結論
生化学工業は、糖質科学の会社だ。関節や眼の手術に使うヒアルロン酸の薬と、エンドトキシンを測る LAL 試薬の 2 本で稼ぐ。筆者の結論は、本質価値が今の時価総額を大きく下回る割高、というものだ。時価総額の大半は純現金と保有株で、事業の稼ぐ力は低い。
2026 年 3 月期の営業損益は 7 億円の赤字だった。前の期にあった 26 億円のロイヤリティーがほぼ 0 になり、海外医薬品も減ったためだ。最終利益は 15 億円で、投資有価証券の売却益に支えられた。
強みは財務だ。純現金は 118 億円、自己資本比率は 87% で、赤字の年にも耐えられる。一方、ROE は過去 10 年の中央値で 3% にとどまり、資本コストの 8% には遠い。研究開発費は売上の約 2 割で、成果が出ない年が続いた。
10 年の中心は、LAL の伸びが医薬品の減りを埋め、営業利益が 16 億円になる道だ。SI-6603 が承認されて当たる道が開けば、評価は大きく上がる。ただし 2026 年 9 月に米国の FDA から 2 度目の指摘を受けたばかりで、確率は 1 割弱に置いた。上下の幅が大きい銘柄である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い資産を持ちながら、稼ぎに変えられていない会社」である。
事業は、LAL の部分は伸びて堅い。しかし研究開発費が重く、全体の営業利益率は 1 桁で、持ち主に残る利益は小さい。純利益が 20 億円に届く年も、投資有価証券の売却益の分が大きい。
一方、資産は本物だ。純現金と保有株で 270 億円ほどあり、時価総額の 9 割近くに当たる。自己資本比率は 87% で、赤字の年にも倒れない。
筆者が見たいのは、その資産が稼ぎに変わるかだ。保有株の配当は年 5 億円ほどで、資産に対する利回りは 2% に届かない。売って配当に回す形では、元本が減る。LAL の成長で営業利益が安定的に出ると示されれば、見方は変わる。
値付けは、10 年の価値に対して割高と見る。ただし、純現金と保有株が下値を支え、赤字でも倒産しない点は評価する。
何で稼ぐ会社か
生化学工業は、ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸を中心とする糖質科学の会社だ。医薬品の販売部門は持たず、国内外の提携企業を通して売る。2026 年 3 月期の売上は 366 億円。国内医薬品が 118 億円、海外医薬品が 94 億円、原薬・受託製造が 33 億円、LAL が 122 億円で、ロイヤリティーはほぼ 0 だった。
主力は、変形性関節症の関節内注射剤(アルツ)と、眼科手術の補助剤(オペガン類)だ。国内ではどちらも首位級のシェアを持つ。米国では、関節注射剤 SUPARTZ FX を提携先を通して売る。海外では中国の売上も大きい。
LAL は、カブトガニの血球から作る、エンドトキシン(発熱物質)の検査試薬だ。注射薬や医療機器の出荷検査に使われ、製薬が伸びるほど需要が増える。2026 年 3 月期のセグメント利益は 10 億円で、営業利益率は 8% だった。会社は遺伝子組換えの試薬(PyroSmart NextGen)も持ち、動物由来でない選択肢として広げている。
開発品は、腰椎椎間板ヘルニアの注射薬 SI-6603、膝・股関節向けの Gel-One、ドライアイの SI-614 などだ。2026 年 4 月には癒着防止材 SI-449 の承認を取った。
研究開発費は 70 億円と、ロイヤリティーを除く売上の 19% に当たる。この重い費用が、営業利益を押し下げている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、中程度だと見る。
強みは、ヒアルロン酸を作る技術と、国内での首位級の位置だ。糖質の抽出と精製には長年の蓄積があり、アルツやオペガン類は医師の使い慣れた品として残る。LAL は、組換え試薬を第 3 世代として持つ珍しい会社で、薬局方での採用が進めば差がつく。
弱みは、販売を提携先に頼ることと、研究開発の成果が出ないことだ。アルツは薬価が毎年下がり、米国では少数回投与品に押される。SI-6603 は 2025 年 3 月と 2026 年 9 月の 2 度、製造面の指摘で承認を逃した。中期経営計画(2023〜2026 年度)は、売上 400 億円・営業利益 70 億円の目標に届かなかった。
資本効率は低い。営業利益率は過去 10 年の多くの期で 1 桁、ROE の中央値は 3% にとどまる。純現金と投資有価証券を合わせて 270 億円ほどを抱え、その配当と利息が利益の一部を作る。
経営は、配当を利益以上に払い(2026 年 3 月期の配当性向 111%)、足りない分を保有株の売却益で補ってきた。株主への姿勢は悪くないが、稼ぐ力で払う形になっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
関節機能改善剤(ヒアルロン酸)は、成熟した市場だ。国内は高齢化で患者が増えるが、薬価が毎年のように下がり、売上は数量で支えて単価で削られる形になる。
米国では、関節注射剤は保険の対象で、患者の数も大きい。ただし投与回数の少ない新しい品に市場が移り、SUPARTZ FX のような 5 回投与品は減っている。中国では、国の集中購買で価格が大きく下がる。
