結論
京極運輸商事は、石油製品や化学品をタンクローリーで運び、ドラム缶を再生して売る会社だ。京浜と京葉、鹿島の工業地帯に拠点を持つ。ENEOS ホールディングスが株の 35% を持ち、ENEOS が売上の 2 割を占める最大の顧客でもある。筆者の結論は「割高」。資産は厚いが、事業の稼ぐ力が薄すぎる。
運ぶ量は、国内の石油の需要とともに細る。ガソリンも軽油も、人口の減りと車の燃費の改善、電気自動車への移りで年々減っていく。運転手の不足で運賃は上げやすくなったが、利益率は長く 1〜3% にとどまる。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の使い方だ。株の値段の 4 割にあたる政策保有株、つまり取引先との付き合いで持つ株を抱え、配当性向は 2 割しかない。資本を寝かせたまま ROE は 4% 前後で、資本コストに遠く届かない。
中期経営計画は 3 年後に営業利益 3 億円を掲げる。届いても ROE は 5% だ。資本の使い方が変わらない限り、筆者の見方も変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は厚いが、稼ぐ力が薄い」典型だ。危険物の輸送という堅い仕事を持ちながら、利益率は 2% に届かない。
事業の価値は、株主のものになる利益で決まる。京極運輸商事の純利益は 1.7 億円で、そのうち 0.7 億円は政策保有株の配当だ。輸送とドラム缶の本業が稼ぐ額はさらに小さい。資本コストを上回る稼ぎは、中期経営計画の目標が届いても見えない。
資本の使い方にも不満が残る。政策保有株と現金を抱えたまま還元は細く、ROE は 4% 前後にとどまる。株主の資本を寝かせている。
今の値段は自己資本の 0.7 倍で、一見安い。だが PBR が 1 倍を割ることは割安の証拠にならない。筆者は、稼ぐ力から見て今の値段でも高いと見る。
筆者なら、政策保有株を売って還元に回す方針が数字で出るまで、この値段は払わない。資本の使い方が変われば、評価は大きく変わりうる。
何で稼ぐ会社か
事業は 5 つに分かれる。いちばん大きいのは国内輸送で、売上 40 億円と全体の半分近い。石油元売りの油槽所や化学工場から、ガソリンスタンドや工場へ、タンクローリーで液体を運ぶ。営業利益率は 7% ある。
2 番目はドラム缶とペール缶だ。使い終えた缶を洗って直す更生缶と、新しい缶の販売で売上 25 億円ある。ただ営業利益率は 4% に届かない。
ほかに、海外へ化学品を送る国際物流が 6 億円、燃料の販売のエネルギーが 10 億円、石油タンクを洗うタンク洗浄が 7 億円ある。国際物流とタンク洗浄は利益率が 15〜20% と高く、規模は小さいが利益の柱だ。エネルギーはほぼ利益が出ていない。
セグメントの利益を足すと 6 億円あるが、本社の費用が 4.5 億円かかり、全社の営業利益は 1.6 億円にとどまる。危険物を運ぶ免許と、工業地帯の拠点の土地が、事業の土台になっている。
最大の顧客は ENEOS で、売上の 2 割を占める。ENEOS は株の 35% を持つ大株主でもある。
従業員は 300 人ほどで、平均年齢は 50 歳に近い。運転手の高齢化は、この会社の事業の続き方にも関わる。
優良さと弱いところ
優良さは低い、と筆者は見る。全社の営業利益率は過去 12 年で最高でも 3% に届かない。運賃は元売りと化学の大手が相手で、値段を自分で決める力は弱い。
堀、つまり他社がまねできない強みはある。危険物を安全に運ぶ技術と免許、京浜と京葉の工業地帯の拠点、タンク洗浄の技能だ。新しく入る会社は少ない。ただ、この強みは石油の量が細る中で守る力であり、伸ばす力ではない。
財務は堅い。現金は短期借入を上回り、自己資本比率は 52% ある。一方で、車両のリースが 11 億円あり、これを含めると差し引きで小さな借金になる。
資本の効率は悪い。政策保有株が 15 億円あり、配当性向は 2 割だ。資本を寝かせている分、ROE は 4% 前後に沈む。
経営は保守的だ。大きな買収や新しい事業への賭けはしないが、資本を効率よく回す工夫も見えない。中期経営計画の ROE の目標は 5% にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の石油製品の需要は、長い下り坂にある。ガソリンは人口の減りと燃費の改善で年 2% 前後減り、電気自動車の広がりがそれを速める。製油所の統廃合も続き、元売りは物流の拠点を絞っている。運ぶ量は 10 年で 1〜2 割減ると筆者は見る。
一方で、運ぶ側の値段は上がりやすくなった。物流の 2024 年問題で、運転手の時間外労働に上限が付いた。危険物を運べる運転手は特に足りない。元売りや化学の会社は、運賃の値上げを受け入れ始めている。京極運輸商事が前期に増益したのも、この価格改定が効いたからだ。
ドラム缶は、化学品や塗料の出荷とともに動く。更生缶は新しい缶より安く、環境の面でも選ばれやすい。量は横ばいに近い。
タンク洗浄には別の追い風がある。製油所や油槽所の統廃合で、閉じるタンクの洗浄と撤去の仕事が出る。水素やアンモニアへの転換でも、設備の手入れの需要は続く。
競合は、ENEOS 系のほかの物流会社や、ニヤクコーポレーション、丸運などの石油輸送の会社だ。
筆者は、運賃の値上げが量の減りをおおむね埋めると見る。ただ、それ以上の伸びは見込みにくい。
資本政策と M&A
還元は薄い。配当方針は「安定配当」で、年 0.3 億円ほど、配当性向は 2 割にとどまる。自己株の取得はしていない。
政策保有株は上場 11 銘柄で 14 億円ある。JFE ホールディングスや三菱 UFJ、日本瓦斯などだ。前期は丸運の株を全部売り、今期は持分法の弥生京極社の株も同社に売った。売った資金は、物流拠点を使い回すマルチワークステーションなどの成長投資に回すという。
資本政策の鍵は ENEOS だ。35% を持つ大株主で最大の顧客でもあり、経営の方向は ENEOS との関係の中で決まる。ENEOS が物流子会社の再編の中で残りを買い取る可能性は否定できないが、今は発表も観測記事もない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運転手の不足は、運ぶ側の値段を上げる。危険物を運べる運転手は特に少なく、元売りや化学の会社は値上げを受け入れ始めた。前期の増益はその証拠だ。運ぶ量が減っても、1 回あたりの運賃が物価より速く上がれば、利益は伸びる。
