結論
ラクオリア創薬は、自ら発見した新薬候補を製薬会社に導出し、販売ロイヤルティや開発の進展に伴う一時金を受け取る創薬会社だ。筆者の結論は「割高」である。胃酸分泌抑制剤テゴプラザンの世界展開は確かな成長機会だが、現在の時価総額約165億円に見合う利益が10年後も続くかについては、慎重に判断する必要がある。
同社は、研究成果が実際の医薬品販売につながった数少ない国内創薬ベンチャーの一つである。韓国のK-CABは2025年に約2,179億ウォンの外来処方売上を記録し、消化性潰瘍治療薬市場で首位を維持した。2026年には販売国が20カ国となり、米国でも承認審査が進んでいる。犬猫用医薬品の販売ロイヤルティもあり、開発段階だけの会社とは収益の確かさが違う。
ただし、今の利益はロイヤルティと不定期の契約収入に支えられている。2025年は営業黒字だったが、2026年上期は営業赤字に戻った。韓国では2031年頃のテゴプラザンの特許期限が意識され、米国でも上市後の独占販売期間には限りがある。販売拡大がそのまま2035年以降の利益につながるとは限らない。
もう一つの論点は資本配分だ。2024年に45億円で買収したファイメクスは事業を広げたが、巨額ののれんを抱えることになった。既存株主への還元はなく、研究開発を支える増資も続いている。成長機会があっても、それが既存株主の一株当たり価値を増やすとは限らない。
5つの筋書きでは、今の株主の潜在的な希薄化を反映した現在価値は約73億円となり、基準時価総額を約56%下回る。米国での大型成功に十分な上振れを認めても、研究開発の失敗、特許切れ、資本配分の不確実性を合わせると、現時点では安全域が不足している。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場から見ると、ラクオリア創薬は魅力的な研究資産を持つ一方、利益を安心して予測できる会社ではない。既に薬が売れている点は高く評価できる。研究室の中だけの発明と違い、K-CABは患者に使われ、医師に処方されている。これは時間と資金を投じても容易には手に入らない成果である。
しかし、製薬会社への導出モデルでは、最後の顧客接点をラクオリア自身が持たない。開発の進め方、販売戦略、薬価交渉、競合への対応は主として提携先が決める。特許が強いうちは契約による収益が守られても、独占期間が終われば条件が変わる。10年後に同じ薬が売れていることと、同じロイヤルティが入ることは別の話だ。
オーナー利益とは、研究開発を続けるために必要な資金を差し引いた後、株主が自由に使える利益である。ラクオリアは創薬を続けなければ将来の利益が細るため、研究開発費を単純に削って高い利益率を作ることはできない。毎年の支出には、今の事業を維持し、次の薬を生み出すために必要な再投資が相当に含まれる。
資本配分で最も注視するのはファイメクス買収の成果だ。独自の技術を買うことと、その技術から買収額以上の利益を得ることは違う。加えて、株式発行によって資金を集めてきた以上、会社全体の価値だけでなく、既存株主の取り分が増えるかが重要になる。創薬成功の話だけで希薄化を見過ごすわけにはいかない。
筆者は、テゴプラザンの米国展開が成功する可能性を十分認める。それでも、特許切れ後の利益の維持、新たな薬の創出、資本配分という複数の条件がそろわなければ現在の時価総額を正当化しにくい。分からない将来の成功に先回りして高い値段を払うより、利益と現金回収の裏付けを重視したい。
何で稼ぐ会社か
ラクオリア創薬の事業は、医薬品を自社で大量生産して販売するものではない。新薬の候補物質と特許を創出し、その開発・製造・販売権を製薬会社へ渡す。導出先は開発段階に応じた一時金や、製品発売後の売上に連動するロイヤルティを支払う。このため製造設備への巨額の投資を避けられる反面、薬が売れるかどうかは提携先の判断と実行力に依存する。
既に販売されている主力は胃酸分泌抑制剤テゴプラザンである。韓国のHK inno.NがK-CABとして販売し、中国や中南米などへ事業地域を広げている。米国ではSebela Pharmaceuticals傘下のBraintreeが開発を進め、2026年1月にFDAへの承認申請を行った。日本もHK inno.Nとの契約によって事業化を進める。ラクオリアが受け取るのは、こうした各地域の販売実績や契約上の節目に応じた収益である。
もう一つの収益源は、Elancoが販売する動物用医薬品だ。犬の骨関節炎治療薬GALLIPRANT、犬の食欲不振治療薬ENTYCE、猫の体重減少管理薬ELURAなどに関連するロイヤルティを得ている。動物薬には公定薬価制度がなく、ブランドを維持できれば安定収益となりやすい。ただし価格や販売網を直接管理するのはElancoであり、ラクオリア自身の値決め力は限定的だ。
開発段階の案件では、久光製薬とのナトリウムチャネル遮断薬、XgeneとのTRPM8遮断薬、旭化成ファーマとのP2X7受容体拮抗薬などがある。2026年10月には、久光製薬の第II相試験開始によって2億円の一時金受領が決まった。一方、P2X7についてはEli Lillyが2025年に開発パイプラインから外しており、契約済みの薬でも成功は約束されない。
2024年に買収したファイメクスは、標的タンパク質分解誘導剤を作るRaPPIDS技術を持つ。アステラス製薬との共同研究では研究協力金とマイルストンを受け取ってきた。創薬そのものから得る将来の利益に加え、共同研究の段階でも収入が入ることが特徴である。しかし、研究協力金と一時金は恒常的な薬の販売収益とは性質が違い、継続性を分けて見る必要がある。
