結論
日本ロジテムは、東京を地盤に、トラックの運送、倉庫の保管、物流センターの作業を請け負う中堅の物流会社だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正である。売上は伸びているが利益率は2%前後と薄く、借金も重い。株価の安さは、その薄さと重さに見合っている。
売上は10年で8割増え、713億円になった。伸びを引いたのはアマゾンの物流センターの仕事で、いまや売上の4分の1を占める。トラックの運送は運転手の不足で値上げが通り始めた。自社の倉庫は稼働率が上がった。
それでも、営業利益は14億円にとどまる。純有利子負債は142億円で、時価総額の2.5倍ある。金利が上がれば、利払いが利益の3割を食う。
持っている資産は小さくない。首都圏に28棟の倉庫と、帳簿で67億円の土地を持つ。ただ、その倉庫は保管料と賃料を生んで利益に入っており、別に数えると二重になる。
筆者は、運転手の不足を映して値段が上がり、利益率が少しずつ厚くなる姿を真ん中に置く。その姿の値打ちは、今の時価総額とほぼ同じだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本ロジテムは「資産は持っているが、その資産が生む利益が薄い会社」だ。
首都圏の倉庫と土地は、簡単には作れない資産だ。運転手の不足で運賃が上がる流れも、人とトラックを持つ会社に有利に働く。この2つは、10年先も残る強みだと筆者は見る。
だが、利益率は2%前後で、資本コストに届かない。倉庫を建てるたびに借金が増え、その利息が利益を削る。建て替えの費用は建築費とともに膨らみ、会計の利益ほど現金は残らない。アマゾンへの偏りも、交渉の力を弱める。
今の時価総額は、自己資本の3分の1ほどだ。安く見えるが、ROEが資本コストの半分なら、帳簿の値打ちを割り引いて見るのが筋だ。土地の含み益は、倉庫の保管料として利益に入っており、二重に数えない。
値段は中ほどの姿と釣り合っている。安全域と呼べる余裕は無いが、高く払っているわけでもない。
何で稼ぐ会社か
日本ロジテムは1946年創業の物流会社で、本社は東京にある。売上は713億円、従業員は連結で3,700人余りだ。事業は4つに分かれる。
1つめは貨物自動車の運送で、売上の4割近くを占め、利益もいちばん大きい。自社のトラックと協力会社の車両で、企業の荷物を運ぶ。2つめはセンターで、荷主の物流センターの中で仕分けや梱包、流通加工を請け負う。最大の客はアマゾンジャパンだ。
3つめはアセットで、自社や借りた倉庫で荷物を預かり、倉庫や土地を貸す。所有する倉庫は28棟、延べ13万㎡ある。4つめはその他で、引越、通関、人の派遣、ベトナムの物流を営む。ベトナムでは冷凍冷蔵の倉庫の合弁にも出資を増やした。
アマゾン向けの売上は176億円で、全体の4分の1だ。前の年の2割強から比率が上がった。日清製粉グループ本社が議決権の26%を持つ関係会社で、食品の物流にも強い。
利益の源は、倉庫と人とトラックの稼働率だ。荷物が満ちれば利益が出て、空けば固定の費用が残る。全社の費用は年36億円で、セグメントの稼ぎの7割がそれに消える。
優良さと弱いところ
日本ロジテムの強みは、首都圏に自前の倉庫と土地を持ち、運送と保管と作業をまとめて請け負えることだ。荷主から見れば、窓口が1つで済む。アマゾンのような大口の客の仕事を長く続けているのは、現場を回す力の証拠だ。
だが、値段を決める力は弱い。運送も倉庫の作業も、同業がいくらでもいる。大口の荷主は見積もりを比べ、条件を厳しくする。営業利益率は過去12年の最高でも2.1%だ。
資本の効率も低い。ROEは10年の中央値で4%弱で、資本コストの半分ほどだ。倉庫を建てるたびに借金が増え、純有利子負債は自己資本に近い額まで膨らんだ。前の中期計画も、売上の目標は達したが、営業利益の目標には2割届かなかった。
明るい兆しはある。運転手の残業の規制で、運賃の値上げが業界全体で通り始めた。人を抱える会社の値打ちが上がる流れで、日本ロジテムにも追い風だ。経営はROE8%を掲げるが、筆者は利益率の薄さから、その道のりは長いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の物流は、荷物の量はほぼ横ばいで、運ぶ人が減る時代に入った。2024年からトラックの運転手の残業に上限ができ、運べる量が減った。運賃は上がり始め、運送の会社は値上げを通しやすくなった。
EC、つまりネットの通販は伸び続ける。アマゾンや楽天の物流センターの作業は、外の会社に任される量が増える。ただし、アマゾンは自前の配送網も広げており、委託先への条件は厳しい。大口の荷主に頼る会社は、相手の方針ひとつで仕事が増えも減りもする。
