結論
ハマキョウレックスは、荷主の物流センターを丸ごと運営する 3PL(物流の一括受託)の専業大手だ。売上の 6 割強をセンター運営が占め、営業利益では 9 割近くを稼ぐ。残りは特積み(路線便)の近物レックスを中心とする運送で、利益は薄い。筆者の結論は、事業の質は高いが値段に安全域はなく、10 年で測るとやや割高から適正の境目、というものだ。
強みは、20 年赤字がない安定感と、毎期 15 社前後の新規受託を積む営業力だ。パートの人員を物量に合わせて増減させ、毎日の収支を現場で締める。この運営が、センター事業の 13% 近い利益率を支えている。中計の営業利益目標は 1 年前倒しで達成した。
ただ、利益の伸びは 10 年で年 4〜5% と見る。センターの数は増えるが、契約は人件費の転嫁が中心で、利益率を大きく押し上げる余地は小さい。賃借センターの家賃は固定の約束で、不況では重しになる。自己資本は利益をためて厚くなり、ROE は 11% から 9% 前後へ下がる。事業は良くても、株主の取り分は薄まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が見るのは、10 年後も同じ顔で稼いでいるかどうかだ。ハマキョウの 3PL は、荷主の現場に入り込み、毎日の物量を請け負う仕事だ。一度根づけば契約は続きやすい。景気の波も小さい。この点は評価する。
ただ、持ち続けたい会社かというと、条件が付く。ROE は 11% 前後で、資本コストを 3 ポイントほど上回る。良い水準だが、突出した堀の裏づけとまでは言えない。稼ぎの約 6 割を社内に残す方針なので、自己資本が積み上がり、ROE は 9% 前後へ薄まる。残した利益が資本コストを超えて稼ぎ続けて初めて、その利益に価値がある。
安全域でいえば、純有利子負債ゼロと 20 年無赤字は強い。一方、家賃の固定費と人件費の上昇は、需要が崩れた時に利益率を一気に削る。悲観の時の床は、自社センターの資産と稼ぐ力で、今の時価総額の 4 割ほどだ。
払う値段としては、中立の価値が今の値段にほぼ並ぶ。悪い会社ではないが、安全域を厚く取りたい人には物足りない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は物流センター事業だ。2026 年 3 月期の売上は約 1,009 億円、営業利益は約 131 億円で、利益率は 13% に届く。荷主が持つ商品の入荷・保管・仕分け・出荷を、センターごと請け負う。荷主はアパレル・食品・日用品・医薬・EC など幅広い。センターは全国に 194 か所あり、賃借の方が自社所有より多い。顧客は関東から近畿に集まる。
契約は荷主ごとの運営受託だ。人件費や賃料の上昇を料金に転嫁しやすい形と筆者は見るが、細目は開示されていない。収益を守る仕組みは現場にある。日々の物量に合わせて人員を増減し、拠点ごとに日計で収支を締める。直近の新規受託 16 社のうち 15 社が稼働し、残る 1 社は 2026 年度中の稼働を準備している。
運送は貨物自動車運送事業で、売上は約 546 億円、営業利益は約 17 億円(利益率 3%)だ。中心は特積み(複数荷主の荷物を混載して路線で運ぶ)の近物レックスで、2004 年に近鉄物流を TOB で取得した会社になる。赤字の会社を黒字に直すのに 5〜6 年かかった。今はセンターの荷物を自社便で運ぶ内部取引を増やし、積載率を上げようとしている。
優良さと弱いところ
堅実さは 20 年の実績が示す。赤字の期は一度もなく、営業利益率は 2000 年代の 3〜6% から直近の 9.5% まで段階的に上がってきた。純有利子負債はほぼゼロで、営業利益は支払利息の 50 倍を超える。
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、広くない。荷主の物流を読んで提案する力と全国の拠点網は武器だが、3PL にはロジスティード、センコー、SBS、ニッコンなどが同じ荷主を狙う。契約を切り替える時、荷主は価格で選びやすい。筆者は堀を普通と見る。
資本の使い方は悪くない。M&A は近鉄物流のほか JAL ロジスティクス、JTB 物流サービスなど、事業を足す買い方が中心だ。のれんが膨らんで経営を揺らす規模ではない。ただ、自己資本比率は 57% と厚く、配当性向は連結で 3 割弱にとどまる。ためた利益を高い稼ぎで回し続けられるかが、これからの問いになる。
