結論
オンコセラピー・サイエンスは、がん治療薬の研究開発と、患者の遺伝子を調べて治療につなげる解析サービスを営む会社である。筆者の結論は「割高」だ。がん医療という成長市場に身を置いていても、株主がその成長から利益を受け取れるとは限らない。現在の売上のほぼ全額は子会社Cancer Precision Medicineの検査・解析受託から生まれ、創薬事業は研究開発費を使い続けている。
2026年3月期の売上は約8.1億円、営業損失は約8.1億円だった。自己資本約20.7億円と純現金約20.9億円はあるが、過去十数年の赤字と繰り返された新株発行を考えれば、現金をそのまま株主価値に足すことはできない。2026年8月公表の第1四半期決算でも赤字が続いており、収益構造が転換したとはまだ言えない。
希望は二つある。検査の受託件数が増えて研究開発費を支えることと、OTS167やOTSA101などの候補品が製薬会社との大型契約につながることだ。しかし、提携先が行った食道がんワクチンS-588410の第Ⅲ相試験では、主要評価項目に統計学的な有意差が認められなかった。臨床開発を成功前提で評価する根拠は乏しい。
将来の資金調達による希薄化まで織り込むと、10年後の五つの筋書きを現在価値に直した株主価値は約13億円となり、現在の時価総額約73億円を8割強下回る。画期的な創薬成功なら上振れは大きいが、それを長期保有の中心的な期待として買える段階ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いは「10年後にもがん遺伝子解析が必要か」ではない。「その需要が増えたとき、この会社の株主に現金が残るか」である。前者には比較的自信が持てる。後者はまだ証明されていない。実際、解析事業の売上は一定の規模に育ったが、創薬費と本社費を差し引けば連結では赤字が続く。
優れた研究者や独自の化合物は、株主にとって価値ある可能性を生む。しかし、研究費を10年払い続けた結果、製品が承認されずに終わることもある。オーナー利益とは、会計上の売上ではなく、事業を維持するための費用を払い終えた後に自由に使える現金である。これまでのOTSはその現金を安定して生み出せていない。
純現金は安心材料ではあるが、預金が現在の株主に返るとは限らない。臨床試験が長引けば費用に消え、研究を止めなければ増資が必要になる。過去に払われた研究開発費は、将来必ず回収される債権ではない。したがって、帳簿上の自己資本や現金残高をそのまま下値保証と見ることはできない。
CPMが継続契約、単価、利益率、検査件数を開示し、再投資から得られる利益が資本コストを上回るようになれば、評価は変わる。創薬候補が統計学的に十分な臨床効果を示し、契約金と継続ロイヤリティーを確保した場合も同様だ。だが、そのどちらもまだ中心的な事実ではない。夢の大きさと確実に受け取れる利益を分けて考えると、現状では十分な安全域を認めにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は「医薬品の研究及び開発」と「がんプレシジョン医療関連」の二つに分かれる。創薬事業は、がん細胞に特徴的な遺伝子やタンパク質を見つけ、それを標的にした低分子薬、抗体医薬、ペプチドワクチンを開発する。製薬会社への導出時に契約一時金を受け取り、治験の進展や承認に応じたマイルストーン収入、上市後の販売に応じたロイヤリティーを得る構想である。売上は薬を何箱売るかではなく、候補品が臨床と提携の節目を何回越えるかで大きく変わる。
主な候補品には、MELKを標的とするOTS167、滑膜肉腫向け抗体医薬OTSA101、胃がん向けワクチンOTSGC-A24、TOPK阻害剤OTS964がある。S-588410などのワクチンは塩野義製薬に導出されている。ただし、自社の候補品には初期臨床段階や導出先を探しているものが多く、継続的な販売収入をもたらす自社承認薬はない。2026年3月期の創薬セグメントの外部売上は約0.02億円に対し、営業損失は約5.32億円だった。
現在の稼ぎ頭は2017年に設立されたCancer Precision Medicine、略称CPMである。医療機関や研究機関から検体を受け取り、全ゲノム解析、ネオアンチゲン解析、血液からがん由来の遺伝子を調べるリキッドバイオプシー、免疫細胞の受容体解析などを提供する。2026年3月期の売上は約8.06億円、セグメント営業損失は約0.56億円まで縮小した。もっとも、本社費用と創薬費用を負担できるほどの利益はまだない。
CPMの受託業務には、検体処理や遺伝子を読む装置を動かす物理的な検査と、結果の整理、変異の解釈、報告書の作成がある。前者には設備、精度管理、臨床検査の許認可が必要だが、後者はAIによる省力化と単価下落にさらされる。会社は両者の売上を分けて開示していないため、数量分析では推定内訳として扱う。連結営業損失には、この二事業の損失とは別に約2.23億円の本社費用等が含まれる。
優良さと弱いところ
この会社に価値のある資産が全くないわけではない。がん遺伝子発現の研究蓄積、創薬標的に関する知識、約1万4千種と説明される化合物ライブラリは、製薬企業に提供できる研究資源である。CPMの臨床検査室は2025年に米国臨床病理医協会のCAP認定を取得し、情報セキュリティ管理のISO認証も得た。検体を適切に取り扱い、再現性のある結果を返すための資格と経験は、新規参入者に対する一定の障壁になる。