競争は、関節注射剤では国内外の複数社が同じ類の品を売る。差は効き目より、投与回数、薬価、医師との関係で決まる。生化学工業は国内で首位級だが、新しい品を投入する力は強くない。
LAL は、成長する市場だ。生物学的製剤、ワクチン、細胞治療が増え、出荷検査の件数が増える。ただしカブトガニの保護の流れで、遺伝子組換えの試薬へ移る動きがある。競合は、ロンザの PyroGene、ビオメリュー傘下ハイグロスの EndoZyme、チャールズリバーの組換えカートリッジ、富士フイルム和光純薬などだ。移行が進めば、先に動いた会社は有利になるが、価格は下がりやすい。
開発品のうち、SI-6603 は米国の腰椎椎間板ヘルニア向けで、提携先のフェリングが売る。市場の大きさは年 300 万〜500 万人と会社が見積もる。承認されれば手術前の選択肢になりうるが、ピーク売上は公表されていない。
資本政策と M&A
資本政策は、配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当は総額で約 16 億円、配当性向は 111% だった。利益を上回って払う方針に見えるが、足りない分は保有株の売却益で賄っている。2027 年 3 月期も経常利益 42 億円の予想に、売却益が含まれる。
純現金は 118 億円、投資有価証券は 157 億円ある。自己資本は 753 億円で、時価総額の 2.4 倍だ。一方で、茨城の高萩工場などへの設備投資が 59 億円あり、現金は営業赤字と投資で減っている。
自己株式は 221 万株ほどで、近年は大きな買い入れがない。保有株の配当は年に約 5 億円入る。これらは利益の一部で、別に価値を足さない。
成長投資は、LAL の増強、SI-6603 の再申請、Gel-One の開発だ。小野薬品との提携(2025 年 8 月)で、国内の関節向けの共同開発を進める。確率モデルは、10 年以内に TOB・買収される確率を 3 割ほどと見ている。ただし、大株主の構成は本稿で確かめていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SI-6603 が承認され、米国で使われ始める。FDA の指摘は製造施設と新しい委託先の管理に絞られ、効き目や安全性への指摘はなかった。追加の臨床試験も求められていない。製造の不備を直せば、承認に届く可能性は残る。
提携先のフェリングは、2016 年の契約で全世界(日本を除く)の独占的な権利を持つ。会社は一時金 500 万ドルを受け取り、進捗に応じて最大 9,000 万ドルのマイルストーン型ロイヤリティーを受け取る。承認されれば、原薬の供給とロイヤリティーが入り、利益率が高い。
LAL は、組換え試薬の追い風が強い。カブトガニの保護と、薬局方の改正が、動物由来でない試薬の採用を後押しする。セグメント利益は 2026 年 3 月期に 10 億円で、営業利益率は 8% だった。規模が増えれば、利益率は 15% 前後まで上がる。
資産の面でも、保有株や現金が株主に戻る道がある。PBR は 0.4 倍と低く、物言う株主や TOB を呼びやすい。確率モデルも、TOB の確率を 3 割と見る。
慎重な見方
開発の失敗が続いている。SI-6603 は 2025 年 3 月と 2026 年 9 月に 2 度、承認されなかった。2 度目は、原薬の製造施設の指摘が残り、新しい製剤の委託先の査察にも不備があった。同じ型の指摘が続くのは、製造管理の体制が整っていない証拠でもある。
中期経営計画(2023〜2026 年度)は、営業利益 70 億円の目標に届かず、2026 年 3 月期は赤字になった。研究開発費は売上の 19% と重いが、成果が見えない。
海外は強くない。米国では少数回投与の新しい品に市場を奪われ、中国では集中購買で価格が下がる。国内も、薬価が毎年下がり、数量で支えるのが限界に近い。
LAL は伸びるが、組換え試薬の市場には、ロンザ、チャールズリバーなど大手が入る。価格競争になれば、利益率は 8% 以上に上がらない。利益の一部は保有株の配当と売却益に頼り、これは続かない。配当は利益を上回って払われ、元本を削っている。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重の見方では、慎重を重く見た。LAL の成長は事実だが、利益率は 8% にとどまり、医薬品の減りと研究開発費の重さが利益を消している。SI-6603 は 2 度の指摘を受けた直後で、確率を厚くできない。
一方、純現金と保有株という下支えがあり、悲観でも倒産は遠い。そこで強気を 8%、やや強気を 2 割、悲観を 12% に置いた。期待値は、今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 376 円205 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 225 円123 億円)。 今の値に割り戻すと 305 円167 億円、今との差 −46.6%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 936 円511 億円 | 450 円246 億円 | +142.4% | +9.3% | 111 円61 億円 |
