結論
ペプチドリームは、特殊な環状ペプチド(アミノ酸の小さな輪)から薬の種を作る技術を持ち、大手製薬に提供して対価を受け取る会社だ。もう一つの柱は、買収した放射性医薬品の子会社である。筆者の結論は、事業の質は高いが収入の波が大きく、今の値段は10年先の期待をほぼ織り込んでいる、というものだ。
稼ぎの本体は技術の使用料である。提携先の薬が臨床試験で進むたびに、一時金とマイルストーン(節目の支払い)が入り、承認されればロイヤリティが続く。2024年は売上が467億円、営業利益が211億円まで跳ねた。2025年はその反動で営業赤字になった。
赤字の原因は、自社で作った経口の薬の導出が決まらず、提携の節目が翌年にずれたことだ。技術が衰えたわけではない。ただ、この会社の利益が契約の時期ひとつで半分にも倍にもなる事実は変わらない。
子会社のPDRファーマは、安定した売上を支える土台である。ただし薬価の引き下げを受けるため、利益率は薄い。
10年後は、技術が生む大型薬のロイヤリティが立ち上がるか、大手が自前に切り替えるかで分かれる。確率を掛けた価値は今の時価総額を2割ほど下回る。総合では「やや割高」だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業だが、払う値段が難しい」と映る。
事業の質は高い。薬の探索の費用は提携先が負担し、会社は節目ごとに受け取る側にいる。承認後のロイヤリティは、原価がほぼかからず、利益率は9割近くになる。10年後も、この技術を使う大手が増えているなら、堀は広がる。
気になる点は、利益の予測がしにくいことだ。契約の時期が半年ずれるだけで、年の利益が赤字から数百億円の黒字まで動く。予測できない事業には、確信を下げて向き合う。筆者はそう考える。
経営の資本配分は、まだ試されている最中だ。PDRファーマの買収は、事業の波をならす役には立った。ただ、投下した資本に見合う稼ぎは、まだ見えない。株主に戻す方針も明確でない。
安全域は、悪い結果が出た時に残る価値で測る。この会社が最悪の筋書きに入っても、現金と放射性医薬品の事業の価値が残る。それは今の時価総額の1割台だ。安全域は広くない。
結局、この会社の価値は、技術が大型薬を生むかどうかにかかっている。生めば、利益は何倍にもなる。生まなければ、利益は小さいまま止まる。その確率を割り引くと、今の値段は少し高い。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。「創薬開発」と「放射性医薬品」だ。
創薬開発は、PDPSという独自の仕組みで作る。標的のたんぱく質にくっつく環状ペプチドを、数兆種類の中から短期間で探し出す技術だ。大手製薬と共同研究を結び、契約時の一時金、開発の節目の支払い、承認後のロイヤリティを受け取る。ジェネンテック、ノバルティス、ブリストル、メルクなど、名だたる大手が提携先に並ぶ。
自社でも種を持つ。経口で飲める筋肉の病気向けの薬(マイオスタチン阻害薬)は、導出先を探している途中だ。放射性の薬と組み合わせる「RI-PDC」という分野でも、提携済みの案件が4件、臨床に進んでいると会社は説明している。
放射性医薬品は、2021年に富士フイルム富山化学から305億円で買ったPDRファーマが担う。病院向けの診断薬や治療薬を作って売る。薬価は国が決め、毎年のように下がる。売上は年160億円前後と見るが、セグメント別の利益は開示が薄い。
この二つは性格が違う。創薬開発は、当たれば利益率が5割を超えるが、収入は年ごとに乱高下する。放射性医薬品は、売上は安定するが、利益は薄い。
今後の成長を担うのは、PDRファーマの販売網に自社の放射性の新薬を載せる計画だ。国内では前立腺がん向けの治療薬が第2相に進み、2026年2月に始まった。胃がんなどで標的となるCLDN18.2向けの薬も、国立がん研究センターで人への投与が始まった。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の堀(他社がまねできない強み)を「技術は本物、収入は不安定」と見る。
強みは、実績の厚みだ。大手が何社も、何年も、同じ仕組みで探索を続けている。世界の大手が検証を重ねた点が、新興の競合にはない信用になる。特定の薬1つに賭けず、提携は100件規模に分散している。1つが外れても、会社全体は止まらない。
次に、収益の構造が優れている。薬の探索費用は提携先が負担し、会社は開発が進むたびに受け取る側に立つ。当たれば原価がほとんどかからないロイヤリティになる。
弱みは3つある。第1に、利益が契約の時期に左右される。2024年から2025年への落差が、その証拠だ。第2に、競合がいる。英国のバイシクル社などの環状ペプチド技術や、大手の社内探索が代わりになりうる。第3に、PDRファーマの薬価は国に決められる。値決めの力は、この部分では持てない。
経営の資本の使い方には、まだ評価が定まっていない。PDRファーマの買収は、技術の収入の波をならす手として筋は通る。ただ、買収後の利益率は低く、投下した資本に見合う稼ぎが出ているとは言いにくい。
資本効率は、過去10年の自己資本利益率の中央値で15.7%と高い。ただしそれは、契約の一時金が入った年が押し上げた数字だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
創薬の世界では、新薬の種の半分近くが、大学や新興企業から生まれている。大手は自社の研究だけでは足りず、外から種を買う。ペプチドリームは、その「種の仕入れ先」の位置にいる。
