結論
Veritas In Silicoは、RNAの立体構造を狙う独自技術を使い、製薬会社と新薬候補を探す創薬ベンチャーである。筆者の結論は「割高」だ。技術の独自性は評価するが、研究上の成功が医薬品の承認や株主利益につながるまでには、長い時間と大きな追加資本が必要になる。
2026年10月19日、東レとの共同研究でPCSK9を標的とするヒット化合物を取得した。これは研究が前進した証拠だが、医薬品候補の有効性や安全性が臨床で証明されたわけではない。この進捗による追加収入も発生せず、会社の業績予想は据え置かれた。2026年4月には武田薬品との共同研究が終了しており、提携先が研究を続けるかどうかも確実ではない。
価値を左右する最大の問題は、創薬の成功確率だけではない。2026年10月13日に発表した新株予約権は、最大360万株、既存発行済株式の55.49%に相当する。さらに会社は2027~2029年の開発研究費を約25億円と見込む。たとえ事業が将来黒字化しても、そこに到達するまでの新株発行によって、現在の株主の取り分は大きく変わりうる。
中立では2035年にも研究開発負担が残り、収益化できる候補薬は限定的とみる。上振れすれば企業価値は現在を大幅に上回りうる一方、その果実を既存株主がどれだけ受け取れるかは別の問題だ。五つの筋書きと希薄化を反映した現在価値は約3.55億円となり、基準時価総額約19.46億円を約82%下回る。現在の現預金は研究のために使う資金であり、そのまま株主の余剰財産とは考えない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、魅力的な技術を持つことと、魅力的な事業を所有することを分けて考えたい。Veritas In Silicoには、RNAを標的とする新しい医薬品を生み出せるかもしれない研究基盤がある。しかし、顧客が継続して値上げを受け入れる仕組みも、少ない再投資で現金を生む実績も、まだ確立していない。十年後に研究の方向性が変わっている可能性も高く、将来の利益を狭い範囲で見積もれる会社ではない。
株主が実際に受け取れる利益という観点では、会計上の収入より資金の行き先が大切だ。製薬会社から導出一時金を受け取っても、次の候補薬の研究や既存薬の臨床開発に大部分を投じれば、自由に分配できる現金は少ない。逆に成功した候補薬から継続的なロイヤリティを得られれば、追加研究費を上回る長期の利益が生まれる。この二つの可能性を同じ売上高として評価することはできない。
現金の厚さも過大評価できない。研究開発費として使うことが明らかな預金は、事業を清算して分配するために保有する余剰現金ではない。上位株主への持分集中があり、過去の配当や自社株買いもないため、利益が出た場合にそれを早期に株主へ戻すと期待する根拠は薄い。今の現金を丸ごと株価の下値として扱う見方には賛成できない。
最大の論点は希薄化である。新薬開発が成功して企業全体の価値が増えても、途中で多数の新株を発行すれば、現在の株主一人当たりの果実は薄くなる。10年先に保有したい会社とは、優れた技術を持つだけでなく、追加資本に頼りすぎずに研究成果を株主利益へ変えられる会社だ。同社はまだその能力を証明する段階にあり、現状では大きな安全域が必要になる。
何で稼ぐ会社か
同社は会計上、創薬プラットフォーム事業の単一セグメントである。しかし、経済的な収益源は四つに分けて考える必要がある。第一は製薬会社との共同創薬研究から受け取る研究支援金であり、第二は契約一時金と研究マイルストーン収入である。第三は自社パイプラインの導出による一時金や開発マイルストーン、第四は薬剤送達技術Perfusioの外部ライセンス収入である。後二者は現時点で実績収益を持たず、将来の可能性にとどまる。
中心となる技術は、RNAの複雑な立体構造を解析し、そこに結合する低分子化合物を探索するaibVISである。RNA構造の予測に加え、実験による構造確認や化合物の選別を組み合わせる。薬の標的になりにくかったRNAの領域を開拓できれば、従来のタンパク質標的創薬を補完する価値が生まれる。東レ、塩野義製薬、ラクオリア創薬などとの共同研究実績はあるが、2026年6月末時点で共同創薬の成果が製薬会社による開発・販売段階まで進んだ実績はない。
2025年12月期の売上高約0.91億円のうち、約0.81億円が研究支援金、約0.10億円がマイルストーン収入だった。共同研究の成否によって契約金の認識時期が変わるため、売上の連続性は乏しい。2023年には大型の契約一時金も寄与したが、翌年以降の利益を約束するものではなかった。研究契約が増えても、研究員と実験設備の費用が伴うため、売上の全額が株主利益になるわけではない。
自社創薬では、急性腎不全の予防を目指すパイプライン1、がん領域のパイプライン2、東京慈恵会医科大学と取り組むALS領域などを育成している。パイプライン2では三菱ガス化学との共同研究が進む。会社は動物試験や医師主導臨床試験を経て製薬会社への導出を目指しており、自ら大規模な医薬品販売網を持つ段階ではない。
Perfusioは薬剤を標的臓器へ届けるための送達技術である。医療機器としての規制上の確認や臨床上の実用性が事業化の条件となる。収益の中心は病院での使用回数に対する手数料ではなく、製薬会社などへの技術導出や開発利用から生じると考えるべきだ。現段階で売れる製品の数量も実証済みの契約単価もないため、評価には大きな幅が残る。
優良さと弱いところ
同社の強みは、単なる生成AIの利用ではなく、RNAの構造解析、化合物探索、実験による検証を一体で進める技術基盤にある。独自の構造測定やスクリーニング手法、特許、実験データの蓄積は模倣の手間を増やす。2026年の東レとの研究進捗は、実際の化合物取得につながる能力を示した。この技術基盤が複数の標的や創薬手法に展開できれば、将来の競争優位につながる余地がある。
ただし、投資家が長く頼れる堀、つまり競争相手を退けながら利益を守る力が確立したとは言えない。医薬品の承認実績、継続的なロイヤリティ、公開された低解約率、値上げの実績はいずれも十分ではない。製薬会社は複数の技術を比較でき、研究途中で契約を終了する選択肢も持つ。2026年の武田薬品との共同研究終了は、技術的な進展と商業契約の継続が別の判断であることを示す。