| やや楽観 | 20% | 527 円288 億円 | 284 円155 億円 | +41.8% | +3.6% | 162 円89 億円 |
| 中立 | 38% | 383 円209 億円 | 238 円130 億円 | +8.5% | +0.8% | 236 円129 億円 |
| やや悲観 | 22% | 161 円88 億円 | 152 円83 億円 | −45.3% | −5.9% | 69 円38 億円 |
| 悲観 | 12% | 124 円68 億円 | 73 円40 億円 | −65.5% | −10.1% | 24 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 376 円205 億円 | 225 円123 億円 | +5.2% | +0.5% | 601 円329 億円 |
今の株価時価総額 572 円312 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% SI-6603 が承認され、LAL も組換え試薬で伸びる 利益 43 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 936 円511 億円
SI-6603 が承認されて米国で使われ始め、LAL も伸び、営業利益は 54 億円まで戻る。会社が前の中計で掲げた 70 億円には届かないが、赤字からは抜ける。
SI-6603 は、腰椎椎間板ヘルニアの注射薬だ。米国の対象患者は年に 300 万〜500 万人とされ、手術に進む前の選択肢になる。提携先のフェリングが売り、会社は原薬の供給とロイヤリティーを受け取る。投与が年 8.7 万件に育つと、会社の取り分は 70 億円になり、利益率は 55% を見込む。
LAL は、遺伝子組換えの試薬(PyroSmart NextGen)の採用が進み、数量が 1.8 倍になる。動物由来の LAL から組換えへの移行が、薬局方の改正で後押しされる筋書きだ。価格は競争で物価に届かず、1.3 倍にとどまる。
国内の関節機能改善剤は、薬価が毎年下がるが、数量はほぼ保つ。海外は中国の集中購買を避けて価格を守る。ROE は 5% 台で、なお資本コストに届かない。
- 国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤):数量 1,319(販売本数(万本相当))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる))→ 売上 109 億円・営業利益 36 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 0.92、営業利益率 33.0%
- 海外医薬品:数量 100(出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.17(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 25 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 1.25、営業利益率 21.0%
- 原薬・受託製造:数量 130(取扱量の指数(今を 100))× 価格 0.42(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 8 億円。数量の指数 1.30、価格の指数 1.30、営業利益率 14.0%
- LAL(エンドトキシン測定用試薬):数量 180(試薬の出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.58(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 284 億円・営業利益 43 億円。数量の指数 1.80、価格の指数 1.30、営業利益率 15.0%
- SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給):数量 8.7(米国の投与件数(万件))× 価格 8.04(1 件あたりの会社の取り分(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 38 億円。投与件数 8.7 万件、1 件あたりの取り分 8.04 万円、営業利益率 55%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 511 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:SI-6603 が 2 度の指摘を越えて承認され、米国で使われ始める強気の道。LAL の組換え試薬も市場を取る。FDA の指摘は製造面に絞られ、効き目や安全性への指摘はなかったが、2 度続けて落ちた事実が重く、確率は 1 割弱にとどめる。
やや楽観 20% 承認は遅れて通り、LAL の伸びが利益を支える 利益 23 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 527 円288 億円