弱いのは人への依存だ。現場はパートが多く、最低賃金の上昇は毎年効く。荷主が値上げを受け入れなければ、利益率はすぐに削られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の物流は、荷物の量が増えず、運び手が足りない市場だ。宅配便は 10 年連続で過去最多だが、伸びは年 1% に満たない。人口が減る中で、数量は 10 年でほぼ横ばいか、小さな増加と見る。
値段は別だ。2024 年問題(ドライバーの残業規制)で運び手が足りなくなり、標準的な運賃は約 8% 上がった。荷待ちが長い場合の割増も定まり、荷主は運賃を上げる側に回った。ドライバー不足は 2025 年度に約 21 万人とされる。人件費が物価を上回る局面では、転嫁できる会社が勝つ。
3PL は競争が分散している。ヤマト・佐川・日本郵便が握る宅配の寡占と違い、センター運営は大手から中堅、地場まで多数が戦う。荷主は複数社に見積もりを取るのが普通だ。再編も進む。SBS はブリヂストンの物流子会社を取り込み、AZ-COM 丸和は C&F ロジに同意なき TOB を仕掛けた(SG の対抗で不成立)。
自動化は追い風にも向かい風にもなる。搬送ロボを入れられる会社は人手を減らして利益率を保てる。一方で、荷主が自社で自動化して内製に戻す動きも出うる。10 年の需要は底堅いが、競争は強まると見る。
資本政策と M&A
資本政策は慎重で、成長を優先する。配当は 19 期連続で増やし、2027 年 3 月期の予想はさらに 1 割ほど増える。連結の配当性向は 3 割弱だ。自社株買いの実績は確認できなかった。利益の使い道は、新センターの建設、拠点の買い取り、自動化に向く。
中計(2024〜2026 年度)は 3 年で 360 億円を投じ、約 7 割を成長投資にあてる。営業利益の目標 147 億円は 1 年早く超えた。次の中計で、投資の規模と還元の厚みがどう決まるかが注目点だ。
筆頭株主はエムエフカンパニーで約 12%。大須賀正孝会長と大須賀秀徳社長の持ち分は各 2〜3% だ。筆頭株主と両氏を合わせて 2 割弱を持つ。10 年以内に TOB を受ける確率は、kabufu の試算で約 2 割と出る。
リースも見ておく。賃借センターの家賃は毎年払う固定の約束だ。有利子負債がほぼゼロでも、見かけほど身軽ではない。新リース会計(2028 年 3 月期から)が始まれば、家賃に当たる負債が BS に載る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
センター事業の利益率は 13% と同業でも高く、運営の仕組みが効いている。物量に合わせた人員の増減と日計収支で、荷主の物量が変わっても利益が守られる。毎期 15 社前後の新規受託を積む営業力があり、中計では営業利益の目標を 1 年早く達成した。
2024 年問題は追い風だ。運び手が足りない中で、荷主は自前で物流を回せなくなり、3PL に任せる流れが続く。ハマキョウは全国 194 か所の拠点網を持ち、空きが出れば近隣の拠点から荷主を移せる。新センターと搬送ロボへの投資で、人手を減らしながら受託を増やせる。
運送では近物レックスの採算が上がる。グループ内の荷物を自社便に載せれば積載率が上がり、利益率は 3% から 6% 台まで伸びうる。
財務は純有利子負債ゼロで、M&A に使う余力がある。配当は 19 期連続で増え、還元が厚くなれば ROE も上がる。10 年で売上が 2 倍、利益が 2 倍強になる筋書きは、十分に現実的だ。
慎重な見方
成長は 3PL の新規受託に頼るが、この市場は参入が多く、荷主は複数社に見積もりを取る。ロジスティード、センコー、SBS などの大手が自動化と M&A で攻めれば、新規案件の利益率は下がる。センターの利益率 13% は同業でも高い方で、10 年先に守れる保証はない。
人件費の上昇は毎年効く。最低賃金とパートの時給が物価を上回れば、荷主への転嫁が遅れた分だけ利益が削られる。契約の更改で荷主が値下げを求める場面も増える。
近物レックスは利益率が 3% と薄い。運賃の値上げが一巡すれば 2024 年問題の追い風は消え、固定費の重い特積みは景気で振れる。中計の貨物の利益目標は未達だった。
投資の負担も重い。3 年で 360 億円の投資は、新センターの稼働が遅れれば減価償却だけが先に出る。賃借センターの家賃は固定の約束で、荷主が撤退すれば空きが固定費として残る。自己資本は積み上がる一方で ROE は下がり、利益が伸びても価値は増えにくい。
どちらに重みを置いたか
