結論
ミズホメディーは、佐賀県鳥栖市の体外診断薬メーカーだ。診療所で使う、15分ほどで結果が出る感染症の検査キットを自社で開発し、工場で作り、医薬品卸を通じて売る。筆者の結論は、今の値段は割高寄りというものだ。利益率が過去の平常の2倍以上に膨らんだ状態を、市場はなお長く続く前提で見ている。
2025年12月期の売上は113億円、営業利益は46億円で、営業利益率は41%だった。コロナ前の2019年12月期は売上64億円、営業利益11億円で、率は17%にすぎない。差を生んだのは、コロナとインフルエンザを一度に調べる抗原キットだ。この1製品群が売上の半分近くを占める。
10年の中立では、検査の件数は緩やかに減り、1件あたりの値段は物価ほど上がらないとみる。競合が多く、診療報酬での扱いも検査の単価を押し下げるからだ。それを遺伝子検査の新製品が一部補う。営業利益は38億円前後で、利益率は3割弱に下がる。
約125億円と推定する現金と定期預金は、強みであり弱みでもある。事業に要らない分が時価総額の3分の1を占める一方、特需で積んだ分は株主に回ってこなかった。もう一つの分かれ目は、遺伝子検査の「スマートジーン」が、抗原キットに続く稼ぎ頭に育つかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言でいえば「特需で膨らんだ利益の、平常値を見極める会社」だ。診療所の検査キットという事業自体は、感染症がある限り消えない。10年先も存在する。
ただし、堀は薄い。利益率41%の高さは、事業の強さというより、コロナという特殊な需要の恩恵だった。バリュー投資家は、高い利益率を永遠に続くものとは見ない。平常の率、つまり2019年の17%から、コロナ以後に増えた検査習慣を加えた水準、おそらく3割前後を、持ち続けられる利益の目安に置く。
資本の使い方は、評価が割れる。配当性向50%は立派な方針だ。しかし、特需の利益を積み上げた現金と定期預金は、株主に戻されていない。経営が今の現金を研究や設備、買収に使うのか、返すのかで、価値は大きく変わる。
安全域でいえば、時価総額334億円に対し、事業に要らない現金が3分の1ある。これは確かな支えだ。しかし、利益の平常値を前提にすると、事業の評価は今の値段にほぼ織り込まれている。安全域は薄い。
筆者がいちばん気にしているのは、遺伝子POCTが育つ前に、コロナの特需が冷めきってしまう場合だ。
何で稼ぐ会社か
ミズホメディーの商売は、単純に言えば「診察室で使う検査キット」である。開業医が熱のある患者に鼻の奥の検体を採り、キットに垂らす。15分ほどで線が出て、感染の有無がわかる。この仕組みをイムノクロマト法といい、同社は企画・開発から製造、販売までを自社で一貫して行う。
売上の96.6%は病院・開業医向けで、残りは妊娠検査薬などの一般用だ。2025年12月期の売上113億円のうち、コロナ検査薬が74億円、その内訳でコロナ・インフルエンザ同時検査薬が55億円と、出荷は約916万テストにのぼる。インフルエンザの単独キットは9億円、その他の検査薬・機器が26億円だった。
売り先は医薬品卸で、メディセオ、東邦薬品、アルフレッサの3社だけで売上の約46%を占める。病院や診療所に直接売るのでなく、卸の営業網に乗る形だ。
2018年に始めた遺伝子POCTは、装置とキットの組み合わせで売る。装置を診療所に置けば、専用キットが継続して売れる仕組みだ。コロナの遺伝子キットは需要が細ったが、ピロリ菌の核酸キットを2025年6月に承認取得し、百日咳の核酸キットも申請した。拠点は鳥栖と久留米の2か所、従業員は193名で、研究開発の担当は47名と全体の4分の1を占める。
富士フイルムとは、銀増幅という方式の機器と試薬を共同開発し、特許のライセンスを受けている。
優良さと弱いところ
ミズホメディーの強みは、診療所の現場に根づいた検査キットのブランドと、開発から製造までを自前でこなす力にある。クイックチェイサーは、インフルエンザなどの抗原検査で高い市場シェアを持つとされる。診療所の医師や看護師は、使い慣れた検査キットを替えたがらない。これは小さいが確かな切り替えコストだ。
財務は文句なしに堅い。自己資本比率は83.5%、借金はなく、特需で現金と定期預金を厚く積んだ。
ただし、堀と呼べるほどの強さはない。第一に、売上の3分の2以上がコロナ関連に偏っている。第二に、競合が多い。デンカ、富士フイルム、栄研化学、積水メディカル、ロシュなど大手が同じ市場で戦い、コロナ特需の最中に参入が増えて価格競争が進んだと報じられている。第三に、診断薬は診療報酬で検査の値段が決まるため、メーカーは売値を自分で決めにくい。
利益率も平常ではない。2019年は17%、2020年は10%だった。41%は異例の高さである。
経営面では、2025年に開発畑の取締役が代表取締役に就く予定と開示された。コロナ後を見据え、新製品の開発に力点を置く体制だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
検査キットの市場は、コロナで構造が変わった。矢野経済研究所によると、国内のPOCT(診察の場で行う検査)の市場は2023年度に2,739億円で、コロナ前の1,000億円強の2倍以上に育った。その後、5類移行で医療機関以外の検査需要が消え、コロナ単独の抗原キットは縮んだ。一方、コロナとインフルエンザを同時に調べるコンボ型は伸びた。
