結論
大幸薬品は、整腸薬「正露丸」を80年近く売り続ける医薬品メーカーだ。二酸化塩素の空間除菌「クレベリン」を2020年に爆発的に伸ばしたが、特需が去って3期連続の大赤字を出した。筆者の結論は「割高」。正露丸の稼ぐ力は本物だが、利益の戻りが遅く、今の値段はそれを先取りしているからだ。
事業の9割は医薬品で、うち国内が35億円、海外が23億円。クレベリンを含む感染管理は6億円で、まだ赤字だ。営業利益は前期4.6億円と、ピークだった2020年12月期の56億円の10分の1以下にとどまる。
財務は修復した。純現金は35億円、自己資本比率は69%で、継続企業の前提に関する重要事象も2024年12月期に解消した。配当も5年ぶりに再開した。
中計は2028年度に売上85億円、営業利益10億円を掲げる。達成すれば価値は上がるが、今期の営業利益は5億円止まりで、中間期は減益だった。筆者は中立で10年後の営業利益を10億円ほどと見て、確率で重みを付けた価値は今の時価総額132億円を5割ほど下回ると判断した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、正露丸は「小さいが長持ちする」ブランドだ。売上の9割が医薬品(正露丸中心)で、取引先も上位3社に集中する。分散が効かない代わりに、一度築いたブランドは簡単には消えない。
株主の手元に残るオーナー利益は、営業利益4.6億円から、本社費の重さを引いた後の姿が実態だ。医薬品の利益率は27%と高いのに、全社費用が年8億円強かかり、手残りは小さい。ここが、この会社のいちばんの問題だと筆者は見る。
クレベリンの失敗は、資本配分の失敗の記録でもある。特需の絶頂で生産設備と在庫を積み、数年で自己資本の6割を失った。教訓を活かして、投資を絞れるかが見どころだ。
安全域は薄い。時価総額は純現金35億円を除くと約100億円で、前期の営業利益4.6億円の22倍にあたる。中計の営業利益10億円を達成しても10倍だ。堀は普通で、今の値段に安全域は見当たらない。
何で稼ぐ会社か
連結売上は64億円。医薬品が58億円(セグメント利益15.7億円)、感染管理が6.2億円(損失2.5億円)、その他はごくわずかだ。
医薬品の主役は正露丸だ。主成分の木クレオソートを自社で製造し、整腸薬として、日本とアジアで長く使われてきた。国内売上は35億円(前期比1.4%減)、海外売上は23億円(同2.0%増)。国内は少子高齢化で細り、海外のアジア需要が支える形だ。
感染管理は、二酸化塩素の空間除菌「クレベリン」の事業だ。2020年のコロナ禍で売上を急拡大し、同年12月期の営業利益は56億円に達した。その後は需要が剥がれ、2021〜2023年の3期で営業損失は計90億円超に及んだ。前期は売上が22%増えたが、赤字は続く。
売上の約8割が、国内2社と香港1社という上位3社に集中する。卸・輸入業者への販売が中心で、取引先の動向に左右される。
連結子会社は大幸TEC、香港・上海の子会社など4社。従業員は連結で220名と小さい。提出会社の平均年収は約740万円だ。正露丸の主成分である日局木クレオソートは自社で製造し、工場の運営は子会社の大幸TECに委ねている。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と筆者は見る。正露丸は1946年の発売以来のブランドで、独特の匂いを含めて認知度が高く、薬局の定番商品だ。ただ、整腸薬の市場は小さく、競合品が多い。国内の人口減と高齢化で数量は細る。販売の約8割が上位3社に集中する点も、交渉力を弱める。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で7.5%、前期は10.8%だが、純利益9.2億円のうち3.5億円は保有株の売却益だ。ならせば6億円で、ROEは7%前後になる。
財務は、ピークの2020年12月期に自己資本が228億円あったのが、赤字で85億円まで減った。いまは純現金35億円と堅く、借入も小さい。
経営は、クレベリンの失敗が重い。コロナの特需に生産と在庫を積み、需要が消えたあとに減損と在庫処分で大きな損失を出した。中計では医薬品に軸足を戻し、感染管理は黒字化を目指す。ただ、本社費や研究費などの全社費用が年8億円強と重く、医薬品の利益の半分を食う。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のOTC医薬品(薬局で買える市販薬)市場は人口減で数量が細る。ただ、価格は薬価制度の対象外で、会社が自由に決められる。ブランド力があれば物価並みの値上げが通る。正露丸も、国内の値上げと海外の価格改定で単価を支えている。
整腸薬の競合は多く、大正製薬、小林製薬、第一三共ヘルスケアなど大手がある。正露丸は老舗ブランドで、「匂い」に特徴があり、アジアでの認知が高い。海外はアジア(香港・中国を中心に)が中心で、代理店経由の販売が多い。
感染管理(空間除菌)は、コロナの特需が消えて市場そのものが縮んだ。インフルエンザの流行が早まると売上が増えるが、安定した需要とは言えない。2026年は、供給体制の改善と海外医薬品の価格改定が下期の増益要因とされる。
