結論
ロジネットジャパンは、札幌通運を中心に、鉄道のコンテナとトラックで企業の荷物を運ぶ物流の持株会社だ。筆者の結論は「ほぼ適正」だ。ROE が資本コストを上回り、利益の 4 割強を株主に返す点は評価できるが、運賃の値上げは人件費に食われ、利益率は伸びにくい。
強みは、北海道で長く築いた鉄道コンテナの網と、本州の大口の荷主との取引だ。トラックの運転手が減るなか、長い距離を鉄道で運べる会社の価値は上がっている。2024 年 4 月から運転手の残業に上限ができ、運賃の値上げは通りやすくなった。
ただ、値上げの分は運転手の賃金と外注の運賃にも消える。過去 12 年、営業利益率は 5% 台が天井だった。荷主の物流の予算は限られ、利益率がここから大きく上がるとは考えにくい。
10 年後の営業利益は 50 億円台とみる。ROE は 9% 前後に落ち着き、資本コストをわずかに上回る程度だ。配当と自社株買いで利益の 4 割強を返す姿勢は評価できる。株式を 4 分割したのも、株主を大事にする表れだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ロジネットジャパンは「地味だが、資本を大事に扱う会社」だ。
事業に強い堀はない。トラック輸送は値段で争う仕事で、利益率は 5% 前後にとどまる。それでも、北海道の鉄道コンテナの網と、大口の荷主との長い取引は、10 年後も残る資産だ。
評価できるのは資本の使い方だ。ROE は 10 年以上、資本コストを上回ってきた。利益をため込まず、配当と自社株買いで返してきた。株式の分割で株主の層を広げる配慮もある。
気になるのは、利益の天井が低いことだ。運賃の値上げが通っても、賃金と外注費に消える。オーナー利益、つまりトラックと倉庫の更新の投資を引いた利益は、純利益より少し小さい。
筆者は、払う値段に見合う事業だが、安全域は大きくないと見る。持ち続けるなら、利益率と還元の両方を毎年確かめたい。
何で稼ぐ会社か
ロジネットジャパンは 2005 年に札幌通運と中央通運が経営を統合してできた持株会社で、売上は約 780 億円。セグメントは地区別に、北海道、東日本、西日本の 3 つに分かれる。
北海道は売上 221 億円で、札幌通運が道内の鉄道コンテナの集配と、トラックの輸送、倉庫を担う。北海道の物流は本州との間を鉄道と船で結ぶため、鉄道コンテナの取扱いは道内の物流の骨格だ。
東日本は売上 320 億円で、全社の営業利益の約 6 割を稼ぐ最も大きな柱だ。中央通運などが首都圏の大口の荷主の輸送と倉庫を受け持つ。西日本は売上 202 億円で、2026 年 3 月期は新しい荷主の獲得で 9% 伸びた。
稼ぎ方は、荷主から運賃と保管料を受け取り、自社のトラックと協力会社の車両、鉄道を組み合わせて運ぶことだ。自社の車両で運べない分は外注するため、外注の運賃の値上がりが利益を圧迫する。
中期経営計画(2025〜2027 年度)では、路線便を他社と共同で回す LNJEX、独自の輸送商品、国際物流、EC 物流を伸ばす方針を掲げる。
優良さと弱いところ
優良さは中位だ。トラック輸送そのものは参入が容易で、値段は荷主が強い。ただし、鉄道コンテナを使う通運の仕事は、駅の近くの集配の拠点と鉄道会社との関係が要り、新しい会社がすぐには入れない。北海道ではこの網が強みになっている。
大口の荷主との長い取引も強みだ。荷主の工場や店の物流に組み込まれ、物流の会社を変えるには手間がかかる。直近の増益も、大口の荷主の数量増が支えた。
弱いのは、利益率の低さと、荷主への依存だ。営業利益率は 5% 前後で、過去 12 年の山は 5.3%。運転手の賃金と外注の運賃が上がれば、すぐに削られる。大口の荷主の取扱いが減れば、利益は大きく動く。
資本効率は良い。ROE は過去 10 年の中央値で 14% 台、直近も 12% 台ある。借金は営業利益の 1.3 倍ほどで重くなく、自社株買いで株主に資本を返してきた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の物流は、荷物の量は実質で横ばいから微減、運ぶ人は減る業界だ。2024 年 4 月から運転手の残業に年 960 時間の上限ができ、運転手の不足は 2025 年度に約 21 万人に達した。国は「標準的な運賃」を引き上げ、荷待ちや荷役の料金も取りやすくした。
その結果、運賃は物価を上回って上がりやすい局面にある。運ぶ力を持つ会社の交渉力は強まった。一方で、運転手の賃金も同じように上がり、協力会社に払う外注の運賃も上がる。値上げの多くは費用の上昇に消える。
鉄道へのモーダルシフト、つまりトラックから鉄道や船に荷物を移す動きは、運転手の不足で追い風を受ける。国も鉄道コンテナの利用を後押しする。通運を本業とするロジネットジャパンには有利な流れだ。ただ、JR 貨物の輸送力には限りがあり、災害で線路が止まる危うさもある。
業界は再編が進む。大手の物流会社は中堅の会社を買い、荷主の物流子会社も売りに出る。北海道では人口の減少で荷物の量そのものが細り、道内だけでは成長しにくい。本州の荷主をどれだけ取り込めるかが、10 年の分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いの両方を使う。2026 年 3 月期の配当は増配で、配当性向は 3 割弱。そのうえで 2024 年に 2 度、2025 年 8 月には立会外で 46 万株を買い、消却した。2026 年に 1 株を 4 株に分割し、個人が買いやすくした。
親会社はなく、筆頭株主の北海道マツダ販売でも 7% ほどだ。会社の規模が小さく、大手の物流会社にとって北海道の網と本州の荷主は魅力になりうる。TOB の対象になる可能性は、小さいが無いとは言えない。
