結論
神奈川中央交通は、神奈川県全域で路線バス「神奈中バス」を走らせる会社だ。鉄道は持たない。筆頭株主は小田急電鉄で、約 45% を握る。2026 年 3 月期の売上高は 1,268 億円、営業利益は 68 億円。バスが売上の半分近くを占め、自動車販売、不動産、流通・ホテルが続く。
筆者の結論は「今の値段は割高」だ。最大の理由は、稼ぐ力が資本コストに届かないことにある。ROE は 6% 前後で、資本コスト 9.0% を下回る。この水準ではため込んだ利益の価値は、帳簿より低くなる。
追い風はある。2026 年 4 月にバスの実施運賃が約 9% 上がった。自動運転バスや連節バスで、運転士 1 人あたりの輸送力も高まる。不動産の賃貸も新しい用地で増える。
それでも賃金と新車の費用の伸びは、運賃の改定より速い。バス事業の営業利益は前の期に 2 割減った。乗客は郊外から細り、相模原の山間部では 13 路線のうち 11 路線を廃止する方針だ。
純有利子負債は 670 億円で、時価総額の 1.4 倍に当たる。借り換えのたびに金利が上がり、10 年後には利払いが年 17 億円ほど増える。資本コストは基本の 7.5% に 1.5% を足した。人手不足と借金の重さで、同じ領域の鉄道会社より危うい。
小田急による完全子会社化の芽は残る。ただ、買収価格は当てにせず、事業の稼ぎだけで価値を測った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、神奈川中央交通は「良い事業の顔をした、手のかかる事業」だ。路線の免許は強いが、利益の大半は運転士と車両に食われる。
まず、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は薄い。稼ぐ利益の多くは、バスの新車と営業所の建て替えに回る。投資をしても利益は増えず、現状を保つだけだ。これは資本を食う事業の特徴で、筆者がもっとも嫌う形に近い。
次に、堀は路線の独占と土地にあるが、運賃は認可なので、費用の上昇を自由に転嫁できない。人手不足が続くかぎり、賃金は物価より速く上がる。
一方、安全域がまったくないわけではない。バス以外の 3 事業は、合わせるとバスより多く稼ぐ。不動産の利益率は 23% あり、自動車販売の営業利益は 2 割増えた。
それでも、ROE が資本コストに届かない会社に高い値段は払えない。筆者は、事業が続くことは疑わないが、10 年後に今の値段を上回るとは見ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 4 つある。
いちばん大きいのは旅客自動車、つまりバスだ。横浜、川崎、相模原、湘南、県央まで路線を張り、乗合バスだけで年 2 億 490 万人を運ぶ。2026 年 3 月期の売上は 579 億円、営業利益は 22 億円で、利益率は 4% ほどにとどまる。車両の更新で減価償却が膨らみ、運転士の待遇も改善したため、利益は前の期より 2 割減った。
次に大きいのは自動車販売で、売上は 449 億円、営業利益は 17 億円。神奈川三菱ふそう自動車販売と中央自動車がトラック・バスを、神奈中相模ヤナセが輸入車を扱う。トラックの更新が追い風で、利益は 2 割増えた。
不動産は売上 68 億円、営業利益は 16 億円と小粒だが、利益率が 23% と高い。藤沢橋の用地が 2024 年 7 月に、小田原栄町の用地が 2026 年 2 月に賃貸を始めた。戸建の分譲も手がける。
残りは流通・飲食・ホテルなどで、売上 301 億円、営業利益 16 億円。神奈中商事がバスの運賃箱などの部品を売る。
バスが集客と土地を持ち、他の 3 つがその周りで稼ぐ。ただ、利益の過半はバス以外が出している。事業の「顔」と「稼ぎ」が一致しない会社だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、路線の免許と営業所の網にある。同じ道に別のバス会社が入ってくることはまずない。ただ、運賃は国の認可で、会社が自由に決められない。堀はあっても、値決めの力は弱い。
資本効率は低い。ROE は 2025 年 3 月期の 9% から、2026 年 3 月期は 6% 近くまで下がった。会社の目標も 2030 年度に 7% 水準で、資本コスト 9.0% には届かない。
財務は重い。有利子負債は EBITDA(利払い・税・償却の前の稼ぎ)の 5.5 倍で、計画では 6 倍台に上がる。自己資本比率は 34%、営業利益は支払利息の 8 倍。赤字になった 2021 年 3 月期の傷は、まだ癒えていない。
経営の腕は悪くない。営業利益は 2 年続けて中期計画を上回った。車両を約 550 両入れ替え、連節バスや自動運転にも手を打つ。
弱みは、投資の多くがバスの維持に消えることだ。新車を買っても、乗客が増えるわけではない。小田急が約 45% を持つ親子上場で、少数株主の取り分は小田急の意向に左右される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
路線バスは、全国で運転士が足りない。神奈中も運転士の高齢化と不足を課題に挙げ、シニアの再雇用、教官制度、特定技能の外国人採用で埋めようとしている。減便や路線の廃止も出ている。相模原市緑区の旧津久井・相模湖・藤野の地域では、13 路線のうち 11 路線を 2027 年 3 月までに廃止する方針と報じられた。
乗客は戻りきっていない。神奈中の乗合は 1991 年に 3 億人を超えたが、いま 2 億人ほどだ。リモートワークで定期の利用が減り、コロナ後も戻らなかった。
運賃は上がる方向だ。国は費用をもとに上限を認可し、各社が人件費の上昇を理由に改定している。神奈中も 2026 年 4 月に、横浜市内の均一区間と対キロ区間の初乗りを、どちらも 9% ほど引き上げた。国に認めてもらった上限の平均改定率は 16.2% で、実際の引き上げ幅はその半分強にとどめた。
