結論
神姫バスは、姫路・明石・三田を地盤に神戸・大阪へ路線を伸ばす兵庫の最大手バスだ。バスの外に、不動産と車両整備という手堅い稼ぎ頭を持つ。筆者の結論は「やや割高」である。自己資本の厚さに比べて利益が薄く、資本コストに届かないからだ。
利益の中心はバスだけではない。2026年3月期の営業利益は42億円で、不動産が14億円、車両販売・整備が約10億円を稼ぐ。バス本体は21億円だが、これは大阪・関西万博のアクセス輸送で押し上げられた数字だ。会社自身が今期を33億円と見て、反動を織り込んでいる。
財務に不安はない。自己資本比率は72%、純有利子負債はほぼゼロだ。だが堅いことと割安は別の話になる。ROEは過去10年の中央値で4%台にとどまり、資本コストを大きく下回る。稼いだ利益を溜めても、帳簿どおりの値打ちにはならない会社だ。
10年の中立では、人口減で乗客が減り、運賃の値上げでかろうじて補う姿を描いた。運転士の賃上げがその余地を削る。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を2割弱下回る。上振れの鍵は、不動産の開発と運賃改定の定着である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、神姫バスは「安く買えるが、育てて儲ける会社ではない」。まず守りは強い。自己資本比率72%、純有利子負債ほぼゼロで、不況でも倒れない。土地や建物を多く持ち、簿価と時価の差もありそうだ。ただし賃貸等不動産の時価は開示がなく、含み益を数字に入れていない。
次に稼ぐ力を見る。株主のものになる利益、つまり設備の更新を引いたあとの利益は、純利益より小さい。バスの更新は毎年必要で、新車の価格は物価で上がる一方、減価償却は取得時の値段で続く。会計の利益が見かけ上ふくらみ、更新の投資で現金が細る、という両面がある。
経営陣の資本配分は、これからの課題だ。配当性向19%、自社株買いなしという実績の割に、成長投資は250億円と大きい。低収益のレジャーや旅行にお金を回し続けるなら、安全域は縮む。
そのうえで値段を見ると、資本コストに届かないROEの会社に、帳簿より高い値は付けられない。今の値段は帳簿の4割台だが、それは安さの証拠ではない。筆者は、安全域は十分でないと見る。
何で稼ぐ会社か
売上556億円の約半分は、乗合バス・高速バスを中心とする自動車運送だ。年間の乗客は約5,000万人、乗合車両は783両になる。姫路・明石・三田が基盤で、神戸・大阪方面と中山間地の路線を持つ。運賃は2024年10月に改定した。
二番手は車両物販・整備で、売上は約110億円。県下最大級の整備工場を持ち、グループのバスの更新需要と外販の両方を取る。営業利益は約10億円で、利益率はバス本体より高い。
利益率が最も高いのは不動産だ。賃貸のほか、建売住宅や建設も手がけ、売上73億円で営業利益は14億円ある。会社は不動産を「第二の柱」と位置づけ、開発型の案件へ投資を振り向けている。2026年3月期には姫路の本社ビルも取得した。
旅行貸切は売上71億円だが利益はほぼゼロで、人手と車両の稼働に左右される。専用車両による瀬戸内の高級ツアー「真結」を持ち、2026年9月からは東急バスの運行で東京発も始めた。残りは淡路島の体験型施設や飲食、介護・保育、広告などで、全体では小さな赤字である。
各セグメントの売上にはグループ内の取引が含まれる。連結売上はその合計より一割ほど小さい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、路線の密度と許認可にある。姫路・明石の路線網は一朝一夕に作れず、運賃は国の認可制で、賃上げなどの原価増は運賃改定で転嫁できる。景気で乗客が大きく減る事業でもない。この点で、収益の底は堅い。
一方で、この堀は利益を増やす堀ではない。守れるのは需要の減少を値上げで埋める力までで、成長の力ではない。運転士の確保が最優先課題で、会社も賃上げと外国人運転士の受け入れで対応する。人件費は運賃より先に動くので、利益率は改定のたびに戻る波を描く。
資本効率は弱い。自己資本は536億円あるのに、純利益は32億円で、ROEは5.9%だった。これは万博で押し上げられた年の数字で、過去10年の中央値は4%台である。会社も中期計画で、PBRが0.4倍前後に沈む理由を成長性と還元への期待の低さと認めている。
多角化も評価を分ける。不動産と整備は稼ぐが、旅行貸切、レジャー、その他は薄い赤字から出られていない。政策保有株は上場で73銘柄・約34億円あり、縮減の方針は出ているものの、資本の使い方に規律がもう一段ほしい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方バスは、人口減と運転士不足に挟まれた事業だ。全国の乗合バスの輸送人員は、令和5年度でコロナ前の約9割までしか戻っていない。長期では減る需要で、運転士不足を理由にした減便や路線廃止も各地で増えた。路線廃止が届出制になり、撤退しやすくなったことも背景にある。
