結論
日本石油輸送は、石油製品や化成品を専用の貨車とタンクローリーで運ぶ会社だ。売上の半分近くが石油輸送で、主な荷主は大株主でもある ENEOS になる。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を下回る「割高」。理由は、石油の国内需要が細る中で、設備が重く、稼ぐ力が資本コストに届かないことだ。
財務は見かけほど強くない。現預金は70億円あるが、タンクローリーやコンテナを借りて持つリース債務が約90億円ある。純現金とは言えず、設備の更新に毎年の資金が要る。
足元の勢いも弱い。2027年3月期の第1四半期は営業利益が7割近く減り、石油輸送は赤字に転じた。人件費と車両の維持修繕費が運賃の改定を上回って増えている。
救いは二つある。投資有価証券が116億円あり、時価総額の7割を超える点。光通信が15%を保有し、資本の見直しを促す立場にある点だ。ただし会社は全銘柄の保有を適当と判断しており、動きは見えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の厚みに惑わされてはいけない会社だ。自己資本は298億円で、時価総額の2倍ある。しかし中身は保有株の116億円と、専用の車両・車庫だ。車両は他の用途に転用しにくく、稼ぐ力が落ちれば帳簿どおりには売れない。
株主のものになる利益は、年に十数億円しかない。そこから車両の更新に、償却を上回る投資が出ていく。物価が年3%で上がる世界では、更新の値段は上がる一方で、利益は薄いままだ。リース債務の約90億円も、毎年必ず払う約束になる。
安全域はある。保有株を売り、借入を返せば、悲観の姿でも価値は残る。ただし、売る意思が会社に見えない。筆者は、荷主が一社に偏り、需要が細る事業に、高い値は払えないと見る。資本の使い方が変わる兆しが出たら、評価を改める。
価格が安いことと、価値があることは別の話だ。この会社は、前者は満たしているが、後者はまだ示せていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は四つある。柱の石油輸送は、製油所から油槽所やガソリンスタンドの間を、鉄道のタンク車とタンクローリーで運ぶ。売上は約187億円で、ENEOS が売上の3分の1強を占める大口の荷主になる。鉄道のタンク車は自社で持ち、使用料を受け取る仕組みだ。
高圧ガス輸送は、LPG や産業ガス、半導体向けのガスをローリーで運ぶ。売上は約98億円だが、人件費と成長投資がかさみ、営業損益はほぼゼロだ。化成品・コンテナ輸送は、化成品を鉄道やISOタンクコンテナで運ぶ。売上は約96億円で、利益率は1%台と薄い。
もう一つは、神栖などの保有地の賃貸と太陽光発電だ。売上は5億円と小さいが、利益率は5割近く、全社の利益の1割を占める。
どの事業も、車両・コンテナ・車庫という重い設備を持つ。設備は更新のたびに新しい値段で買い直す必要があり、毎年の投資が利益を圧迫する。
稼ぎの源は、荷主が危険物を安全に運ぶ手段を探している間は途切れない。一方で、運転手の確保と車両の維持に、年々費用がかさむ。この二つの綱引きが、利益の水準を決める。ENEOS との関係は長く、安定した仕事の土台になっている。
優良さと弱いところ
堀は、専用車両を持つ運び屋としての信頼と、石油輸送で長く続く荷主との関係だ。危険物を運ぶには資格と設備、安全の実績が要り、新規の参入は難しい。ただし値段は荷主との交渉で決まる面が強く、堀は「仕事を失いにくい」程度で、高い値段をつける力にはならない。
収益性は低い。営業利益率は過去10年で2〜5%台にとどまり、2026年3月期の4.9%が最高だ。自己資本利益率は5%前後で、資本コストを下回る。厚い自己資本の大半は保有株と設備だ。
弱点は荷主への依存だ。売上の3分の1強が ENEOS 一社で、同社は国内の製油所を減らしている。中計2021〜2023は営業利益18億円を目標に掲げたが、実績は15億円だった。
経営の資本配分は保守的だ。配当は利益の3割ほどで、保有株は111銘柄ほどを持ち続ける。
財務は借入が少なく、自己資本比率は6割を超える。この堅さが危機への耐性になる一方、資本効率を下げる原因にもなっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石油製品の国内需要は、車の燃費向上と電動化、人口減で緩やかに減る。ENEOS は大阪などの製油所を閉鎖し、拠点の再編を進めている。製油所が減れば、鉄道で運ぶ距離や拠点も変わる。鉄道のタンク車は転用しにくい専用品で、荷主の再編が稼働に直結する。
トラック輸送の側は、運転手の不足が続く。2024年の残業規制のあと、国の標準運賃が約8%上がり、運賃の改定が通りやすくなった。ただし人件費も上がり、改定の恩恵を打ち消す。会社の第1四半期も、人件費と維持修繕費が運賃の改定を上回って増えた。
高圧ガスと化成品は、半導体や化学の需要に支えられて数量は横ばいから微増だ。ただ、同業との競争が厳しく、利益率の改善は遅い。
中東情勢の長期化で、石油と高圧ガスの需給は読みにくくなっている。会社は2027年3月期の通期予想を出していない。10年で見れば、石油は細り、他は横ばいと筆者は見る。