ここに需要の核がある。コロナは年に2回ほどの流行を繰り返す感染症に定着しつつあり、発熱外来で調べる習慣が残るかぎり、検査は一定の水準で続く。インフルエンザ、溶連菌、RSウイルスなど、ほかの感染症も増えている。簡易検査への要望は強い。
一方、数量と価格の両方に下押しがかかる。コンボ型は1テストあたりの売上が小さく、薄利多売の商品だ。競合が増えれば、卸への納入価格が下がる。診療報酬での検査の評価が引き下げられる可能性もある。
技術の流れとしては、抗原検査から遺伝子検査へ、そして複数項目の同時検査へ向かう。遺伝子POCTは感度が高く、診療所でも使えるが、アボットのID NOWやロシュのcobas Liatなど海外大手が先行する。装置を診療所に置く販売には、時間と営業力が要る。
景気には左右されない。左右されるのは、感染の流行の大きさだ。流行が小さい年は売上が大きく落ち、2025年12月期の第3四半期のように、売上がマイナスになる製品も出る。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当は業績に応じ、配当性向50%を目標とする。2025年12月期の配当性向は56%だった。自社株買いは見当たらない。
ただ、手元の資金は配当だけでは減らない。2021年と2022年の特需期に、純利益の合計は126億円に達した。自己資本は38億円から143億円に膨らんだが、そのうち配当に回った分は2割に届かない。特需の利益の大半は、会社の中に残った。
現金は約23億円に見えるが、これは現金同等物だ。2025年は定期預金への預入が100億円あり、現金に近い資産は約125億円と推定する(決算短信での確認が必要)。売上債権や棚卸しなど事業に要る運転資本は約70億円で、自己資本187億円と見比べると、事業に要らない額は100億円を超える。
M&Aは小さい。関連会社のAMBiSを28.6%持つほかは、目立つ動きがない。政策保有株は非上場32銘柄、上場11銘柄だが、金額は小さい。
株主構成は未確認。サイトの試算では、10年以内に買収される確率は約27%だが、この数字は根拠が薄い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コロナは年に2回の流行を繰り返す感染症に定着し、発熱外来での検査は習慣になった。2025年12月期はコンボ型の出荷が前期の約708万テストから約916万テストに増え、コロナ検査薬全体で増収を確保した。単独キットが縮む一方で、一度に二つを調べるコンボ型が標準になり、1回の診察で使うキットの数と単価が上がった。
インフルエンザ、溶連菌、RSウイルスなど、ほかの感染症の簡易検査への要望は強まっている。遺伝子POCTは、ピロリ菌の核酸キットを2025年6月に承認取得し、百日咳も申請した。装置を診療所に置けば専用キットが継続して売れるので、一度普及すれば息の長い収益になる。
現金と定期預金は約125億円と推定され、研究開発に資金を回せる。研究開発費は売上の7%で、担当者は全体の4分の1だ。次の大型製品を生む体力がある。配当性向50%の方針を守る以上、利益が出れば株主に返る。
何より、特需が去っても営業利益率は4割を超える。同業と比べても突出した水準で、この事業の収益性は特需だけでは説明できない。
慎重な見方
利益率41%は、コロナが生んだ異常値だ。コロナ前の2019年12月期は17%、2020年12月期は10%だった。特需が去った後、なおも4割を保つと考えるのは危うい。2026年12月期は上期の営業利益が前年同期比32.5%減っており、既に下降が始まっている。
売上の3分の2以上はコロナ関連だ。コロナが普通の風邪と同じ扱いになり、発熱外来での検査が減れば、数量は大きく縮む。診療報酬での検査の評価が下がれば、卸への納入価格にも響く。デンカ、富士フイルム、栄研化学など大手が同じ市場で戦い、価格競争は厳しい。
売り先は医薬品卸3社に偏り、うち1社は売上の17.6%を占める。卸が仕入れを絞れば、メーカーの売上が落ちる。インフルエンザ単独キットの売上が、四半期でマイナスになったこともある。
遺伝子POCTは、アボットやロシュが先行し、装置を診療所に置くための営業力も必要だ。コロナの遺伝子キットは32万テストから16万テストに半減した。現金は厚いが、特需の利益を配当に回さず積み上げた経緯を見ると、株主に返るとは限らない。
10年先まで、検査の件数も単価も下がり続けるとみるのが自然だ。
どちらに重みを置いたか