しかし、障壁があることと高い利益率を持続できることは別である。CPMには、解約率の低さ、長期契約の積み上がり、値上げの実績、他社への乗り換えを困難にする独占的なデータ基盤について、十分な定量的証拠がない。研究室や病院は検査の精度、納期、費用を比較でき、装置メーカーの技術進歩は解析費用そのものを引き下げる。CAP認定は品質の証拠だが、競合が取得できない排他的な権利ではない。
創薬事業では、特許と候補品が当たれば強い独占性を持ちうる。ただし、特許の価値が現金を生むには、有効性、安全性、規制当局の承認、販売能力を順に満たす必要がある。S-588410の第Ⅲ相試験で主要評価項目が未達となった事実は、この不確実性を端的に示す。研究成果の数を、成功した医薬品の数と同一視してはならない。
資本効率も厳しい。過去10年間のROE中央値は約マイナス58%で、収益から内部資金を生む構造が確立していない。帳簿上の純現金は厚いが、その多くは株主から調達した資金であり、営業活動で積み上げた余剰現金ではない。技術的な蓄積は評価するものの、現時点で会社全体に強い堀があるとは判断しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
がん治療の個別化は10年先も必要とされる。患者ごとに異なる遺伝子変異を調べ、効果が期待できる薬を選ぶ流れは、医療の進歩とともに広がる可能性が高い。高齢化も検査需要を支える一方、保険制度の財政制約、治療法の変化、検査技術の価格低下が売上単価を抑える。需要の拡大が、そのまま検査受託会社の利益増加を意味するわけではない。
国内市場の大きさを見る手掛かりは国立がん研究センターのC-CAT登録件数である。2025年の月次登録件数を合計すると約2万8千件となる。保険診療上のがん遺伝子パネル検査の費用例である約56万円を掛けると、年間約156億円の検査・診療費相当になる。ただし、これは病院側の診療報酬を含む概算であり、解析受託会社が受け取る売上の市場規模ではない。CPMの売上には研究用全ゲノム解析なども含まれるため、両者を割って市場シェアとすることもできない。
競争相手には、FoundationOne CDxを展開するロシュ・中外製薬系の陣営、Guardant Healthの血液検査、シスメックス系の検査基盤、SRLやBMLなどの大手検査受託会社がある。海外大手は製薬会社との提携、検査データ、営業網で優位に立ち、国内大手には病院との取引関係と処理件数の規模がある。各社が扱う検査の種類や受託範囲が違うため、CPMと競合の比較可能なシェアは公表資料だけでは確定できない。
CPMにとって現実的な成長余地は、全検査市場を独占することではなく、専門性の高い解析や研究用検査で継続受託を増やすことである。東京大学と栄研化学との共同研究は液体生検の技術開発を後押ししうるが、共同研究の締結は売上獲得の証拠ではない。新規パネル検査についても、臨床試験、規制対応、保険適用、医療機関への普及が必要になる。
創薬市場では、国内外の大手製薬企業、大学発ベンチャー、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体、細胞療法などが競い合う。世界の抗がん剤市場そのものは巨大でも、治験中のOTS候補品の獲得可能市場は患者の適格条件や治療順序によって狭くなる。競合薬の進歩が先に進めば、臨床的に有効な候補品でも商業価値を失う可能性がある。
資本政策と M&A
経営が最も重い判断を迫られているのは、研究開発に使う資金と、その資金を出す株主の取り分をどう両立させるかである。会社は2025年末、第三者割当の新株式と行使価額修正条項付き第38回新株予約権による資金調達を進めた。2026年6月末時点の発行済株式は約4億824万株で、さらに1,500万株に相当する新株予約権が未行使だった。資金が入れば研究を続けられるが、同時に既存株主の持分が薄まる。
2026年6月の事業計画では、OTS167などの臨床データ収集、OTSA101などの製薬企業への導出、遺伝子解析サービスの拡張を目指している。しかし、売上高、営業利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額について、確認できる定量目標はない。中期的な収益と株主還元に関しては「数字の約束なし」である。
過去10年を振り返ると、継続赤字の補填と研究開発のために株式数が増えてきた一方、配当や自社株買いによる株主還元の実績は乏しい。CPMの設立と解析事業の育成は収益源を増やした点で意味があるが、連結黒字への転換には至っていない。大型買収で解決を急ぐより、検査事業の採算改善と採算の見込める候補品への資金集中を優先すべき局面だ。製薬大手への導出や事業売却は選択肢になるものの、買収価格や実行時期が決まった事実はなく、買収期待を通常の利益に混ぜない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
がん治療の未来が患者ごとの遺伝情報に向かっている以上、CPMの検査・解析の需要はまだ伸びる。会社は臨床検査室のCAP認定を取得し、情報セキュリティの体制も整えた。全ゲノム解析から免疫細胞の解析、リキッドバイオプシーまで扱う幅の広さは、研究病院や製薬企業との共同研究を深める土台になる。検査を一度だけ売るのではなく、治療の前後に繰り返し検体を調べる使われ方が定着すれば、件数の成長は患者数の増加を上回る可能性がある。