自動運転は将来の切り札だ。神奈中は平塚駅南口の路線で実証を進め、2027 年度のレベル 4(運転士なし)の認可をめざす。ただ、実用化の時期は読みにくい。
自動車販売はトラックの更新需要が続く。不動産は建築費の高騰で、開発計画の見直しが出ている。
資本政策と M&A
還元は連結配当性向 30%、純資産配当率 2% を目安とする。年間の配当は 2024 年度から据え置いている。実績の配当性向は 30% 前後で、方針どおりだ。自己株は約 33 万株ある。
投資は 2024〜2026 年度の 3 年で、成長 160 億円、環境 30 億円、維持・更新 270 億円。EBITDA の 400 億円を原資にするが、設備投資は利益の伸びより速い。有利子負債は 2026 年度の予想で約 840 億円に膨らむ。
M&A は不動産の取得が柱に掲げられているが、建築費の高騰で計画を見直している。大きな買収で価値を壊す心配は小さい。
筆頭株主の小田急電鉄が約 45% を持つ。横浜銀行が約 5%、横浜ゴムが約 2% で続く。小田急が完全子会社にする可能性は、10 年では無視できない。ただ、その価格は読めない。
株主優待として乗車券を出している(100 株で年 10 枚)。費用は年 1 億円に届かないと見られ、還元には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運転士不足は、今がいちばん苦しい時期だ。待遇の改善で採用が戻れば、減便の悪循環は止まる。平塚駅南口の自動運転バスは 2027 年度のレベル 4 認可をめざしており、軌道に乗れば 1 人の運転士が見る路線の範囲が広がる。連節バスも同じ効果がある。
運賃は物価と賃金に追いつく改定を続けられる。2026 年 4 月の改定は上限の平均 16.2% のうち約 9% しか使っておらず、次の改定の余地が残っている。人件費が上がるたびに値上げが認められる以上、利益率は 5% 台に戻る。
横浜や湘南の沿線は、人口が地方ほど減らない。コロナ後の観光や通勤は、戻り続けている。
バス以外にも伸びしろがある。不動産は藤沢橋と小田原栄町で賃貸が始まったばかりで、賃料も物価で上がる。トラックの更新需要で、自動車販売は利益を伸ばしている。
さらに小田急が少数株主を買い取れば、現在の値段に上乗せの買収価格が付く。親会社が 45% を持つ会社の再編は、10 年のうちに十分ありうる。
慎重な見方
バス事業は、賃金と新車の費用が運賃を追い越し続ける。運転士の賃上げは物価より速く、2026 年 3 月期にバスの営業利益が 2 割減ったのはその表れだ。運賃を上げても利益は戻りきっていない。
乗客は構造的に細る。1991 年に 3 億人だった乗合は 2 億人まで減り、相模原の山間部では 13 路線のうち 11 路線の廃止が決まった。減便は乗客離れを呼び、さらに赤字が出る。自動運転は実証の段階で、実用化の時期は読めない。
借金も重い。純有利子負債は 670 億円、有利子負債は EBITDA の 5.5 倍で、計画では 6 倍台に上がる。借り換えのたびに金利が上がり、10 年後には利払いが年 17 億円ほど増える。
不動産と自動車販売は小粒で、バスの傾きを支えきれない。自動車販売の輸入車は台数が落ち、2026 年 4〜6 月期は減収減益だった。
ROE は 6% 前後で、資本コスト 9.0% に届かない。この会社は、株主に価値を足せていない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。バスの運賃は上がるが、運転士の賃金と車両の費用が先に増える構造は変わらない。強気の根拠である自動運転と小田急による買収は、どちらも時期と価格を決められない。確率は楽観を 8%、やや楽観を 20% に抑え、やや悲観 25%、悲観 15% と悲観側に厚く置いた。バス以外の 3 事業がバスの傾きを支えるため、悲観でも事業は残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,799 円466 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 992 円122 億円)。 今の値に割り戻すと 2,249 円276 億円、今との差 −40.8%、 期待の年率 +2.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,687 円943 億円 | 1,442 円177 億円 | +140.2% | +9.2% | 730 円90 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,013 円738 億円 | 1,206 円148 億円 | +90.0% | +6.6% | 1,444 円177 億円 |
| 中立 | 32% | 4,683 円575 億円 | 1,043 円128 億円 | +50.7% | +4.2% | 1,832 円225 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,553 円191 億円 | 815 円100 億円 | −37.7% | −4.6% | 592 円73 億円 |
| 悲観 | 15% | 631 円77 億円 | 652 円80 億円 | −66.2% | −10.3% | 192 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,799 円466 億円 | 992 円122 億円 | +26.1% | +2.3% | 4,791 円588 億円 |