承認は遅れて通り、LAL の伸びが利益を支える。営業利益は 26 億円まで増える。
SI-6603 は、新しい委託先の査察を越えた後で承認され、米国で年 5.5 万件の投与に育つ。会社の取り分は 44 億円で、利益率は 52% とした。立ち上がりが遅く、10 年の終わりでもピークに届かない。
LAL は数量が 1.6 倍になる。組換え試薬は競合が多く、価格は 1.25 倍にとどまる。国内は数量が 2% 減り、価格は薬価の引き下げで 12% 下がる。海外は 8% 減る。
研究開発費は 90 億円で、開発品が増えるぶん重くなる。還元は純利益の 9 割ほどになる。ROE は 3% 以下にとどまる。
- 国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤):数量 1,293(販売本数(万本相当))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる))→ 売上 102 億円・営業利益 33 億円。数量の指数 0.98、価格の指数 0.88、営業利益率 32.0%
- 海外医薬品:数量 92.0(出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.11(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 102 億円・営業利益 20 億円。数量の指数 0.92、価格の指数 1.18、営業利益率 19.5%
- 原薬・受託製造:数量 115(取扱量の指数(今を 100))× 価格 0.41(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。数量の指数 1.15、価格の指数 1.25、営業利益率 13.0%
- LAL(エンドトキシン測定用試薬):数量 160(試薬の出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.52(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 243 億円・営業利益 34 億円。数量の指数 1.60、価格の指数 1.25、営業利益率 14.0%
- SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給):数量 5.5(米国の投与件数(万件))× 価格 8.04(1 件あたりの会社の取り分(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 23 億円。投与件数 5.5 万件、1 件あたりの取り分 8.04 万円、営業利益率 52%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 288 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:承認が遅れながら通り、取り分は小さめに終わる道。LAL が年 4〜5% で伸びる筋書きと組む。強気より起こりやすい。
中立 38% LAL が伸びて医薬品の減りを埋め、利益は低いまま 利益 15 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 383 円209 億円
LAL が伸びて医薬品の減りを埋め、営業利益は 16 億円と低いまま動かない。ROE は 2% 台にとどまる。
国内の関節機能改善剤と眼科手術補助剤は、薬価が毎年下がる。数量は 5% 減り、単価は 15% 下がる。売上は 96 億円になる。
海外は、米国で少数回投与品への移行が進み、中国では集中購買が広がる。数量が 15% 減り、価格は 1.1 倍までしか上がらない。売上は 88 億円になる。
LAL は数量が 1.45 倍、価格が 1.2 倍になる。価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、組換え試薬の競争で値下げ圧力が続くためだ。売上は211 億円、利益率は 14% に上がる。SI-6603 は、承認される確率と遅れを掛けた期待値で、年 3.1 万件の投与、会社の取り分 25 億円を置いた。
研究開発費は 78 億円で、売上の 17% 前後に抑える。本社費はこれに含める。還元は純利益の 95% ほどで、配当を保つ。
- 国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤):数量 1,253(販売本数(万本相当))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる))→ 売上 96 億円・営業利益 31 億円。数量の指数 0.95、価格の指数 0.85、営業利益率 32.0%
- 海外医薬品:数量 85.0(出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.03(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 17 億円。数量の指数 0.85、価格の指数 1.10、営業利益率 19.0%