優良さと弱いところ
同社の最も大きな強みは、実際に上市された薬を生み出した創薬能力である。テゴプラザンは韓国で販売実績を積み、臨床データや適応症が増えている。単なる研究段階の特許ではなく、患者と医師の使用実績を伴うことに意味がある。動物薬も複数上市されており、研究開発の成果をロイヤルティへ変えた経験は再現性を考えるうえでプラスだ。
それでも、堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みを、数十年間続くものとして評価するのは難しい。新薬の特許と規制上の独占期間には期限がある。テゴプラザンには臨床データとブランドという強みがあるが、後発品が登場すれば販売価格とロイヤルティの基礎となる売上が下がりうる。新たな薬を作り続けなければ、今の収益をそのまま維持できない。
ファイメクスのRaPPIDSは独自の創薬技術だが、標的タンパク質分解の領域ではArvinas、Nurix、Kymeraなども研究を進めている。アステラス製薬との契約拡大は技術の外部評価として重要だが、契約先が一つ増えただけで恒久的な価格決定力が成立したわけではない。独自技術への評価と、長期的な投下資本利益率を分けて考える必要がある。
過去10年のROE中央値はマイナス3.2%で、資本コストを継続して上回った実績はない。2021年と2022年は大きく黒字になったが、その後の2年間は赤字だった。2025年には再び黒字化したものの、2026年上期は純損失を計上している。利益を増やす研究開発の成果は存在するが、追加で投じた資本が長期にわたり十分な利益を生むとまでは確認できない。
また、2026年6月末の連結純資産約78億円には、ファイメクス買収に伴うのれん約35.6億円が含まれる。この資産は事業が成功すれば利益を生むが、研究開発が失敗した時に額面どおり売却できるものではない。帳簿上の自己資本の厚さを、そのまま悲観時の安全域とは考えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の医薬品市場では、胃食道逆流症や消化性潰瘍に対して従来のPPIに加え、速効性を持つP-CABが広がっている。会社資料が示す消化性潰瘍治療薬の潜在市場は世界で約2兆円、米国で約4,000億円、日本で約2,500億円である。韓国ではK-CABが2025年に約2,179億ウォンの外来処方売上を記録し、消化性潰瘍治療薬市場で約15%のシェアを持つ。これらの市場規模はラクオリアの売上ではなく、提携先が獲得を目指す医薬品販売市場である。
P-CABの競争は強まっている。韓国では大熊製薬のfexuprazan製剤Fexuclue、Onconic Therapeuticsのzastaprazan製剤Jaqboが競合する。米国ではPhathom Pharmaceuticalsが武田薬品由来のvonoprazanをVOQUEZNAとして販売している。日本では武田薬品のタケキャブが先行している。ラクオリアの提携先が市場に参入しても、そのすべてを獲得できるわけではない。
テゴプラザンの米国第III相試験では、従来のPPIに対する良好な結果が示された。2026年10月時点では承認前であり、会社側は2027年初頭の承認、2028年以降のロイヤルティ寄与を想定している。承認後には医療機関への普及、保険償還、競合との価格交渉が待っている。米国市場の大きさと、実際に製薬会社が獲得できる売上を混同してはならない。
さらに、韓国では2031年後半の特許期限が報じられている。国ごとに特許や規制上の独占期間は異なるものの、2035年には現在の製品を取り巻く競争環境が大きく変わっている可能性が高い。筆者は世界展開による実質販売数量の増加を認めつつ、平均販売単価と実効ロイヤルティ率には特許切れによる下押しを見込む。
動物薬ではElanco、Zoetis、Boehringer Ingelheimなどが大手であり、GALLIPRANTは関節炎治療においてLibrelaなど異なる作用機序の薬とも競争する。個別薬剤の世界シェアは十分に開示されておらず、推測で断定しない。研究開発の分野でも大手製薬の内製化と創薬ベンチャー間の競争が続くため、導出案件の数量が増えても平均契約単価が上がるとは限らない。
資本政策と M&A
2026年2月に発表した2026~2028年の事業計画では、2028年12月期の事業収益46.86億円、営業利益9.09億円、純利益6.76億円を目標としている。3年間の累計事業収益は128億円、3期連続の営業黒字も掲げる。一方、ROEの定量目標は示していない。株主還元についても、配当は財務基盤の強化に応じて実施し、自社株買いは機動的に検討するとの方針であり、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束はない。
資金の主な使途は研究開発だ。計画では3年間の探索研究投資が72億円、前臨床・臨床開発投資が3億円となる。研究開発に資本を向けること自体は創薬会社として合理的だが、その成果が既存株主に帰属する価値を増やすかどうかが問われる。過去の赤字と増資の履歴を考えると、投じた資本が必ずしも高い利回りで回収されてきたとは言えない。