荷主の側にも事情がある。物流費の削減を求める圧力は強く、運賃の改定は人件費の上昇分に追いつくのがやっとだ。専用車両を持つ強みは、石油の需要が元気な間にしか生きない。危険物の輸送で求められる安全と品質は、参入の壁として長く効くが、数量が細れば壁の内側も小さくなる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。「安定配当」を基本とし、2026年3月期は年4億円台後半を払った。2027年3月期の予想は4億円弱で、前期より下がる。利益の3割前後を配り、自社株買いは大きくない。
資本政策の鍵は、保有株と大株主だ。投資有価証券は116億円、上場株は111銘柄ほど。会社は毎年検証し、全銘柄を保有するのが適当と判断している。
大株主では、ENEOS ホールディングスが約29%を持ち、売上の3分の1強も占める。光通信グループも15%台を保有する(2024年8月の大量保有報告)。親会社の関係が続く以上、少数株主への還元が増える保証は薄い。一方、光通信が資本の使い方を求める余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は自己資本の半分で、投資有価証券だけで時価総額の7割を超える。ENEOS が29%、光通信が15%を保有し、資本の使い方に目を光らせる株主がそろっている。保有株を売って株主に返すだけで、価値は大きく変わる。
運賃の改定は実際に通り、2026年3月期の営業利益は2割増えた。人手不足で運賃が上がる局面は続き、他社に代えにくい専用車両を持つ会社は、値段を通しやすい。
財務は借入が少なく、金利の上昇に強い。中東情勢の長期化で石油の輸送が読みにくいという声もあるが、石油の輸送は景気に左右されにくく、安定した稼ぎ手であり続ける。株主構成が動けば、資本の使い方が変わる触媒になりうる。TSEが求める資本コストや株価を意識した経営の流れは、この会社にも及ぶはずで、時価総額が自己資本の半分に沈む状態は長く続かない。保有株を売って返すだけでも、株主には目に見える変化になる。物価が上がる世界では、土地や設備の含み益も名目で膨らむ。
慎重な見方
利益率が低い。営業利益率は過去10年で2〜5%台にとどまり、自己資本利益率は資本コストに届かない。厚い自己資本は稼ぎにつながっておらず、時価総額が自己資本の半分なのは、市場が稼ぐ力を正しく割り引いているからだ。
足元は悪化している。2027年3月期の第1四半期は営業利益が7割近く減り、石油輸送が赤字に転じた。人件費と維持修繕費が運賃の改定を上回り、通期予想も出せない。
荷主の ENEOS は製油所を減らしており、専用車両は転用しにくい。保有株は111銘柄を全て適当と判断する会社で、株主への還元が増える兆しは見えない。リース債務も重く、純現金の厚さは見かけにすぎない。10年先を考えると、石油の需要が戻る材料は乏しく、設備だけが古くなっていく。配当が利益の3割にとどまる以上、内部に残る金は増えるが、使い道が示されない限り、評価は上がらない。さらに、荷主の ENEOS は自社の持ち株を動かす理由が乏しく、変化を促す力は限られる。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が資本コストを下回り、荷主の偏りと石油の細りが重い。保有株は悲観の床として効くが、売る意思が見えないため、中立の価値を押し上げる力は小さい。確率はやや悲観側に寄せ、中立は4割弱に抑えた。強気の見方では、運賃の改定が実際に通った点が最も説得力があるが、人件費がそれを打ち消している。弱気の見方では、足元の赤字転落と、一社への依存が重い。資本政策の変化はまだ見えず、中立の価値を上げる根拠にはならなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,970 円194 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 768 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 1,976 円129 億円、今との差 −12.4%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 6,399 円418 億円 | 1,378 円90 億円 | +244.6% | +13.2% | 389 円25 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,469 円292 億円 | 1,072 円70 億円 | +145.5% | +9.4% | 942 円62 億円 |
