結論
SBSホールディングスは、メーカーの物流子会社を買い、3PL(物流の一括受託)として育てる会社だ。筆者の結論は割高である。いちばんの理由は、利益の質にある。
2025年12月期の営業利益213億円のうち、約4割は物流施設を開発して売る不動産事業が稼いだ。本業の物流の営業利益率は2.6%にとどまる。2026年は上期だけで不動産が大きく利益を押し上げ、通期予想も引き上げられた。ただ、この利益は金利や買い手の資金に左右され、毎年は続かない。
稼ぎ方そのものはうまい。リコー、東芝、ブリヂストンと、大企業が持て余した物流部門を買い、パートの活用と料金改定で利益率を上げてきた。会社は2030年に売上7,000億円、物流の利益率4.5%を掲げる。筆者は10年の中立で、物流の利益率を3%台半ばまで、不動産は横ばい圏とみる。
買収で売上が伸びても、利益率が薄く、借入と家賃の固定費が重い。ROEは10%前後にとどまり、資本コスト7%を少し上回る程度で、今の時価総額を正当化しにくい。総合の評価は約−35%の割高だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社はまず「利益のどこまでが毎年続くか」を問う。営業利益 213 億円のうち、物流施設を売って稼ぐ分は 4 割ほどある。これは農場を毎年少しずつ売って得る収入に近く、持ち続けて増える利益とは性格が違う。
物流の本業は、買った物流部門の無駄を削って利益を出す力がある。メーカーの物流子会社という「持て余されている資産」を安く買う点は、バリュー投資の発想に近い。ただ、利益率が 2〜3% 台では、料金が少し崩れれば利益はすぐ消える。安全域は厚くない。
資本の使い方では、借入と買収で売上を伸ばす姿勢が目立つ。売上が 10 年余りで 3 倍超になった実績は大きいが、自己資本比率は 28% と薄く、金利が上がる世界では利払いが重くなる。
オーナーとして長く持ちたいかを問えば、筆者の答えは「買う値段次第」だ。毎年同じだけ稼げる会社に付ける値段を、利益の波が大きいこの会社に払うべきではない。10 年先を見れば、今の値段には安全域が見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの主役は物流事業で、売上の約 94% を占める。中身は 3PL、つまり荷主に代わって倉庫の運営から輸送までを丸ごと請け負う仕事だ。グループは東芝ロジスティクス、ネクサード、ロジコムなどの大きな塊に分かれる。
買い方に特徴がある。2004 年の雪印を皮切りに、東急、JVC ケンウッド、古河電工、リコー、東芝、日本精工と、メーカーの物流子会社を次々に傘下へ入れてきた。2025 年には、ブリヂストンの物流子会社の 66.6% を約 80 億円で取得し、2026 年から連結した。メーカーの中で「経費」だった物流を、独立して稼げる会社にするのが社長の鎌田正彦氏のやり方だ。
二つ目の柱が不動産事業だ。土地を仕入れて大型の物流施設を建て、ファンドなどに売る「流動化」と、自社で貸す賃貸の二本立てになっている。2025 年は売上が約 190 億円で、営業利益は約 85 億円。つまり利益率が 4 割を超える。物流事業の売上は 4,600 億円で営業利益は 118 億円だから、小さな売上で大きな利益を生んでいる。
海外は国際物流が柱で、2025 年にオランダのブラックバードロジスティクスを子会社にした。EC(ネット通販)向けの物流も育てている。中計の売上目標(2030 年 7,000 億円)の中身は、3PL が約 4,000 億円、国際物流が約 900 億円、EC 物流が約 800 億円という見込みだ。
優良さと弱いところ
強みは「買って直す」仕組みだ。買った物流部門では、まず仕事を分析し、パートで足りる作業を洗い出す。浮いた社員を営業に回し、料金を適正に直す。この手順を何度も回してきた点は、他の同業にはない力だ。2024 年に 92 億円まで落ちた物流の営業利益が、2025 年に 118 億円へ戻ったのも、不採算拠点の整理と料金改定が効いた結果だ。
弱みは三つある。一つ目は、本業の利益率の低さだ。3PL は荷主との契約で料金が決まり、人件費が重く、値段を自分で決める力は強くない。二つ目は、利益の波だ。不動産の流動化益は、物件を売れた年に大きく出て、売れない年は消える。三つ目は財務で、自己資本比率は約 28%、純有利子負債は約 760 億円と軽くはない。
加えて、倉庫を借りて営む会社なので、家賃という「毎年払う約束」を抱える。借入と家賃の合計を見ると、見かけより財務の余裕は小さい。
経営は創業者の鎌田社長が率いる。判断が速く、失敗の責任を社長が負うと公言する点は、買収の連続を支える強みだ。反面、ひとりの手腕に頼る度合いが大きく、後継の道筋は見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内物流は「2024 年問題」を境に構造が変わった。トラック運転手の残業が年 960 時間に制限され、2025 年度の運転手不足は 20.8 万人、求人倍率は 2.49 倍まで上がった。運賃は上がりやすくなり、荷物の量が増えなくても単価で稼げる局面が続く。
