結論
カンダホールディングスは、トラック輸送と国際物流を柱にする東京の物流持株会社だ。売上は524億円、営業利益は36億円。筆者の結論は「やや割安」で、いちばんの理由は、稼ぐ力と手元の現金に比べて、時価総額198億円が低いことにある。
2026年3月期の営業利益率は7.0%と、過去の最高に並んだ。トラック事業は、燃料や人件費の上昇に見合う運賃を確保して利益が7%増えた。国際物流は荷動きが鈍くても、費用の管理で利益を12%伸ばした。会社は2028年3月期に経常利益40億円、自己資本利益率8.5%を目標にする。
財務は強い。自己資本比率は58%で、現預金は借入を47億円上回る。これだけで時価総額の4分の1にあたる。ただし、この現金は戻ってくるとは限らない。原島不動産が議決権の37%を握り、配当は純利益の2割ほどで据えられてきた。筆者は現金の評価を半分に割り引いた。
10年後の中立は、営業利益が43億円前後だ。数量は横ばいで、値段は物価に連れて上がる。ドライバー不足で人件費は物価をやや上回り、利益率は今より下がるとみる。それでも自己資本利益率は事業で9%に届き、資本コスト6.75%を上回る。
上振れの芽は、買収と還元にある。会社は3年で1〜2件の買収を目標にした。大株主は安定株主の姿勢で、還元が急に増える気配はない。これを織り込んでも、10年の価値は今の時価総額を上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「堅実で、持ち主を大事にしない可能性がある会社」と見る。
オーナーとして持ちたいかと問えば、事業は悪くない。運賃は転嫁でき、利益率は7%で、自己資本利益率は9%に達した。これは資本コストを上回る。ここは評価する。ただ、稼いだ現金の行き先が決まっていない。配当は2割、残りは積み上がる。
値段を決めるのは、株主に残る利益と、その現金が戻る確率だ。10年の中立で、株主に帰属する利益は年31億円前後。倍率は資本コストの逆数を下限に置き、現金は半分にしか数えなかった。それでも10年の価値は、今の時価総額を上回る。
安全域は、純現金と事業の稼ぐ力から測る。時価総額198億円に対し、純現金は47億円、事業の純利益は25億円。純利益の6倍台で買える計算になる。悲観の筋書きでも、現金と上場株、賃貸不動産の稼ぐ力が床になる。
確信度は中くらいだ。運送の利益率が好況の高い水準にあり、国際物流の運賃は読みにくい。原島不動産の意向も見えない。わからない部分があるので、確率は慎重な側へ寄せた。
何で稼ぐ会社か
カンダホールディングスは、トラック輸送を中心に、国際物流、不動産賃貸を営む持株会社だ。子会社は24社。2026年3月期の売上は524億円で、4分の3がトラック輸送、2割が国際物流である。
トラック輸送は、荷主の貨物を運ぶだけでなく、物流センターでの保管、仕分け、流通加工までを請け負う。群馬、堺、名取、久喜、加須などに拠点を持つ。売上394億円、セグメント利益29億円で、利益の6割を稼ぐ。グループ内では、カンダコーポレーションが2026年4月に子会社2社を吸収合併して、営業力を束ねた。
国際物流は、ペガサスグローバルエクスプレスなどが担う。海外宛ての宅配や、海上・航空の貨物を取り扱う。2011年に国際宅配部門を買い取り、本格参入した。タイやインドネシアにも拠点がある。売上110億円、利益12億円で、利益率は1割と高い。荷動きの波には弱いが、費用の管理で利益を守ってきた。
不動産賃貸は小さいが、利益率が6割に達する。蓮田の物流センターなどを貸し、売上9億円で利益5億円を稼ぐ。ほかにソフトウェアの開発、車両のリース、保険の代理、清掃を営む。
人手に頼る事業だ。連結の従業員は2,828人だが、うち2,233人は臨時雇用者の年間平均である。ドライバーの確保と、運賃への転嫁が、損益を決める。売上の1割を超える荷主はなく、特定の大口には偏らない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、荷主との長い取引と、物流センターの運営力にある。保管から配送までを束ねる契約は、荷主が運送会社を替えにくい。トラック事業の営業利益率は7%台で、大手に劣らない。ここは筆者が評価する点だ。
ただ、堀は広くない。運賃は荷主との交渉で決まり、燃料や人件費の上昇を転嫁できるかは、年ごとに試される。売上は10年で5割増えたが、利益率は3%台から7%に上がったばかりで、好況の恩恵が混じる。
資本の使い方には二つの顔がある。良い面は、借入を抑えて現預金を厚くしたことだ。純現金は2022年の17億円の負債超過から、47億円の現金超過へ変わった。悪い面は、積んだ現金を使う先が決まっていないことだ。配当は純利益の2割にとどまり、上場株式141銘柄を持つ。保有額は18億円と小口で、事業との結びつきは薄い。
経営の質を示す事実もある。2025年から3年計画で自己資本利益率8.5%を掲げ、グループの組織再編を進めた。直近の自己資本利益率は8.7%と、資本コストを上回る。これは物流の中小ではまれだ。不祥事の類は検索の範囲で見当たらなかった。
弱みは、臨時雇用者への依存と、国際物流の波だ。ドライバー不足が続けば、人件費は物価を上回る。国際物流は、荷動きが細ると利益が落ちる。それでも、財務に倒産の心配はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流業界は、2024年問題を境に、売り手が強くなっている。トラックドライバーの残業が年960時間に制限され、2025年度は20万人超の人手不足が見込まれる。標準的な運賃は2024年3月に約8%上がり、荷待ちや荷役が長引けば上乗せを請求できる。荷主が運送会社を選ぶ立場から、選ばれる立場に変わりつつある。
数量は、日本の人口減と産業の動きに連れて、横ばいがやっとだ。消費は細っても、通販や物流の外注化が下支えする。トラックは供給も絞られるので、数量が伸びなくても価格は上がる。物価の3%に加え、人手不足の分だけ、運賃は名目で上がりやすい。