2024年のファイメクス買収では45億円の当初対価に加え、2028年までの同社の収益に連動する条件付対価を約束した。2025年にファイメクスは約10.75億円の事業収益を生んだが、そのうち6億円はアステラス製薬との契約に伴う一時金であり、毎年繰り返すとは限らない。買収によって研究基盤を得た効果を認めながらも、買収額に見合う累積の現金回収はまだ証明途上にある。
HK inno.Nとの資本業務提携では、2025年と2026年に合計約24億円を調達した。これにより研究開発資金と日本でのテゴプラザン展開の協力関係が強化されたが、株数も増えた。今後も新株予約権の行使による希薄化の可能性が残る。株主配当の実績が乏しいため、将来の余剰現金が全額株主に戻るとは考えず、戻り方は75%としている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ラクオリア創薬には、一般的な研究開発段階の創薬ベンチャーにはない実績がある。テゴプラザンは韓国で販売され、国内の主要な胃酸分泌抑制剤として地位を確立した。世界20カ国での販売に加えて米国で承認申請が進み、日本や欧州にも市場を広げる余地がある。既に上市した製品があるため、臨床試験の成功だけを夢見る会社ではない。
米国の胃酸関連疾患の治療薬市場は大きく、テゴプラザンの第III相試験は従来のPPIに対する優位性を示した。既存の競合薬があるとしても、市場全体が大きいため、一定のシェアを獲得できれば提携先の製品売上は相当な規模となる。ラクオリアは製造販売費を直接負担しないので、売上連動ロイヤルティが増えれば営業利益に大きく効く。
動物薬のロイヤルティも研究開発の資金を支えられる。久光製薬との契約では2026年に第II相進展による一時金を獲得した。ファイメクスはアステラス製薬との共同研究を拡張し、標的タンパク質分解という成長市場に足場を築いた。複数の研究開発案件から成功するものが現れれば、現在の事業収益を大きく上回る可能性がある。
今後の資本配分が改善すれば、研究開発の成功が既存株主の価値に直結する。ロイヤルティの拡大によって増資への依存が下がり、営業黒字が安定するようになれば、過去の業績とは異なる会社へ変わる可能性がある。
慎重な見方
ラクオリア創薬の企業価値は、テゴプラザンの今後の成功に大きく依存している。韓国で高いシェアを持つことは強みだが、その強みが2035年にも続くかは別の問題である。韓国での特許期限が近づく中、米国や日本での売上が伸びても、世界全体の実効ロイヤルティ率が低下する可能性がある。
米国で承認されることと、商業的に成功することの間には大きな差がある。既にVOQUEZNAが販売されており、他社のP-CABも開発されている。保険会社との交渉や販売網の構築で競争に負ければ、大きな市場でも十分な利益を得られない。ラクオリアは販売会社ではないため、こうした実行面を直接支配できない。
研究開発の成功率も低い。導出済みのプログラムが多数あることは、すべてのプログラムに利益が発生することを意味しない。P2X7受容体拮抗薬はEli Lillyの開発パイプラインから除外された。久光製薬の第II相進展は好材料だが、まだ最終的な承認と販売には距離がある。
ファイメクス買収にも注意が必要だ。45億円という取得対価に加え、将来の収益連動対価が存在する。2025年の収益には大型の一時金が含まれ、持続的な利益の実力はまだ測りにくい。のれん約35.6億円は、研究開発の成果が期待を下回れば減損の対象となる。
過去には赤字が多く、既存株主への配当はない。今後の新株予約権の行使や追加資金調達による希薄化も無視できない。会社が成長しても、その成果が既存株主に十分残らない可能性がある。
どちらに重みを置いたか
既上市薬の実績では強気の見方に説得力があるが、10年後の利益の持続と資本配分では慎重な見方が勝る。韓国での特許期限、米国市場の競争、ファイメクスの買収額と収益の不確実性が重なるため、確率は上側26%に対し下側41%とした。下に寄せるのは、既存薬のロイヤルティが今後も現在の条件で続く保証がなく、買収資産の利益回収も未確認だからである。中立でも2035年の時価総額は現在を下回る。大幅な成功余地を認めつつ、現在価値では割高という結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 631 円164 億円(+ 還元の換算額還元の合計 17 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 290 円76 億円、今との差 −53.1%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,340 円609 億円 | 110 円29 億円 | +296.4% | +15.3% | 196 円51 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,232 円321 億円 | 44 円11 億円 | +106.5% | +7.7% | 230 円60 億円 |
| 中立 | 33% | 476 円124 億円 | 0 円0 億円 | −23.0% | −2.6% | 157 円41 億円 |
| やや悲観 | 25% | 187 円49 億円 | 0 円0 億円 | −69.8% | −11.3% | 47 円12 億円 |
| 悲観 | 16% | 113 円29 億円 | 0 円0 億円 | −81.7% | −15.6% | 18 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 631 円164 億円 | 17 円4 億円 | +4.8% | +0.5% | 648 円169 億円 |
