結論
岡山県貨物運送は、中国地方を地盤に企業間の小口荷物を運ぶ路線便の会社だ。通称は「オカケン」。筆者の結論はやや割高である。PBRは0.3倍と見かけは安いが、本業の稼ぎは自己資本に比べて細く、ためた資産が株主の価値に変わっていない。
2024年問題、つまりトラック運転手の残業規制で、運賃は上がりやすくなった。会社も値上げ交渉と共同配送で利益を立て直し、営業利益は前期比4割増えた。この追い風は本物だ。
ただ営業利益率は3%台で、山の年でも4.5%にとどまる。自己資本は約270億円あるのに、純利益は正常な年で11億円前後しかない。ROEは4%台で、資本コストの半分だ。土地や拠点の売却で一時的な利益は出るが、配当は利益の1〜2割にすぎず、株主にはほとんど戻らない。帳簿の厚さは、少数株主にとって安全域にならない。
10年の中立では、運賃の値上げで営業利益は20億円近くまで増えるとみる。それでも自己資本は400億円近くに膨らみ、ROEは4%前後のままだ。配当を厚くするか、大手との再編が起きない限り、この差は縮まらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の資産より、その資産が生む利益を見る。オカケンの資産は厚いが、生む利益は細い。
約270億円の自己資本は、毎年4%台しか稼がない。資本コストを8%台とすれば、ためた利益は、株主にとって帳簿の額ほどの価値を持たない。PBRが0.3倍なのは、市場がその事実を織り込んでいるからだ。低いPBRは安さの証拠ではなく、資本が眠っている証拠である。
それでも、この事業が10年後に消えることはない。中国地方の荷物を毎日運ぶ網は、地域の物流に欠かせない。運賃の値上げが定着すれば、利益は今より厚くなる。経営も堅実で、借金で無理をしない。
問題は資本の使い方だ。土地を売っても、現金は株主に戻らない。配当を増やすか、自社株を買うか、あるいは大手に買われるか。そのどれかが起きない限り、少数株主の取り分は細いままだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は路線便だ。中国地方の荷主から小口の荷物を集め、自社のターミナルで仕分け、幹線のトラックで運び、着いた先でまた配る。1台のトラックに多くの荷主の荷物を積み合わせるので、荷物が集まるほど1個あたりの費用が下がる。
会社の始まりは、戦時中に岡山のトラック業者79社が統合したことにある。今も岡山・広島・山口など中国地方に拠点が密で、地元の製造業や卸売業の出荷を支える。営業収益の95%が貨物運送で、残りは燃料の販売、自動車用品とフォークリフトの販売、人材派遣だ。
全国の網では西濃運輸や福山通運に及ばない。そこで遠い地域は同業と組む。北陸方面の配送は同業に任せ、山陰方面は逆に同業から受ける。互いの得意な地域で荷物を融通し、トラックの空きを減らす。福山通運は株主でもある。
資産は厚い。土地は簿価で約180億円、現金は約105億円、投資有価証券は約47億円ある。一方で借入は約135億円あり、純負債は約30億円だ。
利益の大半は貨物運送が稼ぐ。2026年3月期の貨物の営業利益は約11億円、営業利益率は3%弱だった。運賃の改定と共同配送で前期より4割強増えたが、まだ過去の山には届かない。
優良さと弱いところ
優良さは、中国地方での網の密度に尽きる。地元の荷主にとって、毎日決まった時間に集荷に来るオカケンは手放しにくい。新しく路線網を作るには、土地とターミナルと運転手が要り、簡単には参入できない。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みとしては浅い。西濃運輸や福山通運も同じ地域を走り、運賃は荷主との交渉で決まる。2024年問題で運賃の交渉力は上がったが、それは業界全体の追い風で、オカケンだけの強みではない。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で7.5%、それも拠点の売却益を含めての値だ。本業だけなら4〜5%にとどまる。自己資本は毎年積み上がるのに、配当は利益の1〜2割で、自社株買いもほとんどない。
経営は手堅く、無理な買収はしない。共同配送や拠点の集約で効率を上げる手も打っている。だが株主に資本を返す意識は弱い。土地を売って得た現金も、借入の返済と次の拠点に回る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
トラック運送の数量は、国内では細る方向だ。製造業の国内生産は横ばいから微減で、中国地方の人口も減っている。企業間の小口荷物は、10年で1割前後減るのが自然な見方だ。
価格の側は追い風が吹く。2024年4月から運転手の残業は年960時間に制限され、運転手は全国で約20万人足りないとされる。国は「標準的な運賃」を引き上げ、荷待ちの時間にも料金を取れるようにした。荷主はもう、運べる会社を選べない。運賃は物価より速く上がる局面にある。
費用も上がる。運転手の賃金は上がり続け、軽油やトラックの値段も高い。運賃の値上げと費用の上昇の差が、各社の利益率を決める。規模の大きい西濃運輸や福山通運は、幹線の大型化やデジタル化で費用を抑える。オカケンの規模では同じ投資は重い。
そのため業界は共同配送と再編に向かう。中小の運送会社は事業承継が難しく、大手の傘下に入る例が増えている。オカケンは受け手にも、買われる側にもなりうる。