中立がいちばん強いと見て、確率は 37% に置いた。センターの利益率と新規受託の勢いは、実績が裏づける。ただ、成長は物価と受託の増加の範囲にとどまり、ROE は自己資本の積み上がりで 9% 前後に下がる。やや悲観と悲観を合わせて 3 割ほど残し、楽観側は 3 割強とした。事業の安定は、資本コストの差ですでに織り込んである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,490 円2,587 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 638 円473 億円)。 今の値に割り戻すと 2,183 円1,618 億円、今との差 +14.6%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,983 円4,436 億円 | 902 円669 億円 | +261.6% | +13.7% | 620 円459 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,827 円3,579 億円 | 771 円572 億円 | +194.0% | +11.4% | 1,288 円955 億円 |
| 中立 | 37% | 3,851 円2,856 億円 | 662 円491 億円 | +137.1% | +9.0% | 1,670 円1,238 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,635 円1,212 億円 | 495 円367 億円 | +11.9% | +1.1% | 447 円332 億円 |
| 悲観 | 10% | 727 円539 億円 | 303 円225 億円 | −45.9% | −6.0% | 103 円76 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,490 円2,587 億円 | 638 円473 億円 | +116.8% | +8.0% | 4,128 円3,060 億円 |
今の株価時価総額 1,904 円1,412 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 9% 3PL の受託が加速し、センターと運送の利益率がともに上がる 利益 245 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 5,983 円4,436 億円
10 年後、ハマキョウのセンターは 300 か所に近づいている。毎期 15 社前後の新規受託を取り続け、荷主が物流を丸ごと任せる流れが 2024 年問題の後も続いた。搬送ロボと画像認証の導入で人手を減らし、センターの利益率は 14% まで上がる。
運送では、センターの荷物を自社便に載せる内部取引が広がり、積載率が上がる。運賃は物価より速く上がり、近物レックスの利益率は 6% 台に乗る。
事業の稼ぎは 10 年で 2 倍強になり、ためた自己資本の上でも ROE は 12% 近くを保つ。大型の M&A に頼らず、自力の成長で優良さが磨かれた姿だ。
- 物流センター事業(3PL):数量 301(運営する物流センターの数(か所))× 価格 7.28(1 センターあたり年間収入(億円))→ 売上 2,190 億円・営業利益 307 億円。センター数 1.55 倍(受託の加速)・料金 1.40 倍・利益率 14%
- 貨物自動車運送事業(近物レックス等):数量 263(取扱量(万トン、推定))× 価格 3.27(1 トンあたり収入(万円))→ 売上 859 億円・営業利益 56 億円。取扱 1.05 倍・運賃 1.50 倍・利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 245 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.8 倍、時価総額 4,361 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:毎期 15 社の新規受託と自動化投資がうまく回り、運送の採算も 6% 台に乗る筋書き。実績の勢いはあるが、競争の強さを考えて 1 割未満に置いた。
やや楽観 23% 受託が続き、利益率が小幅に上がる 利益 202 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 4,827 円3,579 億円
10 年後も、新規受託が毎年積み上がる。センターは 275 か所ほどになり、荷主の物流の外注化が追い風になった。賃金上昇は運賃と料金にほぼ転嫁でき、センターの利益率は 13% 台に小幅に上がる。
