結論
JCRファーマは、成長ホルモンと希少疾患の酵素薬で稼ぐ神戸の製薬会社だ。筆者の結論は、事業の質は高いが、研究開発の重さと借金を考えると今の値段は先を買いすぎている、というものだ。
稼ぎの柱は二つある。国内首位の成長ホルモン「グロウジェクト」が年に約180億円。脳にも届くハンター症候群の薬「イズカーゴ」が約68億円で、こちらは伸びている。
問題は費用だ。研究開発に年約170億円を使い、営業利益は2026年3月期にやっと約6億円になった。前の期は約62億円の赤字だった。借入も純額で約400億円あり、利息の負担が利益を圧迫する。
分かれ目は三つある。イズカーゴが米欧で承認されるか。2025年末に導入した筋ジストロフィー薬が2027年に出るか。成長ホルモンが週1回の競合に押されないか。三つが当たれば会社は大きくなる。だが全部は当たらないと筆者は見る。確率を掛けた10年後の価値は、今の時価総額を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業は良いが、払う値段が高い」会社だ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、今はほぼゼロだ。稼いだ分は研究開発に使い、借入の利息にも消える。
筆者が持ち続けたいのは、10年後も確実に稼ぐ会社だ。成長ホルモンは、競合と薬価の重さで利益が細る。イズカーゴは強いが、承認と競合の行方がまだ見えない。
安全域は薄い。純借入が約400億円あり、悪い結果の時に残る価値は、借入を引くとわずかだ。
魅力は、希少疾患という守りやすい領域で、脳に届く薬を持つことだ。当たれば利益率は高い。ただし、当たる前から値段に織り込んでいる。
投資は、当たった時の大きさより、外れた時に何が残るかを先に見る。この会社は外れても事業は残る。しかし借入が先に引かれる。
経営の資本配分は、成長への投資に偏っている。それ自体は悪くないが、借入を増やしながらの投資は、外れた時の逃げ道を狭める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの形は、自社で作って売る薬と、提携先から入る契約金の二本立てだ。
柱は三つある。成長ホルモンは、低身長症の子どもに毎日打つ注射薬だ。国内の売上は約180億円で、価格は国が決める薬価に従う。イズカーゴは、ハンター症候群という患者の少ない病気の薬だ。血液から脳へ薬を運ぶ独自技術を使い、国内で発売済み、ブラジルや米欧で承認を目指す。国内の販売は住友ファーマと共同で進める。テムセルは、骨髄移植後の合併症に使う他人の幹細胞の薬で、売上は約28億円だ。
新しい芽は二つある。長時間型の成長ホルモンJR-142は第3相に入った。ジビノスタットは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの経口薬だ。2025年末にイタリアの会社から国内の権利を導入した。会社はピーク売上を約350億円と見ている。
ほかに腎性貧血薬やファブリー病薬など、仕入れて売る品もある。売上は約49億円だが、利益は薄い。
製造は国内の自社工場が担い、成長ホルモンは長く自社生産を続けてきた。研究は、血液から脳へ薬を運ぶ独自の技術「J-Brain Cargo」が土台だ。この技術を使う新薬を、ムコ多糖症の別の型にも広げている。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の堀(他社がまねできない強み)を「狭いが深い」と見る。
強みは二つある。患者が数百人の病気に絞り、専門の医師と深い関係を築いた。もう一つは、薬を脳へ運ぶ独自の技術だ。大手が避ける小さな市場で、先に承認と販売の実績を積んだ。
弱みは、柱の細さだ。利益の大半は成長ホルモンとイズカーゴの二本で稼ぐ。成長ホルモンは、薬価が毎年のように引き下げられる。ノボ ノルディスクの週1回の薬や、帝人ファーマの長時間型といった競合も出てきた。
資本の使い方にも注文がある。研究開発費は売上の4割前後で、利益が出る前に使い切る年がある。2024年度には契約金が前の年の74億円超から5億円ほどに減り、営業赤字になった。収益は契約金の有無で年ごとに大きく振れる。
資本効率は、過去10年の自己資本利益率の中央値が9%だ。良い年は29%まで上がったが、赤字の年もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
成長ホルモンは、成熟した市場だ。低身長症の子どもの数は少子化で細る。薬価は毎年引き下げられ、売上が増える理由は少ない。
競合は新しい形で来ている。週1回で済む薬が増え、毎日の注射が重荷になっていた家庭に選ばれやすい。会社も長時間型のJR-142と、グロウジェクトの高用量での第3相試験で応じる。
希少疾患の酵素薬は、逆に伸びる領域だ。ハンター症候群の標準薬は点滴の酵素だが、脳の症状には効きにくい。脳に届く薬を作れれば、価格を高く保てる。ただし同じ狙いの米国の会社もあり、承認の順番と効き目が勝負になる。
国内の薬の市場は、薬価制度の重さがある。物価が上がっても薬価は据え置きか下がる傾向があり、製薬会社の利益は物価に追いつきにくい。
創薬の資金環境は、国内で細い。日本のベンチャーに入る資金は米国の1%に満たない。大手から契約金を得られるかが、研究の続く年数を決める。
日本の医薬品市場は、人口が減る中で、高い薬ほど薬価の見直しを受けやすい。患者の少ない希少疾患は、その圧力が弱い。ただし承認の数が増えれば、国の財布が先に重くなる。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、研究開発への投資と借入だ。株主への還元は小さい。
純借入は約400億円ある。自己資本比率は約43%で、営業利益が支払利息の1.4倍にとどまる。これから借入を借り換えると金利は上がる。利益を削る力が、数年かけて効いてくる。
医薬品卸のメディパルホールディングスが、約22%を持つ大株主だ(2023年11月の報告)。販売面で近い関係にあり、経営の自由度を支える一方、買収を受け入れる時の壁にもなる。
提携先の選び方は慎重だ。2025年末のジビノスタットの導入では、契約一時金を研究開発費に計上し、2026年3月期の利益予想を24億円から4億円に引き下げた。
