結論
ファンペップは、大阪大学発のペプチド技術を医薬品に育て、製薬会社への導出と販売後のロイヤリティーで稼ぐ創薬ベンチャーである。筆者の結論は「割高」だ。開発品が成功すれば企業価値は大きく跳ねるが、その成功を待つ間に旧株主の持ち分が薄まり続ける可能性が高い。
価値の中心は皮膚潰瘍治療薬SR-0379と、花粉症向けワクチンFPP004Xである。SR-0379は追加の第Ⅲ相試験が進み、2027年上半期に結果が得られる見通しだ。一方、FPP004Xは第Ⅰ相で抗IgE抗体の上昇を示したものの、探索的な花粉曝露試験では症状スコアの改善を確認できなかった。抗体ができることと、患者の症状が軽くなることの間には、まだ大きな隔たりがある。
2025年12月期の純損失は19.1億円だった。2026年6月末には約18.9億円の現預金があるが、年間の研究開発費と管理費だけで約11億円を見込む。会社が存続することと、今の株主が十分な割合を保って価値を受け取ることは、分けて考えなければならない。
10年後の株主価値を五つの筋書きで評価すると、現在の時価総額約21.3億円に対し、本質価値は約9.1億円となる。差は約57%のマイナスだ。この値は成功時の大きな上振れを含んでおり、創薬の将来を否定した数字ではない。むしろ、成功確率、開発資金、希薄化を同時に負担する少数株主にとって、どこまでを確かな価値として払えるかを問う結果である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に確かめたいのは、十年後にも顧客がお金を払い続ける理由である。ファンペップの場合、その顧客は最終的には患者と保険者だが、直接の支払者は導出先の製薬会社になる。臨床試験を通過していない段階では、顧客の継続購入、値上げの実績、販売網への定着を観察できない。優れた研究テーマを持つことと、予測できるオーナー利益を持つことの間には距離がある。
一つの薬が承認されれば、研究費に比べて大きなロイヤリティーが入る可能性がある。生産設備を自ら大量に持たずに済むため、その段階の追加利益率は高い。これは魅力的な収益構造だ。しかし、承認に至る前の費用は確実に発生し、利益が出る時期と金額は不確かである。再投資利回りを過去の黒字実績から確認できない以上、成功時の利益をそのまま現在の確実な価値にはできない。
さらに、株主が受け取るのは会社全体の価値ではなく、自分が持つ株式の割合に応じた価値である。新しい投資家から資金を集めれば会社の現金は増えるが、旧株主の持ち分は下がる。2022年以降の繰り返された希薄化は、この問題を仮定ではなく実績として示している。
筆者が十年間保有する立場なら、SR-0379の追加試験結果、FPP004Xの実際の症状改善、塩野義製薬による権利行使、そして追加増資なしに次の開発段階へ進めるかを確認したい。研究の成功を信じること自体は投資理由になり得る。しかし、成功しなかった場合に残る資産が薄い会社では、成功確率だけでなく買値の安全域も必要だ。現時点の時価総額には、その安全域が十分には見えない。
何で稼ぐ会社か
同社の商売は、医薬品を自ら大量に製造して販売することではない。大学の研究成果から薬の候補を生み出し、試験で価値を高め、製薬会社へ権利を渡す。その対価として契約一時金、開発段階に応じた収入、承認後の売上連動収入を受け取る仕組みだ。会社の開示上は「医薬品等の研究開発事業」という単一セグメントであり、以下の製品別区分は価値を考えるための分析上の区分である。
SR-0379は、創傷治癒の促進と抗菌作用を併せ持つ皮膚潰瘍向けの機能性ペプチドだ。塩野義製薬に全世界の権利を導出しており、日本で共同開発が進んでいる。以前の第Ⅲ相試験では、試験全体ではなく、潰瘍の大きさを限定した事後解析で有効性の可能性が示された。現在の追加試験は、その限定された集団で結果を再現できるかを確かめるためのものだ。
FPP004Xは、体内でIgEに対する抗体を作らせる花粉症向けの治療ワクチンである。塩野義製薬との契約は、全世界での開発・商業化権を取得できるオプション契約であり、既に製品として導出が完了したわけではない。2024年の契約では3億円の一時金と、オプション行使後の契約金や条件付きマイルストーンが設定された。公表された最大178億円は、受け取りが保証された売上ではない。
このほか、IL-17Aを標的とするFPP003は初期臨床試験を終えて新たな提携先を探している。IL-23を標的とするFPP005は前臨床段階にあり、まだ承認薬としての収益はない。機能性ペプチドを化粧品原料として販売する事業もあり、アルビオンやファンケルの製品への採用例がある。しかし、2026年上半期の事業収益は約0.02億円であり、現在の固定費を支える収益柱にはなっていない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、大阪大学の研究成果であるAJP001を利用した抗体誘導ペプチド技術「STEP UP」だ。既存の抗体医薬品の代わりに、体内で治療に必要な抗体を作らせるという発想には合理性がある。効果が長く続き、投与回数や製造費を減らせれば、慢性疾患の治療で十分な価値を生み得る。複数の標的へ技術を展開できる点も、単一化合物だけを持つ会社より優れている。
ただし、現在の強みを広い経済的な堀と呼ぶのは早い。医薬品で価格を維持する力は、特許だけでなく、承認された臨床効果、医師の処方経験、保険償還、製薬会社の販売網がそろって初めて生まれる。同社には、これらを自社製品の継続販売で実証した実績がまだない。さらに、販売を担う提携先が契約条件や開発優先順位を決めるため、価値の大きな部分を相手と分け合う必要がある。
資本効率も、現時点では評価が難しい。2017年以降、開示された各年の営業利益は赤字であり、研究開発費に対して繰り返し高い利益を得た実績はない。成功薬が生まれれば過去の研究投資の利回りは急上昇するが、失敗すれば投下資金を取り戻せない。増分ROICが資本コストを超えるかどうかは、承認とライセンス条件に依存する。