買収は自らも小さく続けてきたが、大型の買収で資本を傷めた例はない。純負債は 49 億円で、借り換えで利払いは少し増えるが、財務の余力はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運転手の不足は、運ぶ力を持つ会社に有利に働く。2024 年問題で運賃の値上げは通りやすくなり、荷主も物流の会社を選ぶ立場から、選ばれる立場に変わった。ロジネットジャパンは、まさにその運ぶ力を持っている。
鉄道コンテナの通運は、長い距離を少ない運転手で運べる。国はモーダルシフトを後押しし、北海道と本州を結ぶ物流で札幌通運の網は欠かせない。
実績もある。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、大口の荷主の数量増と新規の獲得で営業利益が 16% 伸びた。西日本は 2026 年 3 月期に 9% の増収だった。LNJEX で路線便を共同化すれば、トラック 1 台あたりの積載も上がる。
ROE は 12% あり、配当と自社株買いで資本を返してきた。株式の分割で個人の株主も増える。利益率が過去の山を超えれば、価値は今の値段を大きく上回る。
業界の再編も追い風だ。中堅の物流会社が減れば、残った会社の交渉力はさらに強まる。北海道の網と本州の荷主は、大手にとっても魅力のある資産だ。
慎重な見方
運賃が上がっても、運転手の賃金と外注の運賃はそれ以上に上がる。協力会社に頼る輸送の比率が高い会社ほど、値上げの果実は外に逃げる。過去 12 年、営業利益率は 5.3% を超えたことがない。
北海道は人口の減少で荷物が細る。札幌通運の網は強いが、運ぶ荷物そのものが減れば稼ぎは増えない。2026 年 3 月期も、北海道の営業利益は 15% 減った。
大口の荷主への依存も危うい。直近の増益は大口の荷主の数量増が支えた。その荷主が物流を内製するか、大手の物流会社に切り替えれば、利益は一気に落ちる。
純利益は 2026 年 3 月期に 22% 増えたが、政策保有株の売却益などが押し上げた分で、営業利益は 1% 増にすぎない。本業の伸びは鈍い。2010 年代前半には赤字の期もあった。
鉄道コンテナも万能ではない。JR 貨物の輸送力には限りがあり、災害で線路が止まれば代わりのトラックの費用がかさむ。モーダルシフトの追い風は、思うほど利益には届かない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも理があるが、慎重な見方の「値上げは費用に消える」という指摘は、過去 12 年の利益率の天井という事実に裏づけられている。一方で、ROE と還元の実績は確かだ。
確率は中立を 4 割弱とし、楽観側を 3 割、悲観側を 3 割強とほぼ釣り合わせた。北海道の細りを踏まえ、悲観側をわずかに厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,571 円486 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 677 円128 億円)。 今の値に割り戻すと 1,754 円332 億円、今との差 +29.9%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,172 円789 億円 | 851 円161 億円 | +272.1% | +14.0% | 402 円76 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,528 円667 億円 | 777 円147 億円 | +218.9% | +12.3% | 947 円179 億円 |
| 中立 | 38% | 2,985 円564 億円 | 703 円133 億円 | +173.2% | +10.6% | 1,402 円265 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,361 円257 億円 | 582 円110 億円 | +43.9% | +3.7% | 408 円77 億円 |
| 悲観 | 11% | 375 円71 億円 | 439 円83 億円 | −39.7% | −4.9% | 90 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,571 円486 億円 | 677 円128 億円 | +140.6% | +9.2% | 3,248 円614 億円 |
今の株価時価総額 1,350 円255 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 運び手不足を追い風に、値上げと共同化が実る 利益 47 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,172 円789 億円
トラックの運転手は 10 年で一段と減り、運ぶ力を持つ会社に荷物が集まる。ロジネットジャパンは、鉄道のコンテナとトラックを組み合わせる通運の強みを生かし、長い距離の荷物を鉄道に移して運転手の不足をかわす。運賃は物価を上回って 1.42 倍になる。
共同で路線便を回す LNJEX が軌道に乗り、1 台あたりの積載が上がる。西日本は新しい大口の荷主を取り込み、取扱量は 1.25 倍に増える。EC 物流と国際物流も小さな柱に育つ。
全社の営業利益は 70 億円台に乗り、利益率は 5.7% と過去の山を超える。北海道は人口減で荷物が細るが、本州の伸びで補える。還元は配当と自社株買いを合わせて利益の 4 割強を続ける。
