結論
森下仁丹は、銀色の粒の「仁丹」で知られる大阪の老舗で、今の稼ぎ頭は継ぎ目のない小さなカプセルの受託製造だ。筆者の結論は「割高」で、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を 3 割ほど下回る。
技術は本物だ。シームレスカプセルは、液体を薄い膜で包んだ継ぎ目のない粒で、同社はこれを医薬品・健康食品・たばこの香りの粒まで作り分ける。受託の事業は売上の 6 割強を占め、利益のほぼ全部を稼ぐ。
問題は、その利益が会社の大きさに比べて小さいことだ。営業利益は 7 億円前後で、自己資本 130 億円に対する ROE は 5% に届かない。ビフィーナなど自社ブランドの事業は赤字が続き、最大の顧客はたばこのフィルターの会社で、喫煙者の減少という長い逆風を背負う。
ロート製薬株など 40 億円近い有価証券を持つが、創業家の会社が 4 分の 1 強を握り、現金や株を株主に戻す動きは鈍い。資産の厚さが下値を支えても、稼ぐ力が資本コストに届かない限り、今の値段は高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「良い技術を、小さな利益しか生まない器に入れた会社」だ。シームレスカプセルの技術は 10 年後も必要とされ、受託の事業は続く。だが会社全体で見ると、稼ぐ力は資本に比べて小さすぎる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は年 5〜6 億円ほどだ。工場の更新に毎年お金が要り、赤字の自社ブランドの事業がそれを食う。
資本配分は保守的で、持ち合いの株と厚い自己資本を抱えたまま動かない。創業家が主導する限り、株主に資産を戻す圧力も弱い。赤字の事業を整理し、受託に集中する決断があれば、評価は大きく変わる。
安全域、つまり払う値段と本質価値の差は、今の値段では見えない。帳簿の価値より安く見えても、資本コストを稼げない会社の帳簿は割り引いて見るべきだ。待つ理由はあるが、買う理由はまだない。
何で稼ぐ会社か
事業は二つに分かれる。稼ぎ頭はソリューション事業で、売上 80 億円、営業利益 8 億円だ。シームレスカプセルの受託製造と、ローズヒップやサラシアなどの機能性原料の販売を手がける。顧客は国内外の大手メーカーで、医薬品の後発品、健康食品、口に入れる香りの粒などの中身を同社の膜で包む。
最大の販売先は日本フィルター工業で、売上の 18% を占める。たばこのフィルターに入れて、指でつぶすと香りが出る粒の供給とみられる。一つの顧客、一つの用途への依存は大きい。
もう一つがコンシューマー事業で、売上 47 億円だが 1 億円の赤字だ。ビフィズス菌のサプリ「ビフィーナ」、腸の健康をうたう「腸テク」シリーズ、口中清涼剤の「仁丹」、消臭剤などを、通信販売と店頭で売る。広告と販促の費用が重く、健康食品の激しい競争の中でブランドの力が利益に結びついていない。
従業員は約 360 人で、カプセルの工場を自前で持つ。2023 年には別の会社の製造部門を買い、受託の生産能力を広げた。設備は大阪と山梨などにあり、医薬品の製造の許可を持つ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、受託のカプセルの技術にだけある。継ぎ目のない多層のカプセルを、狙った大きさと溶け方で大量に作る技術は、国内でも手がける会社が限られる。医薬品の受託では製造の承認と品質の記録が要り、顧客は簡単には作り先を変えない。
一方、自社ブランドの事業に堀はない。サプリと健康食品の市場には、大手の食品・製薬会社と通販の専業がひしめく。仁丹は知名度こそ高いが、買う人は年々減っている。
資本効率は低い。自己資本比率は 7 割、ROE は過去 10 年の中央値で 4% 弱だ。工場と有価証券に資本が寝ており、利益はそれに見合わない。経営は 2026 年度を「収益構造の再構築」の年と位置付けたが、具体的な数字の目標は見えない。堀が受託の一点にあるなら、資本もそこに集めるのが筋だが、今はそうなっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
受託のカプセルの市場は、用途で明暗が分かれる。健康食品とサプリは、高齢化と健康への関心で数量が少しずつ伸びる。ビフィズス菌や香りの成分のように、胃酸や熱から守って届けたい中身には、継ぎ目のないカプセルが向いている。
医薬品の後発品も、国の使用促進で数量は増えてきた。ただし薬価は毎年下がり、受託の単価にも値下げの圧力がかかる。後発品の会社の品質問題が相次いだ後、信頼できる作り先は重宝されている。
逆風はたばこだ。紙巻きたばこの販売は減り続け、加熱式への移行も進む。香りの粒を入れたたばこは一時の流行を過ぎ、10 年先の数量は今より小さいと見るのが自然だ。最大の顧客の需要が細れば、工場の稼働率に響く。
筆者は中立で、受託の数量は健康食品と医薬品の伸びがたばこの減少をわずかに上回り、10 年で 5% 増えると見る。単価は物価に少し届かない。自社ブランドの事業は数量が 15% 減る。