費用も同じ速さで上がる。ドライバーの賃金は物価を上回り、車両の価格も建築費並みに膨らむ。この環境で勝つのは、転嫁を通せる荷主を持ち、車両と人を計画的に確保する会社だ。小さな会社は協力会社への外注費がかさみ、利益が薄くなる。
競争相手は、大手のセンコーGHDやSBSHDのような3PL(荷主の物流を丸ごと受ける会社)と、地域の運送会社だ。カンダHDは中堅で、北関東などの物流センター業務に強い。再編は活発で、大手が中堅を買う動きが続く。買われる側にも、買う側にもなりうる位置にある。
国際物流は、荷動きと運賃の波が大きい。コロナ後の運賃の高騰で、利益は一時ふくらんだ。いまは落ち着いたが、中東情勢など地政学の影響を受ける。空海をつなぐ複合輸送の確立を会社は掲げており、サービスの幅で稼ぐ方向を目指す。10年では、数量の安定と、運賃を転嫁する力が勝敗を分ける。
資本政策と M&A
資本政策は、守りが厚く、還元は控えめだ。年間の配当総額は約5億円で、純利益の2割ほどを払う。安定した配当を続ける方針で、利益に連れて少しずつ増やしてきた。継続して自社株を買い戻す方針は見当たらない。
現預金108億円に対し、借入は62億円。差し引き47億円の現金が余る。設備投資は年14億円と、償却の17億円を下回り、営業キャッシュフロー43億円との差が現金として積み上がる。この現金は、買収の準備にも、還元にも使える。会社は3年間で1〜2件の買収を目標とする。過去にも、2017年、2021年、2022年に中小の運送会社などを買ってきた。
政策保有株は上場141銘柄、18億円。最大でもワークマンの4.5億円で、小口の持ち合いが多い。配当は営業外収益に入り、利益に数えている。売る方針は開示されておらず、価値を別には足さない。
いちばん大事なのは、株主構成だ。原島不動産が36.8%を持ち、安定株主として保有する。上位には法人と個人の株主が続くが、持ち分は小さい。浮動株は少なく、買収の対象にはなりにくい。逆に、少数株主が還元を要求しても、通りにくい。
減価償却は物価では増やさない。いま使っている車両や建物の償却は、取得した時の値段のまま。更新と新規の投資だけが新しい値段で足される。車両は5〜8年で入れ替わるので、10年後の償却は約21億円。物価で一律に増やした場合(約22億円)と大差ない。ただ更新の投資は車両価格の上昇で膨らみ、現金の出は増える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、人手不足の時代に追い風を受けている。トラックの運賃は2024年問題で構造的に上がり、燃料や人件費の上昇を転嫁できている。2026年3月期は、数量が低調でも利益が7%増えた。値決めの力が備わった証拠だ。
利益率は上がる余地がある。トラックのセグメント利益率は7.4%で、組織再編で営業力と効率が高まれば、8%台に届く。国際物流は、空海複合輸送を確立すれば、利益率1割台を守りながら数量を伸ばせる。
現金も武器になる。純現金47億円と年間約30億円のフリーキャッシュフローで、会社は3年に1〜2件の買収を狙う。中小の運送会社を買うと、ドライバーと荷主を同時に得られる。買収が成功すれば、利益は想定を超えて伸びる。
還元の余地も大きい。配当性向は2割と低く、現金は積み上がる一方だ。自己資本の4分の1ほどが、現金と持ち合い株で寝ている。市場が還元を求め、原島不動産も理解を示せば、配当と自社株買いが増え、評価が上がる。事業の自己資本利益率が9%なら、倍率は12倍台に乗る。
慎重な見方
運送の利益率は、好況のピークにある。過去の最悪は3%台で、今の7%は10年に一度の高さだ。ドライバー不足で人件費が物価を上回って上がれば、運賃を転嫁しきれず、利益率は5%台へ戻る。
数量は増えない。2026年3月期の貨物輸送量は低調で、増収は既存取引の拡大に頼った。人口減と荷主の自社物流の見直しで、取扱量が細れば、固定費の重いセンターの稼働率が落ちる。
国際物流は波が大きい。運賃や数量が落ちれば、利益が半分に減る。会社は一部地域の需要が不透明だと認めている。地政学の影響も読みにくい。
現金は戻ってこない。原島不動産が3分の1超を握り、配当は純利益の2割。買収に使う話は、成功の保証がない。過去の買収は小さく、利益への寄与が見えない。現金を半分に評価しても、使われないなら価値は帳簿に眠る。
政策保有株141銘柄は、事業との結びつきが薄く、資本の効率を落とす。ROEが資本コストを上回るとはいえ、上がり幅は小さい。好況の利益は続かないと見るのが、慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
運送の利益率が山にあるという慎重な見方は重い。そこで中立の利益率を今より下げ、現金の評価を半分に割り引いた。それでも自己資本利益率が資本コストを上回り、純現金が時価総額の4分の1あるので、強気の見方が数字の裏づけで勝つ。確率は中立に厚く置き、悲観は構造的な負けの1割に絞った。筆者は、利益率が山にあることを織り込んだうえで、なおやや割安と見る。現金の評価を半分に割り引いても、結論は動かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,224 円476 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 418 円90 億円)。 今の値に割り戻すと 1,459 円312 億円、今との差 +58.9%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,718 円797 億円 | 653 円140 億円 | +376.2% | +16.9% | 350 円75 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,206 円687 億円 | 513 円110 億円 | +305.2% | +15.0% | 818 円175 億円 |