財務面では借入に大きく依存していないことが救いだ。しかし、赤字が続くため現金そのものが減る。2026年上半期には増資などで約7.7億円を調達しながら、約5.7億円の純損失を計上した。財務を維持できる経営手腕と、既存株主の取り分を保つ資本配分能力は同じではない。現時点の堀は「弱い」と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
創薬市場では、患者数が多いことと、開発企業の売上が大きいことは一致しない。新薬の価値を決めるのは、対象患者のうち誰に処方されるか、競合薬よりどれだけ効くか、保険者がいくら払うか、そして販売額の何割が導出元へ戻るかである。特に小型の創薬会社では、治験に失敗すれば市場規模が大きくても自社の販売数量はゼロになる。
花粉症の患者基盤は大きい。会社が引用する2019年の全国疫学調査では、花粉症全体の有病率は42.5%だった。しかし、抗ヒスタミン薬、点鼻薬、舌下免疫療法、重症例向けの抗IgE抗体製剤など、既に選択肢は多い。鳥居薬品のシダキュアや、ノバルティスのゾレアなどは異なる治療上の役割を持つ。FPP004Xが広く使われるには、抗体価の上昇だけでなく、症状改善と持続性、安全性、費用対効果で選ばれる理由が必要だ。
皮膚潰瘍は高齢化や糖尿病との関係から、長期的に医療上の需要が残る領域である。競合には科研製薬のフィブラストスプレーや既存の創傷管理製品がある。ただし、SR-0379の次の試験は潰瘍面積を限定している。皮膚潰瘍患者全体を直ちに販売可能市場とみなすのは誤りであり、まず適応となる患者集団の広さを見極めるべきだ。
FPP003やFPP005が狙う炎症性疾患では、IL-17やIL-23を標的とする既存の抗体医薬品が強い。ノバルティスのコセンティクスやアッヴィのスキリージなど、販売実績と大規模な臨床データを持つ薬剤が競合する。同社が参入するなら、低い製造費や投与間隔の長さを臨床成績で示さなければならない。現在の商業化シェアは実質ゼロであり、将来シェアの獲得は承認後の新規参入として考える。
生成AIによる創薬研究の効率化は、標的探索や設計の競争を激しくする可能性がある。一方、同社が売ろうとする価値は臨床試験を経た医薬品の権利であり、人月請負、席課金ソフト、画面操作サービスには当たらない。したがって、AIエージェント代替による数量縮小の定型ルールは適用しない。AIは研究競争と技術の陳腐化を通じて影響すると考える。
資本政策と M&A
資本政策の中心は株主還元ではなく、研究を止めないための資金調達である。会社は配当を実施しておらず、2026年12月期の予想配当もゼロだ。2026年3月には第三者割当による新株35万2,900株と、新株予約権の行使による975万株が発行された。2025年末に約4,056万株だった発行済株式は、2026年6月末には約5,067万株に増えている。今回の評価では、既に発行された株を将来の希薄化として二重に数えない。
塩野義製薬とのFPP004X契約は、2024年の一時金3億円に加え、条件達成時の契約金・マイルストーン最大178億円とロイヤリティーを含む。塩野義製薬による2億円の出資もあった。ただし、178億円は開発、契約行使、販売に関する条件の成就が前提であり、現在の企業価値へ一括して足せる確定債権ではない。研究費を提携先へ移転できるかどうかが、今後の資本配分を大きく左右する。
2026年3月公表の「事業計画及び成長可能性に関する事項」は、開発品の進展と提携拡大を軸とする。中期の売上高、営業利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額について、達成を約束する数値目標は確認できない。したがって株主還元については「数字の約束なし」と評価する。2026年の研究開発費8億円、その他販管費3億円という見込みは、還元目標ではなく資金消費の目安である。
将来の買収や完全子会社化は創薬企業の出口として考えられるが、現時点で確定したTOBや上場廃止予定として評価には織り込まない。また、2026年8月の決算短信では継続企業の前提に関する注記は該当なしとされている。注記がないことは十年間の資金調達が保証されたことを意味しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SR-0379は、単なる基礎研究ではなく追加の第Ⅲ相試験まで到達している。以前の試験で患者集団を限定すると有効性の手掛かりが得られたため、対象患者を絞った再試験には合理性がある。2027年の結果が良好なら、塩野義製薬との共同開発を通じて承認申請と販売準備が進む可能性がある。販売網を自社で一から作る必要がなく、成功後の収益性は研究費主体の現在と大きく変わる。
FPP004Xについても、第Ⅰ相で抗IgE抗体の上昇が確認されたことは科学的な前進である。探索的な症状スコアで改善しなかったからといって、投与量、投与間隔、対象患者を最適化した次の試験でも効かないと確定したわけではない。塩野義製薬という開発力と販路を持つ相手が検討を続ければ、追加試験の設計や資金負担の面で道が開ける。
花粉症は対象人口が大きく、長期間の症状緩和が実証されれば、既存の対症療法とは異なる市場を作れる。STEP UP技術からFPP003やFPP005など複数の標的が生まれていることも、研究が一製品で終わらない可能性を示す。将来、複数の医薬品が上市され、年間数十億円のロイヤリティー収入が定着すれば、製造設備を大量に持たない企業として利益率は急上昇する。
現在の時価総額は大手製薬会社に比べて小さい。臨床試験の成功による事業価値の増加が非常に大きいため、成功したときの利益はそれまでの損失を取り返せる。提携による研究費の分担が進めば、これ以上の大幅な希薄化を避けながら成長する道も残っている。