資本効率にも厳しい評価が必要だ。2023年には黒字を計上したものの、2024年と2025年は再び赤字になった。研究開発への支出が将来の資産価値を生む可能性はあるが、その投資に対する増分利益率が資本コストを上回る証拠はまだない。新薬候補の特許出願を年間一本実現することと、採算の取れる医薬品を継続的に生み出すことの間には大きな距離がある。
2025年末の自己資本は約17.8億円で、見かけ上の自己資本比率は高い。もっとも、その多くは研究開発費を賄うために保持している現預金である。2026年上期には減損損失も発生した。負債が少ないこと自体は利点だが、営業損失が続く企業では、借金の少なさより資金の減り方と次の調達条件が既存株主の価値を左右する。
独自技術が将来の大型導出へ結びつく可能性は否定しない。しかし、実績に基づく価格決定力も、繰り返し利益を得る仕組みもまだ確認できない。強い堀がある会社ではなく、技術的な選択肢を保有する研究開発会社として評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
RNA標的創薬の市場には成長余地がある。Grand View ResearchはRNA標的低分子創薬の世界市場を2025年約20.2億ドル、2030年約54.2億ドルと見積もっている。ただし、これは研究サービス、開発活動、関連する製品などを含む広い市場の推計であり、同社が契約できる共同研究費の市場規模と同じではない。2025年の同社売上高約0.91億円を、この市場全体の金額で割って競争上のシェアと呼ぶのは適切でない。
競合にはArrakis Therapeutics、Anima Biotech、Skyhawk TherapeuticsなどRNAを活用した創薬技術企業があり、PTC Therapeuticsなども関連する研究開発を進める。さらにロシュをはじめとする大手製薬会社の自社研究も競争相手になる。各社の契約金は秘密保持の対象になりやすく、同一範囲で比較できる契約件数、単価、市場シェアは開示されていない。したがって2035年の数量は、市場シェアの精密な予測ではなく、取得可能な共同研究契約数と導出イベント数から考える。
需要を支えるのは、従来の医薬品では十分な効果を得られない疾患への治療需要だ。一方、臨床試験、毒性、薬物動態、製造工程、特許、規制当局との協議が成功率を制限する。研究室で活性のある化合物を得ても、治療薬として承認される確率とは別物である。2026年に成果を示したPCSK9の領域には既に競合薬が存在し、同社が新規の投与経路や価格面で優位を示せるかも問われる。
業界で起きているもう一つの変化は、大手製薬会社が初期段階の共同研究より、一定の開発成果が確認された資産の導入を重視する傾向である。同社自身もこの変化を認識し、自社パイプラインを創出してから導出する方向へ事業を広げている。これは取引一件当たりの収入を増やす可能性がある反面、それまでの研究費と失敗の責任を自社で引き受ける戦略でもある。
AIによってRNA構造予測や化合物探索の処理能力は上がるが、計算部分の差別化は薄れうる。実験設備、独自の検証データ、特許が残る部分は相対的に守られやすいものの、同社が研究支援業務を提供する部分には価格競争が生じる。逆に自社が保有する医薬品候補の権利は、単純なAI業務代替とは異なる価値を持つ。十年後の収益構成が研究作業から知的財産の収益へ移るかが、業界平均の成長率より重要である。
Perfusioに対応する外部ライセンス市場は、同社が公開した情報だけでは信頼できる規模やシェアを算定できない。潜在患者数をそのまま使用件数に変換することもできない。規制上の扱いと製薬企業の採用が確認されるまで、事業化の数量を小さく扱う。
資本政策と M&A
資本政策の最重要事項は、2026年10月13日に発表した第5回から第9回の新株予約権である。潜在株式数は合計360万株で、既存発行済株式に対する希薄化率は55.49%に達する。会社が示す差引手取概算額は約17.74億円だが、これは権利が所定の条件で行使された場合の金額であり、確定した現金収入ではない。第5回の行使価額は株価に連動して修正され、下限が設けられている。残る回号にも行使条件があり、全額を当然に調達できるとは考えない。
資金の主な使途は2027~2029年の開発研究費で、会社はその総額を約25億円と見込む。したがって調達資金を研究開発利益とは別に企業価値へ加算してはいけない。新株発行で資本が増えた分は、研究費の支出と現在の株主の持分低下の双方を反映させる必要がある。将来も大規模な増資が必要になる筋書きでは、発行可能株式総数の変更や株主総会の承認が必要になる可能性がある。
2025~2027年の事業計画では、共同研究の新規契約を年間2件、自社パイプラインの創出を年間1本とする活動目標が示されている。後者の創出は特許出願を基準とするもので、治験成功や導出収入を意味しない。2026年12月期の業績予想は売上高1.13億円、営業損失5.69億円、純損失5.67億円である。一方、中期的な売上高、営業利益、ROEの達成額や、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について、確認できる数字の約束はない。
過去には上場による増資を行い、研究開発資金を確保してきた。大規模な買収や自己株買いによって資本を配分した実績は確認できず、配当も行っていない。研究成果を得るまでの資本確保が優先されており、今後は導出収入と追加資金調達のどちらが企業の成長を支えるのかを見極めたい。現時点で公表されたTOBやMBO、上場廃止予定は確認できず、2026年上期決算の継続企業の前提に関する注記は「該当事項なし」である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