| 中立 | 38% | 2,716 円582 億円 | 420 円90 億円 | +241.7% | +13.1% | 1,192 円255 億円 |
| やや悲観 | 22% | 698 円150 億円 | 327 円70 億円 | +11.6% | +1.1% | 225 円48 億円 |
| 悲観 | 10% | 350 円75 億円 | 210 円45 億円 | −39.0% | −4.8% | 56 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,224 円476 億円 | 418 円90 億円 | +187.7% | +11.1% | 2,641 円566 億円 |
今の株価時価総額 918 円197 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 運賃の転嫁が定着し、買収と還元が上振れる 利益 41 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 3,718 円797 億円
トラック事業は、2024年問題の運賃の底上げが定着し、利益率が8%台に上がる。数量は10年で3%増え、値段は物価をやや上回る。組織再編で営業力と効率が上がり、費用の伸びを抑える。
国際物流は、空海複合輸送を確立して数量が25%増える。運賃の波はあるが、利益率は1割台を保つ。
会社は3年に1〜2件の買収を成功させ、ドライバーと荷主を同時に得る。買収の効果で、営業利益は59億円まで伸びる。
還元は強まり、10年で140億円を払う。原島不動産が理解を示し、配当と自社株買いが増える。自己資本利益率は事業で10%を超える。
減価償却は物価で増やさず、今ある車両・建物は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の17億円が10年後に約22億円(物価で一律に増やすと約22億円)。営業利益は +1億円。ただ車両の更新は価格の上昇で膨らみ、年18億円規模の投資と償却の差は現金から出る。
- 貨物自動車運送:数量 103(運送取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 5.38(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 554 億円・営業利益 45 億円。数量 1.03 倍・価格 1.365 倍(名目)・営業利益率 8.2%・償却は物価で増やさず按分
- 国際物流:数量 125(取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.47(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 184 億円・営業利益 19 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 10.5%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 を100))× 価格 0.12(指数1あたり賃料(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 7 億円。賃貸面積 1.00 倍・賃料 1.34 倍(名目)・利益率 60%
- その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか):数量 120(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.15(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。事業量 1.20 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)82 億円。全体の PER 18.1 倍、時価総額 797 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の転嫁が定着し、買収と還元が重なる筋書き。大株主が安定株主の姿勢で、還元が急に増える気配は薄い。重なる必要があるので8%を置いた。
やや楽観 22% 好況の利益率が残り、数量は横ばいを保つ 利益 36 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 3,206 円687 億円
トラック事業の利益率は7%台半ばを保ち、数量は10年で1%増える。運賃は物価並みに上がり、人件費の上昇を転嫁できる。国際物流は数量が15%増え、利益率は1割。
買収は小さいものが1件ほど加わる。物流センター業務が荷主の外注化を取り込み、数量を支える。
営業利益は51億円。配当は利益に連れて増え、10年の還元は110億円。現金は戻る確率が上がり、評価が上がる。
自己資本利益率は事業で9%台。会社の目標8.5%を上回る。
減価償却は物価で増やさず、今ある車両・建物は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の17億円が10年後に約21億円(物価で一律に増やすと約22億円)。営業利益は +1億円。ただ車両の更新は価格の上昇で膨らみ、年18億円規模の投資と償却の差は現金から出る。
- 貨物自動車運送:数量 101(運送取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 5.30(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 536 億円・営業利益 41 億円。数量 1.01 倍・価格 1.345 倍(名目)・営業利益率 7.6%・償却は物価で増やさず按分
