結論
ゼロは、新車を工場から販売店へ運ぶキャリアカー輸送の大手で、日産自動車の陸送部門が源流の会社だ。いまは中古車オークションの構内作業、ドライバーの派遣、海外への車両輸送にも手を広げている。
筆者の結論は、今の値段には安全域がある、というものだ。時価総額は約530億円で、そのうち約100億円は純現金。残る事業の値段は、利益の6倍前後にとどまる。
その安さには理由がある。収益は日本の新車の生産・販売に張りつき、顧客は数社の自動車メーカーに偏る。日産は売上の1割弱を占め、新車の元請け部分は直近で2割ほど減った。人口が減る日本で、新車の台数が10年後に今より増える可能性は低い。
それでも筆者は、この会社が事業として潰れる姿を描きにくい。新車は誰かが運ばなければ店に届かず、ドライバー不足の時代に全国約80社の協力会社と車両を束ねられる会社は少ない。運賃は物価並みに上がり、台数の減りを埋める。
10年後の中立の筋書きでは、純利益は今の72億円から87億円ほどへ増え、ROEは10%前後に落ち着く。大株主が約47%と約20%を握る会社で、少数株主の取り分が小さいことが最大の弱点だ。それを悲観側の確率に入れても、価値は今の値段を上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は3つある。まず、10年後もこの事業は残るか。新車の台数は細るが、運ぶ仕事は消えない。ドライバーと車両の網を持つことが堀になる。ただし堀は深くなく、顧客のメーカーが運賃を決める。
次に、株主に残る利益はいくらか。設備投資は車両の入れ替えが中心で軽く、利益の多くが現金で残る。純利益72億円に対し、配当は約3分の1。残りは会社に積まれ、海外の買収に使われる。この使い方が上手かどうかは、まだ判断できない。
最後に、払う値段に安全域があるか。時価総額のうち約100億円は純現金で、事業の値段は利益の6倍前後にとどまる。新車の台数が減り、運賃の上昇が止まる慎重な筋書きでも、現金と稼ぐ力が値段を支える。
筆者が気にするのは、少数株主の立場の弱さだ。大株主2社で約7割を持つ会社では、利益が増えても配当や買収価格が少数株主に回るとは限らない。だから確率は慎重側に寄せ、割安の幅を広げすぎない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。新車がメーカーの工場や港で出荷されるたびに、キャリアカーがそれを販売店や納車センターへ運び、運賃が入る。ゼロはその国内の最大手級で、全国に約80社のパートナー会社を持つ。
売上の約5割は国内の自動車関連だ。新車だけでなく、中古車、バイク、特殊車両、中古車オークションの構内での移動や整理も請け負う。2026年1月からは大手オークション会場のUSS東京とUSS横浜の構内業務も始めた。
約2割はヒューマンリソース事業で、ドライバーや軽作業員を派遣する。もう約5%は港湾荷役、運輸・倉庫、不動産といった一般貨物だ。人を集める力そのものが商品になっている。
残る約4分の1が海外だ。マレーシア向けの中古車輸出と、中国での新車輸送が柱になる。2026年3月には、商船三井からタイのAuto Carrier (Thailand)の株式74%を取得すると発表した。タイでも新車の輸送と納車前の点検を取り込む。
祖業は1961年の日産陸送で、2001年に経営陣による買収で独立した。いまの大株主は海外の法人のゼニス ロジスティックス(約47%)と、物流のSBSホールディングス(約20%)だ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、運ぶ力そのものにある。キャリアカーは特殊な車両で、動かせるドライバーを集めるのも簡単ではない。そこに全国の協力会社の網が重なり、メーカーの出荷日程に合わせて車を動かせる。ドライバー不足が深まるほど、この網の価値は上がる。
弱みも明らかだ。顧客はメーカーで、運賃の交渉力はメーカー側にある。日産は直近の売上の8.7%を占め、新車の元請け部分は上期に前年から約2割減った。メーカーが生産や物流を絞れば、その波をそのまま受ける。
収益力は近年で最も高い。営業利益率は2025年6月期と2026年6月期に6.9%と、過去10年の最高水準に並んだ。ただし2022年と2023年は3%台後半だった。運賃の引き上げと人件費の上昇の綱引きが続く。
財務は強い。純現金は約106億円で、自己資本比率は62%だ。借金が経営を縛ることはない。ROEは15%と高いが、これは今の利益率が高いことと、自己資本が薄いことの結果で、10年続くとは筆者は考えない。
事故への備えも課題だ。2025年にはキャリアカーの火災が続き、同型車の入れ替えで費用が出る。子会社の踏切事故も起きた。運転の安全は、顧客の信頼そのものだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の車両輸送は、新車の台数が決める。日本の新車販売は人口の減少とともに緩やかに細る方向で、10年で1割弱減っても不思議はない。電気自動車への移行は、台数よりも車の価格や作り方を変える。輸送の仕事そのものは残る。