中国地方に固有の事情もある。瀬戸内の化学・鉄鋼・自動車部品の工場は残るが、増産の投資は海外に向かいやすい。地場の荷主の出荷は、大きく伸びる見込みが薄い。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、2026年3月期の配当総額は約1.6億円、配当性向は6%だった。拠点の売却益を除いた利益に対しても1〜2割にとどまる。方針は「安定配当と内部留保の充実」で、留保は拠点整備と省力化に使うとしている。自社株買いの実績はほとんどない。
土地の売却は数年おきに出る。2024年3月期は広島の旧施設、2026年3月期は旧京都営業所を売り、どちらも20億円を超える売却益が出た。売った現金は借入の返済と新しい拠点に回った。
株主は損保ジャパン、従業員持株会、地元の印刷会社、福山通運、中国銀行、両備ホールディングスなど安定株主が並ぶ。親会社はない。福山通運が持つ約5%は、将来の再編の芽になりうる。ただ公開買付けの話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
オカケンは、物流の構造変化の勝ち組になりうる。2024年問題で運転手は足りず、荷主は運べる会社に頭を下げる時代になった。中国地方で毎日集荷に来る網を持つ会社は、運賃を上げても荷物を失わない。営業利益が1年で4割増えたのは、その始まりにすぎない。
共同配送も効いている。北陸は同業に任せ、山陰は同業から受ける。得意な地域に荷物を集めれば、トラックの積載率は上がり、利益率は過去の山の4.5%を超えうる。3PLや倉庫を広げれば、運賃より安定した稼ぎも加わる。
資産も厚い。土地は簿価で約180億円あり、古い拠点の土地は時価がもっと高いはずだ。数年おきに拠点を売り、20億円を超える売却益を出してきた。時価総額は約80億円で、土地の簿価の半分にも満たない。
再編の目もある。福山通運が約5%を持ち、業界は中小の統合が進む。大手が網を欲しがれば、公開買付けで資産の価値が表に出る。
AIを使った配送ルートの最適化や事務の自動化も、会社は最優先の課題に掲げた。人手の制約が厳しい業界ほど、こうした効率化の効き目は大きい。
慎重な見方
PBRの低さに意味はない。問題は、資産が稼がないことだ。本業の利益は自己資本の4%台で、資本コストの半分にとどまる。10年たっても、この差が埋まる根拠は乏しい。
運賃の値上げは、費用の上昇とほぼ相殺される。運転手の賃金、軽油、トラックの値段、外注の傭車料が、どれも物価より速く上がる。大手は幹線の大型化とデジタル化で費用を抑えるが、オカケンの規模では同じ投資は重い。会社自身も次期の営業利益を減益と見ている。
数量も細る。中国地方の製造業は国内生産を増やさず、人口も減る。荷物の量は10年で1割前後減る。
土地の売却益は一度きりだ。売った現金は借入の返済と新しい拠点に消え、株主には戻らない。配当性向は1〜2割で、自社株買いもない。資産が厚くても、少数株主が手にするのは毎年の細い配当だけだ。公開買付けを当てにするのは、投資ではなく期待である。
規模の差も重い。大手は全国の幹線で荷物を集め、トラックを大型化し、1個あたりの費用を下げる。地域の会社が同じ値段で戦えば、利益率で負け続ける。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。運賃の追い風は本物だが、費用の上昇と規模の不利でほとんど相殺される。資産の厚さは、還元の方針が変わらない限り株主の価値にならない。確率は中立を中心に、楽観側にも再編と値上げ定着の分を残した。結論はやや割高で、低いPBRに引きずられていない。強気の側の確率を上げるには、配当や自社株買いで資本を返す方針の変化が要る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,747 円177 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 899 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 4,870 円99 億円、今との差 +21.9%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 13,352 円271 億円 | 1,234 円25 億円 | +265.1% | +13.8% | 1,459 円30 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,737 円238 億円 | 1,036 円21 億円 | +219.7% | +12.3% | 2,810 円57 億円 |
| 中立 | 36% | 10,672 円216 億円 | 938 円19 億円 | +190.6% | +11.3% | 4,179 円85 億円 |
| やや悲観 | 21% | 3,799 円77 億円 | 740 円15 億円 | +13.6% | +1.3% | 953 円19 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,727 円35 億円 | 493 円10 億円 | −44.4% | −5.7% | 244 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,747 円177 億円 | 899 円18 億円 | +141.4% | +9.2% | 9,646 円195 億円 |
今の株価時価総額 3,995 円81 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 値上げが定着し、共同配送で利益率が山を超える 利益 20 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 13,352 円271 億円