2026年に公表した東京大学と栄研化学との共同研究は、CPM単独では持ちにくい研究力と事業化の接点を補う。新しいがん遺伝子パネルや血液によるモニタリングが臨床で有用性を示せば、専門性の高い検査の受託が増える。検体処理と精度保証には現場の設備が必要で、AIが普及しても事業全体が消えるわけではない。規模が拡大すれば、固定費を多くの検査に配分でき、収益力は急改善する。
創薬側にも選択肢が残っている。OTS167、OTSA101、OTSGC-A24、OTS964など複数の候補品を持ち、ペプチドワクチンでは塩野義製薬との導出実績もある。少数の候補品が有効性を確認し、製薬企業が開発費を負担する契約に進めば、契約一時金だけでなく継続的なロイヤリティーが生まれる。検査事業が研究費を支えながら創薬の果実を待てる構造に変われば、過去の赤字だけで将来を決めるのは誤りになる。早い段階から株主でいる者が、その非連続な上振れを受け取れる可能性は確かにある。
慎重な見方
売上が増えれば自動的に利益が増えるという発想は、この会社の歴史と合わない。2026年3月期は検査・解析売上が約8億円まで育ったにもかかわらず、連結の営業損失は売上とほぼ同額だった。研究費を削れば将来の創薬価値が減り、研究費を維持すれば現在の現金が減る。この板挟みを解消するには、検査の利益率改善か、大きなライセンス収入の実現が必要だ。しかし、どちらも確約された収入ではない。
創薬候補の多さは、必ずしも成功確率の高さを意味しない。S-588410の第Ⅲ相試験では、全体集団の主要評価項目で有意差を示せなかった。探索的な部分集団の良好な結果は、承認と商業化の裏付けとしては不十分だ。OTS167やOTSA101についても、長い開発期間と製薬企業への導出交渉が残る。薬の価値は、候補品が研究段階から上市に近づくまで、何度も大きく減額されうる。
CPMの品質認証も、寡占的な地位を与えるものではない。ロシュ系の検査、Guardant Health、シスメックスや大手臨床検査会社との競争では、検査データの蓄積、承認済みの検査法、病院への営業力、量産規模が問われる。AIによって報告書作成や変異の解釈が自動化されれば、情報処理の工数で得ていた収入は縮みやすい。物理的な検査件数が増えても、受託価格の下落が利益を相殺しかねない。
さらに、既存株主の取り分が減る。2025年末に発行した新株予約権の行使で株式数は増加し、2026年6月末にも未行使分が残っていた。現在の純現金は営業で稼いだ蓄積ではなく、主として株主から集めた資金である。今後も赤字が続くなら、新しい資金は会社を延命させても、過去から保有する株主の価値を必ずしも守らない。研究の成功を待つ10年間に、持分が大きく薄まることが最大の危険だ。
どちらに重みを置いたか
がん遺伝子解析の必要性と研究資産の価値については強気の見方に根拠がある。しかし、株主価値を決めるのは医療需要の大きさではなく、承認、契約、営業利益、増資後の持分である。過去の赤字、S-588410の主要評価項目未達、現在も続く資金調達を重く見て、確率は明確に下側へ寄せた。楽観とやや楽観を合わせて20%とし、やや悲観と悲観を合わせて56%としたのは、研究が失敗するだけでなく、成功までの時間が長引くだけでも既存株主が損なわれるためだ。検査事業の拡大は認めつつ、創薬成功による大型収入は中立に含めていない。この事実関係では慎重な見方の説得力が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 7 円30 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 3 円13 億円、今との差 −81.5%、 期待の年率 −7.9%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 65 円266 億円 | 2 円7 億円 | +293.0% | +15.0% | 5 円19 億円 |
| やや楽観 | 13% | 17 円68 億円 | 0 円2 億円 | +0.8% | +0.1% | 2 円9 億円 |
| 中立 | 24% | 2 円8 億円 | 0 円0 億円 | −88.9% | −19.7% | 0 円2 億円 |
| やや悲観 | 32% | 0 円2 億円 | 0 円0 億円 | −97.5% | −30.7% | 0 円1 億円 |
| 悲観 | 24% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.7% | −44.2% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7 円30 億円 | 0 円1 億円 | −55.8% | −7.9% | 8 円31 億円 |
今の株価時価総額 17 円69 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 検査の規模拡大と複数候補の大型導出が両立 利益 27 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 65 円266 億円