3PL の市場は、中小事業者が多数残る分散した構造だ。大手が荷主の物流を丸ごと受ける動きが強まり、改正物流効率化法で大企業が物流の責任者(CLO)を置く義務も始まる。メーカーが自前の物流を見直し、外へ出す流れは、SBS にとって追い風になる。ライバルは、AZ-COM 丸和、センコー、山九、日本通運などだ。業界再編も活発で、AZ-COM 丸和が C&F ロジの買収を試みた件のように、同意のない買収の動きも出ている。
一方で、買い手が増えれば売り物の値段は上がる。メーカー物流の買収で旨みが出るのは、安く買えるうちだけだ。
不動産では、10 年国債が 3% まで上がる世界を考える必要がある。物流施設を買う投資家の利回りが上がれば、売値は下がる。SBS はここ数年、低金利のもとで売却益を積み上げてきた。この追い風が弱まる点を、筆者はいちばん気にしている。
資本政策と M&A
配当は、連結配当性向を 30% 台から 35% へ段階的に上げる方針とされる(会社資料で未確認の点は割り引いて読む)。2025 年 12 月期の配当は前の期から 3 割近く増え、性向は約 30% だった。2026 年は予想がさらに引き上げられた。自社株買いの実績は確認できていない。
お金の使い道は、買収と物流施設の開発が先で、株主への還元は後になる。2026 年の売上目標 5,800 億円のうち、半分近くは新規連結が押し上げる。中計では、売上 7,000 億円のうち約 600 億円を M&A で積む計画だ。
ブリヂストン物流のように、売り手が一部の株を残す形の買収も出てきた。残る持分は少数株主の取り分として利益から引かれる。
ガバナンスでは、親会社だった鎌田企画が保有株を一部売って、その他の関係会社の扱いになった。創業者が経営を握る構図は続くが、持株比率の詳細は確認できていない。会社そのものが買われる可能性は、時価総額と創業者の存在を考えると高くない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買収の腕は本物だ。リコー、東芝、日本精工、ブリヂストンと、大手メーカーが自らの物流子会社を預ける相手に選んでいる。買った先でパート活用と料金改定を進め、物流の営業利益は 2024 年の 92 億円から 2025 年に 118 億円へ増えた。2026 年上期も物流の営業利益は 7 割以上伸びた。
物流効率化法でメーカーに物流の責任者が置かれ、自前の物流を外へ出す動きが強まる。売り物はこれから増える。冷凍倉庫の需要も増え、利益率の高い分野が育つ。
不動産は、16 万坪分の用地を仕込み済みで、これから 3 年は開発が続く。オランダのブラックバードも好調で、2027 年に倉庫を拡張する。会社は 2030 年に売上 7,000 億円、物流の営業利益率 4.5%、ROE 14% 台という計画を出した。利益率が 4.5% に届けば、物流だけで 300 億円を超える営業利益が見える。上期の勢いを見る限り、通期予想の 265 億円は十分に達成できる水準だ。
慎重な見方
営業利益の 4 割を不動産に頼る構図は不安定だ。2026 年上期は、不動産の営業利益が前年同期の 6 倍に膨らみ、全体の利益を押し上げた。この水準が毎年続くはずはない。流動化は、物件が売れた年だけ利益が出る一回限りの稼ぎで、金利が上がれば買い手の利回りも上がり、売値が下がる。
本業の 3PL は利益率が 2〜3% 台で、荷主の入札や運賃の下落に弱い。会社が掲げる 4.5% は、2025 年の 2.6% から一気に 2 ポイント近い上昇を求める。買収した先のメーカーが物流を切り替える可能性もあり、契約は永続しない。
財務も軽くない。自己資本比率は約 28%、純有利子負債は約 760 億円で、借入の借り換えは金利が上がった状態で行われる。倉庫の借りの家賃も固定費として残る。買収の連続で売上は伸びたが、買った会社の価格が高くなれば、他社と同じ減損の痛みを味わう。社長ひとりの判断に頼る度合いも大きい。
どちらに重みを置いたか
本業の改善と買収の力は本物だ。強気の見方は、物流の利益率の上昇について正しい。ただ、利益の質と財務の薄さを突く慎重な見方のほうが、10 年の価値を決める力は強い。確率は中立を最も厚く置き、悲観側に 33% を置いた。ROE は 10% 台前半にとどまり、k 7% を少し上回る程度で、倍率は上限の 8 割までしか置けない。総合で約 −35% の割高になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 8,142 円3,234 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,593 円633 億円)。 今の値に割り戻すと 5,275 円2,095 億円、今との差 −9.4%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 16,263 円6,459 億円 | 2,316 円920 億円 | +219.2% | +12.3% | 1,672 円664 億円 |
| やや楽観 | 23% | 11,617 円4,614 億円 | 1,914 円760 億円 | +132.5% | +8.8% | 3,112 円1,236 億円 |
| 中立 | 35% | 9,125 円3,624 億円 | 1,788 円710 億円 | +87.5% | +6.5% | 3,819 円1,517 億円 |
