結論
クスリのアオキは、北陸・北信越を地盤に約 1,100 店を持つ、食品併設型のドラッグストアだ。筆者の結論は、やや割高というところだ。いちばんの理由は利益率の薄さにある。
稼ぎの形は明快だ。調剤と医薬品で来店理由をつくり、生鮮と食品で毎日の買い物を取り込む。売上は 5 年で 2 倍近くに伸びた。ただ営業利益率は 5% 前後で、ここ数年は下がり気味だ。食品の比率が上がるほど、売上は増えても利益は付いてこない。
成長は出店と買収が担う。中期計画は 2030 年 5 月期に売上 8,000 億円を掲げる。国内の人口は減るので、店を増やす力がなければ伸びは止まる。店数を 10 年で 1.5 倍に置いても、中立の純利益は約 370 億円だ。
もう一つの論点は、持ち主どうしの対立だ。創業家が約 4 割を握る一方、イオンとの提携は 2026 年 1 月に解消され、投資ファンドのオアシスも大株主に並ぶ。防衛策の賛成率は 55% にとどまった。事業の本質価値は変わらないが、資本の使い方への信頼は割り引いて読む必要がある。
本質価値は、今の時価総額を 2 割半ほど下回る。安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くない事業を、少し高い値段で売っている会社だ。
事業は読みやすい。必需品の店が、地盤で密に並ぶ。10 年後も北陸の生活インフラとして残る可能性が高い。堀も、調剤併設の増加とともに少しずつ深まる。
弱点は、稼ぎの薄さだ。営業利益率は 5% 前後で、売上が増えても株主に残る利益が増えにくい。出店には借り入れが要り、家賃や減価償却も重い。株主に渡せるお金は、見かけの利益より少ない。
経営の資本配分は、まだ見極められない。成長への投資は旺盛だが、少数株主との対立が続く。大株主の入れ替わりが起きれば、配分の方針も変わりうる。
本質価値は、中立の 10 年後の利益から出した。今の時価総額は、これを 3 割半ばほど上回る。安全域は無く、楽観がかなってはじめて値段に見合う。
持ち続けたい会社かと問われれば、値段しだいだ。いまの水準では、買い増す理由は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ドラッグストアに食品と調剤を重ねた店だ。2025 年 8 月末時点で、ドラッグストア 1,015 店、調剤専門薬局 6 店、スーパー 21 店の計 1,042 店。ドラッグ店の約 3 分の 2 に調剤薬局が併設されている。
地盤は北陸と北信越で、報道では 5 県で店数首位とされる。そこで築いた「近くに店が密に並ぶ」形を、関東・東海・関西・四国へ広げている。店は郊外の幹線道路沿いが中心で、駐車場が広く、生鮮まで置く大型の店が多い。都市の駅前に並ぶマツキヨココカラとは、場所も客の来かたも違う。
売上の伸びは出店と買収で支えている。2025 年 6 月には香川の食品スーパー、ミワ商店を子会社にした。新潟では食品スーパーの事業譲受も決めている。食品の取り込みを、新店だけでなく既存の食品店を買って早める狙いだ。
2025 年 12 月に決めた第 4 次中期計画は、2030 年 5 月期に売上 8,000 億円、営業利益 440 億円を目標にする。生鮮 1,300 億円、自社ブランド 800 億円、調剤 1,000 億円も掲げ、買収を使って 400 店を増やす。2035 年 5 月期には売上 1 兆円を目指す。
2026 年 5 月期の売上は 5,669 億円で 13% 増えたが、営業利益は 271 億円と 2% しか増えていない。新店の立ち上げ費用と店舗の減損が利益を押し下げた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、地盤での店の密度にある。北陸では店が近くに集まるので、物流も人の配置も効率が良い。商品を運ぶ距離が短く、広告も効く。後から来る競合が同じ密度をつくるには、年月がかかる。
調剤併設は、もう一つの武器だ。処方箋を持つ客が毎月来るので、来店の理由が景気に左右されにくい。薬剤師を確保できる店が増えるほど、他社との差は開く。
ただ、堀が利益率に出ていない点を、筆者は気にしている。営業利益率は 5% 前後で、同業の上位より低い。食品は粗利が薄く、生鮮は廃棄も出る。食品を厚くするほど、客は増えても儲けは薄まる。郊外の大型店は賃料も建設費も重い。
資本効率は悪くない。ROE は 12% 前後で、資本コストを 5 ポイントほど上回る。ただ、これは借り入れを増やして出店を続けた結果でもある。純有利子負債は直近で 830 億円に増えた。
経営の質には曇りがある。創業家の持ち分が約 4 割に上がった一方、少数株主との対立が続く。経営者が株主の目を気にしながら資本を配分しているかは、まだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストアの国内売上は、2024 年度に初めて 10 兆円を超えた。食品が前年比 13% 増え、調剤も 9% 増えた。店は全国で 2.4 万店近くあり、出店だけで伸びる時代は終わりに近い。
競争の形は、2025 年に大きく変わった。イオンの下で、ウエルシアとツルハが統合し、売上 2 兆円超の連合が生まれた。仕入れと自社ブランドで規模の差が出る。アオキにとっては、北陸でもツルハが強く、直接ぶつかる場面が増える。福井発のゲンキーは北陸・東海で、食品を安く売る同じ戦い方をしている。コスモス薬品も、九州から関東・中部へ店を広げている。