今の株価時価総額 618 円161 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 米国の大型成功と複数の創薬成果 利益 49 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,340 円609 億円
テゴプラザンが米国で承認され、Sebelaによる販売が順調に広がる。既存のPPIから患者を獲得し、VOQUEZNAなどの競合に対しても一定の優位を維持する。日本でも製品発売が進み、韓国での特許期限による売上減少を米国、日本、その他地域の販売拡大が大きく上回る。
Elancoの動物薬もブランドを維持し、販売が安定的に拡大する。久光製薬、TRPM8、ファイメクスの標的タンパク質分解プログラムなどで複数の開発・販売マイルストンが発生する。新しい製品の上市も始まり、収益源がテゴプラザン一つに集中しない会社へと変わる。
研究開発費は増えるが、販売ロイヤルティの限界利益が大きいため、営業利益は大幅に拡大する。経営陣は新たな大型買収を控え、内部投資と株主還元のバランスを改善する。追加の大型増資に頼らない経営が定着し、2030年代前半から配当と自社株買いが可能になる。
- 上市済み医薬品の販売ロイヤルティ:数量 1,500(導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算))× 価格 0.06(実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む)→ 売上 84 億円・営業利益 76 億円。世界の実質販売額は2025年の3.0倍。米国と日本の売上拡大が韓国での特許切れを上回り、名目実効受取率は現在の1.25倍。
- ライセンス契約一時金・開発マイルストン:数量 9.0(大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数))× 価格 5.30(換算1件当たりの平均収益(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 38 億円。複数の後期臨床進展、上市、新規導出が重なり、年間9件相当の収益イベント。
- ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金:数量 1.0(年間の主要共同研究契約換算数(契約相当))× 価格 6.30(1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。AI代替により工数的な数量は増えないが、独自化合物を伴う高度な共同研究は維持。単価は現在の約1.33倍。
倍率:資本コストk8.5%、2035年の自己資本305億円に対するROEは15.9%。堀はnormalで超過収益が残る割合は1/2とし、RONIC=k+0.5×(ROE−k)=約12.2%。g_long1.5%から正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=約12.53倍となり、その上限を採用する。自己資本は2026年上期末約78.3億円を起点に、10年間の純利益の累計約256.5億円を加え、株主還元30億円を控除して約305億円とした。余剰現金5億円に係る税後利息相当0.07億円を純利益から除き、余剰現金は戻り方0.75を適用して加算する。時価総額は(48.6−0.07)×12.53+5×0.75=約611.8億円となる。
確率:米国のテゴプラザンが大きなシェアを獲得し、日本・その他地域でも普及が進み、さらに新規導出やマイルストン獲得が複数成功する場合。個々の成功余地はあるが、複数の成果が重なる確率は低い。
やや楽観 18% 米国上市が収益の柱に育つ 利益 27 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,232 円321 億円
米国でテゴプラザンが承認され、P-CABの選択肢の一つとして医療機関への浸透が進む。最大の市場シェアを奪うほどではないが、安定的な処方が生まれ、ロイヤルティは2020年代後半から段階的に増える。日本や中南米でも販売地域が拡大し、韓国での後発品競争による下押しを補う。
動物薬は大きな伸びを示さないが、一定のブランド価値を維持する。ファイメクスでは新たな共同研究契約が成立し、臨床段階に進む案件も現れる。ただし一部のプログラムは中止となり、全体としては毎年数件の大型収益イベントが発生する程度にとどまる。
研究開発費を十分確保しながら収益が伸びるため、純利益は増える。経営陣はファイメクスの技術を活用し、買収額の回収を進める。2030年代には一定の株主還元が始まるが、新しい特許資産の創出にも資金が必要であり、利益の大半を配当する会社にはならない。
- 上市済み医薬品の販売ロイヤルティ:数量 1,100(導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算))× 価格 0.06(実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む)→ 売上 61 億円・営業利益 54 億円。世界の実質販売額は現在の2.2倍。米国で一定のシェアを確保し、名目実効受取率は現在の1.23倍。