供給側の制約も重い。2024年からの拘束時間の規制で、運転士一人当たりの稼働が減った。増便したくても運転士がいない。このため事業者は、採算の悪い路線を減らし、残した路線で運賃を上げる方向に動いている。神姫バスも2024年10月に運賃を改定し、2026年3月期の増益の土台になった。
追い風は二つある。ひとつは訪日客と観光で、貸切や高速バスの需要を支える。もうひとつは神戸・大阪を結ぶ都市間の需要で、2026年2月には大阪シティバスと共同の路線を始めた。競合は、神戸・明石で路線が重なる山陽バスや神戸市バス、そして並行する鉄道である。
万博が終わった今期は、その反動が出る。会社予想の営業利益は33億円で、前期より2割減る。10年で見ると、乗客は人口減で5〜10%減り、運賃は物価に近い水準まで上がる、というのが筆者の標準的な見立てだ。ただし運賃は認可を待つ分だけ遅れ、賃金に追いつくのが後になる。
資本政策と M&A
還元はこれから厚くなる段階にある。2026年3月期の配当性向は約19%で、中期計画(2025〜2027年度)は2028年3月期までに30%を目安に引き上げるとする。自社株買いの実績はなく、中期計画にも書かれていない。財務は有利子負債をEBITDAの3倍以内に収める範囲で、レバレッジを使う方針だ。
投資は3年で250億円の計画だ。うち成長投資が150億円で、不動産、新規事業、M&Aに充てる。M&Aは建設・不動産が中心になる見込みである。失敗した買収が一番の懸念で、バス事業の更新投資は別に70億円ある。
親会社はいない。主要株主には阪神電気鉄道(阪急阪神ホールディングスの子会社)が名を連ねる。この関係から、阪急阪神グループによる取り込みや、関西のバス再編の可能性は残る。ただし開示された根拠はなく、筋書きの確率に反映するにとどめた。
株主優待は3月と9月で、100株でバスの乗車券5枚、200株以上でグループ優待券がもらえる。費用は開示されていないので、筆者は年0.5億円と推定し、10年で5億円を還元に加えた。金額が小さく、評価への影響は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
万博で証明されたのは、神姫バスの輸送力が需要を取り込めば利益が出る、ということだ。バス本体の営業利益は前期に5割増えた。運賃改定の効果が一巡しても、2024年10月の改定で単価の水準は一段上がっている。賃上げのたびに認可を受け、原価に合わせた改定を重ねれば、利益率は6%台で定着できる。
不動産が第二の柱になる点も見逃せない。営業利益率は2割を超え、開発型の案件に投資を振り向けると中期計画に書いた。姫路・明石・神戸の沿線に土地を持つ強みは、都市の再開発が進めば価値が増す。賃料も物価に連動するため、不動産の売上は10年で倍近くになる。
さらに、PBR0.4倍に対し、会社自身が資本コストと株価を意識した経営を掲げ、還元を30%まで引き上げると宣言した。流動性の低さや阪急阪神グループとの関係を考えれば、再編や買い付けの機会も十分ある。上振れは営業利益が70億円規模まで届く姿で、純利益に10倍の倍率を当てる水準だ。
慎重な見方
万博の数字を実力と見るのは危うい。会社自身が今期を2割減益と予想し、第1四半期の営業利益はすでに前年の4割強に落ちた。万博の反動に加え、賃上げが先に効いている。運転士が足りないため、賃金は物価を超えて上がり、運賃の認可が遅れるたびに利益が削られる。
需要も縮む。乗客は人口とともに減り、コロナ前の水準には戻っていない。減便は収入を減らし、路線を減らすと、残る路線の固定費は重くなる。鉄道や山陽バスと重なる都市部の路線は、競争で値上げも通しにくい。
そして資本効率が低い。ROEは過去10年の中央値で4%台で、資本コストに届いたためしがない。成長投資の250億円が、旅行貸切やレジャーのような低収益事業へ向かえば、自己資本が膨らむだけでROEは下がる。自己資本の厚さは安心材料だが、それが利益を生まなければ、株主にとっては眠った資産にすぎない。この会社に帳簿に近い値を付ける理由は見当たらない。
運転士不足は一時の現象ではなく、運転士の高齢化も会社が課題に挙げている。地方の路線を維持する体力が落ちれば、最後は自治体の補助に頼る事業になる。10年後の姿は、売上は物価で膨らんでも、営業利益は今の7割に届かない程度だ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には、不動産と運賃改定という具体的な根拠がある。ただし慎重な見方の、ROEが資本コストに届かない、という指摘のほうが強い。万博の利益が一過性なのは会社自身が認めている。このため確率は中立に4割を置き、上は2割8分、下は3割2分と、やや下に寄せた。悲観の確率は、運転士不足で路線網が縮む筋書きの現実味を考えて1割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,231 円391 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 763 円92 億円)。 今の値に割り戻すと 2,099 円254 億円、今との差 +8.3%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,800 円701 億円 | 1,214 円147 億円 | +261.9% | +13.7% | 561 円68 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,994 円604 億円 | 1,015 円123 億円 | +210.1% | +12.0% | 1,202 円145 億円 |