2026年6月には、2024年度と2025年度の連結財務諸表とキャッシュフロー計算書の一部を訂正した。誤りの内容は小さくても、数字の信頼を支える仕組みの点検が要る。
新社長は2026年4月に就いた。2030年代に売上1,000億円を掲げる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
価値は、これから伸びる薬の側にある。イズカーゴは血液から脳へ薬を運ぶ技術を持ち、国内で発売後の売上が前の年より18%伸びた。米国、欧州、ブラジルの承認を2027年度に目指し、世界の患者を相手にできれば売上は数倍になる。
ジビノスタットは、筋ジストロフィーの患者が国内に約3,500人いる中で、遺伝子の型を問わず使える経口薬だ。会社は申請を2026年内、承認を2027年内と見て、ピークは約350億円になるとする。成長ホルモンの長時間型JR-142も控える。
営業利益は2026年3月期に黒字へ戻った。売上は403億円と22%伸びた。研究開発費の山を越えれば、利益率は急に上がる。新社長は2030年代に売上1,000億円を掲げる。
希少疾患は競合が少なく、薬価も守られやすい。大手の導入が続けば、契約金の収入も途切れない。
導入と提携を重ねれば、自社の研究費の負担も分け合える。今の費用の重さは、芽を育てるための一時的な山だ。
慎重な見方
費用の重さと借金が、利益を食っている。研究開発費は年に約170億円で、営業利益はやっと約6億円だ。2027年3月期の第1四半期は、経常で約21億円の赤字だった。会社の利益予想は、前の年から半分以下に落ちる。
柱の成長ホルモンは、売上が減っている。薬価の改定と、週1回の競合の登場で、大きくは伸びない。
イズカーゴの海外は、承認がまだだ。同じ狙いの米国の会社の薬もあり、遅れれば患者を取られる。ジビノスタットも、国内の患者は約3,500人と少なく、会社の見立てのピーク350億円は、患者の7割近くが使う計算だ。
純借入は約400億円ある。借り換えで金利が上がれば、利益は削られる。2026年6月には過去の決算を訂正した。管理の甘さが、ほかにも出ないか心配だ。
新しい薬の承認が遅れても、研究費の大半は先に出ていく。収入が追いつく前に、借入が増えるのが怖い。
導入品は、会社の取り分が見えないことも引っかかる。ピーク350億円という数字が、会社の利益になるわけではない。
どちらに重みを置いたか
事業の中身では、強気の見方に分がある。希少疾患で脳に届く薬を持つ会社は少なく、イズカーゴの成長は本物だ。ただ足元の数字は、慎重な見方が強い。研究開発と借入の重さで、利益が出るまでの距離が長い。
確率は慎重な側へ少し寄せた。中立は3割強、やや悲観と悲観を合わせて4割台だ。楽観とやや楽観は合わせて2割を少し超える。借入を抱えた会社は、外れた時の傷が深い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 766 円936 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 62 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 364 円444 億円、今との差 −31.9%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,192 円3,902 億円 | 245 円300 億円 | +543.7% | +20.5% | 206 円252 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,571 円1,921 億円 | 123 円150 億円 | +217.2% | +12.2% | 288 円352 億円 |
| 中立 | 32% | 641 円784 億円 | 82 円100 億円 | +35.4% | +3.1% | 231 円283 億円 |
| やや悲観 | 30% | 294 円360 億円 | 0 円0 億円 | −44.9% | −5.8% | 88 円108 億円 |
| 悲観 | 15% | 90 円110 億円 | 0 円0 億円 | −83.1% | −16.3% | 13 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 766 円936 億円 | 62 円76 億円 | +54.9% | +4.5% | 827 円1,011 億円 |
今の株価時価総額 534 円653 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:イズカーゴが世界で広がり、筋ジス薬も満額に近い 利益 290 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,192 円3,902 億円
イズカーゴは2027年度に米国・欧州・ブラジルで承認される。脳の症状に効く薬として使われ、世界の患者は年800人になる。ジビノスタットは2027年に承認され、国内の患者の2割が使う。成長ホルモンは長時間型JR-142が加わり、患者を保つ。
売上は1,400億円を超え、新社長の掲げた1,000億円の目標を上回る。研究開発費は年260億円まで増えるが、利益は営業で400億円を超える。借入は返し終わる。
配当と自社株買いも増える。ただし利益の大半は二つの薬に依存し、競合の動きと薬価の改定は、10年後も重い。
- 成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142):数量 21,000(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.01(1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース))→ 売上 193 億円・営業利益 101 億円。21000×0.0092。営業利益率52%
- イズカーゴ(ハンター症候群):数量 800(治療を受ける患者数(人・世界))× 価格 0.75(1人あたりの会社の取り分(億円・名目))→ 売上 600 億円・営業利益 348 億円。800×0.75。営業利益率57%
- テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD):数量 400(年間の投与患者数(人))× 価格 0.09(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。400×0.085。営業利益率15%
- ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内):数量 700(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.55(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 385 億円・営業利益 116 億円。700×0.55。営業利益率30%
- その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか):数量 11.0(治療を受ける患者数(千人))× 価格 4.90(1,000人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。11×4.9。営業利益率10%
- 契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠):数量 1.0(契約収入の束(1))× 価格 150(年間の契約金その他の収入(億円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 −170 億円。契約金など年150億円。研究開発と本社の費用を含み営業利益は-170億円
倍率:事業の純利益 290 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.24 倍、時価総額 3,840 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イズカーゴの米欧承認、ジビノスタットの満額、成長ホルモンの維持がそろう筋書き。三つが同時に当たるのは一握りとみて6%。
やや楽観 17% やや楽観:イズカーゴが海外で伸び、筋ジス薬は堅実に売れる 利益 150 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,571 円1,921 億円
イズカーゴは米欧で承認され、年600人が使う。海外は提携先経由で、会社の取り分は国内より小さい。ジビノスタットは国内の患者の1割台後半が使う。成長ホルモンは長時間型への切り替えが進み、売上を保つ。
売上は1,000億円台に乗る。研究開発費は年230億円で、営業利益は約220億円だ。借入は半分以下になる。
一方、ジビノスタットは承認後の使い方に制限が残り、イズカーゴの海外の取り分は想定より小さい。堅実だが、世界的な製薬会社の水準には届かない。
10年後の姿は、売上の半分が希少疾患の薬、残りが成長ホルモンと既存品という構成になる。提携先との関係は、承認の遅れで試される場面がある。
- 成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142):数量 20,000(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.01(1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース))→ 売上 170 億円・営業利益 85 億円。20000×0.0085。営業利益率50%
- イズカーゴ(ハンター症候群):数量 600(治療を受ける患者数(人・世界))× 価格 0.68(1人あたりの会社の取り分(億円・名目))→ 売上 408 億円・営業利益 224 億円。600×0.68。営業利益率55%
- テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD):数量 360(年間の投与患者数(人))× 価格 0.08(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。360×0.08。営業利益率10%
- ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内):数量 580(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.50(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 81 億円。580×0.5。営業利益率28%
- その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか):数量 10.0(治療を受ける患者数(千人))× 価格 4.90(1,000人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。10×4.9。営業利益率8%
- 契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠):数量 1.0(契約収入の束(1))× 価格 100(年間の契約金その他の収入(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 −180 億円。契約金など年100億円。研究開発と本社の費用を含み営業利益は-180億円
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.39 倍、時価総額 1,858 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イズカーゴの海外承認が通り、ジビノスタットも承認されるが、どちらも満額には届かない筋書き。承認の見込みが立つ薬が複数ある会社なので17%。
中立 32% 中立:イズカーゴは伸びるが、成長ホルモンは細り、費用が利益を食う 利益 65 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 641 円784 億円
イズカーゴは米欧で承認され、年420人が使う。ジビノスタットは2027年に承認され、国内の患者の1割強が使う。成長ホルモンは週1回の競合に押され、患者が1割ほど減る。薬価も下がる。