慎重な見方
現時点で確実に見えるのは、大きな市場でも将来の契約金でもなく、継続する研究費である。2025年12月期は事業収益がほぼなく、純損失は19億円を超えた。2026年上半期には費用が減ったものの、年間の研究開発費と管理費は依然として約11億円を見込む。売上予想を合理的に算定できないと会社自身が説明している段階で、十年後の安定利益を当然視することはできない。
FPP004Xの第Ⅰ相試験では、抗体が誘導されたにもかかわらず探索的な症状評価で改善が確認されなかった。これは、薬の仕組みが実際の治療効果へつながるかという最も重要な部分が未証明であることを示す。塩野義製薬のオプションも、権利行使が確定したわけではない。最大178億円の契約条件を、将来の確定売上として使うのは危険だ。
SR-0379にも別の問題がある。以前の第Ⅲ相試験全体で効果が確立したのではなく、事後解析で見つかった限定集団を新しい試験で検証している。追加試験で結果が再現されない可能性があり、成功しても患者集団が狭ければ販売額は期待ほど伸びない。大手製薬は既存の販売網と豊富な資金を持つため、同社のライセンス交渉力は限定される。
さらに厳しいのは株式の希薄化である。2022年から2026年にかけて既存株主の持ち分は大きく薄まった。今後も治験と探索研究を続けるなら、新たな株式発行が必要になる可能性が高い。仮に十年後に会社全体の価値が残っても、その大部分を将来の資金提供者が持つことは十分あり得る。現金残高を現在の清算価値と混同してはならない。
どちらに重みを置いたか
技術の可能性には価値があるが、既存株主に帰属する長期の価値では慎重な見方を優先する。下に寄せる理由は、FPP004Xで症状改善が未確認であること、SR-0379の承認が追加試験の再現性に依存すること、そして増資による希薄化が既に繰り返されていることだ。楽観とやや楽観の合計を20%、やや悲観と悲観の合計を54%とした。
もっとも、楽観の企業価値は大きく、確率加重した価値の相当部分を占める。つまり、本質価値約9.1億円も成功への期待を十分に含む。現在の時価総額約21.3億円との開きは、創薬の魅力ではなく、成功までの時間、必要資本、旧株主の取り分を慎重に評価した結果である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 40 円20 億円(+ 還元の換算額還元の合計 3 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 18 円9 億円、今との差 −55.0%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 4% | 727 円368 億円 | 69 円35 億円 | +1,890.6% | +39.1% | 32 円16 億円 |
| やや楽観 | 16% | 63 円32 億円 | 2 円1 億円 | +63.9% | +5.2% | 10 円5 億円 |
| 中立 | 26% | 1 円1 億円 | 0 円0 億円 | −96.3% | −28.1% | 0 円0 億円 |
| やや悲観 | 30% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.4% | −40.1% | 0 円0 億円 |
| 悲観 | 24% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −49.0% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 40 円20 億円 | 3 円2 億円 | +7.0% | +0.7% | 43 円22 億円 |
今の株価時価総額 40 円20 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 4% 二つの主力薬が上市し、創薬基盤からも収益が生まれる 利益 35 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 727 円368 億円
SR-0379の追加試験で臨床効果が明確になり、塩野義製薬との共同開発を経て日本で上市する。その後、海外への導出と適応拡大が進み、年間25万人に治療が行われる。既存の創傷治療では十分に解決できなかった感染管理と治癒促進の両立が評価され、国内外の対象市場で一定のシェアを獲得する。
FPP004Xも、投与条件や対象患者の見直しによって症状改善を示す。塩野義製薬がオプションを行使し、開発と販売を主導する。国内外で年間40万人に接種され、継続的なロイヤリティーが生じる。FPP003などからも毎年複数の契約収益が入り、単一製品への依存が和らぐ。
後半には販売ロイヤリティーが研究費を大幅に上回り、資本効率は一変する。開発資金の大部分を提携先から確保できるため、2026年6月以降の追加増資を避けられる。後半の利益から累計35億円を配当や自社株買いへ回せる。ただし、特許期間の制約があるため、この高収益が永遠に成長するとは考えない。
- SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益:数量 25.0(一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人))× 価格 0.72(治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 16 億円。世界で年間25万人、1万人当たりロイヤリティー0.72億円。上市と海外展開が両方成功する。
- FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益:数量 40.0(一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人))× 価格 1.02(年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 37 億円。世界で年間40万人が接種。症状改善の実証と塩野義製薬による権利行使が前提。
- FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益:数量 3.0(一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算)× 価格 4.20(案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 10 億円。FPP003などを含む年間3件換算の契約・マイルストーン収益。
- 化粧品等向け機能性ペプチド原料:数量 200(機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年))× 価格 0.01(10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。原料の採用先が増加。単価・数量とも開示実績ではなく強気の想定。
倍率:事業が高収益化しても2036年以降の名目成長率は0%とし、資本コスト9.5%から正当化PER=1÷0.095=10.5263倍とする。将来の特許切れを考慮し、物価上昇に比例する永久成長は加えない。2036年純利益35.0億円には収益性の高いライセンス売上と税負担を反映済み。10年間の累計純利益を約133億円、株主還元を35億円とするため、自己資本は16.47+133-35=114.47億円となる。時価総額は35.0×10.5263=約368.42億円。
確率:SR-0379の追加第Ⅲ相試験で効果が再現され、FPP004Xも症状改善を示して承認され、さらに複数の新規導出まで進む複合成功を想定する。現在のFPP004Xには探索的症状評価の弱さがあるため、すべてが同時に実現する確率は低い。
やや楽観 16% SR-0379が主軸となり、複数の収入源で黒字化 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 63 円32 億円
SR-0379は追加の第Ⅲ相試験に成功し、国内の対象患者を中心に採用が進む。ただし、適応患者が限定されることと競合する創傷治療があることから、年間治療患者は10万人程度にとどまる。塩野義製薬の販路を使えるため、同社自身に大規模な営業部隊は要らない。
FPP004Xは追加の試験で一部の患者群に効果が確認されるが、幅広い花粉症患者へ使う治療法にはならない。接種患者は年間4万人程度で、収益への寄与はあるものの主力製品には至らない。FPP003や新しいSTEP UP関連案件の導出が進み、開発費を共同負担する相手が増える。事業はようやく黒字となる。
ただし、上市前には研究費の支出が先行し、旧株主がすべての価値を受け取れるわけではない。今後の増資で発行済株式が約8,172万株になり、現在の株主の持ち分は約62%まで下がる。利益が出る後半に限って少額の還元を行い、十年間の累計還元額は2億円にとどまる。
- SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益:数量 10.0(一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人))× 価格 0.70(治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 6 億円。国内を中心に年間10万人へ治療が普及。限定適応と既存治療との競合を反映。
- FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益:数量 4.0(一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人))× 価格 0.97(年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。特定患者群での有効性確認により、接種患者は年間4万人にとどまる。
- FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益:数量 2.0(一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算)× 価格 4.00(案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 6 億円。共同研究と新規導出を合計で年間2件換算の収益認識とする。
- 化粧品等向け機能性ペプチド原料:数量 70.0(機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年))× 価格 0.01(10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。化粧品原料販売は拡大するが、全社の主な収益源にはならない。
倍率:2036年の継続的な純利益4.9億円を評価し、特許と導出契約の寿命を考慮してg_longを名目0%とした。資本コスト9.5%から正当化PERは10.5263倍。ROEは資本コストを上回るが、それを根拠に2036年以降の高成長を二重計上しない。時価総額は4.9×10.5263=約51.58億円。自己資本は2026年6月末16.47億円に、10年間の累計純損失約16.5億円、追加増資約12.4億円、還元2億円を反映した10.37億円である。
確率:SR-0379の追加試験が成功し、FPP004Xにも一部用途で有効性が見つかるが、普及規模は限定的とする。塩野義製薬との連携やFPP003の新規提携には現実的な可能性がある一方、黒字化までの資金調達は避けられないと考える。