一方で、運ぶ側の事情は変わった。2024年問題で、トラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限された。2025年度のドライバー不足は約21万人と見込まれ、有効求人倍率は2.49倍に上がった。運賃は物価より速く上がる局面で、台数の減りを単価で埋める構図ができている。
同業との差は、規模と網の広さだ。トラック運送の大手は宅配のヤマト運輸・佐川急便などだが、キャリアカーという特殊車両で自動車メーカーの出荷を担う会社は限られ、宅配大手とは競争の形が違う。ただし、自動車メーカーが鉄道や船へ切り替える動きや、自動運転が進む将来は、運ぶ仕事の値段を下げうる。
業界の再編は進む。SBSホールディングスによるブリヂストン物流子会社の取得や、AZ-COM丸和ホールディングスの同意なき公開買付けなど、買う側と買われる側がはっきりしてきた。ゼロの大株主の一つはそのSBSで、約20%を持つ。
海外は成長の場だが、利益は薄い。中古車の輸出は為替と相手国の規制で振れ、中国の新車輸送は現地メーカーの内製化に弱い。タイの買収は、新車の輸送を現地に広げる試みとして見る。
資本政策と M&A
株主への還元は、いまは控えめだ。2026年6月期の配当性向は33%で、純現金が時価総額の2割ある会社としては厚くない。会社は還元方針の見直しを終えたと説明するが、自社株買いを含む中身は筆者には確かめられなかった。
資本の使い道は、周辺への買収だ。整備会社のゼロ・プラス・メンテナンスを子会社にし、中古車オークションの構内業務を受け、タイの輸送会社を買う。「タイヤがついているビジネス」を取り込む方針で、今後も買収が続く。
大株主の構図が最も重い。海外の法人が約47%、SBSホールディングスが約20%を握り、市場に出回る株は3割ほどだ。この構図では、少数株主は買収価格の交渉に加われない。買収される場合、価格は大株主が決める。
一方で、この構図は下値を支える面もある。物流の再編が続くなか、SBSなど買い手候補が控えるからだ。公開買付けの確率は、kabufu の推計で10年に約25%だ。ただし筆者は、それを価値の根拠に使わない。
点検済み(見落とし点検 2026-10-19):起点の純利益 72 億円は 2026/06 の実績で特別益は見当たらない。運賃は物価並み・台数は実質で二重がけなし。中立の営業利益率は 5.8%(今は 6.9%)と低めに置いてある。純現金 106 億円は運転資金と見て足していない。
還元の見直し(P4 2026-10-19):開示は 2026/06 期の配当性向 33%(配当 140 円)で、自社株買いや見直し後の方針は検索でも見つからなかった。中立の還元を純利益の 33%(10 年の合計)に置き直した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新車を運ぶ仕事は、ドライバーが足りないほど価値が上がる。2024年問題でトラックの運賃は物価より速く上がっており、全国約80社の協力会社の網を持つゼロは、その値上げを荷主に通しやすい。営業利益率は6.9%と過去最高水準で、中計の目標である6.5%を上回っている。
財務は純現金で、自己資本比率は62%と厚い。この現金は、ゼロ・プラス・メンテナンスやタイのAuto Carrier (Thailand)のような買収に回せる。「タイヤがついているビジネス」を取り込む方針が当たれば、新車の台数が細っても利益は伸びる。
海外も伸びしろがある。タイで新車の輸送と納車前の点検を取り込めば、日本で磨いた運び方を持ち込める。中古車の輸出と合わせ、海外の取扱いは10年で倍近くになりうる。
さらに、大株主のSBSホールディングスは物流の再編の主役の一人だ。公開買付けや経営統合が起きれば、割安な値段は一度に消える。時価総額の2割が現金で、事業は利益の6倍前後という今の値段は、そうした再評価の余地を大きく残している。
慎重な見方
新車の台数は、日本では人口とともに細る。ゼロの売上の約5割は国内の自動車関連で、新車の元請け部分は上期だけで前年から約2割減った。日産は売上の8.7%を占め、同社の生産が縮めば仕事が減る。メーカーが運賃の交渉力を持つ以上、値上げにも限界がある。
利益率の高さは持続しない。2022年と2023年は営業利益率が3%台後半だった。いまの6.9%は、運賃の値上げと人件費の上昇の綱引きで、一時的にドライバーの供給不足が値上げを許した結果にすぎない。給与の引き上げは2桁億円規模の費用増になり、システム投資の償却も重なる。
海外は薄利だ。中古車の輸出は為替と相手国の規制で振れ、中国の新車輸送は現地メーカーの内製化に弱い。タイの買収も、のれんが大きければ欧州で苦戦したNIPPON EXPRESSホールディングスと同じ轍を踏む。
最大の問題は、大株主2社で約7割を握る構図だ。少数株主は買収価格にも配当にも発言権が弱く、現金が積まれても戻ってくるとは限らない。キャリアカーの火災や踏切事故の安全リスクも、一度の大事故で顧客の信頼を損ねかねない。
どちらに重みを置いたか