利益率の水準が全てを決める。コロナ後に増えた検査の習慣は本物だが、41%の利益率は平常とは言えない。そこで中立では3割弱まで落とし、確率は慎重な側に厚く置いた。遺伝子POCTの育ちは見えにくく、楽観には重みを置けない。現金は半分だけ価値に入れる。今の値段は、特需が長く続く前提の上に立っている。 慎重な側の言い分をやや強いとみるのは、利益率の高さが事業の力ではなく需要の波に乗った結果だと読むからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,020 円575 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 855 円163 億円)。 今の値に割り戻すと 1,981 円377 億円、今との差 +15.2%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,296 円1,009 億円 | 1,213 円231 億円 | +278.6% | +14.2% | 521 円99 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,292 円818 億円 | 1,018 円194 億円 | +208.9% | +11.9% | 1,062 円202 億円 |
| 中立 | 38% | 3,641 円694 億円 | 892 円170 億円 | +163.7% | +10.2% | 1,723 円328 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,325 円252 億円 | 740 円141 億円 | +20.1% | +1.8% | 496 円94 億円 |
| 悲観 | 10% | 363 円69 億円 | 378 円72 億円 | −56.9% | −8.1% | 74 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,020 円575 億円 | 855 円163 億円 | +125.4% | +8.5% | 3,875 円738 億円 |
今の株価時価総額 1,719 円327 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 検査習慣が定着し、遺伝子POCTが第二の柱に育つ 利益 52 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 5,296 円1,009 億円
検査習慣が定着し、遺伝子POCTが第二の柱に育つ10年だ。コロナとインフルエンザの同時検査は発熱外来の標準になり、件数は今の水準を保つ。値段も物価に近い率で上がる。遺伝子POCTでは、ピロリ菌、百日咳に続く新しい核酸キットが次々と承認され、装置が診療所に広がって専用キットの継続売上が積み上がる。次世代の複数項目の遺伝子検査も当たる。研究開発の投資が実り、売上は190億円近くまで伸びる。営業利益率は3割台半ばを保ち、現金は研究や設備、小さな買収にも回る。ただし、特需期の水準にほぼ近い利益率を10年続けることが前提で、連続して当たる必要がある。
- 抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ):数量 1,260(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.08(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 99 億円・営業利益 45 億円。検査習慣が定着、コンボが標準に
- 遺伝子POCT(スマートジーン):数量 57.2(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 1.11(1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む)→ 売上 63 億円・営業利益 27 億円。装置の普及と新キットが当たる
- その他の検査薬・OTC:数量 840(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.03(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 24 億円・営業利益 8 億円。周辺の感染症に広がる
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 17.19 倍、時価総額 976 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が4割を保ち、さらに遺伝子POCTが当たる必要がある。連続して当たる確度は低いので8%にとどめた。
やや楽観 20% 検査の件数は保たれ、新製品が少しずつ積み上がる 利益 39 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 4,292 円818 億円
検査の件数が保たれ、新製品が少しずつ積み上がる10年だ。コロナ後も発熱外来での検査は続き、コンボ型の件数は横ばいに近い。値段は物価の8割ほどの上昇にとどまるが、遺伝子POCTの新キットが毎年のように加わり、装置の台数も増える。ピロリ菌と百日咳の核酸キットが堅調に売れ、周辺の感染症の抗原キットも伸びる。営業利益率は3割強に落ち着く。配当性向は50%台半ばを保ち、現金は積み上がる。突出した成長はないが、特需後の水準を保てる、安定した10年になる。 会社が重点に掲げる遺伝子POCTの製品拡充と、高感度の検査システムの開発も、段階的に実を結ぶ。研究開発費は売上の7%前後を保つ。