RNAは従来の小分子創薬で十分に扱えていなかった標的を含み、新しい治療薬を生み出す余地が広い。RNAの三次元構造を精密に測り、実際に結合する化合物を取得する技術を蓄積できれば、同社は単なる受託研究会社ではなく、新薬候補の供給源となりうる。東レとのPCSK9共同研究でヒット化合物を得た事実は、長年蓄えてきた技術が研究の成果に結びついた一例だ。既存の薬と異なる作用の仕組みや服用しやすさを実現できれば、大きな商業価値を持つ。
自社パイプラインへの転換も合理性がある。大手製薬会社が研究の初期段階より開発候補の導入を重視するなら、候補薬を自社で作って権利を保有するほうが、一件当たりの経済的価値は大きい。急性腎不全、がん、ALSのように治療上の課題が残る領域では、新しい作用機序の候補薬が評価されやすい。三菱ガス化学との核酸医薬研究や大学との共同研究を通じて、単一の技術に依存しない候補薬群を作る道もある。
Perfusioが臨床試験を短縮し、標的臓器に効率よく薬剤を届ける技術として認められれば、核酸医薬品が直面する送達の問題を軽減できる。薬剤そのものを販売しなくても、製薬企業との技術ライセンスから収入を得る選択肢が生まれる。2027~2029年に計画する投資が、複数の導出候補を短期間で育てる成果をもたらす可能性もある。
会社の規模が小さいことは、成功時の利益の伸びしろでもある。現時点の共同研究収入は少額だが、候補薬の導出一件が数年分の研究支援金を上回ることは十分考えられる。二件以上の大型導出と複数の開発マイルストーンが重なれば、研究費を負担した後でも黒字化する余地がある。既存株主の持分は減るとしても、企業全体の価値が十分大きくなればその不利益を補える。
慎重な見方
研究室で有望な化合物を見つけても、新薬を作れたことにはならない。候補物質には薬効だけでなく、安全性、体内での動き、製造方法、知的財産、規制当局への対応が求められる。会社の主なパイプラインはまだ開発初期にあり、研究上の成功を承認確率に読み替える根拠はない。PCSK9にはすでに商業化された治療法が存在し、競合する薬剤との優位性も証明しなければならない。
共同研究の契約継続にも不確実性がある。2026年には武田薬品との研究が終了した。東レとの成果についても、権利は共同で保有され、2026年10月の研究上のマイルストーン達成に伴う収入はなかった。共同研究を長く続けても、会社に残る収益が小さければ研究員の給与や実験設備を賄えない。顧客が自社で構造予測や化合物探索を進める能力を高めれば、外部への研究委託費が減る可能性もある。
資金面では、2025年末の自己資本が約17.8億円あることだけでは安心できない。2026年の純損失予想は5.67億円に達し、会社が掲げる翌年からの研究投資計画はさらに大きい。新株予約権による調達額は株価と行使状況に左右される。研究が思うように進まないと、資金が必要な時期ほど株価が弱くなり、より多くの株式を発行しなければ同じ額を調達できなくなる。
その過程で現在の株主が失うものは大きい。最大360万株の新株予約権だけでなく、その先の開発研究や治験のためにも資本が必要になる場合がある。大型の導出収入が遅れれば、株主資本は研究費で消耗し、新規投資家が安い価格で持分を取得する構造になる。上場廃止や事業停止に至らなくても、長期保有した既存株主の利益がほとんど残らない結果は十分に考えられる。
どちらに重みを置いたか
技術の実在性は認めるが、現時点では慎重な見方の根拠が強い。東レとのヒット化合物取得は前進である一方、追加の現金収入を生まず、武田薬品との研究終了や大規模な新株予約権の発行は商業化までの困難を具体的に示している。確率は上側25%、中立29%、下側46%と、下側へ21ポイント寄せた。下に寄せる理由はAIの代替圧力を重ねて罰するためではなく、医薬品の研究開発失敗、導出の遅延、調達条件の悪化という会社固有の危険が重なるためである。成功の上振れは大きいが、その確率と希薄化を併せて評価した結果、現在の株価には十分な安全域がないと判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 133 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 4 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 55 円4 億円、今との差 −81.4%、 期待の年率 −7.5%(資本コスト 9.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 925 円60 億円 | 45 円3 億円 | +228.9% | +13.1% | 78 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 291 円19 億円 | 0 円0 億円 | −1.3% | −0.1% | 49 円3 億円 |
| 中立 | 29% | 22 円1 億円 | 0 円0 億円 | −92.4% | −22.7% | 7 円0 億円 |
| やや悲観 | 29% | 11 円1 億円 | 0 円0 億円 | −96.4% | −28.3% | 3 円0 億円 |
| 悲観 | 17% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −49.0% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 133 円9 億円 | 4 円0 億円 | −53.6% | −7.5% | 137 円9 億円 |
今の株価時価総額 295 円19 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 複数の自社候補薬が大型導出に成功する 利益 10 億円 · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 925 円60 億円
RNA標的の低分子創薬が複数の疾患で有効な選択肢として認められる。東レとのPCSK9研究が創薬候補の開発へ進み、別の共同研究からも導出に値する化合物が生まれる。自社では急性腎不全とがんの候補薬が初期臨床で有望な結果を示し、海外製薬会社との導出契約を獲得する。Perfusioも薬剤送達の有効性と規制上の条件を満たし、複数の製薬会社が採用する。