- 原薬・受託製造:数量 100(取扱量の指数(今を 100))× 価格 0.39(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 5 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 1.20、営業利益率 12.0%
- LAL(エンドトキシン測定用試薬):数量 145(試薬の出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.46(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 211 億円・営業利益 30 億円。数量の指数 1.45、価格の指数 1.20、営業利益率 14.0%
- SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給):数量 3.1(米国の投与件数(万件))× 価格 8.04(1 件あたりの会社の取り分(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 12 億円。投与件数 3.1 万件、1 件あたりの取り分 8.04 万円、営業利益率 50%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 209 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も起こりやすい道。SI-6603 は遅れて承認される確率を掛けた小さな収入にとどまる。LAL は伸びるが、国内と海外の医薬品が薬価や集中購買で痩せるため、全体の利益は低いまま動かない。
やや悲観 22% 承認が通らず、海外医薬品も縮む 利益 6 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 161 円88 億円
SI-6603 が承認に届かず、海外医薬品も縮み、営業利益は 4 億円まで落ちる。
承認を取れないまま再申請が続き、新しい原薬の委託先でも査察の指摘が残る。会社の取り分は年 1 万件、8 億円にとどまる。
海外は、少数回投与の競合品が米国で広がり、数量が 25% 減る。価格は 1 倍で、物価に負ける。国内は数量が 1 割減り、価格が 2 割下がる。
LAL は伸びるが、競合が増えて価格が 1.1 倍にとどまり、利益率が 12% に落ちる。研究開発費は 60 億円まで絞る。それでも黒字は薄い。
一方、LAL の首位級の位置と純現金は残る。赤字には落ちない。倍率は上限の 65% に置いた。
- 国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤):数量 1,187(販売本数(万本相当))× 価格 0.07(1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる))→ 売上 86 億円・営業利益 27 億円。数量の指数 0.90、価格の指数 0.80、営業利益率 31.0%
- 海外医薬品:数量 75.0(出荷量の指数(今を 100))× 価格 0.94(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 11 億円。数量の指数 0.75、価格の指数 1.00、営業利益率 16.0%
- 原薬・受託製造:数量 90.0(取扱量の指数(今を 100))× 価格 0.36(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。数量の指数 0.90、価格の指数 1.10、営業利益率 10.0%
- LAL(エンドトキシン測定用試薬):数量 120(試薬の出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.34(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 160 億円・営業利益 19 億円。数量の指数 1.20、価格の指数 1.10、営業利益率 12.0%
- SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給):数量 1.0(米国の投与件数(万件))× 価格 8.04(1 件あたりの会社の取り分(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。投与件数 1.0 万件、1 件あたりの取り分 8.04 万円、営業利益率 45%
倍率:事業の純利益6億円・ROE 0.8% は k 9% 以下なので、上限は 1÷k=12.5倍。利益が薄く、研究開発費の振れで赤字にも寄るため、上限の約6.5割の8.1倍に置いた。PBR は 0.1 倍と低いが、保有株と純現金は取り出せず、床にはしない。
確率:SI-6603 が承認に届かず、海外でヒアルロン酸の注射が少数回投与品に置き換わる道。研究開発費を絞って黒字は守るが、薄い利益にとどまる。起こりやすさは中立に次ぐ。