| 中立 | 40% | 3,616 円437 億円 | 767 円93 億円 | +126.2% | +8.5% | 1,753 円212 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,077 円130 億円 | 552 円67 億円 | −15.9% | −1.7% | 358 円43 億円 |
| 悲観 | 10% | 842 円102 億円 | 346 円42 億円 | −38.7% | −4.8% | 119 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,231 円391 億円 | 763 円92 億円 | +106.1% | +7.5% | 3,993 円483 億円 |
今の株価時価総額 1,938 円234 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:運賃改定が定着し、不動産が第二の柱に育つ 利益 53 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,800 円701 億円
万博後も乗客が落ちず、バスは10年で乗客数が横ばいに近い。運賃は物価を少し上回って上がり、バス本体は営業利益率6%を超えて定着する。外国人運転士の受け入れが軌道に乗り、減便に追い込まれない。
不動産は中期計画の開発型投資が実り、賃貸と分譲の両方で売上が10年で倍近くになる。都心側の再開発の恩恵で、営業利益率は2割に乗る。整備も、バスの更新需要が安定して伸びる。
旅行貸切は、インバウンドと東京発の高級ツアーで黒字が定着する。会社全体の営業利益は70億円規模で、売上営業利益率は8%を超える。過去12年の山(7.5%)を超えるのは、この筋書きだけだ。
還元は配当性向30%を超え、自社株買いも加わる。PBRの低さへの批判を受けて、阪急阪神グループとの関係が資本の組み替えに進む可能性もある。
- 自動車運送(乗合・高速バス):数量 5,015(乗合旅客数(万人))× 価格 7.30(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 366 億円・営業利益 23 億円。乗客数は横ばい(1.00倍)、単価は物価を超える1.42倍、利益率6.2%
- 旅行貸切:数量 125(貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定))× 価格 99(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 4 億円。貸切 1.25倍×1.40倍、利益率3%
- 不動産:数量 1,950(取扱い規模(千㎡相当・推定))× 価格 7.56(1 千㎡あたり売上(百万円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 30 億円。取扱い1.5倍×単価1.35倍、利益率20%
- 車両物販・整備:数量 2.2(取扱い車両(万台相当・推定))× 価格 77(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 169 億円・営業利益 14 億円。整備 1.10倍×1.38倍、利益率8.5%
- レジャー・その他:数量 120(利用者・取引の延べ数(万人相当・推定))× 価格 13,345(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 2 億円。レジャー・その他 1.2倍×1.38倍、利益率1%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 701 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃の改定が賃上げに追いつき続け、不動産の開発も計画どおり進む筋書きは、条件が重なるので1割に届かない。阪急阪神グループ入りなどの再編が起きる余地も、ここに含める。
やや楽観 20% やや楽観:万博の山は戻らないが、改定と不動産で6%台の利益率 利益 45 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,994 円604 億円