中立 26% 一部の開発品は前進するが、研究費を賄う利益には届かない 利益 −6 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1 円1 億円
SR-0379は追加の試験を経て限定された患者群で承認されるか、承認後の販売が予想より伸びない。既存の創傷治療や薬価上の制約があり、年間治療患者は3万人にとどまる。FPP004Xは抗体価の上昇を再現できても、患者の症状改善を十分に示せず、商業化には至らない。塩野義製薬のオプションによる大型収益は実現しない。
FPP003やFPP005からは数年に一度の小規模な提携収入が発生するが、恒常的な利益源にはならない。会社は研究員数や外部委託費を抑え、重点テーマに資金を集中する。それでも物価が上がる環境で必要な研究費と管理費は残るため、2036年も赤字である。
存続には複数回の追加増資が必要となる。十年間の累計純損失約56.6億円を、約45.1億円の新たな払込資本と残る自己資本で支えると考える。2036年の自己資本は5億円程度を維持するが、発行済株式は約1億6,889万株となる。会社は生き残っても、現在の株主が持つ取り分は約30%に下がり、配当もない。
- SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益:数量 3.0(一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人))× 価格 0.66(治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。限定された適応患者に年間3万人が採用。薬価・ロイヤリティーに値下げ圧力が残る。
- FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益:数量 0.0(一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人))× 価格 0.90(年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。症状改善の実証が不十分で上市に至らず、販売患者数はゼロ。
- FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益:数量 0.5(一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算)× 価格 3.70(案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。新規導出と開発マイルストーンを複数年平均で年間0.5件とする。
- 化粧品等向け機能性ペプチド原料:数量 20.0(機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年))× 価格 0.01(10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存採用先を維持しつつ小幅に拡大。会社全体の赤字を補う規模ではない。
倍率:2036年も純損失が続くためPERは使えない。将来の自己資本5億円には増資による未使用の事業資金が含まれるが、毎年の研究費に拘束され、株主へ全額を返せる資産ではない。事業継続に必要な最低現金と資金消費を考え、回収価値を自己資本の半分に当たる2.5億円とする。倍率は過去の市場PBRから採ったものではない。自己資本の道筋には2026年6月末16.47億円、十年間の累計純損失56.6億円、追加増資45.13億円、還元0億円を使用し、16.47-56.6+45.13=5億円となる。
確率:SR-0379の商業化が限定的に進む一方、FPP004Xは十分な症状改善を示せず、その他の案件も小規模な契約にとどまると考える。下に寄せる理由:現時点の臨床結果、長年の赤字、2026年の大幅な株式発行を同時に考慮すると、資金調達に依存した存続が会社固有の中心的な見通しとなるため。
やや悲観 30% 主力治験が失敗し、研究事業が大幅に縮小 利益 −3 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
SR-0379の追加第Ⅲ相試験は、以前の事後解析で見られた差を再現できない。塩野義製薬との開発の見直しが必要になり、販売ロイヤリティーの実現は遠のく。FPP004Xも追加試験で十分な症状改善が得られず、オプション行使や本格的な開発費の移転が進まない。主力二案件からの販売収益は2036年にもゼロである。
会社はFPP003などからわずかな研究協力金を得るが、製品販売の規模には届かない。開発を続けるため人員と外部委託を大幅に減らし、研究費の一部を共同研究先へ移す。事業をほぼ縮小しても最低限の管理費が残り、年間の純損失は約3億円となる。
現在の約19億円の現預金は十年間にわたり維持されるわけではない。追加資金を得られたとしても多くが研究費で失われ、2036年に売却や事業譲渡で旧株主に残る会社全体の価値は約0.8億円とする。発行済株式は大きく増え、2026年6月末時点の株主が占める割合は約15%まで低下する。
- SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益:数量 0.0(一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人))× 価格 0.62(治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。追加第Ⅲ相試験で効果が再現されず、販売患者数はゼロ。
- FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益:数量 0.0(一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人))× 価格 0.85(年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。臨床的な症状改善を示せず、商業化できない。
- FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益:数量 0.1(一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算)× 価格 3.60(案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。十年に一度程度の小規模な契約収入を年平均に換算。
- 化粧品等向け機能性ペプチド原料:数量 10.0(機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年))× 価格 0.01(10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。採用先の一部を維持するが、収益規模は極めて小さい。
倍率:収益力による正当化価値は赤字のため低く、研究活動を縮小した後に残る現金・売却可能資産の概算0.8億円を床とする。PBRの分母は2036年に増資で積み上げた架空の純資産ではなく、2026年6月末の自己資本16.47億円に固定した評価用の基準である。0.8÷16.47=約0.04857倍。将来の増資資金は研究費として消費されるため床に重ねて足さない。事業の赤字は既に織り込み、稼ぐ力と床を二重に加算しない。
確率:SR-0379の限定集団での効果が追加試験で再現せず、FPP004Xの症状改善も証明されない場合を想定する。主要二案件が商業化できないと、現在の事業規模では費用を支える収益源がほぼなく、資本調達のたびに旧株主の取り分が縮む可能性が高い。
悲観 24% 開発資産の大半を失い、旧株主の価値はわずかに残る 利益 −1 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
SR-0379は追加試験で望む効果を示せず、承認に至らない。FPP004Xも抗体誘導と臨床効果の間を埋められず、塩野義製薬による本格的な開発引き受けが進まない。FPP003とFPP005についても、新規提携や承認に結びつく臨床成績を得られない。医薬品の販売患者数と大型ライセンス収益は2036年にゼロとなる。
新規調達が難しくなり、研究室の縮小、人員整理、技術資産の売却を迫られる。化粧品原料はごく少量販売されるが、上場企業としての固定費も賄えない。製薬大手が特定の技術を買う可能性は残るものの、研究開発費の累積額を回収できるほどの買収対価は期待できない。
仮に会社が再編で存続しても、再資本化に必要な資金の大部分を新しい投資家が出すことになる。2026年6月末時点の株主に残る割合は約8%となり、現在の自己資本や現預金はそのまま旧株主に帰属しない。最終的な換価可能資産の概算を0.3億円とし、普通株主価値を小さい正の数で残す。
- SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益:数量 0.0(一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人))× 価格 0.55(治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。商業化断念により販売なし。
- FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益:数量 0.0(一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人))× 価格 0.80(年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。開発中止により販売なし。
- FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益:数量 0.0(一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算)× 価格 3.30(案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。新規提携が成立せず、契約収入はゼロ。
- 化粧品等向け機能性ペプチド原料:数量 3.0(機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年))× 価格 0.01(10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存の原料取引がわずかに残る。
倍率:主要開発品が価値を失い、実質的に清算・再編に近い状態とする。床となる税後換価可能資産を0.3億円とし、PBRは現在の自己資本16.47億円を分母として0.3÷16.47=約0.01821倍。今後の研究費で消耗する現在の現預金を十年後の床に流用せず、将来調達する増資資金も旧株主に帰属する資産として加算しない。大きな研究開発損失のほか、撤退費用と契約履行費用を考慮した残余である。
確率:主要開発品の失敗に資金調達環境の悪化が重なり、特許や研究設備の換価額も極めて小さくなる筋書き。研究費負担に対して営業収益がほとんどないため、低い確率の例外として片付けられない。清算や再編の可能性も含むが、普通株価値を機械的なゼロとはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SR-0379・皮膚潰瘍治療薬のライセンス収益