大手が環状ペプチドに期待する理由は、既存の薬の弱点を補えるからだ。抗体は大きく、飲めない。低分子は小さく、細胞の表面を覆うたんぱく質に届きにくい。環状ペプチドは、その中間の大きさで、標的に強く結び付く。飲める形にできれば、使い勝手も増す。
放射性リガンド療法も追い風だ。腫瘍に届くペプチドに放射性物質を付けて、がんだけを壊す。ノバルティスは前立腺がん向けのPluvictoなどで、この市場を切り開いた。同社の腫瘍領域の2025年売上は168億ドルで、Pluvictoは伸びを牽引した製品の1つだ。市場の拡大とともに、ペプチド技術と製造・供給網の需要も増える。
国内の放射性医薬品の市場は小さい。筆者の推定で年800億円前後で、PDRファーマは2割ほどを占めると見る。患者の数は人口とともに緩やかにしか増えず、薬価は毎年下がる。
競争の形は分散的だ。環状ペプチドの技術を持つ会社は海外に複数あり、大手の社内探索も強い。新興の資金環境は厳しく、日本の創薬ベンチャーに入る資金は米国の1%に満たない。ペプチドリームは現金と提携の収入を持つ数少ない勝ち組だが、その地位は契約を更新し続ける限りにおいて保たれる。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、研究への再投資と買収である。配当はなく、2026年も出さない予定だ。
現金は厚い。純現金は約116億円で、時価総額の1割に届かない。ただ、研究開発費が年50億円規模で、2026年の上期も営業赤字が続く。契約が入らない年は、現金が減る。
買収では、PDRファーマの305億円が最大だった。放射性医薬品の製造販売機能を手に入れ、技術の収入の波を補う狙いだった。その後の利益は小さく、買収が資本の使い方として成功だったかは、まだ決着がついていない。
自社株買いは、筆者の調べた範囲で確認できなかった。創業者の持ち株や、大手との提携に関する持ち合いの状況も、この分析では確かめられていない。
買われる側になる可能性もある。外部の推計では、10年以内にTOBなどが起きる確率は1割台半ばだ。環状ペプチドの技術と提携網は、大手が欲しがる資産だ。ただ、創業者の影響力が強い会社であり、売る側の同意なしに進むとは考えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
環状ペプチドは、これからの創薬の主役の1つになる。抗体は大きすぎて細胞の中に入れず、低分子は細胞の外側で効かせにくい。環状ペプチドは、その間の穴を埋める。しかも、飲める形にできる。この技術を長く磨いてきた会社は、世界でも限られる。
提携の数が違う。ジェネンテック、ノバルティス、ブリストル、メルクなど、世界の大手が、何年も同じ会社に探索を任せ続けている。提携の数は100件規模に広がり、その中の数件が臨床の後半に入れば、一時金、節目の支払い、ロイヤリティが重なって入る。2024年に売上が467億円まで跳ねたのは、その入口にすぎない。
放射性リガンドは、成長が約束された分野だ。前立腺がんでPluvictoが示したように、標的に届くペプチドと放射線の組み合わせは、がん治療の新しい柱になる。PDRファーマは、国内で製造と販売の網を持つ。PSMAなど自社の新薬が国内で承認されれば、工場と営業の網をそのまま使える。海外の大手との提携で、世界に広げる道もある。
2025年の赤字は、契約の時期が1年ずれただけだ。経口マイオスタチン阻害薬の導出が決まれば、一時金が入る。2026年は、メルクとの共同研究でも節目の支払いが出た。収入は1年遅れで戻ってくる。
慎重な見方
収入の質に問題がある。会社が受け取る一時金や節目の支払いは、提携先の都合で止まり、延び、取り消される。2025年は、予定した節目が1年ずれただけで、営業利益が211億円の黒字から50億円の赤字に変わった。年によって半分にも倍にもなる利益は、株主にとって当てにしにくい。
大手は、依存しない道も持つ。社内で同じ技術を作る、競合の技術に切り替える、といった選択肢だ。バイシクル社など環状ペプチドの競合は海外にもいる。大手が自前の探索に切り替えれば、提携の数は減る。
ロイヤリティが立ち上がるまでが長い。薬が承認される確率は、臨床の第1相から数えて1割程度にすぎない。提携が100件規模でも、承認までたどり着くのは数件だ。しかも承認後も、売上の拡大に数年かかる。
PDRファーマは、利益の土台にならない。薬価は毎年下がり、売上は160億円前後で止まる。利益率は薄く、買収に投じた305億円の元をとるには長い年月がかかる。
経口マイオスタチン阻害薬の導出は、2025年に決まらなかった。自社創製の薬の価値を、大手が認めるとは限らない。研究開発費は年50億円規模で重く、契約が入らない年は赤字が続く。
どちらに重みを置いたか
技術の質では、強気の見方が正しい。大手が長く提携を続ける事実は、簡単には作れない信用だ。一方、利益の読みにくさと、PDRファーマの薄い利益率では、慎重な見方が強い。
確率は、中立に3割強を置いた。やや悲観と悲観を合わせて4割強とし、やや楽観と楽観の合計をそれより小さくした。技術の質は評価しつつも、利益が契約の時期で大きく振れる構造は、確率を下側に寄せる理由になる。