アオキの立ち位置は、売上で業界の上位に入る「中堅の上位」だ。連合ほどの調達力は無いが、地盤の密度と調剤で戦う。食品に力を入れる点は、競争のなかで道理に合っている。ただ、食品が同じ客を取り合うので、スーパーとも価格で競う。
循環の面では、必需品が中心で、リーマン級の不況でも既存店の落ち込みは 1 割未満だった。だが近年は食品の比率が上がり、食品の値動きの影響が前より大きい。
10 年の負け筋は、調剤報酬の引き下げと、連合の価格攻勢が重なることだ。店が多すぎる業界で、客の奪い合いが続く。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長を最優先にしてきた。利益の約 3 割を配当し、残りは出店と買収に回す。借り入れも使うので、純有利子負債は増える傾向にある。
買収は食品スーパーが中心だ。ミワ商店のように小さな店を積み上げ、フード&ドラッグの型に変えていく。大型の買収で価値を壊した過去は見当たらない。
注目は、大株主の動きだ。2026 年 1 月、イオンが 2003 年から続く提携を解約した。同じ月に会社は、議決権 20% 以上の買付に対する防衛策を決めた。2 月の臨時総会で賛成は 55.5% にとどまり、イオンやオアシスは反対したと報じられている。流通株が減り、東証プライムからスタンダードへの変更も承認された。
TOB(株式公開買付)の可能性は、ゼロではない。ただ創業家が約 4 割を握るので、創業家が同意しない限り成立しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地盤の強さを、そのまま全国に広げられる会社だ。北陸で 5 県の首位を握り、その型を関東・東海・関西に移している。店が密になるほど物流の効率が上がり、利益率は上がっていく。
食品の取り込みは、買収で早められる。ミワ商店のような食品スーパーを買い、フード&ドラッグに変える。生鮮の比率が上がり、毎日の来店が増える。中期計画の 2030 年 5 月期の売上 8,000 億円、営業利益 440 億円は、通過点にすぎない。
調剤併設率は 7 割を超え、処方箋の安定した収入が利益の土台になる。高齢化で処方箋は増え続ける。ツルハとウエルシアの統合は仕入れでは脅威だが、地方の密度では歯が立たない。
資本の面では、イオンとの提携解消がむしろ追い風になる。外部の縛りが消え、買収や出店を自分で決められる。対立する大株主との関係が落ち着けば、市場の評価は変わる。売上 1 兆円の構想は、10 年でかなう。
売上は 5 年で 2 倍近くに伸びた。店を増やしながら黒字を保ってきた実績がある。
慎重な見方
売上の伸びは、利益に変わっていない。5 年で売上は 2 倍近くになったが、営業利益率は 5.7% から 4.8% に下がった。食品を増やすほど薄利になる。2026 年 5 月期は売上が 13% 増えたのに、営業利益は 2% しか増えなかった。
出店と買収を続けるには借り入れが要る。純有利子負債はすでに 830 億円に膨らんだ。金利が上がる世界では、利払いが利益を食う。新しい店ほど立ち上がりに時間がかかり、減損のリスクも抱える。
競争は厳しくなる。ツルハとウエルシアは、規模を使った仕入れと自社ブランドで攻めてくる。ゲンキーやコスモス薬品は、さらに安い。食品スーパーとも客を奪い合う。調剤報酬が下がれば、土台の収入も細る。
ガバナンスの問題も無視できない。創業家が約 4 割を握り、イオンは提携を解消し、オアシスは対立している。防衛策への賛成は 55% にとどまった。経営の判断が、少数株主の利益に向いているとは言いにくい。今の値段は、これらを割り引いていない。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力の安定は、強気の見方に分がある。だが利益率の薄さと借り入れの増加は、慎重な見方が正しい。成長しても株主に残る利益は増えにくく、倍率は上限の 8 割弱にとどまる。
確率は中立を中心に置き、競争とガバナンスの重みから、悲観側へやや寄せた。本質価値は今の時価総額を 2 割半ほど下回り、総合はやや割高になる。
売上が増えても利益が付いてこない点が、いちばん大きな論点だ。株主に残る利益が増えない限り、倍率は上げにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 6,246 円5,931 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 870 円826 億円)。 今の値に割り戻すと 3,795 円3,604 億円、今との差 −10.7%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,428 円1.09 兆円 | 1,101 円1,046 億円 | +194.7% | +11.4% | 1,002 円952 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,938 円8,488 億円 | 997 円947 億円 | +133.7% | +8.9% | 2,186 円2,076 億円 |
| 中立 | 34% | 7,111 円6,752 億円 | 878 円834 億円 | +87.9% | +6.5% | 2,716 円2,579 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,336 円3,168 億円 | 802 円762 億円 | −2.6% | −0.3% | 1,076 円1,022 億円 |