- 北海道:数量 2,206(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 313 億円・営業利益 13 億円。数量 2206.0 × 価格 0.142、営業利益率 4.2%
- 東日本:数量 3,585(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 509 億円・営業利益 35 億円。数量 3585.12 × 価格 0.142、営業利益率 6.8%
- 西日本:数量 2,523(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 358 億円・営業利益 16 億円。数量 2522.5 × 価格 0.142、営業利益率 4.5%
- その他・調整:数量 414(取扱量に換算(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。数量 413.6 × 価格 0.142、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.89 倍、時価総額 789 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024 年問題で運賃の値上げが通りやすくなった流れが 10 年続く筋書き。全社の営業利益率が過去の山(5.3%)を超えるため、確率は 8% にとどめた。
やや楽観 22% 本州で荷物を増やし、北海道の細りを補う 利益 40 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 3,528 円667 億円
本州の荷主の仕事が着実に増え、東日本は 1.08 倍、西日本は 1.18 倍に取扱量が伸びる。北海道は人口の減少で 4% 細るが、札幌通運の鉄道コンテナの網は道内の物流に欠かせず、仕事は残る。
運賃は人件費の上昇に合わせて物価を少し上回り、1.39 倍になる。燃料や資材の値上がりも、時間差はあっても価格に転嫁できる。
全社の営業利益は 60 億円を超え、利益率は 5% 台前半で過去の山に並ぶ。西日本の新しい荷主は、倉庫と輸送を一括で任せる契約で、簡単には離れない。借金は増やさず、配当と自社株買いを続ける。ROE は 10% 前後を保ち、資本コストを上回り続ける。
- 北海道:数量 2,118(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 294 億円・営業利益 11 億円。数量 2117.76 × 価格 0.139、営業利益率 3.8%
- 東日本:数量 3,457(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 481 億円・営業利益 30 億円。数量 3457.08 × 価格 0.139、営業利益率 6.3%
- 西日本:数量 2,381(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 331 億円・営業利益 13 億円。数量 2381.24 × 価格 0.139、営業利益率 4.0%
- その他・調整:数量 395(取扱量に換算(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 6 億円。数量 394.8 × 価格 0.139、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.33 倍、時価総額 656 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近は大口の荷主の数量増と新規の獲得で、2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が 16% 伸びた。この勢いが緩やかに続く筋書きとして 2 割強を置いた。
中立 38% 運賃は物価並み、荷物は横ばい 利益 34 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 2,985 円564 億円
10 年後のロジネットジャパンは、北海道と本州で荷物を運ぶ中堅の物流会社のまま残る。北海道は人口の減少で荷物が 8% 減るが、東日本は横ばい、西日本は新しい荷主の分だけ 1 割増える。
運賃は人件費に合わせて上がり、10 年で 1.36 倍。運転手の不足で運ぶ力が限られる分、物価を少し上回る値上げが通る。ただし人件費と燃料も同じだけ上がり、利益率は 4.9% 前後と今とほぼ同じだ。
全社の営業利益は 50 億円台になる。会社が中計で掲げる経常利益 40 億円の先にある水準だ。借り換えで利払いは少し増えるが、借金は重くない。還元は配当と自社株買いで利益の 4 割強を続け、ROE は 9% 前後に落ち着く。
- 北海道:数量 2,030(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 276 億円・営業利益 9 億円。数量 2029.52 × 価格 0.136、営業利益率 3.4%
- 東日本:数量 3,297(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 448 億円・営業利益 26 億円。数量 3297.03 × 価格 0.136、営業利益率 5.8%
- 西日本:数量 2,220(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 302 億円・営業利益 11 億円。数量 2219.8 × 価格 0.136、営業利益率 3.5%