倉庫は首都圏で新しく大きな施設が増え、古い倉庫は競争で不利になる。建築費は上がり、建て替えには前より多くのお金がかかる。帳簿の償却費は取得した時の値段のままで、物価ほどには増えない。その分、会計の利益は見かけ上ふくらむが、更新の投資で現金は出ていく。
業界では再編が活発だ。丸和運輸機関によるC&Fロジへの買収の提案に佐川急便の親会社が対抗した例のように、中堅の物流会社は買う側にも買われる側にもなる。日本ロジテムは日清製粉グループが4分の1を持ち、その動きが再編の鍵になる。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。同じ額の配当を続け、総額は年1億円ほどで、配当性向は15%前後と低い。自社株買いはほとんどしていない。
利益の多くは倉庫と車両への投資に回る。2026年3月期の設備投資は37億円で、償却費の25億円を上回った。足りない分は借金で賄い、純有利子負債は142億円ある。金利が上がれば、利払いは年4億円ほど増える。
中期計画2028ではROE8%以上を目指す。そのためには利益率を上げるか、還元を厚くする必要があるが、還元を増やす方針はまだ示していない。
日清製粉グループ本社が議決権の26%を持つ。親会社ではないが、大きな株主が固く持つ形で、TOBや再編はこの株主の意向しだいだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運転手の不足は、日本ロジテムのような会社への追い風だ。2024年の残業の上限で運べる量が減り、運賃は上がり始めた。人とトラックを抱える会社は、値上げを求める側に回った。運送の利益は、この先も厚くなる。
アマゾンの仕事は、リスクではなく成長の源だ。センターの作業の受託は前の年から大きく増え、売上は8%伸びた。ECは伸び続け、外に任される作業も増える。アマゾンと長く組んできた実績は、ほかの通販の会社の仕事を取る時の名刺になる。
倉庫の稼働率も上がった。首都圏の倉庫は立地の良さで埋まり、保管料を上げやすい。帳簿の償却費は取得した時の値段のままなので、売上が物価で伸びれば利益率は自然に上がる。
首都圏の土地は帳簿で67億円あり、時価はもっと高い。日清製粉グループが4分の1を持つので、再編が起きれば土地の値打ちが表に出る。今の時価総額は自己資本の3分の1で、資産に比べて安すぎる。
利益率が1ポイント上がるだけで、営業利益は今の倍近くになる。薄いからこそ、改善の効き目は大きい。
慎重な見方
利益率の薄さは、構造の問題だ。営業利益率は過去12年の最高でも2.1%で、前の中期計画の利益の目標にも2割届かなかった。運賃が上がっても、運転手の賃金と協力会社への支払いも同じだけ上がる。
アマゾンへの偏りは危うい。売上の4分の1を1社が占め、その比率は上がっている。アマゾンは自前の物流を広げ、委託の条件を毎年見直す。センターの仕事を引き上げられれば、人と設備が余り、利益は消える。センターのセグメント利益は売上が14%伸びても1割減った。
借金も重い。純有利子負債は142億円で、金利が1%上がるだけで利益の1割が消える。倉庫の建て替えは建築費の上昇で前より高くつき、借金はさらに増える。
土地の含み益は、売らなければ株主には届かない。倉庫は事業に使っており、売れば保管料の利益も消える。資産が厚いという話は、利益の薄さの言い訳にならない。
安い株価は、薄い利益と重い借金への正しい値付けだ。帳簿の値打ちに比べて安いことは、割安の証拠にならない。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分は拮抗している。運転手の不足で値段が上がる流れは本物だが、アマゾンへの偏りと借金の重さも本物だ。中立は値上げで利益率が少しだけ厚くなる姿とし、確率は中立を厚くして左右ほぼ均等に置いた。土地の値打ちは、保管料の利益と二重にならないよう、楽観の再編の筋でだけ意識した。アマゾンの比率と運送の利益率の2つが、どちらに転ぶかの分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,478 円115 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,120 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 4,494 円61 億円、今との差 +7.8%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 17,230 円233 億円 | 1,846 円25 億円 | +357.5% | +16.4% | 1,526 円21 億円 |