- 抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ):数量 1,164(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.07(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 86 億円・営業利益 36 億円。件数ほぼ横ばい、値段は物価の約8割
- 遺伝子POCT(スマートジーン):数量 41.6(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 1.09(1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む)→ 売上 45 億円・営業利益 18 億円。新キットが着実に増える
- その他の検査薬・OTC:数量 770(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.03(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 21 億円・営業利益 7 億円。横ばいから微増
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 17.37 倍、時価総額 756 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コロナ後の検査習慣が残り、新製品も少し当たる程度の筋書き。十分ありうるが、利益率が今の高さに近い前提なので2割に置く。
中立 38% 特需が冷め、利益率は3割弱の平常に落ち着く 利益 30 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 3,641 円694 億円
特需が冷め、利益率が3割弱の平常に落ち着く10年だ。コロナとインフルエンザの同時検査は件数が1割ほど減る。5類となった感染症で、軽症なら検査を省く医療機関が増えるためだ。値段は物価の上昇に追いつかず、10年で1割ほどの上昇にとどまる。競合の参入と診療報酬での評価の抑制が理由だ。遺伝子POCTは、装置が少しずつ広がり、新キットが加わるが、海外大手が先行して伸びは緩やかだ。営業利益は38億円前後、率は3割弱になる。配当性向は5割台半ばを保つが、現金は大きく動かない。派手な悪化はないが、今の利益率には戻らない10年である。
- 抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ):数量 1,080(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.07(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 75 億円・営業利益 30 億円。件数1割減、値段は物価の約8割
- 遺伝子POCT(スマートジーン):数量 32.5(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 1.06(1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む)→ 売上 35 億円・営業利益 13 億円。装置の普及が遅れつつ進む
- その他の検査薬・OTC:数量 700(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.03(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 18 億円・営業利益 6 億円。件数横ばい
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)110 億円。全体の PER 17.72 倍、時価総額 611 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:検査の件数が緩やかに減り、値段が物価に追いつかず、利益率が3割弱に落ち着く中心の筋書き。
やや悲観 24% 検査の減少と価格競争で、利益が半分以下に戻る 利益 15 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 1,325 円252 億円
検査の減少と価格競争で、利益が半分以下に戻る10年だ。コロナが普通の風邪と同じ扱いになり、発熱外来で検査を省く医療機関が増える。コンボ型の件数は2割以上減り、競合との値下げ競争も続いて、値段は物価の上昇に追いつかず横ばいに近い。遺伝子POCTは海外大手に押されて伸びが鈍る。営業利益率は2割弱に落ち、2019年の17%に近づく。配当は減るが、現金の一部を研究に回し、将来の新製品に備える。ROEは資本コストを下回り、特需期の蓄積が重荷となる姿だ。 卸3社が仕入れを絞る局面もあり、在庫の調整が数年にわたって売上を押し下げる。コロナ前の水準よりは高いが、特需期の蓄積に見合う稼ぎは続かない。