売上は700億円台に乗る。ただし研究開発費は年160億円が続き、営業利益は約100億円にとどまる。借入は少しずつ減るが、利息は重い。
会社は黒字を続けるが、配当に回せる余裕は小さい。成長株でも、割安株でもない、中堅の希少疾患薬メーカーとして落ち着く。
イズカーゴの海外は、提携先を通じて売る形が中心になる。会社の取り分は国内より小さいが、販売の費用は抑えられる。
- 成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142):数量 19,000(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.01(1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース))→ 売上 148 億円・営業利益 67 億円。19000×0.0078。営業利益率45%
- イズカーゴ(ハンター症候群):数量 420(治療を受ける患者数(人・世界))× 価格 0.62(1人あたりの会社の取り分(億円・名目))→ 売上 260 億円・営業利益 130 億円。420×0.62。営業利益率50%
- テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD):数量 330(年間の投与患者数(人))× 価格 0.08(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。330×0.075。営業利益率5%
- ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内):数量 420(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.48(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 202 億円・営業利益 50 億円。420×0.48。営業利益率25%
- その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか):数量 9.0(治療を受ける患者数(千人))× 価格 4.90(1,000人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。9×4.9。営業利益率8%。価格は薬価の引き下げと物価が打ち消し合い、名目で横ばい
- 契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠):数量 1.0(契約収入の束(1))× 価格 40(年間の契約金その他の収入(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 −150 億円。契約金など年40億円。研究開発と本社の費用を含み営業利益は-150億円。今の契約金は大型で、先は一時金の波のため価格(収入)は約半分に置く
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イズカーゴは米欧で小さく承認され、ジビノスタットは承認されて地味に売れ、成長ホルモンは緩やかに細る筋書き。確率の中心を3割強に置いた。
やや悲観 30% やや悲観:海外の承認が遅れ、成長ホルモンも細る 利益 −20 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 294 円360 億円
イズカーゴの米欧の審査は追加の試験を求められ、承認が2年以上遅れる。同じ狙いの競合が先に売り出し、患者は年250人にとどまる。ジビノスタットは承認されるが、使う患者は国内で150人ほどだ。
成長ホルモンは週1回の薬に押され、患者が15%減り、薬価も下がる。売上は400億円台で止まる。
研究開発費を130億円まで絞っても営業は赤字になる。借入の借り換えで利息が増え、増資か資産の売却が選択肢に上る。会社は残るが、株主の取り分は薄まる。
導入した筋ジス薬の費用は、売上より先に出ていった。研究を絞る判断が遅れた分、傷は深くなる。
- 成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142):数量 17,000(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.01(1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース))→ 売上 119 億円・営業利益 45 億円。17000×0.007。営業利益率38%
- イズカーゴ(ハンター症候群):数量 250(治療を受ける患者数(人・世界))× 価格 0.55(1人あたりの会社の取り分(億円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 62 億円。250×0.55。営業利益率45%
- テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD):数量 280(年間の投与患者数(人))× 価格 0.07(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。280×0.07。営業利益率0%
- ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内):数量 150(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.42(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 9 億円。150×0.42。営業利益率15%
- その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか):数量 8.0(治療を受ける患者数(千人))× 価格 4.90(1,000人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。8×4.9。営業利益率5%