CPMは病院や製薬企業との共同研究を商用契約に発展させ、血液によるがんの再発監視や研究用全ゲノム解析で存在感を高める。大学との共同研究が検査法の有用性確認につながり、検体数は大きく増加する。検査室の品質認証と精度管理が評価され、外部委託先として選ばれる機会が広がる。AIによって情報解析の手作業は減るが、その省力化を活用して物理的検査の規模を拡大し、検査事業全体の採算が改善する。
創薬ではOTS167とOTSA101などから二つの収益源が立ち上がる。製薬企業が開発費の多くを負担し、承認や商業化が進むことでマイルストーン収入と継続ロイヤリティーが発生する。年間の大型収益イベント相当額は大きくなり、研究開発費と本社費を十分に上回る利益が生まれる。早期の臨床費用を賄う増資は必要だったものの、その後は新規発行が止まり、わずかながら株主還元も始まる。現在とは全く異なる、収益を自ら生む創薬・検査企業へ変わる10年間である。
- がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査:数量 17,000(標準化した解析受託検体相当数(件・推定))× 価格 0.00(1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定))→ 売上 35 億円・営業利益 9 億円。物理検査の標準化件数が4.25倍、単価が1.38倍。大規模受託と工程の効率化で営業利益率26%。
- がんプレシジョン医療:情報解析・報告:数量 4,000(解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定))× 価格 0.00(1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を考慮し、楽観でも有償の情報解析作業量は現在を超えない。
- 医薬品の研究及び開発:数量 2.0(ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当))× 価格 25(収益イベント1件相当の売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 34 億円。承認・導出された二つの収益源が契約金とロイヤリティーを生み、製薬会社が後期開発費を主に負担する。
倍率:資本コストk9.25%、2036年のROE27.4÷82.0=33.4%、弱い堀の超過利益残存割合3分の1から増分資本利益率RONICを約17.3%とする。長期名目成長率g1.0%について、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)から11.42倍とし、上限から任意に割り引かない。薬の上市による急増は2036年時点の利益に織り込み、恒久的な高成長は倍率に含めない。
確率:物理検査の大幅な受託増に加え、複数候補が臨床上の有効性を示して大型契約とロイヤリティーに結び付く必要がある。過去の臨床成績と赤字の長さを踏まえ、実現は低確率とする。
やや楽観 13% 検査が黒字化し一つの創薬候補が収益化 利益 8 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17 円68 億円
CPMは新たな検査サービスを定着させ、研究病院と製薬企業の受託先を増やす。遺伝子検査の技術革新に伴う単価下落はあるが、検体数の増加がそれを補い、固定費負担が軽くなる。CAP認定と検査実績は顧客獲得を助けるものの、他社を排除するほどの独占力は持たない。情報解析の有償作業量はAIの導入で縮小するが、現場の検査設備と精度保証に収益の中心が移る。
創薬事業ではOTS167、OTSA101などのうち一つが良好な結果を示し、製薬大手との導出契約に至る。会社が最も費用のかかる後期開発と販売を自ら抱え込まずに済み、研究費が利益を食い尽くす構造を脱する。ただし、他の候補品の開発は停滞し、収入源の多角化は限定的にとどまる。初期には追加増資が続くため、企業全体の利益が伸びても既存株主の取り分は以前より小さい。それでも、検査と創薬の双方から営業利益が得られる事業へ移行する。
- がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査:数量 11,000(標準化した解析受託検体相当数(件・推定))× 価格 0.00(1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定))→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。受託検体数2.75倍、名目単価1.29倍。単価は物価上昇率を下回るが稼働率向上で黒字化。
- がんプレシジョン医療:情報解析・報告:数量 3,600(解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定))× 価格 0.00(1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。有償解析作業量は現在の90%。報告書作成の自動化による省力化を考慮。