2025年の赤字が一時的なものかは、2026年の下期に節目の支払いが入るかどうかで分かる。入れば、やや楽観の確率を上げる材料になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,389 円1,805 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 188 円245 億円)。 今の値に割り戻すと 740 円961 億円、今との差 −31.0%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,774 円7,507 億円 | 923 円1,200 億円 | +524.5% | +20.1% | 536 円697 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,630 円3,419 億円 | 385 円500 億円 | +181.1% | +10.9% | 512 円666 億円 |
| 中立 | 32% | 1,240 円1,612 億円 | 154 円200 億円 | +29.9% | +2.7% | 446 円580 億円 |
| やや悲観 | 26% | 224 円291 億円 | 0 円0 億円 | −79.2% | −14.5% | 58 円76 億円 |
| 悲観 | 17% | 146 円190 億円 | 0 円0 億円 | −86.4% | −18.1% | 25 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,389 円1,805 億円 | 188 円245 億円 | +47.1% | +3.9% | 1,577 円2,050 億円 |
今の株価時価総額 1,073 円1,394 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:大型薬が生まれ、ロイヤリティが立ち上がり、放射性の新薬も広がる 利益 415 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 5,774 円7,507 億円
提携先の薬のうち2〜3本が、承認と発売まで進む。ロイヤリティが年に数百億円の規模で入り、新しい提携の一時金も続く。技術の信用は一段と高まり、大手からの探索の依頼が増える。
放射性医薬品も育つ。国内の前立腺がん向けの治療薬が承認され、年3,000人が使う。PDRファーマの工場と営業の網が生き、利益率は上がる。海外の大手との提携も広がる。
会社は配当と自社株買いを始め、株主への還元を明確にする。ペプチドの技術は創薬の標準の道具の1つになる。
それでも、競合は動く。大手の社内でも同じ技術が育ち、提携の条件は厳しくなる。利益の多くは、数本の薬の成否にまだ頼っている。
- 創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス):数量 70.0(収入が発生した契約イベントの件数(件/年))× 価格 10(1件あたりの収入(億円・名目))→ 売上 700 億円・営業利益 420 億円。収入の発生70件×1件10億円。研究費を引いて営業利益率60%
- 放射性医薬品(PDRファーマの既存事業):数量 195(国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア)× 価格 0.90(値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差))→ 売上 176 億円・営業利益 21 億円。市場の伸び×シェアで195×値段の指数0.90。営業利益率12%
- 放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売):数量 3,000(国内の年間投与患者数(人))× 価格 0.10(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 300 億円・営業利益 105 億円。国内の投与患者3,000人×1人0.10億円。営業利益率35%
倍率:事業の純利益 415 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.09 倍、時価総額 7,507 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携先の大型薬が2〜3本当たり、国内の放射性の新薬も承認される筋書き。承認までたどり着く薬は1割程度と見て、8%に置いた。
やや楽観 17% やや楽観:提携の薬が1〜2本当たり、放射性の新薬が国内で定着 利益 229 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,630 円3,419 億円
提携先の薬のうち1〜2本が承認される。ロイヤリティは年に数十億円の規模で入り始め、新規の提携からの一時金も途切れない。
国内の前立腺がん向けの治療薬は承認され、年1,500人が使う。PDRファーマの利益率は少し上がる。研究費は自社と提携先で分担する。
会社は黒字を続け、利益の一部を株主に返す。配当は小さく、自社株買いは年によって変わる。
ただし、ロイヤリティが大きくなるには時間がかかる。大型の薬は出ず、利益は堅実に伸びる範囲にとどまる。
一方で、提携の数は増え、承認前の段階の件数が厚くなる。次の世代の薬が育つ土台は残り、会社は技術に強みを持つ中堅の創薬会社として定着する。ただし、一つの技術への依存は変わらない。