今の株価時価総額 3,800 円466 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:自動運転と買収で上振れ 利益 80 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 7,687 円943 億円
運転士の採用が軌道に乗り、平塚駅南口の自動運転バスが 2027 年度にレベル 4 の認可を得る。連節バスと合わせ、運転士 1 人あたりの輸送力が上がる。乗客は横浜と湘南の需要に支えられ、10 年でほぼ横ばいを保つ。運賃は物価に追いつく改定を重ね、バスの利益率は 6.5% に戻る。
不動産は藤沢橋と小田原栄町に続く用地の活用で、賃貸面積が 3 割増える。自動車販売はトラックの更新需要が続き、営業利益は 25 億円まで伸びる。
金利の上昇で利払いは増えるが、利益が厚いので借金も減らせる。小田急が少数株主を買い取る可能性もあるが、その上乗せ分は筋書きに入れていない。数量は実質、価格は名目で置いた。
- 旅客自動車(乗合バス・貸切):数量 2.0(乗合バスの年間輸送人員(億人))× 価格 413(1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む))→ 売上 845 億円・営業利益 55 億円。数量 1.00 倍・価格 1.46 倍(名目)・営業利益率 6.5%
- 不動産(賃貸・分譲):数量 234(賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定))× 価格 5.32(1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価))→ 売上 124 億円・営業利益 32 億円。数量 1.30 倍・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 26.0%
- 自動車販売(商用車・輸入車):数量 4,490(新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定))× 価格 14(1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む))→ 売上 629 億円・営業利益 25 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 4.0%
- その他(流通・飲食・ホテルなど):数量 1,580(販売・利用の件数(万件、推定))× 価格 2,760(1 件あたり収入(円))→ 売上 436 億円・営業利益 26 億円。数量 1.05 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 889 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運転士が確保でき、自動運転が実用になり、小田急の買収まで重なる場合。条件が多いので 8% に抑えた。
やや楽観 20% やや楽観:運賃が賃金に追いつく 利益 62 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 6,013 円738 億円
運転士不足は続くが、待遇改善で最悪期は脱する。連節バスの効果で減便は緩み、乗客は 3% ほど減るにとどまる。運賃は 2026 年の改定のあとも、10 年のうちに 2 回の改定が通り、1 人あたり収入は物価を上回って伸びる。バスの利益率は 5.2% に回復する。
不動産は賃貸が順調に育ち、貸付面積が 2 割増える。賃料は物価並みに上がる。自動車販売は輸入車が持ち直し、トラックの更新需要も続いて、利益率は 3.8% を保つ。流通は運賃箱などの部品販売が伸びる。
借り換えで利払いは増えるが、利益の伸びのほうが速い。純利益は 62 億円まで増え、ROE は 6% 台に上がる。それでも資本コストには届かない。数量は実質、価格は名目で置いた。
- 旅客自動車(乗合バス・貸切):数量 2.0(乗合バスの年間輸送人員(億人))× 価格 401(1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む))→ 売上 798 億円・営業利益 42 億円。数量 0.97 倍・価格 1.42 倍(名目)・営業利益率 5.2%
- 不動産(賃貸・分譲):数量 216(賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定))× 価格 5.21(1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価))→ 売上 112 億円・営業利益 27 億円。数量 1.20 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 24.0%
- 自動車販売(商用車・輸入車):数量 4,490(新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定))× 価格 14(1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む))→ 売上 615 億円・営業利益 23 億円。数量 1.00 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 3.8%