- ライセンス契約一時金・開発マイルストン:数量 6.0(大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数))× 価格 4.65(換算1件当たりの平均収益(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 22 億円。年6件相当の契約・臨床進展収入を獲得。大型成功も一部発生する。
- ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金:数量 0.8(年間の主要共同研究契約換算数(契約相当))× 価格 6.05(1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。研究協力金の工数的な部分はAIによる代替が進み、実質数量は現在の0.80倍。単価は約1.27倍。
倍率:k8.5%、2035年ROE約16.6%、normalの堀によるRONIC約12.6%、g_long1.5%。正当化PERの上限約12.58倍を適用する。余剰現金に係る利息控除と戻り方75%を別途反映する。
確率:米国での承認と商業化が成功し、テゴプラザンの世界売上が拡大する一方、創薬の新規案件では成功と失敗が混在する筋書き。既存の臨床データは前向きだが、販売競争の不確実性を残す。
中立 33% 海外ロイヤルティは増えるが特許切れと再投資が利益を抑える 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 476 円124 億円
テゴプラザンは米国で承認・発売され、一定の販売規模に達する。しかしVOQUEZNAなどとの競争が続き、会社が想定する最大売上には届かない。韓国では特許期限を迎えた後に販売単価と独占的な地位が徐々に弱まり、日本の商業化にも時間がかかる。それでも地域の分散によって世界全体の実質販売額は拡大する。
動物薬は成熟し、既存品の売上は名目では増えても実質の成長は緩やかになる。久光製薬などの開発案件では成功するものと中止されるものが混在する。ファイメクスは共同研究収入を維持するものの、アステラス製薬との大型一時金が毎年繰り返されるわけではない。
会社は新しい創薬候補を作り続けるために研究開発費を負担する。売上は2025年を上回るが、2035年の営業利益率は現在の収益モデルが一段成熟した水準にとどまる。投下資本利益率は改善するものの、資本コストを明確に上回るほどではない。株主還元の定量的な約束はなく、資金の大部分は研究開発と財務基盤の維持に充てられる。
- 上市済み医薬品の販売ロイヤルティ:数量 780(導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算))× 価格 0.05(実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む)→ 売上 39 億円・営業利益 35 億円。実質販売額は現在の1.56倍。米国・その他地域の販売増を韓国の特許切れが一部相殺し、名目実効受取率は1.12倍にとどまる。
- ライセンス契約一時金・開発マイルストン:数量 4.0(大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数))× 価格 3.85(換算1件当たりの平均収益(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 12 億円。年4件相当の収益イベント。既存案件の成功と新規導出の失敗・遅延が相殺する。
- ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金:数量 0.7(年間の主要共同研究契約換算数(契約相当))× 価格 5.80(1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の人月・工数型。数量は現在の0.65倍、名目価格は約1.22倍とし、収益は現在より減少する。
倍率:2035年ROEは約7.2%で資本コスト8.5%以下。新たな再投資に超過収益を見込まず、利益を維持する稼ぐ力として正当化PERの上限1/k=11.76倍とする。長期成長率は1.5%だが、低ROEを無理に高い成長価値へ変換しない。余剰現金5億円の税後利息相当0.07億円を純利益から控除し、帳簿価額の75%を加算する。
確率:既上市薬には一定の販売実績があるため事業継続の可能性は高い。一方、米国市場での成功幅、韓国の特許期限、新たな創薬の成果には不確実性があり、大幅な成功と失敗の中間に置く。
やや悲観 25% テゴプラザンの競争力低下と新規創薬の停滞 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 187 円49 億円
米国でテゴプラザンが承認されても、先行するVOQUEZNAや既存のPPIとの競争に苦しみ、販売規模が期待を下回る。韓国では後発品の参入によって実効ロイヤルティ収入が減少する。日本での上市も遅れ、世界展開による数量増加は限定的になる。
動物薬では競争薬の普及や販売単価の圧力によって成長が止まる。久光製薬のプログラムなど一部の開発案件は前進するが、大型の契約収入は少なくなる。ファイメクスでは研究協力金が細り、新規パートナー獲得も計画を下回る。技術の優位性は残っても、製薬会社が自社で研究を進める傾向が強まり、共同研究の対価が下がる。