乗客は人口減で3%ほど減るが、都市間の高速バスと訪日客が支える。運賃は物価並みから少し上まで改定を重ね、バス本体の営業利益率は6%に戻る。万博の山には届かない。
不動産は開発型の案件が増え、売上が10年で1.7倍になる。整備も、バスの更新が続くので堅い。旅行貸切は、インバウンドの需要が稼働率を上げ、小さな黒字になる。
会社全体の営業利益は60億円強で、中期計画の目標(2028年3月期に37億円)の延長に近い。ROEは6%で、資本コストにはまだ届かない。
還元は配当性向35%まで上がる。利益が増えても、自己資本が積み上がるために資本効率は大きくは変わらない。
- 自動車運送(乗合・高速バス):数量 4,865(乗合旅客数(万人))× 価格 7.09(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 345 億円・営業利益 21 億円。乗客数0.97倍、単価1.38倍、利益率6.0%
- 旅行貸切:数量 112(貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定))× 価格 97(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 3 億円。貸切 1.12倍×1.37倍、利益率2.5%
- 不動産:数量 1,690(取扱い規模(千㎡相当・推定))× 価格 7.39(1 千㎡あたり売上(百万円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 24 億円。取扱い1.3倍×単価1.32倍、利益率19.5%
- 車両物販・整備:数量 2.1(取扱い車両(万台相当・推定))× 価格 76(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 159 億円・営業利益 14 億円。整備 1.05倍×1.36倍、利益率8.5%
- レジャー・その他:数量 110(利用者・取引の延べ数(万人相当・推定))× 価格 13,151(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 1 億円。レジャー・その他 1.1倍×1.36倍、利益率1%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 604 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運賃改定は賃上げを後追いで転嫁する流れが続いている。不動産の投資計画も既に動いている。強気の筋書きの手前までは、現実に届く範囲と見て2割にした。
中立 40% 中立:乗客減を運賃で補い、利益は名目でほぼ横ばい 利益 33 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,616 円437 億円
乗客は10年で6%ほど減る。運賃は認可を待ちながら物価並みまで上がるが、運転士の賃上げが先行するため、バス本体の営業利益率は5%に落ち着く。2026年3月期の8%は万博の山で、戻らない。
不動産は着実に積み上がり、売上は10年で1.5倍に近づく。整備は横ばいで、バスの更新需要が支える。旅行貸切は薄い黒字、レジャーとその他は小さな赤字が続く。
会社全体の営業利益は45億円ほどで、10年前から物価で見れば実質で2割減だ。減価償却は、今ある車両と建物は取得時の値段のまま続き、更新分だけ新しい高い値段で足される。10年後の償却は24億円ほどに増える。更新の投資は償却を上回り、現金は細る。
還元は配当性向32%程度で、自社株買いは小さい。ROEは4.5%で、資本コストを下回る状態が続く。
- 自動車運送(乗合・高速バス):数量 4,689(乗合旅客数(万人))× 価格 6.89(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 323 億円・営業利益 16 億円。乗客数0.935倍、単価1.34倍(物価並み)、利益率5.0%
- 旅行貸切:数量 105(貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定))× 価格 95(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 1 億円。貸切 1.05倍×1.34倍、利益率1%
- 不動産:数量 1,495(取扱い規模(千㎡相当・推定))× 価格 7.17(1 千㎡あたり売上(百万円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 19 億円。取扱い1.15倍×単価1.28倍、利益率18%
- 車両物販・整備:数量 2.0(取扱い車両(万台相当・推定))× 価格 75(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 149 億円・営業利益 11 億円。整備 横ばい×1.34倍、利益率7.5%