10年で見れば、国内数量は小さく縮み、海外が伸びる。価格は物価に追いつく程度の値上げが通ると置く。為替は150円で動かさない。国内の薬局・ドラッグストアでは、プライベートブランドの整腸薬も棚を奪おうとしており、ブランドの維持には広告と値頃感の両立が要る。
資本政策と M&A
前期の期末に、5年ぶりに配当を再開した。方針は「安定配当」で、DOE(株主資本配当率)を2026年12月期から2%以上、2028年12月期に3%以上へ引き上げる。自社株買いは実施していない。
純現金は35億円と時価総額の26%を占める。事業に要る運転資金と工場の更新を除けば、使い道が定まっていない分が残る。中計の目標(ROE10〜11%以上)を満たすには、現金の活用か還元が避けられない。
前期は保有していたクオリプス株の全株を売り、3.5億円の売却益を出した。非上場株は10銘柄で計0.1億円と小さい。
M&Aの動きは見当たらない。親会社はなく、TOBの情報もない。茨木工場を転貸する賃貸契約が1件ある程度で、リース負債は小さい。10年の還元は、DOE3%を満たす水準で、純利益の合計の5割強に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
クレベリンの後始末は終わった。赤字は3期続いたが、前期は感染管理の損失が2億円改善し、全体で営業黒字を維持した。医薬品は海外で2%伸び、2026年6月には海外医薬品の価格改定も実施された。供給体制が大幅に改善し、下期から増益が見込まれる。
中計は2028年度に売上85億円、営業利益10億円、ROE10〜11%以上と明確だ。医薬品のセグメント利益率は27%と高く、全社費用を増やさず売上が伸びれば、営業利益は一気に倍になる。2020年12月期には56億円を稼いだ実績もある。
財務は修復した。純現金35億円、自己資本比率69%で、継続企業の前提に関する重要事象も解消した。配当は再開され、DOE3%への引き上げも示された。
時価総額132億円のうち35億円は現金。事業の値段は約100億円で、売上の1.5倍にすぎない。ブランドの価値を考えれば、買い手には悪くない水準だ。さらに、利益率の高い医薬品の海外比率が上がるほど、全体の利益率も改善に向かう。
慎重な見方
利益の戻りは遅い。今期の営業利益予想は5億円、中間期は営業利益が0.17億円と63%減った。国内の正露丸は供給不足で減収だった。中計の10億円は、現実の数字から遠い。
医薬品の利益率が27%でも、全社費用が年8億円強かかり、ほとんど残らない。本社費と研究費は削減の実績に乏しい。感染管理は赤字が続き、需要の見通しも立たない。
売上の約8割が上位3社に集中しており、1社の取引条件の変更で業績が大きく動く。国内の整腸薬は人口減で細り、海外は価格改定で伸ばしているにすぎず、数量の伸びではない。
純現金35億円は、クレベリンの再投資や在庫処分でまた消える恐れがある。前期の純利益9億円は保有株の売却益3.5億円を含み、実力は6億円だ。PERは前期で14倍だが、ならすと20倍を超える。ブランドが強いとはいえ、安い値段ではない。2020年の特需は、会社の持続的な実力を示すものではなかった。コロナ後の需要の消え方を見れば、感染管理は景気や感染症の流行次第の事業で、安定した利益源にはならない。
どちらに重みを置いたか
財務の修復と海外の伸びという強気の見方は事実だが、利益の戻りの遅さと全社費用の重さという慎重な見方のほうが強い。確率は、中立を4割弱、やや悲観を3割弱に置いた。上振れの根拠は中計の達成だが、会社の計画の達成実績は乏しい。結果は割高に出た。上にも下にも決め手が弱く、強い確信は持てない。足元の利益が戻るまで、値段に安全域は見当たらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 206 円103 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 50 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 127 円64 億円、今との差 −51.5%、 期待の年率 −0.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 514 円259 億円 | 80 円40 億円 | +126.7% | +8.5% | 36 円18 億円 |
| やや楽観 | 17% | 344 円173 億円 | 68 円34 億円 | +57.1% | +4.6% | 70 円35 億円 |
| 中立 | 38% | 217 円109 億円 | 60 円30 億円 | +5.5% | +0.5% | 105 円53 億円 |
| やや悲観 | 27% | 99 円50 億円 | 36 円18 億円 | −48.6% | −6.4% | 36 円18 億円 |
