結論
ビーイングホールディングスは、金沢を本拠に、スーパーやドラッグストアの物流を丸ごと受ける会社だ。仕入れから保管、仕分け、配送までを一括して請け負う。扱うのは食品、医薬品、日用品の生活物資に絞る。
筆者の結論は、今の値段は割安、というものだ。自己資本利益率は 17% に達するのに、株価は利益の 9 倍に届かない。借金はほぼなく、拠点は借りて使うので、資産の重さが利益を食わない。
追い風は、荷主の外注の流れと物流の人手不足だ。運べる量が細る時代に、拠点と人を確保できる会社は価格を転嫁しやすい。中期計画は売上 450 億円を掲げ、東北と中四国へ広げる。
逆風は顧客の偏りだ。クスリのアオキだけで売上の 36% を占め、三菱食品と合わせると 47% になる。2026 年の中間期は増収でも営業利益が 16% 減り、新拠点の立ち上げコストが重い。
10 年で見る中立は、売上が 570 億円に届き、純利益が 23 億円前後になる姿だ。株主の取り分が積み上がる一方、顧客の動き次第で下振れも深い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く、軽く、回る」事業に見える。
拠点は借り、設備は少なく、荷主ごとに受託料が入る。借金はほぼなく、純資産の 17% を毎年稼ぐ。こうした資本の軽い事業は、利益のほとんどを株主に残せる。
心配な点は二つある。顧客の偏りと、成長を続ける投資だ。最大顧客が料金を引き下げたり、自社に物流を戻したりすれば、利益は大きく落ちる。新拠点の立ち上げ費用は利益の重しになる。
筆者は、今の値段は 10 年の中立の価値を下回ると見る。ただし割安の幅は、顧客の偏りの割引を引いたうえでの話だ。
払う値段に安全域はある。純資産に近い悲観の床でも、時価総額の 4 割を超える水準にある。確実に勝てるとは言えないが、下値は固い。
経営が成長を急ぐあまり、立ち上げ費用で利益を削る局面は繰り返すだろう。それでも拠点が増えるたびに受託料は積み上がり、時間は株主の味方になる。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、生活物資の 3PL だ。3PL とは、荷主の物流の企画から運営までを請け負う仕事を指す。顧客はスーパー、コンビニ、ドラッグストアと、その卸だ。
全国に 71 の拠点があり、北陸を土台に関東、東海、近畿へ広がる。拠点の多くは借りた倉庫で、荷主ごとの専用センターとして運営する。報告セグメントは物流の 1 つだけで、売上の約 9 割を占めると推計される。
収入の仕組みは、荷物の量に連動する料金と、センターの運営費に利益を乗せた受託料の組み合わせだ。自社開発の「Jobs」という管理システムで、人の配置と作業の量を細かく測り、原価を管理する。
残りの 1 割強は、観光バスやタクシーの旅客、不動産、システム開発、保険代理、自動車整備、燃料の販売だ。M&A で積み上げた事業で、利益への寄与は小さい。
2026 年 7 月には、関東のスガヤトランスと新潟のジェイユウ軽送を買収した。冷蔵冷凍の食品輸送を持つ会社で、生活物資の運び手を内製化する動きだ。
売上は 2018 年 12 月期の 138 億円から、2025 年 12 月期の 335 億円まで伸びた。ほとんどが新しいセンターの開設による増加だ。
優良さと弱いところ
優良さを分けるのは、資産の軽さと、顧客の偏りだ。
強みは、少ない資本で利益を稼ぐ形にある。拠点を借りて、荷主の物流を受ける。設備は荷主の仕様に合わせるが、投資は契約に見合う範囲で済む。だから自己資本利益率が 17% と高い。営業利益率も 2018 年の 2.5% から 7% 前後まで上がった。
荷主の物流を預かる仕事は、実績と信頼が要る。センターの運営を手放せば荷主の店頭に商品が届かなくなるので、切り替えは簡単ではない。
弱みは三つある。一つめは顧客の偏りで、上位 2 社が売上の約 47% を占める。二つめは、新拠点の立ち上げ費用と、人手の確保だ。三つめは、大株主が創業家とみられ、少数株主の発言力が小さいことだ。
経営は成長を優先してきた。配当性向は 22% 台と低めだが、中期計画で 30% を基本に置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流は、需要が堅く、供給が細る業界だ。ドライバーの時間外労働の上限(2024 年問題)で運べる量が減り、荷主は物流を外部に任せる流れを強めている。
生活物資の 3PL は、その流れの受け皿になる。食品、医薬品、日用品は景気に左右されにくい。ドラッグストアは店舗数がなお増え、食品の取り扱いを広げているので、物流の需要も増える。
競合は、大手の総合物流や、ハマキョウレックス、丸和運輸機関のような 3PL 専業だ。地方では、荷主ごとに地元の物流会社が入り込んでおり、価格が競争の軸になる。
荷主側の力も強い。大手の小売は複数の物流会社を使い分け、契約更新のたびに料金の見直しを迫る。自社で物流センターを持つ動きも出ている。
物価の上昇は、人件費と家賃を押し上げる。料金に転嫁できる契約を持つ会社と、そうでない会社の差が広がる。
自動化は、人手の確保が難しい中で進む。投資を抱えられる会社は生産性を上げ、小さな会社は荷主を失う。10 年の間に、物流の再編が進むとみる。