- その他・調整:数量 376(取扱量に換算(万トン、推定))× 価格 0.14(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 6 億円。数量 376.0 × 価格 0.136、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.79 倍、時価総額 538 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の貨物の量は実質で横ばい、運賃は人件費の上昇に合わせて物価をわずかに上回るという、業界の見通しの真ん中。会社の 2027 年 3 月期の予想(営業利益 38 億円)の延長から大きく外さない。
やや悲観 21% 人件費に運賃が追いつかない 利益 24 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,361 円257 億円
運転手の不足は運賃を押し上げるより先に、賃金と外注費を押し上げる。大口の荷主は値上げを渋り、運賃は物価に届かない 1.30 倍にとどまる。
北海道は人口の減少と荷主の道外への移転で 15% 縮む。東日本も取扱量が 5% 減り、西日本の伸びは止まる。全社の営業利益率は 3.5% 前後まで下がる。
利益は今とほぼ同じ水準で 10 年が過ぎ、物価を差し引けば実質で目減りする。還元は利益に合わせて細る。借り換えで利払いがじわりと増え、資本の効率は資本コストを下回る。経営は自社株買いを止め、配当だけを細く続ける。
- 北海道:数量 1,875(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 244 億円・営業利益 6 億円。数量 1875.1 × 価格 0.13、営業利益率 2.6%
- 東日本:数量 3,041(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 395 億円・営業利益 19 億円。数量 3040.95 × 価格 0.13、営業利益率 4.8%
- 西日本:数量 2,018(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 262 億円・営業利益 7 億円。数量 2018.0 × 価格 0.13、営業利益率 2.6%
- その他・調整:数量 357(取扱量に換算(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。数量 357.2 × 価格 0.13、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 6.7% が k 7.25% を下回るため PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。人件費に押されて縮む利益なので、その 72% の 9.0 倍とした。
確率:運転手の賃金と燃料が運賃より速く上がり、荷主が値上げを渋る形。2015 年 3 月期のように利益率が大きく沈んだ実績があるので、2 割強を置いた。
悲観 11% 大口の荷主を失い、運び手も集まらない 利益 12 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 375 円71 億円
売上の大きな部分を占める大口の荷主が、物流を自社に取り込むか、大手の物流会社に切り替える。東日本と西日本の取扱量は 1〜2 割減り、北海道は 4 分の 1 細る。
運転手は集まらず、外注の運賃は上がり続ける。運賃の値上げは物価にも届かず、営業利益率は 2% を割る。2010 年代前半の低い利益率に戻る形だ。
利益は今の半分以下になり、借り換えの利払いも重くなる。還元は大きく減り、トラックと倉庫の更新も先送りされる。会社は残るが、資本コストを超える稼ぎはもう生まない。株主に残るのは、細った利益と、更新の投資に追われる設備だ。
- 北海道:数量 1,655(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 207 億円・営業利益 3 億円。数量 1654.5 × 価格 0.125、営業利益率 1.2%
- 東日本:数量 2,721(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 340 億円・営業利益 10 億円。数量 2720.85 × 価格 0.125、営業利益率 3.0%
- 西日本:数量 1,816(取扱量(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 227 億円・営業利益 2 億円。数量 1816.2 × 価格 0.125、営業利益率 1.0%
- その他・調整:数量 338(取扱量に換算(万トン、推定))× 価格 0.13(1 万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。数量 338.4 × 価格 0.125、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 3.6% は k 7.25% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。構造的に縮む利益で、純負債も残るため、その半分以下の 6.0 倍とした。
確率:大口の荷主の物流の内製化や、大手の物流会社への乗り換えで取扱量が大きく減る構造的な負け筋。2010〜2015 年に赤字の期があった実績から 1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