自社ブランドの市場では、機能性表示食品の届け出が増え、ドラッグストアの自社の商品や通販の専業との値段の競争が続く。ビフィズス菌のサプリは多くの会社が手がけ、ブランドの違いで高く売るのは難しい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は 4 割前後だ。自社株買いはほとんどしていない。株主優待で自社の製品を年 2 回贈るが、原価で見た費用は年 1 億円に届かない小さなものだ。
資本の使い方には疑問が残る。ロート製薬の株を約 20 億円、純投資の株を約 18 億円持ち、ロート製薬も同社の株を 8% あまり持つ。持ち合いは経営を守る盾にはなっても、株主の資本を寝かせることになる。筆者はこの有価証券を、余った資産として半分の値打ちで数える。
筆頭株主は創業家の資産管理会社とみられる森下泰山で、4 分の 1 強を持つ。奨学会と合わせると 3 割を超え、外から会社を買うのは難しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受託のカプセルは、まだ伸びしろが大きい。ビフィズス菌や DHA、香りの成分のように、胃酸や熱に弱い中身を守るには継ぎ目のないカプセルが最適で、健康食品と医薬品の両方で使い道が広がっている。後発品の品質問題の後、承認と品質の記録を持つ作り先は引く手あまただ。
海外にも出口がある。アジアのサプリ市場は伸びており、日本の品質の受託は高く売れる。2023 年に工場を買って能力を広げたのは、その需要を取るためだ。たばこの粒が減っても、空いた能力を健康食品と医薬品で埋められる。
資産も厚い。自己資本は 130 億円、有価証券は 40 億円近くあり、時価総額は自己資本を下回る。自社ブランドの赤字を止めるだけで、営業利益は 1 億円増える。経営が収益構造の再構築を掲げた今、赤字の整理と資本の使い方の見直しは近い。資本コストを上回る受託の利益に資本を集め直せば、今の値段は安かったことになる。受託に集中した同業の利益率を見れば、その余地は小さくない。
慎重な見方
技術が良くても、利益が出なければ意味がない。会社全体の営業利益率は過去最高でも 6% 台で、ROE は 10 年を通じて資本コストの半分ほどにとどまる。2027 年 3 月期の会社予想も減収で、改善の兆しはない。
最大の顧客はたばこのフィルターの会社で、売上の 18% を占める。紙巻きたばこは毎年減り、香りの粒の流行も過ぎた。この顧客の注文が細れば、工場の稼働率が落ち、受託の利益率は大きく下がる。
自社ブランドの事業は長く赤字だ。ビフィーナは 30 年売ってきたが、ビフィズス菌のサプリは大手の食品会社と通販の専業が安く売る。仁丹を買う若い人はいない。広告を減らせば売上が落ち、増やせば赤字が膨らむ。
持ち合いの株と創業家の支配で、資本は動かない。株主が資産の価値を手にする道は見えず、帳簿より安いことは割安の理由にならない。待っている間にも、たばこの粒の注文は毎年細っていく。資本コストに届かない年が 10 年続いた事実の方が、どの希望よりも重い。
どちらに重みを置いたか
受託の技術を評価する強気の見方には一理あるが、数字の裏付けは慎重な見方の方が厚い。ROE は 10 年間資本コストに届かず、最大の顧客の需要は細る。確率は中立を最も厚くし、やや悲観をやや楽観より少し重く置いた。赤字の事業を整理するか、持ち合いの株を売って株主に戻せば、評価は上に動く。それまでは、資産の厚さを理由に買う値段ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,430 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 710 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 1,609 円66 億円、今との差 −27.2%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,207 円173 億円 | 1,003 円41 億円 | +135.9% | +9.0% | 417 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,387 円139 億円 | 869 円36 億円 | +92.7% | +6.8% | 851 円35 億円 |
| 中立 | 40% | 2,595 円107 億円 | 733 円30 億円 | +50.7% | +4.2% | 1,331 円55 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,493 円61 億円 | 555 円23 億円 | −7.3% | −0.8% | 451 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 497 円20 億円 | 411 円17 億円 | −58.9% | −8.5% | 91 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,430 円100 億円 | 710 円29 億円 | +42.2% | +3.6% | 3,141 円129 億円 |