その中で、生活物資に特化した地方発の 3PL は、荷主の近くで拠点を増やせる強みを持つ。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、成長のための M&A と、配当の引き上げだ。
中期計画は、配当性向 30% を基本にし、株主資本配当率 5% を長期の目安に置いた。自己資本比率は 40% 超を保つ。実績の配当性向は 2025 年に 22% と低く、増配の余地がある。
M&A は、生活物資に強い物流会社、物流の技術会社、コンサルの 3 分野で探す。社長直轄の推進室を置いた。2026 年 7 月には関東と新潟で小さな運送会社を買った。
創業家の資産管理会社が株の約 5 割を持つとされる。浮動株は 4 割ほどで、上場廃止を伴う再編の可能性は残る。株主優待は確認できなかった。自社株買いの実績もない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ビーイングは、少ない資本で稼ぐ効率の高い物流会社だ。自己資本利益率は 17% で、営業利益率は 2018 年の 2.5% から 7% 近くまで上がった。拠点を借りて運営するので、売上が増えても投資は軽い。
生活物資は景気に左右されにくく、ドラッグストアの出店が物流の需要を押し上げる。クスリのアオキは東北や関東へ広げており、物流もそれに合わせて増える。中期計画は東北と中四国への進出を掲げる。
2024 年問題で運べる量が細り、荷主は物流を外に出すしかない。人手と拠点を確保した会社は、料金を物価並みに上げられる。
M&A の推進室も置いた。冷蔵冷凍の運送会社を買い足せば、運び手を内製化して利益率が上がる。
時価総額は利益の 9 倍に届かない。中期計画の営業利益 31 億円が実現すれば、今の値段は 7 倍台まで下がる。配当性向 30% への引き上げも、見直しの材料になる。
創業家が大株主で、意思決定が速いのも強みだ。
慎重な見方
顧客の偏りは見かけ以上に重い。クスリのアオキだけで売上の 36%、三菱食品と合わせて 47% になる。契約更新のたびに料金の見直しを迫られ、自社物流への切り替えがあれば、利益は一気に落ちる。
足元の利益も弱い。2026 年の中間期は増収でも営業利益が 16% 減った。東海の大型センターの立ち上げ費用が重く、利益率は回復していない。
人件費は物価を上回って上がる。荷主との契約が転嫁できる形かは、顧客の力次第だ。人手不足でセンターの稼働が落ちれば、荷主の信頼を失う。
創業家が株の約 5 割を持つので、少数株主は経営に口を出せない。M&A で買い足す事業は、のれんの回収に時間がかかる。
高い自己資本利益率は、借りた拠点の家賃が利益から引かれているからだ。新リース会計基準で賃借の約束が貸借対照表に載れば、資本の軽さは薄まって見える。
時価総額が低いのは、こうした弱さを市場が値引いている姿とも読める。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、資本の軽さと、物流の外注化という追い風に支えられている。慎重な言い分は、顧客の偏りと足元の利益の弱さに支えられている。
顧客の偏りは構造的な弱さなので、悲観とやや悲観の確率を厚めにした。それでも、中立から楽観の価値が今の時価総額を大きく上回るので、強気がやや強いと判断した。
結論は、割安に寄る。ただし一部は顧客の偏りの割引が正当に効いている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,394 円336 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 223 円54 億円)。 今の値に割り戻すと 781 円188 億円、今との差 +56.5%、 期待の年率 +12.5%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,282 円550 億円 | 320 円77 億円 | +421.4% | +18.0% | 260 円63 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,935 円466 億円 | 270 円65 億円 | +341.8% | +16.0% | 485 円117 億円 |
| 中立 | 36% | 1,631 円393 億円 | 249 円60 億円 | +276.8% | +14.2% | 677 円163 億円 |
| やや悲観 | 20% | 660 円159 億円 | 174 円42 億円 | +67.2% | +5.3% | 167 円40 億円 |
| 悲観 | 12% | 175 円42 億円 | 62 円15 億円 | −52.5% | −7.2% | 28 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,394 円336 億円 | 223 円54 億円 | +224.1% | +12.5% | 1,617 円390 億円 |