- 抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ):数量 900(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.06(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 57 億円・営業利益 19 億円。検査が減り、値下げも進む
- 遺伝子POCT(スマートジーン):数量 23.4(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.94(1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む)→ 売上 22 億円・営業利益 7 億円。普及が進まず横ばい
- その他の検査薬・OTC:数量 630(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.02(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。競合に押される
倍率:事業の純利益14億円・事業ROE 約6〜7%は k 8% 以下で、上限は1÷k=10.8倍。利益が谷に近い筋書きで、谷の倍率を重ねず、上限の約7割の7.8倍に置いた。
確率:コロナが普通の風邪の扱いになり、検査を省く医療機関が増え、価格競争も強まる。特需の利益率が長く続かない前例は多く、慎重側に厚く置く。
悲観 10% 特需が去り、遺伝子POCTも育たず、コロナ前に近づく 利益 4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 363 円69 億円
特需が去り、遺伝子POCTも育たず、コロナ前に近づく10年だ。コロナが風邪と同じ扱いになり、検査の件数は半分になる。診療報酬での評価も下がり、競合の参入で卸への納入価格が下がる。遺伝子POCTでは、海外大手の装置と競合するうえ、診療所への営業が追いつかず、新キットが売れない。開発に投じた研究費が回収できない。営業利益はほぼゼロに近づき、配当は大幅に減る。現金は研究や買収の失敗で目減りする。コロナ前の10%台の利益率にも届かず、薄利の検査キットメーカーとして評価される姿だ。 卸が仕入れを絞る。信頼する診療所の取引は残るが、数量も値段も戻らない。借金がないので、清算に近い価値は残る。
- 抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ):数量 600(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.05(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 32 億円・営業利益 7 億円。件数半減、値段も下がる
- 遺伝子POCT(スマートジーン):数量 15.6(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.85(1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む)→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。海外大手に押され頓挫
- その他の検査薬・OTC:数量 490(年間の出荷テスト数(万テスト))× 価格 0.02(1万テストあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。縮小
倍率:今の自己資本187億円に0.37倍を掛けた。事業の純利益3億円ではk 8%を大きく下回り、稼ぐ力の価値は小さい。借金がなく、現金と定期預金(推定約125億円)に戻り方0.5を掛けた額と売掛金・在庫の回収価値が残るため、その床に近い価値に置いた。
確率:検査の件数が半分になり、遺伝子POCTも育たず、コロナ前の収益性に戻る構造的な負け。2019年や2020年の実績があるため、1割に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
抗原迅速検査(コロナ・インフルエンザ)
診療所で使うイムノクロマト法の検査キット。コロナ・インフルエンザ同時検査が中心で、単独キットも含む。「クイックチェイサー」シリーズ。
| 数量年間の出荷テスト数(万テスト) | 価格1万テストあたりの売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,200 | 0.06 | 75 | 36 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.07 | 75 | 30 |
取り方:コロナ・インフルエンザ同時検査薬の売上54.7億円(出荷約916万テスト)に、インフルエンザ単独9.3億円と、コロナ単独抗原の推定約11億円を足し、約75億円。テスト数は約1,200万と推定(開示は同時検査薬の916万テストのみ)。営業利益は全体46.4億円を、共通の研究費8億円を除いて推定で割り振り、約36億円(率48%)。