- その他(流通・飲食・ホテルなど):数量 1,535(販売・利用の件数(万件、推定))× 価格 2,720(1 件あたり収入(円))→ 売上 418 億円・営業利益 23 億円。数量 1.02 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 5.6%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃が賃金に追いつき、不動産と自動車販売が伸びる。実現の可能性は十分あるが、運転士不足の逆風が強く 2 割。
中立 32% 中立:物価並みの運賃で現状維持 利益 48 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,683 円575 億円
運賃は国の認可のもと、物価に少し遅れながら 10 年で 1.38 倍まで上がる。乗客は郊外の人口減と路線の廃止で 7% 減る。バスの利益率は 4.2% で、現在の水準をわずかに下回る。賃金の上昇が運賃を食うためだ。
不動産は新しい用地の賃貸で面積が 12% 増え、賃料は物価並みに上がる。自動車販売は台数が 3% 減り、価格は物価並みに上がる。流通・飲食・ホテルは台数が横ばいで、価格が物価で上がる。
営業利益は 91 億円まで伸びる。ただ、借り換えで利払いが 17 億円ほど増え、純利益は 48 億円にとどまる。ROE は 5% 台で、資本コストには届かない。
- 旅客自動車(乗合バス・貸切):数量 1.9(乗合バスの年間輸送人員(億人))× 価格 390(1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む))→ 売上 743 億円・営業利益 31 億円。数量 0.93 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- 不動産(賃貸・分譲):数量 202(賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定))× 価格 5.09(1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価))→ 売上 103 億円・営業利益 23 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 22.0%
- 自動車販売(商用車・輸入車):数量 4,355(新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定))× 価格 13(1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む))→ 売上 584 億円・営業利益 20 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.5%
- その他(流通・飲食・ホテルなど):数量 1,505(販売・利用の件数(万件、推定))× 価格 2,680(1 件あたり収入(円))→ 売上 403 億円・営業利益 21 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.3%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 529 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃は物価並みに上がるが、乗客は緩やかに減り、利益率は現在並み。もっとも起こりやすい筋書きで 32%。
やや悲観 25% やや悲観:賃金と利払いに削られる 利益 24 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,553 円191 億円
賃金が運賃より速く上がり、運賃の改定が遅れる。10 年で運賃は 1.30 倍にとどまり、乗客は 12% 減る。バスの利益率は 2.0% まで落ち込む。
不動産は賃貸が伸びず、建築費の高騰で新しい用地の開発が遅れる。自動車販売は輸入車が落ち込み、トラックの更新も一巡して、台数が 8% 減る。流通・飲食・ホテルも台数が 5% 減る。
純有利子負債は車両投資と減益で膨らみ、借り換えの金利で利払いは年 20 億円ほど増える。営業利益は 58 億円、純利益は 24 億円まで落ちる。配当は保てるが、10 年の累計では縮む。バスだけでなく全体が資本コストを下回る、冴えない会社になる。数量は実質、価格は名目で置いた。
- 旅客自動車(乗合バス・貸切):数量 1.8(乗合バスの年間輸送人員(億人))× 価格 367(1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む))→ 売上 662 億円・営業利益 13 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- 不動産(賃貸・分譲):数量 189(賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定))× 価格 4.75(1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価))→ 売上 90 億円・営業利益 17 億円。数量 1.05 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 19.0%
