楽観 22% 倉庫は堅調、運送は運賃が物価並みに上がる 利益 20 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,081 円292 億円
倉庫の面積は 12% 増え、保管料は物価並みに上がる。利益率は今の 34% から 33% へわずかに下がるだけで、倉庫の利益は 21 億円に届く。運送は 2024 年問題で荷主が運賃を受け入れ、利益率は 8% 台を保つ。
附帯事業は人手の請負で、人件費の上昇を料金に移せる範囲にとどまる。利益率は 5% 前後だ。不動産は賃貸の入れ替えが進まず、賃料は 1.33 倍にとどまる。
営業利益は 30 億円、純利益は 20 億円弱になる。配当性向は 5 割を守り、ROE は 6% 台で資本コストに届かない。
- 貨物自動車運送:数量 102(取扱量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.95(指数 1 あたりの運賃(億円、名目))→ 売上 97 億円・営業利益 8 億円。数量 1.02 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 8.3%
- 倉庫:数量 112(倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.63(指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目))→ 売上 70 億円・営業利益 23 億円。数量 1.12 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 33.0%
- 附帯事業:数量 100(作業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.49(指数 1 あたりの請負料(億円、名目))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.0%
- 不動産:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.10(指数 1 あたりの賃料(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.33 倍(名目)・営業利益率 65.0%
- 建設・その他:数量 100(事業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.06(指数 1 あたりの単価(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 6.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 292 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:倉庫の稼働が保たれ、運送が運賃を転嫁できる。直近 3 年の実績に近い姿で、強気の見方の中では最も起こりやすい。
中立 38% 倉庫は伸びるが、物価に追いつく程度の成長 利益 16 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,549 円241 億円
倉庫は新しい物流用地の分だけ面積が 6% 増える。保管料は物価並みに上がり、利益率は 31% に下がる。今が過去最高の稼働率なので、10 年のならしで見れば妥当と考える。運送は取扱量が横ばいで、運賃は物価並み。人件費の上昇を転嫁し切れず、利益率は 7.8% に細る。
本社費は 1.34 倍になり、営業利益は 25 億円。今の 20 億円から名目で 1 割強増えるが、物価の 1.34 倍には届かない。実質では利益が 1 割ほど縮む。
減価償却は今ある設備の分を物価で増やさず、新しい倉庫の分だけが足される。10 年後の償却費は 17 億円前後になる。設備投資は償却を上回り続け、現金は細る。
- 貨物自動車運送:数量 100(取扱量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.95(指数 1 あたりの運賃(億円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 7.8%
- 倉庫:数量 106(倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.61(指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 20 億円。数量 1.06 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 31.0%
- 附帯事業:数量 97.0(作業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.49(指数 1 あたりの請負料(億円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 2 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- 不動産:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.09(指数 1 あたりの賃料(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 64.0%
- 建設・その他:数量 100(事業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.06(指数 1 あたりの単価(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 6.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の利益率は過去最高圏にある。それが保たれるが、実質では横ばいという落としどころ。確率が最も大きいのでここに置いた。
やや悲観 22% 倉庫の稼働が落ち、運送が人件費に押される 利益 9 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 673 円64 億円
景気の後退で荷主の生産が落ち、倉庫の稼働が 1 割ほど下がる。保管料の値上げは物価に届かず、利益率は 26% に落ちる。運送は取扱量が 5% 減り、運賃は 1.30 倍にとどまる。人件費は 1.34 倍に上がり、利益率は 4.5% に細る。
固定費の重い倉庫と車両は、売上が減っても費用が減らない。営業利益は 15 億円、純利益は 9 億円になる。借入の借り換えで金利が 3.5% に上がり、利益をさらに削る。
配当は利益に連動して縮み、10 年の還元は 60 億円台にとどまる。ROE は 3% 台に下がる。
- 貨物自動車運送:数量 95.0(取扱量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.92(指数 1 あたりの運賃(億円、名目))→ 売上 87 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- 倉庫:数量 100(倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.59(指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目))→ 売上 59 億円・営業利益 15 億円。数量 1.00 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 26.0%
- 附帯事業:数量 92.0(作業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.48(指数 1 あたりの請負料(億円、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- 不動産:数量 97.0(賃貸面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.09(指数 1 あたりの賃料(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。数量 0.97 倍・価格 1.22 倍(名目)・営業利益率 60.0%
- 建設・その他:数量 100(事業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.06(指数 1 あたりの単価(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:ROE は 3.2%。RONIC は約 5.4%、正当化 PER は約 7.2 倍。上限の 7 割へ引き上げず、7.0 倍に置いた。
確率:倉庫の借り手が減る景気後退か、運送の人件費の転嫁失敗のどちらかが起きる。物流は 10 年に 1 度は荷動きが大きく落ちる。