- 国際物流:数量 115(取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.47(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 169 億円・営業利益 17 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 を100))× 価格 0.12(指数1あたり賃料(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 7 億円。賃貸面積 1.00 倍・賃料 1.32 倍(名目)・利益率 59%
- その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか):数量 110(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.15(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。事業量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)94 億円。全体の PER 17.32 倍、時価総額 687 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:転嫁が続き、利益率が好況の水準に近く残る形。買収が少し加わる筋書きとして2割強を置いた。
中立 38% 数量は横ばい、利益率は好況から少し戻る 利益 31 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,716 円582 億円
トラックの数量は横ばいで、運賃は物価並みの1.34倍に上がる。ドライバー不足で人件費は物価をやや上回り、費用は1.355倍。この差で利益率は今の7.4%から6.7%へ下がる。
国際物流は数量が1割増え、利益率は9%に落ち着く。運賃の波はならして考える。不動産賃貸は賃料の改定で小さく伸び、その他事業は横ばい。
本社費用も物価で増え、営業利益は43億円。会社の来期予想38億円の延長線上で、過去最高の利益率には届かない。
還元は利益の2割台で、10年で90億円。現金は積み上がり、買収は小さいものにとどまる。自己資本は470億円前後に増える。
減価償却は物価で増やさず、今ある車両・建物は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の17億円が10年後に約21億円(物価で一律に増やすと約22億円)。営業利益は +1億円。ただ車両の更新は価格の上昇で膨らみ、年18億円規模の投資と償却の差は現金から出る。
- 貨物自動車運送:数量 100(運送取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 5.28(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 528 億円・営業利益 35 億円。数量 1.00 倍・価格 1.340 倍(名目)・営業利益率 6.7%・償却は物価で増やさず按分
- 国際物流:数量 110(取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.47(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 162 億円・営業利益 15 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(2026/03 を100))× 価格 0.12(指数1あたり賃料(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 7 億円。賃貸面積 1.00 倍・賃料 1.30 倍(名目)・利益率 57%
- その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか):数量 100(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.15(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。事業量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)105 億円。全体の PER 16.54 倍、時価総額 582 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばい、運賃は物価並み、人件費はやや上回る。好況の利益率が少し戻る筋書きが最も自然と考え、最大の確率を置いた。
やや悲観 22% 賃金の上昇が転嫁を上回り、利益が細る 利益 9 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 698 円150 億円
トラックの数量は人口減と荷主の自社物流の見直しで5%減り、運賃は物価に追いつかず1.30倍。ドライバーの賃金が物価を上回って上がり、利益率は2%に落ちる。
国際物流は数量が横ばいで、運賃が下がり利益率は6.5%。会社の利益は半分に減る。
営業利益は10億円。配当は据え置きがやっとで、10年の還元は70億円。買収は進まず、現金は使われないまま残る。
自己資本利益率は2%台まで落ち、現金は戻らないものとして低く評価される。