成功の中心は研究支援の工数を増やすことではなく、保有する候補薬の権利から収入を得る事業への転換である。年間の導出と開発マイルストーン収入が研究支援金を大きく上回り、研究員や試験費用を負担した後にも純利益が残る。複数の研究テーマで成功するため、一つの提携先による契約終了が会社全体を揺るがすことも少なくなる。
資金面では、既存の新株予約権がすべて行使され、その後の開発資金も比較的有利な条件で確保できる。会社は初期の巨額投資を吸収し、2035年には利益の一部を株主へ還元できる。ただし、最終的に現在の株主が保有するのは増資後の約58.5%であり、会社全体の成功をすべて既存株主の利益とみなすことはできない。
- 共同創薬の研究支援金:数量 4.0(有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定))× 価格 0.27(案件年あたり研究支援金(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。有償共同研究は4案件年相当。研究支援の数量は現在を超えず、価格だけ名目で上昇する。AIの恩恵を理由に研究工数を増やさない。
- 共同創薬の契約金・研究マイルストーン:数量 4.0(収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年)× 価格 0.80(収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 3 億円。複数の共同研究が契約金や研究マイルストーンにつながり、年間4件の収益化イベントを認識する。
- 自社パイプラインの導出・開発マイルストーン:数量 3.0(自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年)× 価格 8.00(導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 22 億円。複数の候補薬の導出や開発成功によって年間3件相当の一時金・開発マイルストーンを得る。
- Perfusio・薬剤送達技術のライセンス:数量 2.0(製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年)× 価格 2.00(ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。送達技術の採用が進み、年間2件の商業ライセンス収入が成立する。
倍率:2035年の純利益10億円、資本コスト9.75%、2035年以降の名目成長率g_long=0%を適用する。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)はg=0のため1÷0.0975=10.25641倍となる。将来の研究テーマの成功は2035年の純利益に反映済みとし、長期倍率には重ねない。PERの算定に現在や同業の市場倍率を使わない。
確率:独自技術による複数の候補薬創出、前臨床からの開発成功、複数の製薬会社との大型導出、資金調達の有利な実行がそろう場合に限る。技術の実在性から可能性は残すが、初期創薬の難しさから一桁台の確率とする。
やや楽観 17% 自社パイプラインの導出が収益の柱になる 利益 4 億円 · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 291 円19 億円
急性腎不全向けとがん向けの候補薬のうち、一部が導出に必要な研究成果を得る。製薬会社との共同研究も継続し、契約一時金やマイルストーン収入が増える。東レとのPCSK9プログラムは研究の重要な足場となるが、権利を共同で保有するため、その全経済価値が同社へ帰属するわけではない。Perfusioについても特定の薬剤との組み合わせで初めて商業採用が進む。
研究支援業務はAIによって効率化され、顧客が必要とする外部工数は減少する。ただし、RNAの構造検証や実験系の評価には引き続き専門的な設備と人材が必要となる。会社は研究作業を受託するだけの立場から、独自の候補薬や技術を保有する企業へ移行し、2035年には利益を確保する。
研究投資の先行期間には複数回の資金調達が必要になる。発表済み新株予約権の大半が行使され、その後に追加で株式を発行すると想定する。利益が出る段階まで生き残ることには成功するが、既存株主の持分は約51%に減少する。大きな技術上の成功があっても、投資期間の資本負担が株主の収益率を抑える。
- 共同創薬の研究支援金:数量 3.5(有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定))× 価格 0.26(案件年あたり研究支援金(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。研究委託の数量は現在の87.5%で、価格は名目上昇してもAIによる効率化の分だけ工数が減る。
- 共同創薬の契約金・研究マイルストーン:数量 3.0(収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年)× 価格 0.50(収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。共同研究が年間3件の契約・研究成果イベントにつながる。
- 自社パイプラインの導出・開発マイルストーン:数量 2.0(自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年)× 価格 6.00(導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 11 億円。自社候補薬の導出とその後の開発マイルストーンを合わせて年間2件相当の収入を認識する。