| やや楽観 | 22% | 13,411 円182 億円 | 1,477 円20 億円 | +257.0% | +13.6% | 3,275 円44 億円 |
| 中立 | 36% | 9,667 円131 億円 | 1,108 円15 億円 | +158.4% | +10.0% | 3,879 円53 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,511 円34 億円 | 886 円12 億円 | −18.5% | −2.0% | 747 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 975 円13 億円 | 443 円6 億円 | −66.0% | −10.2% | 170 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,478 円115 億円 | 1,120 円15 億円 | +130.2% | +8.7% | 9,598 円130 億円 |
今の株価時価総額 4,170 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 運賃の値上げとECの伸びで利益率3%台へ 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 17,230 円233 億円
運転手の不足が続き、運賃の値上げが毎年通る筋書きだ。運送の利益率は8%に上がる。センターはアマゾンに加えてほかの通販の会社の仕事も取り、80か所に増える。倉庫は首都圏の立地で埋まり、保管料も物価を上回って上がる。
帳簿の償却費は物価ほど増えないので、会計の利益率は3%台に乗る。純利益は20億円近くになり、ROEは7%台に上がる。
日清製粉グループとの関係で食品の物流も広がる。再編の中で買う側に回り、中堅の物流会社を取り込む。借金は増えるが、利益の伸びがそれを上回る。
運ぶ人が足りない時代に、人とトラックと倉庫を持つ会社が報われる姿だ。
- 貨物自動車運送:数量 1,750(運行する車両の数(台・協力会社を含む推定))× 価格 2,150(1 台あたりの年間の売上(万円))→ 売上 376 億円・営業利益 30 億円。1,750 台×2,150 万円(1.44 倍)、8%
- センター(倉庫内の作業・流通加工):数量 80.0(運営する物流センターの数(推定))× 価格 42,000(1 センターあたりの年間の売上(万円))→ 売上 336 億円・営業利益 17 億円。80 か所×4.2 億円(1.40 倍)、5%
- アセット(保管・不動産賃貸):数量 580(運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定))× 価格 55,000(1㎡あたりの年間の売上(円))→ 売上 319 億円・営業利益 27 億円。58 万㎡×5.5 万円(1.39 倍)、8.5%
- その他(引越・通関・派遣・海外):数量 50.0(事業の拠点の数(推定))× 価格 23,000(1 拠点あたりの年間の売上(万円))→ 売上 115 億円・営業利益 15 億円。50 拠点×2.3 億円(1.37 倍)、13%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の値上げが定着し、アマゾン以外のECの仕事も取る筋。利益率が過去の山を大きく超えるので8%とした。
やや楽観 22% 中期計画に近い利益を保つ 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 13,411 円182 億円
運賃の値上げとセンターの受託の増加が続く筋書きだ。運送の利益率は7%台後半に上がり、センターは75か所に増える。倉庫の稼働率は高いまま保てる。
全社の営業利益は30億円を超え、利益率は3%に届く。借り換えの利息が増えても、純利益は15億円ほどになる。ROEは6%で、中期計画の8%には届かない。
配当は少しずつ増えるが、利益の多くは倉庫の建て替えと車両に回る。借金は大きく減らない。
値上げの流れが会社の努力と噛み合い、前の中期計画の未達を取り返す。ただ、利益の厚さは同業の大手にはまだ遠く、借金の重さも残る。再編の中で、日清製粉グループとの関係が支えになる。
- 貨物自動車運送:数量 1,725(運行する車両の数(台・協力会社を含む推定))× 価格 2,120(1 台あたりの年間の売上(万円))→ 売上 366 億円・営業利益 28 億円。1,725 台×2,120 万円(1.42 倍)、7.6%