タンク洗浄にも追い風がある。製油所と油槽所の統廃合で、閉じるタンクの洗浄の仕事が出続ける。前期は工事が進み、利益は前の年の 20 倍を超えた。国際物流も利益率が 2 割近い。
中期経営計画は 3 年後に営業利益 3 億円を掲げる。マルチワークステーションで拠点を使い回し、クロスセールで顧客ごとの取引を広げる。届けば営業利益は今の倍近い。
さらに資産がある。政策保有株 15 億円、現金 13 億円、工業地帯の土地 16 億円だ。今の時価総額はこの合計を下回る。ENEOS の物流の再編で、買い取りの話が出る余地もある。
資本の使い方が変われば、ROE は一気に上がる。政策保有株を売って還元に回すだけで、株主の取り分は大きく増える。前期の丸運株の売却は、その入り口かもしれない。
慎重な見方
運ぶ物そのものが減っていく。ガソリンと軽油の需要は年 2% 前後減り、電気自動車が広がればさらに速まる。元売りは製油所と油槽所を絞り、運ぶ距離も件数も減る。運賃を上げても、量の減りに追いつかない年が来る。
利益率の歴史も厳しい。全社の営業利益率は過去 12 年で最高でも 3% に届かず、2023〜2025 年は 0% 台だった。本社の費用が 4.5 億円あり、セグメントの稼ぎの大半を食う。運転手の給与を上げれば、値上げの効果は消える。
資産も当てにならない。政策保有株は取引の維持のために持つと会社は言い、売る方針の数字はない。土地は事業の拠点だ。少数株主がそれを現金に変えさせることはできない。
ENEOS への依存も重い。最大の顧客が大株主を兼ね、運賃の交渉で強く出にくい。中期経営計画が届いても ROE は 5% で、資本コストの半分ほどだ。
今の値段は自己資本の 0.7 倍だが、ROE が 4% の会社なら、それでも安くはない。資産の厚さを値段の支えと見るのは、売る方針がない限り空振りに終わる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。運賃の値上げは本物だが、運ぶ量の減りと本社の費用の重さを覆すほどではない。資産の厚さは、売る方針がない限り株主の価値にならない。確率は中立に厚く、悲観側をやや厚めに置いた。楽観の柱のタンク洗浄は小さく、全体を変えるには足りない。資本の使い方が変わる兆しが数字で出れば、確率は楽観側に動かす。今はその兆しを待つ段階だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 840 円23 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 140 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 474 円13 億円、今との差 −65.0%、 期待の年率 −3.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,804 円50 億円 | 250 円7 億円 | +51.8% | +4.3% | 164 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,270 円36 億円 | 197 円6 億円 | +8.4% | +0.8% | 293 円8 億円 |
| 中立 | 40% | 853 円24 億円 | 143 円4 億円 | −26.3% | −3.0% | 399 円11 億円 |
| やや悲観 | 22% | 333 円9 億円 | 89 円3 億円 | −68.8% | −11.0% | 93 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 268 円8 億円 | 36 円1 億円 | −77.5% | −13.9% | 30 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 840 円23 億円 | 140 円4 億円 | −27.6% | −3.2% | 980 円27 億円 |
今の株価時価総額 1,353 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 運賃の値上げと洗浄の需要で利益が倍になる 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,804 円50 億円
危険物を運べる運転手の不足が続き、運賃は 10 年で 1.45 倍に上がる。運ぶ量は 5% 減にとどまる。国内輸送の利益率は 8% に上がる。
製油所と油槽所の統廃合が続き、タンク洗浄の工事は 4 割増える。国際物流も化学品の輸出で伸びる。ドラム缶は更生缶が環境の面で選ばれ、利益率が上がる。
本社の費用は効率化で物価ほどは増えず、全社の営業利益は 4 億円を超える。中期経営計画の目標を上回る姿だ。
ただ政策保有株は持ち続け、還元も大きくは増えない。ROE は 6% 前後で、資本コストにはまだ届かない。
資本の厚さは変わらず、値段の上限は稼ぐ力で決まる。
- 国内輸送:数量 95.0(輸送量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.57(輸送量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。量 0.95 倍・運賃 1.45 倍・利益率 8%
- 国際物流:数量 120(取扱量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.08(取扱量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。量 1.20 倍・単価 1.34 倍・利益率 18%
- ドラム缶・ペール缶:数量 105(販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.33(缶数 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。量 1.05 倍・単価 1.34 倍・利益率 4.5%
- エネルギー:数量 80.0(販売量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.12(販売量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。量 0.80 倍・単価 1.30 倍