- 自動車販売(商用車・輸入車):数量 4,131(新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定))× 価格 13(1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む))→ 売上 529 億円・営業利益 16 億円。数量 0.92 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- その他(流通・飲食・ホテルなど):数量 1,430(販売・利用の件数(万件、推定))× 価格 2,560(1 件あたり収入(円))→ 売上 366 億円・営業利益 17 億円。数量 0.95 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 4.5%
倍率:ROE 2.9% で、稼ぐ力が資本コストを大きく割り込む。バスの利益が薄れ、利払いが増える構造的な負けとして、上限 11.1 倍の 6 割弱の 6.5 倍に置いた。PBR は 0.19 倍まで下がるが、稼ぐ力で測った価値で、売れる資産の開示は確かめられていないため床には使っていない。EV ÷ 営業利益は 12 倍。
確率:賃金が運賃を上回って伸び、バスの利益が薄れ、利払いも増える。慎重な見方が強いので 25% と厚くした。
悲観 15% 悲観:減便と減損で縮む 利益 12 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 631 円77 億円
運転士の採用が追いつかず、減便と路線の廃止が止まらない。乗客は 20% 減り、運賃は 1.20 倍にしか上がらない。自治体との路線再編は長引き、赤字路線を切りきれない。バスの利益率は 1% まで落ちる。
老朽化した車両と営業所に減損が出て、自己資本は 100 億円ほど減る。不動産は賃貸が横ばいで、自動車販売は輸入車が撤退に近づく。
借金は重く、利払いは年 16 億円に達する。営業利益は 36 億円、純利益は 12 億円。配当は半減し、小田急の支援を頼る局面もありうる。もう優良な事業ではなくなっている。
- 旅客自動車(乗合バス・貸切):数量 1.6(乗合バスの年間輸送人員(億人))× 価格 339(1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む))→ 売上 556 億円・営業利益 6 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- 不動産(賃貸・分譲):数量 180(賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定))× 価格 4.37(1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価))→ 売上 79 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍・価格 1.15 倍(名目)・営業利益率 15.0%
- 自動車販売(商用車・輸入車):数量 3,817(新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定))× 価格 12(1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む))→ 売上 458 億円・営業利益 11 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 2.5%
- その他(流通・飲食・ホテルなど):数量 1,355(販売・利用の件数(万件、推定))× 価格 2,400(1 件あたり収入(円))→ 売上 325 億円・営業利益 11 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 12 億円を k 9.0% で割った稼ぐ力は 130 億円ほどだが、バスの減損と配当の半減を織り込み、上限 11.1 倍の 6 割弱の 6.5 倍に置いた。売れる資産(営業所の用地・賃貸用地)の内訳は開示を確かめられず、床には使っていない。純有利子負債 670 億円を足した EV ÷ 営業利益は 21 倍と 20 倍を超えるが、利益の薄い年のためで、価値は稼ぐ力で見ている。
確率:減便と廃止が止まらず、バスが赤字に近づき、車両と土地で減損が出る。構造的な負けの筋書きで 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
旅客自動車(乗合バス・貸切)
神奈川県の横浜・川崎・相模原・湘南・県央を走る乗合バス(神奈中バス)が中心。貸切バスや高速バスを含む。
| 数量乗合バスの年間輸送人員(億人) | 価格1 人あたり旅客収入(円、貸切などを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 283 | 579 | 22 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 390 | 743 | 31 |
取り方:旅客自動車の売上 579 億円を、乗合の年間輸送人員 2 億 490 万人(会社概要)で割った 1 人あたり収入。貸切・高速の収入も含むので乗合の運賃そのものではない。運賃は上限を国が認可し、2026 年 4 月に実施運賃が約 9% 上がった。
不動産(賃貸・分譲)
藤沢橋・小田原栄町などの用地でのビル・商業施設の賃貸と、戸建・マンションの分譲。
| 数量賃貸・分譲の収益床面積換算(千㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり年間収入(万円、賃料と分譲を含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 3.80 | 68 | 16 |
| 10 年後 中立 | 202 | 5.09 | 103 | 23 |