- Perfusio・薬剤送達技術のライセンス:数量 1.0(製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年)× 価格 1.50(ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。製薬企業向けの技術ライセンスが年間1件成立する。
倍率:2035年の事業純利益3.6億円と資本コスト9.75%を使用する。長期名目成長率は0%なので、利益ベースの正当化PERは1÷9.75%=10.25641倍となる。自社候補薬の成功が続く場合も、次の研究開発と特許寿命があるため倍率側で永続成長を仮定しない。
確率:少なくとも一部の候補薬が導出に至るが、承認や大規模ロイヤリティまでは前提にしない。会社の研究成果と資本投下計画から実現余地はあるものの、資金調達の負担と契約交渉の不確実性を考慮する。
中立 29% 研究成果は出るが、開発負担が利益を上回る 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 22 円1 億円
東レや他の提携先との研究で新しい化合物が得られ、共同研究そのものは継続する。しかし、大手製薬会社が研究を社内で進める能力を高め、外部の探索業務への委託費は減る。研究支援金は物価上昇の影響で名目単価が上がるものの、案件年の数量は現在の7割程度となる。共同研究の契約金や研究マイルストーンも、各年に大型の収入をもたらすほど安定しない。
自社パイプラインから小規模な導出は実現するが、製品の承認まで到達した候補薬はなく、医薬品販売による継続収入は得られない。Perfusioも限られた開発用途で使われるにとどまる。独自技術の価値は残る一方、維持するための研究開発費、臨床対応、人材確保の負担が大きく、2035年にも営業赤字を計上する。
会社は発表済み新株予約権の一部を行使して資金を確保した後、複数回の追加増資で事業を続ける。発行可能株式総数の変更が必要となる規模の増資も想定する。企業は存続するが、現在の株主の持分は約22%まで低下する。技術を保有したまま、資本を繰り返し投入しなければ収益が得られない研究開発会社としての性格が残る。
- 共同創薬の研究支援金:数量 2.8(有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定))× 価格 0.27(案件年あたり研究支援金(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替による研究分析工数の削減で数量は現在の70%。名目単価は約1.31倍にとどまり、物価上昇を完全には転嫁できない。
- 共同創薬の契約金・研究マイルストーン:数量 1.5(収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年)× 価格 0.35(収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約・研究成果の収益認識は年間1.5件相当。大型一時金が毎年発生する前提ではない。
- 自社パイプラインの導出・開発マイルストーン:数量 0.8(自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年)× 価格 4.00(導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 3 億円。開発初期の候補薬の小規模導出や契約済み開発マイルストーンを平均化して年間0.75件とする。
- Perfusio・薬剤送達技術のライセンス:数量 0.3(製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年)× 価格 0.80(ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。臨床開発の一部で採用されるが、独立した商業収益源には育たない。
倍率:2035年にも純損失2.8億円が残り、自己資本18.93億円に対するROEは約−14.8%で資本コスト9.75%を大きく下回る。利益ベースのPERは使えないため、研究資産の収益化可能性と将来の持分消耗を考慮した自己資本に対する評価とする。帳簿上の研究開発投資や払込資本がそのまま回収可能とは限らず、PBR1倍を最低価値とは考えない。市場の過去のPBRから倍率を選んだものではない。
確率:共同研究の継続や限定的な導出はあり得る一方、先行する研究費と長い臨床開発期間を考えると、2035年の安定黒字を中立の既定にはできない。研究の技術的前進と商業化の間の距離を重視する。
やや悲観 29% 提携の縮小と増資の繰り返し 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11 円1 億円
製薬会社が研究の対象を絞り、共同研究契約は縮小する。東レとのPCSK9研究などの一部は継続しても、他の案件では有用な候補物質の取得に時間がかかり、マイルストーン収入は減少する。RNA構造の予測や初期の化合物探索は外部ツールや製薬会社の内製研究へ移り、同社の研究支援業務はより小規模になる。
自社パイプラインでは動物試験や初期臨床の結果が期待に届かず、主要な候補薬の導出が延期される。限られた権利の売却や小規模な研究契約から収入を得るものの、支出を支えるには足りない。会社は人員と研究所の費用を大きく削減し、研究テーマを整理して存続を図る。Perfusioは商業ライセンスとして広がらない。
資金繰りを支えるため、発表済み新株予約権の多くが低い行使価額で使われ、さらに追加の新株発行が必要となる。現在の株主の持分は約27.6%となる。経営は生き残っても、残る事業は規模が小さく、利益が資本コストを上回る見通しを持てない。2035年時点で株主に分配できる資産は、帳簿に表示される資本よりずっと少ない。
- 共同創薬の研究支援金:数量 1.8(有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定))× 価格 0.23(案件年あたり研究支援金(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。研究支援の案件年は現在の45%まで減少。値上げも十分には通らず、物価上昇に追いつかない。