新車の台数が細り、大株主が支配する弱みは大きい。しかし、運賃が物価並みに上がるうえ、純現金と今の利益水準が値段を支えるため、悲観の筋書きでも事業の値段が現金を大きく割り込む姿は考えにくい。強気の言い分に、慎重な見方の重さを加えた結果、確率は中立を最も厚くし、やや悲観を2割台半ばに置いた。悲観は新車の元請けが構造的に失われる筋書きで11%とした。結果は約3割の割安だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 7,849 円1,319 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,476 円248 億円)。 今の値に割り戻すと 4,737 円796 億円、今との差 +52.5%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,090 円2,368 億円 | 1,982 円333 億円 | +417.6% | +17.9% | 1,286 円216 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,315 円1,901 億円 | 1,750 円294 億円 | +320.8% | +15.5% | 2,874 円483 億円 |
| 中立 | 34% | 9,171 円1,541 億円 | 1,565 円263 億円 | +245.8% | +13.2% | 3,650 円613 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,854 円648 億円 | 1,285 円216 億円 | +65.5% | +5.2% | 1,285 円216 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,368 円230 億円 | 714 円120 億円 | −32.9% | −3.9% | 229 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,849 円1,319 億円 | 1,476 円248 億円 | +200.3% | +11.6% | 9,324 円1,567 億円 |
今の株価時価総額 3,105 円522 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 運賃の高止まりと買収で海外も伸びる 利益 130 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 14,090 円2,368 億円
ドライバー不足が続き、運賃は物価を大きく上回って上がる。新車の台数は横ばいで踏みとどまり、ゼロはメーカーの物流の窓口として協力会社の網を広げる。タイの Auto Carrier (Thailand) を足場に、東南アジアの新車輸送と納車前の点検が育ち、中古車の輸出と合わせ海外の取扱いは倍近くになる。ヒューマンリソースは人手不足を背景に稼働が伸び、営業利益率も上がる。会社は買収で周辺の「タイヤがついているビジネス」を取り込み、株主還元も厚くする。10 年の ROE は 14% 台に乗る。
(名目の前提)運賃・派遣料は物価と人手不足で上がるが、台数・人員は実質で置いた。
(自己資本の流れ)今の自己資本に 10 年の純利益の合計を足し、還元を引いて流した。
- 国内自動車関連(新車・中古車・構内):数量 200(輸送台数(万台、推定))× 価格 5.51(1 台あたり収入(万円))→ 売上 1,102 億円・営業利益 116 億円。台数横ばい・運賃 1.45 倍
- 人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等):数量 46.0(稼働人員(百人、推定))× 価格 12(1 人あたり年間収入(百万円))→ 売上 570 億円・営業利益 26 億円。人員 1.15 倍・単価 1.42 倍
- 海外(中古車輸出・新車輸送):数量 54.0(海外の取扱台数(万台、推定))× 価格 18(1 台あたり収入(万円))→ 売上 958 億円・営業利益 62 億円。取扱 1.8 倍(タイ等)・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17 倍、時価総額 2,210 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新車の台数が横ばいで踏みとどまり、運賃が物価を上回って上がり、海外の買収も当たる、3 つがそろう必要がある。揃えば強いが、同時に起きる確率は高くない。
やや楽観 22% 運賃は物価並みに上がり、海外が緩やかに伸びる 利益 106 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 11,315 円1,901 億円
国内の新車は台数が 4% ほど細るが、運賃は物価を少し上回って上がり、売上は伸びる。ゼロの営業利益率は 9.8% と高いまま、協力会社の網が価格の交渉力を支える。海外はタイの取り込みが進み、取扱いが 5 割増える。ヒューマンリソースは派遣単価の上昇で収益が改善する。ROE は 12% 近くまで上がるが、会社の積み上げた利益の使い道は買収と還元に分かれ、突き抜けるほどではない。