運送は積載率の改善で利益率が 5% 台に乗る。中計で示した目標を、次の中計も着実に超えていく流れだ。
利益は 10 年で 2 倍弱になる。ROE は自己資本の積み上がりで 10% 前後まで下がるが、資本コストを 3 ポイントほど上回る水準を保つ。
新センターの稼働が遅れる年はあっても、赤字の年は出ない。近物レックスの黒字化を経験した経営が、買収に走らず自社拠点への投資を続けることで、20 年の実績が延びた姿になる。
- 物流センター事業(3PL):数量 276(運営する物流センターの数(か所))× 価格 7.13(1 センターあたり年間収入(億円))→ 売上 1,963 億円・営業利益 261 億円。センター数 1.42 倍・料金 1.37 倍・利益率 13.3%
- 貨物自動車運送事業(近物レックス等):数量 250(取扱量(万トン、推定))× 価格 3.12(1 トンあたり収入(万円))→ 売上 780 億円・営業利益 43 億円。取扱 1.00 倍・運賃 1.43 倍・利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.15 倍、時価総額 3,464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の達成実績が続き、物価の転嫁もできる筋書き。実績に最も近い上振れで、中立の次に厚く置いた。
中立 37% 堅実に増収増益、ただし ROE は 9% 前後に薄まる 利益 166 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 3,851 円2,856 億円
10 年後、センターは 250 か所ほどに増え、運営の仕組みは変わらず効いている。ただ、新規受託の利益率は既存より低く、全体の利益率は 12〜13% にとどまる。人件費は料金にほぼ転嫁でき、利益は売上と同じ速さで伸びる。
運送は、運賃の値上げが一巡し、利益率が 4% 台に乗る程度。近物レックスは相変わらず薄利だが、赤字になる年はない。
利益は 10 年で 5 割ほど増える。ためた利益の約 6 割を社内に残すため、自己資本は 1,850 億円ほどに積み上がり、ROE は 9% 前後に下がる。20 年無赤字の優良企業が、そのまま成熟していく姿だ。
- 物流センター事業(3PL):数量 252(運営する物流センターの数(か所))× 価格 6.97(1 センターあたり年間収入(億円))→ 売上 1,758 億円・営業利益 220 億円。センター数 1.30 倍・料金 1.34 倍(物価並み)・利益率 12.5%
- 貨物自動車運送事業(近物レックス等):数量 245(取扱量(万トン、推定))× 価格 3.06(1 トンあたり収入(万円))→ 売上 749 億円・営業利益 34 億円。取扱 0.98 倍(人口減)・運賃 1.40 倍(人手不足で物価より速い)・利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.34 倍、時価総額 2,712 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量と価格の中心値(センター数は年 2.7% 増、価格は物価並み)に、利益率はほぼ現状を保つ。2 人の議論の落としどころ。
やや悲観 21% 競争と人件費で利益が足踏みする 利益 109 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,635 円1,212 億円
10 年後、新規受託の取り合いが厳しくなっている。ロジスティードやセンコー、SBS が自動化と M&A で攻め、荷主は複数社に見積もりを取るのが当たり前になった。ハマキョウはセンターの数は増やすが、取れる案件の利益率は下がり、全体では 10% 台前半まで落ちる。
人件費の上昇に料金の改定が追いつかず、価格の伸びは物価を下回る。運送でも運賃の値上げが一巡して、利益率は 3% で足踏みする。
利益は今とほぼ同じ水準で横ばいになる。実質では減益だ。自己資本は積み上がり、ROE は 6〜7% に下がる。
- 物流センター事業(3PL):数量 217(運営する物流センターの数(か所))× 価格 6.76(1 センターあたり年間収入(億円))→ 売上 1,469 億円・営業利益 154 億円。センター数 1.12 倍・料金 1.30 倍(転嫁の遅れ)・利益率 10.5%