| 中立 | 38% | 3,550 円232 億円 | 842 円55 億円 | +94.6% | +6.9% | 1,669 円109 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,457 円95 億円 | 582 円38 億円 | −9.7% | −1.0% | 551 円36 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,141 円75 億円 | 306 円20 億円 | −35.9% | −4.4% | 188 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,970 円194 億円 | 768 円50 億円 | +65.6% | +5.2% | 3,738 円244 億円 |
今の株価時価総額 2,257 円147 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 親子の関係が動き、保有株を株主に返す 利益 29 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 6,399 円418 億円
石油製品の輸送量は10年で1割弱の減少にとどまり、鉄道タンク車の使用料と運賃の改定が毎年通る。人手不足が運賃を押し上げる局面で、石油輸送の営業利益率は8%に戻る。高圧ガスは半導体向けなどの新しい輸送が積み上がり、利益率が5%に乗る。化成品は需要が堅調で、コンテナも拡大する。
資本政策も動く。ENEOS が持ち株の扱いを見直し、光通信を含む株主が還元の拡大を求める。会社は保有株のうち税後で60億円ほどを売却し、増配と自社株買いに回す。
この姿は、運賃の通りと資本政策の変化がそろった時だけ現れる。筆者は可能性を否定しないが、基本の筋書きには置かない。
- 石油輸送:数量 11.5(石油製品の輸送量(百万kL・年、推定))× 価格 21(1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃))→ 売上 241 億円・営業利益 19 億円。11.5×20.944、営業利益率 8.0%
- 高圧ガス輸送:数量 161(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.98(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 8 億円。161.0×0.98、営業利益率 5.0%
- 化成品・コンテナ輸送:数量 150(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 1.12(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 8 億円。150.0×1.12、営業利益率 5.0%
- 資産運用(賃貸・太陽光):数量 137(賃貸地など(千㎡、推定))× 価格 0.05(1 千㎡あたり収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。137.0×0.0511、営業利益率 50.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 13.39 倍、時価総額 418 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ENEOS と光通信という二つの大株主が資本の見直しを促し、石油の輸送量が思ったより減らず運賃も通る、という条件が重なる必要がある。会社は保有株を全銘柄「適当」と判断してきたので、確度は低い。
やや楽観 17% 運賃は通り、輸送量は緩やかに減る 利益 22 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,469 円292 億円
石油製品の輸送量は10年で1割ほど減るが、鉄道タンク車の使用料と運賃の改定が通り、営業利益率は7%に戻る。高圧ガスと化成品は、新規の輸送とコンテナの増強で増収になり、利益率は3%台に上がる。
人件費と維持修繕費は上がるが、運賃の改定で吸収できる。賃貸と太陽光の収入は物価並みに増える。
還元は配当が中心で、利益の3割を保つ。保有株は持ち続け、資本政策に大きな変化は起きない。財務の安全度は高いまま、利益が物価並みに伸びる姿だ。
荷主との関係は安定し、運賃の改定は毎年のように通る。車両の更新は計画どおり進み、現金は設備の投資と配当に回る。筆者は、これを現実に近い上振れと見る。
- 石油輸送:数量 11.0(石油製品の輸送量(百万kL・年、推定))× 価格 20(1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃))→ 売上 224 億円・営業利益 16 億円。11.0×20.3456、営業利益率 7.0%
- 高圧ガス輸送:数量 150(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.95(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 5 億円。149.8×0.952、営業利益率 3.5%