- 契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠):数量 1.0(契約収入の束(1))× 価格 25(年間の契約金その他の収入(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 −135 億円。契約金など年25億円。研究開発と本社の費用を含み営業利益は-135億円
倍率:稼ぐ力はなく、価値は売れる事業の税後から借入を引いた床で置く。床の倍率は今の自己資本に掛け、積み上げた利益には掛けない。市場の倍率からは置いていない。
確率:イズカーゴの米欧承認が遅れ、ジビノスタットの使い方が限られ、成長ホルモンが競合に押される筋書き。研究開発費の重さが続くため、最大の山に近い30%。
悲観 15% 悲観:海外承認を逃し、筋ジス薬も外れて事業を縮める 利益 −60 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 90 円110 億円
米欧の審査でイズカーゴは承認されず、国内の患者も新しい競合に移る。年90人まで減る。ジビノスタットは承認が遅れ、薬価も低く、売上は小さい。成長ホルモンは週1回の薬に患者を取られ、年80億円まで縮む。
会社は研究開発を70億円まで絞り、人員を減らす。それでも借入約480億円の利息と費用が重く、赤字が数年続く。
10年後に残るのは、成長ホルモンの事業と、脳に運ぶ技術の特許、国内の工場だ。借入を返すために、事業の一部を売る。株主の取り分はわずかになる。
成長ホルモンの工場は余り、固定費が重くなる。提携先は新しい契約に慎重で、資金は借入の返済に消える。
- 成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142):数量 14,000(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.01(1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース))→ 売上 81 億円・営業利益 20 億円。14000×0.0058。営業利益率25%
- イズカーゴ(ハンター症候群):数量 90.0(治療を受ける患者数(人・世界))× 価格 0.45(1人あたりの会社の取り分(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 8 億円。90×0.45。営業利益率20%
- テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD):数量 200(年間の投与患者数(人))× 価格 0.06(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。200×0.06。営業利益率0%
- ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内):数量 30.0(治療を受ける患者数(人))× 価格 0.38(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。30×0.38。営業利益率0%
- その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか):数量 6.0(治療を受ける患者数(千人))× 価格 4.90(1,000人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。6×4.9。営業利益率0%
- 契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠):数量 1.0(契約収入の束(1))× 価格 10(年間の契約金その他の収入(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 −85 億円。契約金など年10億円。研究開発と本社の費用を含み営業利益は-85億円
倍率:稼ぐ力はなく、価値は売れる事業の税後から借入を引いた床で置く。床の倍率は今の自己資本に掛け、積み上げた利益には掛けない。市場の倍率からは置いていない。
確率:イズカーゴの海外承認が通らず、競合に取られ、ジビノスタットも伸びない筋書き。借入が重く、外れた時の傷が深い会社なので15%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
成長ホルモン(グロウジェクトと長時間型JR-142)
子どもの低身長症などに使う成長ホルモン注射。国内の柱で、売上の約4割。
| 数量治療を受ける患者数(人) | 価格1人あたりの年間売上(億円・名目の薬価ベース) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 0.01 | 179 | 90 |
| 10 年後 中立 | 19,000 | 0.01 | 148 | 67 |
取り方:2026/03期のグロウジェクトは約179億円(説明会)。患者数は非開示のため、1人あたり約90万円と置いて逆算した推定。利益は非開示で、研究開発費を別枠にしたうえで営業利益率を約5割と推定した。10年先の価格は、薬価が毎年のように下がる流れを物価の上昇が打ち消せないとみて、中立で今の0.87倍(名目でも下がる)に置いた。
イズカーゴ(ハンター症候群)
脳にも届く酵素製剤。国内は発売済み、米・欧・ブラジルは2027年度の承認を目指す。
| 数量治療を受ける患者数(人・世界) | 価格1人あたりの会社の取り分(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 0.52 | 68 | 35 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.62 | 260 | 130 |
取り方:2026/03期の売上は67.66億円(+18%)。患者数と単価は非開示のため、国内の患者約130人・1人あたり約0.52億円とした推定。利益率は約5割と推定。
テムセル(造血幹細胞移植後のGVHD)
他人の間葉系幹細胞を使う細胞治療薬。国内のみ。