- 共同創薬の契約金・研究マイルストーン:数量 0.5(収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年)× 価格 0.15(収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。研究成果の収益化は小規模で、隔年程度に少額のマイルストーンが生じる。
- 自社パイプラインの導出・開発マイルストーン:数量 0.2(自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年)× 価格 1.50(導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有望な開発品の大半が停滞し、限られた権利の小規模導出にとどまる。
- Perfusio・薬剤送達技術のライセンス:数量 0.0(製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年)× 価格 0.80(ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。送達技術の外部ライセンスは成立しない。
倍率:将来増資による払込資本を自動的に床へ積み上げず、基準時の自己資本17.8億円を悲観側のPBRの評価分母とする。2035年の営業損失と純損失は1.8億円で稼ぐ力の価値は正と認めず、継続的な研究費と優先すべき支払を控除した実現可能な資産2.5億円を会社全体の価値とする。2.5÷17.8=0.14044944倍であり、中立のPBR0.35倍より低い。
確率:2026年の共同研究終了実績と、2030年以前の大きな先行投資計画から、研究契約の縮小と調達条件の悪化が同時に起きる可能性を重く見る。会社は存続するが、収益化の規模が小さく既存株主の持分が薄まる場合である。
悲観 17% 研究事業が実質的に行き詰まる 利益 −1 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
東レとのPCSK9研究を含む主要案件が承認を目指す開発へ進めず、他の共同研究も縮小する。RNAの構造解析や化合物探索では競争企業と製薬会社の内製研究が進み、同社の技術は採用先を広げられない。研究上の特許が残っても、有償契約を生む価値は小さい。新しい創薬候補も毒性や有効性の問題で導出できず、Perfusioの商業化も成立しない。
会社は研究所の縮小と人員削減を進めるが、固定費や過去の開発契約に伴う支払いは残る。新株予約権の大半は有利な条件で行使されず、事業継続を望む新しい投資家に対して極めて低い価格で大量の株式を発行する。会社の事業は小さな研究機能だけになり、技術資産の一部を売却して必要な資金を確保する。
この場合の問題は、会社そのものが残るかどうかより、現在の普通株主に何が残るかである。大規模な救済増資が行われると現在の株主の持分は約11.4%まで低下する。さらに悪ければ再編や上場廃止に至る可能性もあるが、この筋書きでは小さい正の会社価値と既存株主の残存持分を保つ形で評価する。
- 共同創薬の研究支援金:数量 0.8(有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定))× 価格 0.20(案件年あたり研究支援金(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。研究支援は現在の20%程度の案件年だけ残り、値上げの交渉力も失う。
- 共同創薬の契約金・研究マイルストーン:数量 0.0(収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年)× 価格 0.10(収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。追加の有償マイルストーンは発生しない。
- 自社パイプラインの導出・開発マイルストーン:数量 0.0(自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年)× 価格 4.00(導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。自社候補薬の導出に至らない。
- Perfusio・薬剤送達技術のライセンス:数量 0.0(製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年)× 価格 0.80(ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。商業ライセンスが成立しない。
倍率:悲観では研究事業が利益を生まず、継続する損失によって資本コストを回収できない。将来の大量増資で得られる払込資本をそのまま床へ積まず、基準時の自己資本17.8億円をPBRの分母に使用する。2035年に残る実現可能な資産を0.2億円と想定し、0.2÷17.8=0.01123596倍とする。企業全体の価値は正の小額であり、中立およびやや悲観より低い。
確率:主要候補薬の失敗に加え、共同研究の終了と資金調達難が重なる場合である。会社の現在の研究段階と赤字規模から無視できない確率を置くが、技術資産の売却や事業縮小で一定の残存価値が生じる可能性もあるため、会社価値を完全なゼロにはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
共同創薬の研究支援金
製薬会社との共同研究におけるRNA標的探索、構造解析、化合物選別などの研究支援収入。計算による探索と実験室での検証を含み、一部はAIエージェント代替の対象となる。