- タンク洗浄:数量 140(工事量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.10(工事量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。量 1.40 倍・単価 1.40 倍・利益率 13%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃が物価より速く上がり、タンク洗浄と国際物流が伸びる筋書き。中期経営計画の目標を超える姿で、過去 12 年の利益率の山(3%)を上回るため低く置いた。
やや楽観 20% 中期経営計画がほぼ届き、利益率 2.5% へ 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,270 円36 億円
運ぶ量は 10 年で 1 割減るが、運賃は 1.42 倍に上がる。国内輸送の利益率は 7.5% に上がる。
タンク洗浄は工事が 25% 増え、国際物流も 1 割伸びる。ドラム缶の利益率は 4% に上がる。マルチワークステーションで拠点を使い回し、効率も少し上がる。
全社の営業利益は 3 億円近くになり、中期経営計画の目標にほぼ届く。純利益は政策保有株の配当を含めて 3 億円近い。
配当は少しずつ増えるが、配当性向は低いままだ。ROE は 4% 台で、資本コストとの差は縮まらない。ENEOS との関係は今と変わらない。
資本の効率は変わらない。
- 国内輸送:数量 90.0(輸送量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.56(輸送量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。量 0.90 倍・運賃 1.42 倍・利益率 7.5%
- 国際物流:数量 110(取扱量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.08(取扱量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。量 1.10 倍・単価 1.32 倍
- ドラム缶・ペール缶:数量 100(販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.33(缶数 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。量 1.00 倍・単価 1.34 倍・利益率 4%
- エネルギー:数量 78.0(販売量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.12(販売量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。量 0.78 倍・単価 1.28 倍
- タンク洗浄:数量 125(工事量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.09(工事量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。量 1.25 倍・単価 1.36 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の改定が続き、中期経営計画の営業利益 3 億円がほぼ届く筋書き。前期の値上げの実績を根拠に置いた。
中立 40% 量は 15% 減り、運賃の値上げで利益を保つ 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 853 円24 億円
運ぶ量は 10 年で 15% 減る。ガソリンと軽油の需要が細り、元売りは油槽所を絞る。運転手の不足で運賃は 1.40 倍に上がり、国内輸送の利益率は 7% を保つ。
ドラム缶は量が少し減るが、更生缶の値段は物価並みに上がる。タンク洗浄は統廃合の工事で 1 割増える。国際物流は量が横ばいで、利益率は少し下がる。
本社の費用は物価で増え、セグメントの稼ぎの大半を食う。全社の営業利益は 1.8 億円と今を少し上回る程度だ。10 年の償却は今の 3.7 億円前後で、物価では増えないが、車両の更新は新しい値段で入る。
純利益は政策保有株の配当を含めて 1.8 億円前後。配当は今の水準を保ち、資本は積み上がる。
- 国内輸送:数量 85.0(輸送量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.55(輸送量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。量 0.85 倍・運賃 1.40 倍・利益率 7%
- 国際物流:数量 100(取扱量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.08(取扱量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。量 1.00 倍・単価 1.30 倍・利益率 18%
- ドラム缶・ペール缶:数量 95.0(販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.33(缶数 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。量 0.95 倍・単価 1.34 倍・利益率 3.6%
- エネルギー:数量 75.0(販売量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.12(販売量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。量 0.75 倍・単価 1.25 倍
- タンク洗浄:数量 110(工事量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.09(工事量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。量 1.10 倍・単価 1.34 倍・利益率 12%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 21 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:石油製品の需要が年 1.5% 前後で減り、運賃の改定でそれを埋める標準の姿。全社の営業利益率は過去 12 年の中央値前後の 1.7% に置いた。