北海道
札幌通運による道内の鉄道コンテナの集配、トラック輸送、倉庫。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,206 | 0.10 | 221 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,030 | 0.14 | 276 | 9 |
取り方:取扱量は開示が無く、売上 220.6 億円を 1 トンあたり 1 万円の運賃で割った推定(約 2,200 万トン)。営業利益は開示値。数量は道内の人口減で中立 0.92 倍、運賃は運転手の不足で物価を少し上回る 1.36 倍。
東日本
中央通運などによる首都圏・東日本の大口の荷主の輸送と倉庫。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,201 | 0.10 | 320 | 19 |
| 10 年後 中立 | 3,297 | 0.14 | 448 | 26 |
取り方:取扱量は開示が無く、売上 320.1 億円を 1 トンあたり 1 万円で割った推定。営業利益は開示値。数量は首都圏の貨物が横ばいで中立 1.03 倍。
西日本
関西・中部以西の荷主の輸送と倉庫。新しい大口の荷主を取り込み伸びている。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,018 | 0.10 | 202 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,220 | 0.14 | 302 | 11 |
取り方:取扱量は開示が無く、売上 201.8 億円を 1 トンあたり 1 万円で割った推定。営業利益は開示値。新しい荷主の獲得で数量は中立 1.10 倍。
その他・調整
地区に入らない売上(物品の販売・不動産の賃貸など)と、セグメントの合計と全社の差。
| 数量取扱量に換算(万トン、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 376 | 0.10 | 38 | 4 |
| 10 年後 中立 | 376 | 0.14 | 51 | 6 |
取り方:全社の売上 780.1 億円から 3 地区の合計 742.5 億円を引いた 37.6 億円と、営業利益の差 4.3 億円。中身の開示は無く、地区と同じ単価で換算した。
リスクと懸念
人件費と外注費の上昇
運転手の不足で賃金と協力会社の運賃が上がり続ける。運賃の値上げがそれに追いつかなければ、5% 前後の利益率はすぐに削られる。過去 12 年、営業利益率は 5.3% を超えていない。
大口の荷主への依存
直近の増益は大口の荷主の数量増が支えた。荷主が物流を内製するか、大手の物流会社に切り替えれば、取扱量と利益が一気に落ちる。
北海道の人口減
道内の荷物は人口の減少とともに細る。2026 年 3 月期も北海道の営業利益は 15% 減った。本州で補えなければ全社の伸びは止まる。
鉄道の輸送力と災害
鉄道コンテナは JR 貨物の輸送力に頼る。大雨や地震で線路が長く止まれば、北海道と本州を結ぶ物流が滞り、代わりの輸送の費用がかさむ。
借り換えの利払いと設備の更新
純負債は約 49 億円で、借り換えのたびに金利が上がる。トラックと倉庫の更新の費用も建築費の上昇で膨らみ、現金が細る。
買収されるか、買うか
規模が小さく、大手の物流会社の買収の対象になりうる。逆に自ら大きな買収に動けば、資本を傷めるおそれもある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 5.5% を超えて定着する
- 値上げが費用を上回る形になったとみて、やや楽観に寄る。
- 大口の荷主の取扱いが減る
- 悲観の筋書きに近づき、評価を下げる。
- 北海道の営業利益が 3 期続けて減る
- 道内の細りが速いとみて、やや悲観を厚くする。
- 大手の物流会社が TOB を仕掛ける
- 北海道の網と荷主に値段が付き、株主には上振れになる。
- 自社株買いを続ける
- 資本の効率が保たれ、ROE は資本コストを上回り続ける。
見ておくもの
- 3 地区の営業利益率
- 大口の荷主の取扱量
- 運転手の数と外注の比率
- 鉄道コンテナの取扱量
- 自社株買いと配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 7.25%(基本 7.5% + quality 0.5%)と各筋書きの ROE から正当化 PER を出し、中立は 1÷k の 12.5 倍とした(式の 95%。ROE が k をわずかに上回る会社の下限)。今の PER や PBR は見ていない。株数は 1:4 の分割の後の数に直し、今の時価総額は約 261 億円で比べた。2028/03 期から新リース会計基準で倉庫の賃借が負債に載るが、10 年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.89 倍・やや楽観 PER 12.6→16.33 倍・中立 PER 12.5→15.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5%。地方の物流で 1 社への依存が強いヒガシ HD(+1.25%)より、荷主が分散し鉄道の網を持つ分だけ低く、SBS HD(+0.5%)と同じに置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。