| 数量有償共同創薬研究の案件年(実際の稼働契約数が非開示のため推定) | 価格案件年あたり研究支援金(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 0.20 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 0.27 | 1 | 1 |
取り方:2026年上期決算説明資料の2025年実績では研究支援金等が81百万円。会社は案件ごとの稼働年数、年間研究費、契約単価を開示していないため、共同研究実績のある東レ、塩野義製薬、ラクオリア創薬、その他を含めた案件年4件相当を分析上の基準とし、81百万円÷4=0.2025億円を推計単価とした。これは契約先別の実際の単価ではない。営業利益相当額は本社と研究開発費を引く前の収益寄与であり、全社の費用は筋書きのadjust_okuで控除する。AI代替の型は『人月・工数および情報・調査サービス型』を研究支援部分に適用するが、実験室での測定や特許の権利価値には一律に適用しない。資料:https://www.veritasinsilico.com/jp/ir/news/auto_20260805509176/pdfFile.pdf
共同創薬の契約金・研究マイルストーン
共同創薬契約の締結や研究上の進捗に応じて発生する一時金。受領条件は契約ごとに異なり、研究上のマイルストーンがすべて収益を生むわけではない。
| 数量収入を認識できる契約一時金・研究マイルストーン件数/年 | 価格収益化イベント1件あたりの平均収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 0.10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 0.35 | 1 | 0 |
取り方:2025年実績のマイルストーン収入10百万円を、年間1件相当の収益化イベントに換算した。実際の契約別イベント件数は非開示であり、0.10億円はモデル上の平均額である。2023年の契約一時金150百万円やマイルストーン99百万円は、契約時期による収入の大きな変動を示す実績として参照し、毎年繰り返すものとはしない。2026年10月19日の東レとのヒット化合物取得に伴う追加収入は発生していない。
自社パイプラインの導出・開発マイルストーン
急性腎不全、がん、ALSなどに関する医薬品候補の権利を製薬会社へ導出する際の一時金と、その後の開発成果に応じた収入。現時点では実績売上がない。
| 数量自社パイプラインの有償導出・開発マイルストーン認識件数/年 | 価格導出または開発マイルストーン1件あたりの平均収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 4.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 4.00 | 3 | 3 |
取り方:2025年時点で自社パイプラインの商業導出収入は実績がないため数量を0とする。価格4億円は現在の実現単価ではなく、将来の小規模な開発候補導出または開発マイルストーンを想定した分析上の仮単価である。会社の研究計画は2027~2029年に動物試験と医師主導臨床試験を進め、製薬会社への導出を目指すものであり、承認済み製品や既存のロイヤリティ契約を意味しない。案件ごとの契約額、市場シェア、想定患者数は未公表のため、会社の研究進捗から成立可能な年間件数を段階別に推計する。
Perfusio・薬剤送達技術のライセンス
局所的な薬剤送達を可能にする技術について、製薬会社や開発企業からライセンス料を得る潜在事業。病院の処置件数を直接の収益単位とはしない。
| 数量製薬会社等とのPerfusio技術ライセンス契約件数/年 | 価格ライセンス契約1件あたりの平均収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.80 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 0.80 | 0 | 0 |
取り方:2025年にPerfusioの商業ライセンス収入はない。0.8億円は将来のライセンス収入を感応度分析するための仮単価であり、契約に基づく実績価格ではない。会社は2026年5月にPMDAとの医療機器に関する相談準備を進めており、事業化やライセンス条件は未確定である。医療機器の承認、製薬会社の採用、対象薬剤の臨床的有効性の確認が必要なため、中立では年間1件未満の期待収益相当で評価する。
リスクと懸念
候補薬の非臨床・臨床開発の失敗
2026年の東レとのヒット化合物取得は、薬として人に投与できることを証明していない。毒性、体内分布、薬効、製造方法、特許、臨床での有効性のいずれかに問題があれば、導出収入やロイヤリティは生まれない。自社パイプラインが前臨床段階にあるため、研究成功の報道と承認薬の販売収入を直結させないことが重要である。
AIエージェント代替
共同研究に含まれる計算上の標的探索、文献調査、化合物の候補選別、分析資料の作成は、製薬会社のAIエージェントや内製ツールによって代替されうる。研究支援金の一部が工数に応じて支払われるなら、効率化は請求できる数量を減らす。実験によるRNA構造測定や独自の化合物データ、特許による権利収入は別物であり、AIで全事業が消えるとは見ていない。中立の研究支援数量に現在の70%を反映し、長期名目成長率を0%とする。
新株予約権と将来の追加増資
2026年10月に発表された新株予約権だけで最大360万株の発行可能性があり、既存株式数に対して55.49%の希薄化となる。行使価額と実際の調達金額は株価によって変わり、すべての予約権が行使される保証もない。研究費が必要な局面で株価が低迷すれば、調達金額が不足するか、さらに多数の株式を安く発行する必要がある。企業価値が増えても、現在の株主の取り分は同じ割合では増えない。
共同研究契約への依存と交渉力
研究支援金とマイルストーンは少数の提携先の研究計画に依存しており、会社が独力で収益認識時期を決められない。2026年4月には武田薬品との共同研究が終了した。東レとの進捗も権利が共有され、研究上の成果の発表と追加収入の発生は一致していない。製薬会社が予算削減や戦略変更を行えば、技術的な成果があっても契約終了や収入減につながりうる。