今の株価時価総額 2,209 円91 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 受託に集中し、技術が利益に変わる 利益 12 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,207 円173 億円
経営は自社ブランドを絞り込み、受託のカプセルに人と資金を集める。ビフィズス菌や香り成分、後発品の受託が伸び、アジアのサプリの会社からの注文も増える。たばこ向けの粒は減るが、空いた能力はすぐに埋まる。
受託の数量は 10 年で 25% 増え、単価も高機能のカプセルで物価並みに上がる。受託の営業利益率は 11% に上がり、会社全体の営業利益は今の 2.5 倍になる。自社ブランドも残った製品が黒字に戻る。
利益が増えても配当性向は 4 割のままで、余った資金は工場と有価証券に残る。ROE は 8% 弱まで戻るが、資本コストをわずかに上回る程度だ。
- コンシューマー(自社ブランド):数量 157(販売個数(万個・推定))× 価格 0.42(1 万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。157 万個(横ばい)× 物価 1.40 倍、利益率 4%
- ソリューション(カプセル受託・機能性原料):数量 199(カプセルの出荷(億粒・推定))× 価格 0.68(1 億粒あたりの売上(億円・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 15 億円。199 億粒(+25%)× 1.36 倍、利益率 11%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)23 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自社ブランドの赤字を止め、健康食品・医薬品・海外の受託でたばこの減少を大きく上回る筋書き。10 年で受託が 2 割以上増えるには新しい用途の連続が要るので 8%。
やや楽観 20% 健康食品の受託がたばこの減少を埋める 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,387 円139 億円
健康食品と医薬品の受託が着実に伸び、受託の数量は 10 年で 15% 増える。たばこ向けの粒は減るが、後発品の可食カプセルや香りの粒の新しい用途がそれを補う。
自社ブランドは製品を絞り、広告の費用を抑えて小さな黒字に戻る。受託の利益率は 10% と今の水準を保ち、会社全体の営業利益は今の 2 倍近くになる。
それでも自己資本と有価証券の厚さに比べて利益は小さく、ROE は 6% 台にとどまる。持ち合いの株は残り、株主への還元は配当が中心のままだ。良くはなるが、資本の重さは変わらない。株価は利益の伸びに沿って上がる。
- コンシューマー(自社ブランド):数量 144(販売個数(万個・推定))× 価格 0.41(1 万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。144 万個(−8%)× 1.36 倍、利益率 2.5%
- ソリューション(カプセル受託・機能性原料):数量 183(カプセルの出荷(億粒・推定))× 価格 0.67(1 億粒あたりの売上(億円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 12 億円。183 億粒(+15%)× 1.33 倍、利益率 10%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)23 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 139 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:健康食品と後発品の受託の伸びが、たばこ向けの減少を上回り、自社ブランドの赤字も縮む筋書き。今の受託の好調が続く形なので 20%。
中立 40% 受託は横ばい、ブランドは細る 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,595 円107 億円
受託のカプセルは、健康食品と医薬品の伸びがたばこ向けの減少をわずかに上回り、10 年で 5% 増える。顧客の値下げの圧力で、単価は物価に少し届かない。受託の利益率は 8.5% と、今より少し下がる。
自社ブランドの販売個数は 15% 減る。値上げで売上は保つが、広告と販促の費用が重く、利益はほぼ出ない。会社全体の営業利益は 10 億円弱で、過去の山と同じ水準にとどまる。