- 医薬品の研究及び開発:数量 1.0(ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当))× 価格 18(収益イベント1件相当の売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 11 億円。一つの候補品が大型導出・ロイヤリティー獲得に成功し、後期開発費の大部分を提携先が負担。
倍率:k9.25%、ROE8.1÷45.0=18.0%、弱い堀に対応したRONIC約12.17%、長期g1.0%から正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)の上限11.12倍を採用。商業化した候補品の集中リスクは、利益と確率、既存株主の持分に織り込む。
確率:専門的な検査の受託が拡大する余地はあるが、相応の規模まで増えても創薬の大型契約には臨床上の成功と製薬企業の判断が必要なため、上振れ側でも慎重な確率とする。
中立 24% 検査は成長するが創薬の大型収益は実現しない 利益 −5 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2 円8 億円
がん遺伝子解析の需要は緩やかに広がり、CPMは研究用検査や液体生検で受託件数を増やす。物理的な検査は現在より多く処理できるようになり、検査工程では黒字が定着する。ただし、競合の技術進歩と大口顧客の価格交渉によって単価上昇は物価に追い付かない。AIエージェントが遺伝子変異の整理、文献調査、報告書作成を代替し、情報解析部分の有償工数は縮む。
創薬では研究成果は出るものの、OTS167やOTSA101などが大きな契約金や継続ロイヤリティーを生むところまでは進まない。会社は開発費を抑えるため研究テーマを絞り、導出交渉を続けるが、小規模な契約収入では固定費を賄えない。売上は現在より増えても、連結では赤字が残る。事業継続のために新株を発行し、現在の株主の持分は大幅に減る。検査の需要を取り込む企業として存続するが、創薬による高い収益性を得るまでには至らない10年間である。
- がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査:数量 6,500(標準化した解析受託検体相当数(件・推定))× 価格 0.00(1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。実質検査件数1.625倍、名目価格1.257倍。物価3%を下回る値上がりにとどまる。
- がんプレシジョン医療:情報解析・報告:数量 2,600(解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定))× 価格 0.00(1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により有償作業量は65%、価格は約1.11倍。固定費が一部残る。
- 医薬品の研究及び開発:数量 1.0(ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当))× 価格 0.05(収益イベント1件相当の売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 −4 億円。大型導出なし。小口の契約収入は残るが研究費が継続し、営業赤字は解消しない。
倍率:2036年も純損失でPERを使えない。研究費を一部削減してもROEはマイナス約24.8%となり、資本コスト9.25%を下回る。自己資本20億円の大部分は増資で維持され、株主が自由に受け取れる資産ではない。現時点の自己資本や過去の市場PBRではなく、2036年の損失と今後の資金流出を前提に資産価値を割り引く。
確率:検査の需要は増える一方で、臨床成功と大型導出を当然とはみなさない。現在の主力事業と研究開発費の構造が改善しても、連結黒字までは届かないという中心的な見通し。
やや悲観 32% 検査の競争激化と臨床停滞で再び増資依存 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円2 億円
大手検査会社が新しい遺伝子パネルと血液検査を拡大し、CPMは専門的な研究用受託に活路を求める。しかし、検査機器の高度化で競合の処理費用も下がり、顧客からの値下げ要求が強まる。受託件数は伸びず、検査室の稼働率も低下する。医療機関や製薬企業との共同研究は続くが、研究案件の獲得と安定した診療収入の確保は別の問題である。AIによる解釈業務の自動化も進み、情報処理の売上は減少する。
創薬では候補品の開発が長期化し、製薬会社との交渉は小規模な共同研究にとどまる。資金不足から臨床試験や研究テーマを減らすが、既存契約や研究施設の固定費はすぐには消えない。本社費の削減も収益の落ち込みを埋められず、赤字と資金調達が繰り返される。新株発行が株数を増やし、増資によって会社が存続しても現在の株主の取り分は大きく減少する。10年後には競争上の地位と技術開発能力がともに弱くなっている。
- がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査:数量 3,800(標準化した解析受託検体相当数(件・推定))× 価格 0.00(1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。検査件数は現在の95%、名目単価は約1.12倍で、物価上昇を大きく下回る。