(名目の前提)運賃・派遣料は物価と人手不足で上がるが、台数・人員は実質で置いた。
(自己資本の流れ)今の自己資本に 10 年の純利益の合計を足し、還元を引いて流した。
- 国内自動車関連(新車・中古車・構内):数量 192(輸送台数(万台、推定))× 価格 5.32(1 台あたり収入(万円))→ 売上 1,021 億円・営業利益 100 億円。台数 0.96 倍・運賃 1.40 倍
- 人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等):数量 43.2(稼働人員(百人、推定))× 価格 12(1 人あたり年間収入(百万円))→ 売上 528 億円・営業利益 21 億円。人員 1.08 倍・単価 1.40 倍
- 海外(中古車輸出・新車輸送):数量 46.5(海外の取扱台数(万台、推定))× 価格 17(1 台あたり収入(万円))→ 売上 812 億円・営業利益 47 億円。取扱 1.55 倍・単価 1.32 倍
倍率:事業の純利益 106 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.39 倍、時価総額 1,737 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新車の台数は細るが運賃の上昇で埋め、海外が広がる、業界の見通しの上位に近い筋書き。ここ数年の実績に近く、無理がない。
中立 34% 新車は細るが運賃が埋め、利益は緩やかに伸びる 利益 87 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 9,171 円1,541 億円
日本の新車は台数が 8% ほど減る。一方、ドライバー不足は続き、運賃は 10 年で 4 割近く上がる。ゼロの営業利益率は、人件費の上昇と給与の改定に押されて今の 10% から 9% へ下がるが、売上は伸びる。海外は、タイを足場に取扱いが 3 割半増え、利益率は 5% 前後。ヒューマンリソースは派遣単価の上昇で売上が増えるが、利益率は 3% 台のまま。全体の営業利益は今の 103 億円から 125 億円ほどになり、純利益は 87 億円。ROE は 10% 前後に落ち着く。
(名目の前提)運賃・派遣料は物価と人手不足で上がるが、台数・人員は実質で置いた。
(自己資本の流れ)今の自己資本に 10 年の純利益の合計を足し、還元を引いて流した。
- 国内自動車関連(新車・中古車・構内):数量 184(輸送台数(万台、推定))× 価格 5.24(1 台あたり収入(万円))→ 売上 965 億円・営業利益 87 億円。台数 0.92 倍(人口減)・運賃 1.38 倍・利益率 9%
- 人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等):数量 40.0(稼働人員(百人、推定))× 価格 12(1 人あたり年間収入(百万円))→ 売上 482 億円・営業利益 17 億円。人員横ばい・単価 1.38 倍
- 海外(中古車輸出・新車輸送):数量 40.5(海外の取扱台数(万台、推定))× 価格 17(1 台あたり収入(万円))→ 売上 697 億円・営業利益 35 億円。取扱 1.35 倍・単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.75 倍、時価総額 1,370 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の新車は人口減で 1 割弱減るが、運賃が物価並みに上がり、海外が緩やかに広がるという、無理のない中心の筋書き。利益率は今より下がる。
やや悲観 25% メーカーが運賃を抑え、台数も細る 利益 59 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 3,854 円648 億円
新車の台数は 14% 細り、日産などメーカーの元請けも減る。運賃は物価を下回り、協力会社への支払いと人件費の上昇を吸収しきれず、国内の営業利益率は 7% 台へ落ちる。ヒューマンリソースの利益は薄く、海外もタイの統合に手間取り、利益率は 4% にとどまる。給与の改定とシステム投資の償却も重い。会社が積んだ現金は買収に使われ、少数株主への還元は 5 割にとどまる。
(名目の前提)運賃・派遣料は物価と人手不足で上がるが、台数・人員は実質で置いた。
(自己資本の流れ)今の自己資本に 10 年の純利益の合計を足し、還元を引いて流した。
- 国内自動車関連(新車・中古車・構内):数量 172(輸送台数(万台、推定))× 価格 5.02(1 台あたり収入(万円))→ 売上 863 億円・営業利益 65 億円。台数 0.86 倍・運賃 1.32 倍・利益率 7.5%
- 人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等):数量 38.8(稼働人員(百人、推定))× 価格 12(1 人あたり年間収入(百万円))→ 売上 447 億円・営業利益 13 億円。人員 0.97 倍・単価 1.32 倍