悲観 12% 開発が行き詰まり、海外が崩れて赤字が続く 利益 −11 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 124 円68 億円
開発が行き詰まり、海外が崩れ、営業損益は 15 億円の赤字が続く。
SI-6603 は承認されない。会社は米国でのヘルニア事業から手を引く。Gel-One や眼科の開発品も、期待した売上を作れない。研究開発費は 48 億円まで絞るが、基盤の技術を守るには足りる額だ。
海外は数量が 4 割減り、中国と米国の両方で価格競争に敗れる。国内は数量が 2 割減り、価格は 28% 下がる。LAL も、組換え試薬の競合に押されて伸びず、利益率は 7% に落ちる。
赤字を保有株の売却益で埋め、配当を 40 億円まで縮める。価値は、純現金と保有株の売れる値の約 4 割に置いた。清算されない限り、少数株主は資産を取り出せないからだ。
- 国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤):数量 1,055(販売本数(万本相当))× 価格 0.06(1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる))→ 売上 68 億円・営業利益 18 億円。数量の指数 0.80、価格の指数 0.72、営業利益率 26.0%
- 海外医薬品:数量 60.0(出荷量の指数(今を 100))× 価格 0.84(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。数量の指数 0.60、価格の指数 0.90、営業利益率 10.0%
- 原薬・受託製造:数量 70.0(取扱量の指数(今を 100))× 価格 0.33(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。数量の指数 0.70、価格の指数 1.00、営業利益率 6.0%
- LAL(エンドトキシン測定用試薬):数量 100(試薬の出荷量の指数(今を 100))× 価格 1.22(指数 100 あたり売上(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 9 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 1.00、営業利益率 7.0%
- SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給):数量 0.0(米国の投与件数(万件))× 価格 8.04(1 件あたりの会社の取り分(万円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投与件数 0.0 万件、1 件あたりの取り分 8.04 万円、営業利益率 50%
倍率:営業損益が赤字で、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税引後は約185億円だが、清算されない限り少数株主は取り出せず、赤字が毎年それを食う。今の自己資本753億円に0.09倍を掛け約68億円に置いた(売れる資産の約4割)。
確率:構造的な負けの筋書き。開発品が全て外れ、LAL も競合に価格で負け、赤字が続く。純現金と保有株という下支えがあり、倒産は遠いので 1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内医薬品(関節機能改善剤・眼科手術補助剤)
アルツ(変形性関節症の関節内注射)、オペガン類(眼科手術の補助剤)など。提携先を通して国内で売る。
| 数量販売本数(万本相当) | 価格1 本あたり売上(万円。薬価は毎年下がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,319 | 0.09 | 119 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1,253 | 0.08 | 96 | 31 |
取り方:推定。国内医薬品の売上 118.7 億円を、1 本あたり約 0.09 万円(薬価から見た推定。公表値は未確認)で割った約 1,319 万本に分けた。営業利益は開示が無く、研究開発費と本社費を引く前の推定(利益率 32%)。
海外医薬品
米国の SUPARTZ FX、中国、その他。提携先が売る。
| 数量出荷量の指数(今を 100) | 価格指数 100 あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.94 | 94 | 18 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 1.03 | 88 | 17 |
取り方:開示が無く、本数が分からないため、出荷量を今の 100 とした指数と、その単価(売上 93.7 億円÷100)に分けた。営業利益は推定で、研究開発費と本社費を引く前の利益率 19%。
原薬・受託製造
ヒアルロン酸などの原薬を他社に売る。医薬品の製造の受託。