やや悲観 22% 量の減りが速く、本社の費用に負ける 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 333 円9 億円
運ぶ量は 10 年で 25% 減る。電気自動車が広がり、元売りは製油所と油槽所をさらに絞る。運賃の値上げは 1.30 倍にとどまり、国内輸送の利益率は 5% に下がる。
ドラム缶は化学品の出荷の減りで量が 15% 減り、利益は細る。タンク洗浄も統廃合の工事が一巡すると減る。エネルギーは赤字になる。
本社の費用は削っても 5 億円かかり、全社の営業損益は赤字に沈む。政策保有株の配当で最終損益はほぼゼロに近いが、赤字の年が続く。
配当は減り、資本は少しずつ削られる。ENEOS の物流の再編の中で、拠点の統廃合を迫られる。
資産は残るが、稼ぐ力はほとんど無い。
- 国内輸送:数量 75.0(輸送量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.51(輸送量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。量 0.75 倍・運賃 1.30 倍・利益率 5%
- 国際物流:数量 90.0(取扱量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.08(取扱量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。量 0.90 倍・単価 1.25 倍
- ドラム缶・ペール缶:数量 85.0(販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.31(缶数 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。量 0.85 倍・単価 1.25 倍
- エネルギー:数量 60.0(販売量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.11(販売量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。量 0.60 倍・赤字
- タンク洗浄:数量 90.0(工事量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.09(工事量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。量 0.90 倍・単価 1.25 倍
倍率:最終赤字なので PER は当てない。稼ぐ力では値が付かず、今の自己資本 46.6 億円に 0.2 倍。政策保有株と現金から借入とリース、退職給付を引いた残りに、戻り方 0.5 を掛けた床(約 7.5 億円)を少し上回る。
確率:電動化と製油所の統廃合が速く進み、運ぶ量が 4 分の 1 減る筋書き。2023〜2025 年に営業利益率が 0% 台だった実績から厚めに置いた。
悲観 10% 石油の量が崩れ、拠点を畳む 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 268 円8 億円
構造的に負ける。運ぶ量は 10 年で 35% 減り、元売りは物流を自前の子会社に寄せる。運賃は 1.20 倍しか上がらず、国内輸送の利益率は 2% に落ちる。
ドラム缶もタンク洗浄も縮み、エネルギーは赤字が膨らむ。本社の費用を削っても、全社の営業損益は 3 億円の赤字になる。
拠点の統廃合と人員の整理が続き、減損で自己資本は半分を割る。配当はほぼ止まる。
値の支えは政策保有株と現金だが、借入とリース、退職給付を返すと多くは残らない。ENEOS が安い値で残りを買い取る形もありうる。
少数株主に残るのは、親会社に近い大株主が認める範囲の取り分だけになる。
- 国内輸送:数量 65.0(輸送量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.48(輸送量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。量 0.65 倍・運賃 1.20 倍・利益率 2%
- 国際物流:数量 80.0(取扱量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.07(取扱量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。量 0.80 倍・単価 1.15 倍
- ドラム缶・ペール缶:数量 75.0(販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.28(缶数 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。量 0.75 倍・単価 1.15 倍
- エネルギー:数量 50.0(販売量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.11(販売量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。量 0.50 倍・赤字
- タンク洗浄:数量 80.0(工事量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.08(工事量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。量 0.80 倍・単価 1.15 倍
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。今の自己資本 46.6 億円に 0.16 倍で、下の売れる資産の床に合わせた。
確率:構造的に負ける筋書き。電動化と製油所の閉鎖で運ぶ量が 3 分の 1 減り、運賃の値上げも通らない。財務が堅く存続の危うさは小さいので 10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内輸送
石油製品・化学品をタンクローリーで油槽所や工場からスタンドや工場へ運ぶ。京浜・京葉・鹿島が拠点。