配当性向 4 割の配当が続き、残りは自己資本に積もる。ROE は 5% 前後で、資本コストの 7.75% に届かない。会社は今とほとんど同じ姿で 10 年後を迎える。
- コンシューマー(自社ブランド):数量 133(販売個数(万個・推定))× 価格 0.40(1 万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。133 万個(−15%)× 1.34 倍、利益率 1%
- ソリューション(カプセル受託・機能性原料):数量 167(カプセルの出荷(億粒・推定))× 価格 0.65(1 億粒あたりの売上(億円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 9 億円。167 億粒(+5%)× 1.30 倍、利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)23 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 107 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託の数量がわずかに増え、自社ブランドが細るという、今の流れの延長の中心の筋書き。最もありそうなので 40%。
やや悲観 22% 最大の顧客の注文が細る 利益 4 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,493 円61 億円
紙巻きたばこの販売が年 5% を超えて減り、香りの粒の注文が細る。受託の数量は 10 年で 1 割減り、工場の稼働率が下がる。健康食品と後発品の受託は伸びるが、穴を埋めきれない。
自社ブランドの赤字も続き、販売個数は 4 分の 1 減る。広告を減らしても赤字は止まらない。会社全体の営業利益は今の 3 分の 2 ほどに落ちる。
配当は利益に合わせて減り、持ち合いの株と厚い自己資本だけが残る。創業家と取引先が株を持ち合う構図で、資本の使い方は変わらない。帳簿の価値だけが厚く、稼ぐ力は細っていく。株価は帳簿の価値を大きく下回る。
- コンシューマー(自社ブランド):数量 118(販売個数(万個・推定))× 価格 0.38(1 万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 −1 億円。118 万個(−25%)× 1.25 倍、利益率 −2%
- ソリューション(カプセル受託・機能性原料):数量 143(カプセルの出荷(億粒・推定))× 価格 0.63(1 億粒あたりの売上(億円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 6 億円。143 億粒(−10%)× 1.25 倍、利益率 6.5%
倍率:事業の ROE 2.6% が k 8% を大きく下回り、PER は 1÷k=12.9 倍が上限。最大の顧客の注文が細った筋書きの稼ぐ力から 10.0 倍に置いた。有価証券など余った資産は谷で食う分を引いて今の 0.75 倍、戻り方 0.5 で足した。
確率:たばこ向けの粒の需要が想定より速く減り、受託の稼働率が下がる筋書き。最大の顧客が売上の 18% を占める集中と、紙巻きたばこの減少の速さから 22%。
悲観 10% 受託も競争に負け、器だけが残る 利益 1 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 497 円20 億円
たばこ向けの粒はほぼ消え、健康食品の受託でも海外の受託会社の安い粒に押される。受託の数量は 4 分の 1 減り、単価も物価に届かない。受託の利益率は 4% に落ちる。
自社ブランドは販売が 4 割減り、赤字が会社の利益を削る。会社全体の営業利益はほぼ 0 になり、有価証券の配当で純利益がわずかに残るだけだ。
資産は残るが、持ち合いの株も工場も株主の手には戻らない。価値は、有価証券と現金の半分の値打ちと、細った稼ぎでしか測れない。老舗の名と技術は残っても、株主の取り分はほとんど残らない。株価は持っている資産の値打ちに近い所まで沈む。
- コンシューマー(自社ブランド):数量 94.2(販売個数(万個・推定))× 価格 0.36(1 万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −2 億円。94 万個(−40%)× 1.20 倍、利益率 −5%
- ソリューション(カプセル受託・機能性原料):数量 119(カプセルの出荷(億粒・推定))× 価格 0.60(1 億粒あたりの売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。119 億粒(−25%)× 1.20 倍、利益率 4%