遺伝子POCT(スマートジーン)
診療の場で使える全自動の遺伝子検査装置と専用キット。コロナ・インフルエンザ・ピロリ菌などの核酸キットを持つ。
| 数量年間の出荷テスト数(万テスト) | 価格1万テストあたりの売上(億円)。名目、装置を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 26.0 | 0.85 | 22 | 12 |
| 10 年後 中立 | 32.5 | 1.06 | 35 | 13 |
取り方:遺伝子POCT(スマートジーン)の売上は、コロナ遺伝子キット約16万テスト(約8億円と推定)と他の核酸キット、装置を足して約22億円と推定。開示は製品群別で、遺伝子全体の売上は書かれていない。営業利益は約12億円と推定(率54%)。
その他の検査薬・OTC
RSウイルス・アデノウイルスなどの抗原キット、妊娠・排卵日検査薬(OTC)、機器の保守など。
| 数量年間の出荷テスト数(万テスト) | 価格1万テストあたりの売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 0.02 | 15 | 6 |
| 10 年後 中立 | 700 | 0.03 | 18 | 6 |
取り方:RSウイルス・アデノウイルスなどの抗原キット、OTC検査薬(3.8億円)、機器を足した約15億円。開示は「その他の検査薬及び機器」の25.5億円とOTCの3.8億円に分かれ、遺伝子分を除いた推定。営業利益は約6億円。
リスクと懸念
利益率が特需の水準にある
営業利益率41%は、コロナ前の17%、10%の2倍以上だ。会社は2026年12月期に営業利益44億円と減益を見込み、上期は前年同期比32.5%減った。利益率が平常に落ちる過程で、利益は想定以上に減る可能性がある。
コロナ・インフルエンザ関連への偏り
売上の約3分の2がコロナ関連で、同時検査薬だけで約5割を占める。コロナの扱いが風邪と同じになり、検査を省く動きが広がれば、数量が大きく縮む。有報も特定製品への依存をリスクに挙げている。
価格競争と診療報酬
デンカ、富士フイルム、栄研化学、積水メディカルなど大手が同じ市場で戦う。診療報酬での検査の評価が下がれば、卸への納入価格にも響く。コンボ型は1テストあたりの売上が小さい薄利多売の商品で、値下げに弱い。
卸への依存
メディセオ、東邦薬品、アルフレッサの3社で売上の約46%を占める。卸が仕入れを絞ると売上は急に落ちる。2025年12月期の第3四半期には、インフルエンザ単独キットの売上がマイナスになった。
遺伝子POCTが育たないリスク
遺伝子POCTは装置を診療所に置く販売で、時間と営業力が要る。アボットのID NOWやロシュのcobas Liatなど海外大手が先行する。コロナの遺伝子キットは32万テストから16万テストに半減した。
余った資金の使い道
特需の利益で積んだ現金と定期預金は約125億円と推定される。配当性向50%の方針でも、積み上げた分は戻されていない。研究や買収に使えば価値を生むが、失敗すれば価値を壊す。
今後の分かれ目
- コロナ・インフルエンザ同時検査の出荷が、毎年の流行期でも前年を大きく下回り続けたら
- 検査習慣が薄れた証拠として、やや悲観・悲観側の確率を上げる。
- 遺伝子POCTの装置の設置台数と専用キットの売上が毎年伸び続けたら
- 第二の柱として評価でき、楽観・やや楽観側の確率を上げる。
- 卸への納入価格の引き下げや、診療報酬での検査評価の引き下げが続いたら
- 1テストあたりの売上と利益率の前提を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 余った現金が株主に回る道ができ、戻り方を引き上げて価値を上げる。
- 大型のM&Aや高額な設備投資に現金を使ったら
- 資本の使い方を再評価する。割高な買収なら、やや悲観側の確率を上げる。
- 卸の在庫調整で、売上がマイナスに振れる四半期が増えたら
- 流行以外の要因で数量が崩れている兆しとして、慎重に見る。
見ておくもの
- コロナ・インフルエンザ同時検査の出荷テスト数と1テストあたりの売上
- 遺伝子POCTの装置の設置台数と新キットの承認
- 営業利益率と研究開発費の推移
- 卸3社の仕入れ動向
- 配当性向・自社株買い・定期預金の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は、堀が弱い前提(残る割合1/3)で正当化PERの式から出した上限を基準にし、中立は上限の約76%に置いた。今のPER 約10倍やPBR 1.8倍は根拠に使っていない。利益率は、特需期の水準でなく、コロナ前の17%と検査習慣の定着を考え、中立で3割弱に置いた。現金は、事業に要らない約110億円を分け、戻り方0.5で足した。形はリース会計に関わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→17.19 倍・やや楽観 PER 11.3→17.37 倍・中立 PER 11→17.72 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.00%。