| 悲観 | 12% | 59 円30 億円 | 16 円8 億円 | −71.3% | −11.7% | 9 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 206 円103 億円 | 50 円25 億円 | −2.3% | −0.2% | 256 円129 億円 |
今の株価時価総額 262 円132 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 中計を達成し、海外が伸びて営業利益率17% 利益 16 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 514 円259 億円
アジアで正露丸の販路が広がり、医薬品の個数は25%増える。単価は値上げと海外の価格改定で物価を超えて上がり、セグメント利益率は30%に戻る。感染管理は黒字化し、全社費用は売上の伸びに対して薄まる。営業利益は21億円と、中計の目標の倍を超える。純現金は積み上がり、配当はDOE3.5%に近づく。会社はROE10%超を出す。クレベリンも黒字の事業として残り、感染管理への再投資は慎重に行われる。売上は110億円に届き、中計の2028年度の目標を10年後に倍近く超える。海外の取引先が増えて上位3社への集中は和らぎ、価格交渉力も上がる。この筋書きが成り立つには、本社費や研究費を増やさずに売上だけが伸びる必要があり、実現のハードルは高い。
- 医薬品(正露丸ほか):数量 1,299(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.08(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 32 億円。個数 1.25 倍、単価 1.38 倍、セグメント利益率 30%
- 感染管理(クレベリンほか):数量 101(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.10(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。個数 1.3 倍、単価 1.30 倍、セグメント利益率 8%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 14.95 倍、時価総額 250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医薬品の海外が数量で伸び、全社費用を抑えたまま感染管理が黒字化する連続成功が要る。会社の計画の達成実績は乏しく、確度は低い。
やや楽観 17% 海外が伸び、営業利益率14% 利益 11 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 344 円173 億円
海外の個数が伸び、単価は値上げで34%増える。医薬品のセグメント利益率は28%に戻り、感染管理は小さな黒字になる。全社費用は物価で増えるが、売上の伸びで吸収する。営業利益は15億円で、中計の10億円を上回る。DOE3%の配当を守り、現金は少しずつ積み上がる。上位3社への依存は残るが、海外の取引先が増えて集中度が下がる。売上は95億円規模まで増え、中計の目標を上回る。海外の伸びは、アジアの所得の上昇と、正露丸のブランドの浸透に支えられる。クレベリンは小さな黒字の事業として残るが、会社の成長の柱にはならない。
- 医薬品(正露丸ほか):数量 1,154(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.08(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 26 億円。個数 1.12 倍、単価 1.34 倍、セグメント利益率 28%
- 感染管理(クレベリンほか):数量 85.1(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.10(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。個数 1.1 倍、単価 1.25 倍、セグメント利益率 3%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 13.72 倍、時価総額 165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標をおおむね達成し、その後も海外の伸びで利益が積み上がる。確度は中程度。
中立 38% 中立:国内は細り、海外と値上げで下支え 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 217 円109 億円