| 悲観 | 10% | 802 円761 億円 | 550 円522 億円 | −68.2% | −10.8% | 135 円128 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,246 円5,931 億円 | 870 円826 億円 | +67.4% | +5.3% | 7,116 円6,757 億円 |
今の株価時価総額 4,251 円4,037 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 売上 1 兆円超・全国型の食品併設に成功 利益 562 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 11,428 円1.09 兆円
店は 2,100 店まで増える。北陸の型が関東・東海・関西で通り、物流が効いて営業利益率は 6% に上がる。食品スーパーの買収が続き、生鮮が来店の理由になる。調剤併設は 8 割に届き、1 店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。連合に仕入れでは負けるが、地盤では密度で勝つ。大株主との対立は収まり、資本の使い方への信頼も戻る。売上は 1.4 兆円に届く。売上と利益は、店数と 1 店あたりの売上の積で決まる。この筋書きでは、その両方が上の数字に沿って動く。物価は 3% で続く前提だ。10 年の間に、調剤と食品の組み合わせが地方の標準になる。家賃や人件費の上昇も、店の密度による効率で吸収できる。
- ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む):数量 2,100(グループ店舗数(店))× 価格 6.70(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 14,079 億円・営業利益 845 億円。営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 562 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.31 倍、時価総額 10,852 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収と出店が 10 年続けて成功し、利益率も上がる必要がある。連続成功は難しいので 1 割未満。
やや楽観 22% 出店は続き、利益率も少し上がる 利益 457 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 8,938 円8,488 億円
店は 1,950 店になる。関東での店の密度が高まり、物流の効率が上がる。調剤併設は 7 割台後半に届き、食品スーパーの買収も数件実る。営業利益率は 5.4% まで上がり、中期計画の 5.5% に近づく。連合との競争は続くが、地盤の優位は守られる。借り入れは増えても、利益の伸びが利払いを上回り、配当も少しずつ増える。売上と利益は、店数と 1 店あたりの売上の積で決まる。この筋書きでは、その両方が上の数字に沿って動く。物価は 3% で続く前提だ。10 年かけて、関東の新店が北陸並みの密度に近づく。人件費の上昇は物流の効率化で、ほぼ吸収できる。
- ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む):数量 1,950(グループ店舗数(店))× 価格 6.56(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 12,785 億円・営業利益 690 億円。営業利益率 5.4%
倍率:事業の純利益 457 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.57 倍、時価総額 8,486 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の延長線上で、食品比率が上がっても調剤とドミナントで利益率が少し上がる想定。
中立 34% 中立:店は増えるが利益率は 5% を割る 利益 373 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 7,111 円6,752 億円
店は 1,800 店まで増える。ただ国内の人口は減るので、増える店は関東・東海の新店と買収が中心になる。調剤併設は 7 割台に届く。1 店あたりの売上は物価より少し低く伸びる。食品の比率が高いので、営業利益率は 4.9% で止まる。連合との競争も続き、仕入れの差が利益率を縛る。売上は 1.15 兆円で、中期計画が掲げる 1 兆円は超える。売上と利益は、店数と 1 店あたりの売上の積で決まる。この筋書きでは、その両方が上の数字に沿って動く。物価は 3% で続く前提だ。10 年のあいだ、物価に合わせた値上げは通るが、人件費の上昇も同じ速さで進む。そのため、利益率を押し上げる材料は乏しい。
- ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む):数量 1,800(グループ店舗数(店))× 価格 6.41(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 11,535 億円・営業利益 565 億円。営業利益率 4.9%