運転手の不足は10年続き、運賃は物価より速く上がる。オカケンは中国地方の網を武器に、荷主に値上げを通し続ける。共同配送の相手が増え、北陸や九州の荷物も同業と融通して、トラックの積載率が上がる。3PLと倉庫も育ち、運賃より安定した稼ぎが加わる。
荷物の量は地域の生産に支えられて横ばい近くを保つ。貨物の営業利益率は4.5%まで上がり、過去の山を超える。拠点の集約で浮いた土地も売り、借入を減らす。
利益が増えて配当も増えるが、配当性向は2割前後のままだ。福山通運などとの資本の結びつきが深まり、再編の期待も株価を支える。
- 貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫):数量 205(取扱重量(万トン・推定))× 価格 2.65(1トンあたり収入(万円・名目))→ 売上 543 億円・営業利益 24 億円。重量は今の約1.03倍、運賃は名目1.44倍
- 石油製品販売:数量 5.0(外部向け燃料の販売量(万kL・推定))× 価格 2.01(1万kLあたり売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。販売量は細る
- その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣):数量 10.9(実質の取扱規模(億円・今の値段))× 価格 1.34(価格の指数(今=1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。物価並みに伸びる
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 271 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の値上げが10年続き、共同配送と3PLで利益率が過去の山を超える筋書き。業界の追い風は本物だが、規模の不利を考えると1割にとどまる。
やや楽観 22% 運賃改定が続き、利益率が山に近づく 利益 18 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 11,737 円238 億円
運賃の値上げは毎年少しずつ通り、10年で名目1.4倍強になる。荷物の量は中国地方の生産の細りでわずかに減るが、共同配送で遠い地域の荷物を融通し、積載率を保つ。
運転手の賃金と燃料の値上がりは続くが、値上げと拠点の集約で吸収する。貨物の営業利益率は4%まで上がり、過去の山に近づく。トラックは5〜7年で入れ替わるので、償却は新しい車両の値段で増えるが、運賃の伸びがそれを上回る。
借入の金利は3.5%へ上がり、利払いが少し増える。配当は増えるが、性向は1〜2割のままだ。自己資本は積み上がり、ROEは5%前後にとどまる。
- 貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫):数量 197(取扱重量(万トン・推定))× 価格 2.62(1トンあたり収入(万円・名目))→ 売上 516 億円・営業利益 21 億円。重量は約0.99倍、運賃は名目1.42倍
- 石油製品販売:数量 5.0(外部向け燃料の販売量(万kL・推定))× 価格 2.01(1万kLあたり売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。販売量は細る
- その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣):数量 10.3(実質の取扱規模(億円・今の値段))× 価格 1.34(価格の指数(今=1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。物価並み
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 235 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の値上げが物価より少し速く続き、費用の上昇を上回る筋書き。今の値上げ交渉と共同配送の実績からみて、届く範囲にある。
中立 36% 値上げと費用が相殺し、資本は眠ったまま 利益 16 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 10,672 円216 億円
10年後もオカケンは中国地方の荷物を運び続ける。荷物の量は地域の生産と人口の細りで約5%減るが、運賃は2024年問題の余韻で物価より少し速く上がり、名目で1.4倍になる。
費用も上がる。運転手の賃金、軽油、傭車料が物価より速く上がり、値上げの多くを食う。トラックの入れ替えは新しい値段で償却を押し上げ、古い拠点の建て替えも重い。貨物の営業利益率は3.6%と、今より少し厚くなる程度にとどまる。
借入の金利上昇で利払いが増え、純利益は15億円台だ。配当は性向1割強で、利益の大半は自己資本に積み上がる。ROEは4%前後のままで、資本は眠り続ける。
- 貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫):数量 190(取扱重量(万トン・推定))× 価格 2.58(1トンあたり収入(万円・名目))→ 売上 491 億円・営業利益 18 億円。重量は約0.95倍、運賃は名目1.40倍