減価償却は物価で増やさず、今ある車両・建物は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の17億円が10年後に約21億円(物価で一律に増やすと約22億円)。営業利益は +1億円。ただ車両の更新は価格の上昇で膨らみ、年18億円規模の投資と償却の差は現金から出る。
- 貨物自動車運送:数量 95.0(運送取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 5.13(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 487 億円・営業利益 9 億円。数量 0.95 倍・価格 1.300 倍(名目)・営業利益率 1.8%・償却は物価で増やさず按分
- 国際物流:数量 100(取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.47(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 147 億円・営業利益 10 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 6.5%
- 不動産賃貸:数量 97.0(賃貸面積の指数(2026/03 を100))× 価格 0.11(指数1あたり賃料(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 6 億円。賃貸面積 0.97 倍・賃料 1.25 倍(名目)・利益率 52%
- その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか):数量 95.0(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.15(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。事業量 0.95 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 6.0%
倍率:事業のROEは3%台でkに届かない。上限は1÷kの13.3倍。利益が薄く、年ごとに振れる。利益の質が低いので、上限の7割弱の9.0倍に置いた。
確率:ドライバーの賃金上昇が転嫁を上回り、国際物流の運賃も落ちる形。小さな物流会社では十分起こるので、中立に近い確率を置いた。
悲観 10% 荷主の離反と国際物流の落ち込みで赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 350 円75 億円
荷主の自社物流化と、人口減による取扱量の減で、トラックの数量は1割減る。センターの稼働率が下がり、固定費が重くなる。運賃は物価に追いつかず1.28倍。
国際物流は地政学のリスクと運賃の下落で、数量が1割減り、利益率は3.5%まで落ちる。
営業利益は赤字に沈む。会社は拠点の統廃合と減損を進め、配当は据え置きがやっと。買収は失敗に終わる。
10年の還元は45億円。株主に残る価値は、稼ぐ力でなく、現金と上場株、賃貸不動産の稼ぐ力が床になる。
減価償却は物価で増やさず、今ある車両・建物は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の17億円が10年後に約20億円(物価で一律に増やすと約22億円)。営業利益は +2億円。ただ車両の更新は価格の上昇で膨らみ、年18億円規模の投資と償却の差は現金から出る。
- 貨物自動車運送:数量 90.0(運送取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 5.05(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 454 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.280 倍(名目)・営業利益率 -0.1%・償却は物価で増やさず按分
- 国際物流:数量 90.0(取扱量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.47(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.5%
- 不動産賃貸:数量 90.0(賃貸面積の指数(2026/03 を100))× 価格 0.11(指数1あたり賃料(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。賃貸面積 0.90 倍・賃料 1.20 倍(名目)・利益率 45%
- その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか):数量 85.0(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.15(指数1あたり収入(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。事業量 0.85 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.0%
倍率:赤字で、稼ぐ力は床を下回る。床は純現金の半分、上場株の税引き後、賃貸不動産の稼ぐ力。今の自己資本281億円に0.267倍を掛け、この床に合わせた。
確率:荷主の離反、国際物流の落ち込み、買収の失敗が重なる複合の悪化。頻度は低いが、10年ではゼロにできず1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貨物自動車運送
荷主の貨物をトラックで運び、物流センターでの保管・仕分け・流通加工までを請け負う。
| 数量運送取扱量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.94 | 394 | 29 |