- 貨物自動車運送事業(近物レックス等):数量 225(取扱量(万トン、推定))× 価格 2.84(1 トンあたり収入(万円))→ 売上 638 億円・営業利益 19 億円。取扱 0.90 倍・運賃 1.30 倍・利益率 3.0%
倍率:ROE 6.5% は k 7.25% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回り、PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。利益が横ばいで競争が強いので、上限の 7.4 割の 9.5 倍に置いた。
確率:新規案件の利益率が下がり、人件費の転嫁が遅れる筋書き。3PL の競争の強さと近物レックスの薄い採算を考え、やや厚めに置いた。
悲観 10% 荷主の内製化と価格競争で、優良さを失う 利益 43 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 727 円539 億円
10 年後、優良さを失っている。大口の荷主が自社で自動化して内製に戻し、残った荷主にも大手が低い価格で攻める。ハマキョウはセンターを減らし、数量は今の 9 割台に縮む。センター利益率は 6% まで下がる。
家賃は固定の約束で、荷主が減っても払い続ける。空きの出たセンターが固定費として重くのしかかる。運送でも近物レックスの利益はほぼゼロになる。
稼ぐ力は今の 4 割に落ち、ROE は 3% を割る。含み益のある自社センターを売って対応するが、売れる資産の価値が時価総額の下支えになる程度だ。
配当は削らざるをえず、還元は今の水準の半分ほどに落ちる。利益が積み上がらないので、自己資本の増え方も鈍る。優良企業という評価は、普通の物流会社の水準まで後退する。
- 物流センター事業(3PL):数量 184(運営する物流センターの数(か所))× 価格 6.24(1 センターあたり年間収入(億円))→ 売上 1,150 億円・営業利益 69 億円。センター数 0.95 倍(荷主の内製化)・料金 1.20 倍(価格競争)・利益率 6%(家賃が固定費で残る)
- 貨物自動車運送事業(近物レックス等):数量 200(取扱量(万トン、推定))× 価格 2.51(1 トンあたり収入(万円))→ 売上 502 億円・営業利益 3 億円。取扱 0.80 倍・運賃 1.15 倍・利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力(純利益約 43 億円÷k で約 555 億円)と、売れる資産の税後(floor_assets_oku)の大きい方を下限の目安にした。ROE が 3% を割る筋書きで、今の自己資本 980 億円に 0.55 倍を掛けた。
確率:荷主の離脱と価格競争で優良さが構造的に崩れる筋書き。20 年赤字がなかった実績と純有利子負債ゼロから、1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流センター事業(3PL)
荷主の物流センターを運営し、入荷・保管・仕分け・出荷を請け負う事業。
| 数量運営する物流センターの数(か所) | 価格1 センターあたり年間収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 194 | 5.20 | 1,009 | 131 |
| 10 年後 中立 | 252 | 6.97 | 1,758 | 220 |
取り方:物流センター事業の売上 1,009 億円を、運営する物流センター 194 か所(2026 年 3 月)で割った 1 か所あたり年間収入 5.2 億円。数量は新規受託でセンター数が増える(直近の新規受託 16 社)。センターの大きさの差は価格に混ざる。料金は人件費や賃料に連れて改定され、物価並みに上がると置く。
貨物自動車運送事業(近物レックス等)
特積み(混載の路線便)と貸切便。近物レックスが中心。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格1 トンあたり収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 2.18 | 546 | 17 |
| 10 年後 中立 | 245 | 3.06 | 749 | 34 |
取り方:貨物自動車運送事業の売上 546 億円を、特積みと貸切便の取扱量およそ 250 万トン(推定)で割った 1 トンあたり収入。開示が無いので推定で、近物レックスの特積みが中心。数量は人口減で横ばいから微減、運賃は 2024 年問題で物価より速く上がる局面にある。