今の株価時価総額 499 円120 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 東北・中四国へ広がり、荷主の外注が進む 利益 33 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 2,282 円550 億円
東北と中四国へ進出し、拠点は 115 に増える。クスリのアオキの出店に合わせた専用センターが続き、荷主の外注の流れも後押しする。
料金は人件費の上昇を転嫁でき、1 拠点あたり売上は物価を少し上回って伸びる。冷蔵冷凍の運び手を買い足し、内製化で利益率は 8% に上がる。
売上は 720 億円、営業利益は 54 億円、純利益は 33 億円。自己資本利益率は 13% を超え、配当性向は 3 割台を保つ。
中期計画の 450 億円を 7 年遅れで超える形で、物流の再編を主導する側に回る。
M&A で運び手を内製化し、荷主に提供できるサービスの幅も広がる。
- 物流(3PL・物流センター運営):数量 115(拠点数(か所))× 価格 56,507(1 拠点あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 650 億円・営業利益 52 億円。拠点 115、1 拠点 1.36 倍(転嫁と付加価値)
- その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料):数量 52.0(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.34(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。規模 1.3 倍、価格 1.34 倍
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.91 倍、時価総額 525 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:拠点の拡大、料金転嫁、買収の成功が重なる姿。顧客の偏りの重さから、1 割に置いた。
やや楽観 22% 拠点が着実に増え、利益率は 7% 台を保つ 利益 28 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 1,935 円466 億円
拠点は 105 に増える。立ち上げ費用の重い大型センターが軌道に乗り、利益率は 7% 台後半に戻る。
料金は物価に近く上がるが、一部の荷主には値下げを求められる。旅客などの周辺事業は小さく伸びる。
売上は 640 億円、営業利益は 46 億円、純利益は 28 億円。自己資本利益率は 12% 台。
顧客の偏りは変わらず、最大顧客との契約更新のたびに緊張が走る。それでも荷主の外注の流れが追い風になり、成長は途切れない。
生活物資の荷動きは安定しており、立ち上げ費用の山を越えたあとは利益が積み上がりやすい。
- 物流(3PL・物流センター運営):数量 105(拠点数(か所))× 価格 55,260(1 拠点あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 580 億円・営業利益 44 億円。拠点 105、1 拠点 1.33 倍
- その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料):数量 48.0(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.32(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 63 億円・営業利益 3 億円。規模 1.2 倍、価格 1.32 倍
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.73 倍、時価総額 437 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の立ち上げ費用が一巡し、中期計画が遅れて実現する姿。
中立 36% 中立:外注化が追い風、荷主の力が利益率を抑える 利益 23 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 1,631 円393 億円
拠点は 95 まで増える。東北と中四国の進出は、中期計画ほど速くは進まない。1 拠点あたりの売上は物価の 1.34 倍に届かない 1.30 倍で、料金の転嫁は荷主の力に抑えられる。
営業利益率は 6〜7% にとどまる。人件費と家賃の上昇を吸収しながら、過去の最高(7.4%)を超えない。
売上は 570 億円、営業利益は 38 億円、純利益は 23 億円。自己資本利益率は 11% 台。配当性向は 3 割で、残りの利益は積み上がる。
最大顧客との関係は続くが、売上に占める割合は新しい荷主の分だけ下がる。
- 物流(3PL・物流センター運営):数量 95.0(拠点数(か所))× 価格 54,014(1 拠点あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 513 億円・営業利益 37 億円。拠点 95、1 拠点 1.30 倍。転嫁は荷主の力で物価に届かない