- 化成品・コンテナ輸送:数量 138(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 1.09(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 5 億円。138.0×1.088、営業利益率 3.5%
- 資産運用(賃貸・太陽光):数量 137(賃貸地など(千㎡、推定))× 価格 0.05(1 千㎡あたり収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。137.0×0.0496、営業利益率 50.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 292 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改定が通り続ける実績は足元でも出ている。輸送量の減少が緩やかなら、現実的な範囲だ。
中立 38% 輸送量は細り、運賃は物価並み、利益は薄いまま 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,550 円232 億円
石油製品の国内需要は、車の燃費向上と電動化、人口減で10年に1.5割ほど減る。鉄道タンク車の使用料と運賃は物価並みに上がるが、人件費と車両の維持修繕費の上昇が利益率を削る。営業利益率は、2026年3月期の4.9%を下回る4%台にとどまる。
高圧ガスは数量が横ばいで、運賃の改定が進んで赤字を脱する。化成品・コンテナは緩やかに増える。
設備は重い。今ある車両の償却は取得時の値段のままだが、更新の車両は物価の分だけ高く、投資は償却を上回る。現金は年10億円前後が設備に回り、還元は利益の3割にとどまる。
全体では、営業利益が20億円強で、純利益は17億円台になる。
- 石油輸送:数量 10.6(石油製品の輸送量(百万kL・年、推定))× 価格 20(1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃))→ 売上 213 億円・営業利益 13 億円。10.625×20.0464、営業利益率 6.0%
- 高圧ガス輸送:数量 140(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.94(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 3 億円。140.0×0.938、営業利益率 2.5%
- 化成品・コンテナ輸送:数量 126(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 1.07(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 3 億円。126.0×1.072、営業利益率 2.5%
- 資産運用(賃貸・太陽光):数量 137(賃貸地など(千㎡、推定))× 価格 0.05(1 千㎡あたり収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。137.0×0.0489、営業利益率 50.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 232 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:石油の輸送量が細ること、運賃は物価並みに通ること、人件費が利益率を削ることは、いずれも足元で見えている。過去の中計の未達も踏まえ、最も確度が高い筋書きとして厚く置いた。
やや悲観 27% 製油所の再編と電動化が進み、運賃も通りにくい 利益 12 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,457 円95 億円
製油所の統廃合とガソリン需要の減少が進み、石油製品の輸送量は10年で2割強減る。鉄道タンク車は稼働が落ち、荷主に有利な条件での契約更新を迫られる。値段は物価の分を取り切れない。
車両は重い固定資産なので、輸送量が減っても費用は減らない。石油輸送の営業利益率は4%台に下がる。高圧ガスと化成品は競争が厳しくなり、利益率は1%台にとどまる。
配当は最低限の水準を守るが、増配の余地はなくなる。保有株は持ち続ける。
人件費は運賃の改定を上回って上がり続け、車両の更新投資が現金を圧迫する。リース債務の返済は毎年必ず続き、財務の自由度は小さくなる。筆者は、この姿を本命の次に起こりやすい姿と見る。
- 石油輸送:数量 9.8(石油製品の輸送量(百万kL・年、推定))× 価格 19(1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃))→ 売上 190 億円・営業利益 9 億円。9.75×19.448、営業利益率 4.5%
- 高圧ガス輸送:数量 133(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.90(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 2 億円。133.0×0.896、営業利益率 1.5%