- センター(倉庫内の作業・流通加工):数量 75.0(運営する物流センターの数(推定))× 価格 41,000(1 センターあたりの年間の売上(万円))→ 売上 308 億円・営業利益 15 億円。75 か所×4.1 億円(1.37 倍)、4.8%
- アセット(保管・不動産賃貸):数量 560(運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定))× 価格 54,000(1㎡あたりの年間の売上(円))→ 売上 302 億円・営業利益 24 億円。56 万㎡×5.4 万円(1.37 倍)、8%
- その他(引越・通関・派遣・海外):数量 48.0(事業の拠点の数(推定))× 価格 22,800(1 拠点あたりの年間の売上(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 14 億円。48 拠点×2.28 億円(1.36 倍)、13%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 182 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが進み、中期計画のROE8%に近づく筋。前の中計の未達から22%とした。
中立 36% 値上げで利益率が少しだけ厚くなる 利益 11 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 9,667 円131 億円
運転手の不足で運賃は物価をやや上回って上がるが、賃金と協力会社への支払いも上がる筋書きだ。運送の利益率は今と同じ7%台、センターは4%台で、70か所に増える。倉庫は物価並みに保管料を上げる。
帳簿の償却費は物価ほど増えないので、全社の営業利益率は2%台前半に上がる。ただ、倉庫の建て替えの費用は建築費の上昇で膨らみ、借金と利息が増える。純利益は11億円ほどだ。
ROEは5%前後で、資本コストに届かない。会社は成長しても、株主の取り分は薄いままにとどまる。
筆者は、これがいちばんありそうな10年だと見る。
- 貨物自動車運送:数量 1,700(運行する車両の数(台・協力会社を含む推定))× 価格 2,093(1 台あたりの年間の売上(万円))→ 売上 356 億円・営業利益 26 億円。1,700 台×2,093 万円(1.40 倍)、7.3%
- センター(倉庫内の作業・流通加工):数量 70.0(運営する物流センターの数(推定))× 価格 40,180(1 センターあたりの年間の売上(万円))→ 売上 281 億円・営業利益 13 億円。70 か所×4.02 億円(1.34 倍)、4.5%
- アセット(保管・不動産賃貸):数量 540(運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定))× 価格 52,800(1㎡あたりの年間の売上(円))→ 売上 285 億円・営業利益 21 億円。54 万㎡×5.28 万円(1.34 倍)、7.5%
- その他(引越・通関・派遣・海外):数量 45.0(事業の拠点の数(推定))× 価格 22,430(1 拠点あたりの年間の売上(万円))→ 売上 101 億円・営業利益 13 億円。45 拠点×2.24 億円(1.34 倍)、13%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃と保管料が物価並みに上がり、利益率が2%台前半に乗る筋。業界ノートの中立とも合い36%とした。
やや悲観 22% アマゾンの仕事が細る 利益 5 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 2,511 円34 億円
アマゾンが自前の物流センターを広げ、委託の条件を厳しくする筋書きだ。センターは60か所にとどまり、利益率は3%台に下がる。運送は値上げが一巡し、運転手の賃金だけが上がり続ける。
全社の営業利益は13億円前後と今と変わらず、利払いの増加で純利益は5億円を切る。ROEは2%台に落ちる。
倉庫の建て替えは先送りされ、古い倉庫は稼働率が落ちる。配当は保つが、借金は減らない。
1社への偏りが、そのまま交渉の弱さになって表れる姿だ。人と設備はアマゾンに合わせて抱えたままで、仕事が減っても費用はすぐには減らない。
- 貨物自動車運送:数量 1,650(運行する車両の数(台・協力会社を含む推定))× 価格 1,980(1 台あたりの年間の売上(万円))→ 売上 327 億円・営業利益 21 億円。1,650 台×1,980 万円(1.32 倍)、6.5%