- 創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス):数量 55.0(収入が発生した契約イベントの件数(件/年))× 価格 8.50(1件あたりの収入(億円・名目))→ 売上 468 億円・営業利益 243 億円。収入の発生55件×1件8.5億円。営業利益率52%
- 放射性医薬品(PDRファーマの既存事業):数量 185(国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア)× 価格 0.85(値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差))→ 売上 157 億円・営業利益 17 億円。185×値段の指数0.85。営業利益率11%
- 放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売):数量 1,500(国内の年間投与患者数(人))× 価格 0.09(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 41 億円。投与患者1,500人×1人0.09億円。営業利益率30%
倍率:事業の純利益 229 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.95 倍、時価総額 3,419 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型薬は1本にとどまるが、提携の数は増え、放射性の新薬も承認される筋書き。承認前の段階の件数が多いことを評価して17%に置いた。
中立 32% 中立:提携は続き、ロイヤリティは小さく立ち上がる 利益 126 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,240 円1,612 億円
提携の数は今の水準を保つ。承認される薬は数本にとどまり、ロイヤリティは年に数十億円の規模で立ち上がる。一時金と節目の支払いは年によって振れるが、ならせば年300億円前後が入る。
研究費は物価と規模の拡大で今より増え、利益の半分近くを研究に回す。PDRファーマは薬価の引き下げを受けながら、売上は今の水準を保つ。国内の前立腺がん向けの治療薬は、承認されても使う患者は限られる。
配当は出さず、自社株買いは10年の後半に小さく行う。会社は黒字を維持するが、利益の水準は2024年を超えない。
投資家には、技術の信用を持つ堅実な会社として映る。ただし、大きな成長は見込めず、利益の予測しにくさは変わらない。
- 創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス):数量 40.0(収入が発生した契約イベントの件数(件/年))× 価格 7.50(1件あたりの収入(億円・名目))→ 売上 300 億円・営業利益 135 億円。収入の発生40件×1件7.5億円(物価と、臨床が進んだ分の金額の上昇)。営業利益率45%
- 放射性医薬品(PDRファーマの既存事業):数量 175(国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア)× 価格 0.85(値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差))→ 売上 149 億円・営業利益 15 億円。175×値段の指数0.85(薬価の引き下げで物価に届かない)。営業利益率10%
- 放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売):数量 800(国内の年間投与患者数(人))× 価格 0.08(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 16 億円。国内の投与患者800人×1人0.08億円。営業利益率25%
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 1,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携の数は保たれ、承認される薬が少数にとどまる筋書き。2024年と2025年の中間に収入を置き、最大の確率の32%とした。
やや悲観 26% やや悲観:提携の数が減り、収入は小さくなる 利益 31 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 224 円291 億円
大手が社内の探索を強め、提携の更新が減る。新しい契約は年に数件にとどまり、一時金の流れが細る。承認される薬は少なく、ロイヤリティは小さい。
研究費は思うほど下がらず、利益はわずかに残るだけだ。PDRファーマは薬価の引き下げを受け、売上が縮む。国内の前立腺がん向け治療薬は第3相で時間がかかり、承認は遅れる。
会社は赤字を避けるが、株主への還元はできない。研究を絞り、提携先の動きを待つ立場になる。
10年後、会社は残る。技術の信用は持つが、成長の物語は薄れた状態だ。投資家の取り分は、現金と放射性医薬品の事業の価値で支えられる。
- 創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス):数量 28.0(収入が発生した契約イベントの件数(件/年))× 価格 6.00(1件あたりの収入(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 34 億円。収入の発生28件×1件6億円。営業利益率20%