国内の正露丸は供給不足から立ち直り、海外の伸びも加わって、医薬品の個数は10年で8%増える。単価は32%増で、セグメント利益率は25%に下がる。感染管理は損益ゼロに近づく。全社費用は物価で膨らみ、年10億円超になる。営業利益は10億円で、前期の2倍強だが、中計の2028年度の目標と同じ水準にとどまる。配当はDOE3%を守り、年3億円。純現金は自己資本に積み上がる。売上は90億円と中計の2028年度の85億円を少し上回るが、これは名目の値上げが中心で、実質の数量はほぼ横ばいである。国内では高齢化で整腸薬の使用者は減るが、海外の販路が広がり、数量の目減りを補う。クレベリンは需要が安定せず、感染管理は赤字を出さない程度にとどまる。
- 医薬品(正露丸ほか):数量 1,039(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.08(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 21 億円。個数 1.02 倍、単価 1.30 倍、セグメント利益率 24%
- 感染管理(クレベリンほか):数量 77.4(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.10(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。個数 1.0 倍、単価 1.20 倍、セグメント利益率 -2%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の人口減を海外の伸びが埋め、値上げで単価を保つ。営業利益率は11%台で、中計の目標(11.8%)と同じ水準を10年後に保つ素直な筋書き。
やや悲観 27% 全社費用が重く、利益が出ない 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 99 円50 億円
国内の正露丸が人口減と供給不足で細り、医薬品の個数は5%減る。上位3社が取引条件を厳しくし、利益率は20%に下がる。感染管理は赤字が続き、全社費用は年10億円と重い。営業利益は3億円ほどにとどまり、利息収入が純利益をわずかに支える。配当は維持するが、現金は減っていく。会社は広告費を絞って利益を守ろうとするが、ブランドの勢いが落ちる悪循環に入りやすい。売上は68億円規模で、名目では今とほぼ同じだが、実質の数量は縮む。ブランドを守るための広告費も削れず、全社費用の重さが利益を食い続ける。上位3社の取引条件が厳しくなれば、利益率の低下に拍車がかかる。
- 医薬品(正露丸ほか):数量 914(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.07(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 13 億円。個数 0.90 倍、単価 1.20 倍、セグメント利益率 18%
- 感染管理(クレベリンほか):数量 61.9(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.09(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。個数 0.8 倍、単価 1.10 倍、セグメント利益率 -10%
倍率:事業の純利益が 1 億円ほどで、k 8.25% を大きく下回り、稼ぐ力は 14 億円に届かない。床は純現金 35 億円の 0.75 倍(赤字寸前で一部が食われる)と、工場・設備・在庫・ブランドの売却価値約 17 億円を足した 43 億円とし、今の自己資本 85 億円の 0.5 倍に置いた。
確率:医薬品の利益率が下がる一方、全社費用は削れない。2024〜2026年の水準に近く、起きる確度は高い。
悲観 12% 構造的に負ける:取引先の離脱と赤字の再来 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 59 円30 億円
上位3社の1社との取引が縮み、供給や品質の問題が重なって、医薬品の個数が3割減る。単価も上がらず、利益率は10%に落ちる。感染管理の赤字は続き、全社費用は削っても年8億円台が残る。営業利益は4億円強の赤字になる。配当は止まり、現金は赤字で食われる。ただ、純現金が残るため事業は続き、値段は純現金と工場・ブランドの手残りで決まる。クレベリンは撤退に近い形で縮小し、事業は正露丸の1本に絞られる。売上は48億円まで縮み、全社費用をまかなえない赤字が続く。会社は固定費の削減と事業の絞り込みを迫られ、人員の整理も避けられない。
- 医薬品(正露丸ほか):数量 673(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.07(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。個数 0.70 倍、単価 1.10 倍、セグメント利益率 10%
- 感染管理(クレベリンほか):数量 38.7(出荷個数換算(万個・年、推定))× 価格 0.08(1 万個あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。個数 0.5 倍、単価 1.00 倍、セグメント利益率 -10%