- その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料):数量 44.0(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.30(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。規模 1.1 倍、価格 1.30 倍
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.48 倍、時価総額 362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流の外注化と顧客の偏りが打ち消しあう、最も起こりやすい形。最も厚く置いた。
やや悲観 20% 荷主の値下げ要求と人件費で、利益率が下がる 利益 14 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 660 円159 億円
荷主の値下げ要求と人手不足で、新しい拠点が増えない。拠点は 80 にとどまり、料金の上がり方は物価に届かない。
営業利益率は 5% 前後に下がる。立ち上げ費用の重い大型センターが、利益率を下げ続ける。旅客などの周辺事業は赤字に近づく。
売上は 450 億円、営業利益は 22 億円と今の水準を割る。純利益は 14 億円。
配当は維持するが、増配は止まる。買収も小さな案件にとどまり、自己資本の伸びは鈍る。
荷主との交渉力が弱いままでは、利益率の改善は期待しにくい。
人手の確保に賃金を上げても、料金に乗せきれない月が続く。センターの稼働率が落ちると、固定費の重さがそのまま利益を削る。
- 物流(3PL・物流センター運営):数量 80.0(拠点数(か所))× 価格 50,690(1 拠点あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 406 億円・営業利益 22 億円。拠点 80、1 拠点 1.22 倍
- その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料):数量 40.0(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.20(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。規模 1.0 倍、価格 1.20 倍
倍率:ROE 7.7% が k 8.25% 以下なので PER は 1÷k=12.1 倍まで。利益の伸びが止まり、質も下がるので、上限の約 79% の 9.5 倍に置く。
確率:最大顧客が料金の見直しを強め、人件費を転嫁しきれない姿。顧客の偏りから 2 割に置いた。
悲観 12% 悲観:最大顧客が離れ、稼働が崩れる 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 175 円42 億円
最大顧客が物流を自社に戻すか、他社へ移す。売上の 3 分の 1 が消え、専用センターの固定費だけが残る。拠点は 60 に減る。
残った荷主にも値下げを求められ、料金は物価に届かない。営業利益率は 1% 台に落ち、営業利益は 4 億円ほどになる。
借りた拠点の家賃が固定の約束として残り、減損が出る。配当は大きく減る。
再建には拠点の整理が要り、株主の取り分は、不動産や車両などの売れる資産と現金に近づく。
創業家は事業の縮小を受け入れ、株主への配当を絞って立て直しに回す。
新規の拠点開設は止まり、M&A で買った周辺事業も売却の対象になる。成長の物語は終わり、資産を整理する局面に入る。
- 物流(3PL・物流センター運営):数量 60.0(拠点数(か所))× 価格 45,704(1 拠点あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 274 億円・営業利益 4 億円。拠点 60、1 拠点 1.10 倍
- その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料):数量 36.0(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.15(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。規模 0.9 倍、価格 1.15 倍
倍率:床の資産で値を付けた。稼ぐ力(2.4 億円 ÷ k)は 30 億円弱だが、現金と売れる不動産・車両から有利子負債を引いた 42 億円のほうが大きい。今の自己資本 81 億円に対する PBR は 0.52 倍。減損で自己資本は今の水準に戻るとみる。
確率:最大顧客が自社物流へ切り替えるか、料金を大きく引き下げる構造的な負け筋。上位 2 社が 47% を占めるので、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流(3PL・物流センター運営)