- レジャー・その他:数量 100(利用者・取引の延べ数(万人相当・推定))× 価格 12,958(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 −1 億円。レジャー・その他 横ばい×1.34倍、利益率−1%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 437 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:乗客は人口とともに減り、運賃は物価に近い水準まで認可を得て上がり、賃上げと相殺される。会社の2027年3月期予想(営業利益33億円)の延長に近い形で、最も現実に近い筋書きとして4割を置いた。
やや悲観 22% やや悲観:賃上げに運賃が追いつかず、路線を絞る 利益 20 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 1,077 円130 億円
乗客は12%減る。減便が乗客離れを呼び、路線の廃止が重なる。運賃は物価の上昇に届かず、10年で1.28倍にとどまる。運転士の賃金は物価を超えて上がり、バス本体の営業利益率は3.5%まで下がる。
不動産は伸びが鈍り、賃貸の更新が中心になる。整備は、グループのバスの更新が減ることで小さくなる。旅行貸切とレジャーは赤字が続く。
会社全体の営業利益は30億円弱で、今の7割に届かない。借入が増え、利払いも重くなる。ROEは3%まで下がり、成長投資の250億円が裏目に出る形になる。
還元は配当性向30%を守るが、利益が減るので金額は小さい。
- 自動車運送(乗合・高速バス):数量 4,413(乗合旅客数(万人))× 価格 6.58(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 10 億円。乗客数0.88倍、単価1.28倍、利益率3.5%
- 旅行貸切:数量 95.0(貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定))× 価格 90(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 −1 億円。貸切 0.95倍×1.28倍、利益率−1%
- 不動産:数量 1,365(取扱い規模(千㎡相当・推定))× 価格 6.83(1 千㎡あたり売上(百万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 15 億円。取扱い1.05倍×単価1.22倍、利益率16.5%
- 車両物販・整備:数量 1.9(取扱い車両(万台相当・推定))× 価格 72(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 9 億円。整備 0.95倍×1.30倍、利益率6.5%
- レジャー・その他:数量 95.0(利用者・取引の延べ数(万人相当・推定))× 価格 12,378(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 −4 億円。レジャー・その他 0.95倍×1.28倍、利益率−3%
倍率:事業の ROE 2.9%(純利益÷自己資本)、k 7.5%。残る割合 1/2 で RONIC=k+1/2×(ROE−k)=5.2%、g 4% の正当化 PER は 6.7 倍。利益が薄く ROE が k を大きく下回るので、ためた利益に帳簿より低い値打ちしか認めず、上限の 9.0 割の 6.0 倍に置いた。売れる資産の税後(約100億円)は下回らない水準である。
確率:運転士不足は構造的で、賃金が物価を超えて上がる流れはすでに見える。運賃の認可が遅れ、減便が重なる筋書きは中立に次ぐ現実味があるとして、2割強を置いた。
悲観 10% 悲観:運転士不足で路線網が縮み、バスは赤字事業になる 利益 6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 842 円102 億円
乗客は2割減り、運賃は1.15倍までしか上がらない。賃金は物価を超えて上がり続け、バス本体の営業利益率は1%まで下がる。減便が乗客離れを呼ぶ悪循環で、不採算の路線を切り続けても固定費が残る。
旅行貸切とレジャーは赤字が拡大する。不動産だけが利益を稼ぎ、全社の営業利益は10億円ほどになる。バス部門を地域の自治体補助に頼る形に変え、会社は不動産と整備で食いつなぐ姿になる。
このとき、価値の支えは稼ぐ力ではなく、持っている資産だ。賃貸不動産と車庫用地、上場株式を足した売れる資産の税後で、帳簿の自己資本の2割程度に下がる。配当も大きく減らす。
- 自動車運送(乗合・高速バス):数量 3,912(乗合旅客数(万人))× 価格 5.91(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 231 億円・営業利益 2 億円。乗客数0.78倍、単価1.15倍、利益率1%