悲観 10% 千葉の荷動きが構造的に縮み、倉庫も運送も傷む 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 592 円56 億円
千葉臨海部の荷主が撤退・縮小し、倉庫の稼働が 1 割落ちる。保管料は 1.20 倍と物価に大きく届かない。運送は取扱量が 12% 減り、運賃は 1.26 倍にとどまる。人件費は 1.34 倍に上がり、運送は営業赤字寸前になる。
固定費が残り、営業利益は 4 億円。倉庫と不動産の稼ぎだけが残る。利息の負担も重く、純利益は 2 億円にとどまる。倉庫・土地の一部を減損し、自己資本は 214 億円まで下がる。
利益で測れば会社の値打ちは小さい。値段は売れる資産から負債を引いた額が下支えする。土地と建物は簿価の半分から 4 分の 1 でしか売れないと見る。
- 貨物自動車運送:数量 88.0(取扱量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.89(指数 1 あたりの運賃(億円、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 1 億円。数量 0.88 倍・価格 1.26 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- 倉庫:数量 92.0(倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.55(指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 9 億円。数量 0.92 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 18.0%
- 附帯事業:数量 85.0(作業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.46(指数 1 あたりの請負料(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.26 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- 不動産:数量 92.0(賃貸面積の指数(2026/03 =100))× 価格 0.08(指数 1 あたりの賃料(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。数量 0.92 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 52.0%
- 建設・その他:数量 90.0(事業量の指数(2026/03 =100))× 価格 0.06(指数 1 あたりの単価(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.26 倍(名目)・営業利益率 -2.0%
倍率:赤字寸前で稼ぐ力は小さい。値の下支えは、売れる資産から負債を引いた約 56 億円。この額を、筋書きの自己資本 214 億円に対する 0.262 倍として置いた。純有利子負債 43 億円を足した EV÷営業利益は約 22 倍だが、悲観は売れる資産の床で値が決まるので、EV の倍率では置かない。
確率:大口荷主の撤退や臨海部の産業の縮小と景気後退が重なる、リーマン級の筋書き。地場の会社には荷主の集中があり、10 年に 1 度はありうるので 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貨物自動車運送
荷主の貨物を千葉県を中心にトラックで運ぶ。運賃収入が売上になる。
| 数量取扱量の指数(2026/03 =100) | 価格指数 1 あたりの運賃(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.71 | 71 | 6 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.95 | 95 | 7 |
取り方:セグメント売上 70.6 億・営業利益 5.75 億(irbank のセグメント表)。取扱量は開示が無いので指数 100 と推定で表す。
倉庫
荷主向けに倉庫・配送センターを建て、保管・荷役を請け負う。稼働率で利益が決まる。
| 数量倉庫の稼働面積の指数(2026/03 =100) | 価格指数 1 あたりの保管・荷役料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.46 | 46 | 15 |
| 10 年後 中立 | 106 | 0.61 | 65 | 20 |
取り方:セグメント売上 45.8 億・営業利益 15.4 億。面積の開示が無いので稼働面積を指数 100 と推定。
附帯事業
運送や保管に付随する荷役・作業などの請負。人手で稼ぐ部分が多い。
| 数量作業量の指数(2026/03 =100) | 価格指数 1 あたりの請負料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.37 | 37 | 2 |
| 10 年後 中立 | 97.0 | 0.49 | 48 | 2 |
取り方:セグメント売上 36.9 億・営業利益 1.84 億。作業量は開示が無いので指数 100 と推定。
不動産
千葉県内の店舗・事務所・駐車場などの賃貸。
| 数量賃貸面積の指数(2026/03 =100) | 価格指数 1 あたりの賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.07 | 7 | 5 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.09 | 9 | 6 |
取り方:セグメント売上 7.25 億・営業利益 4.84 億(利益率 67%)。面積の開示が無いので指数 100 と推定。
建設・その他
建物の建築・修繕とその他の小さな事業。
| 数量事業量の指数(2026/03 =100) | 価格指数 1 あたりの単価(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.05 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.06 | 6 | 0 |
取り方:建設 1.66 億+その他 2.88 億。営業利益は 9 百万円と −6 百万円の合計 0.04 億。推定で指数 100。
リスクと懸念
倉庫の稼働率
倉庫は各事業の利益の合計の 55% を稼ぐ。大口荷主の撤退や景気後退で稼働が落ちると、固定費が重く、利益が大きく減る。
荷主と地域の集中
千葉県の臨海部に事業が集中する。地域の産業が縮むか、特定の荷主に頼る比重が高ければ、10 年に 1 度は稼ぎが大きく落ちる。
ドライバー確保と人件費
運送は人手が足りず、人件費が毎年上がる。運賃の転嫁が遅れると、売上 71 億円で利益 5.8 億円の運送は、利益率が数ポイント落ちる。
設備投資と借入
設備投資は償却を上回り続け、純有利子負債は 43 億円ある。借り換えで金利が 3.5% に上がり、建築費の上昇で更新の投資が膨らむと、現金が細る。
資本効率の低さ
自己資本の 7 割が簿価の土地・建物で、ROE は 6% 前後。資本コストに届かないままだと、利益を生む資本が薄く、倍率が上がりにくい。
土地の含みが確かめられない
土地は簿価 167 億円。時価が簿価を上回るかは開示から確かめられず、価値に入れていない。含みが大きいなら、この分析は割高に寄りすぎる。
今後の分かれ目
- 倉庫の稼働率が下がり、倉庫の利益が 2 年続けて減る
- 固定費の重さが表に出る。やや悲観の確率を上げる。
- 新しい物流用地の倉庫が稼働し、倉庫の面積が増える
- 強気の筋書きの確率を上げる。倉庫の利益が 20 億円を超えれば、中立が上に寄る。
- 賃貸等不動産の時価が開示され、簿価を大きく上回る
- 含み益を価値に足せる。悲観の下支えが厚くなる。
- 運賃の上昇が人件費の上昇を下回り、運送が赤字に近づく
- 運送の利益率の前提を引き下げる。
- 配当性向を 5 割超へ上げ、自社株買いを始める
- 還元が厚くなり、資本効率が改善する。倍率の見方を上げる。
見ておくもの
- 倉庫の稼働率と倉庫事業の営業利益
- 物流用地の取得と建設仮勘定
- 運送の営業利益率(8% 台の維持)
- 配当性向と自社株買い
- 賃貸等不動産の時価の開示
- 純有利子負債と借入金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストに届かない会社の式(RONIC を k と ROE の中間に置く)で決めた。今の株価や PER は見ていない。今の PBR が 1 倍を割っていても、ROE が k 未満なので割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.41 倍・やや楽観 PER 10.5→14.81 倍・中立 PER 9.5→14.81 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。