- 放射性医薬品(PDRファーマの既存事業):数量 165(国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア)× 価格 0.80(値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差))→ 売上 132 億円・営業利益 7 億円。165×値段の指数0.80。営業利益率5%
- 放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売):数量 300(国内の年間投与患者数(人))× 価格 0.06(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。投与患者300人×1人0.06億円。研究費の負担で営業利益率0%
倍率:稼ぐ力は小さく、事業の ROE は k を下回るので、PER の上限は 1÷k(約13倍)。収入が細る筋書きで、利益の質も低いので上限の7割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 291 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:大手が自前の探索を増やし、提携の更新と新規が細る筋書き。競合の存在と、利益の予測しにくさを重く見て26%に置いた。
悲観 17% 悲観:大手が離れ、技術の価値が薄れる 利益 −26 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 146 円190 億円
主要な提携先が、自前の探索や競合の技術へ切り替える。新しい契約は年に1〜2件に減り、一時金は細る。提携中の薬も、臨床で外れが続く。
会社は研究の人員を減らし、研究費を半分近くに削る。PDRファーマは薬価の引き下げと競合で、利益がほとんど出なくなる。国内の前立腺がん向け治療薬は、開発を縮めるか、提携先に預ける。
赤字は数年続き、現金は減る。会社は存続するが、成長の物語はなくなる。
10年後に残る価値は、現金と、放射性医薬品の事業の売却額が中心だ。技術の特許は残るが、使う大手が少ないため、収入には結びつかない。
- 創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス):数量 20.0(収入が発生した契約イベントの件数(件/年))× 価格 3.00(1件あたりの収入(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 −30 億円。収入の発生20件×1件3億円。研究費を削っても営業利益率-50%
- 放射性医薬品(PDRファーマの既存事業):数量 150(国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア)× 価格 0.75(値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差))→ 売上 113 億円・営業利益 2 億円。150×値段の指数0.75。営業利益率2%
- 放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売):数量 100(国内の年間投与患者数(人))× 価格 0.05(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 −3 億円。投与患者100人×1人0.05億円。営業利益率-60%
倍率:稼ぐ力はなく、価値は現金と売れる資産の税後に支えられる床で置く。床は今の自己資本に掛けた(積み上げた利益には掛けない)。
確率:大型の提携が終わり、競合の技術に置き換えられる構造的な負けの筋書き。提携が100件規模に分散している点を考えて、17%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
創薬開発(ペプチド探索の提携・ライセンス)
特殊ペプチドの探索基盤PDPSを大手製薬に提供し、一時金・節目の支払い・ロイヤリティを受ける。自社創製の薬の導出もここに入る。研究開発と本社の費用もここに置く。
| 数量収入が発生した契約イベントの件数(件/年) | 価格1件あたりの収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 2.50 | 25 | −70 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 7.50 | 300 | 135 |
取り方:2025年12月期の創薬開発の売上は、全社185億円から放射性医薬品の約160億円を引いた約25億円と推定。2024年は約35件×約9億円で300億円超、2025年は節目が翌年にずれて10件に減った谷の年。営業利益は全社-50億円から放射性医薬品の約+20億円を引いて約-70億円と推定(セグメント別は未開示)。 数量は収入の発生件数(実物)。2025 年は節目が翌年にずれた谷の年で、40 件は 2024 年の約 35 件に近い。1 件の金額が物価の 1.34 倍を超えるのは、臨床が進んだ分の金額の上昇(2024 年は約 9 億円)による事業の理由。
放射性医薬品(PDRファーマの既存事業)
病院向けの放射性の診断薬・治療薬の製造販売。2021年に富士フイルム富山化学から305億円で買収し、2022年に子会社化。