| やや悲観 | 21% | 3,223 円1,280 億円 | 1,158 円460 億円 | −24.7% | −2.8% | 920 円365 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,132 円450 億円 | 629 円250 億円 | −69.7% | −11.3% | 211 円84 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,142 円3,234 億円 | 1,593 円633 億円 | +67.3% | +5.3% | 9,735 円3,867 億円 |
今の株価時価総額 5,820 円2,312 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 買収と料金改定が噛み合い、計画の利益率に届く 利益 336 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 16,263 円6,459 億円
メーカーの物流部門の買収が毎年のように続く。物流効率化法で大企業に物流の責任者を置く義務が生まれ、手放す側の背中を押す。買った先ではパートの活用と料金改定が進み、3PL の利益率は計画の 4.5% を超える。
不動産は、開発した物流施設を売る流れが途切れず、用地の仕込みが回り続ける。海外はオランダのブラックバードを足がかりに欧州の別の地域へ広がる。借入は膨らむが、利益の伸びがそれを上回る。
10 年後は売上 1 兆円に近づき、日本通運などと同じ土俵で語られる会社になる。それでも運賃の市況と不動産の買い手の資金に左右される体質は残る。
- 物流事業(3PL・国際物流・EC 物流):数量 15.5(年間の取扱物量(百万トン換算・推定))× 価格 6.44(1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価))→ 売上 9,986 億円・営業利益 479 億円。取扱 1.55 倍(買収込み)・単価 1.40 倍・利益率 4.8%
- 不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸):数量 1.8(流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定))× 価格 200(1 坪あたり年間収入(万円))→ 売上 361 億円・営業利益 144 億円。流動化の量 1.5 倍・価格 1.30 倍・利益率 40%
- その他事業:数量 12.0(取引件数(千件・推定))× 価格 1.51(1 件あたり収入(百万円))→ 売上 181 億円・営業利益 9 億円。数量 1.2 倍・価格 1.40 倍・利益率 5%
倍率:事業の純利益 336 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.18 倍、時価総額 6,444 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流の利益率を 4.5% 超まで上げ、不動産も落とさずに 10 年続ける必要がある。実績は途中まで積んでいるが、全部がそろう確率は高くない。
やや楽観 23% 3PL の利益率が 4% 台に乗り、不動産も底堅い 利益 257 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 11,617 円4,614 億円
買収は続くが、毎年ではなく数年に一度の大型案件にとどまる。物流の利益率は料金改定と不採算拠点の整理で 4% 台に乗る。冷凍倉庫やヘルスケアなど、利益の厚い分野の比重も増える。
不動産は用地の仕込みを活かして流動化を続けるが、金利の上昇で物件の売値が伸びにくく、利益は緩やかな増加にとどまる。海外はブラックバードの拡張が実り、収益の柱の一つになる。
会社の中期計画には届かないが、売上は 8,000 億円台、物流の利益率は計画の 9 割という手堅い 10 年になる。ブリヂストン物流の統合も計画どおりに進み、毎年の利益が積み上がっていく。
- 物流事業(3PL・国際物流・EC 物流):数量 14.0(年間の取扱物量(百万トン換算・推定))× 価格 6.30(1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価))→ 売上 8,827 億円・営業利益 362 億円。取扱 1.40 倍・単価 1.37 倍・利益率 4.1%
- 不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸):数量 1.6(流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定))× 価格 193(1 坪あたり年間収入(万円))→ 売上 312 億円・営業利益 119 億円。流動化の量 1.35 倍・価格 1.25 倍・利益率 38%