- 化成品・コンテナ輸送:数量 118(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 1.02(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 2 億円。117.6×1.024、営業利益率 1.5%
- 資産運用(賃貸・太陽光):数量 137(賃貸地など(千㎡、推定))× 価格 0.05(1 千㎡あたり収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。137.0×0.0474、営業利益率 45.0%
倍率:ROE は3%で k 7.5% を下回る。RONIC=8.25%+1/2×(3.0%−8.25%)=5.6%、g 3% から正当化 PER=(1−3%÷5.6%)÷(8.25%−3%)=8.9 倍。稼ぐ力が資本コストに届かない分を見て8.0倍に置いた。
確率:ENEOS の製油所の統廃合は実際に進み、鉄道輸送の拠点も減っている。人手不足が続く中で、運賃を転嫁できない局面は十分にありうる。
悲観 13% 石油の輸送が構造的に縮み、専用車両が遊ぶ 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,141 円75 億円
石油製品の輸送量が10年で3分の1減り、鉄道の拠点も縮小する。専用のタンク車は他の用途に転用しにくく、遊ぶ車両が出る。荷主の再編で運賃は物価の分を取れず、石油輸送の営業利益率は2%に落ちる。
高圧ガスと化成品も競争の激化で利益が出ない。全社の営業利益は数億円にとどまり、減損も出る。
この姿では、稼ぐ力ではなく手持ちの資産が価値を決める。保有株を売り、リース債務を返したあとの残りが、株主の取り分になる。配当は最低限に抑える。
荷主の再編が進めば、専用の車両は遊び、減損で自己資本も減る。この姿を筆者は低い確率と見るが、固定費の重い会社が最も傷む形でもある。
- 石油輸送:数量 8.1(石油製品の輸送量(百万kL・年、推定))× 価格 18(1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃))→ 売上 146 億円・営業利益 3 億円。8.125×17.952、営業利益率 2.0%
- 高圧ガス輸送:数量 119(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.81(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 −1 億円。119.0×0.805、営業利益率 -0.5%
- 化成品・コンテナ輸送:数量 102(輸送量(万トン・年、推定))× 価格 0.92(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 0 億円。102.0×0.92、営業利益率 0.0%
- 資産運用(賃貸・太陽光):数量 137(賃貸地など(千㎡、推定))× 価格 0.04(1 千㎡あたり収入(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。137.0×0.0438、営業利益率 40.0%
倍率:稼ぐ力は小さく、価値は売れる資産の税後で決まる。投資有価証券116億円の税後約99億円と現預金70億円から有利子負債94億円を引いた約75億円を床にし、今の自己資本298億円に0.25倍を掛けた。専用車両は転用しにくく帳簿を大きく割るので数えない。
確率:ENEOS の石油需要が構造的に細り、専用の車両が稼働しない姿は、国内の製油所の閉鎖が相次ぐ今の流れの延長にある。確度は低いが、売上の4割近くを一社に頼る弱さがある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
石油輸送
石油製品を鉄道のタンク車とタンクローリーで運び、製油所と油槽所を結ぶ。会社の稼ぎの柱で、主な荷主は ENEOS。
| 数量石油製品の輸送量(百万kL・年、推定) | 価格1 百万kL あたり売上(億円・名目、鉄道使用料と運賃) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.5 | 15 | 187 | 15 |
| 10 年後 中立 | 10.6 | 20 | 213 | 13 |
取り方:石油輸送の売上は2026年3月期に187億円、利益は14.9億円(edinetdb の決算の要約)。輸送量は開示が無く、運賃を1kLあたり約0.15万円とみて年1,250万kLと推定した。設備は重く、減価償却費は未確認だが、車両・車庫の償却は取得時の値段のまま続き、新規の更新分だけ新しい値段で足される。償却は年30億円台と推定した。
高圧ガス輸送
LPG・産業ガス・半導体向けガスなどをタンクローリーで運ぶ。