荷主の倉庫運営、仕分け、輸送を一括して受ける。スーパー、ドラッグストア、卸向けの生活物資が中心。
| 数量拠点数(か所) | 価格1 拠点あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 71.0 | 41,549 | 295 | 22 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 54,014 | 513 | 37 |
取り方:拠点数は 2025 年 12 月末の 71 か所。報告セグメントが物流の 1 つだけで、「その他」の事業の売上を差し引いた 295 億円を物流の売上と推定した。価格は売上を拠点数で割った 1 拠点 4.15 億円で、小さな拠点も大きな専用センターも含む平均。利益は連結の営業利益 23.0 億円から、その他と本社費を除いた 22.0 億円の推定。
その他(旅客・不動産・システム・保険・整備・燃料)
M&A で積み上げた周辺事業。観光バス、タクシー、不動産、システム開発、保険代理、自動車整備、燃料の販売。
| 数量事業規模(今の値段で換算した売上・億円) | 価格値段の指数(今 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 1.00 | 40 | 2 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 1.30 | 57 | 3 |
取り方:報告セグメントに入らない小さな事業の合計で、売上は連結 335 億円から物流を引いた 40 億円と推定。利益は 1.8 億円程度の推定。個別の数量が開示されないため、今の売上を実質の規模、物価を価格の指数とした。
リスクと懸念
最大顧客の離脱・料金の引き下げ
クスリのアオキが売上の 35.5%、三菱食品グループが 11.7% で、上位 2 社が約 47%。自社物流への切り替えや他社への移管があれば、専用センターの固定費だけが残り、利益は一気に落ちる。
新拠点の立ち上げ費用と東海センターの不振
2026 年の中間期は増収でも営業利益が 15.6% 減った。東海の大型センターの収益改善に費用がかかり、利益率が戻らない。同じことが新しい拠点でも繰り返される恐れがある。
人手不足と人件費の上昇
物流は人件費が原価の大半。賃金が物価を上回って上がり、荷主が料金に転嫁させなければ、利益率は削られる。センターの稼働を支える人員が確保できないリスクもある。
賃借拠点の固定費と新リース会計基準
拠点の多くは借りており、家賃は解約しにくい固定の約束。2028 年 3 月期以降の新リース会計基準で貸借対照表に載ると、自己資本比率が下がり、資本の軽さが薄く見える。
M&A の失敗とのれん
買収は成長の手段で、推進室も置いた。冷蔵冷凍や関東の運送会社を買い足すが、のれんの回収に時間がかかる。旅客などの周辺事業も、本業との相乗効果が見えにくい。
創業家の持株が大きい
創業家の資産管理会社が株の約 5 割を持つとされる。少数株主の発言力は小さく、上場廃止を伴う再編が起きれば、価格は本質価値と別の話になる。
今後の分かれ目
- クスリのアオキが物流の外部委託先を増やす、または自社化する
- 悲観の確率を上げる。売上の約 36% が揺らぐ。
- 東海の大型センターの利益率が戻り、営業利益率が 7% を回復する
- 足元の弱さが一過性と確かめられる。楽観側の確率を上げる。
- 東北・中四国に新しい専用センターが続けて開設される
- 拠点数の伸びが中立を上回る。楽観側の確率を上げる。
- 配当性向が 30% に引き上げられ、増配が続く
- 株主への還元が増える。値付けの見直しにつながる。
- 荷主から料金の引き下げ要求が相次ぐ
- やや悲観の確率を上げる。利益率の天井が下がる。
- 創業家が株式の公開買付けや非上場化に動く
- 公開買付けの価格は本質価値と別の話になる。提示価格と 10 年の中立の価値の差を見て判断する。
見ておくもの
- クスリのアオキ向け売上の割合と契約更新
- 営業利益率(7% の回復)と東海センターの採算
- 新規センターの開設数と拠点数
- 配当性向と自己資本比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k 8.25%(quality +0.75)、g 4%、堀は普通。中立の ROE は 11.3% で k を上回るので PER の下限は 1÷k の 12.1 倍。顧客の偏りで 12.4 倍にした。今の株価や PER は見ていない。拠点の賃借は家賃を営業費用に入れた形で置き、新リース会計基準(2028 年 12 月期から)で数字の形が変わる点は、今の形にそろえて考えた。10 年で溜まる現金は build が自動で足す。株主優待は確認できず、還元には足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.91 倍・やや楽観 PER 12.8→15.73 倍・中立 PER 12.4→15.48 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。