倍率:赤字(純損失 4 億円)なので、稼ぐ力では測れない。床は純現金 35 億円の半分(赤字で食われる分)と、工場・設備・在庫の売却価値を足した 30 億円とし、今の自己資本 85 億円の 0.35 倍に置いた。
確率:上位3社の1社が離れ、供給や品質の問題が重なる複合の筋書き。クレベリン後の赤字が戻る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医薬品(正露丸ほか)
整腸薬「正露丸」など。国内35億円、海外23億円(開示)。
| 数量出荷個数換算(万個・年、推定) | 価格1 万個あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 962 | 0.06 | 58 | 16 |
| 10 年後 中立 | 1,039 | 0.08 | 82 | 21 |
取り方:売上57.7億円(開示)を、卸への出荷単価1個あたり0.06万円(推定)で割り、年962万個相当とした。個数は開示がなく推定。営業利益はセグメント利益15.73億円(開示、前期比19.2%減)。全社費用は別に調整額として置く。
感染管理(クレベリンほか)
二酸化塩素の空間除菌「クレベリン」など。
| 数量出荷個数換算(万個・年、推定) | 価格1 万個あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 77.4 | 0.08 | 6 | −3 |
| 10 年後 中立 | 77.4 | 0.10 | 7 | 0 |
取り方:売上6.19億円(開示)を、出荷単価1個あたり0.08万円(推定)で割り、年77万個相当とした。個数は開示がなく推定。営業利益はセグメント損失2.54億円(開示)。その他事業(売上0.05億円、損失0.22億円)と全社費用8.4億円は調整額に含める。
リスクと懸念
特定製品と取引先への集中
売上の9割が医薬品(正露丸中心)、約79%が国内2社と香港1社の3社に集中する。1社の条件変更や供給の乱れが、業績を直撃する。
利益の戻りの遅さ
前期の営業利益は4.6億円で、ピークの56億円の10分の1以下。今期予想は5億円で、中間期は0.17億円と63%減った。中計の10億円(2028年度)は遠い。
全社費用の重さ
医薬品のセグメント利益は15.7億円あるのに、全社費用が年8億円強かかる。削減の実績に乏しく、売上が伸びなければ利益が出ない構造だ。
感染管理の赤字
クレベリンを含む感染管理は前期も2.5億円の赤字。特需の後遺症で、黒字化の見通しは立っていない。再投資や在庫処分で現金が減る恐れがある。
海外のカントリーリスク
海外売上は23億円で、香港・中国を中心とするアジアの代理店に頼る。規制の変更、類似品、為替が利益を揺らす。
過去の資本配分の失敗
特需の絶頂で生産設備と在庫を積み、需要が消えたあとに大きな損失を出した。自己資本は228億円から85億円まで減った。同じ失敗を繰り返さないかが問われる。
今後の分かれ目
- 営業利益が2期続けて7億円を超えたら
- 中計の達成が見えたとみて、中立の利益率を上げ、楽観側へ確率を寄せる。
- 感染管理が黒字化したら
- 全社の赤字要因が消えるため、利益の前提を引き上げる。
- 上位3社の1社の取引条件が変わったら
- 売上の集中が顕在化したとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 純現金の使い道(M&Aや投資)が発表されたら
- 余った現金の戻り方を見直す。買収なら価格とのれんを確認する。
- 海外医薬品の個数が2桁で伸びたら
- 数量の伸びが定着したとみて、医薬品の個数の前提を上げる。
- 配当がDOE3%を超えて引き上げられたら
- 還元が強まったとみて、余った現金の戻り方を1.0に近づける。
見ておくもの
- 営業利益(今期予想5億円、中計の2028年度は10億円)
- 医薬品の国内・海外売上
- 感染管理のセグメント損益
- 上位3社への売上比率
- 純現金とDOEの引き上げ
倍率と資本コストの決め方
数量は出荷個数換算の推定(開示なし)で、物価3%は単価に1.00〜1.38倍として入れ、二重がけはしていない。全社費用は物価で増やしている。倍率は k 8.25%(基本7.5%+寿命0.5%)と、ROEが k 以下で出る上限1÷k=12.5倍の5〜8割で置いた。今のPER(約14倍)や過去のPBR、同業の値付けは使っていない。ならした純利益は保有株の売却益3.5億円を除き6億円とし、前期の9億円は使っていない。悲観の床は純現金の半分と設備・ブランドの売却価値で、過去のPBRの底からは置いていない。新リース会計基準の形変更は、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→14.95 倍・やや楽観 PER 9.5→13.72 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。