- がんプレシジョン医療:情報解析・報告:数量 1,700(解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定))× 価格 0.00(1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と競争で有償作業量が42.5%へ縮小し、価格もほぼ横ばい。
- 医薬品の研究及び開発:数量 1.0(ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当))× 価格 0.02(収益イベント1件相当の売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 −4 億円。導出不成立が続き、研究費を削っても小口収入では回収できない。
倍率:赤字継続のため利益還元価値は乏しい。2036年の自己資本10億円は再三の増資で辛うじて維持され、研究継続に必要な資金を含む。現金は試験費用と固定費に充当されるので、現在の純現金20.9億円を10年後にもそのまま残すことはできない。会社の稼ぐ力と残余資産への請求権を基礎とし、歴史的な株価の底値から倍率を取らない。
確率:下に寄せる理由:2026年3月期の営業損失が売上高にほぼ等しく、2027年3月期第1四半期も赤字である。検査の値下げと研究開発の遅延が重なるだけで、資金調達の必要性が強まる。
悲観 24% 主力研究が失敗し会社の存続価値が僅少となる 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
OTS167、OTSA101などの開発品で臨床的に十分な有効性を確認できず、製薬企業への大型導出が実現しない。研究資金が不足し、候補品の一部を開発中止にする。かつての研究成果は論文や特許として残るが、治療薬を上市する能力と資金を失い、企業価値を支えるほどの現金を生まない。
CPMでも大手企業が検査の精度、料金、処理速度で優位に立ち、受託件数が大幅に減る。AIが解釈や報告書作成を代替し、情報解析の売上も細る。人員と設備を削減するものの、検査室の維持、契約整理、退職費用などが発生し、営業損失が続く。
資金調達のたびに低価格の新株を大量に発行し、現在の株主の議決権と経済的な取り分が縮小する。最後は研究資産の売却、事業の縮小、再編、清算が現実的な選択肢になる。会社が法的に存続しても、既存株主にとっては実質的に価値を失う10年間である。現在の純現金は長年の赤字で費消されるため、2036年の資産価値の床にはならない。
- がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査:数量 1,800(標準化した解析受託検体相当数(件・推定))× 価格 0.00(1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定))→ 売上 3 億円・営業利益 −2 億円。受託件数45%、名目価格約98%。設備の稼働率低下と整理費用で大きな赤字。
- がんプレシジョン医療:情報解析・報告:数量 800(解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定))× 価格 0.00(1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有償作業量20%、単価約77%。情報解析業務の大部分をAIと他社に置き換えられる。
- 医薬品の研究及び開発:数量 1.0(ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当))× 価格 0.01(収益イベント1件相当の売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。主力候補の開発を縮小し、わずかな契約収入と残存する研究整理費用のみが残る。
倍率:継続赤字で収益還元価値がなく、研究資産の換金可能額も低い。2036年の自己資本3億円に対するPBR0.2倍とし、継続企業の維持に要する費用と低い清算回収額を反映する。現在の自己資本20.7億円や純現金20.9億円は、2036年までの赤字で消費される。事業停止・清算に近い例外的な悲観シナリオであり、現在の現金残高を下値保証として使わない。
確率:下に寄せる理由:承認薬がなく、研究開発からの継続収入はごく少ない。長期の赤字と希薄化実績、主力ワクチンの第Ⅲ相試験での主要評価項目未達を踏まえ、研究中止と低価格での資金調達が重なる可能性を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
がんプレシジョン医療:検体処理・遺伝子検査
CPMが行う検体処理、次世代シーケンサーによる遺伝子解析、液体生検など、設備と品質保証が不可欠な物理的検査部分。会社の報告セグメントを分析用に分割した推定内訳である。