- その他事業:数量 10.5(取引件数(千件・推定))× 価格 1.48(1 件あたり収入(百万円))→ 売上 155 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・価格 1.37 倍・利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 257 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.84 倍、時価総額 4,585 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の過去の実績(物流の営業利益が 2024 年の 92 億円から 2025 年の 118 億円へ 3 割近く増えた)が続く形で、強気に近い見立てとして厚めに置いた。
中立 35% 中立:買収は続くが、物流の利益率は 3% 台半ばまで 利益 210 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 9,125 円3,624 億円
物流の本業は、料金改定と拠点の整理で利益率を 2.6% から 3% 台半ばまで上げる。会社が掲げる 4.5% には届かない。荷物の量は、ブリヂストン物流の連結と新規の受託で 3 割ほど増えるが、人口減で既存の荷動きは細る。
不動産は、金利が上がるなかで物件の売値が物価ほど伸びず、利益は 100 億円強で横ばいになる。用地の仕込みは活きるが、買い手が付く条件は厳しくなる。
売上は 8,000 億円台、営業利益は 400 億円前後。会社の計画より緩やかだが、買収のたびに利益が積み上がる構造は保たれる。借入はやや増えるが、利払いは今より重い。
- 物流事業(3PL・国際物流・EC 物流):数量 13.0(年間の取扱物量(百万トン換算・推定))× 価格 6.17(1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価))→ 売上 8,017 億円・営業利益 289 億円。取扱 1.30 倍(買収込み)・単価 1.34 倍・利益率 3.6%
- 不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸):数量 1.6(流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定))× 価格 193(1 坪あたり年間収入(万円))→ 売上 301 億円・営業利益 108 億円。流動化の量 1.3 倍・価格 1.25 倍・利益率 36%
- その他事業:数量 10.0(取引件数(千件・推定))× 価格 1.45(1 件あたり収入(百万円))→ 売上 145 億円・営業利益 6 億円。数量・価格とも物価並み・利益率 4%
倍率:事業の純利益 210 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.08 倍、時価総額 3,587 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本業の 3PL は着実に改善する一方、不動産の利益は金利と買い手の資金に左右される。両方の見立てを合わせた中心の置き方。
やや悲観 21% 買収の相手が見つからず、物流の利益率は 3% 割れで停滞 利益 124 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 3,223 円1,280 億円
メーカーの物流部門の売り物が減るか、売り手が値段を吊り上げ、買収の旨みが薄れる。3PL は荷主の入札で料金が抑えられ、料金改定の効果が頭打ちになる。物流の利益率は 3% を割る。
不動産は金利の上昇で物件の売値が伸び悩み、流動化を急ぐと利益率が落ちる。賃貸は残るが、利益は今の 6 割ほどにとどまる。
借入の利払いは重くなり、純利益の伸びは小さい。ROE は 7% を割り、資本コストを下回る。それでも黒字は続き、配当も守られる。不動産の用地は一部が塩漬けになるものの、賃貸の収入が下支えとなり、会社が傾くほどの傷にはならない。物流事業の売上は 6,700 億円ほどで、今より 4 割増にとどまる。
- 物流事業(3PL・国際物流・EC 物流):数量 11.2(年間の取扱物量(百万トン換算・推定))× 価格 5.98(1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価))→ 売上 6,701 億円・営業利益 188 億円。取扱 1.12 倍・単価 1.30 倍・利益率 2.8%
- 不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸):数量 1.2(流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定))× 価格 162(1 坪あたり年間収入(万円))→ 売上 194 億円・営業利益 54 億円。流動化の量は横ばい・価格 1.05 倍・利益率 28%
- その他事業:数量 9.5(取引件数(千件・推定))× 価格 1.40(1 件あたり収入(百万円))→ 売上 133 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・利益率 3.5%