経営陣は研究プログラムを絞り、人員や外部研究費を減らすことで支出を抑制する。それでも収益の減少が先行し、営業利益は小幅な赤字となる。今の株主に配当する余裕はなく、研究資産の価値を低く評価しなければならない会社になる。
- 上市済み医薬品の販売ロイヤルティ:数量 500(導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算))× 価格 0.05(実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む)→ 売上 23 億円・営業利益 20 億円。販売地域の拡大を特許切れと価格競争が相殺し、実質販売額は2025年並み。
- ライセンス契約一時金・開発マイルストン:数量 2.0(大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数))× 価格 2.75(換算1件当たりの平均収益(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。研究開発案件の中止が増え、年間の大型収益イベントは2件相当。
- ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金:数量 0.6(年間の主要共同研究契約換算数(契約相当))× 価格 5.00(1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AI代替と競争により研究協力金が縮小し、数量は現在の0.55倍。
倍率:営業赤字で継続的な純利益を基礎とするPERが適さないため、事業縮小後の自己資本68億円にPBR0.75倍を適用する。残存するロイヤルティ契約と研究資産の価値を認めるが、ROEはマイナスで資本コストを下回るため帳簿価額を下回る。過去の市場PBRの谷は参照しない。
確率:韓国の特許切れによる下押し、米国での販売競争、ファイメクスの大型収益の再現難が重なる可能性がある。既存の販売薬があるため全面的な事業喪失までは想定しない。
悲観 16% 特許切れと開発失敗で事業の中核を失う 利益 −6 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 113 円29 億円
テゴプラザンは米国で期待された販売規模を得られず、韓国でも後発品競争によって販売数量と実効受取率が低下する。新たな地域での製品販売も伸びず、かつての主力ロイヤルティが大きく減少する。動物薬も競争によって収益が縮小し、既上市薬による研究資金の供給力が弱まる。
新規の導出案件では複数の臨床試験が失敗し、開発の中止や権利の再交渉が続く。ファイメクスのRaPPIDSは新しい技術に競争上の優位を奪われ、大型の共同研究契約を維持できない。経営陣は大規模な研究開発を縮小し、事業の一部売却や外部提携による存続を模索する。
過去に取得したのれんは減損の対象となり、自己資本は減少する。株主還元はなく、残る価値は事業の継続利益よりも純現金と売却可能な資産に近づく。既存株主には追加増資や持分希薄化の危険が残るが、清算が確定した状態までは想定しない。
- 上市済み医薬品の販売ロイヤルティ:数量 300(導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算))× 価格 0.04(実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む)→ 売上 11 億円・営業利益 10 億円。販売数量・実質売上と実効受取率が同時に低下し、収益は現在の半分以下。
- ライセンス契約一時金・開発マイルストン:数量 1.0(大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数))× 価格 1.20(換算1件当たりの平均収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。開発中止が相次ぎ、大型収益イベントは年間1件相当に縮小する。
- ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金:数量 0.3(年間の主要共同研究契約換算数(契約相当))× 価格 4.00(1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。共同研究契約の大半を失い、残る案件も小規模となる。
倍率:純損失が続くためPERを使わず、2025年12月期の自己資本約68.5億円を悲観側のPBR基準とする。正当化PBR0.45倍を掛けた時価総額は約30.8億円であり、2035年の筋書きの自己資本42億円や2026年上期の自己資本78.3億円を基準にして倍率を掛け直さない。ファイメクスののれん約35.6億円は売却可能な資産と認めず、研究資産の回収も限定的とする。現金・有価証券から有利子負債を差し引いた換金可能価値約27億円を床とし、その上に残存特許と提携契約の限定的な価値を認める。過去の市場PBRは参照しない。
確率:米国での商業化不振、韓国の後発品競争、新規創薬の失敗、ファイメクスの減損が重なる複合的な悪化。頻度は高くないが、利益の継続性が低い創薬会社では無視できない確率とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