- 石油製品販売:数量 5.0(外部向け燃料の販売量(万kL・推定))× 価格 2.01(1万kLあたり売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。販売量は細る
- その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣):数量 9.9(実質の取扱規模(億円・今の値段))× 価格 1.34(価格の指数(今=1.0))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。物価並み
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 207 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の値上げは通るが、賃金と燃料の上昇で多くが相殺される中心の筋書き。会社の次期予想が減益であることとも合う。
やや悲観 21% 荷物が減り、値上げが費用に追いつかない 利益 10 億円 · PER 5.6 倍 · 株価時価総額 3,799 円77 億円
中国地方の製造業が海外へ生産を移し、荷物の量は10年で1割強減る。運賃は上がるが、大手が幹線の効率で値段を抑え、オカケンは物価並みの値上げしか通せない。
運転手の賃金と傭車料は物価より速く上がる。荷物が減っても網の固定費は減らず、貨物の営業利益率は2.5%に下がる。トラックと拠点の更新は新しい値段で重くのしかかり、借入の利払いも増える。
純利益は10億円前後にとどまる。配当は今の水準を守るのが精一杯だ。土地を売って一時の利益を出しても、現金は借入の返済に回る。
大手が中小の運送会社を傘下に入れる再編が進む中で、オカケンは受け手にも買われる側にもなれず、地域の網を細りながら守る形になる。
- 貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫):数量 175(取扱重量(万トン・推定))× 価格 2.50(1トンあたり収入(万円・名目))→ 売上 438 億円・営業利益 11 億円。重量は約0.88倍、運賃は名目1.36倍
- 石油製品販売:数量 4.5(外部向け燃料の販売量(万kL・推定))× 価格 2.00(1万kLあたり売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。販売量は細る
- その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣):数量 8.9(実質の取扱規模(億円・今の値段))× 価格 1.30(価格の指数(今=1.0))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。縮む
倍率:ROE 2.9%(純利益10.3億円÷自己資本360億円)。RONIC=8.5%+1/2×(2.9−8.5)=5.7%、g 4.0%から正当化PER=(1−4.0÷5.7)÷4.5%=6.6倍。荷物が減り費用に押される筋書きなので、その8.5割の5.6倍に置いた。PBRは0.16倍で中立より低い。売れる資産の床(戻り方0.5で約35億円)はこの時価総額を下回るので、稼ぐ力で置いた。
確率:中国地方の荷物の減りが速く、費用の上昇が運賃を上回る筋書き。規模の不利が表に出る形で、2割強を置いた。
悲観 11% 網の価値が崩れ、資産を切り売りする 利益 2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 1,727 円35 億円
不況の谷で製造業の出荷が2割落ち、荷物の量は戻らない。大手は幹線の効率を武器に値下げで荷主を取り、オカケンの運賃は物価に追いつかない。網の固定費は減らせず、貨物の営業利益はほぼゼロになる。
会社は拠点を集約して土地を売り、借入を返す。運転手の確保もままならず、一部の路線は同業に任せる。配当は減り、株主には細い配当しか残らない。
事業は続くが、稼ぐ力はほぼ失われる。価値は、売れる土地と保有株から借入と退職給付を引いた残りまで下がる。その現金も株主に戻るとは限らない。
運転手の不足が極まり、運べない荷物を大手に回す場面も増える。網の密度という唯一の強みが薄れ、荷主にとって代わりのきく会社になる。
- 貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫):数量 150(取扱重量(万トン・推定))× 価格 2.30(1トンあたり収入(万円・名目))→ 売上 345 億円・営業利益 2 億円。重量は0.75倍、運賃は名目1.25倍
- 石油製品販売:数量 4.0(外部向け燃料の販売量(万kL・推定))× 価格 1.90(1万kLあたり売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。細る
- その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣):数量 7.5(実質の取扱規模(億円・今の値段))× 価格 1.25(価格の指数(今=1.0))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。縮む
倍率:稼ぐ力(純利益2.0億円÷k 7.5%=約24億円)より売れる資産の床(35億円)が大きいので、床を時価総額に置いた。今の自己資本268.5億円に対するPBRは0.13倍。EV(時価総額35億円+純有利子負債約30億円)÷営業利益2.7億円は約24倍だが、谷の利益で測った値で、価値は資産の床で決めた。