| 数量年間の投与患者数(人) | 価格1人あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 333 | 0.09 | 28 | −1 |
| 10 年後 中立 | 330 | 0.08 | 25 | 1 |
取り方:2026/03期の売上は28.31億円(-2.5%)。投与患者数は非開示で、1人あたり約850万円と置いた推定。利益はほぼゼロとみる。
ジビノスタット(デュシェンヌ型筋ジストロフィー・国内)
イタルファルマコ社から国内の権利を導入した経口薬。2026年内に申請、2027年内の承認と発売を目指す。
| 数量治療を受ける患者数(人) | 価格1人あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.48 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.48 | 202 | 50 |
取り方:未発売で0。会社の見立てはピーク売上約350億円、国内患者は約3,500人。契約条件は非開示のため、治療を受ける人数×薬価の推定で10年先を置く。
その他の製品(腎性貧血薬・ファブリー病薬ほか)
仕入れて売る商品や導入品。利益率は低い。
| 数量治療を受ける患者数(千人) | 価格1,000人あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 4.90 | 49 | 5 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 4.90 | 44 | 4 |
取り方:2026/03期の製品324億円からグロウジェクト・イズカーゴ・テムセルを引いた約49億円。患者数と単価は非開示のため、1人あたり約49万円と置いた推定。10年先は薬価の引き下げと物価の上昇が打ち消し合うとみて、価格は名目で横ばいに置いた。
契約金・研究開発・本社(全社の費用を置く枠)
提携先から入る契約金・ロイヤリティと、全社の研究開発費・本社費をまとめて置く枠。
| 数量契約収入の束(1) | 価格年間の契約金その他の収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 78 | 78 | −124 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 40 | 40 | −150 |
取り方:2026/03期の契約金収入55億円とその他23億円で約78億円。研究開発費約168億円と本社費をここに置くため、営業利益は大きなマイナスになる。全社の営業利益は約5.6億円。今の78億円には大きな契約金が含まれ、先は一時金の波で、中立は年40億円と置く(価格が今の約半分になるのはこのため)。
リスクと懸念
研究開発費の重さ
研究開発費は2026年3月期に約168億円で、売上の4割を超える。ジビノスタットの契約一時金も費用に入った。売上が伸びても、費用の山が続けば営業利益は薄いままだ。2027年3月期の第1四半期は経常で約21億円の赤字だった。
借入と金利の上昇
純借入は約400億円で、営業利益は支払利息の1.4倍しかない。借り換えのたびに金利は10年国債並みへ上がる。利益が小さい年は、利息だけで赤字に転ぶ。増資を迫られる可能性もある。
成長ホルモンの薬価と競合
国内の柱である成長ホルモンは、薬価の引き下げで売上が減っている。ノボ ノルディスクの週1回の薬や、帝人ファーマの長時間型も国内で申請された。JR-142とグロウジェクトの高用量は、巻き返しの手だが結果はこれからだ。
イズカーゴの海外承認
米国・欧州・ブラジルの承認は2027年度の予定だ。審査で追加の試験を求められれば、遅れる。同じ脳に届く酵素薬を狙う米国の会社もあり、承認の順番が患者の取り合いを決める。
ジビノスタットの見立て
会社が見込むピーク売上約350億円は、国内の患者約3,500人の相当な割合が使う計算だ。契約条件は開示されておらず、会社の取り分も不明だ。承認後の使われ方が見立てを下回れば、導入の費用が重くなる。
財務報告と管理
2026年6月に、2024年度と2025年度の連結財務諸表とキャッシュフロー計算書の一部を訂正した。内容は有価証券報告書の作成中に見つかった誤りと報じられた。同じ種類の誤りが続けば、数字の信頼が揺らぐ。
今後の分かれ目
- イズカーゴが米国か欧州で承認され、提携先が決まる
- 売上の見立てが数倍になる筋が太くなり、楽観側の確率を上げる。契約金も入り、借入の不安も和らぐ。
- ジビノスタットの国内承認が2027年内に下りる
- 中立の利益が上振れし、やや楽観の確率を上げる。薬価と患者の登録の速さを見る。
- 成長ホルモンの国内売上が年10%以上減る
- 中立の利益の土台が崩れ、やや悲観の確率を上げる。週1回の競合の浸透度が焦点になる。
- イズカーゴの海外承認が追加試験で2年以上遅れる
- 海外の売上が先送りされ、やや悲観の確率を上げる。借入の返済が重くなる。
- 借り換えで金利が上がり、営業利益が支払利息を下回る
- 純利益が赤字に転ぶ。増資や資産の売却の可能性が高まり、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- イズカーゴの国内患者数と、米欧の承認審査の進み具合
- ジビノスタットの申請・承認の時期と薬価
- 成長ホルモンの売上の前年比と週1回の競合の浸透
- 研究開発費と営業利益、純借入と支払利息の動き
倍率と資本コストの決め方
事業ごとに患者数×1人あたりの売上で10年を積み、倍率は式(正当化PER・RONIC・資本コスト)と事業の経済性だけで置いた。今の時価総額は見ていない。結果が今を下回るのは、研究開発費が利益を食い、純借入が重く、当たる薬の数が限られるからだ。今の値段がその数倍でも、数字は寄せていない。なお新リース会計基準で営業利益や純借入の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→13.24 倍・やや楽観 PER 10.1→12.39 倍・中立 PER 11.8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。