| 数量標準化した解析受託検体相当数(件・推定) | 価格1検体相当の物理的検査部分の受託売上(億円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 0.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,500 | 0.00 | 12 | 2 |
取り方:会社の正式セグメント「がんプレシジョン医療関連事業」の2026年3月期売上は8.062億円、営業損失は0.55863億円である。処理件数、検査別単価、物理検査と情報解析の売上内訳は非開示。大学・民間の次世代シーケンス受託価格が試料・解析内容により数万円から十数万円以上まで開くことと、保険診療の複合的ながんパネル検査費用例が56万円であることを参考に、物理検査と情報解析を合わせた標準化1件20.155万円、年間4000件相当と仮定した。このうち75%、1件15.11625万円を物理検査とみなした。実際の検体件数、契約価格、売上構成、営業損失内訳を意味しない。C-CAT登録件数と本推定件数から会社のシェアを求めることはできない。2036年中立では実質件数1.625倍、名目価格1.257倍とし、検査需要拡大と処理技術による単価低下を同時に反映する。
がんプレシジョン医療:情報解析・報告
検査データの整理、遺伝子変異の解釈、研究用解析、報告書作成などの情報処理工程。AIエージェントが作業工数を代替しうる部分として分けた推定内訳である。
| 数量解析・報告作業の標準化処理件数(件相当・推定) | 価格1件相当の解釈・報告業務の売上(億円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 0.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,600 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:CPM売上8.062億円の25%を情報解析・報告部分とする分析上の仮定であり、会社がこの比率を開示したものではない。標準化4000件相当、1件5.03875万円として物理検査部分と合計を一致させた。AIエージェント代替の区分では、人月・工数で売る情報サービスに当たる。中立の2036年数量は2600件相当、現在の0.65倍、価格は現在の約1.11倍とする。検査件数自体が増えても、1検体に必要な人手と有償の解析工程が減るため、物理的検査とは異なる数量の推移を用いる。CAP認定とISMS認証だけでは、解約率の低さや独占的な記録基盤という二つ以上の堀の証拠にはならない。
医薬品の研究及び開発
OTS167、OTSA101、OTSGC-A24、OTS964、ペプチドワクチンなどの研究開発と製薬企業への導出。契約一時金、臨床マイルストーン、ロイヤリティーが収入源である。
| 数量ライセンス契約・節目収入・ロイヤリティーの標準化された有償収益イベント数(件相当) | 価格収益イベント1件相当の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.02 | 0 | −5 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.05 | 0 | −4 |
取り方:2026年3月期の創薬セグメント外部売上233万円を、事業収入1件相当として表示する。会社が契約件数1件を開示したという意味ではなく、臨床候補の価値を1件当たりの継続販売価格と取り違えないための便宜的単位である。2036年の大型収入は、製薬企業への導出や承認後のロイヤリティーが実現した場合に限る。成功確率は個別候補の機械的な治験成功率を合算せず、S-588410の主要評価項目未達、OTS167・OTSA101等の開発段階、導出の不確実性からシナリオ確率で表す。研究費は売上と無関係に発生するため、収益が小さい筋書きではセグメント営業利益率が大幅なマイナスとなる。AI創薬の共同研究はあるが、AIによる新規売上の金額開示がないため楽観の上積み理由にしない。
リスクと懸念
臨床試験の失敗と導出の遅れ
S-588410の食道がん第Ⅲ相試験では、主要評価項目の無再発生存期間について統計学的な有意差が確認されなかった。部分集団の探索的な結果は新たな研究の手掛かりにはなるが、承認に直結する根拠ではない。OTS167やOTSA101も、開発費を回収できる契約と継続ロイヤリティーを得るには追加の臨床証拠が必要であり、導出の遅れが資金需要を増やす。
増資の繰り返しによる既存株主の希薄化
第38回新株予約権は行使価額が修正される仕組みで、2026年6月末時点でも1500万株相当が未行使だった。過去にも複数回、株式数が大きく増えている。営業赤字が続けば次の資金調達が必要となり、企業全体が新たな資金を得ても、既存株主が保有する経済的な持分は小さくなる。特に株価が低い局面の増資は少ない調達金額に対して発行株数が膨らみやすい。
検査事業の規模と価格競争
CPMはCAP認定を取得しているが、ロシュ系、Guardant Health、シスメックス、大手臨床検査受託会社に対して、営業網や処理件数で優位にあるとは言えない。遺伝子を読む装置と試薬の改善によって検査コストが下がると、顧客は値下げを求める。新規受託件数が増えても単価下落と研究開発費の負担によって連結黒字化が遠ざかる可能性がある。
AI エージェント代替