倍率:事業の純利益 373 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.94 倍、時価総額 6,692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は進むが、食品比率の上昇と人件費で利益率が上がらない、いちばん確度の高い筋書き。
やや悲観 26% 連合に押され、利益率が 4% 台前半へ 利益 262 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 3,336 円3,168 億円
ツルハ・ウエルシア連合の共同調達と自社ブランドが浸透し、アオキは食品の値下げで粗利を削られる。ゲンキーやコスモス薬品の安売りも北陸・東海に広がる。店は 1,550 店で止まり、新店の立ち上がりも遅れる。調剤報酬の引き下げも続き、営業利益率は 4.2% に下がる。借り入れは増え、配当は据え置きになる。売上と利益は、店数と 1 店あたりの売上の積で決まる。この筋書きでは、その両方が上の数字に沿って動く。物価は 3% で続く前提だ。10 年のあいだ、値下げ競争と人件費の上昇が同時に進む。店を増やしても、1 店あたりの利益は増えにくい。
- ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む):数量 1,550(グループ店舗数(店))× 価格 6.21(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 9,627 億円・営業利益 404 億円。営業利益率 4.2%(家賃・人件費は残る)
倍率:ROE 9.3%(純利益 262 億円 ÷ 自己資本 2,825 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7% + 残る割合 1/2 ×(9.3 − 7.2)= 8.3%、長期の成長率 g 3.7% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 15.6 倍。連合に押され構造的に負ける筋書きなので、伸びと堀の持ちを低く見て、やや悲観は上限の 7.5 割 の 11.7 倍に置いた。
確率:連合の調達力の差が 10 年かけて表れ、調剤報酬の見直しも続く。業界の構造から起こりやすい。
悲観 10% 構造的に負け、薄利の中堅に落ちる 利益 81 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 802 円761 億円
ツルハ・ウエルシア連合の調達力が決定的になり、既存店の客数が 10 年かけて減る。食品スーパーとの値下げ競争に敗れ、買収した食品店が不振で減損が続く。店は 1,300 店に減り、閉店には残りの家賃や違約金がかかる。営業利益率は 2% まで落ち、利払いが利益を食う。配当は減り、大株主との対立も長引く。再編で買い手を待つ立場になる。売上と利益は、店数と 1 店あたりの売上の積で決まる。この筋書きでは、その両方が上の数字に沿って動く。物価は 3% で続く前提だ。10 年後には、地盤の北陸でも店の客数が落ち、固定費が重くのしかかる。株主への還元も細り、再編の対象として見られやすくなる。
- ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む):数量 1,300(グループ店舗数(店))× 価格 5.67(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7,370 億円・営業利益 147 億円。営業利益率 2.0%(固定費は残る)
倍率:ROE 4.0%(純利益 81 億円 ÷ 自己資本 2048 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 11.7 倍より低い 9.4 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:連合の価格攻勢、調剤報酬の引き下げ、買収の失敗が重なり、薄利に沈む複合の筋書き。大株主の対立がこれを速める恐れがあり、1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドラッグ・フード&ドラッグ事業(調剤・スーパー含む)
ドラッグストアに食品・調剤を併設した店と、買収した食品スーパー。北陸・北信越が地盤で、関東・東海・関西・四国へ広げている。
| 数量グループ店舗数(店) | 価格1 店あたり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,150 | 4.93 | 5,669 | 271 |
| 10 年後 中立 | 1,800 | 6.41 | 11,535 | 565 |
取り方:2025 年 8 月末の 1,042 店(ドラッグ 1,015・調剤専門 6・スーパー 21)に、その後の新設と買収を足して 2026 年 5 月末を約 1,150 店と推定した(期末の店数は未確認)。売上 5,669 億円を割って 1 店 4.93 億円。1 店あたりの売上は、物販に物価 3% が乗り、食品・調剤の比率上昇が足すが、新店(関東など)の立ち上がりの低さが引くので、中立で 3 年 1.08 倍・10 年 1.30 倍と物価よりやや低く置いた。店数は実数の数量。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