- 海外(中古車輸出・新車輸送):数量 34.5(海外の取扱台数(万台、推定))× 価格 17(1 台あたり収入(万円))→ 売上 571 億円・営業利益 23 億円。取扱 1.15 倍・単価 1.25 倍
倍率:ROE 7.3% は k 7.75% を下回り、ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。台数が細り利益が減る筋書きで、事業の稼ぐ力は新車に張りつくため、その 7 割ほどの 8.5 倍に置いた(PBR は 0.6 倍台で中立より低い)。(還元を方針に合わせて再計算:還元 324→216 億円、自己資本 805→913 億円、事業の ROE 7.3%→6.5%、正当化 PER の上限 12.1→12.1 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 8.50 倍)
確率:新車の台数が 14% 細り、メーカーが運賃の上昇を抑える筋書き。人件費の上昇が運賃に追いつかない年が続く。大株主の構図も、少数株主に不利に働きうる。
悲観 11% 新車の元請けを失い、運び屋としての価値が下がる 利益 11 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,368 円230 億円
日産をはじめ、メーカーの国内生産が縮み、新車の台数は 3 割減る。メーカーは物流を鉄道や船、自動運転の実験へ移し、キャリアカー輸送の運賃は物価にも追いつかない。ゼロの国内の営業利益率は 3% 台まで落ちる。ヒューマンリソースは赤字寸前、海外も利益が出ない。純利益は 11 億円ほどで、事業の稼ぐ力は今の 15% に満たない。時価総額は純現金と売れる資産が支える。大株主は買収価格を抑えたまま動かず、少数株主への配当も細る。キャリアカーの更新費用は重く、現金は車両の入れ替えと撤退費用に消える。ただし事業が消えるわけではなく、協力会社に仕事を渡して縮む形になる。
(名目の前提)運賃・派遣料は物価と人手不足で上がるが、台数・人員は実質で置いた。還元は最低限にとどまる。
- 国内自動車関連(新車・中古車・構内):数量 140(輸送台数(万台、推定))× 価格 4.37(1 台あたり収入(万円))→ 売上 612 億円・営業利益 21 億円。台数 0.70 倍・運賃 1.15 倍・利益率 3.5%
- 人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等):数量 34.0(稼働人員(百人、推定))× 価格 10(1 人あたり年間収入(百万円))→ 売上 356 億円・営業利益 5 億円。人員 0.85 倍・単価 1.20 倍
- 海外(中古車輸出・新車輸送):数量 27.0(海外の取扱台数(万台、推定))× 価格 15(1 台あたり収入(万円))→ 売上 393 億円・営業利益 4 億円。取扱 0.9 倍・単価 1.10 倍
倍率:稼ぐ力(純利益 11 億円 ÷ k)より、純現金と売れる資産の税後 230 億円(floor_assets_oku)が大きいので、それを時価総額に置いた。今の自己資本 481 億円に対する PBR は約 0.48 倍。
確率:自動車メーカーが生産を縮め、物流を内製化や鉄道・船に移す構造的な負けの筋書き。起きる確率は低いが、新車の元請けが 2 割減った直近を見ると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内自動車関連(新車・中古車・構内)
新車・中古車・バイク・特殊車両の輸送と、中古車オークションの構内作業。キャリアカーが主力。
| 数量輸送台数(万台、推定) | 価格1 台あたり収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 200 | 3.80 | 760 | 78 |
| 10 年後 中立 | 184 | 5.24 | 965 | 87 |
取り方:上期の売上 658 億円のうち国内自動車関連が約 5 割という開示から、通期の約 760 億円に置いた。輸送台数は国内の新車・中古車・オークション構内の合計を約 200 万台と推定し、割って 1 台あたり約 3.8 万円。営業利益は推定(売上の約 10%)。
人材派遣・一般貨物(ヒューマンリソース等)
ドライバーと軽作業員の派遣、港湾荷役、運輸・倉庫、不動産。
| 数量稼働人員(百人、推定) | 価格1 人あたり年間収入(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 40.0 | 8.73 | 349 | 13 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 12 | 482 | 17 |
取り方:上期の構成比(ヒューマンリソース約 18%、一般貨物約 5%)を通期に当てはめた約 349 億円。稼働人員は約 4,000 人と推定し、1 人あたり年約 870 万円(派遣料と貨物収入の混合)。営業利益は推定(売上の約 3.7%)。