| 数量輸送量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格輸送量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.40 | 40 | 3 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.55 | 47 | 3 |
取り方:セグメント売上 39.6 億円・利益 2.79 億円(2026/03 有報)。輸送量の開示がないため今を 100 とする指数で置き、国内の石油製品の需要の減りを量に、運賃の改定を単価に分けた推定。
国際物流
化学品などの輸出入の手配と、海外へのタンクコンテナの輸送。
| 数量取扱量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格取扱量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.06 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.08 | 8 | 1 |
取り方:セグメント売上 6.31 億円・利益 1.33 億円(2026/03 有報)。取扱量の開示がないため今を 100 とする指数の推定。
ドラム缶・ペール缶
使用済みの缶を洗浄・修理する更生缶と、新しい缶の販売。
| 数量販売缶数の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格缶数 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.25 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.33 | 31 | 1 |
取り方:セグメント売上 24.62 億円・利益 0.89 億円(2026/03 有報)。缶数の開示がないため今を 100 とする指数の推定。
エネルギー
燃料油の販売。
| 数量販売量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格販売量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.10 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 0.12 | 9 | 0 |
取り方:セグメント売上 9.6 億円・利益 0.03 億円(2026/03 有報)。販売量の開示がないため今を 100 とする指数の推定。
タンク洗浄
子会社の日本タンクサービスが、石油・化学のタンクの洗浄と工事を行う。
| 数量工事量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格工事量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.07 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.09 | 10 | 1 |
取り方:セグメント売上 6.89 億円・利益 1.08 億円(2026/03 有報。前期は 0.05 億円で、工事の進み具合で振れる)。工事量の開示がないため今を 100 とする指数の推定。
リスクと懸念
石油製品の需要の縮み
ガソリンと軽油の需要は人口の減りと燃費の改善で年 2% 前後減り、電気自動車の広がりで速まる。製油所と油槽所の統廃合で、運ぶ距離と件数が減る。
ENEOS への依存
ENEOS が売上の 2 割を占め、株の 35% を持つ。運賃の交渉で強く出にくく、ENEOS が物流を再編すれば仕事の量が大きく動く。
本社の費用の重さ
セグメントの利益 6 億円に対し、本社の費用が 4.5 億円かかる。物価で費用が増えれば、運賃の値上げの効果を食う。過去 12 年の営業利益率は最高でも 3% に届かない。
運転手の確保と事故
危険物を運べる運転手は足りず、給与は上がり続ける。タンクローリーの事故は一度で信用と免許を失う恐れがあり、損失も大きい。
資本の寝かせ
政策保有株 15 億円と現金を抱え、配当性向は 2 割。売る方針の数字はなく、ROE は 4% 前後にとどまる。資産の厚さが株主の価値に結び付かない。
今後の分かれ目
- 中期経営計画の営業利益 3 億円が 2029/03 期に届いたら
- 運賃の改定と効率化が定着したとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却の方針を数字で示し、売った資金を還元に回したら
- 資本の寝かせが解けるとみて、戻り方を 0.75〜1.0 に上げ、株の値を余り資産に足すかを見直す。
- ENEOS が物流子会社の再編の中で買付けを発表したら
- 事業の価値ではなく買付けの値段で決まる。分析は止め、その値段だけを見る。
- 全社の営業利益率が再び 0% 台に落ちたら
- 本社の費用に負ける姿とみて、やや悲観の確率を上げる。
- 電気自動車の新車比率が国内で 3 割を超えたら
- ガソリンの需要の減りが速まるとみて、中立の運ぶ量を引き下げる。
見ておくもの
- 国内輸送の運賃改定と取扱量
- タンク洗浄の工事の受注
- 全社の営業利益率と本社の費用
- 政策保有株の売却と還元の方針
- ENEOS との取引の比率
- 中期経営計画の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を下回るので PER の上限 1÷k = 11.8 倍の 75〜90% に置いた。今の PBR 0.7 倍・PER 20 倍前後は根拠にしていない。政策保有株の配当は純利益に残したので、株の値は余り資産に足さず(二重に数えない)、悲観の床だけで数えた。車両のリースは新しい会計基準で負債に載るが、10 年後は今と同じ形で置いた。純現金はリースの約束で相殺されるので余った現金は立てない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.12 倍・やや楽観 PER 9.5→12.12 倍・中立 PER 9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。同じ領域に済んだ会社はない。個別のリスク(ENEOS への依存など)は k に足さず、筋書きと確率で表す。