検体の受領、核酸抽出、測定、品質管理などの物理工程はAIだけでは置き換えられない。一方、配列データの整理、変異の文献照合、報告書作成、研究用の情報解析はAIエージェントが人手を減らせる。情報解析部分をCPM売上の25%と仮定し、中立の有償作業量を10年で65%に縮めた。25%は会社開示値ではない。CAP認定だけで情報サービスの高い値決め力を保証するものではない。
保険適用と診療上の位置付け
新しいがん遺伝子パネルやリキッドバイオプシーが研究段階で有用でも、広く診療で使われるには臨床的有用性、規制当局の承認、保険償還、医師の採用が必要になる。診療報酬の引下げや対象患者の制限が起きれば、検査件数や受託単価が想定を下回る。研究用解析の契約を保険診療の継続的な収入に読み替えるべきではない。
資金繰りと残余資産価値の低下
純現金約20.9億円と高い自己資本比率は短期の破綻リスクを和らげるが、2026年3月期の純損失約9.1億円を同じ規模で出し続ければ数年で資金が減る。検査事業が単独で黒字化しても創薬と本社費を賄えるかは別の問題である。臨床開発が失敗し増資も難しくなれば、研究資産の換金額は過去の研究費を大幅に下回り、自己資本は株主にとって有効な下値の床にならない。
今後の分かれ目
- CPMが受託件数と1件当たり売上を開示し、検査・解析事業で2期以上の安定黒字を達成したら
- 中立の数量、営業利益率、研究費を賄う能力を上方修正する。ただし報告書作成など情報処理部分のAI代替と物理検査の成長を分け、価格決定力を継続的に確認する。
- OTS167またはOTSA101で十分な臨床効果が示され、大手製薬への契約金額付き導出が発表されたら
- 契約一時金、後続マイルストーンの条件、ロイヤリティー率、提携先が負担する開発費を調べ、楽観・やや楽観の確率と収益の持続性を見直す。契約金と将来の薬剤売上を二重に数えない。
- 第38回新株予約権が行使完了し、さらに新たな第三者割当増資や新株予約権発行が決議されたら
- 最新発行済株式数、未行使予約権、調達額、資金使途を更新し、各筋書きのholder_shareを再計算する。企業価値が増えても既存株主の1株当たりの価値が増えるとは限らない。
- 新規がん遺伝子パネルが承認・保険適用され、CPMの検査受託額として収入が確認されたら
- 国内対象患者数、検査単価、病院からCPMへの支払額、競合との差を確認し、物理検査事業の数量と価格を引き上げる。診療報酬の総額をCPMの売上として直接計上しない。
- 営業損失が年間5億円を下回り、その改善が研究テーマの単なる中止でなく検査粗利益の増加によるものだったら
- 継続的な資金調達依存が弱まると判断できるため、中立の必要増資額と希薄化率を引き下げる。研究開発費を削った場合は、同時に創薬候補の将来収益も見直す。
- 主要候補の開発中止とCPMの受託減少が同時に発生し、手元資金が年間損失の1年分を下回ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、資金調達条件、研究資産の売却可能額、債務整理費用を精査する。純現金を悲観の床とせず、既存株主の取り分がどこまで残るかを優先して評価する。
見ておくもの
- 2027年3月期以降のCPM売上高、セグメント営業利益、連結営業損失の推移
- CPMの実際の検体処理件数、検査別の受託価格、顧客継続率の新規開示
- OTS167、OTSA101、OTSGC-A24、OTS964の臨床登録・結果・開発中止・導出契約
- S-588410など既存導出品の追加臨床成績と契約金・ロイヤリティー実績
- 第38回新株予約権の未行使残高と新たな資金調達の発表
- 連結純現金、年間の営業キャッシュ流出、研究開発費の金額
- 新規がん遺伝子パネルの承認、保険適用、医療機関での採用状況
- CAP認定の継続、東京大学・栄研化学との共同研究の事業化状況
- 国内C-CAT登録件数と競合の検査技術・受託価格の変化
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や過去のPER・PBRを起点に2036年の利益を逆算していない。2026年3月期の正式セグメント売上と営業損失を出発点とし、CPMの物理検査とAIエージェント代替が進む情報解析を分け、創薬については契約の成功・失敗を非連続な収益として扱った。分割後の数量と単価は会社の実数開示ではなく、外部の検査価格と実績売上による推定である。創薬が黒字化する筋書きのPERは、資本コスト9.25%、長期成長率1%、弱い堀に対応するRONICから計算した。赤字の筋書きには利益倍率を使わず、資金流出後の資産価値を見る。将来の新株発行はholder_shareで既存株主の取り分に一度だけ反映し、会社全体の利益や時価総額に手で重ね掛けしていない。会社の事業価値と今の株主に帰属する価値を区別したうえで、最後に現在の時価総額と比較した。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.0%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、品質要因マイナス0.25%、継続赤字の存続リスク2.0%を加えて9.25%とする。臨床試験の個別の成功・失敗や将来の増資は資本コストに重ねず、筋書きと確率、既存株主の持分に反映する。