倍率:事業の ROE 0.8% が k 8% を大きく下回り、PER は 1÷k=12.9 倍が上限。受託も競争に負けた筋書きの稼ぐ力から 8.1 倍に置いた。有価証券など余った資産は谷で食う分を引いて今の 0.5 倍、戻り方 0.5 で足した。
確率:たばこ向けの急減に、中国・韓国のカプセル受託の値下げ攻勢と自社ブランドの縮小が重なる構造的な負けの筋書き。受託の技術は残るので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンシューマー(自社ブランド)
ビフィーナ・腸テク・仁丹・消臭剤などの自社製品を、通信販売と店頭で売る。
| 数量販売個数(万個・推定) | 価格1 万個あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 157 | 0.30 | 47 | −1 |
| 10 年後 中立 | 133 | 0.40 | 54 | 1 |
取り方:個数の開示は無いので、売上 47.2 億円を 1 万個あたり 0.3 億円で割り、年 157 万個と推定した。単価は値上げで物価に沿って上がる。
ソリューション(カプセル受託・機能性原料)
シームレスカプセルの受託製造と、ローズヒップ・サラシアなどの機能性原料の販売。医薬品の後発品・健康食品・たばこの香りの粒の中身を包む。
| 数量カプセルの出荷(億粒・推定) | 価格1 億粒あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 159 | 0.50 | 80 | 8 |
| 10 年後 中立 | 167 | 0.65 | 109 | 9 |
取り方:粒数の開示は無いので、売上 79.6 億円を 1 億粒あたり 0.5 億円(たばこ向けの安い粒と医薬品向けの高い粒の平均)で割り、年 159 億粒と推定した。原料の販売も粒数に含めて扱う。単価は顧客の値下げ圧力で物価に少し届かない。
リスクと懸念
たばこ向けの需要の減少
最大の販売先の日本フィルター工業が売上の 18% を占め、たばこのフィルターに入れる香りの粒の供給とみられる。紙巻きたばこの販売は減り続け、加熱式への移行も進む。この注文が細れば、工場の稼働率と受託の利益率が一度に下がる。
自社ブランドの赤字
ビフィーナや仁丹などの自社ブランドの事業は売上 47 億円で赤字が続く。健康食品の市場は大手と通販の専業がひしめき、広告を減らせば売上が落ち、増やせば赤字が膨らむ。整理の決断が遅れれば、受託の利益を食い続ける。
受託の値下げ圧力
受託の顧客は大手のメーカーで、値段の主導権は顧客にある。後発品は薬価が毎年下がり、健康食品のカプセルも海外の受託会社が安く作る。人件費と原料の上昇を値段に移せなければ、利益率は削られる。
資本が動かない
創業家の会社が 4 分の 1 強、奨学会が 5%、持ち合いのロート製薬が 8% あまりを持つ。有価証券約 40 億円と厚い自己資本は株主に戻りにくく、ROE は資本コストに届かないままだ。
品質と規制
医薬品と健康食品の受託では、品質の不具合が一度でも起きれば顧客を失う。機能性表示食品の制度は見直しが続き、表示や原料の規制が厳しくなれば、自社製品と受託の両方に響く。
今後の分かれ目
- 自社ブランドの事業の整理や売却を決めたら
- 赤字が消えて営業利益が 1 億円ほど増える。中立の利益を見直し、やや楽観の確率を上げる。
- 持ち合いの株を売って自社株買いや増配に回したら
- 余った資産の戻り方を 0.5 から引き上げる。価値は今の値段に近づく。
- 最大の顧客の売上が 2 割以上減ったら
- やや悲観の筋書きが近づいたと見る。空いた能力を健康食品と医薬品で埋められるかを見る。
- 後発品や海外のサプリの大口の受託を取ったら
- 受託の数量の伸びを上に見直す。工場の稼働率が上がれば利益率も上がる。
- 受託の利益率が 6% を割り込んだら
- 値下げ圧力が強まった印と見て、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- ソリューション事業の売上と利益率
- 最大の顧客(日本フィルター工業)向けの売上
- コンシューマー事業の赤字の幅
- 持ち合いの株と有価証券の残高
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8%(基本 7.5%+値決め力・寿命−循環)から決めた。事業の ROE がほとんどの筋書きで k に届かないので PER は 1÷k=12.9 倍が上限で、楽観〜中立はその 9 割に置いた。今の PBR 約 0.7 倍には寄せていない。帳簿より安いことは割安の根拠にしていない。有価証券約 38 億円は税後 31 億円を余った資産とし、その配当にあたる利息分を純利益から引いて、二重に数えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.75→12.5 倍・やや楽観 PER 11.61→12.5 倍・中立 PER 11.61→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。