- センター(倉庫内の作業・流通加工):数量 60.0(運営する物流センターの数(推定))× 価格 39,000(1 センターあたりの年間の売上(万円))→ 売上 234 億円・営業利益 8 億円。60 か所×3.9 億円(1.30 倍)、3.5%
- アセット(保管・不動産賃貸):数量 520(運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定))× 価格 51,000(1㎡あたりの年間の売上(円))→ 売上 265 億円・営業利益 19 億円。52 万㎡×5.1 万円(1.29 倍)、7%
- その他(引越・通関・派遣・海外):数量 42.0(事業の拠点の数(推定))× 価格 21,500(1 拠点あたりの年間の売上(万円))→ 売上 90 億円・営業利益 11 億円。42 拠点×2.15 億円(1.28 倍)、12%
倍率:ROE 2.3%で資本コストに遠く届かない。PERは7倍で、PBRは0.16倍と中立の0.43倍より低い。
確率:アマゾンが自前の物流を広げ、センターの受託が減る筋。偏りの強まりから22%とした。
悲観 12% アマゾンを失い、赤字に沈む 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 975 円13 億円
アマゾンがセンターの仕事の大半を自前と別の会社に移す筋書きだ。売上の2割が消え、センターの人と設備が余る。運送も荷物が減り、運賃の値上げは止まる。
全社の営業損益は赤字になり、利払いが重くのしかかる。倉庫の一部を売って借金を返し、事業を縮める。自己資本は削られ、配当は減る。
首都圏の土地の値打ちは残るが、借金の返済に充てられ、株主にはほとんど届かない。
薄い利益に借金を重ね、1社に頼った物流会社の、典型的な負け方だ。倉庫を売る相手は見つかっても、利益の土台は戻らない。会社は残るが、株主の値打ちは借金の陰に消える。
- 貨物自動車運送:数量 1,500(運行する車両の数(台・協力会社を含む推定))× 価格 1,900(1 台あたりの年間の売上(万円))→ 売上 285 億円・営業利益 14 億円。1,500 台×1,900 万円(1.27 倍)、5%
- センター(倉庫内の作業・流通加工):数量 35.0(運営する物流センターの数(推定))× 価格 36,000(1 センターあたりの年間の売上(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 0 億円。35 か所×3.6 億円(1.20 倍)、0%
- アセット(保管・不動産賃貸):数量 470(運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定))× 価格 48,000(1㎡あたりの年間の売上(円))→ 売上 226 億円・営業利益 11 億円。47 万㎡×4.8 万円(1.22 倍)、5%
- その他(引越・通関・派遣・海外):数量 38.0(事業の拠点の数(推定))× 価格 20,000(1 拠点あたりの年間の売上(万円))→ 売上 76 億円・営業利益 8 億円。38 拠点×2.0 億円(1.19 倍)、10%
倍率:営業赤字で稼ぐ力は無いのでPBRで置く。純有利子負債142億円が土地と建物の帳簿の値(約96億円)を上回り、売れる資産の床は借金でほぼ消える。今の自己資本165億円にPBR 0.08倍を掛けた約13億円とした。
確率:アマゾンの仕事の大半を失い、人と設備が余って赤字になる筋。売上の4分の1を1社に頼る偏りから12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貨物自動車運送
自社のトラックと協力会社の車両で、企業の荷物を運ぶ。
| 数量運行する車両の数(台・協力会社を含む推定) | 価格1 台あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,800 | 1,495 | 269 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 2,093 | 356 | 26 |
取り方:セグメントの売上 269.11 億円を、運行する車両 1,800 台・1 台あたり年 1,495 万円と置いた推定(台数の開示は無い)。利益はセグメント利益(全社の費用を配る前)。
センター(倉庫内の作業・流通加工)
荷主の物流センターで、仕分け・梱包・流通加工を請け負う。アマゾンが最大の客。