リスクと懸念
人件費の転嫁が遅れる
現場はパートが多く、最低賃金の上昇が毎年効く。荷主が料金の改定を渋れば、利益率は先に削られる。センターの利益率 13% は、人件費が物価並みに転嫁できる前提で成り立っている。
大口荷主の撤退や内製化
3PL の売上は荷主ごとのセンターに紐づく。大口の荷主が契約を切り替えたり、自社で自動化して内製に戻したりすれば、センターごと売上が消える。賃借なら家賃だけが残る。
近物レックスの採算
特積みは固定費が重く、利益率は 3% と薄い。中計の貨物の利益目標 22 億円は未達だった。運賃の値上げが一巡すると、景気で利益が大きく振れる。
新センターの稼働遅れと投資負担
3 年で 360 億円の投資は、新センターの稼働が遅れると減価償却だけが先に出る。賃借センターの家賃は固定の約束で、物量が戻らなければ利益率を押し下げる。
3PL の競争の激化
ロジスティード、センコー、SBS、ニッコンなどが自動化と M&A で攻める。荷主は複数社に見積もりを取るので、新規案件の利益率は下がりやすい。
M&A の失敗
近鉄物流の買収では、黒字化に 5〜6 年かかり、自己資本比率が一時 18% まで下がった。今は純有利子負債がゼロだが、大型の買収で同じ失敗を繰り返せば、利益と評価が一気に傷む。
新リース会計と固定費の見え方
2028 年 3 月期から、賃借センターの家賃に当たる負債が BS に載る。営業利益は少し増えるが、純有利子負債と自己資本比率は悪く見える。固定の約束の重さが数字に出る。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 163 億円を超えたら
- 中立とやや楽観に重みを移してよい。新規受託の利益率が既存並みを保っている証拠になる。
- 毎期 15 社の新規受託が続かなくなったら
- 中立からやや悲観へ重みを移す。センター数の伸びが鈍り、数量の前提を下げる。
- 近物レックスの営業利益率が 5% を超えたら
- 運送の利益率の前提を上げる。積載率の改善と運賃の定着が確認できたことになる。
- 最低賃金が物価を上回る伸びを続け、料金の改定が遅れたら
- センター利益率の前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 大型の M&A を発表したら
- 買収の価格と、買った事業の利益率を確かめる。のれんが自己資本の 2 割を超えるなら悲観側に重みを移す。
- 次の中計で配当性向が 4 割を超えたら
- 自己資本の積み上がりが緩み、ROE は 10% 近くに保たれる。中立の ROE の前提を上げる。
見ておくもの
- 四半期ごとのセンター事業の営業利益率と新規受託の稼働状況
- 近物レックスの営業利益率と積載率
- 最低賃金の改定とパート時給の動き
- 次期中計の投資額と還元の方針
- 賃借センターの未経過リース料(有報)
倍率と資本コストの決め方
売上は数量(センター数・取扱量)と名目の価格に分け、倍率は正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 4.0%、残る割合 1/2)の上限に対し、利益の質で 8.5 割を中立に置いた。市場の PER・PBR は倍率の根拠にしていない。k は基本 7.5% に quality +0.25% で、確率は quality を理由に動かしていない。自己資本は今の 980 億円に純利益の合計から還元を引いて流した。悲観は稼ぐ力と売れる資産の税後を床にした。純有利子負債はゼロで EV÷営業利益は軽い。今の株価に寄せる調整はしていない。賃借センターの家賃は営業費用に入った今と同じ形で置き、新リース会計で形が変わる点は 10 年後の数字には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→17.8 倍・やや楽観 PER 13.1→17.15 倍・中立 PER 11.8→16.34 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。20 年赤字がなく生活用品の物流が中心で循環は −0.25、荷主への転嫁が遅れる分と入札で選ばれやすい点を値決め力 0、借金は純負債ゼロでも賃借センターの家賃が固定の約束なので +0.25、パート依存と荷主の内製化で寿命 +0.25。個別のリスクは k に足さず筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。