| 数量取扱量の指数(今を 100) | 価格指数 100 あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.33 | 33 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.39 | 39 | 5 |
取り方:開示が無く、取扱量を今の 100 とした指数と、その単価(売上 32.5 億円÷100)に分けた。営業利益は推定で、利益率 12%。
LAL(エンドトキシン測定用試薬)
カブトガニ由来の LAL 試薬と、遺伝子組換えの試薬(PyroSmart NextGen)。米国子会社のアソシエーツ オブ ケープ コッドが中心。
| 数量試薬の出荷量の指数(今を 100) | 価格指数 100 あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.22 | 122 | 10 |
| 10 年後 中立 | 145 | 1.46 | 211 | 30 |
取り方:開示が無く、出荷量を今の 100 とした指数と、その単価(売上 121.5 億円÷100)に分けた。営業利益は決算短信のセグメント利益 9.75 億円(利益率 8%)。
SI-6603 の米国収入(ロイヤリティー・原薬供給)
腰椎椎間板ヘルニアの注射薬。承認されれば、提携先のフェリングが米国で売り、会社はロイヤリティーと原薬の供給で稼ぐ。
| 数量米国の投与件数(万件) | 価格1 件あたりの会社の取り分(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 6.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 8.04 | 25 | 12 |
取り方:未承認のため今は 0。1 件あたりの取り分は、米国の販売価格を 40 万円前後と置き、ロイヤリティーと原薬の供給で約 15% が会社に入るとした推定(価格は未確認)。
リスクと懸念
SI-6603 の再申請と承認
2025 年 3 月と 2026 年 9 月に、FDA から製造施設・原薬・委託先の管理について指摘を受けた。再申請の時期は未定で、承認されるかは新しい委託先の査察に左右される。承認されなければ、10 年の見通しから大きな収入が消える。
薬価の引き下げ
国内のアルツ・オペガン類は、薬価が毎年のように下がる。数量で支えられなければ、売上が縮み、固定費が重く残る。
海外の価格競争
米国では少数回投与の競合品が広がり、中国では集中購買が価格を押し下げる。海外医薬品は 2026 年 3 月期にも減った。
ロイヤリティーの振れ
2025 年 3 月期に 26 億円あったロイヤリティーが、2026 年 3 月期はほぼ 0 になった。提携先からの収入は、振れが大きい。
LAL の競争と規制
組換え試薬は競合が多く、薬局方の扱いが変わると市場の形が変わる。価格が下がると、利益率の改善が止まる。
研究開発費の重さ
研究開発費は売上の約 2 割で、成果が出ない年が続くと利益を直接削る。高萩工場などの設備投資も回収に時間がかかる。
今後の分かれ目
- SI-6603 の再申請が受理され、新しい委託先の査察に通ったら
- 承認の確率が上がり、強気とやや強気を厚くできる。会社の取り分は年 25 億〜70 億円の幅で見る。
- 営業利益が 2 期連続で 20 億円を超えたら
- LAL の成長が医薬品の減りを埋めた証拠になる。中立の営業利益 16 億円を上方に直す。
- LAL のセグメント利益率が 12% を超えたら
- 組換え試薬が価格を保ち、規模の利益が出たと読める。LAL の利益率を 14% より高く置く。
- 研究開発費が売上の 15% を下回ったら
- 開発を絞り、利益を取る方向へ転じた合図になる。ただし将来の新薬は細る。
- 保有株の売却が続くか、自社株買いが出たら
- 資産が株主に戻る道が開く。戻り方を上げ、価値を上方に直す。
- TOB や買収の提案が公表されたら
- 買収価格は純現金と保有株を含む資産価値が前提になる可能性が高い。
見ておくもの
- SI-6603 の再申請の時期と FDA の受理
- LAL のセグメント売上と利益率、組換え試薬の採用
- 研究開発費と営業利益の水準
- 国内の薬価改定と、海外医薬品の売上の動き
- 保有株の売却と、配当・自社株買いの方針
- 次の中期経営計画の数値目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE が資本コスト 9% を下回る筋書きでは、上限の 1÷k=12.5 倍に対する割合で置いた。今の PER や PBR には寄せていない。保有株の配当と利息は利益に入っているため、保有株の価値は別に足さず、純現金のうち 45 億円だけを事業に要らない分とした。今の PBR は 0.4 倍と低いが、これは事業が稼げていない結果であり、割安の根拠にはしない。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→11.11 倍・やや楽観 PER 11.2→11.11 倍・中立 PER 10.6→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 9.00%。