| 数量国内の核医学市場の実質規模(億円)×シェア | 価格値段の指数(今=1.0。薬価の毎年の引き下げと物価の差) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 160 | 1.00 | 160 | 20 |
| 10 年後 中立 | 175 | 0.85 | 149 | 15 |
取り方:国内の核医学市場を約800億円(推定)、PDRファーマのシェアを約2割とみて160億円。2026年上期の放射性医薬品の売上が約80億円であることと整合。営業利益は約+20億円と推定。薬価は毎年下がるので、10年の値段の指数は0.85程度(物価の1.34倍には届かない)。
放射性の新薬(RI-PDC。国内の自社販売)
PDRファーマが国内で販売を目指す放射性の新薬(前立腺がん向けPSMA、胃がんなどのCLDN18.2向けなど)。いまは売上なし。
| 数量国内の年間投与患者数(人) | 価格1人あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.08 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.08 | 64 | 16 |
取り方:未発売で売上は0。前立腺がん向けの治療薬は国内第2相が2026年2月に始まったところで、承認は数年先。1人あたり売上は、類似の放射性治療薬が1コースで数百万円台であることからの推定。費用は創薬開発の欄に含めている。
リスクと懸念
収入が契約の時期に大きく左右される
提携先の節目の支払いは、1年ずれるだけで年の利益を大きく変える。2025年は営業利益が211億円の黒字から50億円の赤字に転じた。2026年の予想も、下期に入る一時金を前提にしている。入らなければ、予想は崩れる。
大手が自前に切り替える
ペプチドの探索は、大手の社内でもできる。海外にも環状ペプチドの競合がいる。提携が更新されない、あるいは新規の件数が減ると、一時金の流れが細る。ロイヤリティが立ち上がる前に、この流れが細ると、会社の利益は伸びない。
提携先の薬が承認されない
臨床試験を進む薬が、最後まで承認にたどり着く確率は1割程度だ。提携が100件規模でも、ロイヤリティを生む薬は数件にとどまる。承認後も売上の拡大には数年かかる。長期の利益は、この数件の成否で決まる。
PDRファーマの薬価と利益率
放射性医薬品の薬価は国が決め、毎年のように下がる。売上は160億円前後で伸びにくい。利益率は薄く、買収に投じた305億円を回収するには長い年月がかかる。人件費や原材料の値上がりが、薬価に転嫁できない点も重荷になる。
自社創製の薬の導出が決まらない
経口マイオスタチン阻害薬は、2025年に導出が決まらなかった。大手が自社創製の薬の価値を認めなければ、一時金は入らず、研究費だけが残る。研究開発費は年50億円規模で、赤字が続けば現金が減る。
放射性医薬品の新薬の開発リスク
前立腺がん向けの治療薬は第2相で、承認までは数年かかる。国内の対象患者は限られ、海外の薬との競合もある。供給の面では、放射性物質の調達に外部の依存がある。承認が遅れる、または売上が小さければ、成長の計画は崩れる。
今後の分かれ目
- 2026年下期に、経口マイオスタチン阻害薬の導出が決まり、一時金が入る
- 2026年の黒字予想が確かになり、やや楽観の確率を上げてよい。ただし、一時金は一度きりで、10年の利益は提携先の臨床の進み方で決まる。
- 提携先の薬が臨床の後半に入り、承認の申請が出る
- ロイヤリティが立ち上がる筋が現実になる。楽観側の確率を上げる材料になる。
- 大手が提携の更新を見送り、新規の契約が1年以上出ない
- 一時金の流れが細り、やや悲観の確率を上げる。研究費が重い会社なので、赤字の期間が延びる。
- 国内の前立腺がん向け放射性治療薬が、第3相に進む
- PDRファーマの利益率が改善する筋が太くなる。放射性医薬品の新薬の成長を、中立から上に寄せる。
- PDRファーマの売上が160億円を割り込み、薬価の改定が続く
- 買収の元をとるのに時間がかかり、資本の使い方への評価が下がる。悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 提携先の臨床の段階(第3相に進む件数、承認の申請)
- 年ごとの契約の一時金・節目の支払いの件数
- PDRファーマの売上と営業利益率、前立腺がん向け治療薬の進み具合
- 現金の残高と研究開発費、経口マイオスタチン阻害薬の導出
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化PER・RONIC)と事業の経済性だけで決めた。創薬開発の収入は、提携先の臨床の段階ごとに件数と1件の金額を置いて積んだ。今の時価総額は見ていない。確率を掛けた価値が今を2割ほど下回るのは、利益が契約で大きく振れ、PDRファーマの利益率が薄い構造を、中立から下側の筋書きに反映したからだ。今の値が違う水準でも、数字は寄せていない。2025年は契約の時期のずれで赤字になった「谷」の年なので、現在の数字を10年先の出発点としていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 19.7→18.09 倍・やや楽観 PER 17→14.95 倍・中立 PER 14.3→12.78 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。