上市済み医薬品の販売ロイヤルティ
テゴプラザンと、Elancoが販売するGALLIPRANT、ENTYCE、ELURAなどの販売収益に連動するロイヤルティ。固定的な研究協力金や開発一時金を含まない。
| 数量導出済み医薬品の世界実質販売額(億円、2025年価格換算) | 価格実質販売額1億円当たりの実効ロイヤルティ収入(億円)。名目価格と契約上の受取率を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 0.04 | 22 | 20 |
| 10 年後 中立 | 780 | 0.05 | 39 | 35 |
取り方:2026年8月の決算説明会資料の四半期累計推移から、2025年通期のロイヤルティ収入は2,242百万円。2025年のK-CAB韓国外来処方売上2,179億ウォンを1ウォン0.11円で約239.7億円とする。中国などの海外市場とElancoの動物薬売上を合わせた残り約260億円は分析上の概算であり、製品別の実販売額やロイヤルティ率は契約上非開示のため推定精度は低い。これらを合わせて2025年価格換算の販売額約500億円とし、観測されたロイヤルティ22.42億円との対応から実効率約4.484%とする。製品別売上を会社が開示したものではない。将来の数量には販売国数、患者への普及、シェア、特許切れ後の実質販売量を反映し、価格には物価と薬価下落・実効受取率の変化を反映する。2025年の営業貢献は推定90%で、共通研究費を後の調整額に含める。韓国売上の出典:https://www.inno-n.com/eng/pr/news/view/1/1109
ライセンス契約一時金・開発マイルストン
既存の導出済みプログラムの臨床進展と新規導出契約に伴う収益。ラクオリア本体の一時金とファイメクスの成果連動一時金を含み、販売ロイヤルティと研究協力金を除く。
| 数量大型契約・マイルストン収益換算件数(年当たり、分析上の換算件数) | 価格換算1件当たりの平均収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 3.16 | 13 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 3.85 | 15 | 12 |
取り方:2025年の連結事業収益39.79億円からロイヤルティ22.42億円を引くとその他収益17.37億円。子会社ファイメクスの事業収益10.75億円のうち、アステラス製薬との共同研究に係る2025年の成果一時金は3月の2億円と11月の4億円、計6億円。残りのラクオリア本体のその他収益約6.62億円も一時金・マイルストン等に分類し、合計12.62億円とする。数量4件は公表された実契約件数ではなく、大型の収益イベントの換算件数であり、平均収入3.155億円も推定値。会社は2026~2028年に毎年1件のライセンス契約を目標とするが、マイルストンは開発成否に依存する。営業貢献率は80%とし、研究開発費は共通費に計上する。
ファイメクスの創薬共同研究・研究協力金
RaPPIDSなどの標的タンパク質分解誘導技術を用いた製薬会社との共同研究。固定的な研究協力金と少額の関連収益を対象とし、大型マイルストンは別セグメントに区分する。
| 数量年間の主要共同研究契約換算数(契約相当) | 価格1契約相当の年間研究協力金・関連収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 4.75 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 5.80 | 4 | 1 |
取り方:ファイメクス2025年事業収益10.75億円のうち、アステラス製薬の契約一時金・マイルストン6億円を別区分とする。会社資料が研究協力金452百万円を示しており、その他の少額収益約0.23億円を含めて4.75億円とする。主要契約1件相当はアステラス製薬との共同研究を基準とした換算数で、新規契約が増えれば数量を増やす。営業貢献率25%は研究人員・試薬・実験費用を考慮した分析上の仮定。AIエージェント代替については、探索設計や計算処理など工数的な部分を人月・工数型として保守的に分類する。中立の2035年数量は2025年比0.65倍、価格は1.22倍とし、単純な人手依存収益の縮小を反映する。ただし湿式実験、独自化合物・特許権、成果連動のライセンス収益は、AIエージェントによる直接代替の対象外とする。
リスクと懸念
テゴプラザンの特許期限と後発品競争
韓国でのK-CABの特許期限は2031年頃と報じられている。薬の販売自体が続いても、後発品の参入によって価格とシェアが下がれば、ラクオリアが受け取るロイヤルティも減少しうる。米国・日本など地域ごとに特許と規制上の保護は異なるが、2035年まで現在の販売条件が維持されるという前提は危うい。新たな適応症や特許の保護がどこまで続くかを確認する必要がある。
米国承認後の商業化リスク
2026年10月時点でテゴプラザンは米国の承認審査段階にある。第III相の結果が良好でも、審査で追加対応を求められる可能性がある。承認された後もVOQUEZNAやPPIなどの競合があり、保険償還、医師への普及、販売促進の成果によって売上が変わる。米国での成功を単純に最大市場規模に一定のシェアを掛けて確実な収益とすることはできない。