倍率:ROE 6.5% は k 7% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。買収が止まり、利益の質も低い筋書きなので、上限の 7 割に届かない 8.5 倍に置いた。
確率:ブリヂストン物流のような案件は毎年出るわけではない。不動産の買い手が細る可能性もあり、強気の見立てより少し重く置いた。
悲観 12% 不動産の買い手が消え、3PL も安売りに追い込まれる 利益 24 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,132 円450 億円
金利が 3% 台に定着し、物流施設を買う投資家の利回りが上がる。売り先が細り、開発した施設が手元に残る。用地の仕込みが重荷になり、売却の値引きや評価損が出る。
3PL では、買収したメーカー系の荷主が内製化や他社への切り替えを進め、取扱量が減る。料金は入札で押され、物流の利益率は 1% 台に落ちる。借りている倉庫の家賃は残り、固定費が利益を食う。
営業利益は 70 億円ほどにとどまる。この筋書きでは、稼ぐ力では会社を支えきれず、持っている物流施設と用地の売却額が価値の下限になる。買収の連続で膨らんだ借入の返済が優先され、株主への還元は大きく細る。
- 物流事業(3PL・国際物流・EC 物流):数量 9.5(年間の取扱物量(百万トン換算・推定))× 価格 5.29(1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価))→ 売上 5,028 億円・営業利益 60 億円。取扱 0.95 倍・単価 1.15 倍・利益率 1.2%
- 不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸):数量 0.7(流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定))× 価格 139(1 坪あたり年間収入(万円))→ 売上 100 億円・営業利益 10 億円。流動化の量 0.6 倍・価格 0.9 倍・利益率 10%
- その他事業:数量 8.0(取引件数(千件・推定))× 価格 1.24(1 件あたり収入(百万円))→ 売上 99 億円・営業利益 3 億円。数量 0.8 倍・価格 1.15 倍・利益率 3%
倍率:稼ぐ力(純利益 ÷ k)では測れない年なので、売れる資産の税後 450 億円(floor_assets_oku)を時価総額に置いた。今の自己資本 967 億円に対する PBR は 0.47 倍。
確率:買収の失敗、大口荷主の離脱、不動産市況の悪化が重なる構造的な負け。借入が多く、リースの約束も重いため、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流事業(3PL・国際物流・EC 物流)
メーカー系の物流子会社を買って育てる 3PL が中心。国際物流(ブラックバード)と EC 物流も含む。
| 数量年間の取扱物量(百万トン換算・推定) | 価格1 トンあたり収入(万円。倉庫・荷役・輸送を合わせた単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 4.60 | 4,602 | 118 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 6.17 | 8,017 | 289 |
取り方:物流事業の売上約 4,602 億円(2025 年 12 月期)を、倉庫の入出庫と輸送を合わせた取扱物量約 1,000 万トン(推定)で割った 1 トンあたり収入。メーカー系の電機・医療機器などの高い付加価値の荷物が多いため、一般貨物より単価は高い。数量は買収と新規の受託で増え、単価は料金改定で上がる。
不動産事業(物流施設の開発・流動化・賃貸)
土地を仕入れて物流施設を建て、ファンドなどに売る流動化と、自社で貸す賃貸。
| 数量流動化と賃貸の対象面積(万坪・年間の売却と賃貸の合計相当、推定) | 価格1 坪あたり年間収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.2 | 154 | 185 | 85 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 193 | 301 | 108 |
取り方:不動産事業の売上(資料で 179〜193 億円と幅があり、約 185 億円を置いた)を、売却と賃貸の対象面積 1.2 万坪(推定)で割った 1 坪あたり収入。営業利益は約 81〜91 億円で幅があり、85 億円とした。流動化の量は年によって大きく動く。
その他事業
物流に付随する機器販売・サービスなど。規模は小さい。
| 数量取引件数(千件・推定) | 価格1 件あたり収入(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 1.08 | 108 | 6 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 1.45 | 145 | 6 |