- 旅行貸切:数量 85.0(貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定))× 価格 81(1 人あたり売上(百円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 −2 億円。貸切 0.85倍×1.15倍、利益率−3%
- 不動産:数量 1,235(取扱い規模(千㎡相当・推定))× 価格 6.16(1 千㎡あたり売上(百万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 11 億円。取扱い0.95倍×単価1.10倍、利益率14%
- 車両物販・整備:数量 1.7(取扱い車両(万台相当・推定))× 価格 64(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 5 億円。整備 0.85倍×1.15倍、利益率4.5%
- レジャー・その他:数量 90.0(利用者・取引の延べ数(万人相当・推定))× 価格 11,121(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 −5 億円。レジャー・その他 0.9倍×1.15倍、利益率−5%
倍率:今の自己資本536億円にPBR0.19倍を掛けた。稼ぐ力(純利益6億円÷k7.5%=80億円)より、売れる資産の税後(floor_assets_oku)のほうが大きいので、後者を床にした。ためた利益は床に掛けない。
確率:運転士不足と路線廃止は実際に進んでいる。運賃の認可が賃金に追いつかない状態が10年続けば、バス本体は赤字に近づく。ただし不動産が残るので、全社が崩れる確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車運送(乗合・高速バス)
乗合・高速・空港連絡などの路線バス。基幹事業。
| 数量乗合旅客数(万人) | 価格1 人あたり売上(百円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,015 | 5.14 | 258 | 21 |
| 10 年後 中立 | 4,689 | 6.89 | 323 | 16 |
取り方:2026/03 期の乗合旅客は 5,015 万人(前期比 3.5% 増)、自動車運送の売上 257.8 億円(高速・空港連絡などを含む)から、1 人あたり約 5.1 百円。万博のアクセス輸送で 1 期だけ押し上げられた数字。営業利益 21.2 億円は前期(14.2 億円)の 1.5 倍。
旅行貸切
貸切バスと旅行商品(真結など)。
| 数量貸切・旅行の延べ参加者(万人・推定) | 価格1 人あたり売上(百円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 71 | 71 | 0 |
| 10 年後 中立 | 105 | 95 | 99 | 1 |
取り方:延べ参加者数は開示がない。売上 70.6 億円を 1 人 70.6 百円で割った推定の 100 万人。価格は名目で、貸切の受注単価と稼働率が上がると会社は説明している。営業利益 0.2 億円。
不動産
賃貸・建売住宅・建設。第二の柱として開発型へ投資。
| 数量取扱い規模(千㎡相当・推定) | 価格1 千㎡あたり売上(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 5.60 | 73 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,495 | 7.17 | 107 | 19 |
取り方:賃貸の床面積や分譲戸数の開示がないため、売上 72.8 億円を 1,300 千㎡相当 × 1 千㎡あたり 560 万円と置いた推定。営業利益率 19%(営業利益 14.1 億円)。賃貸の比率が高いほど利益率は上がる。
車両物販・整備
バス・トラックの販売・整備・架装。グループの更新需要と外販。
| 数量取扱い車両(万台相当・推定) | 価格1 台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 56 | 111 | 10 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 75 | 149 | 11 |
取り方:整備・販売の台数は開示がない。売上 111.2 億円を 2 万台相当 × 1 台あたり 55.6 万円と置いた推定。営業利益率 8.5%。
レジャー・その他
淡路島の体験型施設、飲食、介護・保育、広告・Web など。
| 数量利用者・取引の延べ数(万人相当・推定) | 価格1 人あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 9,670 | 97 | −3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 12,958 | 130 | −1 |