追加の第Ⅲ相試験が成功し、承認・販売に至った場合に塩野義製薬などの販売額に連動して受け取るロイヤリティーを評価する。契約一時金や開発マイルストーンは定常収益と区別する。
| 数量一年間にSR-0379による治療を受ける患者数(万人) | 価格治療患者1万人当たりの年間ロイヤリティー収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.52 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 0.66 | 2 | 2 |
取り方:SR-0379は未承認で販売患者数は0人。仮定単価0.52億円は、治療患者1人当たり年間薬剤売上5.2万円と導出元ロイヤリティー率10%を組み合わせた試算であり、契約上の公開料率や薬価ではない。今後の単価には原則として物価上昇を反映する。患者の母集団は日本の皮膚潰瘍患者全員でなく、面積36平方センチメートル未満など追加試験の適応条件を満たし、競合治療から採用される患者に限定する。会社は単価と患者数を開示していない。数量と薬価は未確認の評価用仮定であり、実測値ではない。
FPP004X・抗IgEアレルギーワクチンのライセンス収益
塩野義製薬によるオプション行使、臨床的有効性の確認、規制承認が実現した場合に受け取る販売ロイヤリティーを対象とする。契約上の条件付き最大額を確定売上として計上しない。
| 数量一年間にワクチン接種を受ける患者数(万人) | 価格年間接種患者1万人当たりのロイヤリティー収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.72 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.90 | 0 | 0 |
取り方:2025年末時点で未承認・未販売のため数量は0。比較用の仮定単価は年間接種患者1人当たり製品売上6万円、ロイヤリティー率12%、従って1万人当たり0.72億円とした。価格も料率も会社公表値ではない。市場規模の参考は国内花粉症内服薬市場約1,700億円という会社引用の2019年統計だが、既存薬市場とワクチンの対象患者は同一ではない。2036年の数量はこの市場の患者が転換する割合と海外展開の成否で区別する。
FPP003・FPP005・新規創薬案件の契約収益
IL-17A、IL-23などを標的とする研究品の新規導出、研究開発協力金、到達した開発マイルストーンを年間収益に換算する。承認薬の継続販売と異なり、契約の年度によって金額が大きく変わる。
| 数量一年間に収益認識される新規導出・共同研究・マイルストーン案件の件数換算 | 価格案件1件当たりの年間認識収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 3.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 3.70 | 2 | 1 |
取り方:2025年の基準売上に重要な新規ライセンス契約収益は計上されていない。仮定単価3億円は、2024年のFPP004Xに関する塩野義製薬との契約一時金3億円を、異なる案件を比較するための参考単位としたもの。今後のFPP003やFPP005の契約金が3億円と約束されたわけではない。将来の0.5件は半年に1件という確定受注ではなく、複数年平均の収益認識頻度を示す。FPP003は新規提携先探索中、FPP005は前臨床段階という開発段階を反映した。
化粧品等向け機能性ペプチド原料
アルビオン、ファンケルなどへの採用実績がある原料販売と、創傷用洗浄液等の小規模な非医薬品事業を対象とする。
| 数量機能性ペプチド原料の10キログラム換算出荷ロット数(件/年) | 価格10キログラム換算ロット当たりの原料販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:会社が開示した2026年上半期の機能性ペプチド等の事業収益は約185万円。仮に10キログラムを60万円で取引すると約3.1ロットに相当する。ただし、出荷重量、実際の取引単価、2025年のロット数は非開示であり、10キログラムと60万円はいずれも分析上の仮定である。2025年の0.003億円も財務データの売上0.0億円という丸めと整合する微小な仮設定であり、実績として断定しない。
リスクと懸念
FPP004Xの抗体誘導と実際の治療効果の隔たり
2026年7月公表の第Ⅰ相速報では、抗IgE抗体価の上昇が確認された。しかし、探索的なスギ花粉曝露試験では、評価した患者群でプラセボに対する症状スコアの改善が認められなかった。抗体価の上昇は薬理作用の証拠であって、臨床的に有効な薬であることの証明ではない。次相の試験で症状改善が得られなければ、オプション契約の経済価値が大きく低下する。
SR-0379の追加第Ⅲ相試験の再現性
以前の試験における有効性の手掛かりは、潰瘍の大きさを限定した事後部分集団解析で得られたものである。事後解析では、偶然の差を有効性と誤認するリスクが残る。2024年12月に始まった追加試験で同じ効果が再現されなければ、承認申請と販売ロイヤリティーの実現が遅れるか、失われる。2027年上半期に見込まれる結果は、同社の価値を大きく左右する。
研究開発費の消費と新株発行による希薄化
2026年6月末の現預金は約18.95億円だが、同年の研究開発費とその他販管費は合計約11億円を見込む。新規の大型提携収入がなければ、数年内に追加の外部資金が必要になる可能性がある。2026年上半期だけでも約1,010万株が追加発行されており、希薄化は抽象的なリスクではない。会社の開発が成功しても、旧株主が受け取る利益の割合は小さくなり得る。
塩野義製薬への依存と契約条件