海外(中古車輸出・新車輸送)
マレーシア向けの中古車輸出と、中国での新車輸送。2026 年にタイの Auto Carrier (Thailand) を取得。
| 数量海外の取扱台数(万台、推定) | 価格1 台あたり収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 30.0 | 13 | 397 | 22 |
| 10 年後 中立 | 40.5 | 17 | 697 | 35 |
取り方:上期の構成比約 26% を通期に当てはめ、全体の売上 1,506 億円との差で約 397 億円。取扱台数は約 30 万台と推定し、1 台あたり約 13 万円(中古車は車両の売値を含むため高め)。営業利益は推定(売上の約 5.5%)。
リスクと懸念
大株主による支配
ゼニス ロジスティックス(約47%)とSBSホールディングス(約20%)で約7割を握る。少数株主は買収価格にも配当にも発言権が弱く、積まれた現金が戻るとは限らない。
新車の台数の細りと日産への依存
売上の約半分が国内の自動車関連で、日産が売上の8.7%を占める。新車の元請けは上期に前年から約2割減った。メーカーが生産や物流を絞れば、仕事が減る。
人件費と給与改定の負担
給与改定は2桁億円規模の費用増と見られ、システム投資(3年で15〜20億円)の償却も重なる。運賃の引き上げが追いつかない年があれば、利益率は6.9%から落ちる。
キャリアカーの火災と事故
2025年8・9月にキャリアカーの火災があり、同型車の一斉点検と入れ替えで減損が出る。10月には子会社の踏切事故も起きた。運転の安全は、顧客の信頼に直結する。
海外の買収の失敗
タイのAuto Carrier (Thailand)は74%を取得する予定。「タイヤがついているビジネス」への買収が続くなか、買収価格が高すぎたり、統合が進まなければ、のれんの減損が出る。
自動運転・鉄道・船への切り替え
メーカーが物流を鉄道や船へ移したり、自動運転が普及すれば、キャリアカー輸送の価値が下がる。10年では実用化の速さ次第で、構造的な負けの筋書きになる。
今後の分かれ目
- 還元方針の見直しで、配当性向の引き上げや自社株買いが示されたら
- 中立・やや楽観の確率を上げる。純現金が少数株主に戻ることが確かめられ、割安の根拠が強まる。
- 日産など新車メーカーの国内生産がさらに縮んだら
- やや悲観・悲観に重みを移す。新車の元請けが構造的に失われるかを確かめる。
- 運賃の引き上げが、給与改定の費用を吸収して営業利益率 6.5% 以上を保てたら
- 中立の利益率の置き方を上方修正する。2024 年問題の値上げが定着している証拠になる。
- SBSホールディングスなど大株主が公開買付けや経営統合に動いたら
- 買収価格が価値を下回るなら、少数株主に不利な構図が現実になったとみる。価格が価値を上回るなら、確率の見直しは不要。
- タイの Auto Carrier (Thailand) で想定通りの利益が出たら
- 海外の取扱いと利益率の置き方を上方修正する。出なければ、のれんの減損を警戒する。
見ておくもの
- 四半期ごとの国内自動車関連の売上と、日産など新車メーカー向けの元請けの動き
- 営業利益率(中計の6.5%以上)と給与改定の費用
- 還元方針の中身(配当性向・自社株買い)
- タイの Auto Carrier (Thailand) の連結後の利益とのれん
- 大株主(ゼニス ロジスティックス・SBSホールディングス)の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースの正当化 PER(=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、RONIC は k 7.75% を超える ROE の 1/2 が残る値。g 4.0%)で置き、ROE が k を上回る中立〜楽観は 1÷k = 12.1 倍を下限とした。上限に対し、中立は 9 割強、やや楽観・楽観は 9 割。台数が新車に張りつき利益が振れやすいので、10 割にはしていない。やや悲観・悲観は構造的な負け(台数減と運賃の抑制)から稼ぐ力を置き、悲観は純現金と売れる資産の税後を床にした。今の株価・PER・PBR や同業の倍率は使っていない。
純現金は 106 億円だが、毎月払いの給与・協力会社への支払い・車両の入れ替え・買収資金を差し引くと、事業に要らない分は特定できないので、分けずに事業の利益に含めた(excess_cash_none_why)。IFRS のためリースはすでに BS にあり、今と同じ形で置いた。自己資本は今の 481 億円に 10 年の純利益を足し、還元を引いて流した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.75% = 8.25%。個別のリスク(日産依存・大株主による支配・安全事故)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。