取り方:レジャーサービス(売上 50.2 億円、営業利益 −0.8 億円)とその他(売上 46.5 億円、営業利益 −1.7 億円)の合計。延べ数は開示がなく推定。
リスクと懸念
運転士不足と賃上げの先行
運転士の確保は会社が最優先に掲げる課題だ。賃金は物価を超えて上がり、運賃の認可を待つ間は利益が削られる。外国人運転士の受け入れは進めるが、採用が計画を下回れば減便が続き、乗客の離れを招く。バス本体の利益率に直接効く。
万博の反動と今期の減益
2026年3月期の増益には、大阪・関西万博のアクセス輸送という一過性の需要が含まれる。会社予想の営業利益は33億円で2割減る。第1四半期は前年から6割近く減り、売上営業利益率は2.2%に落ちた。通期の達成度が下振れすれば、中立の出発点が下がる。
人口減で乗客が戻らない
全国の乗合バスの輸送人員は、コロナ前の約9割までしか戻っていない。播磨・但馬の中山間地は人口減が速く、路線の維持に自治体の補助が要る。路線廃止が届出制になり、撤退は容易になったが、地域との関係は悪化しやすい。
成長投資の資本配分
3年で250億円の設備投資のうち、150億円が不動産、新規事業、M&Aに向かう。建設・不動産のM&Aは実行力が問われ、失敗すれば自己資本が減る。ROEが資本コストを下回る会社が、低収益事業に資本を使い続ける点が最大の懸念だ。
低収益の周辺事業
旅行貸切は売上71億円で利益がほぼゼロ、レジャーとその他は合わせて小さな赤字が続く。介護・保育や淡路島の体験型施設など、周辺事業は広がるが、利益の貢献が見えない。整理されなければ資本効率の足を引く。
更新投資と償却のずれ
バス車両は毎年60両前後を更新し、新車の価格は物価で上がる。一方で減価償却は取得時の値段で続くため、会計の利益は見かけ上よく見える。更新が償却を上回る分は借入か還元の抑制で賄うことになり、現金が細る。
株式の流動性と大株主の関係
株式の流動性は低く、会社自身がPERの低い一因としている。主要株主の阪神電気鉄道は阪急阪神ホールディングスの子会社で、資本関係の変化は価値を大きく動かす。ただし少数株主に有利な形になるかは開示がなく、確率に反映するにとどめた。
今後の分かれ目
- 運賃改定が賃上げと同時期に認可され、バス本体の営業利益率が6%を超えて定着したら
- 中立の利益率前提を上げ、やや楽観以上の筋書きに重みを移す。ただしROEが資本コストを超えない限り、倍率は大きく上げない。
- 運転士の採用が計画を下回り、減便や路線廃止が続いたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。バス本体が赤字に近づけば、不動産と整備の稼ぎで全社が支えられるかを見る。
- 不動産の開発案件で営業利益が20億円を超えたら
- 第二の柱が本物とみて、不動産の売上と利益率を引き上げる。バス事業の評価が下がっても、全社の下値は固くなる。
- 配当性向が30%を超え、自社株買いが始まったら
- 資本政策の変化とみて、楽観寄りに確率を上げてよい。ただし自己資本が減らない限り、ROEは大きくは動かない。
- 阪急阪神ホールディングスや同業による買い付け・再編の提案が出たら
- 筋書きの外にある上振れ要因になる。提案の価格が本質価値を上回るかは別に確かめる。
- 成長投資でM&Aが実行され、低収益の事業が増えたら
- 資本配分の悪化とみて、やや悲観に重みを移す。買収の額と利益の見込みを確かめる。
見ておくもの
- 乗合バスの旅客数と、運賃改定の認可のタイミング
- 運転士の人数と採用・離職、賃上げの率
- 不動産セグメントの営業利益と開発案件の投資額
- 配当性向の推移(30%の目安)と自社株買いの有無
- 旅行貸切・レジャー・その他の損益(赤字の縮小)
- 阪急阪神ホールディングスなど大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER(7倍前後)は倍率の根拠にしていない。バス・不動産・整備ごとに数量×価格で10年を積み、その時点の ROE(中立で4.5%)と資本コスト7.5%から、利益ベースの正当化 PER を出して置いた。ROE が k に届かないため、倍率は上限の約8割にとどめた。悲観の床は売れる資産の税後で置き、過去の PBR の底からは置いていない。賃貸等不動産の含み益は開示がなく、賃料は利益に残るので、価値には足さない(二重を避ける)。数量は実質、価格は名目(物価10年1.34倍)で、本社費は物価で増やし、減価償却は取得時の値段のまま続けて更新分だけ足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→13.33 倍・やや楽観 PER 9→13.33 倍・中立 PER 8→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。