| 数量運営する物流センターの数(推定) | 価格1 センターあたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 29,987 | 180 | 9 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 40,180 | 281 | 13 |
取り方:セグメントの売上 179.92 億円を、60 センター・1 か所 約 3 億円と置いた推定。
アセット(保管・不動産賃貸)
自社と借りた倉庫で荷物を預かり、倉庫や土地を貸す。所有倉庫は 28 棟・約 13 万㎡。
| 数量運営する倉庫の面積(千㎡・借りた倉庫を含む推定) | 価格1㎡あたりの年間の売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 39,430 | 197 | 13 |
| 10 年後 中立 | 540 | 52,800 | 285 | 21 |
取り方:セグメントの売上 197.15 億円を、所有 13 万㎡と借りた倉庫を合わせた 50 万㎡・1㎡あたり年 3.9 万円と置いた推定。償却費(全社 25 億円)の多くがここに乗る。
その他(引越・通関・派遣・海外)
引越、通関、人の派遣、ベトナムの物流などを営む。
| 数量事業の拠点の数(推定) | 価格1 拠点あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 16,740 | 67 | 9 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 22,430 | 101 | 13 |
取り方:セグメントの売上 66.97 億円を、40 拠点・1 拠点 1.67 億円と置いた推定。
リスクと懸念
アマゾンへの偏り
売上の4分の1をアマゾンジャパンが占め、その比率は上がっている。アマゾンが自前の物流を広げるか、委託の条件を厳しくすれば、センターの仕事と利益が一気に減る。
借金と金利
純有利子負債は142億円で、時価総額の2.5倍ある。借り換えで金利が上がれば、利払いは年4億円ほど増え、薄い利益の3割近くが消える。
倉庫の更新の費用
倉庫の建て替えは、建築費の上昇で前より高くつく。帳簿の償却費は物価ほど増えないので会計の利益は保てても、更新の投資で現金は出ていき、借金が増える。
運転手と現場の人手
運転手と倉庫の作業員は全国で足りない。賃金は物価より速く上がり、人が集まらなければ仕事を受けられない。協力会社への支払いも上がる。
大株主の意向
日清製粉グループ本社が議決権の26%を持つ。再編やTOBの成否、還元の方針は、この株主の考えに大きく左右される。
今後の分かれ目
- アマゾン向けの売上の比率が30%を超えたら
- 偏りがさらに強まったとして、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が2期続けて2.5%を超えたら
- 値上げが定着したとして、やや楽観に重みを移す。
- 純有利子負債が100億円を切ったら
- 借金の重さが和らいだとして、資本コストの借金の分を下げる。
- 日清製粉グループが持ち株を売るか、買い増したら
- 再編の芽が出たとして、楽観の確率を上げる。
- 倉庫を売って還元に回す方針を示したら
- 土地の値打ちが株主に届くとして、戻り方と中立の倍率を見直す。
見ておくもの
- アマゾン向けの売上と比率
- 運送のセグメント利益率と運賃の改定
- 倉庫の稼働率
- 純有利子負債と設備投資の額
- 日清製粉グループの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBR 0.34倍を見ずに、各筋書きのROEとk 8.5%から決めた。中立のROEは4.6%でkを下回るので、PERは1÷kの11.8倍を上限とし、8割の9.4倍。中立の営業利益率2.4%は過去12年の山2.1%を少し上回るが、理由は償却が取得時の値段のまま物価で増えないこと(25億円→約34億円)で、全社の費用は物価並みに1.34倍にした。土地の含み益は保管料・賃料が利益に入るので足していない。リースは今と同じ形で置いた。やや悲観と悲観のPBRが低いのは、純有利子負債が土地と建物の帳簿の値を上回り、借金を返した後に株主に残る資産が小さいため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→11.76 倍・やや楽観 PER 10.6→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。