SR-0379は塩野義製薬に導出済みであり、FPP004Xでは塩野義製薬が独占的な権利を得るためのオプションを持つ。同社は製造・販売網を持たずに開発品を市場へ届けられる半面、開発優先順位や契約条件を相手に左右される。条件付きマイルストーンの最大額を、そのまま同社の将来の収益と考えることはできない。契約変更や試験方針の見直しも重要なリスクとなる。
大手製薬の既存薬と償還価格の競争
花粉症には多数の既存治療薬があり、皮膚潰瘍にもフィブラストスプレーなどの既存治療がある。FPP003などが狙う炎症性疾患では、IL-17やIL-23を標的とした抗体医薬品の臨床データと販売基盤が厚い。新薬が承認されても、既存薬に対する優位性を示せなければ処方数は伸びない。保険償還価格の引き下げやロイヤリティー交渉も、患者当たり収益を圧迫する可能性がある。
研究開発技術と特許の寿命
STEP UP技術は複数の疾患へ展開できるが、医薬品の経済的な独占期間は有限である。競合企業の新しい治療法が、承認、臨床効果、製造費、投与頻度のいずれかで優位に立つ可能性もある。AIを利用した薬剤設計や探索研究の高速化は、技術を持つこと自体の希少性を薄めるかもしれない。一方、販売価値の中心は規制承認と臨床データであり、人月や席課金をAIエージェントが直接置き換える事業ではない。
現金残高を長期の資産価値と誤認する危険
2025年末の純現金は約17.7億円で、現在の時価総額に近い規模である。しかし、その現金は研究開発のために保有されており、株主が直ちに取り出せる余剰資産ではない。2026年6月末には前受金約3.33億円などの負債も存在する。継続企業の前提に関する注記がないことと、十年後まで現在の現金を維持できることは別である。悲観側で現金を十年間固定して価値に加えると過大評価になる。
今後の分かれ目
- SR-0379の追加第Ⅲ相試験で事前に設定された主要評価項目の有効性が明確に確認されたら
- SR-0379の承認確率と対象患者数を上方修正し、やや楽観側の確率を増やす。塩野義製薬との申請方針、薬価、ロイヤリティー条件も確かめ、単なる試験成功を売上全額へ換算しない。
- SR-0379の追加第Ⅲ相試験で統計学的に明確な改善が再現されなかったら
- SR-0379の販売数量をゼロに近づけ、やや悲観と悲観の確率を増やす。新たな試験のために必要な研究費と増資規模を同時に見直す。
- FPP004Xの次相試験で抗体価の上昇だけでなく、事前に設定された症状改善と持続効果が確認されたら
- 花粉症向け治療ワクチンの商業化確率を上げる。対象患者、競合治療との差、投与頻度を踏まえて接種人数を再推計し、塩野義製薬によるオプション行使の有無を確認する。
- 塩野義製薬がFPP004Xのオプションを行使せず、開発計画が長期に停止したら
- FPP004Xの販売ロイヤリティーを中立から外し、資金調達の必要性を高く見る。既に受領した契約一時金と未実現のマイルストーンを混同しない。
- 年間の研究開発費と管理費が11億円前後で続き、新しい大型提携金が入らなかったら
- 現預金の減少と資金調達の時期を再計算し、holder_shareを引き下げる。利益予想の下方修正だけでなく、既存株主の将来持分の希薄化を本質価値へ反映する。
- 増資に頼らず二年以上、提携収入と販売ロイヤリティーで研究費を賄えるようになったら
- 赤字継続による資本コストの上乗せを再検討し、将来の希薄化前提を軽くする。利益が継続的に生まれるか、単年度の大型マイルストーンに依存しているだけかを区別する。
- FPP003またはFPP005で新規の大型ライセンス契約が成立し、具体的な一時金と開発費分担が開示されたら
- 新規提携案件の数量と契約単価を実績に合わせて上方修正する。販売ロイヤリティーは承認後まで別扱いとし、契約金による資金余力が既存株主の希薄化をどれだけ減らすかを評価する。
見ておくもの
- SR-0379追加第Ⅲ相試験の症例登録完了時期と2027年上半期に見込まれる主要評価項目の結果
- SR-0379のPMDA相談、承認申請、適応患者の範囲、上市後の薬価と販売数量
- FPP004Xの症状スコア、抗IgE抗体価の持続期間、安全性、次相試験の開始判断
- 塩野義製薬によるFPP004Xのオプション行使と、条件付きマイルストーンの達成状況
- FPP003の新規提携契約とFPP005の前臨床から臨床への移行
- 年間研究開発費・その他販管費・営業キャッシュフローと現預金残高の推移
- 新株予約権の新規発行、行使価額、発行済株式総数、調達資金の使途
- 導出先の販売実績、ロイヤリティー受取額、患者当たり売上と競合薬の市場シェア
- 2026年3月公表の事業計画の更新、利益計画の数値化、配当・自社株買い方針の変更
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約21.3億円を起点に将来価値を逆算していない。SR-0379は治療患者数と患者当たりロイヤリティー、FPP004Xは年間接種人数とライセンス収益、その他の創薬案件は契約件数と単価で積み上げた。会社が数量と価格を公表していない部分は仮定であることを明示した。十年後の黒字筋書きではg_longを0%、資本コストを9.5%として利益の継続価値を評価し、赤字筋書きでは今の自己資本と将来残る換価可能資産を分けた。さらに現在の発行済株式に反映済みの2026年増資は再計上せず、将来の増資だけを旧株主の持ち分に反映した。確率加重した十年後の時価総額と還元を割り引くと本質価値は約9.1億円で、現在値との差は約マイナス57%となる。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.8%。共通の無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%とし、事業の質による0.25%と継続赤字・資金調達負担による1.75%を加えた。βや時価総額の小ささによる機械的な上乗せは行わない。