| 数量輸送量(万トン・年、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 140 | 0.70 | 98 | 0 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.94 | 131 | 3 |
取り方:売上98億円、営業損益はほぼゼロ(edinetdb)。1トンあたり0.7万円弱とみて年140万トンと推定した。開示は金額のみ。
化成品・コンテナ輸送
化成品を鉄道・コンテナ・ローリーで運ぶ。ISO タンクコンテナなどを自社で持つ。
| 数量輸送量(万トン・年、推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.80 | 96 | 1 |
| 10 年後 中立 | 126 | 1.07 | 135 | 3 |
取り方:売上96億円、営業利益1.4億円(edinetdb)。1トンあたり0.8万円弱とみて年120万トンと推定した。開示は金額のみ。
資産運用(賃貸・太陽光)
神栖などの保有地の賃貸と太陽光発電。小さいが利益率が高い。
| 数量賃貸地など(千㎡、推定) | 価格1 千㎡あたり収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 137 | 0.04 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 137 | 0.05 | 7 | 3 |
取り方:売上5億円、営業利益2.4億円(edinetdb)。賃貸設備の土地面積は約13.7万㎡(有報)で、太陽光を含む収入を面積で割った推定。
リスクと懸念
石油需要の細りと荷主の再編
ENEOS は製油所を閉鎖し、拠点を減らしている。石油の国内需要は電動化と人口減で細る。専用の貨車とローリーは転用しにくく、稼働が落ちると固定費が残って利益が消える。
一社への依存
売上の3分の1強が ENEOS 向けで、同社は大株主でもある。契約の更新や運賃の交渉で荷主に有利な条件を飲まされれば、改定の効果は消える。
人件費と維持修繕費の上昇
運転手の不足で賃金は物価を上回って上がる。2027年3月期の第1四半期は、人件費と車両・車庫の維持修繕費の増加で石油輸送が赤字に転じた。
更新投資の重さ
車両とコンテナは更新のたびに新しい値段で買い直す。償却は取得時の値段のままだが、投資は物価の分だけ膨らみ、現金は償却を上回って出ていく。リース債務は約90億円ある。
資本政策の停滞
投資有価証券は116億円あるが、会社は全銘柄の保有を適当と判断している。還元は利益の3割ほどにとどまり、親会社の関係が続く以上、少数株主への還元が増える保証は薄い。
今後の分かれ目
- 会社が政策保有株の縮減を数字つきで開示し、売却代金を還元に回すと発表したら
- 余った現金の戻り方を1.0に引き上げる根拠になる。価値は大きく上がり、楽観の確率も上げてよい。
- 石油輸送が2期続けて営業黒字で、運賃の改定が人件費の上昇を上回ったら
- 利益率の回復が確かになる。中立の利益率を上げ、やや楽観の確率を上げる。
- ENEOS が製油所の閉鎖や出荷拠点の統廃合を新たに発表したら
- 鉄道輸送の稼働が落ちる可能性が高い。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 光通信が保有比率を上げ、株主提案や面談の公表に動いたら
- 資本政策が変わる可能性がある。保有株の売却や還元の拡大が早まる方向で見直す。
- 高圧ガス輸送が通期で営業黒字になり、3%台へ向かったら
- 新規輸送の投資が実を結んでいる。中立の高圧ガス事業の利益率を上げてよい。
見ておくもの
- 石油輸送の営業損益と運賃の改定
- 人件費と維持修繕費の動き
- ENEOS の製油所・拠点の再編
- 保有株の売却と還元方針
- 光通信・ENEOS の持ち株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は、k 7.5%と長期の成長率3%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。石油の細りを見て g は上限の4%でなく3%に置いた。中立のROEは4%台で k を下回るため、PERは式の値の約95%に置いた。今の株価や過去のPER・PBRは使っていない。時価総額が自己資本の半分という状況は、ROEが低いことの結果で、式の外の割安とは見ていない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備の償却は取得時の値段のまま、更新分だけ新しい値段で足した(年30億円台から10年後は40億円台と推定)。純利益÷営業利益は過去の中央値0.81に合わせた。10年後の数字は、リースを営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→13.39 倍・やや楽観 PER 9.9→13.33 倍・中立 PER 9.4→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。