Perfusioの規制と商業採用
薬剤の送達を改善するという技術上の狙いと、医療機器として安全かつ有効に使えることは別である。PMDAとの相談、試験設計、製造管理、臨床での実用性確認が必要であり、規制上の取り扱いが想定より厳しければ事業化は遅れる。さらに製薬会社が実際の開発計画で使用し、有償のライセンスを結ぶ必要がある。患者数や使用可能な医療現場の数だけから収入を推定してはならない。
特許と創薬技術の陳腐化
同社の研究技術は独自性を持つが、RNA標的低分子創薬にはArrakis Therapeutics、Anima Biotechなどの競合企業や大手製薬会社も投資している。新しい測定法や計算技術が普及すると、初期探索の差別化は薄れる可能性がある。特許があることだけでは実際に競合企業の参入を防げず、権利の存続期間も有限である。開発品を継続して生み出すための研究費を必要とする点にも注意する。
資産の見かけの厚さと現金消費
2025年末の現金及び預金には三か月超の定期預金が含まれ、短期の現金同等物だけで財務を判断すると流動資産を見落とす。一方、その預金の大部分には研究開発資金としての使途がある。会社は2027~2029年の開発研究費を約25億円と見込み、2026年も大幅な赤字を予想する。負債が少ないことを理由に現在の現預金全額を株主へ還元できると見なせば、研究継続に必要な資本を二重に数えることになる。
今後の分かれ目
- 東レとのPCSK9共同研究が正式な開発候補の選定や臨床開発への移行に進み、対価を伴う新しい契約が開示されたら
- 研究上の成功が商業価値につながる証拠となるため、共同研究マイルストーンの数量と上側の筋書きの確率を見直す。ただし権利配分と実際の金銭条件を先に確認する。
- 自社パイプライン1または2について、製薬会社への有償導出と前臨床・臨床での有効性を裏づける結果が両方確認されたら
- パイプライン事業の売上と利益の見通しを上方修正する。契約総額だけでなく、一時金、条件付きマイルストーン、ロイヤリティの内訳を分けて評価する。
- 2026年発表の新株予約権の行使が進まず、当初の想定よりも調達額が大きく減ったら
- 開発計画の縮小や追加増資が必要になる可能性が高まるため、下側の確率を増やす。発行株数の増加だけでなく研究費を賄える実際の手取額も確認する。
- 新規共同研究契約が年間2件の活動目標を継続的に達成し、研究支援収入も増えたら
- 研究支援数量と契約マイルストーンの想定を改善する。ただしAIによる業務効率化で契約単価や研究期間が短縮されていないか、併せて確認する。
- Perfusioについて規制上の使用条件が確定し、製薬会社との有償技術ライセンスが成立したら
- 現在ゼロの収益実績を持つ新事業が実証されたことになる。契約単価と採用される薬剤数に基づいて数量を改め、利益への貢献を計算する。
- 共同研究の終了が相次ぎ、研究支援金とマイルストーン収入が複数年にわたって減少したら
- 技術の実用性が商業契約を守るほど強くないと判断し、研究支援数量、契約成功確率、開発資金の回収可能性を下方修正する。
見ておくもの
- 東レとのPCSK9プログラムがヒット化合物取得からリード化合物最適化、開発候補選定、製薬会社による開発段階へ移るか
- 急性腎不全向けパイプライン1とがん向けパイプライン2の動物試験、医師主導臨床試験、導出契約の進捗
- 共同研究の新規契約件数と終了件数、研究支援金・契約一時金・マイルストーン収入の内訳
- 第5回から第9回新株予約権の実際の行使株数、平均行使価額、手取額、残存予約権
- 追加増資に伴う完全希薄化後株式数と、旧株主が保有する割合
- 現金及び預金と三か月超の定期預金、営業キャッシュフロー、残る開発研究費の計画額
- PerfusioのPMDAとの協議結果、規制上の進捗、製薬会社との有償ライセンス契約の有無
- 創薬プラットフォームのAI利用による探索単価、研究期間、顧客の内製化状況
倍率と資本コストの決め方
評価の起点には指定された2025年12月期の財務と2026年10月23日の基準株価・株数を使った。先に研究支援の案件年と単価、契約マイルストーン件数、自社候補薬の導出イベント数、Perfusioの技術ライセンス件数を分け、研究開発費を控除して五つの損益を求めた。次に資本コスト9.75%、10年より先の成長率0%、弱い堀という条件から利益ベースの倍率を定めた。赤字側は現在の自己資本を悲観側PBRの分母とし、2035年に残る売却可能な資産を別に確認した。
最も重要な点検は新株の二重計上である。発表済み予約権と将来の仮定増資による払込資金は事業の資金源と自己資本の道筋に含め、旧株主の持分係数は時価総額と還元に最後に一度だけ適用した。楽観では2026~2035年の累積純利益約9.73億円と払込資金約21.7億円から、還元5億円を差し引いて自己資本約44.23億円となる。やや楽観では累積純損失約15.17億円と払込資金約21.3億円から自己資本約23.93億円、中立では累積純損失約52.97億円と払込資金約54.1億円から約18.93億円となる。これらの資金調達額と時期は実行確約ではなく、悲観側のPBRには将来の増資で膨らませた自己資本を使わない。
時価総額は楽観102.5641億円、やや楽観36.9231億円、中立6.6255億円、やや悲観2.5億円、悲観0.2億円の順である。既存株主の持分と期間還元を考慮した確率加重現在価値は約3.55億円で、基準時価総額19.461億円との差は約−81.7%となる。現在や同業のPER・PBRから価値を逆算していない。最大の不確実性は創薬の成否に加え、必要な増資の価格・株数・実行可能性にある。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.5%。基本の資本コスト7.5%に事業品質の+0.75%と、継続する損失および将来研究資金の確保が必要な事業の財務上の不安定さに対する+1.5%を加える。企業規模や株価のベータには上乗せしない。