確率:リーマン級の荷物の落ち込みと、大手の値下げ攻勢が重なる筋書き。過去にも営業利益率がほぼゼロの年があり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貨物運送関連(路線便・貸切・倉庫)
中国地方を地盤に、企業間の小口荷物を集めて仕分け、幹線で運んで配る路線便が中心。貸切輸送・倉庫・3PLを含む。
| 数量取扱重量(万トン・推定) | 価格1トンあたり収入(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 1.85 | 369 | 11 |
| 10 年後 中立 | 190 | 2.58 | 491 | 18 |
取り方:取扱重量の開示が見つからないため、特積みの1トンあたり収入を同業の推定と同水準の約1.85万円とし、セグメントの営業収益368.96億円から約200万トンと推定した。運賃は2024年問題で物価より速く上がる局面にあり、数量は中国地方の生産と人口で細る。
石油製品販売
給油所と燃料の販売。外部への売上は小さく、グループ内の車両への供給が中心。
| 数量外部向け燃料の販売量(万kL・推定) | 価格1万kLあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.7 | 1.50 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 2.01 | 10 | 0 |
取り方:外部向け営業収益10.11億円を、1リットル約150円で割って約6.7万kLと推定した。販売量は前期比で減っており、電動化と人口減で細る。
その他(自動車用品・フォークリフト販売・人材派遣)
自動車用品とフォークリフトの販売、一般労働者派遣など。物量の開示がない小口の事業。
| 数量実質の取扱規模(億円・今の値段) | 価格価格の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.9 | 1.00 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.9 | 1.34 | 13 | 2 |
取り方:物量の開示が無いため、外部向け営業収益9.91億円を今の値段の取扱規模とし、物価の分は価格の指数に入れた。全社の3%弱と小さい。
リスクと懸念
費用の上昇が運賃を上回る
運転手の賃金、軽油、トラックの値段、傭車料がそろって上がっている。運賃の値上げが続いても、費用の上昇に追いつかなければ利益率は下がる。会社自身が次期を減益と見ているのは、その兆しだ。
中国地方の荷物の細り
地盤の中国地方は人口が減り、製造業の国内生産も増えない。企業間の小口荷物は10年で1割前後減るとみる。網の固定費は荷物が減っても下がらず、1個あたりの費用が上がる。
運転手の確保
残業の上限規制で、1人の運転手が運べる量は減った。運転手が集まらなければ、運賃を上げても荷物を運べない。路線の一部を同業に任せれば、稼ぎも同業に渡る。
資本が株主に戻らない
自己資本は約270億円あるが、配当性向は1〜2割で自社株買いもほとんどない。土地を売った現金も借入の返済と次の拠点に回る。ROEが資本コストを下回るまま利益を積み上げれば、株主の価値は増えない。
設備の更新と金利
トラックは5〜7年で入れ替わり、拠点も古くなる。新しい車両と建物の値段は上がり、償却と借入が増える。借入は約135億円あり、金利が3.5%へ上がれば利払いが増える。
今後の分かれ目
- 配当性向を3割以上に上げる、または自社株買いを始めたら
- 資本が株主に戻り始めたとみて、中立からやや楽観に確率を移す。
- 福山通運など大手との資本提携や公開買付けが出たら
- 資産の価値が表に出る形として、前提を見直す。
- 貨物の営業利益率が2期続けて4%を超えたら
- 運賃の値上げが費用を上回る構造になったとみて、やや楽観に寄せる。
- 取扱量が2期続けて3%以上減ったら
- 中国地方の荷物の細りが速いとみて、やや悲観に寄せる。
- 拠点の売却益が出ても配当が増えなかったら
- 資本の使い方が変わらないとみて、慎重な見方を保つ。
見ておくもの
- 貨物運送関連の営業利益率と運賃改定の進み
- 取扱量と共同配送の広がり
- 配当性向と自社株買いの有無
- 拠点の売却と借入の推移
- 福山通運など同業との資本関係
倍率と資本コストの決め方
セグメントを取扱重量(実質・推定)×1トンあたり運賃(名目)で積み、自己資本は今の値+純利益の合計−配当で流した。倍率はROEがkを下回るので正当化PERの式(RONICはkより低い)だけで決め、今・過去・同業のPBRやPERは使っていない。PBR0.3倍の低さは割安の根拠にしていない。悲観は稼ぐ力より大きい売れる資産の床(戻り方0.5)で置いた。拠点はほぼ自社保有で、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→13.33 倍・やや楽観 PER 7.8→13.33 倍・中立 PER 7.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.0%で8.5%。同じ領域の福山通運(8.2%)・セイノー(7.8%)より規模が小さく地域に偏る分だけ上に置いた。財務が堅いことでkを下げない。赤字続きではないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。