| 10 年後 中立 | 100 | 5.28 | 528 | 35 |
取り方:有価証券報告書のセグメント値(収入394.34億円、利益29.00億円)。取扱量の開示がないため、指数100と単価で表した。
国際物流
海外宛ての宅配、海上・航空貨物の取り扱い。タイ・インドネシアにも拠点。
| 数量取扱量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.10 | 110 | 12 |
| 10 年後 中立 | 110 | 1.47 | 162 | 15 |
取り方:セグメント収入109.86億円、利益12.16億円。取扱量の開示はなく指数で表した。運賃の波は収入にそのまま出る。
不動産賃貸
蓮田の物流センターなどの賃貸と太陽光発電。
| 数量賃貸面積の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.09 | 9 | 5 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.12 | 12 | 7 |
取り方:セグメント収入8.92億円、利益5.39億円。面積・賃料の開示がなく指数で表した。
その他(ソフト開発・車両リース・保険代理・清掃ほか)
グループ向けを含む周辺事業の小さな集まり。
| 数量事業量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.11 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.15 | 15 | 1 |
取り方:セグメント収入10.88億円、利益1.05億円。全社費用・消去(営業利益との差−11.2億円)は調整欄で別に置く。
リスクと懸念
好況の利益率が戻る
2026年3月期の営業利益率7.0%は過去最高に並んだ。過去の最悪は3%台で、ドライバーの賃金が物価を上回って上がれば、運賃を転嫁しきれず利益率は5%台へ戻る。
ドライバー不足と人件費
2025年度は20万人超のドライバー不足が見込まれる。連結従業員2,828人のうち、臨時雇用者が年平均2,233人を占め、確保できなければ外注費がかさむ。
国際物流の運賃と地政学
国際物流は売上110億円、利益12億円。運賃や荷動きの波が大きく、会社は一部地域の需要が不透明と認めている。中東など地政学の影響を受ける。
現金が戻らない
純現金は47億円で時価総額の2割強。ただ原島不動産が37%を握り、配当は純利益の2割。買収に使う話は成功の保証がなく、帳簿の現金が株主に届く確率は読みにくい。
買収の実行
会社は3年に1〜2件の買収を狙う。過去の買収は小さく、利益への寄与が見えにくい。割高な値段で買うと、資本コストを下回る投資になりうる。
荷主の自社物流化と取扱量の減
2026年3月期の貨物輸送量は低調だった。人口減と荷主の物流の見直しで、取扱量が細れば、センターの稼働率が下がり、固定費が重くなる。
燃料費と車両価格
燃料費はこの間の原油高で上がり、車両の価格も上昇する。償却を据え置いても、更新の投資は膨らみ、現金の出が増える。
今後の分かれ目
- 営業利益率が7%を超えて定着し、2028年3月期に経常利益40億円を達成する
- 転嫁の力が本物とわかる。上振れの確率を上げる。
- 買収を1〜2件発表し、その利益が資本コストを上回る
- 現金が価値を生む形になる。現金の評価を引き上げる。
- 原島不動産が保有割合を変える、または公開買付けを発表する
- 買付価格が下限の目安になる。非公開化の可能性が出る。
- 配当性向を3割へ上げる、または自社株買いを始める
- 現金が戻る確率が上がる。評価が上がる。
- 貨物輸送量が2期続けて減る
- 数量の縮みが想定より速い。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 国際物流の利益が半分に減る
- 運賃の波が利益を傷める。国際物流の利益率の見方を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率(7.0%の維持)と2028年3月期の経常利益40億円
- 貨物輸送量と運賃の改定
- 国際物流の取扱量と利益
- 買収の発表と投資後の利益
- 配当性向(約2割)と自社株買い
- 原島不動産の保有割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEから置いた。現金の利息を除いた事業の自己資本利益率は9%前後で、資本コスト6.75%を上回る。正当化PERは約14.8倍で、ROEがkを上回るので下限は1÷kの13.3倍。人件費の上昇と好況の利益率が戻る前提から、上限の9割、下限1÷kの13.3倍に近い13.4倍に置いた。今の株価・過去の倍率・同業の倍率は使っていない。
現金は、事業に要らない分を25億円とし(純現金47億円から運転資金と車両更新の備えを差し引いた)、戻り方0.5で足した。原島不動産が3分の1を握り、配当が2割にとどまるため。10年後の中立は、積み上がった現金140億円のうち、買収や設備に使われる分を除いた額が残るとして置いた。
同領域の鴻池運輸(PER12.9倍)、山九(13.4倍)、丸全昭和運輸(12.2倍)と同じ水準で、現金の戻りにくさは現金の評価を半分にして別に反映した。
政策保有株の配当は営業外収益に入っているので、別には足さない。賃貸不動産の利益は営業利益に入れ、価値は別に足さない。悲観の床にだけ入れた。減価償却は物価で増やさず、10年後を約21億円(物価で一律に増やすと約22億円)と置いた。新リース会計基準の影響は、車両のリースが中心で小さい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。