ファイメクス買収と巨額ののれん
2024年のファイメクス買収は45億円の当初対価に加え、収益連動の条件付対価を伴う。2025年の収益には大型の契約一時金が含まれ、継続的な投下資本利益率はまだ十分に実証されていない。2026年6月末ののれん約35.6億円は企業価値に対して無視できない大きさであり、共同研究の失敗や収益性の低下があれば減損が必要になる。
AI エージェント代替と創薬技術競争
ファイメクスの研究協力金には、研究者が実施する探索・設計・解析という工数依存の要素が含まれる。AIエージェントによって計算設計や候補探索の費用が下がれば、従来の研究協力金の数量や単価に下押し圧力がかかる。一方、湿式実験や独自化合物、臨床試験、特許使用権は直接置き換わらない。研究協力金の約束と成果連動の知財収益を分け、前者には保守的な数量減少を反映している。
臨床試験の失敗と収益イベントの不規則性
ライセンス契約を締結しても、後期臨床試験の成功と承認は確約されない。P2X7受容体拮抗薬ではEli Lillyが開発パイプラインから除外した実例があり、契約済み資産でも予定どおりマイルストンを受け取れない。2026年上期の営業赤字も一時金が下期に集中することの影響を受けた。単年度の利益だけで安定した収益力を測ることは難しい。
希薄化と株主還元の不足
過去の資金調達では新株発行によって株数が増えてきた。2025年と2026年にはHK inno.Nから資本調達したが、今後も新株予約権の行使や研究開発資金の追加調達がありうる。会社全体の利益が増えても、株数が増えれば既存株主の取り分は薄まる。中期計画では配当性向や自社株買い額の明確な約束がなく、利益を株主に戻す実績が十分でない点も長期保有上の弱点である。
今後の分かれ目
- テゴプラザンが米国で承認され、発売後の売上が複数年度にわたり増え続けたら
- ロイヤルティの実質販売数量と中立シナリオの利益を引き上げる。特に米国での販売額とラクオリアへの実際の受取額を確認し、やや楽観側の確率を増やす。
- 韓国で後発品が参入し、K-CABの売上または実効ロイヤルティが継続的に減少したら
- 2035年のロイヤルティ収益と長期成長率を引き下げる。米国などの売上増で十分に補えなければ、やや悲観・悲観側の確率を増やす。
- ファイメクスがアステラス以外の大手製薬会社との新規共同研究契約を毎年獲得し、安定した研究協力金が積み上がったら
- ファイメクス事業の継続性を再評価する。ただし工数による収益なのか、独自特許や成果連動収益なのかを区別し、AI代替リスクを一律には軽くしない。
- ファイメクス買収に伴うのれんに大きな減損が発生したら
- 研究プラットフォームの長期的な収益力を下方修正する。減損自体は非現金費用でも、取得時に見込んだ超過収益力が実現しなかった証拠として、資本配分と将来の研究投資の回収率を見直す。
- テゴプラザン以外の導出品が承認・上市され、年間5億円以上の継続的な新規ロイヤルティを生み始めたら
- 単一主力薬への依存低下として堀と中立の数量見通しを再評価する。将来の一時金だけでなく販売に連動した収益が増えることを重視する。
- 新株発行が止まり、継続的な営業黒字と配当・自社株買いの実績が定着したら
- 既存株主に帰属する価値の見通しを改善する。将来の希薄化係数と余剰現金の戻り方を再評価し、利益が実際に株主へ還元される証拠として扱う。
見ておくもの
- テゴプラザンの米国FDA承認審査結果と発売時期
- 米国Sebela/Braintreeの販売実績およびラクオリアへのロイヤルティ寄与
- 韓国K-CABの外来処方売上、市場シェア、後発品の参入状況
- テゴプラザンの日本・欧州での開発進展と販売開始時期
- 四半期ごとのロイヤルティ収入と契約一時金・マイルストンの内訳
- ファイメクスのアステラス製薬以外の新規契約数と継続的な研究協力金
- 久光製薬のナトリウムチャネル遮断薬およびその他導出品の臨床進捗
- 研究開発費、営業キャッシュフロー、のれんの減損兆候
- 新株予約権の行使状況、発行済株数、配当・自社株買いの開始
倍率と資本コストの決め方
事業価値は2025年のロイヤルティ22.42億円、契約一時金等12.62億円、研究協力金等4.75億円を起点に、それぞれ販売数量・契約イベント数・共同研究契約数と名目受取単価から構築した。上市薬の数量は販売額を2025年価格で測る実質指標であり、物価による値上がりは価格側にのみ反映する。共通研究開発費は2025年の費用水準から出発し、2035年の物価上昇と研究活動の拡大・縮小を各筋書きに反映した。
倍率は現在のPERや同業株の評価を参照せず、資本コスト8.5%、ROE、RONIC、2035年以降の名目成長率1.5%から算出した。楽観の自己資本を累積純利益と還元に合わせて305億円へ修正した結果、ROEは約15.9%、正当化PERは約12.53倍となる。悲観側は赤字のためPBRを使い、2025年末の自己資本約68.5億円と売却可能資産を基準とした。現在の時価総額との比較は最後に行った。希薄化、余剰現金の戻り方、のれんを清算価値に含めないことも別に扱い、同一のリスクを重複して差し引かない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、品質調整+1.0%を加える。治験失敗、資本配分、希薄化の個別リスクは資本コストへ重ねず、各筋書きの利益・資本と確率で評価する。