利益率の薄さ
営業利益率は 5% 前後で、2026 年 5 月期は売上が 13% 増えても営業利益は 2% しか増えなかった。食品が増えるほど薄利になり、少し粗利が下がるだけで利益が大きく動く。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
ツルハ・ウエルシア連合との競争
イオンの下で統合した連合は、売上 2 兆円超の規模で仕入れと自社ブランドを押さえる。アオキの地盤の北陸でも、ツルハは強い。価格で後れを取れば、客数と粗利の両方が削られる。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
創業家・大株主の対立
創業家が約 4 割を握り、イオンは提携を解消し、オアシスは対立を続ける。防衛策の賛成は 55.5% にとどまった。資本の配分が少数株主に向くとは限らず、大株主の入れ替わりで方針が変わる恐れもある。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
買収と出店の借り入れ
食品スーパーの買収と出店は借り入れで賄い、純有利子負債は 830 億円に増えた。借り換えのたびに金利が上がるので、利払いが利益を削る。新店の減損も先に出やすい。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
調剤報酬の改定
調剤は処方箋が安定した収入で、併設率も上がっている。だが国の報酬が下がれば、利益の土台が細る。調剤の比率が高い会社ほど、改定の影響は大きい。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
店の固定費(家賃・減価償却)
郊外の大型店は賃料も建設費も重い。解約不能の家賃の総額は未確認で、年 150 億円前後と推定した。不況で売上が落ちても固定費は残り、2028 年 5 月期からの新リース会計で借金のように見える。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
人口減と店の飽和
国内の店は 2.4 万店近くに達し、人口は減る。新しい店は競合の客を奪うことになり、出店の効率は下がる。関東への進出は、地盤より密度が低く、立ち上がりに時間がかかる。この点は、筋書きの利益率と確率に織り込んだ。起きた時の影響は小さくない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3 年のうちに 5.5% の計画線に届く
- 食品比率の上昇に負けず稼げる証拠になり、楽観側の確率を上げる。
- ツルハ・ウエルシア連合が北陸で値下げと出店を強める
- アオキの粗利が削られ、悲観側の確率を上げる。
- 大株主が入れ替わる、または TOB の提案が出る
- 資本配分の信頼が変わる。創業家の同意が無ければ成立しにくいので、まず創業家の動きを見る。
- 食品スーパーの買収が続き、減損や黒字化の遅れが出る
- 買収で価値を壊す会社と見て、倍率の上限を下げる。
- 調剤報酬の大幅な引き下げが決まる
- 調剤の稼ぎが細り、悲観側の確率を上げる。
- 関東の新店が 2〜3 年で黒字化する
- 北陸の型が通る証拠になり、10 年の楽観側の確率を上げる。
- 2028 年 5 月期から新リース会計でリース負債が BS に載る
- 純有利子負債は増えて見えるが、形の変化で本質価値は変わらない。
見ておくもの
- 既存店売上高・客数(月次)と、関東・東海の新店の立ち上がり
- 営業利益率(食品比率との関係)
- ツルハ・ウエルシア連合の北陸での出店と価格戦略
- 調剤報酬の改定動向
- 大株主(イオン・オアシス・創業家)の持分の動き
- 純有利子負債と、新リース会計で載るリース負債の額
倍率と資本コストの決め方
1 店あたりの売上 × 店数で積み上げた利益と、その時点の ROE から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 7%)を出し、中立は上限の 8 割に置いた。今の株価は最後に比べただけで、倍率を今の値段や同業の倍率に寄せていない。店数の 2026 年 5 月末 1,150 店は推定で、期末の実数は未確認。余った現金は無く(純負債)、分けていない。悲観は市場の倍率でなく、その筋書きの稼ぐ力(純利益 81 億円÷k)で置いた。家賃・減価償却を含む費用の形で 10 年後を置き、2028 年 5 月期からの新リース会計で営業利益が少し増え、純有利子負債と自己資本比率の形が変わる点は、本質価値に影響しないと見ている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.9→19.31 倍・やや楽観 PER 14.4→18.57 倍・中立 PER 13.7→17.94 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%。必需性で循環を −0.5%、出店投資で増える純負債を借金 +0.25%、値決めと寿命は普通の 0。事業は黒字で存続に疑いは無く、上乗せ(extra)は置かない。創業家・大株主の綱引きといった個別のリスクは k に足さず、利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.00%。