取り方:不動産の売上 68.4 億円を、賃貸の貸付面積と分譲の引き渡しを床面積に換算した約 18 万㎡(開示が無く推定)で割った実効単価。藤沢橋用地(2024 年 7 月)と小田原栄町用地(2026 年 2 月)の賃貸開始が数量を押し上げる。
自動車販売(商用車・輸入車)
神奈川三菱ふそう自動車販売と中央自動車がトラック・バスを、神奈中相模ヤナセが輸入車を売り、整備も手がける。
| 数量新車・中古車の販売と整備を台数に換算した取扱台数(台、推定) | 価格1 台あたり収入(百万円、整備・部品を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,490 | 10 | 449 | 17 |
| 10 年後 中立 | 4,355 | 13 | 584 | 20 |
取り方:自動車販売の売上 449 億円を、トラック・バスと輸入車の販売台数に整備の入庫を台数に換算して足した約 4,500 台(開示が無く推定)で割った 1 台あたり収入。車両価格は物価並みに上がる。
その他(流通・飲食・ホテルなど)
神奈中商事のバス部品などの販売、飲食、ホテルなど。セグメントとして独立していない事業の集まり。
| 数量販売・利用の件数(万件、推定) | 価格1 件あたり収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,505 | 2,000 | 301 | 16 |
| 10 年後 中立 | 1,505 | 2,680 | 403 | 21 |
取り方:その他の売上 301 億円を、部品の納入・燃料の給油・飲食・宿泊などの取引件数の合計約 1,500 万件(開示が無く推定)で割った 1 件あたり収入。バス運賃箱などの部品販売が伸びている。
リスクと懸念
運転士不足の長期化
運転士が確保できなければ、減便と路線の廃止が進み、乗客離れから収入が細る悪循環に入る。待遇改善の費用は固定費として積み上がり、運賃の改定でも賄えない恐れがある。
賃金と車両費の上昇
賃上げは物価より速く、バスの新車や営業所の建て替えも値上がりしている。運賃は国の認可で、費用の上昇を自由に転嫁できない。2026 年 3 月期のバスの営業利益は 2 割減った。
借金と金利の上昇
有利子負債は EBITDA の 5.5 倍で、計画では 6 倍台に上がる。借り換えのたびに金利が上がり、10 年で利払いは年 17 億円ほど増える。利益が薄い年には自己資本も傷む。
乗客の構造的な減少
乗合は 1991 年の 3 億人から 2 億人まで減った。リモートワークで定期は戻りにくく、郊外や山間部の路線は廃止の対象になる。相模原市緑区では 13 路線のうち 11 路線の廃止方針が報じられた。
自動運転の遅れ
平塚駅南口のレベル 4 は 2027 年度の認可がめざされているが、実用化が遅れれば省人化の効果は先送りになる。事故や規制の変更で止まる恐れもある。
小田急との関係
小田急電鉄が約 45% を持つ親子上場で、経営の自由度や少数株主の取り分は親会社の意向に左右される。完全子会社化があっても、価格は読めない。
自動車販売と不動産の振れ
輸入車は台数が落ちており、2026 年 4〜6 月期は減収減益だった。トラックの更新需要が一巡すれば、利益の柱の 1 つが細る。不動産は建築費の高騰で開発が遅れる。
今後の分かれ目
- 運転士の採用が増え、減便が止まったら
- バスの利益率の前提を上方修正し、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 平塚駅南口のレベル 4 が 2027 年度に認可されたら
- 運転士 1 人あたりの輸送力が上がる見通しが立ち、楽観の確率を引き上げる。
- 次の運賃改定で上限いっぱいの引き上げが通ったら
- 賃金の上昇を転嫁できる証拠として、中立の利益率を引き上げる。
- 有利子負債が EBITDA の 7 倍を超えたら
- 財務の傷みが増したと見て、悲観側に確率を寄せる。
- 小田急が少数株主の買い取りを発表したら
- 買収価格が事業の価値を上回るかを確かめ、上回る場合だけ価値に足す。
- 相模原以外でも路線の廃止や大幅な減便が広がったら
- 乗客の減少が構造的に加速していると見て、乗客の前提を下げる。
見ておくもの
- バスの営業利益と利益率(待遇改善と運賃改定の綱引き)
- 運転士の人数と採用・退職の動き
- 有利子負債 ÷ EBITDA と支払利息
- 平塚駅南口の自動運転バスの認可と実用化の時期
- 小田急電鉄の持株比率と再編の発表
倍率と資本コストの決め方
数量と価格から利益を積み、倍率は式で置いた。今の PBR 0.74 倍や PER には寄せていない。ROE が k 9.0% を下回る会社なので、中立の PER は上限 1÷k = 11.1 倍の 7.5 割に置き、やや楽観 8.4 割、楽観 9 割強とした。やや悲観・悲観は上限の 6 割弱とし、床の PBR を使っていない。k は基本 7.5% に quality 1.5%(循環 0.25・値決め力 0・借金 0.75・寿命 0.5)を足した。確率は quality と同じ理由で上げ下げしていない。数字の形は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.2→11.11 倍・やや楽観 PER 9.3→11.11 倍・中立 PER 8.3→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。同じ領域の鉄道会社(+0〜1.0%)より高いのは、鉄道のように土地と不動産で支えられておらず、人手不足と借金の重さが利益に直結するため。小田急との関係や運転士不足の深さは k に足さず、筋書きと確率で表した。