取り方:その他事業の売上約 108 億円を、取引件数約 1 万件(推定)で割った 1 件あたり収入。利益はほとんど出ていない。
リスクと懸念
不動産の流動化益の波と金利
営業利益の約 4 割を不動産事業が稼ぐ。2026 年上期は、不動産の営業利益が前年同期の 6 倍に膨らんだ。物件を売れた年だけ出る利益で、10 年国債が 3% に上がれば買い手の利回りも上がり、売値は下がる。開発した施設が売れず手元に残れば、借入が膨らむ。
買収の価格と後処理
メーカーの物流子会社の買収は、売り手が増えれば値が上がる。高値で買えば、のれんの減損が出る。ブリヂストン物流のように売り手が一部の株を残す形では、残る持分は少数株主の取り分として利益から引かれる。2026 年の売上の伸びは、新規連結に頼る部分が大きい。
3PL の薄い利益率と料金の力
物流事業の営業利益率は 2.6% で、料金が少し崩れれば利益は消える。荷主の入札や運賃の下落、人件費の上昇が重なると、会社が掲げる 4.5% は遠のく。物流の利益は 2024 年に 92 億円まで落ちた実績がある。
借入とリースの固定費
自己資本比率は約 28%、純有利子負債は約 760 億円。借入は借り換えのたびに新しい金利になり、利払いは重くなる。借りている倉庫の家賃も毎年必ず払う約束で、売上が落ちても減らない。新リース会計基準(12 月決算なら 2028 年 12 月期から)で、借金に近い負債として貸借対照表に載る。
大口荷主の離脱
買った物流子会社の荷主は、親会社だったメーカーが中心になる。メーカーが自前に戻す、あるいは他社へ切り替えれば、取扱量は減る。3PL の契約は長期でも、永続の約束ではない。
社長への依存
買収と経営判断の速さは、創業者の鎌田社長の手腕に支えられている。後継の道筋が見えにくく、判断を誤った時の歯止めも弱い。持株比率などガバナンスの詳細は、筆者は確認できていない。
今後の分かれ目
- 2026 年の通期で、不動産を除いた物流の営業利益が 170 億円を超えたら
- 物流の利益率の改善が本物とみて、やや楽観と楽観の確率を上げる。不動産の波を除いても、会社の計画に近い道筋が見えることになる。
- 不動産の流動化が止まり、営業利益が 2 年続けて 50 億円を下回ったら
- 利益の質が崩れたとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。開発した施設が手元に残るかどうかを、借入の増え方と合わせて確かめる。
- メーカー系の大型買収が毎年のペースで続き、買収額が利益の 10 倍台以下に収まったら
- 買収の規律が保たれているとみて、中立の売上の伸びを引き上げる。逆に値段が上がり続けるなら、確率を悲観側へ寄せる。
- 10 年国債の利回りが 4% を超えて長く続いたら
- 不動産の売値が下がり、利払いも増える。不動産の利益と純利益の前提を下方修正する。
- オランダのブラックバードに続く、欧州での追加の案件が決まり、利益に貢献したら
- 国際物流の売上比率が上がり、利益の分散が進むとみて、強気寄りに重みを移す。
- 配当性向が 35% に達し、自社株買いも始まったら
- 還元の前提を引き上げる。ただし、買収と開発への投資が優先される構図が変わるかも合わせて見る。
見ておくもの
- 四半期ごとの不動産事業の営業利益と、開発物件の売却(流動化)の件数
- 物流事業の営業利益率(2.6% から計画の 4.5% へ)の進み方
- ブリヂストン物流・ブラックバードなど新規連結先の利益への貢献
- 純有利子負債と自己資本比率、借りている倉庫のリースの約束の大きさ
倍率と資本コストの決め方
売上は 3 つの事業の数量と名目の単価に分けて積み、倍率は利益ベースの正当化 PER(=(1−g÷RONIC)÷(k−g))を上限にした。k は基本 7.5% に quality +0.5%(循環 +0.25・借金 +0.25)で 8.0%。残る割合は普通の 1/2(moat normal)。中立の ROE は約 10.5% で k を少し上回るが、不動産の利益の波と薄利の 3PL を理由に上限の 8 割に置き、楽観は 8.5 割、やや悲観は 7 割に届かない値にした。悲観は稼ぐ力でなく売れる資産の税後(推定 約 450 億円、簿価の内訳は未確認)を床にした。純有利子負債は今の時価総額の約 34%、EV÷営業利益は今の予想でも約 10 倍で、中立の倍率の根拠には使っていない。今の株価に寄せる調整はしていない。新リース会計では、営業利益が少し増え、リース負債が借金のように載る形に変わるが、10 年後の数字は家賃を費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→19.18 倍・やや楽観 PER 11.8→17.84 倍・中立 PER 11.3→17.08 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.5% = 8.0%。同じ領域では、ヤマトや NX の 8.5%、SG や山九の 7.5〜7.8% の間に置いた。借金の重さと不動産の波を見て、SG より少し高くした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。